説明

周辺画像表示装置

【課題】
撮像される画像同士の位置関係と、さらに、撮像される物体と建設用機械の上部旋回体の方向または下部走行体の前進方向との位置関係と、に関する情報を的確に得ることができる周辺画像表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
建設用機械の周囲を撮像し、表示手段3は、建設用機械を基準とした環状画像31と、パノラマ画像32と、パノラマ画像32の一部分を切り出した切出し画像33とを同時に表示し、切出し画像33の切出し位置を定める枠状画像A1,A2を環状画像31上及びパノラマ画像32上に重ねて表示させ、建設用機械の上部旋回体の方向を指示する上部旋回体指示画像311,321,331と、下部走行体の前進方向を示す前進方向指示画像313,323,333と、を少なくとも環状画像31またはパノラマ画像32または切出し画像33のいずれかに表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルカー等の建設用機械に搭載され、建設用機械の周囲の画像を撮像し、周辺画像を表示する周辺画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明の周辺画像表示装置が搭載されるような建設用機械は、無限軌道(以下、クローラと記す)等によって走行可能な下部走行体を有し、その下部走行体上に上部旋回体が旋回可能なように設置されている。上部旋回体は、操縦者が搭乗する運転室と、掘削作業などを行うフロント作業機とを備えている。運転室には、操縦者が周囲を確認できるように、大きな窓を設けているが、操縦者からの死角となる範囲が存在する。そこで、死角となる範囲の確認を行うため、上部旋回体に撮像カメラを設置し、この撮像カメラで撮像した画像を運転室内の表示器に表示させ、作業の障害となる物体を監視できるようにした画像表示装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
しかしながら、上部旋回体の旋回角度に関係なく、下部走行体の前進/後進が操作されるため、操縦者が建設用機械内で作業していると、上部旋回体と下部走行体との相対的な位置関係がわからなくなり、例えば、下部走行体の前進方向に対して上部旋回体が180度旋回している場合、下部走行体を前進させるつもりが、実際は建設用機械が後進してしまうおそれがあった。
【0004】
このような問題を鑑み、本願出願人は、特許文献2の監視装置を開示している。この監視装置は、建設用機械の周辺を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した画像を表示する表示手段と、前記上部旋回体に対する前記下部走行体の角度を検出し、角度データを出力する角度検出手段と、前記角度データに基づいて前記下部走行体を模した画像を前記表示器に表示させる制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記下部走行体の前進方向を示すマークを前記表示器に表示させるものである。
【0005】
また、本願出願人は、全方位撮像手段の撮像素子が出力した環状画像からなる撮像画像を画像処理回路によって、全方位を示すパノラマ画像や全方位の一部を切り出してなる切出し画像等に変換し、表示器に表示させる全方位撮像装置を提案している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−163370号公報
【特許文献2】特開2009−197456号公報
【特許文献3】特開2007−81925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、建設用機械の全周囲の画像である環状画像またはパノラマ画像を表示し、その一部を切出し画像として表示する場合、切出し画像が環状画像またはパノラマ画像のどの方位のどの部分にあたるか認識できず、さらには切出し画像の方向と上部旋回体の向いている方向または下部走行体の前進方向との相対関係が認識しづらく、操縦者が得たい情報を直感的に得ることができなかった。
【0008】
