説明

呼吸連動型ブロワーマスクシステム

【課題】フィルター交換時期やシステム異常を確実に知らせたり、センサー感度を呼吸量に応じて最適に調整できる呼吸連動型ブロワーマスクシステムの提供。
【解決手段】排気弁及び吸気弁を有する面体と、モータ9で駆動され、吸気弁を通して外気を面体内に送り込むブロワーと、面体内へ供給される外気を浄化するフィルターと、排気弁又は吸気弁の動きを感知して、排気時又は吸気時に信号を発するセンサー11と、センサー11からの信号により、吸気時にモータ9へ通常作動するよう電力供給し、排気時にモータ9への電力供給を停止或いは減少させるブロワー制御回路13と、モータ9に供給される電力、電流及び電圧のいずれかを検知する検知回路15と、検知回路15が検知した電力、電流及び電圧のいずれかを一定期間合計し、合計値が基準値以上又は以下であった場合に信号を発する情報処理回路16とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸連動型ブロワーマスクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、危険粉塵が存在する環境下では、作業者は防塵マスクを装着し、危険粉塵をマスクが保有するフィルターで浄化し、浄化した空気で呼吸を行う。
ところで、フィルターは、浄化作用の大きいものほど通気抵抗が増大する。特に、原子力発電所内の放射性粉塵等は、たとえ微小であっても人体に侵入すると致命傷になるので、浄化作用が高く、通気抵抗が非常に大きいフィルターが使用される。そのため、作業者自身の肺力だけでは充分に呼吸することが困難になる。
【0003】
そこで、このような通気抵抗の大きいフィルターを装着する場合は、通気路上において、フィルターの前側又は後側にブロワーを取付け、その送気力(吸引力)を利用して呼吸の補助を行うブロワーマスクシステムが使用される。さらに、ブロワーマスクシステムは面体内圧が陽圧になりやすく、仮にマスクと顔表面との間に隙間が存在しても粉塵が進入しづらいため、マスクとして非常に高い防護性能を有する。ただし、100%の防護性能を引き出すためには面体内圧を常に陽圧に保つ必要がある。
ブロワーマスクシステムは、着用者の呼吸に連動しない一定流量型が主流である。一定流量型ブロワーマスクシステムは、一定量以上の浄化空気をマスク面体に供給するため、フィルターが消耗しやすく、排気時の抵抗も大きくなり、電力消費量が多くなりやすいという欠点はあるが、フィルターが目詰まりを起こして送風量が低下しても、ブロワーユニットとマスク面体の中間に送風量を検知するセンサーを設置すれば、容易にブロワー送風量が定量以下になったことを検知して、警報によって着用者にフィルター交換時を知らせることができる。
【0004】
一方、たんにブロワーで空気を送るだけでなく、排気時であるか吸気時であるかを呼吸センサーで感知し、呼吸と連動してブロワーを駆動制御し、吸気時に送風量を増やし、排気時には送風量を減らしたり、送風を停止する呼吸連動型ブロワーマスクシステムも知られている(特許文献1参照)。
このような呼吸連動型ブロワーマスクシステムによれば、フィルターの消耗、排気抵抗及び消費電力を抑制することができる。
しかし、呼吸連動型ブロワーマスクシステムでは、呼吸タイミングだけでなく、一呼吸ごとの吸気量に送風量を合わせるので、送風量を検知するセンサー等を設置しても、フィルターの目詰まりによる送風量低下か、着用者の呼吸の変化による風量低下か判断するのは難しい。また、着用者の呼吸量には個人差があり、労働の激しさによってもばらつきがあるので、呼吸センサーの感度が画一的であると、ブロワーが適正に作動しないことがある。
【0005】
さらに、面体内圧によってフィルターの交換時期を判断するマスクも公知である(特許文献2、特許文献3参照)。
これらのマスクは、非常に脆いダイヤフラム等のように、圧力の変化に対して応答しやすい素材を用いているので、設定ズレが発生しやすいだけでなく、このような素材が破損して故障の原因となり、実用的ではなかった。
【0006】
