説明

周波数可変フィルタ回路

【課題】隣接妨害波の影響を授受のため使用できなかった周波数帯域の一部を有効に利用することができ、簡単な構成でより多くの通信チャンネルを使用できる。
【解決手段】それぞれディジタル変調されて入力される複数のサブキャリア信号からなる高周波通信信号を所定の通過帯域で帯域通過ろ波する周波数可変フィルタを含む周波数可変フィルタ回路が提供される。フィルタ制御回路18における制御手段は、設定周波数情報及び各サブキャリア信号に共通の1次変調設定情報毎に、設定すべき周波数可変フィルタの通過帯域の周波数を格納するフィルタ制御信号生成テーブルを備え、設定周波数情報及び各サブキャリア信号に共通の1次変調設定情報に基づいて、フィルタ制御信号生成テーブルメモリ19を参照して、隣接妨害波の影響を軽減するように周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCATV(Cable Television)インターネットのためのケーブルモデム装置などの通信モデム装置において、隣接する妨害波の影響を軽減するために提供される周波数可変フィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信モデム装置は、他の信号に妨害を与えず、また他の信号から妨害を受けないように、通信信号に使用する周波数帯域のみを通過させて、他の信号の周波数帯域を減衰させる帯域通過フィルタを備えている。
【0003】
例えば特許文献1において、従来技術に係るチューナブルフィルタが開示されている。当該チューナブルフィルタは、電圧制御により容量可変となるバラクタダイオードを用いて、共振周波数や周波数帯域幅を変更することができる。従って、上述のチューナブルフィルタは、広帯域伝送媒体を用いたディジタル多チャンネル放送などを含む地上波放送、衛星放送、ケーブルテレビ放送などにおいて、フィルタの通過周波数帯域を切り換えて、隣接チャンネルの周波数成分を含むことなく所望のチャンネルの信号を抽出することができる。
【0004】
具体的には、複数の通信チャンネルを用いるとき、または、同軸ケーブル上で放送波と共用するなど他の信号と混在して使用するとき、使用する周波数帯域が近接していると他の信号から妨害されたり、他の信号を妨害したりする。このとき、上述のチューナブルフィルタは、妨害波が希望波より低周波数である場合、希望波をひとつ上の通信チャンネルへ設定変更する一方、妨害波が希望波より高周波数である場合、希望波をひとつ下の通信チャンネルへ設定変更することにより、妨害の影響を抑えることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−9573号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術に係るチューナブルフィルタにおいては、使用する周波数帯域が他の信号の周波数帯域と近接していて、使用する周波数帯域を異なる通信チャンネルに変更するとき、異なるクロックの追加や変調信号の制御アルゴリズムの改変が必要であるという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して簡単な方法により隣接する妨害波の影響を軽減することができる周波数可変フィルタ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る周波数可変フィルタ回路は、それぞれディジタル変調されて入力される複数のサブキャリア信号からなる高周波通信信号を所定の通過帯域で帯域通過ろ波する周波数可変フィルタを備えた周波数可変フィルタ回路において、
上記高周波通信信号を復調するモデムの設定周波数情報に基づいて、上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記周波数可変フィルタ回路において、上記制御手段は、上記設定周波数情報及び各サブキャリア信号に共通の1次変調設定情報毎に、設定すべき上記周波数可変フィルタの通過帯域の周波数を格納する第1のテーブルを備え、上記設定周波数情報及び各サブキャリア信号に共通の1次変調設定情報に基づいて、上記第1のテーブルを参照して、隣接妨害波を軽減するように上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御することを特徴とする。
【0010】
