吸着性集積型金属錯体および吸着性金属錯体
【課題】常温常圧、あるいは常温減圧下でも、気体吸着活性が高く、特に窒素に対する吸着性化合物を提供する。
【解決手段】配位飽和、あるいは配位不飽和な金属イオンで構成されるオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体あるいは吸着性集積型金属錯体であり、気体分子をオープンメタルサイトに吸着することができる。
【解決手段】配位飽和、あるいは配位不飽和な金属イオンで構成されるオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体あるいは吸着性集積型金属錯体であり、気体分子をオープンメタルサイトに吸着することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体吸着材料は、真空保持、希ガス中の微量ガスの除去、蛍光灯中のガスの除去等様々な分野で用いられている。
半導体製造工業で用いられている希ガスは、希ガス中の窒素、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、水素、水蒸気などを除去し、高純度に精製することが望まれている。特に、その中でも安定な分子である窒素を除去することが困難である。
【0003】
例えば、希ガス中の窒素、あるいは炭化水素などを取り除くため、ジルコニウム、バナジウム及びタングステンからなる三元合金のゲッター材と希ガスを加熱下に接触させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この方法は、合金を100〜600℃の温度で希ガスと接触させることにより、希ガスから窒素等の不純物を除去するものである。
【0005】
窒素に対して高ガス吸着効率を備える無蒸発ゲッター合金として、ジルコニウム、鉄、マンガン、イットリウム、ランタンと、希土類元素の1種の元素を含む合金がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この合金は、合金を300〜500℃の間の温度で10〜20分間活性化処理を行うことにより、水素、炭化水素、窒素等の吸着に対して室温でも作用することができるものである。
低温での窒素吸着合金として、Ba−Li合金が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
このBa−Li合金は、断熱ジャケット内に真空を維持するためのデバイスに、乾燥材と組み合わせて組み込まれ、室温においても窒素等のガスに対して反応性を示す。
【0007】
金属錯体からなるガス吸着材が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
これは、ジカルボン酸と、特定の二価の金属と、金属へ二座配位可能な有機配位子とを含む金属錯体からなるガス吸着材である。
【0008】
金属錯体からなるガス吸着材が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
これは、吸脱着等温線がヒステリシスループを示し、配位結合、共有結合、イオン結合、および、水素結合の総数を1としたときに、水素結合の総数が0.2以上である金属錯体からなるガス吸着材である。
【特許文献1】特開平6−135707号公報
【特許文献2】特表2003−535218号公報
【特許文献3】特表平9−512088号公報
【特許文献4】特開2001−348361号公報
【特許文献5】特開2004−74026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来の構成では、300〜500℃で加熱し続けることが必要であり、高温での加熱であるためエネルギーコストが大きく環境にも悪く、また、低温でのガス吸着を望む場合は使用できない。
【0010】
特許文献2に記載の上記従来の構成では、300〜500℃の前処理が必要であり、高温での前処理が困難な場合のガス除去、例えばプラスチック袋中のガスを常温下で除去することは困難である。
【0011】
特許文献3に記載の上記従来の構成は、活性化のための熱処理を必要とせず常温で窒素吸着が可能であるが、そのため、取り扱い時に空気中の水分、窒素などと反応してしまい、必要時の活性確保のための取り扱い性に課題を残している。また、窒素吸着に対するさらなる大容量化が望まれていると共に、Baは劇物指定物質であるため、工業的に使用するに際して環境や人体に対して問題のないものが望まれている。
【0012】
特許文献4に記載の上記従来の構成では、合金材料よりも単位重量あたりの吸着量は大きいが、加圧条件下で、ガスと接触させることにより、ガス吸着が発現するものであり、常圧、減圧下では脱離が生じる。高圧下で吸着し、減圧下で脱離する、吸蔵挙動が求められる用途では適用可能であるが、完全に気体を除去するための用途では不適当である。
【0013】
特許文献5に記載の上記従来の構成では、特許文献4同様に、合金材料よりも単位重量あたりの吸着量は大きいが、加圧条件下で、ガスと接触させることにより、ガス吸着が発現するものであり、常圧、減圧下では脱離が生じる。
【0014】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、常温常圧、あるいは常温減圧下でも気体吸着活性が高く、特に窒素に対する吸着性能が高い吸着性化合物を提供することを目的とする。
さらには、環境や人体に対して問題のないものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を提供するものである。オープンメタルサイトが気体分子と分子間相互作用を発現することにより、気体分子が分子状でオープンメタルサイトへ配位した結果、吸着が起こる。
【0016】
オープンメタルサイトは、配位飽和、あるいは配位不飽和な金属イオンで構成されてもよいが、前記オープンメタルサイトが4個の配位サイトを有し、少なくとも1つの空き配位サイトを有し、3個以下のサイトが配位状態にある金属イオンで構成されているものでは、より気体分子と強い分子間相互作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吸着性集積型金属錯体は、オープンメタルサイトを有していることにより、分子量45以下であり293K、130Pa条件下で気体である分子と強い相互作用を生じ、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水分等の気体、中でも特に窒素に対する活性が非常に高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の吸着性集積型金属錯体は、オープンメタルサイトを有する。
オープンメタルサイトの一つの態様は、金属イオンが配位不飽和であり、その配位状態に少なくとも1つの空きサイトを有する場合である。この場合、被吸着分子が、空きサイトへ相互作用可能である。
【0019】
オープンメタルサイトの他の態様は、金属イオンが配位飽和であっても、配位子間のねじれ、ゆがみにより、吸着活性を示す場合である。
少なくとも1つの空きサイトを有する集積型金属錯体の合成方法の一例を示すと、メタルセンターに予め易脱離性の官能基が1つ配置された構造体、あるいは易脱離性の官能基を1つ有するメタルセンターを持つ構造体を適切に加熱処理することにより、易脱離性の官能基を脱離させて、合成するものである。
また、2つの空きサイトを有する集積型金属錯体を合成する場合は、同様に易脱離性の官能基数を2つにすればよい。
【0020】
また、被吸着分子は、液体であっても、気体であっても良いが、本発明においては気体分子の吸着を目的としている。
また、吸着性集積型金属錯体は、多孔構造であっても、非多孔構造であってもよい。より多量の気体を吸着させたい場合には、多孔構造であることが望ましい。
【0021】
本発明の好ましい一態様は、オープンメタルサイトが、4個の配位サイトを有し、少なくとも1つの空き配位サイトを有し、3個以下のサイトが配位状態にある金属イオンで構成されていることである。
【0022】
飽和配位サイトが4個を越えるオープンメタルサイトでは、立体障害による吸着阻害作用が生じやすいため、4個の配位サイトを有するものが適当である。
【0023】
本発明の好ましい一態様においては、吸着性集積型金属錯体において、金属イオンが、銅イオンを含むものである。
【0024】
