説明

吸熱シート

【課題】表面からの熱の吸収性が高く、軽量で取り扱いが容易であり、冷却する面を濡らすことがない吸熱シートに関する。
【解決手段】合成パルプからなる繊維シート(A)と、ポリオレフィン製不織布(B)と、水不透過性フィルム(C)とからなり、表面から(C)、(A)、(B)の順に積層してなる吸熱シートである。更には、その吸熱シートを、ポリオレフィン製不織布(B)の表面から液体を吸収させ、当該表面から蒸発させる吸熱シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱の吸収性が高く、軽量で取り扱いが容易な吸熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱を出して頭痛がするとき等は、水枕を用いたり、額に氷嚢を載せて直接冷やす方法がとられていた。また、機械等を冷却する際に風を送って冷やす等の方法がとられていた。しかしながら、冷却効果が十分ではないため、特殊な樹脂を用いたシートが考えられた(例えば、特許文献1参照)。また、吸水性樹脂をシート状基材に担持させた吸水シートと、水と接触することにより吸熱する冷却物質を含む冷却材用シートが考えられた(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらは、特殊な冷却物質が必要であり、持ち運びの際に嵩張る、重い等、不便を生じる虞がある。
そこで、超吸収性の不織布に冷却効果のある液体を含浸させたものを中間層とし、肌に密着する側である下層をレーヨン繊維からなる不織布シートとし、中間層の外側となる上層をポリエステル繊維等からなる不織布とした冷却シートが考えられた(例えば、特許文献3参照)。これによれば、特殊な液体を用いずに水を中間層に吸収させることで冷却することが可能である。しかしながら、当該中間層を挟む層としていずれも不織布を用いているため、肌に適用した際に、中間層に吸収させた液体が肌に触れ、吸収させた液体によっては肌を荒らす虞がある。
【0003】
【特許文献1】特開平7−14950号公報
【特許文献2】特開平9−234216号公報
【特許文献3】特開2000−51260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、表面からの熱の吸収性が高く、軽量で取り扱いが容易であり、冷却する面を濡らすことがない吸熱シートを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、合成パルプを含有する繊維シート(A)、ポリオレフィン製不織布(B)、水不透過性フィルム(C)からなり、表面から(C)、(A)、(B)の順に積層してなる積層体によって上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のようになる。
【0006】
[1]合成パルプを含有する繊維シート(A)と、ポリオレフィン製不織布(B)と、水不透過性フィルム(C)とからなり、表面から(C)、(A)、(B)の順に積層してなる吸熱シート、
[2]繊維シート(A)が、目付け20〜400g/mの範囲にある前記[1]記載の吸熱シート、
[3]初期吸水量が、0.5〜5.0g/25cmの範囲にある前記[1]又は[2]記載の吸熱シート、
[4]繊維シート(A)が、繊維状物質のうち分岐状繊維を30〜100重量%含む繊維シートである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸熱シート、
[5]繊維シート(A)とポリオレフィン製不織布(B)と水不透過性フィルム(C)とが、エンボス加工により熱接着されてなる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の吸熱シート、
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の吸熱シートを、ポリオレフィン製不織布(B)の表面から液体を吸収させ、当該表面から蒸発させる吸熱シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸熱シートは、表面からの熱の吸収性が高く、特に急激に温度を低下させる必要がある用途に使用することができる。
例えば、熱が出たときに乗せる熱冷まし用のシートとして使用したり、急激に温度を低下させる必要がある物に対して使用することができる。また、皮膚等に接触した面に水不透過性フィルムが積層されているので、触れても漏れることもなく、特殊な冷却用の樹脂等を用いていないので当該樹脂で肌を荒らすことがない。したがって、液体に濡れることが好ましくない物に対しても使用することができる。更には、水を注入するだけで使用することが出来るので持ち運びに便利であり、適宜、注入する水の量を変えることで熱の吸収量を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