なお、特許文献4に記載された発明に代表されるように、ファンを駆動するモータの消費電力を測定して、その値を制御系統にフィードバックし、故障判断、バッテリー残量、使用時間など電気に関わるインジケーターの基準にする技術が知られている。
この技術は、モータの消費電力を判断基準とするものであるが、一呼吸ごとの吸気量が変化する呼吸連動型ブロワーマスクシステムでは、一呼吸ごとの消費電量(電流)が千差万別なため、ファンを駆動するモータの消費電量(電流)や消費電力を測定するだけではフィルターの交換時期等を判断することはできない。
【0007】
【特許文献1】特許第3726886号公報
【特許文献2】特開平10−28744号公報
【特許文献3】特開昭60−68869号公報
【特許文献4】特開平10−108813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、着用者の呼吸は個々には規則性が無いが、呼吸連動型ブロワーマスクシステムにおいて、ある一定期間の呼吸量とブロワー駆動用モータの消費電力には相関があることに着目し、これを利用して、フィルターの交換時期や面体内圧が陰圧に変化した時期などを確実に知らせたり、ブロワーを無駄なく適正に駆動することができる呼吸連動型ブロワーマスクシステムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の呼吸連動型ブロワーマスクシステムは、上記課題を解決するために、排気時に開く排気弁及び吸気時に開く吸気弁を有する面体と、モータで駆動され、前記吸気弁を通して外気を前記面体内に送り込むブロワーと、前記面体内へ供給される外気を浄化するフィルターと、前記排気弁又は吸気弁の動きを感知して、排気時又は吸気時に信号を発するセンサーと、該センサーからの信号により、吸気時には前記モータへ通常作動するよう電力供給すると共に、排気時には前記モータへの電力供給を停止或いは減少させるブロワー制御回路と、前記モータに供給される電力、電流及び電圧のいずれかを検知する検知回路と、該検知回路が検知した電力、電流及び電圧のいずれかを一定期間合計し、この合計値と予め設定されている基準値とを比較して、合計値が基準値以上又は以下であった場合に信号を発する情報処理回路とから成る。
【0010】
前記情報処理回路からの信号が警報発生装置に伝達され、該警報発生装置はこの信号を受けて作動することがある。
前記基準値は前記フィルターが目詰まりした時の値とされ、前記情報処理回路は前記合計値が前記基準値以上又は以下であった場合に信号を発し、該信号を受けた前記警報発生装置は、着用者にフィルターの交換時期であることを知らせるようにしても良い。
さらに、前記基準値は、前記フィルターが目詰まりして、面体内圧が丁度陰圧になった時の値とされ、前記情報処理回路は前記合計値が前記基準値以上又は以下であった場合に信号を発し、該信号を受けた前記警報発生装置は、着用者にブロワー送風量低下により面体内圧が陰圧となっていることを知らせることもできる。
【0011】
前記フィルターは、粉塵除去用フィルター、ガス吸着用の吸収缶、粉塵除去用フィルターとガス吸着用の吸収缶とから成るコンビ缶のいずれかとすることもある。
なお、フィルターが目詰まりした時など、異常を示し始めたら、警報発生装置が音、光、振動などで知らせることが多いが、逆に、合計値が基準値以下であったら情報処理回路が信号を発してランプなどを常時点灯させ、フィルターの目詰まりなどの異常により合計値が基準値を超えたら、情報処理回路が信号出力を取りやめ、ランプを消灯させることで作業者に知らせることもある。
【0012】
前記情報処理回路に、着用者の呼吸量と対応したモータの消費電力、電流及び電圧のいずれかが基準値として設定されると共に、呼吸量に最適なセンサー感度が記憶され、該情報処理回路は、前記合計値と基準値とを比較して呼吸量を判別し、判別した呼吸量に最適なセンサー感度と対応する信号をセンサー感度調整回路へ発し、該センサー感度調整回路は情報処理回路からの信号に応じてセンサー感度を調整することもある。
