説明

吸湿機能及び速乾機能を有する吸湿速乾糸を含む下着の付属部分品及びそれが付設される下着

【課題】 優れた吸水性能及び速乾性能に加え、肌触りが良く、耐洗濯性にも優れた吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着を提供すること。
【解決手段】 吸湿機能及び速乾機能を有する吸湿速乾糸を含む下着の付属部分品であって、該吸湿速乾糸が、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維を原料とすることを特徴とする下着の付属部分品とする。下着の付属部分品は、少なくとも、マチ部分、パット、レース、コメット、ニードル又はブラジャーの肩ひもの下着本体に付設する繊維構造物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着に関し、より詳しくは優れた吸湿機能及び速乾機能に加え、肌触りが良く、耐洗濯性にも優れた吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化により気温が上昇し、特に都市部ではヒートアイランド現象等も加わり、夏の暑さが厳しくなっている。その反面、環境に配慮したクールビズが取り沙汰され、冷房温度は高めにして涼しい衣服を着用することが推奨されている。また、夏だけでなく他の季節でも、外気と乗り物内や建物内との温度や湿度の差も大きく、衣服によって快適な状態にしようとすることが提案されている。特に、スポーツウェアなどにおいて、吸汗性能及び速乾性能を追求した生地が開発されて用いられている。
【0003】
吸汗・吸湿機能や速乾機能を有する繊維としては、単糸断面形状をX型断面等に加工することによって、高吸水・速乾性を有するポリエステル繊維(例えば、特許文献1参照)などが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−282323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリエステル繊維では吸湿性が充分ではなく肌触り等も満足のいくものではない。このように、従来の吸水・吸湿機能及び速乾機能を付与した繊維製品では、吸水・吸湿機能及び速乾機能が不十分であることに加え、肌触り等の着心地面も満足できるものがなかった。特に、素肌に直接接触し、下着本体の生地よりも肌とより密着するマチ部分、袖刳や足刳に設けられるレース、ブラジャーの肩紐等の下着の付属部分品には、スポーツウェア等よりも、より優れた吸水・吸湿機能及び速乾機能と肌触りの良さを有することが要求される。また、下着の付属部分品は頻繁に洗濯されるものであり、前記機能が繰り返しの洗濯によって低下することがない優れた耐洗濯性も必要とされる。
本発明は上記問題点を解決するために、優れた吸水性能及び速乾性能に加え、肌触りが良く、耐洗濯性にも優れた吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、吸湿機能及び速乾機能を有する吸湿速乾糸を含む下着の付属部分品であって、該吸湿速乾糸が、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維を原料とすることを特徴とする下着の付属部分品に関する。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記下着の付属部分品が、少なくとも、マチ部分、パット、レース、コメット、ニードル又はブラジャーの肩ひもの下着本体に付設する繊維構造物であることを特徴とする請求項1に記載の下着の付属部分品に関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記吸湿速乾糸が、前記親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維からなる複合糸であることを特徴とする請求項1又は2記載の下着の付属部分品に関する。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記親水機能を有するセルロースアセテート繊維が、平均酢化度48.8〜56.2%のセルロースジアセテートであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の下着の付属部分品に関する。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記ポリエステル繊維が、カチオン可染型ポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の下着の付属部分品に関する。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維が、当該下着の付属部分品を構成する繊維中40〜100%含まれることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の下着の付属部分品に関する。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記吸湿速乾糸が、60〜300デジテックスであることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の下着の付属部分品に関する。
【0013】
