説明

噴霧器及び噴霧方法

【課題】 各種液体を所定の方向に(即ち、方向性良く)噴霧することができる噴霧器及び噴霧方法を提供すること。
【解決手段】 ここで開示される「1種又は2種以上の液を2つ以上の噴出口からミスト状にして噴出す噴霧器1」は、少なくとも2つの相互に独立して設けられたミスト流路4、5と、該ミスト流路の上流部に前記液を供給する液供給手段7と、該ミスト流路の上流部にガスを供給するガス供給手段9とを備えている。ここで、それぞれの前記ミスト流路は、その先端に噴出口36、38が形成されているとともに、該噴出口に連なり、相互に略平行に形成された先端流路部を有することを特徴とする。好ましくは、前記液供給手段は、前記ミスト流路ごとに異なる液を供給可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種液体を所定の方向に噴霧する方法及び噴霧器に関する。特に、工作機械又は工作物等の加工部(或いは加工面)に対し、2つ以上の噴出口から各種液体(ミスト)を方向性良く噴霧可能な方法及び噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】

アルミダイキャスト工程では、金型に溶融アルミを流し込む前に、金型からのアルミ成型製品の型離れをよくするために、金型成形面(即ち、キャビティ表面)に離型剤を噴霧したり、或いは溶融アルミとの接触で高温となる金型を冷却するために冷却水などを噴霧することが行われている。このように離型剤や冷却水等の各種液体を工作機械の加工部等に噴霧する方法や噴霧装置としては、例えば、特許文献1〜12に記載された技術が知られている。
【0003】
このうち、特許文献1には、2種以上の液体を混合して噴射するために、複数個の霧状体噴射ノズルを設け、それぞれのノズルから互いに異なる液体を一箇所に向けた状態で噴射して、中央空間でこれら種類の異なる霧状体を混合する。そして、この混合霧状体を一つのノズルで吸入し、加工部に向かって該ノズルの噴射口から吐出する霧状体供給機能付加工装置が記載されている。
また、特許文献2及び3には、噴射ノズルを有する空気供給管内に2つ以上の液体供給管を配設し、これら液体供給管の先端開口部を噴射ノズルの噴射口に開口した霧状体供給装置が記載されている。
【0004】
しかしながら、アルミダイキャスト工程において、金型成形面(或いはキャビティ表面)に離型剤や冷却水等の2種以上の液体を2つ以上の噴出口から同時に噴霧する場合には、液体同士が進行方向においてぶつかり合い、相互干渉を起こして塗布すべき面に到達せずに飛散してしまうことがあった。このため、液体の損失が多く、不経済であるとともに、塗布面においては液体の付着むらが生じやすかった。また、液体の飛散によって、作業環境が悪化するという問題があった。
従って、2つ以上の噴出口から液体を所定の部位に方向性良く(即ち、塗布面に対して効率よく)噴霧することができることが望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−1279号公報
【特許文献2】特開2000−84790号公報
【特許文献3】特開2001−310239号公報
【特許文献4】実開平6−80532号公報
【特許文献5】実開平6−80533号公報
【特許文献6】実開平6−83238号公報
【特許文献7】特開平7−24685号公報
【特許文献8】特開平9−66437号公報
【特許文献9】特開2000−84789号公報
【特許文献10】特開2000−301428号公報
【特許文献11】特開2000−308947号公報
【特許文献12】特開2001−150293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、各種液体の噴霧に関する上記従来の課題を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、2つ以上の噴出口から各種液体を所定の方向に(即ち、方向性良く)噴霧することができる方法及び噴霧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示される噴霧器は、1種又は2種以上の液を2つ以上の噴出口からミスト状にして噴き出す噴霧器である。かかる噴霧器は、少なくとも2つの相互に独立して設けられたミスト流路と、該ミスト流路の上流部に前記液を供給する液供給手段と、該ミスト流路の上流部にガスを供給するガス供給手段とを備えている。そして、それぞれの前記ミスト流路は、その先端に前記噴出口が形成されている。さらに、それぞれの前記ミスト流路は、該噴出口に連なり、相互に略平行に形成された先端流路部を有することを特徴とする。
【0008】