銅イオンは、気体吸着活性が高く、特に吸着困難であるとされている窒素や、一酸化炭素、水素、酸素に対して高い吸着性を示すことが確認できた。特に、銅一価イオンが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい一態様は、吸着性集積型金属錯体において、空き配位サイトが、加熱により生じたことを特徴とするものである。
加熱により空き配位サイトとなるサイトは、加熱により脱離する何らかの化合物、例えば合成時の溶媒などを予め配位させ作製するものであって、本構成により、気体吸着活性をブロッキングできるものであり、例えば、加熱前は、大気中での取り扱いが可能であり、任意の加工、成型が容易である。
【0026】
この際の加熱温度は、吸着性集積型金属錯体の熱分析(TG)などにより求めることができる。脱離する化合物の含有率と、加熱による重量減少率との合致する温度を加熱温度とする。
【0027】
加熱により脱離する化合物としては、金属イオンに対して結合力の弱い物質、すなわち塩基性の弱い、配位子や、集積型金属錯体合成時の溶媒などが利用できる。
【0028】
加熱の際は、常圧であっても減圧であっても良いが、加熱により脱離する化合物の種類により、減圧が好ましい場合もある。また、雰囲気ガスは、特に指定するものではないが、不活性雰囲気下が望ましい。
【0029】
加熱温度は、取り扱い性などを考慮すると、200℃以下が望ましい。加熱により脱離する化合物としては、例えば、アセトニトリル、メタノールやエタノールなどの低分子量のアルコール、一酸化炭素、エチレンなどである。
【0030】
また、アセトンなど沸点の低い化合物が配位していた場合には、200℃より低い温度で脱離が生じ、気体吸着活性を示すものである。従来の合金材料と比較すると、加熱温度が低く、エネルギー的にも有利である。
【0031】
本発明の好ましい一態様は、吸着性集積型金属錯体において、空き配位サイトが、分子量45以下であり293K、130Pa条件下で気体である分子を吸着可能であることを特徴とするものである。
【0032】
分子量45以下であり293K、130Pa条件下で気体である分子としては、水素、窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エチレンなどが例示できる。本発明における吸着性集積型金属錯体はこれらの気体の吸着を実現するとともに、特に吸着困難である窒素に関して強い活性を示すものである。
【0033】
吸着性集積型金属錯体の1つの製法は、金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2を自己集積させる工程を経るものである。
【0034】
本構成において、金属イオン化合物は、集積型金属錯体構造の形成およびオープンメタルサイトの形成に必要なものであり、架橋配位子化合物L1は集積型金属錯体構造の形成に、L2はオープンメタルサイトへの配位化合物として必要なものである。
【0035】
合成は、金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2とを適当な溶媒中混合し、これらを自己集積させて行うものである。必要であれば、さらに配位子を加えてもよい。
【0036】
また、金属イオン化合物とは、金属イオンと無機イオンからなる塩、および、金属イオンと無機イオンと低分子量配位子とからなる塩であれば利用することが可能であり、例えば、CuBrやCu(NO3)2、[Cu(CH3CN)4]PF6、[Cu(CH3CN)4]BF4などである。
【0037】
架橋配位子化合物L1は、二座以上の多座配位子であって、末端に金属イオンとの結合部位となる、酸素原子または窒素原子を有することを特徴とするものである。
L1は、集積型金属錯体構造を形成する作用をするため、少なくとも二座以上の多座配位子である必要があり、また、末端に金属イオンとの結合部位となる、酸素原子または窒素原子を有することにより、多孔性で、かつ安定した集積型金属錯体構造を形成することが可能となる。
【0038】
L2は、次の2種が適用可能である。
まずは、オープンメタルサイトである金属イオンへ配位し、後に、減圧下、200℃以下で脱離する何らかの化合物であって、金属イオンに対して結合力の弱い物質、すなわち塩基性の弱い、配位子や、集積型金属錯体合成時の溶媒などもL2として作用することができるものである。例えば、アセトニトリル、メタノールやエタノールなどの低分子量のアルコール、一酸化炭素、エチレンなどである。
【0039】
もう一方は、L1との組み合わせにより、配位した金属イオンを自ずとオープンメタルサイトとして形成する作用を有するものである。L1との組み合わせによるが、例えば、下記L1に対しては、
【化1】
次の分子がL2として作用する。
【化2】
【0040】
本発明の吸着性集積型金属錯体の他の1つの製法は、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させてなる工程を経るものである。
【0041】
本構成においては、金属イオン化合物は、集積型金属錯体構造の形成のみに必要であり、オープンメタルサイト形成には使用されない。オープンメタルサイトの金属イオンは、予め架橋配位子化合物に組み込まれた状態で準備されており、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させることにより、吸着性集積型金属錯体を合成するものである。
【0042】
合成は、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを適当な溶媒中を用いて接触させ、これらを自己集積させるものである。
また、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とは、主に配位不飽和な金属錯体のことである。
【0043】
例えば、飽和配位サイトが4個で、空きサイトが1つのオープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物は、
【化3】
のようなものである。E,F,Gは隣接する原子などと環構造を構成しており、Jは環構造へ結合している配位可能な官能基である。
飽和配位サイトが5個で、空きサイトが1つのオープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物は、
【化4】
となり、A、B、C、Dも隣接する原子などと環構造を構成している。
【0044】
ここで、Mは金属イオンであれば利用でき、第一遷移金属および第二遷移金属のイオンが望ましい。特に銅イオンが適しており、銅一価イオンがより好ましい。また、A〜Gは、酸素、窒素、リン、硫黄など、金属イオンに配位可能な元素であれば、適用可能である。またJは、金属イオンに配位可能なサイトを有する官能基であり、
【化5】
などである。ここでαは、水素やアルカリ金属元素など、任意に選択できる。
【0045】
オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物の一例として次の物質があげられる。
【化6】
また、配位飽和な金属錯体配位子あっても、配位子間のねじれ、ゆがみにより、オープンメタルサイトが吸着活性を示すものは利用可能である。
【0046】
本発明の好ましい一態様は、吸着性集積型金属錯体を、金属イオン化合物として、銅錯体を使用して形成することである。
【0047】
本構成において、銅錯体から形成される、銅イオンを含むオープンメタルサイトは、吸着活性が高く、特に吸着困難であるとされている窒素や、一酸化炭素、水素、酸素に対して高い吸着性を示すため、非常に有用である。特に銅一価錯体が好ましく用いることができ、[Cu(CH3CN)4]PF6、[Cu(CH3CN)4]BF4などが好ましく利用できる。
【0048】
上記製法により、吸着性集積型金属錯体において、オープンメタルサイトを確実に、容易に発生させることが可能である。
【0049】
本発明はさらに、オープンメタルサイトが、配位状態にねじれ、ゆがみがあり、被吸着分子が相互作用可能な空間裕度を持つ配位飽和な金属イオンで構成されている吸着性集積型金属錯体を提供するものである。
【0050】
該吸着性集積型金属錯体の合成方法の一例を示すと、吸着活性を有する金属イオン化合物と、配位子とを適切な溶媒中で混合攪拌、あるいは適切な溶媒に溶解し、接触させる方法がある。
【0051】
ここで、配位子は1種類であっても、2種類以上であっても良い。
