説明

吸音材

【課題】吸音材の軽量化を図りつつ、制振性及び吸音特性を向上させる。
【解決手段】ガラス転移点が室温付近にあるポリウレタンフォーム12と、該ポリウレタンフォーム12に積層され、目付け量が10g/m2 以上20g/m2 未満である不織布14と、を有している。ガラス転移点が室温付近のポリウレタンフォーム12は低反発性であり、制振性の向上を図ることができる。また不織布14の目付け量を小さく設定することで、軽量化と吸音特性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンフォーム発泡性樹脂基材表面に、開孔部を形成した樹脂フィルムからなる樹脂層を積層すること、更に該樹脂層の表面に樹脂不織布層を積層することが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また振動吸収性を有する低反発性ポリウレタンフォームの表層側に、別素材の一例として不織布を設けることが開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
更に不織布等からなる多孔層と、発泡ポリウレタン等からなる多孔質層とを有する防音材料が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−30268号公報
【特許文献2】国際公開第2005/077998号
【特許文献3】特開平9−317047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1及び特許文献3に記載の従来例では、不織布や多孔層の目付け量が20g/m2 又はそれ以上と多くなっている。目付け量が大きいと、通気性が小さくなり、密度が大きくなるため、質量が大きくなる。
【0007】
また上記した特許文献2に記載の従来例では、不織布の目付け量について何ら言及されていない。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮して、吸音材の軽量化を図りつつ、制振性及び吸音特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ガラス転移点が室温付近にあるポリウレタンフォームと、該ポリウレタンフォームに積層された不織布と、を有している。
【0010】
請求項1に記載の吸音材では、ガラス転移点が室温付近にあるポリウレタンフォーム、即ち低反発性のウレタンフォームを用いることにより、制振性を向上させることができる。また低反発性ポリウレタンフォームに不織布を積層しているので、軽量化を図りつつ吸音特性を向上させることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の吸音材において、前記不織布には、ニードルパンチによる開孔部が形成されている。
【0012】
請求項2に記載の吸音材では、不織布に、ニードルパンチによる開孔部が形成されているので、該不織布の目付け量が小さくても、狙いの周波数に対する吸音特性を向上させることができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の吸音材において、前記不織布と前記ポリウレタンフォームとは、ポリアミド系のホットメルトフィルムにより接着されている。
【0014】
請求項3に記載の吸音材では、不織布とポリウレタンフォームを接着するに際し、ポリアミド系のホットメルトフィルムを用いているので、一般的に接着し難い低反発性のポリウレタンフォームに対して、不織布を安定的に接着することができる。このため、優れた吸音特性が長期にわたって持続する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載の吸音材において、前記ホットメルトフィルムには、ニードルパンチによる開孔部が形成されている。
【0016】
請求項4に記載の吸音材では、不織布に加えてホットメルトフィルムにも開孔部が形成されているので、狙いの周波数に対する吸音特性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の吸音材によれば、吸音材の軽量化を図りつつ、制振性及び吸音特性を向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0018】
請求項2に記載の吸音材によれば、不織布の目付け量が小さくても、狙いの周波数に対する吸音特性を向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0019】
請求項3に記載の吸音材によれば、優れた吸音特性が長期にわたって持続する、という優れた効果が得られる。
【0020】
請求項4に記載の吸音材によれば、狙いの周波数に対する吸音特性を更に向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】吸音材を示す部分破断斜視図である。
【図2】実施例に係る周波数と振動伝達率との関係を示す線図である。
【図3】実施例に係る周波数と吸音率との関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施形態に係る吸音材10は、例えば空調装置の室外機のケース内面や、建設車両の外板の内面等(図示せず)に取り付けて、制振及び吸音を行うために用いられる部材であって、ポリウレタンフォーム12と、不織布14とを有している。不織布14とポリウレタンフォーム12とは、ポリアミド系のホットメルトフィルム16により接着されている。
【0023】
ポリウレタンフォーム12は、ガラス転移点が室温付近にある、低反発性のポリウレタンフォームである。ここで、「室温付近」とは、15〜25℃である。
【0024】
不織布14は、ポリウレタンフォーム12に積層され、例えば目付け量が10g/m2 以上20g/m2 未満である。ここで、不織布14の目付け量の下限を10g/m2としたのは、吸音性の観点からであり、上限を20g/m2 としたのは、軽量化の観点からである。なお、目付け量のより好ましい範囲は、15〜19g/m2である。