繊維シート(A)
本発明に係る繊維シート(A)は、合成パルプを含有する。合成パルプは、分岐構造を有する分岐状繊維から構成される。
本発明に係る合成パルプは、種々の化合物からなるが、熱可塑性樹脂からなることが好ましく、その中でもポリオレフィンからなることが好ましい。ポリオレフィンとしては、炭素数2〜6のα-オレフィンの単独重合体、あるいは相互の共重合体、さらにはこれらと他の共重合性のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等との共重合体、さらにはこれら単独重合体や共重合体に不飽和カルボン酸モノマーを過酸化物でグラフト反応させて得られるポリマーが好ましく例示される。特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンまたは4−メチル−1−ブテンの結晶性の重合体および共重合体が好ましく例示される。具体的には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンやエラストマー(エチレン-α-オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン-メタクリル酸共重合体、マレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ3−メチルブテン、ポリ4−メチルブテン及びこれらの混合物が挙げられる。これらのポリオレフィンは、発明の趣旨から明らかなようにどのような製造法で製造されたものであっても良い。
【0009】
本発明に係る合成パルプは、本発明の目的を損なわない範囲において他の種々の化合物を含有していても良い。例えば、従来公知の抗菌剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等が挙げられる。これらは複数の化合物を含有していても良く、その含有量は目的に応じて適宜選択できる。
【0010】
本発明に係る合成パルプは、1本の繊維の最長部分の平均値(以下、「平均繊維長」という。)が、通常0.05〜50mmであり、0.05〜10mmであるのが好ましく、0.1〜10mmであるのが特に好ましい。平均繊維長がこの範囲にあれば、当該合成パルプとしたときに適度な嵩高性を有するので好ましい。平均繊維長は以下の手順で求めた。
【0011】
濃度0.02重量%になるように合成パルプを水に分散し、フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)で合成パルプを構成する繊維の一本一本の繊維の長さを測定した。当該測定機では、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析した。繊維の長さは0.05mm刻み(級)で、繊維の長さと各繊維の長さに該当する繊維の存在率(%)の両方が測定され、これをもとに以下の式により平均繊維長が得られる。測定は、12000〜13000本の繊維について行った。
【0012】
各級の平均繊維長Lnを求める。
Ln=ΣL/N
L:1つの級における一本一本の実測繊維長
N:1つの級における繊維本数
これから平均繊維長を求める。
平均繊維長(mm)=Σ(Nn×Ln)/Σ(Nn×Ln
Nn:各級の繊維本数
Ln:各級の数平均繊維長(mm)
【0013】
本発明に係る合成パルプを構成する繊維は、直径(以下、「繊維径」という。)の最小値が0.5μm程度であることが好ましく、その最大値は50μm程度であることが好ましい。繊維径がこの範囲にあれば、当該繊維を集合体としたときに適度な嵩高性を有するので好ましい。繊維径は、1本、1本の繊維を光学顕微鏡あるいは、電子顕微鏡で観察することで測定する。具体的には、繊維径の最大値および最小値は、次のようにして測定する。
【0014】
キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて倍率100倍で観察し、10μm以上の部分につき無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値のうち最大の値を「繊維径の最大値」とする。
日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM6480にて倍率3000倍で観察し、10μm未満の部分につき、無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最小の値を「繊維径の最小値」とする。
【0015】