また、上記周波数可変フィルタ回路において、上記制御手段は、上記設定周波数情報毎に、設定すべき上記周波数可変フィルタの通過帯域の周波数を格納する第2のテーブルを備え、上記設定周波数情報に基づいて、上記第2のテーブルを参照して、隣接妨害波を軽減するように上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御することを特徴とする。
【0011】
さらに、上記周波数可変フィルタ回路において、上記制御手段は、上記入力される高周波通信信号の各サブキャリア信号毎に回線品質を測定し、上記設定周波数情報及び上記測定された回線品質に基づいて、隣接妨害波を軽減するように上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御することを特徴とする。
【0012】
ここで、上記回線品質はビットエラーレート(BER)であることを特徴とする。
【0013】
またさらに、上記周波数可変フィルタ回路において。上記制御手段は、上記設定周波数情報及び上記入力される高周波通信信号の各サブキャリア信号毎の個別の1次変調設定情報に基づいて、隣接妨害波を軽減するように上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
従って、本発明に係る周波数可変フィルタ回路によれば、それぞれディジタル変調されて入力される複数のサブキャリア信号からなる高周波通信信号を所定の通過帯域で帯域通過ろ波する周波数可変フィルタを備えた周波数可変フィルタ回路において、上記高周波通信信号を復調するモデムの設定周波数情報に基づいて、上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御する制御手段を備える。それ故、希望波及び妨害波の周波数帯域利用状況等に応じて、周波数可変フィルタによって取り出す信号の周波数帯域を変化させることにより、隣接する妨害波の影響を受けたり、隣接する妨害波に影響を与えたりするため今まで使用できなかった周波数帯域の一部を有効に利用することができ、簡単な構成でより多くの通信チャンネルを使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0016】
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係るケーブルモデム装置の構成を示すブロック図である。第1の実施形態に係るケーブルモデム装置1は、ケーブルテレビジョン会社のヘッドエンドからCATV網の同軸ケーブル20を介して高周波通信信号を受信し、それをベースバンド信号に復調して変換し、その中から所定のユーザデータを取り出してユーザ宅内に設けられたパーソナルコンピュータにLANケーブル21を介して出力するための通信端末装置である。
【0017】
図2は、図1の周波数可変フィルタ12の帯域通過特性の一例を示す、周波数に対する相対利得を示す図である。図2において、例えば、希望波信号帯域30が875MHzから925MHzであるとき、妨害波信号帯域31が975MHzから1025MHzに設定されている。本実施形態では、帯域通過ろ波する中心周波数と周波数帯域幅を外部のフィルタ制御信号に基づいて制御可能な図1の周波数可変フィルタ12により、与妨害又は被妨害の影響が発生する妨害波信号帯域31側のサブキャリア信号を減衰させることを特徴としている。ここで、減衰させるサブキャリア信号については、
(a)RF処理回路13内のモデム13aで設定される高周波通信信号のモデム信号(例えば、複数のサブキャリア信号を含むOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号であり、公知の通り、同軸ケーブル20を介して伝送される高周波通信信号(トレーニング信号)の回線品質(周波数特性やビットエラーレート(BER))に応じて、どのサブキャリア信号を使用するか、また、各サブキャリア信号毎にどの変調方式を使用するかが判断される。)である希望波の使用中心周波数及び周波数帯域幅と、
(b)減衰させる妨害波の中心周波数及び周波数帯域幅(上記希望波の使用中心周波数及び周波数帯域幅に応じて予め設定され、例えば、RF処理回路13で検出される妨害波の中心周波数に基づいてコントローラ17により決定される。)と、
