説明

噴霧凍結乾燥により脂肪親和性活性物質の製剤を製造する方法

本発明は、a.該脂肪親和性化合物を水と混和性である有機溶媒に溶解し、そして該糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を水に溶解し;b.溶解した脂肪親和性化合物および溶解した糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を均質な混合物が得られるような方法で混合し;c.該混合物を噴霧凍結乾燥することを特徴とする、脂肪親和性化合物が糖ガラスに導入される、脂肪親和性化合物およびガラスの糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を含んでなる製薬学的組成物の製造の方法に関する。本発明はさらに、Δ9−テトラヒドロカンナビノール、ジアゼパムおよびシクロスポリンAのような脂肪親和性化合物を含有する形成された製薬学的製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然カンナビノイド化合物、特にΔ−テトラヒドロカンナビノール(THC)のような脂肪親和性活性物質を噴霧凍結乾燥することにより向上した安定性および流動性を有する製薬学的製剤を製造する方法に関する。本発明はさらに、特定の粒子特性を有する得られた製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水と混和性の有機溶媒における脂肪親和性物質の溶液と水における糖の溶液を混合することにより得られる混合物から、好ましくは凍結乾燥により得られる、脂肪親和性物質の安定な糖ベースの固体分散体の使用を記述する。この特許出願において、オリゴ−フルクトースイヌリンはその高いガラス転移温度のために優れた安定化担体であることが示される。また、イヌリンガラスにおける適切な導入は、酸化を受けやすい活性化合物の酸化を防ぐことも示される。さらに、凍結乾燥した材料を乾式造粒して直接圧縮用の自由流動粉末を得ることができる。上記の製剤は、経口投与形態物を製造するために、そして肺投与に適当な生成物を製造するために用いることができる。この特許出願において、噴霧乾燥もまた用いられるが、この乾燥技術を用いる場合、真のそして完全な固体分散体は得られず、凍結乾燥でより保存中により高い分解率をもたらす。
【0003】
特許文献1に記載の方法は、凍結乾燥により製造した場合に優れた特性を有する生成物をもたらすが、それは容易にスケールアップすることができないという重大な欠点を有する。凍結乾燥に使用する水における親水性糖および水と混和性の有機溶媒における脂肪親和性化合物の混合物は、熱力学的に準安定であるので、ある期間の後に相分離を与える傾向がある。溶液がTg’未満で急速に凍結される場合にのみ、相分離は妨げられる。いったん溶液が凍結されると、分子運動性は、相分離がもはや可能でないような程度まで減少している。また生成物が乾燥されそしてガラス状態である場合もまた、相分離は可能でない。しかしながら、製造工程中の相分離の防止は、冷却工程が迅速に行われる場合に得られるだけである。溶液の冷却が遅い場合、より低い温度での相分離の増加した傾向のために脂肪親和性もしくは親水性溶質の相分離が起こり得る。従って、溶質の1つの相分離が起こる前に溶液がTg’未満の温度まで冷却されることは最も重要である。相分離が起こる場合、真の固体分散体は得られず、そして保護されていない脂肪親和性化合物の集まりからなるパッチが固体分散体において生じる。これは、保存中の酸化および分解に対する向上した安定性のような、真の固体分散体の形成により得られる利点の喪失をもたらす。
【0004】
従って、混合物の凍結は、2つの溶液の混合後に非常に短期間で行われなければならない。これは小規模では容易に行うことができるが、大容量でこの工程を行うことは凍結時間があまりに長いので難しい。従って、通常の凍結乾燥工程のスケールアップは、多数の小規模バッチを用いる場合に行うことができるだけである。あるいはまた、いくらかの相分離が起こり、より安定性の低い生成物をもたらすことが受け入れられなければならない。
【0005】
工業規模で製造することができる、優れた安定性、速い水溶解および向上した生物学的利用能を有する脂肪親和性物質の製剤を製造することは本発明の目的である。それらを例えば肺投与に非常に適するようにする都合のよい分散および空気力学的特性を有する微細球状粒子で製剤を製造することは本発明のさらなる目的である。
【0006】
本発明の枠組みにおいて、脂肪親和性活性化合物という表現は、1mg/mlより低い水溶解度を有する活性化合物を意味する。本発明は、そのような低い水溶解度を有する活
性化合物に特に有用であるが、0.5mg/mlより低いかもしくはさらに0.1mg/mlより低い水溶解度を有する化合物にさらにより有用である。脂肪親和性活性化合物の例は、Δ−テトラヒドロ−カンナビノール、ジアゼパムおよびシクロスポリンAである。
【0007】
糖ガラス(sugar glass)をもたらす、水中の糖溶液および水と混和性の有機溶媒中の脂肪親和性化合物の溶液の混合物からの脂肪親和性化合物の噴霧凍結乾燥は、大規模に行うことができ、より優れた安定性、任意の粒径減少なしの肺投与のための最適な空気力学的粒径および空気力学的粒径分布、肺投与に使用する場合のより容易な脱アグロメレーション(de−agglomeration)のような、特許文献1に開示される凍結乾燥方法に従って得られる生成物と比較して所望の特性およびさらに優れた特性を有する生成物をもたらすことが驚くべきことに見出された。
【0008】
噴霧凍結技術において、直前に、混合した溶液の小液滴を冷却(Tg’をはるかに下回る温度)ガス(例えば空気)もしくは冷却流体(例えば液体窒素)に噴霧する。エアロゾルの液滴径は、粒子の目的とする用途および溶液中の固形物の量のような異なる因子によって決まる。一般に、エアロゾル液滴の大きさは1〜5000μmの間、好ましくは1〜500μmの間、そして最も好ましくは5〜500μmの間である。この凍結乾燥技術で大容量の溶液を凍結し、そしてさらに凍結乾燥して粉末を形成することができる。さらに、両溶液の混合後に相分離を防ぐために十分に素早く噴霧が行われるならば、高濃度の溶質を適用することができる。
【0009】