そこで本発明は、前述の問題点に着目し、撮像される画像同士の位置関係と、さらに、撮像される物体と建設用機械の上部旋回体の方向または下部走行体の前進方向との位置関係と、に関する情報を的確に得ることができる周辺画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、建設用機械の周囲を撮像し、前記建設用機械を基準とした環状画像と、パノラマ画像と、前記パノラマ画像の一部分を切り出した切出し画像と、を同時に表示手段に表示し、切出し画像の切出し位置を定める枠状画像を前記環状画像上及び前記パノラマ画像上に重ねて表示させ、建設用機械の上部旋回体の方向を指示する上部旋回体指示画像と、前記下部走行体の前進方向を示す前進方向指示画像と、を前記環状画像または前記パノラマ画像または前記切出し画像のいずれかに表示させること、をその要旨とする。
【0010】
本発明は、前述した課題を解決するため、第1の発明は、下部走行体及び上部旋回体を有する建設用機械に搭載され、前記建設用機械の周囲を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮像データを前記建設用機械を基準とした環状画像及びパノラマ画像並びに前記パノラマ画像の一部分を切り出した切出し画像に変換する制御手段と、前記環状画像と前記パノラマ画像と前記切出し画像とを同時に表示する表示手段と、前記制御手段に操作信号を出力する操作手段と、を備え、前記制御手段は、前記切出し画像の切出し位置を定める枠状画像を前記環状画像上及び前記パノラマ画像上に重ねて表示させるとともに、前記操作手段の操作に基づいて、前記枠状画像を前記環状画像及び前記パノラマ画像の範囲内にて移動可能とし、前記枠状画像の移動に連動し、前記切出し画像を切替えるものであり、斯かる構成により、切出し画像が環状画像とパノラマ画像のどの部分に位置するのか認識でき、建設用機械と撮像される物体との位置関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0011】
また、第2の発明では、前記制御手段は、前記上部旋回体の旋回角度情報を入力し、前記環状画像に前記下部走行体の前進方向を示す第1前進方向指示画像を表示させる、または前記パノラマ画像に前記下部走行体の前進方向を示す第2前進方向指示画像を表示させる、または前記枠状画像が前記下部走行体の前進方向にあったとき、前記切出し画像に前記下部走行体の前進方向を示す第3前進方向指示画像を表示させるものであり、斯かる構成により、建設用機械の下部走行体の前進方向と切出し画像との位置関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0012】
また、第3の発明では、前記制御手段は、前記上部旋回体の方向を示す第1上部旋回体指示画像を前記環状画像に表示させるものであり、斯かる構成により、建設用機械の下部走行体の方向と上部旋回体の方向とを環状画像にて認識することができ、建設用機械と環状画像に表示される物体との方位関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0013】
また、第4の発明では、前記制御手段は、前記上部旋回体の方向を示す第2上部旋回体指示画像を前記パノラマ画像に表示させるものであり、斯かる構成により、建設用機械の下部走行体の方向と上部旋回体の方向とをパノラマ画像にて認識することができ、建設用機械とパノラマ画像に表示される物体との方位関係や距離関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0014】
また、第5の発明では、前記制御手段は、前記枠状画像が前記上部旋回体の方向にあったとき、前記切出し画像に前記上部旋回体の方向を示す第3上部旋回体指示画像を表示させるものであり、斯かる構成により、建設用機械の下部走行体の方向と上部旋回体の方向とを切出し画像にて詳細に認識することができ、建設用機械と切出し画像に表示される物体との方位関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0015】
また、第6の発明では、前記第2前進方向指示画像は、前記下部走行体の幅に基づく、奥行きのある画像からなるものであり、斯かる構成により、建設用機械とパノラマ画像に表示される物体との方位関係に加え、表示される物体との距離に関する情報を的確に得ることができ、下部走行体の幅に関連づけることで、物体の大きさや、物体同士の間隔の広さを認識することができる。
【0016】
