説明

吹付けコンクリート用骨材組成物及び吹付け用コンクリート

【課題】コンクリート塊を破砕し、破砕物を分級することなしでそのまま再生骨材として用いた吹付けコンクリート用骨材組成物及び吹付け用コンクリートを提供すること。
【解決手段】コンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た粒径15mm以下の分級していない破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材とフライアッシュとを含有し、該再生骨材中の粒径5mm以下の細骨材の容積をSとし、該再生骨材中の粒径5mmを越える粗骨材の容積をAとし、該フライアッシュの容積をFとした時に(S+F)/(S+F+A)≧0.6なる条件を満足する吹付けコンクリート用骨材組成物、該吹付けコンクリート用骨材組成物と結合材と水とを含有する吹付け用コンクリート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吹付けコンクリート用骨材組成物及び吹付け用コンクリートに関し、より詳しくは、廃材として処分されているか又は再生に費用を要しているコンクリート塊もしくはアスファルト塊やフライアッシュを利用して得られる吹付けコンクリート用骨材組成物及び、特に切土法面やトンネル内部などの地山崩落を防止するための、吹付け用コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吹付けコンクリート用骨材として河川砂利や砂などの天然材料が主として用いられてきたが、それらの天然材料の枯渇や環境保全の状況から代替材料の必要性が喫緊の課題となっている。
【0003】
破損したコンクリート製電柱などのコンクリート塊の量が多い場合にはその処理・処分を自ら行うことができず、産業廃棄物として受託業者に委託する必要があり、費用がかかる。この破損したコンクリート製電柱などのコンクリート塊を破砕して吹付けコンクリート用再生骨材として利用できれば、天然の吹付けコンクリート用骨材の代替材料として有意義であり、また処理・処分費用の軽減にもなる。
【0004】
従来、コンクリート塊を吹付けコンクリート用骨材として再生利用するためには、最初にクラッシャー(ジョークラッシャー)で概ね50mm程度以下に一次破砕して細粒化する。この一次破砕して細粒化したものには砂分がほとんど無いので、それだけでは吹付けコンクリート用骨材組成物として用いるのには適していない。それで、ミル(ロッドミルなど)で二次破砕して砂分を製造している。このように、二段階で破砕する必要があることから再生コストが高くなる。
【0005】
コンクリート塊を再生骨材として有効利用する方法として、コンクリート塊を再生骨材として用いるのに適する大きさに破砕し、その破砕物を分級して粒径0.15mm以上5mm以下のものを再生細骨材として使用し、粒径5mmを超えるものを再生粗骨材として使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、分級することは費用が嵩むことになる。
【特許文献1】特開2002−128555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような諸問題を解決すること、即ち、破損したコンクリート製電柱などのコンクリート塊を例えば特許第3554829号公報に記載の回転式破砕混合機を用いて破砕し、その破砕物を分級することなしでそのまま再生骨材として用いた吹付けコンクリート用骨材組成物及び吹付け用コンクリートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、コンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た粒径15mm以下の分級していない破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材とフライアッシュとを用い、再生骨材の全量(容積)に対する再生骨材中の細骨材とフライアッシュとの合計量(容積)の比を特定の値にすることにより上記の目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の吹付けコンクリート用骨材組成物は、コンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た粒径15mm以下の分級していない破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材とフライアッシュとを含有し、再生骨材中の粒径5mm以下の細骨材の容積をSとし、再生骨材中の粒径5mmを越える粗骨材の容積をAとし、フライアッシュの容積をFとした時に(S+F)/(S+F+A)≧0.6なる条件を満足することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の吹付け用コンクリートは、上記の吹付けコンクリート用骨材組成物と結合材と水とを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吹付けコンクリート用骨材組成物は、従来、産業廃棄物として扱われていたコンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材とフライアッシュとを含有するものであり、それらの産業廃棄物の再生利用、有効利用として有意義なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においては、骨材としてコンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た粒径15mm以下の分級していない破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材を用いるが、この粒径15mm以下の分級していない破砕物は回転式破砕混合機等を用いて粒径15mm以下に破砕したものであっても、或いは破砕物から粒径が15mmを超える粗破砕物をオーバーカットしたものであってもよい。
【0012】
本発明で用いるフライアッシュは、石炭燃焼時に排出されるフライアッシュ、具体的には石炭を使用した火力発電所から排出されるフライアッシュであり、そのようなフライアッシュを粉砕することなくそのままで使用しても、粉砕して使用してもよい。しかし、粉砕されていないフライアッシュは、角張った形状ではなくて曲面で構成された粒子を多く含有しているため、混練されたコンクリートが吹付け機で吹付けられるときでも、細骨材に比べてもより粒径が小さく、またより滑らかで球形に近いため粘性が増しても流動性も増し、吹付けが容易に出来、吹付け施工後でも落下もし難くしかも早い固形化が図れるので、粉砕することなくそのままで使用することが好ましい。
【0013】