噴霧凍結技術は、先行技術から既知である。非特許文献1および非特許文献2は、親水性活性物質を含有する粉末として考えられなければならない、タンパク質/ペプチドに基づく製剤のような生物製薬学的粉末のための異なる粉末製造技術の使用を記述する。第一の公開において、便宜上そして簡単にするために、凍結乾燥および噴霧乾燥は生物製薬学的粉末の形成のための最適な方法であると結論付けられる。あるタンパク質は熱に不安定であり、そして熱風による熱変性に耐えることができないので、これらのタンパク質には噴霧凍結乾燥は最適な方法であり得る。第二の公開は、吸入粉末の製造において噴霧乾燥と噴霧凍結乾燥の2つの工程を比較する。この公開において、噴霧凍結乾燥工程は、噴霧乾燥工程よりもタンパク質の安定性に影響を与えるかもしれない多くのストレス事象を伴うかもしれないと強調される。両方の論文において、安定性は乾燥工程中に形成される生成物の品質への乾燥工程の影響に関する。しかしながら、両方の論文は、保存中の粉末生成物の安定性について触れていない。
【特許文献1】WO03/082246明細書
【非特許文献1】Y−F Maa and S.J.Prestrelski(Current Pharmaceutical Biotechnology 2000,1,283−302)
【非特許文献2】Y−F Maa et al.,Pharm.Res.1999,16,294−54
【発明の開示】
【0010】
本発明は、
a)該脂肪親和性化合物を水と混和性である有機溶媒に溶解し、そして糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を水に溶解し;
b)溶解した脂肪親和性化合物および溶解した糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を均質な混合物が得られるような方法で混合し;
c)該混合物を噴霧凍結乾燥する
ことを特徴とする、脂肪親和性化合物が糖ガラスに導入される、脂肪親和性化合物およびガラスの糖(a glass of a sugar)、糖アルコール、糖の混合物もし
くは糖アルコールの混合物を含んでなる製薬学的組成物の製造の方法に関する。
【0011】
2つの溶液の混合は、好ましくは、活性化合物および1種もしくは複数種の糖もしくは1種もしくは複数種の糖アルコールの混合物の液滴の噴霧の直前に連続的にもしくは半連続的に行われる。本発明の枠組みにおいて半連続的は、2つの溶液がバッチに関して作られるが、混合および噴霧乾燥は溶液が完全に使用されるまで好ましくは連続的に行われることを意味する。混合と噴霧凍結乾燥との間の時間は好ましくは15分より短く、より好ましくは10分より短く、そして最も好ましくは5分未満である。
【0012】
噴霧凍結乾燥直前の混合物の乾燥物質含有量は好ましくは5%より高く、より好ましくは8%より高く、そしてさらにより好ましくは10%より高い。噴霧凍結乾燥直前の混合物における活性物質の含有量は好ましくは0.5%より高く、より好ましくは1.0%より高く、さらにより好ましくは2.0%より高く、そして最も好ましくは4.0%以上である。
【0013】
噴霧凍結乾燥工程に関して、US5,922,253に記述される装置のような、いくつかの装置を用いることができる。
【0014】
本発明の枠組みにおいて、糖という表現には多糖が包含され、そして糖アルコールという表現には多糖アルコールが包含される。形成される糖ガラスは、好ましくは、通常の環境条件で50℃より高いガラス転移温度を有する。本発明において好ましい糖は、非還元糖である。非還元糖は、反応性アルデヒドもしくはケトン基を有さないかもしくは形成することができない糖である。非還元糖の例は、トレハロースおよびイヌリンのようなフルクタンである。
【0015】
本発明において使用するために好ましい非還元糖は、フルクタンもしくはフルクタンの混合物である。フルクタンは、複数のアンヒドロフルクタン単位を含有する任意のオリゴ糖もしくは多糖を意味すると理解される。フルクタンは多分散鎖長分布を有することができ、そして直鎖もしくは分枝鎖を有することができる。好ましくは、フルクタンはイヌリンにおけるように主にβ−1,2結合を含有するが、それらはまたレバンにおけるようにβ−2,6結合を含有することもできる。適当なフルクタンは自然源に直接由来することができるが、改変を受けていることもできる。
【0016】
改変の例は、鎖長の延長もしくは短縮をもたらすそれ自体既知の反応である。天然に存在する多糖に加えて、鎖を短縮している加水分解生成物および改変された鎖長を有する分画生成物のような工業的に製造された多糖もまた本発明において適当である。減少した鎖長を有するフルクタンを得るための加水分解反応は、酵素的に(例えばエンドイヌラーゼで)、化学的に(例えば酸性水溶液で)、物理的に(例えば熱的に)もしくは不均一触媒作用の使用により(例えば酸性イオン交換体で)実施することができる。
【0017】
イヌリンのようなフルクタンの分画は、とりわけ、低温での結晶化、カラムクロマトグラフィーでの分離、膜濾過およびアルコールでの選択的沈殿によって成し遂げることができる。長鎖フルクタンのような他のフルクタンは、単糖および二糖がそれから取り除かれているフルクタンから、例えば結晶化によって、得ることができる。その鎖長が酵素的に延長されているフルクタンもまた、本発明におけるフルクタンとして働くことができる。さらに、その還元末端基、通常はフルクトース基が例えば遷移金属触媒の存在下で水素化ホウ素ナトリウムもしくは水素で還元されているフルクタンである、還元フルクタンを用いることができる。
【0018】
架橋フルクタンおよびヒドロキシアルキル化フルクタンのような、化学的に改変されて
いるフルクタンもまた用いることができる。全てのこれらのフルクタンにおける平均鎖長は、数平均重合度(DP)として表される。DPという略語は、オリゴ−もしくはポリマーにおける糖単位の平均数として定義される。
【0019】
本発明におけるさらにより好ましい還元糖は、イヌリンもしくはイヌリンの混合物である。イヌリンは、分子の還元末端でα−D−グルコピラノース単位を有するβ−1,2結合したフルクトース単位からなるオリゴ糖および多糖であり、そして異なる重合度(DP)で入手可能である。好ましいイヌリンは、6より大きいDPを有するイヌリンもしくは各イヌリンが6より大きいDPを有するイヌリンの混合物である。さらにより好ましいのは、10〜30の間のDPを有するイヌリンもしくはイヌリンの混合物である。最も好ましいのは、15〜25の間のDPを有するイヌリンもしくはイヌリンの混合物である。イヌリンは、とりわけ、ユリ科およびキク科の植物の根および塊茎に存在する。イヌリンの製造のための最も重要な供給源は、キクイモ、ダリアおよびチコリの根である。工業生産は、主にチコリの根から開始する。異なる自然源に由来するイヌリン間の主な違いは重合度(DP)にあり、それはキクイモにおける約6からチコリの根における10〜14およびダリアにおける20より高くまで異なることができる。イヌリンは、非晶質状態において製薬学的製剤における補助剤としての適用に好都合の生理化学的特性を有するオリゴ糖もしくは多糖である。