また、第7の発明では、前記第1上部旋回体指示画像は、前記環状画像の中心部に前記建設用機械を示す車両画像で表示されるものであり、斯かる構成により、建設用機械の上部旋回体の方向を環状画像にて認識することができ、建設用機械と環状画像に表示される物体との方位関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0017】
また、第8の発明では、前記撮像手段は、全方位カメラであり、前記制御手段は、前記全方位カメラからの撮像データに基づいて、前記環状画像を生成するものである。
【0018】
また、第9の発明では、前記撮像手段は、複数のカメラであり、前記制御手段は、前記複数のカメラからの撮像データに基づいて、前記環状画像を生成するものであり、第8,9の発明の構成により、建設用機械の周囲の画像を容易に撮像することができる。
【0019】
また、第10の発明では、前記制御手段は、前記枠上画像の内部もしくは前記枠状画像の周辺に上下左右のカーソル表示を表示し、前記操作手段にて前記枠状画像が移動されるとき、前記操作手段にて操作された方向の前記カーソル表示の色彩を変化させるものであり、斯かる構成により、操作が実行されたか、または操作がなされた方向を容易に認識することができ、枠状画像の移動操作性を向上させることができる。
【0020】
また、第11の発明では、前記操作手段は、タッチパネル式入力手段からなるものであり、斯かる構成により、表示手段に同時に表示される環状画像やパノラマ画像に触れることで容易に枠状画像を移動することができる。
【発明の効果】
【0021】
撮像される画像同士の位置関係と、さらに、撮像される物体と建設用機械の上部旋回体の方向または下部走行体の前進方向との位置関係と、に関する情報を的確に得ることができる周辺画像表示装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における周辺画像表示装置のブロック図である。
【図2】上記発明における全方位カメラの構成図である。
【図3】上記発明の周辺画像表示装置における表示手段の表示例を示す図である。
【図4】上記発明の周辺画像表示装置における表示の変形例を表した図であり、(a),(b)は、枠状画像の変形例を表す図であり、(c),(d)は、上部旋回体指示画像の変形例を表す図である。
【図5】上記発明の周辺画像表示装置における第2前進方向指示画像の変形例を示す図である。
【図6】上記発明の周辺画像表示装置における中心画像の変形例を示す図である。
【図7】上記発明の周辺画像表示装置における切出し画像の説明図であり、(a)は第3前進方向画像を表す図であり、(b)は上部旋回体方位情報画像と前進方向情報画像との表示例を示す図である。
【図8】上記発明の環状画像上を(a1)(a2)タッチ操作した際の枠状画像の移動を時系列に説明した図であり、(b1)(b2)はフリック操作した際の枠状画像の移動を時系列に説明した図である。
【図9】上記発明のパノラマ画像上を(a1)(a2)タッチ操作した際の枠状画像の移動を時系列に説明した図であり、(b1)(b2)はピンチアウト操作した際の枠状画像の移動を時系列に説明した図である。
【図10】上記発明の切出し画像上をフリック操作した際の枠状画像の移動を時系列に説明した図である。
【図11】上記発明の切出し画像上をピンチアウト操作した際の切出し画像の拡大を時系列に説明した図である。
【図12】上記発明の表示手段における(a)各画像周縁部のカーソル表示の表示例を表す画像であり、(b)カーソル表示を操作した際のカーソル表示の色彩の変化を説明した図である。
【図13】上記発明の撮像手段が複数のカメラで行われた際の表示手段の画像表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の周辺画像表示装置100の実施形態を図を用いて説明する。図1は、本実施形態における周辺画像表示装置100のブロック図である。本発明の周辺画像表示装置100は、撮像手段1と、制御手段2と、表示手段3と、操作手段4と、により構成され、建設用機械の上部旋回体と下部走行体のの旋回角度情報を示す角度データを、建設用機械に備えられた角度センサ5から入力するものである。
【0024】
撮像手段1は、例えば図2に示すような全方位カメラである。このような全方位カメラ(撮像手段)1は、反射ミラー11と、レンズ12と、撮像素子13と、全方位カメラ1の配設方向を指示する方向指示マークを有するケース体14と、を備え、反射ミラー11を中心とした全方位を撮像するものであり、建設用機械の上部旋回体の下部に方向指示マークが上部旋回体の方向に一致するように配設され、下部走行体のクローラが写り込む位置に配設される。
