説明

周波数誘導装置、及び、周波数誘導方法

【課題】移動機がフェムトセル等の小セルに移動する際に、小セルに割り当てられた周波数を円滑に捕捉できるように誘導する周波数誘導装置、及び、周波数誘導方法を提供する。
【解決手段】移動機10がフェムトセル#Aからマクロセル#1に移動し位置登録する際に、LMMS40はフェムトセル#Aに割り当てられている周波数F3を示すデータを含む誘導周波数データを誘導周波数データ記憶部41に記憶する。移動機10がマクロセル#2からマクロセル#1に移動し位置登録する際に、LMMS40の誘導周波数データ取得部42は誘導周波数データ記憶部41に記憶しておいた誘導周波数データを取得し、当該誘導周波数データに基づいてフェルトセル#Aに割り当てられている周波数を前記移動機に捕捉させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルに割り当てられた周波数を捕捉できるように移動機を誘導する周波数誘導装置、及び、周波数誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動通信ネットワークでは、複数の基地局(BTS:Base Transceiver Station)を各地域に設置し、各基地局が形成する電波到達エリア(「セル」と呼ばれる)を複数配置することで、移動機がセルを跨って移動する場合にも連続した無線通信を可能としている。移動機は、移動したセルに設置された基地局が送信する電波の周波数を捕捉し、当該セルへの位置登録を行うための位置登録信号を送信することで、当該セルに在圏した状態となり当該セルに設置された基地局を介した通信が可能となる。
【0003】
近年では、上記従来型の半径が数キロメートル程度の大きいセル(以下「マクロセル」又は「Macro Cell」という)の他に、比較的狭い小セルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。その中でも、半径が数メートル程度の極めて小規模なセルはフェムトセル(Femto Cell)と呼ばれ、実用化が進められている。フェムトセルを形成する基地局(以下「フェムト基地局:Femto BTS」ともいう)は、家庭内や小規模オフィスでの設置が想定された基地局である。このようなフェムトセルの実用化にあたって、移動機がフェムトセル内に移動した際に、スムーズにフェムトセルの周波数を移動機に補足させ、フェムト基地局を介した通信を可能とする制御を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−263632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在マクロセルに割り当てられる周波数帯は、図9に示すように、2000Mhz帯、1700Mhz帯、800Mhz帯の3種類が存在し、さらに2000Mhz帯の中に2種類の周波数帯が存在する。また、フェムトセルに割り当てられる周波数帯は2000MHz帯が存在し、2000MHz帯の中に4種類の周波数帯が存在する。
移動機は、移動先のセルの周波数を捕捉する際に、電池の消耗を避けるために過去に在圏したことのある周波数のみをサーチし、過去に在圏したことのある周波数が複数存在した場合には電波強度の強いものを捕捉する傾向がある。このため、フェムトセルに割り当てられている周波数が移動機が過去に在圏したことのない周波数であったり、フェムトセルのエリアを包含するマクロセルの電波強度が強かったりする場合には、移動機はフェムトセルに割り当てられた周波数を円滑に捕捉できないという問題点があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、移動機がフェムトセル等の小セルに移動する際に、小セルに割り当てられた周波数を円滑に捕捉できるように誘導する周波数誘導装置、及び、周波数誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の周波数誘導装置は、移動機との通信可能なエリアの大きさが異なる大セルと小セルとを含む移動通信ネットワークにおいて、移動機が前記小セルに移動する際に該小セルに割り当てられている周波数捕捉の誘導を行うことにより前記移動機を前記小セルに在圏させる周波数誘導装置であって、前記小セルに割り当てられている周波数を示すデータを含む誘導周波数データを記憶する誘導周波数データ記憶手段と、移動機が前記小セルに移動する際に、該小セルに対応する誘導周波数データを前記誘導周波数データ記憶手段から取得する誘導周波数データ取得手段と、前記誘導周波数データ取得手段により取得された誘導周波数データに基づいて、前記小セルに割り当てられている周波数を前記移動機に捕捉させる第1の周波数誘導手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、周波数誘導装置は、小セルに割り当てられている周波数を示すデータを含む誘導周波数データを記憶し、移動機が前記小セルに移動する際に前記誘導周波数データを取得し、該取得された誘導周波数データに基づいて前記小セルに割り当てられている周波数を前記移動機に捕捉させるため、移動機が小セルに移動する際に、該小セルに割り当てられた周波数を円滑に捕捉できるように移動機を誘導することができる。