【0020】
これらの生理化学的特性は:(調整可能な)高いガラス転移温度、還元アルデヒド基がないことおよび通常は低い率の結晶化である。さらに、イヌリンは無毒であり、そして安価である。
【0021】
脂肪親和性化合物対糖もしくは糖アルコールの重量比は、典型的に1:1〜1:200の間の範囲、より好ましくは1:10〜1:50の間の範囲、そして最も好ましくは1:12〜1:25の間の範囲である。
【0022】
糖、水および脂肪親和性化合物と十分な時間にわたって安定である混合物を形成するために適当である有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、酢酸エチル、1,4−ジオキサンおよび低級アルコールのような水と混合できる溶媒である。溶媒は噴霧乾燥もしくは凍結乾燥により取り除かれなければならないので、溶媒はまた好ましくは乾燥温度で適当な蒸気圧を有するべきでもある。従って、低級1,4ジオキサンおよびC〜Cアルコールとして定義されるアルコール(ここで、アルキル鎖は分枝状もしくは非分枝状であることができる)が好ましい。より好ましいアルコールは、エタノール、n−プロピルアルコールおよびt−ブチルアルコールのようなC〜Cアルコールである。最も好ましい溶媒は、1,4−ジオキサンおよびt−ブチルアルコールである。
【0023】
調合される好ましい化合物は、天然カンナビノイド化合物である。本発明の枠組みにおいて、「天然カンナビノイド化合物」という表現には、天然カンナビノイドの誘導体化により得ることができそして天然カンナビノイドのように不安定であるカンナビノイドの非天然誘導体が包含される。好ましい天然カンナビノイド化合物は、Δ−テトラヒドロカンナビノールである。
【0024】
さらなる態様において、本発明はまた、該組成物が6〜5000μmの間、好ましくは6〜500μmの間、さらにより好ましくは8〜25μmの間の平均幾何学的粒径および4より低いスパン(span)を有する球状粒子からなることを特徴とする、脂肪親和性化合物が糖ガラスに導入される、噴霧凍結乾燥により得られる、脂肪親和性化合物およびガラスの糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を含んでなる製薬学的組成物にも関する。本発明の枠組みにおける球状では、粒子の外周が鋭角を有さずそ
して2次元投影のアスペクト比が0.6を超えることを意味する(A.M.Bouwman et al,Power Technology 2004,146,66−72およびP.Schneiderhoehn,Eine vergleichende Studie ueber Methoden zur quantitativen Bestimmung von Abrundung und Form an Sandkoernen,Heidelberger Beitraege zur Mineralogie und Petrographie 1954,4,82−85を参照)。本発明の組成物において、好ましくは脂肪親和性化合物と該糖、該糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物との間でゲスト−ホスト複合体は形成されない。
【0025】
得られる粒子は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、そして最も好ましくは90%以上の多孔度を有する。
【0026】
得られる粒子は、40m/gを超える、好ましくは80m/gを超える、そして最も好ましくは100m/gを超える比表面積を有する。
【0027】
なおさらなる態様において、本発明はまた、該組成物が1〜5μmの間の平均空気力学的粒径および5より低いスパンを有する球状粒子からなることを特徴とする、脂肪親和性化合物が糖ガラスに導入される、噴霧凍結乾燥により得られる、脂肪親和性化合物およびガラスの糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を含んでなる製薬学的組成物にも関する。
【0028】
上記の粒径は、製粉のような任意の粒径減少工程なしに、噴霧凍結乾燥工程により直接得られる。本発明の生成物は、10%より低い分解生成物の量および15%より低い相分離のパーセンテージを含む。シンク状態(sink conditions)を保証する、水性溶解媒質を用いる溶解試験において、材料は45分以内に溶解する。粒子の物理的特性(例えば、粒子の空気力学的粒径分布、形状および脆弱性)は、肺投与に使用することができるエアロゾルへの分散に該製造を特に適当にする。粒径が分散中の破損のために減少される場合、これは末梢肺沈着の機会を増やす。
【0029】
以下の実施例はさらに詳細に本発明をさらに説明することのみを目的とし、従って、これらの実施例は決して本発明の範囲を限定すると考えられない。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
材料および方法
【0031】
[実施例1a]
材料
以下の材料は分析グレートのものであり、そして供給されるとおり使用した:メタノール、エタノールおよび第三級ブタノール(TBA)。23の数平均重合度(DP)を有するイヌリン、タイプTEX803!は、Sensus,Roosendaal,The Netherlandsにより提供された。Δ−テトラヒドロカンナビノールは、Unimed Pharmaceuticals Inc.,Marietta,USAの贈り物であった。脱塩水を全ての場合において使用した。ジアゼパムは、Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Steinheim,Germanyから入手した。シクロスポリンAは、Bufa B.V.,Uitgeest,The Netherlandsから入手した。