(c)モデム13aの各サブキャリア信号の共通1次変調設定情報(例えば、上記OFDM信号であるときに、128QAM、64QAM、32QAM、16QAM、8PSK、4PSK、2PSKなどである。)に応じて、例えば次の表1に示すように、周波数可変フィルタ12において設定すべき帯域通過ろ波する中心周波数と周波数帯域幅を予め決定しておき、これらのデータを含むフィルタ制御信号生成テーブルを、フィルタ制御回路18に接続されたフィルタ制御信号生成テーブルメモリ19に予め格納している。
【0018】
【表1】

【0019】
ここで、希望波の使用中心周波数及び周波数帯域幅と、妨害波の中心周波数及び周波数帯域幅とを、「周波数設定情報」という。このフィルタ制御信号生成テーブルの生成方法については詳細後述する。なお、希望波の周波数帯域幅や妨害波の周波数帯域幅は、予め設定されているので、フィルタ制御信号生成テーブルにおいて特に格納しなくてもよい。
【0020】
図1において、CATV網からの高周波通信信号は同軸ケーブル20を介して周波数可変フィルタ12に入力される。周波数可変フィルタ12は、フィルタ制御回路18から入力されるフィルタ制御信号に基づいて、同軸ケーブル20から入力される高周波通信信号を、当該フィルタ制御信号に対応した周波数帯域について帯域通過ろ波した後、RF処理回路13に出力する。次いで、RF処理回路13は高周波通信信号の変復調を行うモデムを含み、コントローラ17から入力される制御信号に基づいて、周波数可変フィルタ12から入力される高周波通信信号に対して低雑音増幅処理及び周波数変換処理や、トレーニング信号に基づいて決定されてコントローラ17に出力されるモデム13aの1次変調設定情報に対応するディジタル復調方式での復調処理を実行した後、BB処理回路14に出力する。さらに、BB処理回路14はコントローラ17から入力される制御信号に基づいて、RF処理回路13から入力される高周波通信信号をベースバンド信号に変換した後、MAC処理回路15に出力する。さらに、MAC処理回路15はコントローラ17から入力される制御信号に基づいて、BB処理回路14から入力されるベースバンド信号のヘッダ部分を解析し、ベースバンド信号内のユーザデータを取り出してイーサインターフェース16に出力する。
【0021】
さらに、イーサインターフェース16はコントローラ17から入力される制御信号に基づいて、MAC処理回路15から入力されるユーザデータをLAN信号に変換した後、例えばイーサケーブルなどのLANケーブル21を介してパーソナルコンピュータ等(図示せず)に出力する。ここで、ユーザデータは、例えばHTMLで記述されたデータや電子メールのデータなどである。コントローラ17は、上述のように、RF処理回路13、BB処理回路14、MAC処理回路15及びイーサインターフェース16の各動作を制御する。
【0022】
また、コントローラ17には、フィルタ制御回路18が接続される。フィルタ制御回路18は、コントローラ17から入力される周波数設定情報(希望波の中心周波数及び妨害波の中心周波数のみでよい)及び共通1次変調設定情報に基づいて、フィルタ制御信号生成テーブルメモリ19内のフィルタ制御信号生成テーブルを参照することにより、周波数設定情報及び共通1次変調設定情報に対応したフィルタ制御信号を検索し、検索して得られたフィルタ制御信号を周波数可変フィルタ12に出力する。これに応答して、周波数可変フィルタ12は、入力される高周波通信信号に対して、フィルタ制御信号に対応した周波数帯域について帯域通過ろ波した後、RF処理回路13に出力する。
【0023】
次いで、フィルタ制御信号生成テーブルメモリ19に格納されているフィルタ制御信号生成テーブルについて以下に説明する。第1の実施形態において、使用する変調方式は例えばOFDMによるマルチキャリア変調方式であり、ケーブルモデム装置1は起動時に各周波数帯の伝送路状態を調べ、全サブキャリア共通の1次変調を設定する。熱雑音環境下においては、変調方式により特性が異なる公知のビットエラーレート(BER)に対する搬送波対雑音電力比(C/N)特性から明らかなように、ビットエラーレート(BER)=10−4の回線品質を、BPSK(Binary Phase Shift Keying)やQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や128QAM(Quadrature Amplitude Modulation)で満たすには、搬送波対雑音電力比(C/N)としてそれぞれ8.5dB,11.5dB,27dBを必要となる。ここで、ビットエラーレート(BER)=10−4はリードソロモン符号が付加された場合、ほぼエラーフリーと見なせる値である。