【0008】
請求項2に記載の周波数誘導装置は、請求項1において、前記移動機が前記小セルから前記大セルに在圏する際に前記移動機から送信される位置登録信号には、前記小セルに割り当てられている周波数を示すデータが含まれ、前記周波数データ記憶手段は、前記移動機が前記小セルから前記大セルに在圏する際に前記移動機から送信されてくる位置登録信号に基づいて、前記誘導周波数データを記憶することを特徴とする。
本発明によれば、移動機が小セルから大セルに在圏する際の位置登録信号を利用して、誘導周波数データを記憶することができる。
【0009】
請求項3に記載の周波数誘導装置は、請求項1又は2において、前記移動機が前記小セルに在圏しているか否かを判定する在圏判定手段と、前記在圏判定手段により前記移動機が前記小セルに在圏していないと判定された場合、前記小セルに割り当てられている可能性がある周波数を順次前記移動機に捕捉させるように試みる第2の周波数誘導手段とをさらに備えたことを特徴とする。
本発明によれば、周波数誘導装置は、移動機が小セルに在圏していない場合には、前記小セルに割り当てられている可能性がある周波数を順次前記移動機に捕捉させるように試みるため、移動機が小セル内に存在するにもかかわらず小セルに割り当てられている周波数の捕捉ができていない場合に、移動機を小セルに在圏させることができる。
【0010】
請求項4に記載の周波数誘導装置は、請求項3において、前記第2の周波数誘導手段は、前記誘導周波数データ記憶手段に記憶された誘導周波数データで示される周波数を優先的に捕捉させるように試みることを特徴とする。
本発明によれば、誘導周波数データで示される周波数が、小セルに割り当てられた周波数である可能性が高いため、周波数が捕捉されるまでの時間を短縮することができる。
【0011】
請求項5に記載の周波数誘導装置は、請求項3又は4において、前記在圏判定手段は、ユーザの操作に基づく特定の信号を前記移動機から受信した場合に、該移動機が前記小セルに在圏しているか否かを判定することを特徴とする。
本発明によれば、ユーザは、小セル内に居る時に特定の信号を送信するための操作を行うことで、移動機が小セルに在圏しており小セルを形成する基地局を介して通信していることを確認することができる。一方、移動機が小セルに在圏していない場合には、移動機を小セルに在圏させ、小セルを形成する基地局を介した通信を行うことができる。
【0012】
請求項6に記載の周波数誘導装置は、請求項1から5の何れか1項において、前記大セルは前記小セルに包含されていることを特徴とする。
本発明によれば、大セルは前記小セルに包含されている場合にも、移動機を大セルではなく小セルに在圏するように誘導することができる。
請求項7に記載の周波数誘導装置は、請求項1から6の何れか1項において、前記小セルは、フェムトセルであることを特徴とする。
本発明によれば、フェムトセルを形成する基地局を自宅等に設置したユーザに対して、フェムトセルによるサービスの提供を保障することできる。
【0013】
請求項8に記載の周波数誘導方法は、移動機との通信可能なエリアの大きさが異なる大セルと小セルとを含む移動通信ネットワークにおいて周波数誘導装置が前記小セルに割り当てられている周波数捕捉の誘導を移動機に対して行う周波数誘導方法であって、前記小セルに割り当てられている周波数を示すデータを含む誘導周波数データを記憶する誘導周波数データ記憶ステップと、移動機が前記小セルに移動する際に、前記誘導周波数データ記憶ステップにおいて記憶した誘導周波数データを取得する誘導周波数データ取得ステップと、前記誘導周波数データ取得ステップにおいて取得された誘導周波数データに基づいて、前記小セルに割り当てられている周波数を前記移動機に捕捉させる周波数誘導ステップとを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、周波数誘導装置は、小セルに割り当てられている周波数を示すデータを含む誘導周波数データを記憶し、移動機が前記小セルに移動する際に前記誘導周波数データを取得し、該取得された誘導周波数データに基づいて前記小セルに割り当てられている周波数を前記移動機に捕捉させるため、移動機が小セルに移動する際に、該小セルに割り当てられた周波数を円滑に捕捉できるように移動機を誘導することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、周波数誘導装置は、小セルに割り当てられている周波数を示すデータを含む誘導周波数データを記憶し、移動機が前記小セルに移動する際に前記誘導周波数データを取得し、該取得された誘導周波数データに基づいて前記小セルに割り当てられている周波数を前記移動機に捕捉させるため、移動機が小セルに移動する際に、該小セルに割り当てられた周波数を円滑に捕捉できるように移動機を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る通信ネットワークの全体構成を示す図である。
【図2】同実施形態に係るLMMSの機能構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態に係る誘導周波数データ記憶部に記憶される誘導周波数データの一例を示す図である。
【図4】同実施形態に係るLMMSが実行する誘導周波数データの記憶手順及びフェムトセルに割り当てられている周波数の導出手順を示すフローチャートである。
【図5】同実施形態に係るLMMSが実行する誘導周波数データの記憶手順及びフェムトセルに割り当てられている周波数の導出手順の説明図である。
【図6】同実施形態に係る、ユーザが在宅中等でフェムトセル内に居る時に、ユーザが特番発信を行った時のLMMSの動作を示すフローチャートである。
【図7】同実施形態に係る、ユーザが在宅中等でフェムトセル内に居る時に、ユーザが特番発信を行った時のLMMSの動作を示すフローチャートである。
【図8】同実施形態に係る、ユーザが在宅中等でフェムトセル内に居る時に、ユーザが特番発信を行った時のLMMSの動作を示す説明図である。
【図9】マクロセル及びフェムトセルに割り当てられている周波数帯の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等の構成要素は同一符号によって示されている。
図1は、本発明の実施形態に係る移動通信ネットワークの全体構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る移動通信ネットワークは、移動機10と、半径数キロメートル程度のマクロセル(Macro Cell)を形成するマクロ基地局20a,20bと、半径数メートル程度のフェムトセル(Femto Cell)を形成するフェムト基地局30と、移動機10を利用するユーザの加入者情報や在圏情報を管理するHLR(Home Location Register)50と、配下に存在する移動機10の加入者情報及び在圏情報をHLR50から取得して管理するLMMS(Local Multimedia Switching System:加入者交換機)40と、配下の基地局20a,20b、30を管理及び制御するRNC(Radio Network Controller:無線網制御装置)60とを含んで構成される。移動通信ネットワークを構成するこれらの各装置は、実際には複数存在する。これらの各装置は、ハードウェアとして、図示せぬ、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)と、プログラムやデータ等のソフトウェアが記憶されるRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等の記憶装置と、通信を制御する通信インターフェースとを含んで構成される。
【0018】
本実施形態では、図1に示すように、マクロ基地局20aが形成するマクロセルを「MacroCell(マクロセル)#1」、マクロ基地局20bが形成するマクロセルを「MacroCell#2」、フェムト基地局30が形成するフェムトセルを「FemtoCell(フェムトセル)#A」と呼ぶ。FemtoCell#Aは、MacroCell#1に包含されている。
【0019】
また、各セルには、移動機10の位置登録が行われる単位地域を示すRAI(Routing Area Identification)が割り当てられている。ここでは、「MacroCell#1」には「RAI#1」が割り当てられ、「MacroCell#2」には「RAI#2」が割り当てられ、「FemtoCell#A」には「RAI#A」が割り当てられているものとする。
フェムト基地局30は、家庭内に設置されており、図示せぬ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線や光ファイバ回線等の固定通信回線に接続されており、IP(Internet Protocol)通信網やインターネット等を経由して移動通信ネットワークに接続される。