【0032】
[実施例1b]
方法
溶解実験
溶解実験は、USP溶解装置I(バスケット)を用いて0.25%のSDS(w/v)溶液において三重に実施した。
【0033】
噴霧凍結乾燥後の多孔度の決定
噴霧凍結乾燥後の多孔度(ε)は、以下の方法に従って測定した。イヌリンを6/4 v/vの水/TBA混合物に溶解した。イヌリン濃度(c)は、13.3mg/mlから100mg/mlまで異なった。これらの溶液をチューブにゆっくりとポンプで通して同じ大きさの液滴を生成せしめた。生成した液滴の体積(Vdrop)は、5.00mlの体積を満たすために必要な液滴の数を計数することにより決定した。液滴は、液体窒素を満たしたバケツにそれらを落とすことにより凍結させた。凍結溶液球をキャリブレーション用の定規と一緒にデジタルカメラにより撮影した。Sigma Scan Pro5.0(Jandel Scientific,Erkrath,Germany)を用いて凍結液滴の断面積を決定した。次に、直径を計算した。噴霧凍結乾燥した粒子の直径(d)は、同じ方法に従って決定した。多孔度は、以下の式で計算した:
【0034】
【数1】

【0035】
イヌリンの密度、ρinulinには、1.534g/cmを採用した(H.J.C.Eriksson et al.,Int.J.Pharm.2002,249,59−70)。
【0036】
走査電子顕微鏡法(SEM)
両面接着テープをアルミニウム標本ホルダー上に置き、その上に少量の粉末を置いた。スパッタコーター(Balzer AG,タイプ120B,Balzers,Liechtenstein)を用いて、粒子を約10〜20nmの金/パラジウムで被覆した。1.5kVの加速電圧でJEOL走査電子顕微鏡(JEOL,タイプJSM−6301F,Japan)を用いて走査を行った。全ての顕微鏡写真は、2000の倍率で撮影した。
【0037】
レーザー回折
幾何学的粒径分布は、Sympatec HELOSコンパクトKAレーザー回折装置(Sympatec GmbH,Clausthal−Zellerfeld,Germany)で測定した。粉末は、0.5barでRODOS乾燥粉末ディスペンサーを用いるかもしくは60L/分で3秒間空気分級機技術に基づく試験吸入器と組み合わせた吸入器アダプター(INHALER,Sympatec GmbH,Clausthal−Zellerfeld,Germany)を用いて分散させた(A.H.de Boer et al.Int.J.Pharm.2002,249,233−245;A.H.de Boer et al.,Int.J.Pharm.2003,260,187−200)。100mmのレンズを使用し、そして計算はフラウンホーファー理論に基づいた。示される全てのデータは、少なくとも4つの測定の平均である。
【0038】
示差走査熱量測定
噴霧凍結乾燥した粉末の熱挙動は、示差走査熱量計(DSC2920,TA Instruments,Gent,Belgium)上で変調示差走査熱量測定(MDSC)により決定した。0.318℃の変調振幅、60秒の変調期間および2℃/分の加熱速度を
使用した。キャリブレーションは、インジウムで行った。標準的なアルミニウムサンプルパンを使用した。測定中に、サンプルセルに窒素を35mL/分の流速でパージした。走査の前に、サンプルパンを2℃/分で50℃まで加熱して全ての残留湿気を除いた。次に、サンプルを−20℃に冷却し、そして次に180℃まで走査した。ガラス転移温度(Tg)は、リバーシングシグナル(reversing signal)における比熱の変化の変曲点として定義された。
【0039】
BET分析
77Kで5点窒素吸着等温線をTristar表面分析装置Micromeritics Instrument Corporation,Norcross(GA),USAで測定した。BET理論(S.Brunauer et al.,J.Am.Chem.Soc.1938,60,309−319)を用いて表面積を計算した。真空デシケーターから採取した全ての噴霧凍結乾燥粉末で二重分析を行った。あらゆる薬剤負荷について2つの異なるバッチを分析した。
【0040】
安定性研究
純粋なTHCの分解を調べるために、2.52mgのTHCを含有するメタノール中のTHCの溶液70μLを20mLのガラスバイアルに入れた。それらを乾燥窒素のフロー下で一晩放置してメタノールを蒸発させた。THCの得られる薄層は、バイアルの底(4.5cm)上に広がった。THCを含有する噴霧凍結乾燥および凍結乾燥材料をバイアルに秤量した。全てのサンプルを20℃/45%RHおよび60℃/8%RHの気象室において保存した。サンプル(n=3)を異なる時間間隔で採取し、そしてvan Drooge et al.(Eur.J.Pharm.Sci.2004,21,511−518)により記述される方法を用いてHPLCを使用して分析した。簡潔に言えば、サンプルをメタノールで抽出した。Waters 717+オートサンプラーを用いて50μLの上清をChrompack Nucleosil 100 C18カラム(4.6x250mm)が続くプレカラム(HPLCプレカラムインサート、μBondapak C18 Guardpak)上に注入した。214nmでの吸光度をUV検出器(Shimadzu SPD−M6A)で測定した。クロマトグラムおよびピーク面積は、積分器(waters 741 Data Module)およびKromasystem 2000ソフトウェアで分析した。溶離剤(メタノール/水 92/8(v/v)に加えて1リットルの溶離剤当たり5滴の濃硫酸)の流速は、1.0mL/分に設定した。未処理のTHCのクロマトグラムにおいて、大きいピークが7.5分の保持時間で観察された。あらゆる一連のHPLCの実行において、いくつかのキャリブレーションサンプルを含んだ。
【0041】
カスケードインパクター分析