【0025】
反射ミラー11は、双曲面形状の光学部材であり、双曲面形状の頂点を下にして配置されており、反射ミラー11の頂点を中心とした全方位の周囲光Lを下方のレンズ13側に反射させるものである。
レンズ12は、反射ミラー11により反射された周囲光Lを集光し、集光した周囲光Lを撮像素子13側へ出射する。
撮像素子13は、CCD若しくはCMOSからなるものであり、レンズ12により集光された周囲光Lを受光し、制御手段2に全方位の撮像画像を撮像データDとして出力する。
ケース体14は、上面に周囲光Lを通す円形の開口部を有し、反射ミラー11とレンズ12と撮像素子13とを収納するものである。
【0026】
制御手段2は、撮像手段1から出力された撮像データDに基づき、後述する環状画像31、パノラマ画像32、切出し画像33等の表示画像データを生成し、表示手段3に各画像を表示させるものである。
また、制御手段2は、操作手段4からの操作信号を入力し、周辺画像表示装置100の操作の処理を行うものである。
また、前述のように撮像手段1の方向指示マークを、上部旋回体の方向に一致するように配設しているため、建設用機械の角度センサ5から上部旋回体に対する下部走行体の角度情報を入力することで、制御手段2は、表示画像データと上部旋回体の方向と下部走行体の前進方向とを関連づけるものである。
このように、周辺画像表示装置100の設置時に、周辺画像表示装置100の方向指示マークを、上部旋回体に位置合わせすることで、表示画像データと上部旋回体の方向を関連づける以外に、周辺画像表示装置100の設置後に、表示される画像を見ながら、上部旋回体の方向と表示画像データとを関連づけてもよい。
【0027】
表示手段3は、液晶ディスプレイ若しくは有機ELディスプレイ等であり、制御手段2にて生成された画像データに基づき、図3に示すように表示画面上に、環状画像31とパノラマ画像32と切出し画像33とを表示する。
【0028】
操作手段4は、例えば表示手段3の表示画面上に配置されるタッチパネルからなり、表示手段3に表示される表示画像に対するタッチ操作を検出して、制御手段3に操作信号を出力するものである。
【0029】
以上が、本発明における周辺画像表示装置100の構成である。次に、表示手段3に表示される各画像(環状画像31、パノラマ画像32、切出し画像33)の生成方法について説明する。
【0030】
(画像生成方法)
撮像データDは、全方位を撮像した外円画像と、反射ミラー11に投影された撮像素子13自身を撮像した内円画像と、により構成される。
環状画像31は、図3(a)に示すように、全方位を撮像した外円画像を表示する外円領域S1aと、内円画像を取り除いた、或いは他画像等により内円画像を覆い隠した内円領域S1bと、により分類され、全方位の画像が外円領域S1aに環状に表示されるものである。
外円領域S1aは、全方位を撮像した外円画像に、後述する切出し画像33の切出し領域を示す第1枠状画像A1と、建設用機械の上部旋回体の方向を示す第1上部旋回体指示画像311と、建設用機械の上部旋回体の左右,背面方向を示す第1上部旋回体補助画像312と、建設用機械の下部走行体の前進方向を示す第1前進方向指示画像313と、を重畳させて表示した領域である。
【0031】
第1枠状画像A1は、切出し画像33に対応する領域を囲む扇状の枠として表示される。斯かる構成により、切出し画像33が環状画像31のどの部分を切り出したものか容易に認識することができる。
また、第1枠状画像A1は、切出し画像33の切出し位置が撮像画像の中心点に対し、どの方向であるかがわかればいいので、切出し画像33に厳密に対応する領域として扇状の枠を表示するのではなく、図4(a),(b)に示すように、四角形の枠(A1a)や、中心から伸びた扇状の枠(A1b)として表示してもよい。
【0032】
第1上部旋回体指示画像311は、図3(a)に示すように、上部旋回体の向く方向を指し示す矢印で表示される。制御手段2は、撮像手段1の方向指定マークの方向が上部旋回体の方向であると認識することから、この方向指示マークの方向に基づき、第1上部旋回体指示画像311は、環状画像31の外円領域S1aに表示される。
斯かる構成により、建設用機械の上部旋回体の方向を環状画像にて認識することができ、建設用機械と環状画像に表示される物体との方位関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0033】