本発明に係る合成パルプは、1本の繊維が多数に枝分かれた分岐構造を有している。分岐構造とは、例えば図1に示すような形態が例示される。分岐構造は光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察することにより確認する。なお、図1は、合成パルプを、キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて100倍で観察した写真である。合成パルプを構成する繊維は、多数集合した場合には、構造繊維同士が特定方向に整列せず、分岐した繊維同士が互いに絡み合ったり、分岐部分が交差したりして入り込む。絡み合ったり交叉した繊維により、多数の空孔が形成される。この空孔は、合成パルプを構成する繊維が複雑に絡み合い或いは交差しているので、圧力をかけても潰れ難い。従って、合成パルプからなる繊維シート(A)は、空孔部分に一旦水分が入り込むとその部分にそのまま水分を保持することが可能である。
【0016】
本発明の繊維シート(A)は、目付けを調節することで種々の目的や用途に用いることが出来る。例えば、目付けを20〜400g/m、好ましくは40〜80g/mの範囲である。目付けが高すぎると熱の吸収性が悪くなる虞がある。目付けが低すぎると熱の吸収性が悪くなる虞がある。
【0017】
本発明に係る繊維シート(A)は、繊維状物質のうち前記の合成パルプを30〜100重量%含むことが好ましい。この範囲にあれば、合成パルプを構成する繊維の網目の間に効率よく水分を保持することができる。
【0018】
(合成パルプの製造方法)
本発明に係る合成パルプは、種々の方法により得られるが、通常はフラッシュ法で製造することが可能である。フラッシュ法とは、高圧で溶媒に溶解したポリマーを減圧することで溶媒を揮散させ、さらに必要に応じワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて繊維を切断および叩解する方法である。特に、特開昭48-44523号公報に記載されているような方法により、ポリオレフィン溶液を懸濁剤の存在下、水媒体に分散させたものをフラッシュさせると、繊維状物質が乱雑に分岐した形状を有する本発明に係る合成パルプが得られる。かかる合成パルプを不織布にしたものは強度も大きい。
【0019】
フラッシュ法は、具体的には、水と懸濁剤の存在下に熱可塑性樹脂溶液をフラッシュする。最初に、原料樹脂を、該樹脂を溶解可能な溶剤に溶解し、前述した懸濁剤及び水を加えてエマルジョンとする。
【0020】
溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系、ベンゼン、トルエン等の芳香族系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭素類等の中から、原料樹脂を溶解せしめ、且つ、フラッシュ時に揮発し得られた繊維の集合体に残存しにくいものを適宜選択する。
【0021】
懸濁剤の添加量は、繊維中、懸濁剤が0.1〜5重量%となる量とするのが好ましい。
製造過程において、添加した懸濁剤の一部が抜けるような操作をする場合は多めに添加する等、適宜調整し添加する。添加量の目安としては、原料樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部である。懸濁剤を添加することにより、エマルションを安定化することができるとともに、フラッシュ後の繊維切断を水中で安定的に行うことができる。
【0022】
次に、得られたエマルジョンを、100〜200℃、好ましくは130〜150℃に加熱し、圧力(絶対圧力)0.1〜5MPa、好ましくは圧力0.5〜1.5MPaの加圧状態にし、ノズルより減圧下へ噴出(フラッシュ)すると同時に溶剤を気化させる。減圧の条件は、圧力1kPa〜95kPaとすることが好ましく、噴出先は窒素雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。本発明において、「圧力」とは絶対圧力のことを示す。
上記のようにしてフラッシュすることにより、分岐構造を有する不定長の繊維が得られるが、この繊維は、さらにワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて切断および叩解して、所望の長さにすることが好ましい。そのとき、繊維を0.5〜5g/リットル濃度の水スラリーとして上記切断・叩解処理を行うことが好ましい。乾燥後、所望によりミキサー等によって開綿してもよい。
【0023】
以上説明した方法によれば、分岐構造を有する繊維、特に本発明に係る合成パルプを好ましく製造することができる。 尚、合成パルプに、前記の添加剤を混合する場合には、エマルジョンの段階で添加するのが好ましい。そうすることで分岐状繊維に成形した後も添加剤の効果を長期間保持することが可能となる。
【0024】
(バインダー繊維)