また、出発原料となる金属イオン化合物と配位子との組み合わせ、および配位子が複数の場合であれば、配位子同士の組み合わせにより、オープンメタルサイトの配位状態にねじれ、ゆがみを生じさせることが重要である。
【0052】
本発明はさらに、オープンメタルサイトを有する吸着性金属錯体を提供するものである。
この吸着性金属錯体が有するオープンメタルサイトは、配位飽和な金属イオンの配位状態にねじれ、ゆがみが生じており、被吸着分子が、金属イオンへ相互作用可能な空間裕度がある状態であっても、配位不飽和な金属イオンであり、配位状態に少なくとも1つの空きサイトを有する状態であっても良い。なお、オープンメタルサイトは、金属イオンが、銅イオン、特に銅一価イオンであることが望ましい。
【0053】
配位不飽和な金属イオンで構成されるオープンメタルサイト吸着性金属錯体は、例えば、[Cu(CH3CN)4]PF6等の金属錯体を使用し、適当な条件(加熱、減圧下)に配位子を1個除去することにより製造することができる。
【0054】
さらに、本発明は、少なくとも、出発原料の分解物および吸着性集積型金属錯体の分解物の一部を含む吸着性集積型金属錯体を提供するものである。
【0055】
ここでの分解物とは、主に空き配位サイトを作製するための加熱により生じた熱分解物を指すが、合成時に生じる中間生成物や、未反応の出発原料など含み、目的とする吸着性集積型金属錯体以外の副反応生成物全般を含むものである。なお、ここでの分解物の一部というのは、量の一部であっても、成分の一部であってもよい。
本構成によって、吸着性集積型金属錯体の出発原料および加熱などの履歴が確認できる。
【0056】
また、本発明は、少なくとも、出発原料の分解物および吸着性金属錯体の分解物の一部を含む吸着性金属錯体を提供するものである。
【0057】
ここでの分解物とは、主に空き配位サイトを作製するための加熱により生じた熱分解物を指すが、合成時に生じる中間体や、未反応の出発原料など含み、吸着性金属錯体の不完全な重合体全般を含むものである。ここでの分解物の一部というのは、上記と同義である。
本構成によって、吸着性金属錯体の出発原料および加熱などの履歴が確認できる。
【0058】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0059】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における吸着性集積型金属錯体は、金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2を自己集積させてなるものである。
金属イオン化合物と、2つの架橋配位子化合物L1およびL2の一例で合成した吸着性集積型金属錯体について、粉末X線回折(XRPD)による構造解析結果と窒素吸着脱離曲線を評価した結果を実施例1〜3に示す。なお、窒素吸着脱離曲線は、25℃の条件において、AUTOSORB−1−c(カンタクロム社製)を用いて測定した。
【0060】
(実施例1)
金属イオン化合物としてCu(NO3)2を、架橋配位子化合物L1として
【化7】
を、L2として
【化8】
を用い、溶媒には水を用いた。これらを混合後、170℃で保持、室温まで冷却後に得られた結晶を構造解析した結果、多孔構造の集積型金属錯体であることがわかった。
【0061】
図1に、実施例1における吸着性集積型金属錯体の単位構造を示す。
また図2に、実施例1における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す。
構造解析の結果、この集積型金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。実施例1においては、銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
図3に、実施例1の吸着性集積型金属錯体における、窒素吸着脱離曲線を示す。
図3より、実施例1における集積型金属錯体が、低圧領域から窒素を吸着可能であることがわかる。また吸着脱離曲線において、ヒステリシスを示し、オープンメタルサイトが窒素分子と強く相互作用していることが確認できる。
【0062】
(実施例2)
金属イオン化合物としてFeCl2・4H2O、架橋配位子化合物L1として、ナフタレン−2,6−ジカルボキシレート:
【化9】
L2として、4,4−ビピリジン:
【化10】
を用いた。
【0063】
水に溶解したナフタレン−2,6−ジカルボキシレートと4,4−ビピリジンのエタノール溶液を配位子溶液とし、FeCl2・4H2O水溶液を金属イオン水溶液とする。金属イオン水溶液を入れた石英管に、静かに配位子溶液を注ぎ入れる(金属イオン水溶液と配位子溶液との間には、エタノール:水=1:2とした緩衝溶液が存在する)。
これら二層間に析出した茶色結晶を構造解析した結果、多孔構造の集積型金属錯体であることがわかった。
【0064】
図4に、実施例2における吸着性集積型金属錯体の単位構造を示す。
また図5に、実施例2における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す。なお、鮮明な図を参考図1として物件提出書で提出する。
構造解析の結果、この集積型金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な鉄二価イオンであることがわかった。鉄二価イオンの配位飽和は6配位であり、そのうち5配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
【0065】
実施例2における吸着脱離曲線も実施例1と同様に、ヒステリシスを示し、オープンメタルサイトが窒素分子と強く相互作用していることが確認できた。
しかしながら、低圧領域での窒素吸着は実施例1に劣っていた。この要因はオープンメタルサイトが、鉄二価であったためと考える。
【0066】
(実施例3)
金属イオン化合物として[Cu(CH3CN)4]BF4、架橋配位子化合物L1として4,4−ビピリジン、L2としてアセトニトリルを用いた。なお、アセトニトリルは溶媒としても作用する。
【0067】
アセトニトリルに溶解した[Cu(CH3CN)4]BF4へ、同じくアセトニトリルへ溶解した4,4−ビピリジンを加え、攪拌する。沈殿により生じた黄色の粉末を構造解析した結果、集積型金属錯体であることがわかった。
【0068】
図6に、実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す。なお、鮮明な図を参考図2として物件提出書で提出する。図7に、この粉末の熱分析(TG)結果(吸着性集積型金属錯体の多孔体の熱重量変化率)を示す。この集積型金属錯体において、脱離する化合物はアセトニトリルであり、期待される脱離に対応する加熱温度は110℃と判断し、減圧下、110℃にて加熱を行った。
【0069】
加熱後の構造解析の結果、多孔構造の集積型金属錯体が形成されていることが確認できた。また、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
【0070】
図8に実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の窒素吸着等温線を示す。図8より、実施例3における集積型金属錯体が、低圧領域から窒素を吸着可能であることがわかる。また、吸着量は実施例1より大きい。これは、実施例1と同じく、銅一価をオープンメタルとして有し、さらに適切な減圧下での加熱が加えられているためであると考える。
【0071】
実施例3の多孔構造の集積型金属錯体には、微量の未反応の出発原料、および熱分解物、合成時に生じる中間体などの、吸着性集積型金属錯体以外の副反応生成物が含まれることを、熱抽出/質量分析法(温度範囲:室温から500℃)および赤外線吸収分析により確認した。
【0072】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における吸着性集積型金属錯体は、少なくとも金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させてなるものである。
金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とで合成した吸着性集積型金属錯体についての実施例を実施例4に示した。なお、評価方法は、実施の形態1に準じた。
【0073】
(実施例4)
金属イオン化合物としてCu(ClO4)2・6H2O、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物として、