また、第1上部旋回体指示画像311は、図4(c)に示すように、外円領域S1aではなく、内円領域S1bに建設用機械を模した第1上部旋回体指示機械画像311aを表示することにより、上部旋回体の指示する方向を認識させてもよい。
また、図4(d)に示すように、外円画像S1aや内円画像S1b以外の環状画像31の周縁部に、第1上部旋回体指示周縁画像311bを表示させてもよい。
また、上部旋回体体の指示方向のみではなく、この上部旋回体の指示方向を基準とした、上部旋回体の左右方向や背面方向を表す第1上部旋回体補助画像312を表示する。斯かる構成により、環状画像31にて、建設用機械の上部旋回体と周辺画像との位置関係をより認識しやすい。
これら、第1上部旋回体指示画像311と、第1上部旋回体指示機械画像311aと、第1上部旋回体周縁画像311bと、第1上部旋回体補助画像312とは、表示手段3に表示されるものではなく、表示手段3の表面ガラスなどに予め印刷されたものでもよい。
【0034】
第1前進方向指示画像313は、下部走行体の前進方向を示す画像であり、図3に示すように、外円領域S1aや内円領域S1bに矢印などの方向指示画像でより表示されるものである。
斯かる構成により、建設用機械の下部走行体の前進方向を環状画像にて認識することができ、建設用機械と環状画像に表示される物体との方位関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0035】
内円領域S1bは、撮像素子13自身を撮像した内円画像をそのまま表示する、もしくは内円画像を取り除く、或いは他画像等により内円画像を覆い隠した領域であり、例えば、図5(a)に示すように、クローラの模擬図(314a)を表示してもよく、図5(b)に示すように、下部走行体の旋回角度情報等の車両情報を、文字表示(314b)として表示してもよい。
【0036】
パノラマ画像32は、全方位を示す画像であり、撮像データDの外円画像を所定の切断線によって切り開き、歪みを補正した矩形画像であり、第2枠状画像A2と、第2上部旋回体指示画像321と、第2上部旋回体補助画像322と、第2前進方向指示画像323と、を全方位を示す矩形画像に重畳して表示させたものである。
【0037】
第2枠状画像A2は、切出し画像33に対応する領域を囲む矩形の枠として表示される。斯かる構成により、切出し画像33がパノラマ画像32のどの部分を切り出したものか容易に認識することができる。
【0038】
第2上部旋回体指示画像321は、図3(a)に示すように、上部旋回体の向く方向を指し示す矢印で表示される。
斯かる構成により、建設用機械の上部旋回体の方向をパノラマ画像にて認識することができ、建設用機械とパノラマ画像に表示される物体との方位関係に関する情報を的確に得ることができる。また、第2枠状画像A2と、第2上部旋回体指示画像321とにより、切出し画像33と、第2上部旋回体指示画像321との位置関係を的確に得ることが出来る。
また、第2上部旋回体指示画像321は、方向がわかればいいので矢印ではない、目印となる画像などでもよい。
第2上部旋回体指示画像321は、表示手段3の表面ガラスなどに予め印刷されたものであってもよい。
【0039】
また、パノラマ画像32は、上部旋回体の左右方向や背面方向を表す第2上部旋回体補助画像322を表示する。斯かる構成により、パノラマ画像32にて、建設用機械の上部旋回体と周辺画像との位置関係をより認識しやすい。
【0040】
第2前進方向指示画像323は、下部走行体の前進方向を示す画像であり、図3に示すように、矢印などの方向指示画像でより表示されるものである。
斯かる構成により、建設用機械の下部走行体の前進方向をパノラマ画像にて認識することができ、建設用機械とパノラマ画像に表示される物体との方位関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0041】
また、第2前進方向指示画像323は、図6(a)に示すように、奥行きのある矢印である第2前進方向指示奥行き矢印画像323aでもよい。
また、図6(b)に示すように、下部走行体の幅を考慮した、第2前進方向指示走行体画像323bとしてもよい。斯かる構成により、建設用機械とパノラマ画像に表示される物体との方位関係に加え、表示される物体との距離に関する情報を的確に得ることができ、下部走行体の幅に関連づけることで、物体の大きさや、物体同士の間隔の広さを認識することができる。