なお、上記のように呼吸量に最適なセンサー感度を調整する場合は、フィルターの目詰まりが無い場合のみ有効で、主に濾材がガス吸着缶の場合か、交換時期がフィルターの目詰まりより活性炭層の破過を重視するコンビ缶に限られる。
ただし、濾材が粉塵除去用フィルターの場合は、フィルターの目詰まりがほとんど無くてもマスク着用が義務づけられている場所、例えば原子力発電所内の放射能粉塵などの極少量でも人体に有害な影響を及ぼす粉塵環境下などでは有効である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、ブロワーを駆動するモータが一定期間に消費する電力、電流、又は電圧の合計を利用して、ブロワーマスクの状態変化を確実に知ることができる。
請求項2に係る発明によれば、感知した異常を迅速、且つ、確実に着用者に知らせることができる。
請求項3に係る発明によれば、通気抵抗が上昇した時、ブロワーの送風量を維持するために電力消費量が増加することを利用して、フィルターの目詰まりを感知するので、ブロワーによる送風量が変化する呼吸連動型ブロワーマスクシステムであっても、フィルター交換時期を確実に作業者に知らせることができ、ダイヤフラムのような破損しやすい部品を必要としないため、故障し難く耐久性が高い。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、着用者が常に面体内圧を陽圧になるよう注意して、ブロワーマスクのより安全な運用が可能となる。
請求項6に係る発明によれば、排気時か吸気時かを感知するセンサーの感度設定は、本来、呼吸量によって最適値があるが、呼吸量と消費電力量(電流量)との相関を調べておくだけで、呼吸量の変化に応じてセンサー感度を自動的に、且つ、正確に調整することが可能となり、着用者が可変抵抗器等を用いて自分の間隔で調整する必要も無く、より無駄無くブロワー運転を呼吸に連動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る呼吸連動型ブロワーマスク1は、図1に示すように、排気口3及び吸気口4を有する面体2と、排気口3に設けられ、排気時に開いて吸気時に閉じる排気弁5と、吸気口4に設けられ、吸気時に開いて排気時に閉じる吸気弁6と、吸気口4の外部を覆う筒状のフィルターカバー7と、フィルターカバー7の内部に設置され、モータ9で駆動されて、吸気弁6を通して外気を面体2内に送り込むブロワー17と、フィルターカバー7の先端内部に配設され、面体2内へ供給される外気を浄化する粉塵除去用のフィルター10とを備える。
【0016】
排気弁5の近傍には、排気弁5の動きを感知するセンサー11が設けられる。センサー11としては、発光ダイオード及び受光素子を備えたフォトインタラプタ等を用いることができる。このフォトインタラプタは、発光ダイオードが照射した光を排気弁5が反射し、排気弁5が開いた時の反射光を受光素子が検知するようになっている。
また、面体2、又は、バッテリー14(図2)を格納するバッテリーケースには、フィルター10が交換時期になったことを音声、振動又は光等により知らせる警報発生装置12が設置されている。
【0017】
ブロワー17は、羽根車8とこれを駆動するモータ9とから成り、図2に示すように、ブロワー17を駆動するモータ9とセンサー11との間には、ブロワー制御回路13が設けられる。
そして、センサー11は、排気弁5が開いたことを感知してブロワー制御回路13へ信号を送り、ブロワー制御回路13はセンサー11からの信号を受けると、モータ9を停止させるか或いは減速させる。
従って、排気弁5が開いているとき、即ち、排気時にはブロワー17の送風が停止するか、送風量が減る。
【0018】
また、モータ9とその電源であるバッテリー14とを接続する回路には、モータ9へ供給される電力を検知する検知回路15を組み込んである。検知回路15には情報処理回路16が接続され、情報処理回路16は警報発生装置12へ接続されている。
検知回路15が検知した電力信号は情報処理回路16へ送られて蓄積される。情報処理回路16は、ある一定期間(例えば1分間)の合計消費電力を算出し、算出した値と予め設定されている基準値(例えば1.2W)とを比較する。この基準値は、フィルター10が目詰まりした時に、同じ期間でモータ9が消費する電力量である。