請求項8に係る発明は、付属部分品が付設される下着であって、該付属部分品が請求項1乃至7いずれかに記載の下着の付属部分品であることを特徴とする下着に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、吸湿機能及び速乾機能を有する吸湿速乾糸が、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維を原料とするので、充分に優れた吸湿性能及び速乾性能があり、セルロースアセテート繊維成分による肌触りの良さを有し、耐洗濯性に優れる下着の付属部分品とすることが可能となる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、前記下着の付属部分品が、少なくともマチ部分、パット、レース、コメット、ニードル又はブラジャーの肩紐の下着本体に付設する繊維構造物であるので、当該下着の付属部分品を付設した下着に優れた吸湿性能及び速乾性能、肌触りの良さ、優れた耐洗濯性を持たせることが可能となる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、前記吸湿速乾糸が、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維からなる複合糸であるので、優れた吸湿性能及び速乾性能、肌触りの良さ、優れた耐洗濯性を有する複合糸を用いて、単独で又は他の繊維からなる糸を混用して下着の付属部分品を作成することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、前記親水機能を有するセルロースアセテート繊維が、平均酢化度48.8〜56.2%のセルロースジアセテートであるので、平均酢化度48.8〜56.2%のセルロースジアセテートであることにより充分な吸湿性とポリエステル繊維との同色性を良好とすることが可能である。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、前記ポリエステル繊維が、カチオン可染型ポリエステル繊維であるので、アセテート等と複合して常圧でのカチオン染色が可能である。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、前記親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維が、当該下着の付属部分品を構成する繊維中40〜100%含まれるので、優れた吸湿性能及び速乾性能、肌触りの良さ、優れた耐洗濯性を有する吸湿速乾糸の特性を下着の付属部分品に付与することが可能となる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、前記吸湿速乾糸が、60〜300デシテックスであるので、300デシテックスより太い糸の使用によって下着の付属部分品がごわつく原因となって肌触り等の風合いが硬くなったり、60デシテックスより細い糸の使用によって該付属部分品が薄くなりすぎて破れやすくなって耐洗濯性に劣ったりすることがなく、優れた吸湿性能及び速乾性能、肌触りの良さ、優れた耐洗濯性を発揮させることが可能となる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、前記付属部分品が付設される下着であるので、下着に優れた吸湿性能及び速乾性能、肌触りの良さ、優れた耐洗濯性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるショーツを示し、図2は本発明の実施の形態であるインナーウェアを示す。
【0023】
本発明に係る下着の付属部分品とは、図1に示すショーツのようなパンティ部を有する下着の股部内側に設けるマチ部分(1)や、図2に示すインナーウェアのような上衣に汗を吸収する目的で取り付ける脇部分のパット(2)や肩部分のパット(3)、装飾、補強、縁取り、ストレッチ性付与等を目的とし、特定の部分の効用を増すために使用するレース(4)、コメット(5)、ニードル(6)やブラジャーの肩紐等の下着本体に付設する繊維構造物をいう。
【0024】
尚、本発明において下着とは、図1及び図2に示したショーツやインナーウェアのような肌着の他、靴下、手袋、和装用下着、Tシャツ、サポーター、腹巻き等の肌に直接つける衣類と定義し、下着の付属部分品は、該下着に付設する繊維構造物全てを指す。
【0025】
本発明に係る下着の付属部分品の作成に使用する吸湿速乾糸は、吸湿機能及び速乾機能に加え、肌触りが良く、耐洗濯性にも優れることを特徴とする。該吸湿速乾糸としては、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維を原料とする糸を例示することができる。
【0026】
前記吸湿速乾糸は、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維からなる複合糸として用いることができる。
【0027】
また、吸湿速乾糸を複合糸とする場合、親水機能を有するセルロースアセテート繊維としては、平均酢化度48.8〜56.2%のセルロースジアセテートを用いることができ、ポリエステル繊維と複合する。平均酢化度48.8〜56.2%のセルロースジアセテートであることにより充分な吸湿性とポリエステル繊維との同色性が良好となる。平均酢化度56.2%を超えると吸湿性が低下し、平均酢化度48.8%未満ではポリエステル繊維との同色性が悪くなる。
ポリエステル繊維としては、カチオン可染型ポリエステル繊維を用いることが好ましい。
複合は、合撚、エアー混繊、複合仮撚等の方法が挙げられ、均一に混繊するためエアー混繊が好ましい。
【0028】
前記複合糸は、親水機能を有するセルロースアセテート繊維からなる糸とポリエステル繊維からなる糸とで100%となるように作成してもよく、また他の繊維からなる糸を混用してもよい。このように作成した複合糸を100%用いて下着の付属部分品を作成してもよく、さらに他の糸と混用してもよい。
