説明

商用車の補助装置の駆動のための軸を歯車伝動装置と連結するための装置及び該装置の製造のための方法

本発明は、商用車の補助装置の駆動のための軸(12)を、被動歯車(14)を含む歯車伝動装置と連結するための装置(10)であって、軸(12)が軸(12)の回転軸線(20)に対して平行な軸線の方向(18)で止め輪(22)を介して固定可能である形式のものに関する。本発明に基づき、止め輪(22)に対応配置された溝(24,26)が、被動歯車(14)及び軸(12)に配置されている。本発明は、更に、本発明に係る装置(10)の製造のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
商用車の補助装置の駆動軸を歯車伝動装置と連結するための装置、及び装置の製造のための方法。
【0002】
本発明は、商用車の補助装置の駆動のための軸を、被動歯車を含む歯車伝動装置と連結するための装置であって、軸が、軸の回転軸線に対して平行な軸線の方向で止め輪を介して固定可能となっている形式の装置に関する。
【0003】
本発明は、更に、商用車の補助装置の駆動のための軸を、被動歯車を含む歯車伝動装置と連結する装置の製造のための方法であって、軸が、軸の回転軸線に対して平行な軸線の方向で止め輪を介して固定可能となっている形式の方法に関する。
【0004】
車両、特に商用車の駆動装置には、駆動装置によって駆動されねばならない他の複数の補助装置が接続されるようになっており、補助装置の運転は、車両の機能のために必要である。この場合に、駆動装置の隣接する周囲の限られたスペースのために、次第に複雑な機械装置が、駆動装置から供給された駆動力を個々の補助装置に伝達しなければならない。このために、例えば回転伝動装置、特に歯車伝動装置若しくはホイール式伝動装置が用いられて、部分的に複数の補助装置が直列接続の原理に基づき順次に駆動される。駆動部に対して直列に接続される補助装置の接続順序は、例えば、補助装置の駆動のために必要な駆動エネルギーから規定され、この場合に、より高い駆動出力を必要とする補助装置が、より密接して車両の駆動装置に配置される。例えば、商用車の圧力空気作動式(圧力空気により作動される形式)のブレーキ装置への供給のために設けられた圧力空気コンプレッサが、直接に歯車伝動装置若しくはホイール式伝動装置を介して駆動装置によって駆動されるのに対して、操舵アシストポンプは、例えば間接的に、圧力空気コンプレッサの軸の延長部を介して駆動装置によって駆動されるようになっていてよい。
【0005】
車両の運転の際のエネルギーを節約するために、エネルギーを消費する補助装置を、できるだけ継続的には運転しないことが有利である。特に圧力空気コンプレッサは、ブレーキ装置の作動のための十分な量の圧力空気が車両内に蓄えられている間は、一時的に運転を停止されてよいものである。このことを目的として、知られている手段では、クラッチが、駆動装置と圧力空気コンプレッサとの間に、圧力空気コンプレッサを一時的に止めるために設けられている。この場合に、圧力空気コンプレッサを介して駆動される補助装置、例えば操舵アシストポンプを、クラッチを介して圧力空気コンプレッサと一緒に停止させないことが、配慮されねばならない。このことは例えば、対応して構成された機械式の動力取り出し装置を介して実現されてよく、動力取り出し装置は相応のトルクをクラッチの前で受け取るようになっていて、かつ補助装置に、例えば操舵アシストポンプに接続可能となっている。
【0006】
図1は、圧力空気コンプレッサを示しており、圧力空気コンプレッサは、後配置(下流側接続)される補助装置のための接続フランジを備えている。図示の圧力空気コンプレッサ30は、ケーシング32の内部に配置された歯車伝動装置を有しており、歯車伝動装置には、接続フランジ34を介して別の補助装置、例えば操舵アシストポンプが連結可能となっている。図示を省略してある補助装置は、後から、車両の駆動装置への圧力空気コンプレッサ30の組み付けの後に、圧力空気コンプレッサ30のシリンダーヘッド40と接続フランジ34との間に組み込まれるようになっている。図示省略の補助装置が接続されることになる軸の、歯車伝動装置からの抜け出しを、補助装置が組み込まれるまで、防止するために、適切な紛失防止手段が必要である。
【0007】