そして、合計消費電力が基準値よりも少なければ蓄積したデータをリセットして、再度同じルーチンを繰り返す。また、合計消費電力が基準値以上であった場合は警報発生装置12へ信号を送る。
【0019】
警報発生装置12は、情報処理回路16が発信した信号を受信した時に作動し、音、光、振動等によってフィルター10の交換時期であることを知らせる。
なお、合計消費電力が基準値以下であった場合に情報処理回路16が信号を発し、警報発生装置12が作動してランプなどを常時点灯させ、フィルター10が目詰まりしたら情報処理回路16が信号出力を取りやめ、この結果、ランプを消灯させて作業者に知らせるようにしても、同様の効果をあげることができる。
【0020】
図3は、新品のフィルター10を装着した時の、平均消費電力推移を面積で示した図である。図3によれば、新品のフィルター10を使用した場合は、一分間の合計消費電力を示す面積が基準値を示す面積よりも狭く、フィルター10の交換時期ではないことがわかる。
図4は、交換時期を過ぎたフィルター10を装着した時の、一分間の消費電力推移を面積で示した図である。このフィルター10を使用した場合は、一分間の合計消費電力を示す面積が基準値を示す面積よりも広くなり、フィルター10の交換時期であることが図4からも明らかである。
なお、フィルター10は、粉塵除去用フィルターの替わりに、ガスを吸着する吸収缶や、粉塵除去用フィルターと吸収缶とからなるコンビ缶にしても良い。
【0021】
以上のように、フィルター10の消耗程度によって、ブロワー17を駆動するモータ9の消費電力は如実に変化するので、モータ9の消費電力を把握することにより、フィルター10の交換時期を確実に知ることができる。
また、呼吸量は瞬間的に多くなることもあるので、消費電力を合計する期間が短すぎると、このような瞬間的な呼吸量の変化にも反応してしまう。
一方、この期間をあまり長くすると、蓄積するデータ量が多くなるため大きなメモリー容量を必要とし、製品のコストやサイズに影響を与える。
従って、検知した電力を合計する期間は、労働の激しさ、製品コストやサイズに応じて、数秒から2時間まで幅広く設定できるようにすることが望ましい。
【0022】
なお、上記実施例では、モータ9の消費電力を検知したが、電流或いは電圧を検知し、これを一定期間合計しても良い。
また、検知回路15をバッテリー14の直前に設置することもできる。或いは、モータ9とグランド(バッテリー14のマイナス端子)の間に設置することもできる。
さらに、センサー11によって吸気弁6の動きを感知し、吸気弁6が閉じている時に、ブロワー17を停止或いは減速させることも可能である。
【0023】
図5に基づいて本発明の他の実施例を説明する。
フィルター10が目詰まりすると、吸気時にブロワー17の送風量が低下して面体2の内圧が陰圧になる。図5には、吸気ピーク時の面体内圧、モータ9の平均消費電力及びフィルター10の抵抗の相関関係を示す。
例えば、前記基準値を1.1Wにすれば、図10に示す相関関係から、面体内圧吸気ピークが丁度陰圧(0Pa未満)になる頃に、警報発生装置12を通じて着用者に、面体2の内圧が陰圧になったことを知らせることが可能となる。
その他の構成は、図1〜図4に示す実施例と変わるところはない。
【0024】
なお、モータ9が一定期間に消費する電力、電流或いは電圧は、フィルター10の目詰まり以外の異常によっても変化する。
例えば、異物の混入等によってモータ9がロックした時にも、モータ9の消費電力量が多くなる。図6には、モータ9がロックした場合の消費電力量を面積で示す。図5から、モータ9がロックすると、ブロワー17が通常に作動し、フィルター10が目詰まりした場合に比べて、異常に消費電力量が多いことがわかる。
従って、情報処理回路16に、モータロックが発生したときの消費電力量である他の基準値(例えば5W)を予め設定し、合計消費電力が他の基準値以上である時に、警報発生装置12へ信号を送信する機能を追加しておけば、フィルター10の目詰まりを検知するために計算した合計消費電力を利用して、モータロックの発生を着用者へ瞬時に知らせることができる。