【0024】
例えば、各サブキャリア信号の使用の有無を判断するしきい値をビットエラーレート(BER)=10−4とし、1次変調を128QAMで通信を行うとき、周波数可変フィルタ12を用いて搬送波対雑音電力比(C/N)を27dB以下まで落とすことによって、サブキャリア信号が未使用状態になり、使用周波数帯域幅を制限できる。受信信号レベルが70dBμVであり、ノイズレベルが20dBμVの場合、搬送波対雑音電力比(C/N)が27dB以下を満たすためには、周波数可変フィルタ12により未使用としたいサブキャリア信号の相対利得を23dB以上減衰させればよい。また、モデム13aの送信機側及び受信機側の双方にフィルタを付加する場合は、それぞれ相対利得を11.5dB以上減衰させるフィルタを付加することでサブキャリア信号が未使用状態になる。なお、ノイズレベルは、当該ケーブルモデム装置1の特性に依存する。従って、フィルタ制御信号生成テーブルメモリ19は周波数可変フィルタ12が上記の特性を満たすフィルタ制御信号生成テーブルを格納する。
【0025】
通常、高周波通信信号には帯域外輻射が存在し、OFDM信号などのマルチキャリア変調方式では、搬送波の占有周波数帯域幅の両端付近で特に強い帯域外輻射が存在する。一般的に、上記帯域外輻射は占有周波数帯域幅の10乃至15%程度が非常に大きい。そのため、占有帯域幅が隣接するチャンネル同士では、近接するサブキャリア信号の信号が帯域外輻射の影響を大きく受ける。
【0026】
図3は、図1の周波数可変フィルタ12に入力されるサブキャリア信号の帯域外輻射成分35の一例を示す、周波数に対する相対利得を示す図である。図3において、信号伝送チャンネルの信号占有周波数帯域33は875MHzから925MHzであり、隣接チャンネルの信号占有周波数帯域34は925MHzから975MHzであるとき、中心周波数900MHzの信号における周波数915MHzから周波数925MHzにあるサブキャリアが、中心周波数950MHzの信号帯域外輻射成分35による影響を受けやすい。隣接チャンネルとは他のネットワークで使用している高周波通信信号である。また、周波数可変フィルタ12の傾き特性から相対利得が11.5dB以上減衰するには周波数が10MHz必要である。上記条件に基づいたフィルタ制御信号生成テーブルが上述の表1である。
【0027】
表1から明らかなように、例えば、希望波の中心周波数が900MHz、周波数帯域幅が50MHz、妨害波の中心周波数が950MHz、周波数帯域幅が50MHz、共通1次変調が128QAMのとき、フィルタ制御信号の中心周波数は890MHz、周波数帯域幅は30MHzとなる。なお、周波数可変フィルタ12の傾き特性は実装する帯域通過フィルタに依存するため、フィルタ制御信号生成テーブルのパラメータは通信端末装置毎に最適化することが望ましい。
【0028】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、フィルタ制御回路18はフィルタ制御信号生成テーブルメモリ19のフィルタ制御信号生成テーブルを用いて、周波数設定情報及び共通1次変調設定情報に基づいてフィルタ制御信号を生成して周波数可変フィルタ12に出力し、これに応答して、周波数可変フィルタ12はフィルタ制御信号に対応する高周波通信信号の周波数成分を帯域通過ろ波して出力する。それ故、希望波が隣接する妨害波の影響を受けたり、隣接する妨害波に影響を与えたりする可能性を低下でき、これにより、今まで使用できなかった周波数帯域の一部を有効に利用することができ、従来技術に比較して簡単な構成でより多くの通信チャンネルを使用することができるという特有の作用効果を有する。
【0029】
以上の第1の実施形態においては、各サブキャリア信号の使用の有無を判断するしきい値をビットエラーレート(BER)=10−4としていたが、本発明はこれに限らず、BERを10−4より大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
【0030】
以上の第1の実施形態においては、1次変調に使用する変調方式をPSK及びQAMとしていたが、本発明はこれに限らず、例えばASK(Amplitude Shift Keying)やFSK(Frequency Shift Keying)などの別の変調方式を使用してもよい。
【0031】
第2の実施形態.