【化11】
さらにもう1種の架橋配位子化合物、ピラジン−2,3−ジカルボキシレートナトリウム塩
【化12】
を使用した。
テトラヒドロフランと水との混合溶液(混合比1:1)に溶解したL1とピラジン−2,3−ジカルボキシレートナトリウム塩を入れた石英管に、静かにCu(ClO4)2・6H2Oの水溶液をそそぎ入れる。
これら二層間に析出した青色平板状の結晶を構造解析した結果、多孔構造の集積型金属錯体であることがわかった。
【0074】
図9に、実施例4における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す。なお、鮮明な図を参考図3として物件提出書で提出する。
構造解析の結果、この集積型金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅二価イオンであることがわかった。銅二価イオンの配位飽和は6配位であり、そのうち4配位が結合に使用されており、2配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
【0075】
実施例4における吸着脱離曲線は、実施例1と同様に、ヒステリシスを示し、オープンメタルサイトが窒素分子と強く相互作用していることが確認できた。
しかしながら、低圧領域での窒素吸着は実施例1に劣っていた。この要因はオープンメタルサイトが、銅二価であったためと考える。
【0076】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における吸着性金属錯体は、少なくともオープンメタルサイトを有するものである。実施例5に、オープンメタルサイトが、減圧下、200℃以下の加熱により生じた配位不飽和な金属イオンである吸着性金属錯体を示す。
【0077】
(実施例5)
開始物質として、{Cu(CH3CN)4}PF6を用い、減圧下、180℃にて、4時間の加熱を行い、銅イオンへ配位している4つのCH3CN基のうち1つを除去することにより、オープンメタルサイトを有する非多孔構造の吸着性金属錯体を合成した。
構造解析の結果、この金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
【0078】
図10に、実施例5の吸着性金属錯体における、窒素吸着脱離曲線を示す。
図10において、低圧領域から窒素を吸着可能であることが確認でき、吸着曲線と脱離曲線がヒステリシスを示していることから、オープンメタルサイトを有することを特徴とする実施例5の吸着性金属錯体において、加熱により配位不飽和なオープンメタルサイトが生成したことにより、気体分子に対する吸着活性を示すことがわかった。
また、実施例5では、非多孔構造の金属錯体であったため、吸着量は比較的少なかった。吸着を目的とする場合、比表面積が大きく、吸着活性点が気体と効果的に接触可能な多孔構造のほうが望ましい。
次に本発明の吸着性集積型金属錯体に対する比較例を示す。
【0079】
(比較例1)
比較例1の集積型金属錯体として、Na2−pyrazine−2,3−dicarboxylateと4,4’−bipyridineに、Cu(ClO4)2・6H2Oを加えて合成した、オープンメタルサイトを持たない集積型金属錯体を用いた。
比較例1の吸着性集積型金属錯体における、窒素吸着脱離曲線ではヒステリシスが確認できなかった(図11)。すなわち、比較例1の金属錯体においては、窒素との分子間相互作用がなく、加圧下での物理吸着しか生じないことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体、あるいは吸着性金属錯体は、気体吸着活性が高く、特に窒素に対する吸着性能が高いため、蛍光灯中のガスの除去、断熱等の真空保持、希ガス中の微量ガスの除去、気体分離等様々な分野で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例1における吸着性集積型金属錯体の単位構造を示す図
【図2】本発明の実施例1における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す図
【図3】本発明の実施例1の吸着性集積型金属錯体における窒素吸着脱離曲線を示す特性図
【図4】本発明の実施例2における吸着性集積型金属錯体の単位構造を示す図
【図5】本発明の実施例2における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す図
【図6】本発明の実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す図
【図7】本発明の実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の熱重量変化率を示す特性図
【図8】本発明の実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の窒素吸着等温線を示す特性図
【図9】本発明の実施例4における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す図
【図10】本発明の実施例5の吸着性集積型金属錯体における窒素吸着脱離曲線を示す特性図
【図11】比較例1の吸着性集積型金属錯体における窒素吸着脱離曲線を示す特性図
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体吸着材料は、真空保持、希ガス中の微量ガスの除去、蛍光灯中のガスの除去等様々な分野で用いられている。
半導体製造工業で用いられている希ガスは、希ガス中の窒素、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、水素、水蒸気などを除去し、高純度に精製することが望まれている。特に、その中でも安定な分子である窒素を除去することが困難である。
【0003】
例えば、希ガス中の窒素、あるいは炭化水素などを取り除くため、ジルコニウム、バナジウム及びタングステンからなる三元合金のゲッター材と希ガスを加熱下に接触させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この方法は、合金を100〜600℃の温度で希ガスと接触させることにより、希ガスから窒素等の不純物を除去するものである。
【0005】
窒素に対して高ガス吸着効率を備える無蒸発ゲッター合金として、ジルコニウム、鉄、マンガン、イットリウム、ランタンと、希土類元素の1種の元素を含む合金がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この合金は、合金を300〜500℃の間の温度で10〜20分間活性化処理を行うことにより、水素、炭化水素、窒素等の吸着に対して室温でも作用することができるものである。
低温での窒素吸着合金として、Ba−Li合金が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
このBa−Li合金は、断熱ジャケット内に真空を維持するためのデバイスに、乾燥材と組み合わせて組み込まれ、室温においても窒素等のガスに対して反応性を示す。
【0007】
金属錯体からなるガス吸着材が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
これは、ジカルボン酸と、特定の二価の金属と、金属へ二座配位可能な有機配位子とを含む金属錯体からなるガス吸着材である。
【0008】
金属錯体からなるガス吸着材が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
これは、吸脱着等温線がヒステリシスループを示し、配位結合、共有結合、イオン結合、および、水素結合の総数を1としたときに、水素結合の総数が0.2以上である金属錯体からなるガス吸着材である。
【特許文献1】特開平6−135707号公報
【特許文献2】特表2003−535218号公報
【特許文献3】特表平9−512088号公報
【特許文献4】特開2001−348361号公報
【特許文献5】特開2004−74026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来の構成では、300〜500℃で加熱し続けることが必要であり、高温での加熱であるためエネルギーコストが大きく環境にも悪く、また、低温でのガス吸着を望む場合は使用できない。
【0010】