かかる構成の噴霧器では、ミスト流路の上流部において液とガスとが供給・混合され、液とガスとからなるミストを得ることができる。そして、得られたミストを先端流路部に通過させ、そして噴出口から外部に噴霧する。ここで、少なくとも2つの異なるミスト流路から噴霧されるミストは、噴出直前に略平行に形成された先端流路部を通過するために、各噴出口から噴出した直後のミストは互いに進路方向が略平行となる。このため、異なる噴出口から噴出するミスト同士が互いに衝突しにくい。従って、ミストを方向性よく噴霧することができる。
かかる構成の噴霧器は、特に好適には極少量の液を(即ち、濃度が低いミスト、又は遅い供給速度で)方向性よく噴霧するために適している。
【0009】
好ましい態様において、前記液供給手段は、前記ミスト流路ごとに異なる液を供給可能に構成されている。この構成により、異なる複数種類の液をそれぞれ独立した異なるミスト流路から所定の方向に噴霧することができる。また、噴出口まで独立したミスト流路を通過し、噴出直前まで異なる液同士が混合することがないために、異なる種類の液が混合されることによる液の品質劣化が防止される。
特に、異なる液としては、少なくとも油性の液と、水性の液とを含むことができる。このように互いに反発する性質の液同士であっても、互いに噴霧進路を阻害されることなく、均一に所定方向に噴霧することができる。
【0010】
この構成の好ましい態様において、前記液供給手段は、前記ミスト流路ごとに前記液の供給量を調節可能に構成されている。この構成により、液ごとに必要な噴霧量を調節可能であるとともに、異なる液同士の配合比を調節することができる。
【0011】
また、この構成の好ましい態様において、前記ガス供給手段は、前記ミスト流路ごとに前記ガスの供給量を調節可能に構成されている。この構成によれば、液の粘度や噴霧量に応じて、液ごとにガスの供給量を調節することによって、各液の噴霧量を調整することができる。
【0012】
また、本発明は、他の側面として、1種又は2種以上の液を2つ以上の噴出口からミスト状にして噴き出す噴霧方法を提供する。該方法は、先端に前記噴出口を備えたミスト流路を相互に独立して少なくとも2つ用意することと、少なくとも前記噴出口と連なる前記ミスト流路の先端流路部を相互に略平行に配置することと、前記ミスト流路の上流部において、前記液とガスとを混合させてミストを供給することと、該ミストをそれぞれ前記噴出口から噴霧することとを含む。
【0013】
かかる構成の方法によれば、相互に独立した少なくとも2つのミスト流路を用意して、その少なくとも噴出口と連なる先端流路部を相互に略平行に配置することによって、2つ以上の噴出口からミストを互いに略平行に噴出することができる。このため、異なる流路(噴出口)から噴出したミスト同士であっても互いに衝突しにくく、方向性良く噴霧することができる。
【0014】
また、この方法は、好ましい態様において、ダイキャストの金型成形面に少なくとも離型剤を含む液を噴霧するために用いることができる。この場合、前記液には少なくとも離型剤が含まれている。好ましくは、離型剤は、油性である。
かかる方法で金型成形面に離型剤を噴霧することによって、金型成形面の所望の部分に2つ以上の噴出口から方向性良く離型剤(及び所望により他の液、例えば冷却液)を含む液を同時に噴霧することができる。従って、均一に金型成形面に離型剤を塗布することができるとともに、離型剤の損失が低減される。
この方法は、好ましくはここで開示されるいずれかの噴霧器によって実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、ミスト流路の先端流路部、噴出口、液供給手段、及びガス供給手段の構成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、液やガスの種類、噴霧対象物の構成やその構築方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0016】
まず、本発明の具体的な一実施形態に係る噴霧器について図面を参照して説明する。
図1〜図8に噴霧器1の一構成例を示す。図1はその正面図、図2はその側面図、図3はその背面図、図4はその底面図、図5はその平面図、図6はその分解図であり、図7は図2に示すVII‐VII線の断面図、及び図8は図1に示すVIII‐VIII線の断面図である。
この装置1は、大まかに言って、噴霧器の本体を構成するケーシング3と、ミスト流路4、5と、液供給手段7と、ガス供給手段9とから構成される。また、液及びガスの供給量を調節可能なピストン(即ち、液及びガス供給調節手段)43、44を備えている。
【0017】
図1に示すように、ケーシング3は、ピストン押さえプレート11と、本体13と、ノズルプレート15と、ノズルキャップ17とから構成されている。図5に示すように、ピストン押さえプレート11は、長方形の板状体であって、ネジ19によって本体13に連結されている。また、その中心部には、後述するピストン43、44を押圧する調節ネジ21、22を挿入可能な貫通孔23が2個並んで設けられている(図7、8)。