図4は、本発明の第2の実施形態に係るケーブルモデム装置の構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係るケーブルモデム装置1Aは、図1の第1の実施形態に係るケーブルモデム装置1に比較して、図4に示すように、フィルタ制御回路18及びフィルタ制御信号生成テーブル19の代わりに、周波数設定情報及び各サブキャリア信号のビットエラーレート(BER)に基づいて、フィルタ制御信号を算出するフィルタ制御回路18Aを備えたことを特徴としている。以下、第1の実施形態との相違点について詳述する。
【0032】
図4において、RF処理回路13内のモデム13aは、高周波通信信号のトレーニング信号を用いて各サブキャリア信号毎にビットエラーレート(BER)を測定し、それらの測定値を周波数設定情報とともにコントローラ17に出力する。コントローラ17は、測定された各サブキャリア信号毎のビットエラーレート(BER)及び周波数設定情報をフィルタ制御回路18Aに出力する。これに応答して、フィルタ制御回路18Aは、入力される周波数設定情報及び各サブキャリア信号のビットエラーレート(BER)に基づいて、詳細後述するように、フィルタ制御信号を算出して、算出したフィルタ制御信号を周波数可変フィルタ12に出力する。これに応答して、周波数可変フィルタ12は、フィルタ制御回路18から入力されるフィルタ制御信号に基づいて、同軸ケーブル20から入力される高周波通信信号を、当該フィルタ制御信号に対応した周波数帯域について帯域通過ろ波した後、RF処理回路13に出力する。
【0033】
次いで、フィルタ制御回路18Aにおけるフィルタ制御信号の算出方法について以下に説明する。第2の実施形態においては、使用する変調方式は例えばOFDM信号のマルチキャリア変調であり、ケーブルモデム装置1Aは起動時に各周波数帯の伝送路状態を調べ、全サブキャリア共通の1次変調を設定する。熱雑音環境下において、ビットエラーレート(BER)=10−4はリードソロモン符号が付加された場合、ほぼエラーフリーと見なせる値である。そこで、各サブキャリア信号の使用の有無を判断するしきい値をビットエラーレート(BER)=10−4とすると、フィルタ制御回路18Aは各サブキャリア信号のビットエラーレート(BER)が10−4より大きいか否かを判断し、10−4より大きいとき、そのサブキャリア信号を減衰させるサブキャリア信号に設定する。
【0034】
次いで、減衰させるサブキャリア信号の減衰量を算出する。希望波の中心周波数、希望波の周波数帯域幅をそれぞれFca,Bwaとし、全サブキャリア信号数、減衰させるサブキャリア信号より高い周波数でビットエラーレート(BER)が10−4以下のサブキャリア信号数、減衰させるサブキャリア信号より低い周波数でビットエラーレート(BER)が10−4以下のサブキャリア信号数をそれぞれNt,Nu,Ndとすると、周波数可変フィルタ12の帯域通過フィルタの上限周波数Fhigh、当該帯域通過フィルタの下限周波数Flowはそれぞれ次式で表される。
【0035】
【数1】

【数2】

【0036】
従って、フィルタ制御信号の中心周波数Fc、周波数帯域幅Bwはそれぞれ次式で表される。
【0037】
【数3】

【数4】

【0038】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、フィルタ制御回路18Aは周波数設定情報及び各サブキャリア信号のビットエラーレート(BER)に基づいて、フィルタ制御信号を生成して周波数可変フィルタ12に出力する。それ故、希望波が隣接する妨害波の影響を受けたり、隣接する妨害波に影響を与えたりする可能性を低くすることができ、これにより、今まで使用できなかった周波数帯域の一部を有効に利用することができ、従来技術に比較して簡単な構成でより多くの通信チャンネルを使用することができるという特有の作用効果を有する。
【0039】
以上の第2の実施形態においては、各サブキャリア信号の使用の有無を判断するしきい値をビットエラーレート(BER)=10−4としていたが、本発明はこれに限らず、ビットエラーレート(BER)を10−4より大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
【0040】
以上の第2の実施形態においては、1次変調に使用する変調方式をPSK及びQAMとしていたが、本発明はこれに限らず、例えばASK(Amplitude Shift Keying)やFSK(Frequency Shift Keying)などの別の変調方式を使用してもよい。
【0041】
第3の実施形態.