特許文献2に記載の上記従来の構成では、300〜500℃の前処理が必要であり、高温での前処理が困難な場合のガス除去、例えばプラスチック袋中のガスを常温下で除去することは困難である。
【0011】
特許文献3に記載の上記従来の構成は、活性化のための熱処理を必要とせず常温で窒素吸着が可能であるが、そのため、取り扱い時に空気中の水分、窒素などと反応してしまい、必要時の活性確保のための取り扱い性に課題を残している。また、窒素吸着に対するさらなる大容量化が望まれていると共に、Baは劇物指定物質であるため、工業的に使用するに際して環境や人体に対して問題のないものが望まれている。
【0012】
特許文献4に記載の上記従来の構成では、合金材料よりも単位重量あたりの吸着量は大きいが、加圧条件下で、ガスと接触させることにより、ガス吸着が発現するものであり、常圧、減圧下では脱離が生じる。高圧下で吸着し、減圧下で脱離する、吸蔵挙動が求められる用途では適用可能であるが、完全に気体を除去するための用途では不適当である。
【0013】
特許文献5に記載の上記従来の構成では、特許文献4同様に、合金材料よりも単位重量あたりの吸着量は大きいが、加圧条件下で、ガスと接触させることにより、ガス吸着が発現するものであり、常圧、減圧下では脱離が生じる。
【0014】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、常温常圧、あるいは常温減圧下でも気体吸着活性が高く、特に窒素に対する吸着性能が高い吸着性化合物を提供することを目的とする。
さらには、環境や人体に対して問題のないものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を提供するものである。オープンメタルサイトが気体分子と分子間相互作用を発現することにより、気体分子が分子状でオープンメタルサイトへ配位した結果、吸着が起こる。
【0016】
オープンメタルサイトは、配位飽和、あるいは配位不飽和な金属イオンで構成されてもよいが、前記オープンメタルサイトが4個の配位サイトを有し、少なくとも1つの空き配位サイトを有し、3個以下のサイトが配位状態にある金属イオンで構成されているものでは、より気体分子と強い分子間相互作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吸着性集積型金属錯体は、オープンメタルサイトを有していることにより、分子量45以下であり293K、130Pa条件下で気体である分子と強い相互作用を生じ、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水分等の気体、中でも特に窒素に対する活性が非常に高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の吸着性集積型金属錯体は、オープンメタルサイトを有する。
オープンメタルサイトの一つの態様は、金属イオンが配位不飽和であり、その配位状態に少なくとも1つの空きサイトを有する場合である。この場合、被吸着分子が、空きサイトへ相互作用可能である。
【0019】
オープンメタルサイトの他の態様は、金属イオンが配位飽和であっても、配位子間のねじれ、ゆがみにより、吸着活性を示す場合である。
少なくとも1つの空きサイトを有する集積型金属錯体の合成方法の一例を示すと、メタルセンターに予め易脱離性の官能基が1つ配置された構造体、あるいは易脱離性の官能基を1つ有するメタルセンターを持つ構造体を適切に加熱処理することにより、易脱離性の官能基を脱離させて、合成するものである。
また、2つの空きサイトを有する集積型金属錯体を合成する場合は、同様に易脱離性の官能基数を2つにすればよい。
【0020】
また、被吸着分子は、液体であっても、気体であっても良いが、本発明においては気体分子の吸着を目的としている。
また、吸着性集積型金属錯体は、多孔構造であっても、非多孔構造であってもよい。より多量の気体を吸着させたい場合には、多孔構造であることが望ましい。
【0021】
本発明の好ましい一態様は、オープンメタルサイトが、4個の配位サイトを有し、少なくとも1つの空き配位サイトを有し、3個以下のサイトが配位状態にある金属イオンで構成されていることである。
【0022】
飽和配位サイトが4個を越えるオープンメタルサイトでは、立体障害による吸着阻害作用が生じやすいため、4個の配位サイトを有するものが適当である。
【0023】
本発明の好ましい一態様においては、吸着性集積型金属錯体において、金属イオンが、銅イオンを含むものである。
【0024】
銅イオンは、気体吸着活性が高く、特に吸着困難であるとされている窒素や、一酸化炭素、水素、酸素に対して高い吸着性を示すことが確認できた。特に、銅一価イオンが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい一態様は、吸着性集積型金属錯体において、空き配位サイトが、加熱により生じたことを特徴とするものである。
加熱により空き配位サイトとなるサイトは、加熱により脱離する何らかの化合物、例えば合成時の溶媒などを予め配位させ作製するものであって、本構成により、気体吸着活性をブロッキングできるものであり、例えば、加熱前は、大気中での取り扱いが可能であり、任意の加工、成型が容易である。
【0026】
この際の加熱温度は、吸着性集積型金属錯体の熱分析(TG)などにより求めることができる。脱離する化合物の含有率と、加熱による重量減少率との合致する温度を加熱温度とする。
【0027】
加熱により脱離する化合物としては、金属イオンに対して結合力の弱い物質、すなわち塩基性の弱い、配位子や、集積型金属錯体合成時の溶媒などが利用できる。
【0028】
加熱の際は、常圧であっても減圧であっても良いが、加熱により脱離する化合物の種類により、減圧が好ましい場合もある。また、雰囲気ガスは、特に指定するものではないが、不活性雰囲気下が望ましい。
【0029】
加熱温度は、取り扱い性などを考慮すると、200℃以下が望ましい。加熱により脱離する化合物としては、例えば、アセトニトリル、メタノールやエタノールなどの低分子量のアルコール、一酸化炭素、エチレンなどである。
【0030】
また、アセトンなど沸点の低い化合物が配位していた場合には、200℃より低い温度で脱離が生じ、気体吸着活性を示すものである。従来の合金材料と比較すると、加熱温度が低く、エネルギー的にも有利である。
【0031】
本発明の好ましい一態様は、吸着性集積型金属錯体において、空き配位サイトが、分子量45以下であり293K、130Pa条件下で気体である分子を吸着可能であることを特徴とするものである。
【0032】
分子量45以下であり293K、130Pa条件下で気体である分子としては、水素、窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エチレンなどが例示できる。本発明における吸着性集積型金属錯体はこれらの気体の吸着を実現するとともに、特に吸着困難である窒素に関して強い活性を示すものである。
【0033】
吸着性集積型金属錯体の1つの製法は、金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2を自己集積させる工程を経るものである。
【0034】
本構成において、金属イオン化合物は、集積型金属錯体構造の形成およびオープンメタルサイトの形成に必要なものであり、架橋配位子化合物L1は集積型金属錯体構造の形成に、L2はオープンメタルサイトへの配位化合物として必要なものである。
【0035】
合成は、金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2とを適当な溶媒中混合し、これらを自己集積させて行うものである。必要であれば、さらに配位子を加えてもよい。
【0036】
また、金属イオン化合物とは、金属イオンと無機イオンからなる塩、および、金属イオンと無機イオンと低分子量配位子とからなる塩であれば利用することが可能であり、例えば、CuBrやCu(NO3)2、[Cu(CH3CN)4]PF6、[Cu(CH3CN)4]BF4などである。
【0037】
架橋配位子化合物L1は、二座以上の多座配位子であって、末端に金属イオンとの結合部位となる、酸素原子または窒素原子を有することを特徴とするものである。
L1は、集積型金属錯体構造を形成する作用をするため、少なくとも二座以上の多座配位子である必要があり、また、末端に金属イオンとの結合部位となる、酸素原子または窒素原子を有することにより、多孔性で、かつ安定した集積型金属錯体構造を形成することが可能となる。