【0018】
図1〜4に示すように、本体13及びノズルプレート15は、角柱状であって、ネジ25によって連結されている。また、ノズルキャップ17は、ノズルプレート15に隣接する角柱部29、中心円筒部31、及び先端円筒部33が一体に成形されて構成されており、先端に向かって段階的に幅及び直径が小さくなっている。ノズルキャップ17は、ネジ27によってノズルプレート15に連結されている。
【0019】
図7、8によく示されているように、ノズルキャップ17の先端部分には、ミスト流路4、5が形成されている。これらは、第一ミスト流路4と第二ミスト流路5との2本から構成される。第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5は、ノズルキャップ17の先端円筒部33内において互いに略平行に、かつノズルキャップ17の先端底面部35に対して略垂直に、独立して形成されている。その一端となる噴出口36、38が、ノズルキャップ17の先端底面部35にそれぞれ開口しており、該噴出口36、38からミストを噴出可能に構成されている。
【0020】
図1に示すように、本噴霧器1における液供給手段7は、本体13の正面37に2箇所の液供給口39、40を独立して有するとともに、該液供給口39、40からそれぞれ第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5に独立して連通する液流路41、42を備えている(図7、8)。尚、本噴霧器1の構成とは直接関係はないが、噴霧する液(水又は液剤)は、図示しない液供給器から液供給口39、40に適当な送液手段(ポンプ等)を介して注入される構成であればよい。
【0021】
図7、8に示すように、液流路41、42は、本体13の正面37(図1)に対して略垂直に本体13の奥行き方向に対して略中心部14まで直進する第一液流路69と、略中心部14から略垂直に底面に向かって曲がる第二液流路71、72と、ノズルプレート15の幅方向に略垂直に曲がる極細の第三液流路73、74と、さらに噴出口36、38に連通するようにノズルキャップ17の底面部35に向かって略垂直に曲折する第四液流路6、8とが連通して形成されている。図には詳細に表されていないが、第二液流路71、72は、下流にいくほどわずかに幅が狭くなるテーパ形状に形成されており、後述するピストン43、44の胴部85、87の嵌合によって液の流動が止められる。また、最下流側においてその幅が奥行き方向に極細に狭まるピストン係止部93(図8)が形成されている。第四液流路6、8は、極薄いスチール箔から形成された2本のチューブ体がノズルキャップ17内に挿入されて形成されており、後述するガス供給手段から該流路6、8にガスが漏出することを防止している。
【0022】
他方、図1と図7、8に示すように、本噴霧器1におけるガス供給手段9は、本体13の正面37に液供給口39、40と隣接して2箇所のガス供給口49、50を有するとともに、該ガス供給口49、50からそれぞれ第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5に連通するガス流路51、52を備えている。尚、本噴霧器1の構成とは直接関係はないが、供給するガス(典型的には空気)は、図示しないガス供給器からガス供給口49、50に適当なガス供給手段(コンプレッサー等)を介して注入される構成であればよい。
図7、8に示すように、ガス流路51、52は、本体13においてピストン押さえプレート11側に開口部95、97を有する略立方形状の第一ガス流路75、76(図7)と、そこから筒状となって略垂直に底面に向かって曲がる第二ガス流路77(図8)と、第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5に連通するようにノズルプレート15の正面側に向かって斜めに曲折しつつ底面部35に向かう第三ガス流路79、81とが連通して形成されている。第一ガス流路51、52の開口部95、97は、ピストン押さえプレート11によって閉塞されている。また、ガス供給口49,50は、第一ガス流路75、76においてガス流出方向(即ち、底面部35側)に開口して形成されている。
【0023】
図6に示すように、ピストン43、44は、ピストン頭57、59と、胴部85、87と、先端部65、67とから構成されている。図7、8に示すように、ピストン頭57、59は、断面正方形の略平板状であって、ガス流路51、52の第一ガス流路75、76においてガス供給口49、50よりもガス流出方向と反対側(即ち、ピストン押さえプレート11側)にガス供給口49、50に係らずに気密に配置されている。また、ピストン頭57、59は、第一ガス流路75、76において、調節ネジ21、22、後述するバネ45、46、47、48及び第一ガス流路74、76からの供給されるガス圧によって、ピストン押さえプレート11側へ可逆的に移動可能に配置されている。