粉末製剤のインビトロ沈着をAstraタイプ(Erweka,Heusenstamm,Germany)のマルチステージリキッドインピンジャー(MSLI)で試験した。欧州薬局方、第4版、2002により記述される方法に従って60L/分の流速を3秒間用いた。純粋の使用はTHCの低い水溶解度のために不均一な溶液および不適切なすすぎをもたらしたので、水とエタノールの混合物(90%v/v水)を溶媒として用いた。各インパクターステージに20mLの溶媒を満たした。最終ステージにおいて、第4ステージを通過した粒子の保持のために乾燥ガラスフィルター(Gelman Sciences,タイプA/E,Michigan,USA)を使用した。空気分級機技術に基づく以前に記述された試験吸入器(A.H.de Boer et al.Int.J.Pharm.2003,260,186−200)を制御された周囲条件(20℃/50%RH)下で使用し、そして各実験において10回の吸入を行った。使用した全ての粉末は、20℃および45%RHで気象室において前平衡化した。2つの独立して製造した噴霧凍結乾燥バッチを分析した。沈着は、カスケードインパクター分析において使用した粉末の重量に対する重量画分(weight fraction)粉末として定義され、そして薬剤負荷およびイヌリン濃度から計算された。異なるステージの各々の上のイヌリン濃度は、アントロンアッセイ(T.A.J.Scott et al.Analytical Chemistry 1953,25,1656−1661)を用いて分析した。1.00mLのサンプルを2.00mLのアントロン試薬(濃硫酸中0.1%w/v)と混合した。混合のエンタルピーのために、サンプルはその沸点まで加熱された。次に、沸騰混合物を室温まで冷却した。45分後にサンプルをボルテックスし、そして200μLのサンプルを630nmでプレートリーダー(Benchmark Platereader,Bio−Rad,Hercules,USA)において分析した。あらゆるアッセイにおいて、適切な媒質中の適切な噴霧凍結乾燥粉末の2つの11点較正曲線を定めた。実験の各々において、回収は90%を上回った。
【0042】
[実施例2]
イヌリンガラスを形成するためのTHCの噴霧凍結乾燥粉末の製造
噴霧凍結乾燥粉末を製造するために、様々な濃度のイヌリン水溶液およびTBA溶液中10mg/mLのTHCを調製した(表1)。
【0043】
【表1】

【0044】
次に、これらの溶液を6/4の水/TBA体積比で混合した。THCおよびイヌリンの両方を含有する溶液をBuechi 190ミニ噴霧乾燥機(Buchi,Flawil,Switserland)の0.5mmのノズルで噴霧した。液体供給速度は10.5mL/分であり、そして噴霧空気流は400L/hに設定した。ノズルの出口を液体窒素の約10cm上に置いた。ノズルの内側の溶液の凍結を防ぐために熱水をノズルのジャケットにポンプで通した。得られる懸濁液(液体窒素における溶液の凍結液滴)を凍結乾燥機(Christ,モデルAlpha 2−4凍結乾燥機,Salm and Kipp,Breukelen,The Netherlands)に移した。全ての窒素が蒸発されるとすぐに真空をかけた。最初の24時間の間、圧力を0.220mbarにそして棚温度を−35℃(コンデンサー温度−53℃)に設定した。第二の24時間の間に、棚温度を徐々に20℃まで上げ、一方、圧力を0.05mbarまで減少した。凍結乾燥機からサンプルを取り除いた後に、それらを室温で少なくとも1日間真空デシケーターにおいてシリカゲル上で保存した。表1に示されるように、薬剤負荷は、THC濃度を一定に保ちながら様々なイヌリン濃度の噴霧凍結乾燥溶液によって異なった。固体分散体を凍結乾燥(比較のため)により製造する場合、以前に記述された凍結乾燥方法に従った(D.J.Van Drooge et al.,Eur,J.Pharm.Sci.2004,21,511−518)。この方法は、噴霧凍結乾燥材料の乾燥中に適用するのと同じ装置設定を使用する。
【0045】
[実施例3]
噴霧凍結乾燥したTHC含有粉末の特性
噴霧凍結乾燥した固体分散体は、溶液中の全固体濃度により約20〜85mg/cmの間である低いバルク密度および94%〜99%の間である非常に高いバルク多孔度を有する白色粉末として生じた。さらに、粉末は容易に舞い上がり、それは吸入のためのその適用性の第一の表示である。
【0046】
異なる粉末のSEM写真を図1に示す(それぞれ、A、B、C、D、EおよびFと称する4、8、12、16、20および30wt%の薬剤負荷の代表的なSEM写真)。
【0047】
それらは、全ての場合において高い多孔度および粗い表面を示した。表面性状は薬剤負荷が増えた場合に変わらないが、いくらかより壊れた粒子が最も高い薬剤負荷で観察され、高い脆弱性を示唆した。
【0048】
取り扱いの問題のために、噴霧凍結乾燥粒子の多孔度を直接測定することはできなかった。しかしながら、より大きい球で概算を行うことができた。液滴形成、凍結および乾燥後の粒径への溶質濃度の影響を調べた。結果を表IIに示す。
【0049】
【表2】

【0050】
液滴径は3.45mmであり、そしてイヌリン濃度に依存しない。凍結後に、直径のわずかな増加が観察され、イヌリンを含有する水/TBA溶液が凍結の際にわずかに膨張することを示唆する。膨張は、イヌリン濃度に関係しなかった。さらに、予想することができるように、より低濃度の溶液の噴霧凍結乾燥は、より高い多孔度の粒子をもたらした。しかしながら、凍結溶液球の凍結乾燥後に、全ての粒子は有意により小さかった。乾燥中に、粒子直径は大部分の濃溶液について液滴径の84.1%まで、そしてより低いイヌリン濃度を有する粒子についてさらに多く(79.7〜66.9%)減少した。これは、低濃度溶液から製造した粒子が乾燥中により縮小し、それはそれらのより高い多孔度およびそれらの結果としてより低い強度によって引き起こされることを意味する。
【0051】
全てのTHC含有粉末の幾何学的体積中央径(x50)を2つの異なる分散方法を用いてレーザー回折で分析した。第一に、測定中の分散力を最小限に抑えるために材料を0.5barの比較的低い圧力でRODOSディスペンサーで分散させた。第二に、実際に吸入器から出る幾何学的粒径を測定するために粉末を60L/分で3秒間試験吸入器を用いて分散させた。これらの試験条件は、カスケードインパクター分析中の条件と対応する。RODOS測定で、30wt%の薬剤負荷を除く全ての粉末の幾何学的体積中央径は、SEM写真からの概算とほぼ対応することが見出された(図2参照:0.5barでRODOS分散で(網掛けの縦列)そして60L/分で3秒間試験吸入器分散で(開いた縦列)レーザー回折により決定される、噴霧凍結乾燥粉末の中央体積径(エラーバーは標準偏差を表す、n4))。
【0052】