本発明に係る繊維シート(A)は、バインダー繊維を含有していても良い。バインダー繊維とは、上記の合成繊維同士を結合して繋ぎ止めるものであって、繊維シート(A)をシート状に保持するのに適している。バインダー繊維としては、上記合成繊維同士を結合するものであればいずれの形状・素材であっても良く、合成繊維であっても良い。例えば、ポリエステルからなる繊維であるが、接着性の良好な点から、ポリオレフィンからなることが好ましい。例えば、炭素数2〜6のα-オレフィンの単独重合体、あるいは相互の共重合体、さらにはこれらと他の共重合性のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等との共重合体、さらにはこれら単独重合体や共重合体に不飽和カルボン酸モノマーを過酸化物でグラフト反応させて得られるポリマーが好ましく例示される。特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンまたは4−メチル−1−ブテンの結晶性の重合体および共重合体が好ましく例示される。具体的には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンやエラストマー(エチレン-α-オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、マレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ3−メチルブテン、ポリ4−メチルブテン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
またバインダー繊維は種々の形状をとることができるが、通常は繊維径1〜100μm、好ましくは5〜50μm、更に好ましくは10〜20μmである。また、バインダー繊維は複数の樹脂からなってもよく、例えば、繊維の中心とその外側が異なる組成となる芯鞘構造であっても、異なる樹脂同士が繊維表面に配置するようなサイドバイサイド構造であっても良い。その中でも、上記の特定構造の合成繊維を結合しやすく、且つ、シート状にした際に適宜シートの強度を有する点で、芯がポリプロピレンで鞘がポリエチレンである芯鞘構造の繊維であることが好ましい。このような組み合わせであれば、熱を掛けて接着する場合に、バインダー繊維の表面のみが溶融し、バインダー繊維の芯は溶融せず形状を維持しているので好ましい。
【0026】
バインダー繊維は、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができるが、好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは15〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%である。バインダー繊維が多すぎると熱の吸収性が低下する虞がある。
【0027】
(他の成分)
本発明の繊維シート(A)は、上記の合成パルプやバインダー繊維の他に、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を含むことができる。例えば、従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等が挙げられる。これらの含有量は、用途に応じて適宜選択できる。
【0028】
(繊維シート(A)の製造方法)
本発明に係る繊維シート(A)の製造方法は、公知の種々の方法を用いることができ、通常は、上記の合成パルプとバインダー繊維は別々に得た後に、繊維シート(A)にする。バッチ式のエアレイド試験機にて、解綿装置で投入繊維の解綿をすると共に複数の繊維を混合し、集塵機で吸引する事で、フォーミングボックス内に繊維を降らせてメッシュで繊維を捕集しシートを形成させる。
【0029】
不織布(B)
本発明に係る不織布(B)は、ポリオレフィンを主成分とする。
ポリオレフィンとしては、炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体、あるいは相互の共重合体、さらにはこれらと他の共重合性のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等との共重合体、さらにはこれら単独重合体や共重合体に不飽和カルボン酸モノマーを過酸化物でグラフト反応させて得られるポリマーが好ましく例示される。特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンまたは4−メチル−1−ブテンの結晶性の重合体および共重合体が好ましく例示される。具体的には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンやエラストマー(エチレン−α−オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、マレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ3−メチルブテン、ポリ4−メチルブテン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