【0042】
切出し画像33は、環状画像31に重畳表示される第1枠状画像A1とパノラマ画像32に重畳表示される第2枠状画像A2に対応する位置が切り出された画像で、歪みが補正された拡大画像であり、全方位のうち注視したい一部分を詳細に把握することができる。
また、切出し画像33は、上部旋回体の指示方向を示す第3上部旋回体指示画像331又は、この上部旋回体の指示方向を基準とした、上部旋回体の左右方向や背面方向を表す第3上部旋回体補助画像332又は、下部走行体の進行方向を示す第3前進方向指示画像333を、図7(a)に示すように、切出し画像33の切出し位置(第1枠状画像A1と第2枠状画像A2の位置)に応じて表示する。
斯かる構成により、建設用機械の下部走行体の方向と上部旋回体の方向とを切出し画像にて認識することができ、建設用機械と切出し画像に表示される物体との方位関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0043】
また、切出し画像33は、図7(b)に示すように、現在切出し画像33に表示している方向に対し、上部先行体の指示方向がどの位置にあるかを角度表示する上部旋回体方位情報画像Bを表示する。
また、切出し画像33は、現在切出し画像33に表示している方向に対し、下部走行体の前進方向はどの位置にあるかを角度表示する前進方向情報画像Cを表示する。
斯かる構成により、切出し画像33を視認するだけで、切出し画像33と、上部旋回体の指示方向又は下部走行体の前進方向と、の位置関係を容易に認識することができる。
上記の上部旋回体方位情報画像Bや前進方向情報画像Cは、切出し画像33の画像内でもよいが、切出し画像33の周縁外側に表示してもよい。
【0044】
以上が、表示手段3に表示される環状画像31とパノラマ画像32と切出し画像33についての説明であるが、本願発明の周辺画像表示装置100は、斯かる構成により、撮像される環状画像31とパノラマ画像32と切出し画像33とのそれぞれの位置関係を明確にし、さらに、撮像される物体と建設用機械(下部走行体の前進方向または上部旋回体の指示方向)との位置関係に関する情報を的確に得ることができる。
【0045】
次に、本願発明の周辺画像表示装置100の操作方法について、操作手段4がタッチパネルである場合を実施例として、図8乃至12を用いて説明する。
【0046】
図8(a)は、環状画像31上を操作者Xがタッチした際の第1枠状画像A1の移動を時系列で表した図である。操作者Xが所望する箇所をタッチすることで、第1枠状画像A1の位置が移動し、この第1枠状画像A1に同期する切出し画像33を素早く切替えることができる。
図8(b)は、環状画像31上を操作者Xがフリック操作した際の第1枠状画像A1の移動を時系列で表した図である。操作者Xが環状画像31上をなぞるフリック操作をすることによって、操作者Xの動きに対応して、第1枠状画像A1が滑らかに移動し、それにより、第1枠状画像A1に同期する切出し画像33も滑らかにその表示領域を切替えることができる。
【0047】
図9(a)は、パノラマ画像32上を操作者Xがタッチした際の第2枠状画像A2の移動を時系列で表した図である。操作者Xが所望の箇所をタッチすることで、第2枠状画像A2の位置が移動し、この第2枠状画像A2に同期する切出し画像33を素早く切替えることができる。
図9(b)は、パノラマ画像32上を操作者Xが2点以上操作点をピンチアウト操作した際の第2枠状画像A2の大きさ変更を時系列で表した図である。操作者Xが、第2枠状画像A2付近で、2点の接点を広げるようにピンチアウト操作した場合、第2枠状画像A2が拡がり、これにより切出し画像33の切出し領域が大きくなるため、切出し画像33は縮小表示される。また、操作者Xが第2枠状画像A2付近で、2点の接点を狭めるようにピンチイン操作した場合、第2枠状画像A2は狭まり、これにより切出し画像33の切出し領域が小さくなるため、切出し画像33は拡大表示される。
【0048】
図10は、切出し画像33上を操作者Xがフリック操作した際の切出し位置の移動を時系列で表した図である。操作者Xが、図のように左から右方向へフリック操作すると、切出し画像33も左から右方向へスライドし、切出し位置が変更される。これに従い、第1枠状画像A1と第2枠状画像A2も切出し画像33に同期し、移動する。
【0049】