図2は、従来技術に基づく歯車伝動装置又はホイール式伝動装置を示しており、歯車伝動装置又はホイール式伝動装置は対応する軸を備えている。図2に示す歯車伝動装置16は、図1に示すケーシング32の内部で右側に配置されている。駆動軸36を介して、トルクの形の駆動エネルギーが歯車伝動装置16内に導入されて、駆動ホイール若しくは駆動歯車38に伝達されるようになっている。駆動ホイール若しくは駆動歯車38は、被動ホイール若しくは被動歯車14に連結されており、被動ホイール若しくは被動歯車が、受け取った駆動力を軸12に伝達するようになっており、軸には図示省略の補助装置が接続可能となっている。軸12は、回転軸線20を中心として回転可能に支承されるようになっていて、組み付けに際して軸線の方向18で歯車伝動装置16内へ差し込まれるようになっている。図示省略の補助装置の組み込まれていない状態での軸12の紛失防止を実現するために、特に輸送中における紛失防止を実現するために、止め輪22を設けてあり、止め輪が、ケーシング32の溝24内に組み込まれ、軸12の組み付けの後に軸12を、軸12自体に配置された溝26と協働して軸線の方向18で固定するようになっている。この場合に欠点が、特に、ケーシング32及び軸12の、止め輪及び溝24,26を設けるために必要な追加的な構成長さにある。
【0008】
従って、本発明の課題は、冒頭に述べた形式の連結装置に改良を加えて、軸線の方向の構成長さの減少を可能にすることである。
【0009】
前記課題が独立請求項に記載の構成により解決される。本発明の有利な形態が従属請求項に記載してある。
【0010】
本発明に係る装置は、冒頭に述べた公知技術をベースとして、止め輪に対応配置された溝が、被動歯車及び軸に配置されていることを特徴としている。このような形態によれば、止め輪を直接に被動歯車に組み込み可能となっているので、ケーシングへの止め輪の組み込みのための従来必要な溝を省略することができる。従って、装置全体の構成長さが、軸線の方向で、解放された幅だけ減少される。
【0011】
有利な形態によれば、溝は、軸及び被動歯車に設けられた複数の歯間を延びている。このような構成により、組み込みに際して、まず、軸と被動歯車との間の歯部が、同時に軸線の方向の紛失防止を克服する必要なしに、組み合わされる。本発明は、原理的に、歯車の代わりに、歯を有さない輪体若しくは車輪等、つまりホイールを用いて例えばホイール同士の摩擦係合によりトルク伝達を行う形式の伝動装置(回転伝動装置)、いわゆるホイール式伝動装置に用いられ得るものである。
【0012】
更に別の形態によれば、溝は、軸及び被動歯車に設けられた複数の歯を少なくとも部分的に切っている。止め輪を受容するための溝が、軸及び被動歯車に設けられた複数の歯を部分的に切るという構成により、製造は簡単になり、それというのは、溝の両側に位置する複数の歯が、溝の成形により複数の歯を軸線の方向で分割する前に、一緒に成形されるからである。
【0013】
更に別の形態によれば、補助装置は操舵アシストポンプである。
【0014】
特に有利な形態によれば、被動歯車の、組み込み中にばね輪又はばねリングを広げる複数の歯の歯エッジが面取りされている。歯エッジの面取りにより、一面では、軸の組み込みが容易になり、かつ他面では、組み込みの際の軸の損傷のおそれが著しく低下される。
【0015】
軸を連結する装置の製造のための本発明に係る方法は、次の工程を有し、つまり、
− 止め輪を部分的に受容するための第1の溝を被動歯車に成形する工程、
− 止め輪を部分的に受容するための、第1の溝に対応配置された第2の溝を軸に成形する工程、及び
− 止め輪を第1の溝内に組み込む工程を有している。
【0016】
有利な形態によれば、第1及び第2の溝が、軸若しくは被動歯車に設けられた複数の歯間に成形される。
【0017】
別の形態によれば、第1及び第2の溝の成形に際して、軸若しくは被動歯車に設けられた複数の歯が少なくとも部分的に切られる。
【0018】
次に、本発明を、添付の図面に示した特に有利な実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】後配置される補助装置のための接続フランジを備える圧力空気コンプレッサを示す図である。
【図2】付属している軸を備える従来技術に基づく歯車伝動装置を示す図である。
【図3】本発明に係る連結装置を非連結状態で示す図である。
【図4】本発明に係る連結装置を連結状態で示す図である。
【0020】
図面において、同じ符号は、同じ若しくは同等の部分を示している。
【0021】
図1は、後配置される補助装置のための接続フランジを備えた圧力空気コンプレッサを示しており、図2は、公知技術に基づく、付属している軸を備えた歯車伝動装置を示している。図1及び図2については既に説明してある。
【0022】