【0020】
(LMMSの構成)
図2は、LMMS40の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、LMMS40は、誘導周波数データ記憶部41と、誘導周波数データ取得部42と、第1の周波数誘導部43と、在圏判定部44と、第2の周波数誘導部45とを備えている。誘導周波数データ記憶部41はハードディスクに設けられたデータベースで実現され、誘導周波数データ取得部42と、第1の周波数誘導部43と、在圏判定部44と、第2の周波数誘導部45とは、LMMS40のCPUがプログラムに従って処理を実行することにより実現される。
【0021】
誘導周波数データ記憶部41は、フェムトセルに割り当てられている周波数(以下「フェムトセルの周波数」ともいう)を示すデータを含む誘導周波数データを記憶する。図3は、誘導周波数データ記憶部41に記憶される誘導周波数データの一例を示す図である。同図に示すように、誘導周波数データは、RAIの識別子と、当該RAIに割り当てられているマクロセルの識別子と、当該マクロセルに包含されるフェムトセルの識別子と、当該フェムトセルの周波数とを含む。
【0022】
移動機10がフェムトセルからマクロセルに在圏する際に移動機10から送信される位置登録信号には、当該フェムトセルの周波数を示すデータが含まれており、前記誘導周波数データは、移動機10がフェムトセルからマクロセルに在圏する際に移動機10から送信される位置登録信号に基づいて記憶される。
なお、位置登録信号には位置登録先のセルの周波数を示すデータが含まれるようにしてもよい。この場合には、HLR50は受信した位置登録信号に基づいて各セルに割り当てられている周波数を示すデータを記憶しておき、誘導周波数データの登録時に、HLR50がLMMS40にフェムトセルの周波数を示すデータを提供することとなる。
【0023】
また、前記誘導周波数データは、位置登録信号を利用して登録する以外に、オペレータ等の入力によって予め登録しておくこともできる。
誘導周波数データ取得部42は、マクロセルに在圏している移動機10がフェムトセルに移動する際に、当該フェムトセルに対応する誘導周波数データを誘導周波数データ記憶部41から取得する。
第1の周波数誘導部43は、誘導周波数データ取得部42により取得された誘導周波数データからフェムトセルの周波数を取得し、使用周波数をフェムトセルの周波数に切替えるための制御信号をRNC60を介して移動機10に送信することにより、フェムトセルの周波数を移動機10に捕捉させる。なお、周波数を移動機10に捕捉させる手法は、3GGP等で標準化されている公知の手法を用いることができる。
【0024】
在圏判定部44は、ユーザが予め定められた特定の番号(以下「特番」という)を移動機10に入力して発信操作を行う等の、特定のユーザ操作が移動機10に対して行われることにより、ユーザ操作に基づく特定の信号を移動機10から受信した場合に、移動機10がフェムトセルに在圏しているか否か、すなわち、移動機10がマクロ基地局20a,20bではなく、フェムト基地局30を介して通信可能な状態となっているか否かを判定する。
【0025】
第2の周波数誘導部45は、在圏判定部44により移動機10がフェムトセルに在圏していないと判定された場合、フェムトセルに割り当てられている可能性がある周波数を移動機10に順次捕捉させるように試みる。この際に、誘導周波数データ記憶部41に前記フェムトセルに関する誘導周波数データが記憶されている場合には、当該誘導周波数データで示されるフェムトセルの周波数を優先的に捕捉させるように試みる。
【0026】
(動作例1)
次に、図4に示すフローチャート及び図5に示す図を参照して、LMMS40が実行する誘導周波数データの記憶手順及び周波数の導出手順を説明する。ここでは、フェムトセル#Aには周波数F3が割り当てられているものとする。
(記憶手順)
ユーザの出勤時に、ユーザが移動機10を携帯してフェムトセル#Aからマクロセル#1に移動すると、移動機10はマクロセル#1の周波数を捕捉する。そして、移動前のフェムトセル#Aに割り当てられている周波数F3を示すデータを含む、マクロセル#1への位置登録信号を送信する(図4及び図5のステップS101)。
【0027】
HLR50は、移動機10からの位置登録信号を受信すると、移動機10がフェムトセル#Aからマクロセル#1に移動したことから、マクロセル#1のエリア内にフェムトセル#Aが存在すると認識する。そして、移動機10がRAI#1に設けられているマクロセル#1に位置登録したこと、マクロセル#1がフェムトセル#Aに包含されていること、及びフェムトセル#Aの周波数F3等を含む情報を、移動機10の在圏情報として記憶する(図4及び図5のステップS102)。そして、HLR50は、当該在圏情報をLMMS40に送信する。
