説明

嚥下用容器

【課題】 嚥下物を嚥下する際における利便性を向上させる。
【解決手段】嚥下用容器10は、容器本体20内に、少なくとも3つの空洞30,32,34と、閉塞部70,72とを有するものである。閉塞部70,72は、隣り合う2つの空洞の間を閉塞する。空洞30,32,34は、それぞれ少なくとも1つの閉塞部70,72と隣り合っている。閉塞部70,72は、容器本体20の外部から力を加えられると開く。空洞30,32,34のうち少なくとも1つが、嚥下物収容室36である。嚥下物収容室36には、容器本体20の外部に連通する開口50を介して嚥下物が収容可能である。嚥下物収容室36は、開口50を有している。空洞30,32,34のうち少なくとも2つが、補助物質室30,32である。補助物質室30,32は、嚥下補助物質40,42が予め収容されており、かつ、容器本体20の外部から力を加えられると嚥下補助物質が押し出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下用容器に関し、特に、嚥下物を嚥下する際における利便性を向上させる嚥下用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
散剤や顆粒剤をはじめとする医薬を服用する場合、それら医薬は一般に水を利用して嚥下される。それら医薬は、一旦舌上に受けたのち水を飲み込むことで嚥下される。このような手順で医薬が嚥下されるので、医薬の不快な味(例えば苦味)を患者が感じたり、医薬の一部がいつまでも口内などに残留したり、薬効成分による刺激を受けたりする問題がある。このような手順で医薬が嚥下されると、流動性の高い水で服用するため、横臥した状態で服用することができないなどの問題もある。物を飲み込む力が弱った者の場合、食物についても似たような問題が生じ得る。
【0003】
特許文献1は、複室型容器を開示する。この複室型容器は、複数の空間を互いに連通可能に区画したものである。これらの空間は、外部から加えられる力によって連通可能な状態で閉塞されている。これらの空間のいずれかに、粉粒状剤が密封状態で収容されている。他の空間には濃厚流動物質が密封状態で収容されている。各空間を互いに連通させて、粉粒状剤と濃厚流動物質とを集合させ混合したのち、いずれかの空間に設けた取出し口より混合物を取出し可能である。
【0004】
特許文献1に開示された容器によれば、極めて簡単な操作で粉粒状剤を服用することができる。しかも、特許文献1に開示された複室型容器によれば、服用に対する患者の抵抗感を大幅に減じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−234820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、粉粒状剤を嚥下しようとする者における利便性に改善の余地があった。
【0007】
たとえば、複室型容器内に収容されている粉粒状剤に加え、その複室型容器に収容されていない散剤や錠剤を患者が服用しなければならないとき、服用に対する患者の抵抗感は減じないこととなる。
【0008】
また、特許文献1に開示された容器を用いて粉粒状剤を服用する場合、患者が感じる味覚は主として濃厚流動物質の味覚である。患者がこの濃厚流動物質の味覚に不満を持っていても、患者がその不満を表明することは事実上難しい。複室型容器を多数製造するにあたり濃厚流動物質の味を互いに異なるものとすることが事実上難しいためである。
【0009】
また、特許文献1に開示された容器は、例えば長い間室内に放置されていたような場合、患者の口に入る部分を使用前に洗浄したり消毒したりしておかなくてはならないこともある。
【0010】
本発明は、これらのような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、嚥下物を嚥下する際における利便性を向上させる嚥下用容器を提供することにある。なお、ここで言う「嚥下物」とは、医薬および食物の総称である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図面を参照して本発明の嚥下用容器を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、嚥下用容器14は、容器本体220内に、複数の空洞230,232,234と、閉塞部270,272とを有するものである。