図3は、本発明に係る連結装置を非連結状態で示している。軸12、被動歯車14及び止め輪22が分解斜視図で示されている。図示の部分は、軸12の回転軸線に相当する軸線の方向18で組み合わされる。この場合に、まず止め輪22が、被動歯車14の内側の歯部28上で溝24内に配置される。次いで、軸12が軸線の方向18で被動歯車14内に押し込まれ、この場合に、軸12に設けられた複数の歯28が、被動歯車14の内側の複数の歯28と一緒に1つの噛み合い部を形成する。軸12の歯28が、溝24内に配置されている止め輪22にぶつかると直ちに、止め輪が、半径方向に広げられ、この場合に、歯28の、止め輪22に向けられた歯側面が、力ピークや裂断損傷を避けるために、丸味を付けられていてよい。軸線の方向18での軸12と被動歯車14との引き続く押し合わせに際して、止め輪22が最終的に、軸12の歯28間に配置されている溝26に達する。
【0023】
図4は、本発明に係る連結装置を連結状態で示している。図3に開示の連結装置10が、連結された状態で断面図で描かれている。止め輪22は、同時に溝24,26内にあり、この場合に、溝26は軸12上の歯断面に基づき見えていない。
【0024】
被動歯車14における溝24の配置は、必ずしも、軸線方向18での被動歯車14の軸線方向延びに対して対称的でなくてよい。特に、溝24を内側の歯28の縁部に設けることも考えられる。
【0025】
明細書、図面及び請求範囲に記載された本発明の構成事項は、個別に、或いは任意に組み合わせて本発明の実施のために用いられるものである。
【符号の説明】
【0026】
10 装置、 12 軸、 14 被動歯車、 16 歯車伝動装置、 18 軸線の方向、 20 回転軸線、 22 止め輪、 24,26 溝、 28 歯、 30 圧力空気コンプレッサ、 32 ケーシング、 34 接続フランジ、 36 駆動軸、 38 駆動歯車、 40 シリンダーヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車の補助装置の駆動のための軸(12)を、被動歯車(14)を含む歯車伝動装置(16)と連結するための装置(10)であって、軸(12)が軸(12)の回転軸線(20)に対して平行な軸線の方向(18)で止め輪(22)を介して固定可能である形式の装置において、止め輪(22)に対応配置された溝(24,26)が、被動歯車(14)及び軸(12)に配置されていることを特徴とする、商用車の補助装置の駆動のための軸を歯車伝動装置と連結するための装置。
【請求項2】
溝(24,26)が、軸(12)及び被動歯車(14)に設けられた複数の歯(28)間を延びている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
溝(24,26)が、軸(12)及び被動歯車(14)に設けられた複数の歯(28)を少なくとも部分的に切っている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
補助装置が操舵アシストポンプである請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
被動歯車(14)の、組み込み中にばね輪(22)を広げる複数の歯(8)の歯エッジが面取りされている請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
商用車の補助装置の駆動のための軸(12)を、被動歯車(14)を含む歯車伝動装置(16)と連結する装置(10)の製造のための方法であって、軸(12)が軸(12)の回転軸線(20)に対して平行な軸線の方向(18)で止め輪(22)を介して固定可能となっている形式の方法において、
止め輪(22)を部分的に受容するための第1の溝(24)を被動歯車(14)に成形する工程、
止め輪(22)を部分的に受容するための、第1の溝(24)に対応配置された第2の溝(26)を軸(12)に成形する工程、及び
止め輪(22)を第1の溝(24)内に組み込む工程、
を有していることを特徴とする、商用車の補助装置の駆動のための軸を歯車伝動装置と連結する装置の製造のための方法。
【請求項7】
第1及び第2の溝(24,26)が、軸(12)若しくは被動歯車(14)に設けられた複数の歯(28)間に成形される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1及び第2の溝(24,26)の成形に際して、軸(12)若しくは被動歯車(14)に設けられた複数の歯(28)が少なくとも部分的に切られる請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−511000(P2013−511000A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538302(P2012−538302)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067094
【国際公開番号】WO2011/058000
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】