また、前記複合糸は、単独で用いて織編物としてもよいし、他の繊維からなる糸を混用してもよい。例えば、複合糸単独で丸編みにする方法、複合糸を経糸、緯糸に用いた織物とする方法、複合糸とナイロン、綿等を複合した後に丸編みにする方法等を採用することができる。
【0029】
このような複合糸である吸湿速乾糸は、前述のように親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維を原料とし、優れた吸湿・吸汗性能及び速乾性能に加え、涼感効果及び良好な制電性能による肌触りの良さを兼ね備える。
該吸湿速乾糸を用いて作成した下着の付属部分品は、吸湿・吸汗性能及び速乾性能に優れ、また心地よい涼感効果が奏され、良好な制電性能が発揮されることによって良好な肌触りとなる。また、このような繊維製品における特性は、繰り返しの洗濯にも低下せず、耐洗濯性に優れるものとなっている。
【0030】
親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維と混紡又は混用する他の繊維としては、特に限定されないが、例えば、綿、絹、麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アクリル、ポリウレタン等の化学繊維が挙げられ、好ましくは綿、レーヨン、ナイロン、ポリウレタンを使用する。該他の繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、他の繊維からなる糸と混用する場合、作成する付属部分品は交織又は交編して、全ての生地面に該吸湿速乾糸が織り込まれるようにする。
【0031】
親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維を原料とする吸湿速乾糸が、下着の付属部分品を構成する繊維中40〜100%含有されることが好ましい。なお、この含有量は、吸湿速乾糸が、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維のみからなる複合糸である。該親水機能を有するセルロースアセテート繊維とポリエステル繊維との複合糸が40%未満の場合、吸湿速乾糸による充分な効果、特に、優れた吸湿性能及び速乾性能が期待できないため好ましくない。
【0032】
吸湿速乾糸の太さとしては、特に限定されないが、60〜300デシテックスの糸を使用するのが好ましい。なお、デシテックスとは糸の太さの単位のことをいい、数字が大きくなるほどその糸は太くなる。
なお、300デシテックスより太い糸を使用すると、下着の付属部分品がごわつく原因となり、肌触り等の風合いが硬くなるため好ましくなく、60デシテックスより細い糸を使用すると、該付属部分品が薄くなりすぎるため破れやすくなり、耐洗濯性にも劣るため好ましくない。
【0033】
上述した如く、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維を原料とする吸湿速乾糸を使用して製造した本発明に係る下着の付属部分品は、優れた吸湿性能及び速乾性能に加え、涼感効果及び良好な制電性能による肌触りの良さを兼ね備えるものである。また、このような付属部分品における特性は、使用する吸湿速乾糸の繊維自体が有する特性であるため、繰り返しの洗濯にも低下せず、当該付属部分品は耐洗濯性に優れるものである。
【0034】
さらに、本発明に係る下着の付属部分品を下着本体に付設したとき、該付属部分品の特性によって、該付属部分品部分が着用感に優れたものとなるため、下着全体としても着用感に優れたものとなる。
なお、下着本体の生地は、従来から用いられている下着の生地でもよいが、本発明において使用する吸湿速乾糸を使用して作成した生地が好ましい。その場合、下着全体に、優れた吸湿性能及び速乾性能に加え、涼感効果及び良好な制電性能による肌触りの良さが付与され、下着全体が耐洗濯性に優れているため、着用感及び耐洗濯性に優れた下着とすることができる。
【0035】
また、下着の生地は織機、編機(経編機、緯編機)で製造した織・編生地であることが望ましく、例えば、天竺編(平編)、経編、斜文編、リブ編、片袋編、パール編、コード編などが挙げられ、軽くて薄く、適度な伸縮性がある天竺編地を使用するのが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を記載することにより、本発明の効果をより明確なものとする。尚、本発明に係る吸湿速乾糸を使用して作成した下着の付属部分品及びこれらが付設される下着は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
まず、実施例1として、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維からなる複合糸である100デシテックスの吸湿速乾糸を用いて編機により製造した天竺編地を用いて、パットとシャツ本体を作成した。図2に示すように、該パットを該シャツの肩部分と脇の下部分に装着してインナーウェアを作成した。
【0038】
(実施例2)
実施例2として、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維からなる複合糸である150デシテックスの吸湿速乾糸を用いて編機により製造した天竺編地を用いて、パットとシャツ本体を作成した。図2に示すように、該パットを該シャツの肩部分と脇の下部分に装着してインナーウェアを作成した。
【0039】
(実施例3)