本発明においては、再生骨材中の粒径5mm以下の細骨材の容積をSとし、再生骨材中の粒径5mmを越える粗骨材の容積をAとし、フライアッシュの容積をFとした時に(S+F)/(S+F+A)≧0.6なる条件を満足することが好ましく、更に(S/(S+A)≧0.6なる条件を満足することが一層好ましい。このような条件を満足する吹付けコンクリート用骨材組成物は、コンクリート塊もしくはアスファルト塊の破砕装置、破砕条件を適切に選定し、例えば、回転式破砕混合機を用い、回転数を調整して粒径15mm以下に破砕するか、他の破砕装置を用いて破砕した破砕物から粒径が15mmを超える粗破砕物をオーバーカットし、またコンクリート塊もしくはアスファルト塊の破砕物とフライアッシュとの配合比を適切に調整することにより容易に得ることができる。
【0014】
コンクリート塊もしくはアスファルト塊の破砕に回転式破砕混合機を用い、回転数を調整することにより、1台の機械設備で吹付けコンクリート用骨材に適した再生骨材(S/(S+A)の範囲が概ね0.6〜1)を容易に製造することができ、また回転式破砕混合機を用いて破砕した再生骨材の形状は角張っていないので、吹付け材料の配合設計が容易で施工性に優れ、吹付け作業時の閉塞等のトラブルを防止できる。
【0015】
コンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材は河川砂利や砂などの天然材料と比較して吸水率が高いので、吹付け用コンクリートの調製、吹付け施工時に短時間に容易に最適な含水状態になるように、コンクリート塊もしくはアスファルト塊の破砕前、破砕中又は破砕後に散水することにより吸水させることが好ましい。
【0016】
本発明の吹付け用コンクリートは上記の吹付けコンクリート用骨材組成物と結合材と水とを含有するものであるが、そのような吹付け用コンクリートは、別の所でコンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材を、例えば切土法面やトンネル内部などの地山崩落を防止するために吹付け用コンクリートを吹付ける場所に移送し、現場で再生骨材とフライアッシュと結合材と水とを、再生骨材中の粒径5mm以下の細骨材の容積をSとし、該再生骨材中の粒径5mmを越える粗骨材の容積をAとし、該フライアッシュの容積をFとした時に(S+F)/(S+F+A)≧0.6なる条件を満足するように配合して調製しても、或いは吹付け用コンクリートを吹付ける現場で、コンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材を製造しながら、その再生骨材とフライアッシュと結合材と水とを、再生骨材中の粒径5mm以下の細骨材の容積をSとし、該再生骨材中の粒径5mmを越える粗骨材の容積をAとし、該フライアッシュの容積をFとした時に(S+F)/(S+F+A)≧0.6なる条件を満足するように配合して調製してもよい。後者の場合には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律でいう「みずから処理」となり、産業廃棄物として受託業者に委託する必要がなくなる。
【0017】
本発明の吹付けコンクリートに用いる結合材は、JISに規定されている各種セメントの他、これらに高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどの混和材を混合したものを用いることができる。また、単位水量を低減して吹付けコンクリートの品質を向上するために、高性能AE減水剤やAE減水剤、AE剤などの混和剤を添加することができる。
【0018】
実施例
回転式破砕混合機を用い、回転数を900rpmおよび1200rpmとして、コンクリート塊を粒径15mm以下に破砕した。この再生骨材のS/Aは、回転数900rpmで67.3%、回転数1200rpmで83.1%であった。この再生骨材にフライアッシュを配合し、回転数900rpmで製造した再生骨材においては(S+F)/(S+F+A)が71.3%の吹付けコンクリート用骨材組成物(1)を、回転数1200rpmで製造した再生骨材においては(S+F)/(S+F+A)が84.2%および85.2%の吹付けコンクリート用骨材組成物(2)および吹付けコンクリート用骨材組成物(3)を製造した。
【0019】
上記の吹付けコンクリート用骨材組成物(1)1342kg/m3、結合材400kg/m3および水240kg/m3からなる吹付け用コンクリート(1)、吹付けコンクリート用骨材組成物(2)1326kg/m3、結合材400kg/m3および水240kg/m3からなる吹付け用コンクリート(2)、吹付けコンクリート用骨材組成物(3)1324kg/m3、結合材400kg/m3および水240kg/m3からなる吹付け用コンクリート(3)それぞれを、吹付け機を使用して吹付けた。吹付けコンクリート用骨材組成物の(S+F)/(S+F+A)が71.3%、84.2%、85.2%の何れの場合にも問題なく吹付けることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た粒径15mm以下の分級していない破砕物又はそれらの混合物からなる再生骨材とフライアッシュとを含有し、該再生骨材中の粒径5mm以下の細骨材の容積をSとし、該再生骨材中の粒径5mmを越える粗骨材の容積をAとし、該フライアッシュの容積をFとした時に(S+F)/(S+F+A)≧0.6なる条件を満足することを特徴とする吹付けコンクリート用骨材組成物。
【請求項2】
更に、S/(S+A)≧0.6なる条件を満足する請求項1記載の吹付けコンクリート用骨材組成物。
【請求項3】
コンクリート塊もしくはアスファルト塊を破砕して得た粒径15mm以下の分級していない破砕物が回転式破砕混合機で製造されたものである請求項1又は2記載の吹付けコンクリート用骨材組成物。
【請求項4】
再生骨材がコンクリート塊もしくはアスファルト塊の破砕前、破砕中又は破砕後に散水することにより吸水させたものである請求項1、2又は3記載の吹付けコンクリート用骨材組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の吹付けコンクリート用骨材組成物と結合材と水とを含有することを特徴とする吹付け用コンクリート。

【公開番号】特開2008−100870(P2008−100870A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284250(P2006−284250)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(594127330)中国高圧コンクリート工業株式会社 (37)
【出願人】(504002193)株式会社エネルギア・エコ・マテリア (24)
【出願人】(000231198)日本国土開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】