30wt%の薬剤負荷で、粒径はより小さいようである。明らかに、それらのより高い多孔度のために、粒子が非常に壊れやすいのでRODOSで生成される比較的低い分散力はこれらの粉末を壊しそして脱凝集させるためにすでに十分に大きい。粉末が試験吸入器で分散される場合に生成されるはるかに大きい分散力は、より小さい粒子をもたらす(図2参照)。この場合、多孔度のより低いそして脆弱性がより低い粒子(より低い薬剤負荷)もまた壊され、そして脱凝集される。明らかに、それらは加えられる分散力による崩壊を可能にするために十分に壊れやすい。崩壊は、吸入中に高い肺胞沈着を得るために好都合であり得る(さらに参照)。
【0053】
全ての粉末のBET比表面積は、約70〜110m/gの間であった。これらの非常に高い比表面積のものは、噴霧凍結乾燥材料に関する以前に報告されたデータと一致する。
【0054】
最後に、粉末を変調示差走査熱量測定(MDSC)により特性化した。表IIIにおいて、THC、非晶質イヌリンおよび異なる固体分散体のガラス転移温度(Tg)を提示する。前に報告されるように、THCは結晶化に抵抗するのでTgより上でもまた非晶質状態のままである。9.3℃のTgが純粋なTHCについて観察された。この研究において使用するイヌリンタイプは、155℃のTgを有する。これらの結果は、イヌリンガラスにおけるTHCの導入がイヌリンのTgに影響を与えないことを示す。
【0055】
【表3】

【0056】
最も高い薬剤負荷でのみ、THCのTgを識別することができた。これは、この薬剤負荷でTHC分子がイヌリンに均一に分散されるが浸透系を形成することもしくはTHCがもはやイヌリン担体の全体にわたって均一に分散されないことを示唆する。いずれの場合においても、THC分子は隣接し、純粋なTHCのTgをもたらす。
【0057】
[実施例4]
薬剤負荷の関数としての噴霧凍結乾燥イヌリンガラス粉末におけるTHCの安定性
白色粉末として生じるTHCを含有する噴霧凍結乾燥固体分散体は、期限において着色を示さず、これはイヌリンガラスによる不安定なTHCの有効な安定化の第一の表示である。THCの安定化へのより徹底的な調査の結果を図3に示す(4および8wt%のTH
Cを有する噴霧凍結乾燥粉末におけるそして純粋なTHCサンプルにおける保存時間の関数としてのTHC含有量。A:20℃/45%RHでの保存;網掛けの四角:純粋なTHC、開いた四角:4wt%、詰まった四角:8wt%。B:60℃/8%RHでの保存;網掛けの四角:純粋なTHC、開いた四角:4wt%、詰まった四角:8wt%)。4および8wt%のTHCを含有する噴霧凍結乾燥粉末におけるTHC含有量を最初に時間の関数としてプロットする。純粋なTHCは、20℃/45%RHの空気にさらした場合に約50日以内に完全に分解することが見出された(図3A参照)。しかしながら、それをガラス状イヌリンマトリックスに導入すると、約80%のTHCを300日後に回収することができた。60℃/8%RHのよりストレスの多い保存条件を選択する場合、純粋なTHCは15日以内に完全に分解した(図3B参照)。この場合もやはり、ガラス状イヌリンマトリックスはTHC分解を減速した。分解速度の違いは、4%と8%の薬剤負荷の間で観察されなかった。明らかに、両方の薬剤負荷について、THCはイヌリンのマトリックスによりその環境から効果的に保護され、そしてそれにより強力に安定化された。
【0058】
固体分散体におけるTHC安定化への薬剤負荷の影響をさらに詳細に調べるために、薬剤負荷において広範囲の噴霧凍結乾燥粉末を評価した。THC安定化への凍結速度の影響を調べるために、噴霧凍結乾燥の代わりに凍結乾燥により製造される固体分散体を安定性研究に供した。20℃/45%RHで全ての噴霧凍結乾燥粉末は30wt%の薬剤負荷まででさえTHCを効果的に安定させるようであった(図4参照:薬剤負荷の関数としての固体分散体におけるTHCの20℃/45%RTでの安定性。示されるのは、THCの回収である(黒い四角:3.5ヶ月後の噴霧凍結乾燥バッチ;白いひし形:1.5ヶ月後の凍結乾燥材料、標準偏差は全て15%)。全ての噴霧凍結乾燥粉末は、3.5ヶ月間の保存後に最初のTHC含有量の85%より多くを含有した。凍結乾燥ケーキを同じ環境にさらした場合、たとえ保存が1.5ヶ月のみであっても有意により多くのTHCが分解された。特に高い薬剤負荷で噴霧凍結乾燥は実質的に優れた安定化材料をもたらす。噴霧凍結乾燥は、粒子が容易に得られるからだけでなく、THCが評価した全ての薬剤負荷について強力に安定化されるので、固体分散体の製造の最適な方法であると結論付けることができる。
【0059】
[実施例5]
イヌリンにおける凍結乾燥したTHCの安定性へのバッチサイズ/凍結速度の影響
水とTBAの混合物に溶解したイヌリン(タイプTEX!803、23の重合度)およびTHCを含有する100mLの溶液を液体窒素を用いて凍結させた。100mLのそのような溶液を完全に凍結させるために数分かかった。さらに、0.4mLもしくは2mLの同じ溶液を含有する小バイアルを凍結させた。凍結乾燥後に、固体分散体は4%の理論的薬剤負荷で得られた。両方のバッチを真空デシケーターに1日間入れた。徐冷したバッチにおけるTHCの安定性は、この材料が凍結乾燥機から真空デシケーターに移されるやいなや、THC分解を示唆する紫色に変化したので、非常に限られた。THCの長期安定性を試験するために、両方のバッチを20℃および45%の相対湿度(RH)にさらした。結果を図5:THC安定性へのバッチサイズの影響に示す。
【0060】
緩慢凍結バッチの即時分解は、大きいようであった(約22%)。さらに、長期安定性は、バイアル凍結により得られる材料と比較して悪かった。従って、徐冷は全く安定化されないTHCの画分およびあまり安定化されない別の画分をもたらし、一方、バイアル凍結は向上した安定性を有する材料をもたらすと結論付けることができる。
【0061】
[実施例6]
噴霧凍結乾燥したTHC含有粉末のインビトロ沈着挙動
図2で網掛けバーにおいて体積中央径として報告される幾何学的粒径は、噴霧凍結乾燥で製造される粒子が肺薬剤送達における適用にはかなり大きいことを示唆した。一般に、
約1mg/cmの密度を有する1〜5μmの間の粒子が吸入に適当であると考えられる。吸入器アダプターでの分散後に、レーザー回折で測定される粉末の幾何学的粒径は大体このサイズであった。しかしながら、サイズ制限は空気力学的直径daeroをさし、それは幾何学的直径dgeo、粒子の密度ρ(概算は表IIに示される)および標準密度ρ(1g/cmとする水の密度)により決定される。形状係数χは球状粒子では1に等しく、そして非球状粒子では1より大きい。空気力学的直径は、以下の式に従って計算することができる。