本発明に係る不織布(B)は、種々の形状をとることができるが、通常は繊維径1〜200μm、好ましくは5〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。また、繊維は複数の樹脂からなってもよく、例えば、繊維の中心とその外側が異なる組成となる芯鞘構造であっても、異なる樹脂同士が繊維表面に配置するようなサイドバイサイド構造であっても良い。その中でも、上記の特定構造の合成繊維を結合しやすく、且つ、シート状にした際に適宜シートの強度を有する点で、芯がポリプロピレンで鞘がポリエチレンである芯鞘構造の繊維であることが好ましい。このような組み合わせであれば、熱をかけて接着する場合に、繊維の表面のみが溶融し、繊維の芯は溶融せず形状を維持しているので好ましい。
本発明に係る不織布(B)の目付けは、用途及び目的に応じて種々選択できるが、通常は10〜200g/m、好ましくは12〜100g/m、更に好ましくは15〜25g/mである。
【0031】
本発明に係る不織布(B)の製造方法は、公知の種々の方法をとることができ、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、カーディング法などが挙げられるが、この中でもカーディング法が嵩高である点で好ましい。
【0032】
水不透過性フィルム(C)
本発明に係る水不透過性フィルム(C)は、水を透過させないフィルムである。具体的には、JIS−L−1092B法に準じた測定により耐水圧10kPa以上であれば、特に限定は無く、通気性であっても非通気性であっても良く、孔が有っても無くても良い。その中でも水は透過させないが気体は透過させるものが好ましく、そのようなものとしては微多孔フィルムが挙げられる。更には柔軟性がある点でポリエチレン微多孔フィルムであることが好ましい。また、非通気性フィルムの場合でも、柔らかさの点でポリエチレンフィルムが好ましい。
【0033】
本発明に係るの水不透過性フィルム(C)の厚さは、通常5〜50μm、好ましくは5〜30μm、更に好ましくは5〜20μmである。通気性フィルムである場合は液体は透過させないが気体は透過させる微細な孔を有し、その孔の直径は通常0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、更に好ましくは1〜3μmである。
本発明に係る水不透過性フィルム(C)の製造方法は、公知の種々の方法をとることができ、例えば、押出成膜多孔化法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
吸熱シート
本発明の吸熱シートは、上記の繊維シート(A)、不織布(B)及び水不透過性フィルム(C)とからなり、これらは、(C)、(A)、(B)の順に積層してなる。このような構成にすることにより、不織布(B)側の表面から水分の供給及び蒸発を行い、繊維シート(A)でその液体を吸収し、水不透過性フィルム(C)の表面から接触した物の熱を奪うことができる。
【0035】
本発明の吸熱シートの初期吸水量は、0.5〜5.0g/25cmの範囲にあるのが好ましい。この初期吸水量とは、吸熱シートの表面積に対して吸収させることができる水分の最大量である。この範囲にあれば接触した物の表面の熱を効率よく吸収することができる。熱を吸収する際には、接触した物の表面の熱により吸収した水分を蒸発させるが、この初期吸水量が多すぎると効率よく水分の蒸発ができず、熱を吸収することができない。また、初期吸水量が少なすぎると水分がすぐに蒸発してしまい吸熱量が少ないので好ましくない。
【0036】
ここで、初期吸水量及び吸熱量の測定方法を以下に示す。
(初期吸水量の測定)
重量を測定したサンプル(5cm四方)をガラス上に載せ、平らな表面に水を滴下し、水がサンプルの外から出ない程度まで吸水させ、保水できる限界まで吸収させる。吸水したサンプルの重量を測定し、これを初期吸水量とする。
【0037】
(吸熱量の測定) カト−テック株式会社製 KES―F7;サーモラボ2型(精密迅速熱物性測定装置)により測定する。評価は、温度23℃、湿度32〜40%の条件下で行う。評価サンプルを載せない状態で熱板を33℃に温度制御するために要した熱量を測定し、これを放熱量Qとした。次に、評価サンプルに保水能力限界まで水を吸水させ、評価サンプル(5cm四方)を33℃の熱板の上にのせ、熱板を33℃に温度制御するために要した熱量を測定し、これを全体吸熱量Qとした。評価サンプルの吸熱量Qは、次式により求めた。