図11は、切出し画像33上を操作者Xが2点以上操作点をピンチアウト操作した際の切出し画像33の拡大を時系列で表した図である。操作者Xが、切出し画像33付近で、2点の接点を広げるようにピンチアウト操作した場合、切出し画像33は拡大表示され、切出し画像33の表示領域に同期し、第1枠状画像A1と第2枠状画像A2を変更させる。また、操作者Xが切出し画像33付近で、2点の接点を狭めるようにピンチイン操作した場合、切出し画像33縮小表示され、切出し画像33の表示領域に同期し、第1枠状画像A1と第2枠状画像A2を変更させる。
【0050】
また、図12(a)に示すように、第1枠状画像A1または第2枠状画像A2または切出し画像33の周縁部に上下左右などのカーソル表示Eを表示し、このカーソル表示E上を操作してもよい。
また、図12(b)のように、操作された方向のカーソル表示Eの色彩を一時的に変えることで、その方向の操作が行われたことを操作者Xに報知してもよい。
【0051】
また、操作手段4は、直感的な操作が可能なマウス、ジョイスティック、タッチパッド、ペンタブレットあるいはトラックボールなどを用いてもよい。
【0052】
このように、環状画像31と、パノラマ画像32と、切出し画像33と、を同時に表示させ、その画面上をタッチパネルで操作することにより、環状画像31上の操作では、特に方位を意識した第1枠状画像A1の移動ができ、パノラマ画像32上の操作では、特に上下(奥行き)方向を意識した第2枠状画像A2の移動ができ、切出し画像33上の操作では、拡大画像により、切出し画像33の詳細な切出し位置を微調整することができ、それぞれの画像を活かした直感的な操作ができる。
【0053】
次に図13を用いて、撮像手段1が全方位カメラではなく、複数のカメラで構成された一実施形態を説明する。
具体的に例えば、撮像手段1は、CCDもしくはCMOSからなる撮像素子を有する第1,第2撮像カメラ1a,1bであり、ぞれぞれ視野角が重ならず、視野角同士に間ができない位置に設置される。第1,第2撮像カメラ1a,1bは視野角120°とすると、2つのカメラで240°の視野角を撮影することができ、それぞれ撮像した画像を環状画像31とパノラマ画像32および切出し画像33に表示する。
環状画像31は、第1撮像カメラ1aにより撮像された第1撮像カメラ画像U1aと、第2撮像カメラ1bにより撮像された第2撮像カメラ画像U1bと、複数の撮像カメラで撮像されない死角となる第1デッドスペースU1cにより構成されている。この第1デッドスペースU1cは、黒塗りや車両情報を文字などで表示するエリアである。
また、パノラマ画像32にも、環状画像31の第1デッドスペースU1cに対応する位置に第2デッドスペースU2cを設ける。
斯かる構成により、撮像手段1が全方位カメラではなく、複数のカメラであった場合も、撮像される画像同士の位置関係と、さらに撮像される物体と建設用機械との位置関係とに関する情報を的確に得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
100 周辺画像表示装置
1 撮像手段
2 制御手段
3 表示手段
4 操作手段
5 角度センサ
1a 第1撮像カメラ
1b 第2撮像カメラ
11 反射ミラー
12 レンズ
13 撮像素子
14 ケース体
31 環状画像
311 第1上部旋回体指示画像
312 第1上部旋回体補助画像
313 第1前進方向指示画像
32 パノラマ画像
321 第2上部旋回体指示画像
322 第2上部旋回体補助画像
323 第2前進方向指示画像
33 切出し画像
331 第3上部旋回体指示画像
332 第3上部旋回体補助画像
333 第3前進方向指示画像
A1 第1枠状画像
A2 第2枠状画像
B 上部旋回体方位情報画像
C 前進方向情報画像
E カーソル表示
L 周囲光
S1a 外円領域
S1b 内円領域
U1a 第1カメラ画像
U1b 第2カメラ画像
U1c 第1デッドスペース
U2c 第2デッドスペース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体及び上部旋回体を有する建設用機械に搭載され、
前記建設用機械の周囲を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された撮像データを前記建設用機械を基準とした環状画像及びパノラマ画像並びに前記パノラマ画像の一部分を切り出した切出し画像に変換する制御手段と、