【0062】
【数2】

【0063】
この研究における粒子は非常に多孔性である、すなわち、ρは非常に小さいので、空気力学的直径は幾何学的直径より実質的に小さい。粒子が球状であると仮定すると、空気力学的直径は粒子の多孔度および密度により幾何学的直径の約40〜20%である。従って、結果は空気力学的直径により支配されるので、粉末をカスケードインパクター分析に供することは興味深かった。さらに、カスケードインパクター分析の結果は、インビボでの吸入の適合に関して予測すると考えられる。
【0064】
レーザー回折分析は、このタイプの吸入器に特有の強い分散力によって生じる、吸入器から出る小粒子を示したので(A.H.de Boer et al.,Int.J.Pharm.2003,260,187−200)、空気分級機タイプ吸入器をカスケードインパクター分析において使用した。
【0065】
図6(異なる薬剤負荷を有する噴霧凍結乾燥粉末で得られるカスケードインパクター結果。(斜交平行=4%のTHC、ドット付き=8%のTHC;黒色=12%のTHC、灰色=16%のTHC、白色=20%のTHC)(2つの独立して製造したバッチの二重反復、エラーバーは最高および最低値を示す)に示されるように、全ての粉末は高い細粒画分を示した。ここで全用量に対する第3、第4およびフィルターステージの合計として定義される細粒画分(FPF)は、全ての粉末について非常に高かった。FPFはインビボ吸入中の深部(末梢)肺沈着を表すと考えられるので、これは全ての粉末が優れた吸入挙動を示したことを意味する。全ての粉末は、4%の薬剤負荷を有する粉末を除いて同様の吸入挙動を示した。理由は分からないが、この粉末は吸入器における高い残留および35%のみのFPFを示した。しかしながら、全ての他の材料はより少ない吸入器残留および40〜50%の細粒画分を示した。これらの結果は、空気分級機に基づく吸入器と組み合わせた噴霧凍結乾燥粉末が肺送達に非常に有望であることを示唆する。さらに、これらのインビトロ吸入シミュレーションを非調合材料で行い:エアロゾル化挙動をさらに向上することができる任意の追加の賦形剤もしくは調合技術なしに噴霧凍結乾燥粉末のみを用いた。
【0066】
[実施例7]
ジアゼパムの導入の形態へのバッチサイズ/凍結速度の影響
導入の形態への凍結速度の影響を調べるために、脂肪親和性モデル薬剤ジアゼパムをバイアル凍結乾燥(バイアル中2mlの容量を凍結させた)および噴霧凍結乾燥を用いてイヌリン(タイプTEX!803)に導入した。相分離が凍結中に起こる場合、非晶質固体分散体における各相はガラス転移温度(Tg)を示すはずである。示差走査熱量測定(DSC)を用いてTgの数を測定した。DSC測定から得られるサーモグラムにおいて、高い薬剤負荷(35wt%)を有する固体分散体を非晶質ジアゼパムと非晶質イヌリンの物理的混合物と比較した。結果を図7に示す(固体分散体およびジアゼパムとイヌリンを含
有する物理的混合物のサーモグラム)。
【0067】
物理的混合物(トレース1)において、2つのTgを識別することができた。バイアル凍結乾燥した固体分散体においてもまた2つのTgが識別され、しかしながら、ジアゼパムのTgはあまりはっきりせず、それは相分離が一部分だけであることを示唆する。しかしながら、固体分散体を噴霧凍結乾燥により製造した場合、1つのTgのみを識別することができた。従って、イヌリンと脂肪親和性薬剤との間の凍結中の相分離は急速冷却(少量の液体)により防ぐことができると結論付けることができる。
【0068】
[実施例8]
異なる薬剤負荷を有する噴霧凍結乾燥シクロスポリン含有粉末の製造
tert−ブタノール(TBA)にシクロスポリンA(CsA)をそして脱塩水にイヌリン(DP23)を溶解することにより5バッチの異なる組成物を製造した。TBAにおけるCsAおよび水におけるイヌリンの濃度は、40%(v/v)のTBA/CsAおよび60%(v/v)の水/イヌリンの比率でTBA/CsA溶液を水/イヌリン溶液と混合した場合に65mg/mlの総濃度で5%、10%、20%、30%および50%(w/w CsA/イヌリン)の薬剤負荷を得るように調整した。純粋なCsAのバッチもまた、3mg/mlのより低い総濃度においてであるが、TBA/水溶液において製造した。純粋なCsAバッチにおいて使用するTBA中のCsAの部分濃度は、5%(w/w)の製剤の部分濃度に匹敵した。TBA/CsA溶液を水/イヌリン溶液と40:60(v/v)の比率で混合した後に、得られる溶液を液体窒素のボウル上に噴霧した。溶液は、0.5mmのオリフィス、3ml/分の流体流速および500l/hの噴霧空気流速で二流体ノズルを用いて噴霧した。噴霧処置の完了時に、TBA/水の凍結液滴を含有する液体窒素のボウルを凍結乾燥機に移した。液体窒素の大部分を蒸発させた後に、凍結乾燥工程を開始した。過剰の溶媒を昇華させるために、サンプルを−35℃の棚温度および0.220mbarの圧力にさらした。24時間後に、ガラス状製剤における吸収溶媒を蒸発させるために温度および圧力を20℃および0.05mbarまで3時間の期間にわたって徐々に増加した。次に、全ての製造した製剤を真空デシケーターにおいて保存した。
【0069】
溶解実験を実施例1bに記載のとおり実施した。全ての製剤を30mgのCsAの量までバスケットに秤量し、すなわち、全ての溶解実験において30mgのCsAを溶解した。溶解実験の結果を図8に示す。純粋なCsAの溶解のために、30mgを秤量し、そして70mgの純粋なイヌリン(同様に噴霧凍結乾燥した)を加えた。このサンプルを図8において「物理的混合物(Ph.mix)」として示す。これらの結果から、イヌリン(DP23)へのCsAの導入は、非導入CsA(CsA Ph.Mix)と比較して50%(w/w)の薬剤負荷まで溶解率を増加すると結論付けることができる。5および10%(w/w)の製剤は20、30および50%より速く溶解するが、効果は後者の薬剤負荷でさえはっきりと分かる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】噴霧凍結乾燥した種々のTHC含有粉末のSEM写真
【図2】THC含有粉末の幾何学的体積中央径(X50)を2つの異なる分散方法を用いてレーダー分析した結果を示すグラフ。
【図3】4および8wt%のTHCを有する噴霧凍結乾燥粉末および純粋なTHCサンプルにおける保存時間の関数としてのTHC含有量のグラフ。
【図4】薬剤負荷の関数としての固体分散体におけるTHCの20℃/45%RTでの安定性を示すグラフ。