【0025】
さらに、回路短絡や電子素子故障等のシステム異常が発生した場合も、モータ9の消費電力、電流、電圧が異常に増える。その増加程度はシステム異常の種類によって異なるが、フィルター10の目詰まりによる増加量よりもはるかに多い。
従って、他の基準値を、フィルター10の目詰まりを知らせるための基準値(例えば1.2W)の2倍(例えば2.4W)以上とすれば、警報発生装置12によってこのようなシステム異常を着用者に瞬時に知らせることが可能となる。
【0026】
図7〜図10は、さらに他の実施例を示す。
排気弁5は、排気口3を有する排気弁座18に接離し、排気弁5が開いた状態から排気弁座18に近づいて排気口3を閉口した瞬間にブロワー17が通常作動し、呼吸量(吸う量)と同量の送風を行うことが理想である。しかし、実際には、ブロワー17からの送風を着用者の呼吸に完全に追随させることはできないので、排気弁5が排気口3を閉口させるより前にブロワー17を通常作動させるように、センサー11が信号を出力する排気弁位置となる境界線19を設定する。境界線19の最適位置は着用者の呼吸量によって変わるので、着用者の呼吸量に応じてセンサー11が反応する境界線19の位置を調整する必要がある。
【0027】
境界線19の位置調整はセンサー11の感度調整で行うのが一般的である。本実施例では、センサー11の感度を自動的に調整するために、図8に示すように、情報処理回路16とセンサー11との間にセンサー感度調整回路20を設けた。
フォトインタラプタやフォトトランジスタのような光センサーの感度調整は、発光素子の出力を調整するか、受光素子に入力する信号量(電流量)を調整して行うのであるが、本実施例では、センサー11をフォトインタラプタとし、その感度調整は、フォトインタラプタ内の受光素子に入力する信号量(電流量)を調整して行った。
【0028】
図9に、呼吸量とその呼吸量に最適なセンサー感度(受光素子に入力する電流量)の相関関係を示す。この相関関係は情報処理回路16に予め記憶させておく。
図10に、呼吸量と平均消費電力との関係を示す。図10によれば、呼吸量が少ないときは消費電力も少なく、呼吸量の増加に伴い消費電力も増加することがわかる。
また、呼吸量と平均消費電力との関係に基づいて、呼吸量毎の平均消費電力を基準値として情報処理回路16に予め設定しておく。
【0029】
そして、情報処理回路16は、合計した消費電力と基準値とを比較して着用者の呼吸量を判別し、この判別した呼吸量に最適なセンサー感度を選んで、そのセンサー感度に応じた信号をセンサー感度調整回路20に向けて出力する。センサー感度調整回路20は、情報処理回路16から受信した信号に合わせて、センサー11の受光素子に入力する電流量を調整する。
例えば、合計消費電力が1.3Wであれば図10に示す関係から呼吸量は20Lであり、呼吸量20Lに合わせて、センサー11の受光素子に入力される電流量を、図9に示す相関関係から0.08mAに調整する。
その他の構成は、図1〜図4に示す実施例、又は、図5に示す他の実施例とほぼ同様である。
上記実施例はフィルターの目詰まりが極端に少ない場合のみ有効で、主に濾材がガス給着用吸収缶の場合か、交換時期がフィルター目詰まりよりも活性炭層の破過を重視するコンビ缶向けである。
【0030】
なお、センサー11の感度を調整するのに、発光素子の出力を変えることもでき、モータ9の消費電力だけでなく、電流や電圧を検知してその合計により呼吸量を判別することも可能である。
また、フィルター10が目詰まりした時やシステム異常が発生した時に警報を発する機能を設けず、着用者の呼吸量に応じてセンサー11の調整を行う機能のみを設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例に係る呼吸連動型ブロワーマスクの断面図。
【図2】本発明の実施例に係る呼吸連動型ブロワーマスクシステムのブロック図。
【図3】新しいフィルターを使用した時の消費電力推移を示す図。
【図4】交換時期を過ぎたフィルターを使用した時の消費電力推移を示す図。