【0038】
L2は、次の2種が適用可能である。
まずは、オープンメタルサイトである金属イオンへ配位し、後に、減圧下、200℃以下で脱離する何らかの化合物であって、金属イオンに対して結合力の弱い物質、すなわち塩基性の弱い、配位子や、集積型金属錯体合成時の溶媒などもL2として作用することができるものである。例えば、アセトニトリル、メタノールやエタノールなどの低分子量のアルコール、一酸化炭素、エチレンなどである。
【0039】
もう一方は、L1との組み合わせにより、配位した金属イオンを自ずとオープンメタルサイトとして形成する作用を有するものである。L1との組み合わせによるが、例えば、下記L1に対しては、
【化1】
次の分子がL2として作用する。
【化2】
【0040】
本発明の吸着性集積型金属錯体の他の1つの製法は、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させてなる工程を経るものである。
【0041】
本構成においては、金属イオン化合物は、集積型金属錯体構造の形成のみに必要であり、オープンメタルサイト形成には使用されない。オープンメタルサイトの金属イオンは、予め架橋配位子化合物に組み込まれた状態で準備されており、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させることにより、吸着性集積型金属錯体を合成するものである。
【0042】
合成は、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを適当な溶媒中を用いて接触させ、これらを自己集積させるものである。
また、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とは、主に配位不飽和な金属錯体のことである。
【0043】
例えば、飽和配位サイトが4個で、空きサイトが1つのオープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物は、
【化3】
のようなものである。E,F,Gは隣接する原子などと環構造を構成しており、Jは環構造へ結合している配位可能な官能基である。
飽和配位サイトが5個で、空きサイトが1つのオープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物は、
【化4】
となり、A、B、C、Dも隣接する原子などと環構造を構成している。
【0044】
ここで、Mは金属イオンであれば利用でき、第一遷移金属および第二遷移金属のイオンが望ましい。特に銅イオンが適しており、銅一価イオンがより好ましい。また、A〜Gは、酸素、窒素、リン、硫黄など、金属イオンに配位可能な元素であれば、適用可能である。またJは、金属イオンに配位可能なサイトを有する官能基であり、
【化5】
などである。ここでαは、水素やアルカリ金属元素など、任意に選択できる。
【0045】
オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物の一例として次の物質があげられる。
【化6】
また、配位飽和な金属錯体配位子あっても、配位子間のねじれ、ゆがみにより、オープンメタルサイトが吸着活性を示すものは利用可能である。
【0046】
本発明の好ましい一態様は、吸着性集積型金属錯体を、金属イオン化合物として、銅錯体を使用して形成することである。
【0047】
本構成において、銅錯体から形成される、銅イオンを含むオープンメタルサイトは、吸着活性が高く、特に吸着困難であるとされている窒素や、一酸化炭素、水素、酸素に対して高い吸着性を示すため、非常に有用である。特に銅一価錯体が好ましく用いることができ、[Cu(CH3CN)4]PF6、[Cu(CH3CN)4]BF4などが好ましく利用できる。
【0048】
上記製法により、吸着性集積型金属錯体において、オープンメタルサイトを確実に、容易に発生させることが可能である。
【0049】
本発明はさらに、オープンメタルサイトが、配位状態にねじれ、ゆがみがあり、被吸着分子が相互作用可能な空間裕度を持つ配位飽和な金属イオンで構成されている吸着性集積型金属錯体を提供するものである。
【0050】
該吸着性集積型金属錯体の合成方法の一例を示すと、吸着活性を有する金属イオン化合物と、配位子とを適切な溶媒中で混合攪拌、あるいは適切な溶媒に溶解し、接触させる方法がある。
【0051】
ここで、配位子は1種類であっても、2種類以上であっても良い。
また、出発原料となる金属イオン化合物と配位子との組み合わせ、および配位子が複数の場合であれば、配位子同士の組み合わせにより、オープンメタルサイトの配位状態にねじれ、ゆがみを生じさせることが重要である。
【0052】
本発明はさらに、オープンメタルサイトを有する吸着性金属錯体を提供するものである。
この吸着性金属錯体が有するオープンメタルサイトは、配位飽和な金属イオンの配位状態にねじれ、ゆがみが生じており、被吸着分子が、金属イオンへ相互作用可能な空間裕度がある状態であっても、配位不飽和な金属イオンであり、配位状態に少なくとも1つの空きサイトを有する状態であっても良い。なお、オープンメタルサイトは、金属イオンが、銅イオン、特に銅一価イオンであることが望ましい。
【0053】
配位不飽和な金属イオンで構成されるオープンメタルサイト吸着性金属錯体は、例えば、[Cu(CH3CN)4]PF6等の金属錯体を使用し、適当な条件(加熱、減圧下)に配位子を1個除去することにより製造することができる。
【0054】
さらに、本発明は、少なくとも、出発原料の分解物および吸着性集積型金属錯体の分解物の一部を含む吸着性集積型金属錯体を提供するものである。
【0055】
ここでの分解物とは、主に空き配位サイトを作製するための加熱により生じた熱分解物を指すが、合成時に生じる中間生成物や、未反応の出発原料など含み、目的とする吸着性集積型金属錯体以外の副反応生成物全般を含むものである。なお、ここでの分解物の一部というのは、量の一部であっても、成分の一部であってもよい。
本構成によって、吸着性集積型金属錯体の出発原料および加熱などの履歴が確認できる。
【0056】
また、本発明は、少なくとも、出発原料の分解物および吸着性金属錯体の分解物の一部を含む吸着性金属錯体を提供するものである。
【0057】
ここでの分解物とは、主に空き配位サイトを作製するための加熱により生じた熱分解物を指すが、合成時に生じる中間体や、未反応の出発原料など含み、吸着性金属錯体の不完全な重合体全般を含むものである。ここでの分解物の一部というのは、上記と同義である。
本構成によって、吸着性金属錯体の出発原料および加熱などの履歴が確認できる。
【0058】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0059】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における吸着性集積型金属錯体は、金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2を自己集積させてなるものである。
金属イオン化合物と、2つの架橋配位子化合物L1およびL2の一例で合成した吸着性集積型金属錯体について、粉末X線回折(XRPD)による構造解析結果と窒素吸着脱離曲線を評価した結果を実施例1〜3に示す。なお、窒素吸着脱離曲線は、25℃の条件において、AUTOSORB−1−c(カンタクロム社製)を用いて測定した。
【0060】
(実施例1)
金属イオン化合物としてCu(NO3)2を、架橋配位子化合物L1として
【化7】
を、L2として
【化8】
を用い、溶媒には水を用いた。これらを混合後、170℃で保持、室温まで冷却後に得られた結晶を構造解析した結果、多孔構造の集積型金属錯体であることがわかった。
【0061】
図1に、実施例1における吸着性集積型金属錯体の単位構造を示す。
また図2に、実施例1における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す。
構造解析の結果、この集積型金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。実施例1においては、銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
図3に、実施例1の吸着性集積型金属錯体における、窒素吸着脱離曲線を示す。