図5は、本発明の第3の実施形態に係るケーブルモデム装置の構成を示すブロック図である。第3の実施形態に係るケーブルモデム装置1Bは、図1の第1の実施形態に係るケーブルモデム装置1に比較して、図5に示すように、フィルタ制御回路18及びフィルタ制御信号生成テーブル19の代わりに、表1のうち8PSK、QPSK及びBPSKのみのデータのみを格納するフィルタ制御信号生成テーブルメモリ19Bと、フィルタ制御信号生成テーブルメモリ19Bが接続されたフィルタ制御回路18Bとを備えたことを特徴としている。以下、第1の実施形態との相違点について詳述する。
【0042】
図5において、コントローラ17は、モデム13aにより測定されるトレーニング信号のビットエラーレート(BER)に基づいて、ビットエラーレート(BER)が例えば10−4以上となったとき変調方式を、8PSKからQPSKに変更し、さらに、例えば10−3以上となったときQPSKからBPSKに変更するように適応的に制御するとともに、周波数設定情報をフィルタ制御回路18Bに出力する。これに応答して、フィルタ制御回路18Bは、入力される周波数設定情報に基づいて、フィルタ制御信号生成テーブルメモリ19B内のフィルタ制御信号生成テーブルを参照することにより、周波数設定情報に対応したフィルタ制御信号を検索し、検索して得られたフィルタ制御信号を周波数可変フィルタ12に出力する。これに応答して、周波数可変フィルタ12は、入力される高周波通信信号に対して、フィルタ制御信号に対応した周波数帯域について帯域通過ろ波した後、RF処理回路13に出力する。
【0043】
次いで、コントローラ17及びフィルタ制御回路18Bの処理について以下に説明する。使用する変調方式は例えばOFDM信号のマルチキャリア変調で、各サブキャリア信号はそれぞれ伝送路状況の回線品質(具体的には、ビットエラーレート(BER))に応じて、1次変調の変調方式を8PSKからQPSK、QPSKからBPSKに変更するように適応的に制御する。減衰させるサブキャリア信号は、使用する周波数によって予め設定される。熱雑音環境下において、ビットエラーレート(BER)=10−4をBPSKで満たすには、搬送波対雑音電力比(C/N)=8.5dBが必要となる。なお、ビットエラーレート(BER)=10−4はリードソロモン符号が付加された場合、ほぼエラーフリーと見なせる値である。
【0044】
本実施形態では、1次変調の変調方式の設定を切り替えるしきい値がビットエラーレート(BER)=10−4である場合、ビットエラーレート(BER)≧10−4であるとき、8PSKからQPSK、QPSKからBPSKと1次変調の変調多値数が少なくなるように変更される。最も搬送波対雑音電力比(C/N)が低いときには、1次変調の変調方式はBPSKとなるので、周波数可変フィルタ12はBPSKのしきい値である搬送波対雑音電力比(C/N)=8.5dB以下になるように信号レベルを落とすことでサブキャリア信号が未使用状態になり、使用周波数帯域幅を制限できる。
【0045】
例えば、受信信号レベルが70dBuV、ノイズレベルが20dBuVの場合、搬送波対雑音電力比(C/N)=8.5dB以下を満たすためには、周波数可変フィルタ12により未使用としたいサブキャリアの信号レベルを41.5dB以上落とせばよい。また、モデム13aの送信機側及び受信機側の双方にフィルタを付加する場合は、それぞれ20.75dB以上減衰させるフィルタを付加することでサブキャリア信号が未使用状態になる。従って、周波数可変フィルタ12が上記の特性を満たすようにフィルタ制御信号生成テーブル19Bが生成される。生成されたフィルタ制御信号生成テーブル19Bを参照してフィルタ制御信号を周波数可変フィルタ12に出力し、高周波通信信号を帯域通過ろ波することにより、与妨害や被妨害の影響を大幅に低減することができる。
【0046】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、フィルタ制御回路18Bはフィルタ制御信号生成テーブルメモリ19Bのフィルタ制御信号生成テーブルを用いて、周波数設定情報に基づいてフィルタ制御信号を生成して周波数可変フィルタ12を制御する。それ故、希望波が隣接する妨害波の影響を受けたり、隣接する妨害波に影響を与えたりする可能性を低くすることができ、これにより、今まで使用できなかった周波数帯域の一部を有効に利用することができ、従来技術に比較して簡単な構成でより多くの通信チャンネルを使用することができるという特有の作用効果を有する。
【0047】
以上の第3の実施形態においては、各サブキャリア信号の変調方式の変更を判断するしきい値をビットエラーレート(BER)=10−4としていたが、本発明はこれに限らず、ビットエラーレート(BER)を10−4より大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
【0048】
以上の第3の実施形態においては、1次変調に使用する変調方式をPSK及びQAMとしていたが、本発明はこれに限らず、例えばASK(Amplitude Shift Keying)やFSK(Frequency Shift Keying)などの別の変調方式を使用してもよい。
【0049】
第4の実施形態.