評価サンプルの吸熱量Q=Q−Q(W/25cm2
【0038】
本発明の吸熱シートは上記3層が適度な間隔をおいた接合部にて接合することで一体化していることが好ましい。接合は、3層が分離することなく接合し、且つ、各層間が適度に空間を有することが好ましい。接合部は嵩密度が高く、その他の部分は嵩密度が低くなる。接合部の部分を通じて吸収した水分を主に拡散させ、接合部以外の部分で吸収した液体を保持させることにより、液体を保持する。接合部は適度に間隔を置いて存在することが好ましい。接合部の形状が点状、円状、楕円状、長方形状、多角形状或いは異型の点状等の場合には、接合部が均一に多数分散しているのが好ましい。また接合部の形状が線状等連続している場合には、接合部の間隔が同じ巾或いは接合部以外の部分の形状が同一になることが好ましい。例えば、キルト柄(図2)やピンポイント柄(図3)のようなパターンにすることも可能である。
【0039】
接合部の面積は、目的に応じて種々適宜調節することができる。積層体の表面積に対して通常1〜35%、好ましくは2〜15%、更に好ましくは3〜10%である。また、接合部の1つの接合部の大きさは、特に限定されないが、接合部の形状が点状或いは円状の場合には、通常直径が通常0.1mm〜10mm、好ましくは0.2mm〜1mmである。楕円状又は長方形状の場合には長さが短い方がこれらの範囲にあるのが好ましい。
【0040】
(吸熱シートの製造方法)
本発明の吸熱シートは、種々公知の方法によって得ることができるが、通常は、上記3層を予め作成しておき、それらを接合してなる。接合は、上記3層を一度に行っても良いし、上記3層のうち2層を先に接合した後、残りの1層を接合することもできる。各層の間は、種々公知の方法により接合することが可能であり、接着剤を用いても良いし、熱や超音波等により接合しても良いが、この中でも熱融着させることが好ましい。熱融着としては、エンボス加工、超音波加工法等種々公知の方法が挙げられるが、加工が容易な点からエンボス加工することが好ましい。
例えば、前記繊維シート(A)の一方の面に不織布(B)を熱により接合した後、繊維シート(A)の他方の面に水不透過性フィルム(C)をエンボス加工により接合する方法が挙げられる。接合温度は、使用する繊維シート(A)、不織布(B)及び水不透過性フィルム(C)の素材等により適宜選択することが可能である。
【0041】
用途
本発明の吸熱シートは、不織布(B)側から水分を供給して、繊維シート(B)で水分を保持し、水不透過性フィルム(C)で吸収した液体が反対側に漏出することを防止する構造をとっている。使用時には、水不透過性フィルム(C)を熱を奪いたい物に接触させ、不織布(B)側から水分を蒸発させ、そうすることで水不透過性フィルム(C)に接触した面から熱を奪うことができ、種々の用途に使用することが出来る。具体的には、発熱した際に皮膚に載せて熱を冷ましたり、熱を持った物を急激に冷ましたいときに接触させて使用する。
【0042】
本発明の吸熱シートは、水不透過性フィルム(C)側を熱を奪いたい物に接触させるので、当該物の表面を濡らすことがないので、水分があることが好ましくない用途にも使用することができる。また、薄くても急激に温度を吸収することができるので、嵩張らず、また、水分を供給するだけで吸熱することができるので本発明の吸熱シートのみを携帯すれば必要時に水分を供給するだけで使用することができるので便利である。本発明の吸熱シートは、水分が蒸発した後は、再度、水分を供給することで吸熱シートとして使用することができる。また、本発明の吸熱シートは、使用した後に、燃やすことにより破棄することが可能であり、有毒なガスが発生したり、環境を汚染することがないので好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。使用した合成パルプは、平均繊維径が1〜50μmの範囲にあり、分岐構造を有することが分っている。得られた結果は、表1に示す。表1において、それぞれの記号は以下の意味を示す。
【0044】
PE:ポリエチレン、PP:ポリプロピレン
PP/PE芯鞘構造:芯がポリプロピレンで鞘がポリエチレンの構造
r-PP/PP:ランダムポリプロピレンとホモポリプロピレンの複合紡糸
SWP E505:三井化学(株)製 SWP(登録商標) E505
SWP UL415:三井化学(株)製 SWP(登録商標) UL415
【0045】
[評価方法]
(吸熱量の測定)
評価するシート(5cm四方)に、水を供給し、保水できる限界まで吸収させる。これを、一定温度(33℃)に調節可能な熱板上に載せて、当該温度に調節するために要した熱量(W)を測定する。評価は、温度23℃、湿度32〜40%の条件下で行った。測定は水不透過性シートが熱板に接するようにする。
【0046】
(実施例1)