【0028】
LMMS40は、HLR50から移動機10の在圏情報を受信すると、当該在圏情報を記憶するとともに、RAI#1に対応する誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されているか否かを判定する(図4のステップS103)。RAI#1に対応する誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されていなかった場合には、LMMS40は、受信した在圏情報に含まれる図3に示すデータを、誘導周波数データとして誘導周波数データ記憶部41に記憶する(図4のステップS104)。一方、RAI#1に対応する誘導周波数データが記憶されていた場合には、当該記憶されている誘導周波数データを、図3に示す最新のデータで上書き保存する(図4のステップS105)。
【0029】
(誘導手順)
次に、図4及び図5を参照して、ユーザの帰宅時に、フェムトセル#Aに割り当てられている周波数を導出する手順について説明する。
移動機10を携帯したユーザがマクロセル#2からマクロセル#1に移動すると、移動機10は、マクロセル#1への位置登録信号を送信する(ステップS106)。
LMMS40は、移動機10からの位置登録信号を受信すると、移動機10がフェムトセル#Aに近づいたことを認識し、フェムトセル#Aの周波数への誘導を実施する。具体的には、LMMS40は、マクロセル#1が設けられているRAI#1に対応する誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されているか否かを判定する(ステップS107)。
【0030】
RAI#1に対応する誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されている場合には、誘導周波数データ取得部42は、RAI#1に対応する誘導周波数データから、フェムトセル#Aに割り当てられている周波数を取得する。ここでは、図3に示す誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されており、誘導周波数データ取得部42は、当該誘導周波数データに含まれる周波数F3を取得する(ステップS108)。
そして、第1の周波数誘導部43は、使用周波数をF3に切り替えるための制御信号をRNC60を介して移動機10に送信することにより、周波数F3を移動機10に捕捉させるよう誘導する。
【0031】
なお、ステップS106において、RAI#1に対応する誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されていなかった場合には、処理を終了する。
このように、移動機10がフェムトセル#Aからマクロセル#1に在圏する際に誘導周波数データを記憶し、移動機10がフェムトセル#Aに移動する際に、記憶しておいた誘導周波数データに基づいてフェムトセル#Aの周波数を移動機10に捕捉させるため、フェムトセル#Aがマクロセル#1に包含されている場合にも、マクロセル#1の電波の方が強い場合にも、フェムトセル#Aの周波数をスムーズに捕捉できるように移動機10を誘導することができる。
【0032】
(動作例2)
次に、図6、図7及び図8に示すフローチャートを参照して、ユーザが在宅中等でフェムトセル#A内に居る時に、移動機10がフェムトセル#Aに在圏しているか否か、すなわち、移動機10がフェムト基地局30を介して通信を行えているか否かを確認するために、ユーザが特番発信を行った時のLMMS40の動作について説明する。ここでは、フェムトセル#Aに割り当て可能な周波数は、F1、F2、F3、F4であるものとする。
【0033】
まず、ユーザは、移動機10を操作して特番発信の指示を行う。これにより、移動機10は特番を含む発信信号を送信する(図6のステップS201)。
LMMS40の在圏判定部44は、移動機10からの発信信号を受信すると、記憶されている移動機10の在圏情報に基づいて、移動機10がフェムトセル#Aに在圏しているかマクロセル#1に在圏しているかを判定する(ステップS202)。
フェムトセル#Aに在圏していると判定した場合には、処理を終了する(ステップS203)。
【0034】
一方、マクロセル#1に在圏していると判定した場合には、LMMS40の第2の周波数誘導部45は、移動機10をフェムトセル#Aに在圏させるための処理を行う。具体的には、第2の周波数誘導部45は、まず、移動機10が存在する地域に対応する誘導周波数データが、誘導周波数データ記憶部41に記憶されているか否かを判定する(ステップS204)。