図6は、本発明の第4の実施形態に係るケーブルモデム装置の構成を示すブロック図である。第4の実施形態に係るケーブルモデム装置1Cは、図4の第2の実施形態に係るケーブルモデム装置1Aに比較して、図6に示すように、フィルタ制御回路18Aの代わりに、周波数設定情報及び各サブキャリア信号毎の1次変調設定情報(変調方式を示す)に基づいてフィルタ制御信号を算出するフィルタ制御回路18Cを備えたことを特徴としている。以下、第2の実施形態との相違点について詳述する。
【0050】
図6において、コントローラ17は、RF処理回路13内のモデム13aは、高周波通信信号のトレーニング信号を用いて各サブキャリア信号毎にビットエラーレート(BER)を測定し、これらの測定値と各サブキャリア信号毎の1次変調設定情報をコントローラ17に出力する。コントローラ17は、測定された各サブキャリア信号毎の1次変調設定情報及び周波数設定情報をフィルタ制御回路18Cに出力する。これに応答して、フィルタ制御回路18Cは、入力される周波数設定情報及び各サブキャリア信号の1次変調設定情報に基づいて、詳細後述するように、フィルタ制御信号を算出して、算出したフィルタ制御信号を周波数可変フィルタ12に出力する。これに応答して、周波数可変フィルタ12は、フィルタ制御回路18から入力されるフィルタ制御信号に基づいて、同軸ケーブル20から入力される高周波通信信号を、当該フィルタ制御信号に対応した周波数帯域について帯域通過ろ波した後、RF処理回路13に出力する。
【0051】
次いで、フィルタ制御回路18Cにおけるフィルタ制御信号の算出方法について以下に説明する。第4の実施形態において、使用する変調方式は例えばOFDM信号のマルチキャリア変調であり、ケーブルモデム装置1Cは起動時に各周波数帯の伝送路状態を調べ、各サブキャリア信号の1次変調の変調方式を設定する。
【0052】
図7は、図6の周波数可変フィルタ12の帯域通過特性32Cの一例を示す、周波数に対する相対利得を示す図である。サブキャリア信号の1次変調の変調多値数が、他のサブキャリア信号の1次変調の変調多値数より1/2倍以下のとき、白色雑音ではなく他の信号の妨害の影響によるC/N劣化で1次変調が変化している場合が多い。従って、1次変調の変調多値数が最大のものより1/2倍以下のサブキャリア信号を減衰させるサブキャリア信号に設定する。図7において、一次変調の変調多値数が最大128のとき、一次変調の変調多値数が32以下の5つのサブキャリア信号を減衰させることができる帯域通過特性32Cがフィルタ制御信号により周波数可変フィルタ12に設定される。すなわち、1次変調の変調方式が32QAMである4つのサブキャリア信号と1次変調の変調方式が16QAMの1つのサブキャリア信号が減衰させるサブキャリア信号となる。
【0053】
次いで、減衰させるサブキャリア信号の減衰量を算出する。希望波の中心周波数、希望波の周波数帯域幅をそれぞれFca,Bwaとし、全サブキャリア信号数、減衰させるサブキャリア信号より高い周波数で一次変調の変調多値数が最大のものより1/2倍以下のサブキャリア信号数、減衰させるサブキャリア信号より低い周波数で一次変調の変調多値数が最大のものより1/2倍以下のサブキャリア信号数をそれぞれNt,Nu,Ndとすると、周波数可変フィルタ12の上限周波数Fhigh、周波数可変フィルタ12の下限周波数Flowはそれぞれ次式で表される。
【0054】
【数5】

【数6】

【0055】
従って、フィルタ制御信号の中心周波数Fc、周波数帯域幅Bwはそれぞれ式(3)と式(4)で表される。
【0056】
以上説明したように、第4の実施形態によれば、フィルタ制御回路18Cは周波数設定情報及び各サブキャリア信号の1次変調設定情報に基づいて、フィルタ制御信号を生成して周波数可変フィルタ12のフィルタ特性を制御する。それ故、希望波が隣接する妨害波の影響を受けたり、隣接する妨害波に影響を与えたりする可能性を低くすることができ、これにより、今まで使用できなかった周波数帯域の一部を有効に利用することができ、従来技術に比較して簡単な構成でより多くの通信チャンネルを使用することができるという特有の作用効果を有する。
【0057】
以上の第4の実施形態においては、1次変調に使用する変調方式をPSK,QAMとしていたが、本発明はこれに限らず、別の変調方式例えばASK(Amplitude Shift Keying)やFSK(Frequency Shift Keying)を使用してもよい。
【0058】