【0024】
ピストン43、44の胴部85、87は、棒状であって、第一ガス流路75、76を横断して液流路41、42の第二液流路71、72に挿入されている。尚、第二液流路71、72は、第一ガス流路75、76において、胴部85、87の周囲をガスは流通可能である。また、第一ガス流路75,76と第二液流路71、72との間を気密にするために、ピストン43、44の胴部85、87周囲には、複数のワッシャー54、56が配置されている(図7、8)。
図6に示すように、ピストン43、44の先端部65、67は、円錐形であって、第二液流路71、72のピストン係止部93によって下流側への移動を阻止されている(図8)。即ち、ピストン43、44は、ピストン係止部93によって先端部65、67が液の下流側へ移動することを阻止されることにより、常にピストン頭57、59をガス供給口49、50に対してガス流出方向と反対側の位置(即ち、ピストン押さえプレート11側)に保持している。
【0025】
図7、8に示すように、ピストン頭57、59は、その上面にピストン押さえプレート11を貫通して挿入された調節ネジ21、22先端を嵌め込む凹部89、91を有する。また、調節ネジ21、22の外周において、ピストン押さえプレート11と調節ネジ21、22のネジ頭53、55との間、及びピストン押さえプレート11とピストン43、44のピストン頭57、59との間にそれぞれバネ45、46、47、48が設けられている。この構成により、ピストン頭57、59は、調節ネジ21、22によってノズルキャップ17側へ押圧される構成となっている。
【0026】
そして、第一ガス流路75、76にガス供給口49、50から所定の圧力が加えられたガスが流入すると、その圧力によって調節ネジ21、22を押し返し、ピストン頭57、59をピストン押さえプレート11側へ可逆的に移動可能としている。従って、供給するガス圧によって、ピストン43、44の位置を自在に変更させることができる構成となっている。
【0027】
さらに、本噴霧器1では、ピストン43、44が、ピストン係止部93によって係止されている場合には、ピストン43,44の胴部85、87が第一液流路69と第二液流路71、72との交差部99を密閉し、第一液流路69と第二液流路71、72との連通を阻止している。さらに、第二液流路71、72内に嵌合されたピストン43、44の胴部85、87が第二液流路71、72を完全に塞ぐため、液の流動はストップされた状態である。一方、ピストン43、44が、ガス供給口49、50から流入されるガスの圧力によってピストン押さえプレート11側に移動すると、ピストン43、44の胴部85、87と第二液流路71、72の壁面との間に隙間が生じ、第一液流路69と第二液流路71、72とが連通し、液の流動が開始される。従って、本発明によって、ガスの供給と停止に連動させて、液の供給と停止が行われる機構を備えた噴霧器が提供される。また、本実施形態のように、ピストンの動きを調製することによって、ごく微量の液をガスの供給に連動させて供給することができる。
【0028】
さらに、一方の液流路41とガス流路51とは、本体13及びノズルプレート15内部において互いに独立して形成されているとともに、ノズルキャップ17内部に設けられた第一ミスト流路4にそれぞれ連通している。他方の液流路42とガス流路52とは、本体13及びノズルプレート15内部において互いに独立して形成されているとともに、ノズルキャップ17内部に設けられた第二ミスト流路5にそれぞれ連通している。このように独立して液流路及びガス流路を設けることによって、例えば、上述の機構によってミスト流路ごとにガス及び液の供給量を調節することができる。
【0029】
次に、図9を参照して、前記構成の噴霧器1を用いて、異なる2種の液を噴霧する方法を説明する。尚、図9においては、ミストの噴出方向をより理解しやすいように、噴霧器1の噴出口36、38付近を一部断面で示している。
本実施形態では、離型剤液と冷却液とをアルミダイキャスト成形面(キャビティ表面)101に噴霧する方法について説明する。本実施形態において、離型剤液としては、粘度が約2.5〜4.5mPa・sの精製基油を用いた。冷却液としては、水を用いた。また、図9において、離型剤液ミスト103及び冷却液ミスト105を模式的にドット状に示している。
【0030】