【図5】THC安定性に対するバッチサイズの影響を示すグラフ。
【図6】異なる薬剤負荷を有する噴霧凍結乾燥粉末で得られるカスケードインパクター結果を示すグラフ。
【図7】固体分散体およびジアゼパムとイヌリンを含有する物理的混合物のサーモグラム。
【図8】異なる薬剤負荷を有する噴霧凍結乾燥シクロスポリン含有粉末の溶解実験結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.該脂肪親和性化合物を水と混和性である有機溶媒に溶解し、そして糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を水に溶解し;
b.溶解した脂肪親和性化合物および溶解した糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を均質な混合物が得られるような方法で混合し;
c.該混合物を噴霧凍結乾燥する
ことを特徴とする、脂肪親和性化合物が糖ガラスに導入される、脂肪親和性化合物およびガラスの糖(a glass of sugar)、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を含んでなる製薬学的組成物の製造方法。
【請求項2】
該工程bおよびcを連続的もしくは半連続的方法で行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該糖もしくは糖の混合物が非還元糖もしくは非還元糖の混合物であることを特徴とする請求項1〜2に記載の方法。
【請求項4】
該糖もしくは糖の混合物がフルクタンもしくはフルクタンの混合物であることを特徴とする請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
該フルクタンもしくはフルクタンの混合物がイヌリンもしくはイヌリンの混合物、好ましくは6より大きいDPを有するイヌリンもしくは各イヌリンが6より大きいDPを有するイヌリンの混合物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該有機溶媒が1,4−ジオキサンもしくはC〜Cアルコール、好ましくはC〜Cアルコールであることを特徴とする請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
該脂肪親和性化合物が天然カンナビノイド化合物であることを特徴とする請求項1〜6に記載の方法。
【請求項8】
該天然カンナビノイド化合物がΔ−テトラヒドロカンナビノールであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該脂肪親和性化合物がジアゼパムであることを特徴とする請求項1〜6に記載の方法。
【請求項10】
該脂肪親和性化合物がシクロスポリンAであることを特徴とする請求項1〜6に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の方法により得られる製薬学的組成物。
【請求項12】
組成物が6〜5000μmの間の平均幾何学的粒径を有する球状粒子からなることを特徴とする、脂肪親和性化合物が糖ガラスに導入される、噴霧凍結乾燥により得られる、脂肪親和性化合物およびガラスの糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項13】
組成物が1〜5μmの間の平均空気力学的粒径を有する球状粒子からなることを特徴とする、脂肪親和性化合物が糖ガラスに導入される、噴霧凍結乾燥により得られる、脂肪親和性化合物およびガラスの糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項14】
組成物の多孔度が80%もしくはそれ以上であることを特徴とする請求項12〜13に
記載の製薬学的組成物。
【請求項15】
該脂肪親和性組成物が該糖、糖アルコール、糖の混合物もしくは糖アルコールの混合物とゲスト−ホスト複合体を形成しないことを特徴とする請求項12〜14に記載の製薬学的組成物。
【請求項16】
該糖もしくは糖の混合物が非還元糖もしくは非還元糖の混合物であることを特徴とする請求項12〜15に記載の製薬学的組成物。
【請求項17】
該糖ガラスが通常の環境条件で50℃より高いガラス転移温度を有することを特徴とする請求項12〜16に記載の製薬学的組成物。
【請求項18】
該糖もしくは糖の混合物がフルクタンもしくはフルクタンの混合物であることを特徴とする請求項12〜17に記載の製薬学的組成物。
【請求項19】
該フルクタンもしくはフルクタンの混合物がイヌリンもしくはイヌリンの混合物、好ましくは6より大きいDPを有するイヌリンもしくは各イヌリンが6より大きいDPを有するイヌリンの混合物であることを特徴とする請求項18に記載の製薬学的組成物。
【請求項20】
該イヌリンもしくは混合物における各イヌリンが10〜30の間、好ましくは15〜25の間のDPを有することを特徴とする請求項19に記載の製薬学的組成物。
【請求項21】
該脂肪親和性化合物が天然カンナビノイド化合物であることを特徴とする請求項12〜20に記載の製薬学的組成物。
【請求項22】
該天然カンナビノイド化合物がΔ−テトラヒドロカンナビノールであることを特徴とする請求項21に記載の製薬学的組成物。
【請求項23】
該脂肪親和性化合物がジアゼパムであることを特徴とする請求項12〜20に記載の製薬学的組成物。
【請求項24】
該脂肪親和性化合物がシクロスポリンAであることを特徴とする請求項12〜20に記載の製薬学的組成物。

【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−519806(P2008−519806A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540636(P2007−540636)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055805
【国際公開番号】WO2006/051067
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(501439149)ソルベイ・フアーマシユーチカルズ・ベー・ブイ (71)
【出願人】(507152545)
【Fターム(参考)】