図3より、実施例1における集積型金属錯体が、低圧領域から窒素を吸着可能であることがわかる。また吸着脱離曲線において、ヒステリシスを示し、オープンメタルサイトが窒素分子と強く相互作用していることが確認できる。
【0062】
(実施例2)
金属イオン化合物としてFeCl2・4H2O、架橋配位子化合物L1として、ナフタレン−2,6−ジカルボキシレート:
【化9】
L2として、4,4−ビピリジン:
【化10】
を用いた。
【0063】
水に溶解したナフタレン−2,6−ジカルボキシレートと4,4−ビピリジンのエタノール溶液を配位子溶液とし、FeCl2・4H2O水溶液を金属イオン水溶液とする。金属イオン水溶液を入れた石英管に、静かに配位子溶液を注ぎ入れる(金属イオン水溶液と配位子溶液との間には、エタノール:水=1:2とした緩衝溶液が存在する)。
これら二層間に析出した茶色結晶を構造解析した結果、多孔構造の集積型金属錯体であることがわかった。
【0064】
図4に、実施例2における吸着性集積型金属錯体の単位構造を示す。
また図5に、実施例2における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す。なお、鮮明な図を参考図1として物件提出書で提出する。
構造解析の結果、この集積型金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な鉄二価イオンであることがわかった。鉄二価イオンの配位飽和は6配位であり、そのうち5配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
【0065】
実施例2における吸着脱離曲線も実施例1と同様に、ヒステリシスを示し、オープンメタルサイトが窒素分子と強く相互作用していることが確認できた。
しかしながら、低圧領域での窒素吸着は実施例1に劣っていた。この要因はオープンメタルサイトが、鉄二価であったためと考える。
【0066】
(実施例3)
金属イオン化合物として[Cu(CH3CN)4]BF4、架橋配位子化合物L1として4,4−ビピリジン、L2としてアセトニトリルを用いた。なお、アセトニトリルは溶媒としても作用する。
【0067】
アセトニトリルに溶解した[Cu(CH3CN)4]BF4へ、同じくアセトニトリルへ溶解した4,4−ビピリジンを加え、攪拌する。沈殿により生じた黄色の粉末を構造解析した結果、集積型金属錯体であることがわかった。
【0068】
図6に、実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す。なお、鮮明な図を参考図2として物件提出書で提出する。図7に、この粉末の熱分析(TG)結果(吸着性集積型金属錯体の多孔体の熱重量変化率)を示す。この集積型金属錯体において、脱離する化合物はアセトニトリルであり、期待される脱離に対応する加熱温度は110℃と判断し、減圧下、110℃にて加熱を行った。
【0069】
加熱後の構造解析の結果、多孔構造の集積型金属錯体が形成されていることが確認できた。また、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
【0070】
図8に実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の窒素吸着等温線を示す。図8より、実施例3における集積型金属錯体が、低圧領域から窒素を吸着可能であることがわかる。また、吸着量は実施例1より大きい。これは、実施例1と同じく、銅一価をオープンメタルとして有し、さらに適切な減圧下での加熱が加えられているためであると考える。
【0071】
実施例3の多孔構造の集積型金属錯体には、微量の未反応の出発原料、および熱分解物、合成時に生じる中間体などの、吸着性集積型金属錯体以外の副反応生成物が含まれることを、熱抽出/質量分析法(温度範囲:室温から500℃)および赤外線吸収分析により確認した。
【0072】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における吸着性集積型金属錯体は、少なくとも金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させてなるものである。
金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とで合成した吸着性集積型金属錯体についての実施例を実施例4に示した。なお、評価方法は、実施の形態1に準じた。
【0073】
(実施例4)
金属イオン化合物としてCu(ClO4)2・6H2O、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物として、
【化11】
さらにもう1種の架橋配位子化合物、ピラジン−2,3−ジカルボキシレートナトリウム塩
【化12】
を使用した。
テトラヒドロフランと水との混合溶液(混合比1:1)に溶解したL1とピラジン−2,3−ジカルボキシレートナトリウム塩を入れた石英管に、静かにCu(ClO4)2・6H2Oの水溶液をそそぎ入れる。
これら二層間に析出した青色平板状の結晶を構造解析した結果、多孔構造の集積型金属錯体であることがわかった。
【0074】
図9に、実施例4における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す。なお、鮮明な図を参考図3として物件提出書で提出する。
構造解析の結果、この集積型金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅二価イオンであることがわかった。銅二価イオンの配位飽和は6配位であり、そのうち4配位が結合に使用されており、2配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
【0075】
実施例4における吸着脱離曲線は、実施例1と同様に、ヒステリシスを示し、オープンメタルサイトが窒素分子と強く相互作用していることが確認できた。
しかしながら、低圧領域での窒素吸着は実施例1に劣っていた。この要因はオープンメタルサイトが、銅二価であったためと考える。
【0076】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における吸着性金属錯体は、少なくともオープンメタルサイトを有するものである。実施例5に、オープンメタルサイトが、減圧下、200℃以下の加熱により生じた配位不飽和な金属イオンである吸着性金属錯体を示す。
【0077】
(実施例5)
開始物質として、{Cu(CH3CN)4}PF6を用い、減圧下、180℃にて、4時間の加熱を行い、銅イオンへ配位している4つのCH3CN基のうち1つを除去することにより、オープンメタルサイトを有する非多孔構造の吸着性金属錯体を合成した。
構造解析の結果、この金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
【0078】
図10に、実施例5の吸着性金属錯体における、窒素吸着脱離曲線を示す。
図10において、低圧領域から窒素を吸着可能であることが確認でき、吸着曲線と脱離曲線がヒステリシスを示していることから、オープンメタルサイトを有することを特徴とする実施例5の吸着性金属錯体において、加熱により配位不飽和なオープンメタルサイトが生成したことにより、気体分子に対する吸着活性を示すことがわかった。
また、実施例5では、非多孔構造の金属錯体であったため、吸着量は比較的少なかった。吸着を目的とする場合、比表面積が大きく、吸着活性点が気体と効果的に接触可能な多孔構造のほうが望ましい。
次に本発明の吸着性集積型金属錯体に対する比較例を示す。
【0079】
(比較例1)
比較例1の集積型金属錯体として、Na2−pyrazine−2,3−dicarboxylateと4,4’−bipyridineに、Cu(ClO4)2・6H2Oを加えて合成した、オープンメタルサイトを持たない集積型金属錯体を用いた。
比較例1の吸着性集積型金属錯体における、窒素吸着脱離曲線ではヒステリシスが確認できなかった(図11)。すなわち、比較例1の金属錯体においては、窒素との分子間相互作用がなく、加圧下での物理吸着しか生じないことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体、あるいは吸着性金属錯体は、気体吸着活性が高く、特に窒素に対する吸着性能が高いため、蛍光灯中のガスの除去、断熱等の真空保持、希ガス中の微量ガスの除去、気体分離等様々な分野で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例1における吸着性集積型金属錯体の単位構造を示す図