前記誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されていなかった場合には、図8に示すように、LMMS40の第2の周波数誘導部45は、F1、F2、F3、F4の順で、周波数が捕捉できるまで周波数の捕捉指示を行う。
【0035】
具体的には、まず、第2の周波数誘導部45は、今までに周波数F1を指定してF1の捕捉を試みたかを判定する(図6のステップS205)。指定済みの場合にはステップS209に進み、指定済みでない場合には指定周波数をF1として周波数捕捉指示の信号をRNC60を介して移動機10に送信する(ステップS206)。そして、第2の周波数誘導部45は、位置登録待ちタイマを設定し、移動機10から位置登録要求信号が送信されてくるのをX秒(例えば10秒)間待つ(ステップS207)。X秒以内に移動機10から位置登録信号が送信されてきたか否かを判定し(ステップS208)、X秒以内に位置登録信号が送信されてきたことにより、移動機10が周波数F1を捕捉してフェムトセル#Aに在圏できたと判定された場合には、処理を終了する(ステップS221)。
【0036】
一方、X秒以内に移動機10から位置登録信号が送信されずタイマが満了した場合には、移動機10が周波数F1を捕捉できず、フェムトセル#Aに在圏できなかったと判定し、ステップS209に進む。
そして、以降、周波数F2、F3、F4についても、ステップS205〜S208と同様の手順で、移動機10が周波数を捕捉できるまで、周波数の捕捉を試みる。
一方、ステップS204において、移動機10が存在する地域に対応する誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されていた場合には、第2の周波数誘導部45は、当該誘導周波数データから周波数を取得する。ここでは、図3に示す、フェムトセル#Aが包含されている地域RAI#1に対応する誘導周波数データが記憶されており、第2の周波数誘導部45はF3を取得したものとする。
【0037】
第2の周波数誘導部45は、周波数をF3に指定し(図7のステップS301)、ステップS207〜S208での手順と同様の手順で、周波数F3を移動機10に捕捉させるように試みる(ステップS302、S303)。
タイマを設定してからX秒以内に移動機10から位置登録信号を受信することにより、移動機10が周波数F3の捕捉に成功したと判定した場合には、処理を終了する(ステップS316)。一方、X秒以内に位置登録信号を受信しなかった場合には、ステップS205〜S208での手順と同様の手順で、今までに指定していない周波数の捕捉を、周波数の捕捉が成功するまで順次試みる(ステップS304〜S315)。
【0038】
以上のような特番発信によるフェムトセル#Aの周波数誘導処理を行うことで、移動機10がフェムトセル#Aに在圏していない場合には、当該フェムトセル#Aに割り当てられている可能性がある周波数F1、F2、F3、F4を移動機10に順次捕捉させるように試みるため、移動機10がフェムトセル#A内に存在するにもかかわらずフェムトセル#Aの周波数の捕捉ができていない場合に、移動機10をフェムトセル#Aに在圏させることができる。また、例えば、フェムトセル#Aが存在する場所の近くに新しい建物やアンテナが設置された等で、フェムトセル#Aの周波数が変化した場合にも、移動機10にフェムトセル#Aの周波数を捕捉させることができる。したがって、ユーザが自宅等にフェムト基地局30を設置したにも関わらず、フェムトセル#Aに在圏できず、フェムト基地局30を介した通信を行うことができないという不具合を解消することができる。
【0039】
また、移動機10が存在する地域に対応する誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されている場合には、当該誘導周波数データで示される周波数がフェムトセルの周波数である可能性が高いため、当該周波数を優先して捕捉させることで、周波数が捕捉されるまでの時間を短縮することができる。
なお、移動機10からの特番発信を処理の契機とせずに、LMMS40が周期的に移動機10が存在する地域を判定し、移動機10がフェムトセルのエリアに存在すると判定した場合に、図6に示すステップS202以降の処理を行ってもよい。
【0040】
また、誘導周波数データが誘導周波数データ記憶部41に記憶されていなかった場合には、第2の周波数誘導部45は、F1、F2、F3、F4の順で周波数の捕捉指示を行うとして説明したが、補足指示を行う周波数の順番はこれに限定されず、例えば、ランダムに順番を選択してもよいし、過去に捕捉した回数の多い周波数から捕捉指示を行ってもよい。
【0041】