以上の第4の実施形態においては、1次変調の変調多値数が最大のものより1/2倍以下のサブキャリア信号を減衰させるサブキャリア信号に設定していたが、本発明はこれに限らず、1/2倍より大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る周波数可変フィルタ回路は、例えばOFDM信号のマルチキャリア変調を用いた通信において、妨害の影響を低減し、複数チャンネルの有効利用を可能とする効果を有し、通信端末装置に付加するフィルタとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るケーブルモデム装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の周波数可変フィルタ12の帯域通過特性の一例を示す、周波数に対する相対利得を示す図である。
【図3】図1の周波数可変フィルタ12に入力されるサブキャリア信号の帯域外輻射成分の一例を示す、周波数に対する相対利得を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るケーブルモデム装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るケーブルモデム装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るケーブルモデム装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6の周波数可変フィルタ12の帯域通過特性の一例を示す、周波数に対する相対利得を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1,1A,1B,1C…ケーブルモデム装置、
12…周波数可変フィルタ、
13…RF処理回路、
13a…モデム、
14…BB処理回路、
15…MAC処理回路、
16…イーサインターフェース、
17…コントローラ、
18,18A,18B,18C…フィルタ制御回路、
19,19B…フィルタ制御信号生成テーブルメモリ、
20…同軸ケーブル、
21…LANケーブル、
30…希望波信号帯域、
31…妨害波信号帯域、
32,32C…周波数可変フィルタの帯域通過特性、
33…信号伝送チャンネルの信号占有周波数帯域、
34…隣接チャンネルの信号占有周波数帯域、
35…帯域外輻射成分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれディジタル変調されて入力される複数のサブキャリア信号からなる高周波通信信号を所定の通過帯域で帯域通過ろ波する周波数可変フィルタを備えた周波数可変フィルタ回路において、
上記高周波通信信号を復調するモデムの設定周波数情報に基づいて、上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする周波数可変フィルタ回路。
【請求項2】
上記制御手段は、上記設定周波数情報及び各サブキャリア信号に共通の1次変調設定情報毎に、設定すべき上記周波数可変フィルタの通過帯域の周波数を格納する第1のテーブルを備え、上記設定周波数情報及び各サブキャリア信号に共通の1次変調設定情報に基づいて、上記第1のテーブルを参照して、隣接妨害波を軽減するように上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御することを特徴とする請求項1記載の周波数可変フィルタ回路。
【請求項3】
上記制御手段は、上記設定周波数情報毎に、設定すべき上記周波数可変フィルタの通過帯域の周波数を格納する第2のテーブルを備え、上記設定周波数情報に基づいて、上記第2のテーブルを参照して、隣接妨害波を軽減するように上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御することを特徴とする請求項1記載の周波数可変フィルタ回路。
【請求項4】
上記制御手段は、上記入力される高周波通信信号の各サブキャリア信号毎に回線品質を測定し、上記設定周波数情報及び上記測定された回線品質に基づいて、隣接妨害波を軽減するように上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御することを特徴とする請求項1記載の周波数可変フィルタ回路。
【請求項5】
上記回線品質はビットエラーレート(BER)であることを特徴とする請求項4記載の周波数可変フィルタ回路。
【請求項6】
上記制御手段は、上記設定周波数情報及び上記入力される高周波通信信号の各サブキャリア信号毎の個別の1次変調設定情報に基づいて、隣接妨害波を軽減するように上記周波数可変フィルタの帯域通過の周波数を設定するように制御することを特徴とする請求項1記載の周波数可変フィルタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−243662(P2007−243662A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64093(P2006−64093)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】