合成パルプ(三井化学(株)製 SWP(登録商標) E505、融点135℃)(以下、「SWP E505」という。)と合成パルプ(三井化学(株)製 SWP(登録商標) UL415、融点125℃)(以下、「SWP UL415」という。)とを、重量比3:1で混合し、バッチ式のエアレイド試験機で繊維シート(20×20cm、坪量(目付け量) 60g/m)を作製した。この繊維シートはSWP E505が45g/m、SWP UL415が15g/mとからなる。次に、芯がポリプロピレン、鞘が低密度ポリエチレンである芯鞘構造の複合繊維をカーディング法により得られた不織布を前記繊維シートの一方の面に載せ、水不透過性フィルム(エスポアール(三井化学(株)製) ポリエチレン製通気フィルム、坪量22g/m)を前記繊維シートの他方の面に載せた。得られたシートを不織布側からエンボスロールを使って125℃で溶融熱接着した。エンボスは、5cm四方のキルト柄(図2)とし、エンボスにより接合した面積(以下、「エンボス面積率」という。)は10%である。それにより、不織布、繊維シート及び水不透過性フィルムからなる、吸熱シートを得た。
得られた吸熱シートは、全体の厚さが0.55mm、初期吸水量が1.0g/25cmである。この吸熱シートの吸熱量を測定した結果をグラフ(図4)に示す。また、水不透過性フィルム側は、水が漏れることも無かった。
【0047】
(実施例2)
エンボスを、ピンポイント柄(0.5cm毎、図3)としてエンボス面積率を3%とした以外は、実施例1と同様にして、不織布、繊維シート及び水不透過性フィルムからなる、吸熱シートを得た。
得られた吸熱シートは、全体の厚さが0.80mm、初期吸水量が1.6g/25cmである。この吸熱シートの吸熱量を測定した結果をグラフ(図4)に示す。また、水不透過性フィルム側は、水が漏れることも無かった。
【0048】
(実施例3)
バッチ式のエアレイド試験機で繊維シートをSWP E505が240g/m、SWP UL415が80g/mとからなるようにした以外は、実施例1と同様にして、不織布、繊維シート及び水不透過性フィルムからなる、吸熱シートを得た。
得られた吸熱シートは、全体の厚さが1.00mm、初期吸水量が1.9g/25cmである。この吸熱シートの吸熱量を測定した結果をグラフ(図4)に示す。また、水不透過性フィルム側は、水が漏れることも無かった。
【0049】
(比較例1)
含水ゲル層にポリアクリル酸を10重量%含み、表層に不織布を積層した市販の冷却シートを用いて吸熱量を測定した。この市販の冷却シートは、全体の秤量が2500g/m2、厚さが3.5mmで、吸熱量測定は実際に肌に接する側が熱板に接するようにした。このシートの吸熱量を測定した結果をグラフ(図4)に示す。このシートは、冷却する側に多少ベタツキを感じる。
【0050】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】合成パルプの顕微鏡写真である。
【図2】本発明の実施例1の接合部(エンボス)のキルト柄のパターンである。
【図3】本発明の実施例2の接合部(エンボス)のピンポイント柄のパターンである。
【図4】実施例及び比較例の、時間に対する吸熱量の測定結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成パルプを含有する繊維シート(A)と、ポリオレフィン製不織布(B)と、水不透過性フィルム(C)とからなり、表面から(C)、(A)、(B)の順に積層してなる吸熱シート。
【請求項2】
繊維シート(A)が、目付け20〜400g/mの範囲にある請求項1記載の吸熱シート。
【請求項3】
初期吸水量が、0.5〜5.0g/25cmの範囲にある請求項1又は2記載の吸熱シート。
【請求項4】
繊維シート(A)が、繊維状物質のうち分岐状繊維を30〜100重量%含む繊維シートである請求項1〜3のいずれかに記載の吸熱シート。
【請求項5】
繊維シート(A)とポリオレフィン製不織布(B)と水不透過性フィルム(C)とが、エンボス加工により熱接着されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の吸熱シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の吸熱シートを、ポリオレフィン製不織布(B)の表面から液体を吸収させ、当該表面から蒸発させる吸熱シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−206974(P2008−206974A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17447(P2008−17447)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】