【図5】他の実施例に係る面体内圧吸気ピーク、フィルター抵抗、及び、平均消費電力の相関関係を示す図。
【図6】モータロックを起こした時の消費電力推移を示す図。
【図7】さらに他の実施例に係る呼吸連動型ブロワーマスクの要部断面図。
【図8】さらに他の実施例に係る呼吸連動型ブロワーマスクシステムのブロック図。
【図9】呼吸量と呼吸量に最適なセンサー感度(受光素子に入力する電流量)との相関関係を示す図。
【図10】呼吸量と平均消費電力との関係を示す図。
【符号の説明】
【0032】
1 呼吸連動型ブロワーマスク
2 面体
3 排気口
4 吸気口
5 排気弁
6 吸気弁
7 フィルターカバー
8 羽根車
9 モータ
10 フィルター
11 センサー
12 警報発生装置
13 ブロワー制御回路
14 バッテリー
15 検知回路
16 情報処理回路
17 ブロワー
18 排気弁座
19 境界線
20 センサー感度調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気時に開く排気弁及び吸気時に開く吸気弁を有する面体と、モータで駆動され、前記吸気弁を通して外気を前記面体内に送り込むブロワーと、前記面体内へ供給される外気を浄化するフィルターと、前記排気弁又は吸気弁の動きを感知して、排気時又は吸気時に信号を発するセンサーと、該センサーからの信号により、吸気時には前記モータへ通常作動するよう電力供給すると共に、排気時には前記モータへの電力供給を停止或いは減少させるブロワー制御回路と、前記モータに供給される電力、電流及び電圧のいずれかを検知する検知回路と、該検知回路が検知した電力、電流及び電圧のいずれかを一定期間合計し、この合計値と予め設定されている基準値とを比較して、合計値が基準値以上又は以下であった場合に信号を発する情報処理回路とから成ることを特徴とした呼吸連動型ブロワーマスクシステム。
【請求項2】
前記情報処理回路からの信号が警報発生装置に伝達され、該警報発生装置は信号を受けて作動する請求項1に記載の呼吸連動型ブロワーマスクシステム。
【請求項3】
前記基準値は前記フィルターが目詰まりした時の値とされ、前記情報処理回路は前記合計値が前記基準値以上又は以下であった場合に信号を発し、該信号を受けた前記警報発生装置は、着用者にフィルターの交換時期であることを知らせる請求項2に記載の呼吸連動型ブロワーマスクシステム。
【請求項4】
前記基準値は、前記フィルターが目詰まりして、面体内圧が丁度陰圧になった時の値とされ、前記情報処理回路は前記合計値が前記基準値以上又は以下であった場合に信号を発し、該信号を受けた前記警報発生装置は、着用者に面体内圧が陰圧であることを知らせる請求項2に記載の呼吸連動型ブロワーマスクシステム。
【請求項5】
前記フィルターが、粉塵除去用フィルター、ガス吸着用の吸収缶、粉塵除去用フィルターとガス吸着用の吸収缶とから成るコンビ缶のいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の呼吸連動型ブロワーマスクシステム。
【請求項6】
前記情報処理回路に、着用者の呼吸量と対応したモータの消費電力、電流及び電圧のいずれかが基準値として設定されると共に、呼吸量に最適なセンサー感度が記憶され、該情報処理回路は、前記合計値と基準値とを比較して呼吸量を判別し、判別した呼吸量に最適なセンサー感度と対応する信号をセンサー感度調整回路へ発し、該センサー感度調整回路は情報処理回路からの信号に応じてセンサー感度を調整する請求項1〜5のいずれかに記載の呼吸連動型ブロワーマスクシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−194092(P2008−194092A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29628(P2007−29628)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000162940)興研株式会社 (75)
【Fターム(参考)】