まず、一方の液供給口39から図示しない離型剤供給器によって、離型剤液を噴霧器1内に供給した。さらに、異なる液供給口40から図示しない冷却液供給器によって、冷却液を噴霧器1内に供給した。尚、噴霧器1内に供給されたこれら液剤は、ガスが供給されない場合には、表面張力によって第四液流路6、8の先端で停止し、ミスト流路4、5には液は供給されない。
また、図示しないガス供給器、好適にはコンプレッサーによって、ガス供給口49、50から空気を供給した。空気の供給圧は、それぞれ離型剤液が供給されるガス供給口49にあっては約0.4MPa、冷却液が供給されるガス供給口50にあっては約0.3〜0.7MPaとした。
【0031】
ガス供給手段9のガス供給口49から上記圧により空気が供給されると、その圧力でピストン43がピストン押さえプレート11側に移動し、第一液流路69と第二液流路71とが連通した。一方、空気はガス流路51を通過した。その後、空気はガス流路51に連通する第一ミスト流路4に流出された。
そして、ガスの流動に引き寄せられるようにして、離型剤液が、第四液流路6から第一ミスト流路4に導入された。このときの導入速度(即ち、供給速度)は、約0.05ml/秒であった。本実施形態の上記ミスト形成手段によると、このような低速(即ち、少量)での液の供給を可能とする。
而して、第一ミスト流路4において、離型剤液と空気とが混合されて、離型剤含有ミスト103が生成した。得られた離型剤含有ミスト103は、そのまま、ガスの流れとともに第一ミスト流路4を通過して、ノズルキャップ17の先端底面部35に形成された噴出口36から噴出した。このときの離型剤含有ミスト103の噴射圧は、約0.02MPaであった。
【0032】
同様に、ガス供給手段9のガス供給口50から上記圧で空気が供給されると、その圧力でピストン44がピストン押さえプレート11側に移動し、第一液流路と第二液流路72とが連通した。一方、空気はガス流路52を通過した。その後、空気はガス流路52に連通する第二ミスト流路5に流出した。
そして、ガスの流動に引き寄せられるようにして、冷却液が、第四液流路8から第二ミスト流路5に導入された。このときの導入速度(即ち、供給速度)は、約1〜2.5ml/秒であった。
而して、第二ミスト流路5において、冷却液と空気とが混合されて、冷却液含有ミスト105が生成した。得られた冷却液含有ミスト105は、そのままガスの流れとともに第二ミスト流路5を通過して、ノズルキャップ17の先端底面部35に形成された噴出口38から噴出した。このときの冷却液含有ミスト105の噴射圧は、約0.2〜0.6MPaであった。
【0033】
図9に模式的に示すように、離型剤含有ミスト103及び冷却液含有ミスト105は、互いに略平行に形成された第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5を通過して噴出しているために、進路が共にほぼ平行である。従って、互いに干渉することが低減され、離型剤液の供給速度が約0.05ml/秒といった極少量であっても、所定の噴出方向に、即ち直進させて噴霧することができる。
【0034】
そして、所定時間の噴出が終了し、ガス供給手段9からの空気の供給を停止すると、空気圧がピストン頭57、59に負荷されなくなる。この結果、ピストン43、44は、調節ネジ21、22及びバネ45、46、47、48によってノズルキャップ17の先端底面部35側に押圧され、ピストン係止部93によって係止される。同時に、ピストン43、44の胴部85、87が第二液流路71、72内に密接して嵌合され、第一液流路69と第二液流路71、72との連通を阻止する。これにより、液、即ち、離型剤液及び冷却液の供給が停止される。即ち、上述の通り、第四液流路6、8の先端で表面張力によってミスト流路4、5への漏出も防止される。
【0035】
以上のように、本噴霧器1では、ガス供給手段9からのガスの供給を、ガス供給口49、50ごとに制御することによって、離型剤液及び冷却液の供給又は停止をそれぞれ独立して行うことができる。また、離型剤液及び冷却液の粘度及び供給量に応じて、ガス圧をガス供給口49、50ごとに制御することによって、それぞれ独立して供給量(供給速度)を調節することができる。
特に、本実施形態によれば、液及びガス供給調節手段として機能するピストン43、44がガス供給手段9からのガスの供給及び停止に伴い、液供給手段7の液流路の開閉を自在とするため、ガスの供給を制御することによって、極少量の液であっても、正確に供給量及び方向を制御して噴出させることができる。
【0036】
ここで開示される噴霧器は、相互に独立して設けられたミスト流路において、噴出口に連なる先端流路部を相互に略平行に形成(或いは配置)すればよく、上述の目的を達成し得る限りにおいて、他の構成や手段に特に制限はない。