実施例3として、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維の複合糸である100デシテックスの吸湿速乾糸を50%、ナイロン30%、ポリウレタン20%を混用してストレッチレースを製造した。また、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維の複合糸である100デシテックスの吸湿速乾糸を用いて製造した天竺編地を用い、ショーツ本体を作成した。該ショーツ本体及び前記ストレッチレースを用い、図1に示すようなショーツを作成した。
【0040】
(実施例4)
実施例4として、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維の複合糸である100デシテックスの吸湿速乾糸を10%、ナイロン80%、ポリウレタン10%を混用してストレッチレースを製造した。また、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維の複合糸である100デシテックスの吸湿速乾糸を用いて製造した天竺編地を用い、ショーツ本体を作成した。該ショーツ本体及び前記ストレッチレースを用い、図1に示すようなショーツを作成した。
【0041】
(実施例5)
実施例5として、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維の複合糸である350デシテックスの吸湿速乾糸を用いて編機により製造した天竺編地を用いて、パットとシャツ本体を作成した。図2に示すように、該パットを該シャツの肩部分と脇の下部分に装着してインナーウェアを作成した。
【0042】
(比較例1)
比較例1として、ポリエステル繊維100%糸を用いて編機により製造した天竺編地を用いて、パットとシャツ本体を作成した。図2に示すように、該パットを該シャツの肩部分と脇の下部分に装着してインナーウェアを作成した。
【0043】
(比較例2)
比較例2として、ポリエステル繊維100%糸を用いてストレッチレースを製造した。また、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維の複合糸である100デシテックスの吸湿速乾糸を30%、ポリエステル繊維を70%混用して製造した天竺編地を用い、ショーツ本体を作成した。該ショーツ本体及び前記ストレッチレースを用い、図1に示すようなショーツを作成した。
【0044】
(比較例3)
比較例3として、レーヨン50%、ナイロン40%及びポリウレタン10%を混用してストレッチレースを製造した。また、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維の複合糸である100デシテックスの吸湿速乾糸を30%、ポリエステル繊維を70%混用して製造した天竺編地を用い、ショーツ本体を作成した。該ショーツ本体及び前記ストレッチレースを用い、図1に示すようなショーツを作成した。
【0045】
(試験例1:下着における効果の評価)
実施例1乃至5、及び比較例1乃至3で作成したシャツ及びショーツを用い、吸湿性、速乾性、肌触り、耐洗濯性について年齢25〜40才までの女性20人を無差別に選び、官能テストを行った。悪いを0、良いを5として数値評価させて、その平均値をとり、平均0〜2.9を×、3.0〜3.9を△、4.0〜5.0を○として評価した。尚、耐洗濯性については下着の着用と洗濯を5回繰り返して行い、その吸湿性、速乾性、肌触り、耐洗濯性について評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示された結果から、本発明に係る吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着は、吸湿性能及び速乾性能に優れ、肌触りも良いものであることがわかった。また、繰り返しの洗濯でもその特性が低下せず、耐洗濯性もあることがわかった。
【0048】
(試験例2:吸水拡散性の測定)
実施例1及び比較例1で作成したインナーウェアについて洗濯を20回繰り返した後、バイレック法によって、パット部分の生地の経方向、緯方向から200mm×25mmの試験片を夫々採取し、その下端を水に浸漬し、10分間に上昇した水の高さを測定した。結果を図3に示す。
【0049】
図3に示された結果から、本発明に係る吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着は、吸水性能に優れるものであることがわかった。
【0050】
(試験例3:吸水力性能の測定)
実施例1及び比較例1で作成したインナーウェアについて洗濯を20回繰り返した後、ラローズ法によって、常に一定の水量を保つ容器の水面上にガラスフィルターを置き、その上にパット部分を載せて吸収される水分量を測定した。結果を図4に示す。
【0051】
図4に示された結果から、本発明に係る吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着は、吸水性能に優れるものであることがわかった。
【0052】
(試験例4:水分消失速度の測定)
実施例1及び比較例1で作成したインナーウェアについて洗濯を20回繰り返した後、JIS L1907に準拠して、水0.04mlをパット部分に滴下した水分が消失するまでの時間(秒)を測定した。結果を図5に示す。
【0053】
図5に示された結果から、本発明に係る吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着は、吸水性能に優れるものであることがわかった。
【0054】
(試験例5:乾燥速度の測定)