なお、上述した実施形態では、本発明に係る周波数誘導装置の機能はLMMS40が備えているとして説明したが、これに限定されることはなく、上述したLMMS40が備える機能は、複数の他の装置に分散して配置されていてもよい。また、LMMS40が備える機能と、HLR50が備える機能と、RNC60が備える機能とを、1つの装置に配置してもよい。
また、上述した実施形態では大セルをマクロセル、小セルをフェムトセルとして説明したが、これに限らず、小セルは大セルよりも小さいセルであればよい。また、上述した実施形態では、小セルは大セルに包含されているとして説明したが、これに限らず、一部の領域が重なっていてもよいし、隣接しているだけでもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 移動機
20a,20b マクロ基地局
30 フェムト基地局
40 LMMS
41 誘導周波数データ記憶部
42 誘導周波数データ取得部
43 第1の周波数誘導部
44 在圏判定部
45 第2の周波数誘導部
50 HLR
60 RNC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機との通信可能なエリアの大きさが異なる大セルと小セルとを含む移動通信ネットワークにおいて、移動機が前記小セルに移動する際に該小セルに割り当てられた周波数捕捉の誘導を行うことにより前記移動機を前記小セルに在圏させる周波数誘導装置であって、
前記小セルに割り当てられている周波数を示すデータを含む誘導周波数データを記憶する誘導周波数データ記憶手段と、
移動機が前記小セルに移動する際に、該小セルに対応する誘導周波数データを前記誘導周波数データ記憶手段から取得する誘導周波数データ取得手段と、
前記誘導周波数データ取得手段により取得された誘導周波数データに基づいて、前記小セルに割り当てられている周波数を前記移動機に捕捉させる第1の周波数誘導手段と
を備えたことを特徴とする周波数誘導装置。
【請求項2】
前記移動機が前記小セルから前記大セルに在圏する際に前記移動機から送信される位置登録信号には、前記小セルに割り当てられている周波数を示すデータが含まれ、
前記周波数データ記憶手段は、前記移動機が前記小セルから前記大セルに在圏する際に前記移動機から送信されてくる位置登録信号に基づいて、前記誘導周波数データを記憶することを特徴とする請求項1に記載の周波数誘導装置。
【請求項3】
前記移動機が前記小セルに在圏しているか否かを判定する在圏判定手段と、
前記在圏判定手段により前記移動機が前記小セルに在圏していないと判定された場合、前記小セルに割り当てられている可能性がある周波数を前記移動機に順次捕捉させるように試みる第2の周波数誘導手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の周波数誘導装置。
【請求項4】
前記第2の周波数誘導手段は、
前記誘導周波数データ記憶手段に記憶された誘導周波数データで示される周波数を優先的に捕捉させるように試みることを特徴とする請求項3に記載の周波数誘導装置。
【請求項5】
前記在圏判定手段は、ユーザの操作に基づく特定の信号を前記移動機から受信した場合に、該移動機が前記小セルに在圏しているか否かを判定することを特徴とする請求項3又は4に記載の周波数誘導装置。
【請求項6】
前記大セルは前記小セルに包含されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の周波数誘導装置。
【請求項7】
前記小セルは、フェムトセルであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の周波数誘導装置。
【請求項8】
移動機との通信可能なエリアの大きさが異なる大セルと小セルとを含む移動通信ネットワークにおいて周波数誘導装置が前記小セルに割り当てられた周波数捕捉の誘導を移動機に対して行う周波数誘導方法であって、
前記小セルに割り当てられている周波数を示すデータを含む誘導周波数データを記憶する誘導周波数データ記憶ステップと、
移動機が前記小セルに移動する際に、前記誘導周波数データ記憶ステップにおいて記憶した誘導周波数データを取得する誘導周波数データ取得ステップと、
前記誘導周波数データ取得ステップにおいて取得された誘導周波数データに基づいて、前記小セルに割り当てられている周波数を前記移動機に捕捉させる周波数誘導ステップと
を備えたことを特徴とする周波数誘導方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19149(P2011−19149A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163424(P2009−163424)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】