【図2】本発明の実施例1における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す図
【図3】本発明の実施例1の吸着性集積型金属錯体における窒素吸着脱離曲線を示す特性図
【図4】本発明の実施例2における吸着性集積型金属錯体の単位構造を示す図
【図5】本発明の実施例2における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す図
【図6】本発明の実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す図
【図7】本発明の実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の熱重量変化率を示す特性図
【図8】本発明の実施例3における吸着性集積型金属錯体の多孔体の窒素吸着等温線を示す特性図
【図9】本発明の実施例4における吸着性集積型金属錯体の多孔体の結晶構造を示す図
【図10】本発明の実施例5の吸着性集積型金属錯体における窒素吸着脱離曲線を示す特性図
【図11】比較例1の吸着性集積型金属錯体における窒素吸着脱離曲線を示す特性図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体。
【請求項2】
オープンメタルサイトが、4個の配位サイトを有し、少なくとも1つの空き配位サイトを有し、3個以下のサイトが配位状態にある金属イオンで構成されている、請求項1に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項3】
金属イオンが、銅イオンを含む、請求項2に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項4】
オープンメタルサイトが、易脱離性配位化合物を加熱し脱離させることにより生じた、請求項2または3に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項5】
加熱が、200℃以下の温度で行われる、請求項4に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項6】
分子量45以下であり293K、130Pa条件下で気体である分子を吸着可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項7】
金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2を自己集積させてなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項8】
金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させてなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項9】
金属イオン化合物が、銅錯体である、請求項7または8に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項10】
架橋配位子化合物L1が、二座以上の多座配位子であって、末端に金属イオンとの結合部位となる、酸素原子または窒素原子を有することを特徴とする、請求項7に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項11】
オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物が、金属錯体配位子である、請求項8に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項12】
オープンメタルサイトが、配位状態にねじれ、ゆがみがあり、被吸着分子が相互作用可能な空間裕度を持つ配位飽和な金属イオンで構成されている、請求項1に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項13】
少なくとも、出発原料の分解物および合成物の分解物の一部を含むことを特徴とする請求項4〜12のいずれか一項に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項14】
オープンメタルサイトを有する吸着性金属錯体。
【請求項15】
少なくとも、出発原料の分解物および合成物の分解物の一部を含むことを特徴とする請求項14に記載の吸着性金属錯体。
【請求項1】
オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体。
【請求項2】
オープンメタルサイトが、4個の配位サイトを有し、少なくとも1つの空き配位サイトを有し、3個以下のサイトが配位状態にある金属イオンで構成されている、請求項1に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項3】
金属イオンが、銅イオンを含む、請求項2に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項4】
オープンメタルサイトが、易脱離性配位化合物を加熱し脱離させることにより生じた、請求項2または3に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項5】
加熱が、200℃以下の温度で行われる、請求項4に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項6】
分子量45以下であり293K、130Pa条件下で気体である分子を吸着可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項7】
金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2を自己集積させてなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項8】
金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させてなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項9】
金属イオン化合物が、銅錯体である、請求項7または8に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項10】
架橋配位子化合物L1が、二座以上の多座配位子であって、末端に金属イオンとの結合部位となる、酸素原子または窒素原子を有することを特徴とする、請求項7に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項11】
オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物が、金属錯体配位子である、請求項8に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項12】
オープンメタルサイトが、配位状態にねじれ、ゆがみがあり、被吸着分子が相互作用可能な空間裕度を持つ配位飽和な金属イオンで構成されている、請求項1に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項13】
少なくとも、出発原料の分解物および合成物の分解物の一部を含むことを特徴とする請求項4〜12のいずれか一項に記載の吸着性集積型金属錯体。
【請求項14】
オープンメタルサイトを有する吸着性金属錯体。
【請求項15】
少なくとも、出発原料の分解物および合成物の分解物の一部を含むことを特徴とする請求項14に記載の吸着性金属錯体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−91709(P2007−91709A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159707(P2006−159707)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
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