尚、本実施形態の噴霧器1においては、第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5の全体が互いに略平行に形成されている。即ち、本実施形態においては、第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5全体が先端流路部として構成されている。しかしながら、第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5の先端部分のみが略平行に形成されていてもよい。また、第一ミスト流路4及び第二ミスト流路5は、ノズルキャップ17の先端円筒部33内において比較的短い距離に形成されているために液の品質低下が防止されているが、例えば、ノズルキャップ17を貫通するようなより長い流路に形成することによって、より方向性を高めることもできる。
さらに、本実施形態において、供給する液を2種としたが、これに限定されず、液は3種若しくは4種以上用いることができる。この場合、噴霧器における液供給口及び液流路、ガス供給口及びガス流路、さらにこれらに対応するミスト流路を同様に3つ又は4つ以上独立して設ければよい。
また、好ましい本実施形態では、1つのノズル(キャップ)内に、複数のミスト流路が一体に形成されているが、これに限定されず、噴霧器の本体から分岐した2つ以上のノズル(内部にミスト流路が形成されたもの)を少なくともその先端が相互に平行となる位置関係で隣接しても設けてもよい。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した態様を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一実施形態に係る噴霧器の正面図である。
【図2】一実施形態に係る噴霧器の側面図である。
【図3】一実施形態に係る噴霧器の背面図である。
【図4】一実施形態に係る噴霧器の底面図である。
【図5】一実施形態に係る噴霧器の平面図である。
【図6】一実施形態に係る噴霧器の部品分解図である。
【図7】図2のVII‐VII線断面図である。
【図8】図1のVIII‐VIII線断面図である。
【図9】一実施形態に係る噴霧方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1;噴霧器
3;ケーシング
4;第一ミスト流路
5;第二ミスト流路
7;液供給手段
9;ガス供給手段
36、38;噴出口
39、40;液供給口
41、42;液流路
43、44;ピストン
49、50;ガス供給口
51、52;ガス流路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上の液を2つ以上の噴出口からミスト状にして噴き出す噴霧器において、
少なくとも2つの相互に独立して設けられたミスト流路と、
該ミスト流路の上流部に前記液を供給する液供給手段と、
該ミスト流路の上流部にガスを供給するガス供給手段とを備えており、
ここで、それぞれの前記ミスト流路は、その先端に前記噴出口が形成されているとともに、該噴出口に連なり、相互に略平行に形成された先端流路部を有することを特徴とする、噴霧器。
【請求項2】
前記液供給手段は、前記ミスト流路ごとに異なる液を供給可能に構成されている、請求項1記載の噴霧器。
【請求項3】
前記液供給手段は、前記ミスト流路ごとに前記液の供給量を調節可能に構成されている、請求項2記載の噴霧器。
【請求項4】
前記ガス供給手段は、前記ミスト流路ごとに前記ガスの供給量を調節可能に構成されている、請求項2又は3記載の噴霧器。
【請求項5】
1種又は2種以上の液を2つ以上の噴出口からミスト状にして噴き出す噴霧方法であって、
先端に前記噴出口を備えたミスト流路を相互に独立して少なくとも2つ用意することと、
少なくとも前記噴出口と連なる前記ミスト流路の先端流路部を相互に略平行に配置することと、
前記ミスト流路の上流部において、前記液とガスとを混合させてミストを供給することと、
該ミストをそれぞれ前記噴出口から噴霧することと、を含む、噴霧方法。
【請求項6】
請求項5記載の噴霧方法によってダイキャストの金型成形面に少なくとも離型剤を含む液を噴霧する方法であって、
前記液には少なくとも離型剤が含まれている、噴霧方法。
【請求項7】
請求項1〜4のうちのいずれかの噴霧器を用いる、請求項5又は6記載の噴霧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−110646(P2006−110646A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297946(P2004−297946)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(502025277)株式会社 山口技研 (2)
【出願人】(593078257)株式会社メックインターナショナル (24)
【Fターム(参考)】