前記環状画像と前記パノラマ画像と前記切出し画像とを同時に表示する表示手段と、
前記制御手段に操作信号を出力する操作手段と、を備え、
前記制御手段は、前記切出し画像の切出し位置を定める枠状画像を前記環状画像上及び前記パノラマ画像上に重ねて表示させるとともに、
前記操作手段の操作に基づいて、前記枠状画像を前記環状画像及び前記パノラマ画像の範囲内にて移動可能とし、前記枠状画像の移動に連動し、前記切出し画像を切替えること、を特徴とする周辺画像表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記上部旋回体の旋回角度情報を入力し、
前記環状画像に前記下部走行体の前進方向を示す第1前進方向指示画像を表示させる、
または前記パノラマ画像に前記下部走行体の前進方向を示す第2前進方向指示画像を表示させる、
または前記枠状画像が前記下部走行体の前進方向にあったとき、前記切出し画像に前記下部走行体の前進方向を示す第3前進方向指示画像を表示させること、を特徴とする請求項1に記載の周辺画像表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記上部旋回体の方向を示す第1上部旋回体指示画像を前記環状画像に表示させること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の周辺画像表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記上部旋回体の方向を示す第2上部旋回体指示画像を前記パノラマ画像に表示させること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の周辺画像表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記枠状画像が前記上部旋回体の方向にあったとき、前記切出し画像に前記上部旋回体の方向を示す第3上部旋回体指示画像を表示させるものこと、を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の周辺画像表示装置。
【請求項6】
前記第2前進方向指示画像は、前記下部走行体の幅に基づく、奥行きのある画像からなること、を特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の周辺画像表示装置。
【請求項7】
前記第1上部旋回体指示画像は、前記環状画像の中心部に前記建設用機械を示す車両画像で表示されること、を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の周辺画像表示装置。
【請求項8】
前記撮像手段は、全方位カメラであり、前記制御手段は、前記全方位カメラからの撮像データに基づいて、前記環状画像を生成すること、を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の周辺画像表示装置。
【請求項9】
前記撮像手段は、複数のカメラであり、前記制御手段は、前記複数のカメラからの撮像データに基づいて、前記環状画像を生成すること、を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の周辺画像表示装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記枠上画像の内部もしくは前記枠状画像の周辺に上下左右のカーソル表示を表示し、前記操作手段にて前記枠状画像が移動されるとき、前記操作手段にて操作された方向の前記カーソル表示の色彩を変化させること、を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の周辺画像表示装置。
【請求項11】
前記操作手段は、タッチパネル式入力手段からなること、を特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の周辺画像表示装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−34142(P2013−34142A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169819(P2011−169819)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】