【0025】
不織布14には、ニードルパンチ(図示せず)による開孔部14Aが形成されている。ニードルパンチにより形成される開孔部14Aの密度は、140〜200個/cm2 である。ここで、開孔部14Aの密度の下限を140/cm2としたのは、これを下回ると、通気性が足りず吸音性能が悪いからであり、上限を200/cm2 としたのは、これを上回ると、表面に穴が開きすぎて吸音性能が落ちるからである。
【0026】
また開孔部14Aの直径は、100〜200μmである。ここで、開孔部14Aの直径の下限を100μmとしたのは、吸音性能の観点からであり、上限を200μmとしたのは、吸音性能の観点からである。
【0027】
ホットメルトフィルム16は、ポリアミド系の熱可塑性樹脂である。このホットメルトフィルム16にも、ニードルパンチ(図示せず)による開孔部16Aが形成されている。具体的には、ホットメルトフィルム16は、加熱により一旦溶かされて不織布14の裏面に接着される。不織布14とホットメルトフィルム16とが一体化した状態でニードルパンチ加工を行うことで、開孔部14A,開孔部16Aを一度に形成することができる。
【0028】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、本実施形態に係る吸音材10では、ガラス転移点が室温付近にあるポリウレタンフォーム12、即ち低反発性のウレタンフォームを用いることにより、制振性を向上させることができる。またポリウレタンフォーム12に積層される不織布14の目付け量を適切に設定しているので、軽量化を図りつつ吸音特性を一層向上させることができる。
【0029】
特に本実施形態に係る吸音材10では、不織布14及びホットメルトフィルム16に、ニードルパンチによる開孔部14A,開孔部16Aが形成されているので、該不織布14の目付け量が小さくても、狙いの周波数に対する吸音特性を向上させることができる。
【0030】
また不織布14とポリウレタンフォーム12を接着するに際し、ポリアミド系のホットメルトフィルム16を用いているので、一般的に接着し難い低反発性のポリウレタンフォーム12に対して、不織布14を安定的に接着することができる。このため、優れた吸音特性が長期にわたって持続する。
【0031】
(他の実施形態)
開孔部14A,16Aの配置は、図1に示されるような、縦方向及び横方向に夫々整列しているものに限られず、例えば千鳥配置であってもよい。
【0032】
また不織布14に開孔部14Aを設けない構成としてもよい。同様に、ホットメルトフィルム16に開孔部16Aを設けない構成としてもよい。不織布14の目付け量を適切に設定するだけでも、吸音特性を向上させることができるためである。
【0033】
不織布14とポリウレタンフォーム12とを接着するために、ポリアミド系のホットメルトフィルム16を用いると、接着性が良好となるが、これに限られず、不織布14とポリウレタンフォーム12とを接着できるものであれば、該ホットメルトフィルム16以外の接着手段を用いてもよい。
【0034】
(試験例)
実施例に係る吸音材を作成し、制振性(振動伝達率)と吸音特性について試験を行った。制振性についての比較対象は、不織布を有しない吸音用のウレタンフォームであり、吸音特性についての比較対象は、不織布を有しない低反発ウレタンフォームである。
【0035】
実施例に係る吸音材の仕様は次の通りである。不織布の目付け量は、15〜19g/m2である。
【0036】
ホットメルトフィルムは、スパンファブ社のPA1541である。ポリウレタンフォームは、ガラス転移点が室温付近にある低反発タイプのものである。
【0037】
図2は。周波数と制振性(振動伝達率)との関係を、0〜30℃まで10℃刻みで測定した結果を示している。図2の縦軸は振動伝達率を示しており、単位はdBである。この振動伝達率は、表面加速度/ベース加速度で算出され、原点から遠のくほど伝わる振動が多く、制振性に劣ることを示している。
【0038】
この図によれば、比較例に係る吸音用のウレタンフォームは、温度変化にあまり依存せず、比較的低い周波数域にピーク(共振周波数)を有し、かつ制振性が高い(振動伝達率が0に近い)範囲が狭いのに対し、実施例に係る吸音材では、温度変化に依存するものの、比較的高い周波数域にピークを有し、かつ比較的広い範囲で制振性が高いことがわかった。
【0039】
図3は、周波数と吸音率との関係を測定した結果を示している。この図によれば、実施例に係る吸音材の吸音率は、比較的高い周波数域において、低反発ウレタンフォームの吸音率よりも大幅に高くなることがわかった。
【0040】
図2,図3から、実施例に係る吸音材は、吸音用ウレタンフォームでは得られない制振性と、低反発ウレタンフォームでは得られない吸音特性を有することが確認できた。
【符号の説明】
【0041】
10 吸音材
12 ポリウレタンフォーム
14 不織布
14A 開孔部
16 ホットメルトフィルム
16A 開孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点が室温付近にあるポリウレタンフォームと、
該ポリウレタンフォームに積層された不織布と、
を有する吸音材。
【請求項2】
前記不織布には、ニードルパンチによる開孔部が形成されている請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記不織布と前記ポリウレタンフォームとは、ポリアミド系のホットメルトフィルムにより接着されている請求項2に記載の吸音材。
【請求項4】
前記ホットメルトフィルムには、ニードルパンチによる開孔部が形成されている請求項3に記載の吸音材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189783(P2012−189783A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52920(P2011−52920)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】