実施例1及び比較例1で作成したインナーウェアについて洗濯を20回繰り返した後、滴下法によって、水0.1mlをパット部分に滴下した水分の経時変化による残存水分率を測定した。結果を図6に示す。
【0055】
図6に示された結果から、本発明に係る吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着は、速乾性能に優れるものであることがわかった。
【0056】
(試験例6:模擬皮膚温度変化の測定)
実施例1及び比較例1で作成したインナーウェアについて洗濯を20回繰り返した後、ランニングやテニスをしたときに相当する2.33W/100cmの熱量及び0.5g/100cmの発汗量(水分量)を、当該インナーウェアに10分間与え、その後、休憩時に相当する0.58W/100cmの熱量を10分間与えた場合について、インナーウェアの温度変化を測定した。結果を図7に示す。
【0057】
図7に示された結果から、本発明に係る吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着は、温度上昇が少なく、心地よい涼感効果を奏するものであることがわかった。
【0058】
(試験例7:制電性能の測定)
実施例1及び比較例1で作成したインナーウェアのパット部分について、JIS L1094に準拠して、20℃×40%RHの環境下で、タテ方向及びヨコ方向を夫々綿布で擦った後の帯電圧を測定し、平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2に示された結果から、本発明に係る吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着は、摩擦帯電圧が低く、制電性能に優れるものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
優れた吸水性能及び速乾性能に加え、肌触りが良く、耐洗濯性にも優れた吸湿速乾糸を含有する下着の付属部分品及びこれらが付設される下着を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るショーツの斜視図である。
【図2】本発明に係るインナーウェアの正面図である。
【図3】本発明に係るインナーウェアについての吸水拡散性の測定結果を示すグラフ図である。
【図4】本発明に係るインナーウェアについての吸水力の測定結果を示すグラフ図である。
【図5】本発明に係るインナーウェアについての水分消失速度の測定結果を示すグラフ図である。
【図6】本発明に係るインナーウェアについての乾燥速度の測定結果を示すグラフ図である。
【図7】本発明に係るインナーウェアについての模擬皮膚温度変化の測定結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0063】
1 マチ部分
2 脇部分のパット
3 肩部分のパット
4 レース
5 コメット
6 ニードル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿機能及び速乾機能を有する吸湿速乾糸を含む下着の付属部分品であって、該吸湿速乾糸が、親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維を原料とすることを特徴とする下着の付属部分品。
【請求項2】
前記下着の付属部分品が、少なくとも、マチ部分、パット、レース、コメット、ニードル又はブラジャーの肩ひもの下着本体に付設する繊維構造物であることを特徴とする請求項1に記載の下着の付属部分品。
【請求項3】
前記吸湿速乾糸が、前記親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維からなる複合糸であることを特徴とする請求項1又は2記載の下着の付属部分品。
【請求項4】
前記親水機能を有するセルロースアセテート繊維が、平均酢化度48.8〜56.2%のセルロースジアセテートであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の下着の付属部分品。
【請求項5】
前記ポリエステル繊維が、カチオン可染型ポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の下着の付属部分品。
【請求項6】
前記親水機能を有するセルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維が、当該下着の付属部分品を構成する繊維中40〜100%含まれることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の下着の付属部分品。
【請求項7】
前記吸湿速乾糸が、60〜300デジテックスであることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の下着の付属部分品。
【請求項8】
付属部分品が付設される下着であって、該付属部分品が請求項1乃至7いずれかに記載の下着の付属部分品であることを特徴とする下着。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−95246(P2008−95246A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279182(P2006−279182)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(502218765)株式会社マルテン天満屋 (6)
【Fターム(参考)】