閉塞部270,272は、隣り合う2つの空洞の間を閉塞するものである。空洞230,232,234は、それぞれ少なくとも1つの閉塞部270,272と隣り合っている。閉塞部270,272は、容器本体220の外部から力を加えられると開く。空洞230,232,234のいずれかが、嚥下物収容室232,234である。嚥下物収容室232,234には、嚥下物が収容される。空洞230,232,234のいずれかが、補助物質室230である。補助物質室230は、嚥下補助物質40が予め収容されており、かつ、容器本体220の外部から力を加えられると嚥下補助物質40を押し出す。
【0013】
本発明の他の局面に従うと、嚥下用容器10,12は、容器本体20,120内に、少なくとも3つの空洞30,32,34,130,132,134,136と、閉塞部70,72,170,172とを有するものである。閉塞部70,72,170,172は、隣り合う2つの空洞の間を閉塞するものである。空洞30,32,34,130,132,134,136は、それぞれ少なくとも1つの閉塞部70,72,170,172と隣り合っている。閉塞部70,72,170,172は、容器本体20,120の外部から力を加えられると開く。空洞30,32,34,130,132,134,136のうち少なくとも1つが、嚥下物収容室34,36,134である。嚥下物収容室34,36,134には、容器本体20,120の外部に連通する開口50を介して嚥下物が収容可能である。嚥下物収容室34,36,134のいずれかは、開口50、または、開口の形成が予定される開口形成予定部60を有している。空洞30,32,34,130,132,134,136のうち少なくとも2つが、補助物質室30,32,130,132,136である。補助物質室30,32,130,132,136は、嚥下補助物質40,42,44が予め収容されており、かつ、容器本体20,120の外部から力を加えられると嚥下補助物質を押し出す。
【0014】
本発明にかかる嚥下用容器10,12を用いて嚥下物を嚥下する場合、まず、嚥下物収容室36,134に嚥下物を収容する。嚥下物収容室36,134が開口形成予定部60を有している場合には、嚥下物を収容する前に、開口形成予定部60において開口を形成しておく。嚥下物収容室36,134が開口形成予定部60を有しており、かつ、嚥下物収容室36,134に嚥下物が予め収容されている場合、その嚥下物を収容する作業は省略される。嚥下物収容室36,134に嚥下物が収容されており、かつ、開口が存在する状態になると、人あるいは動物の口に嚥下物収容室36,134を咥えさせる。嚥下物収容室36,134が咥えられると、容器本体20,120の外部から力を加える。この力は誰が加えてもよい。力が加えられると、嚥下物収容室36,134に隣接する閉塞部72,74が開く。閉塞部72,74が開き、かつ、容器本体20,120の外部から力を加えられると、補助物質室30,32,130,132,136から嚥下補助物質42,44が押し出されることに伴い、嚥下物は、嚥下補助物質42,44と共に嚥下物収容室36,134を咥えた人あるいは動物の口に入る。嚥下物が嚥下補助物質42,44と共にその口に入るので、上述した人あるいは動物は嚥下補助物質42,44ごと嚥下物を嚥下する。なお、嚥下物収容室36,134を咥えさせる前に容器本体20,120の外部から力を加えて閉塞部72,74を開いてもよい。
【0015】
2種類以上の嚥下物を嚥下する場合、1番目の嚥下物を嚥下した後、嚥下物収容室36,134を上述した口から抜き取り、嚥下物収容室36,134あるいは空室となった補助物質室32,136に新たな嚥下物を収容する(それらに新たな嚥下物を入れる代わりに、口に嚥下物を入れてもよい)。新たな嚥下物が収容されると(あるいは嚥下物が口に含まれると)、嚥下物収容室36,134を上述した人あるいは動物の口に再度咥えさせる。嚥下物収容室36,134が咥えられると、容器本体20,120の外部から力を加える。力が加えられると、先ほど嚥下補助物質42,44が排出された補助物質室30,32,136に隣接する閉塞部70,172が開く。閉塞部70,172が開くと、新たに収容された嚥下物は、嚥下補助物質40,42と共に上述した人あるいは動物の口に入る。上述した人あるいは動物は、嚥下補助物質40,42ごと嚥下物を再度嚥下する。以下、同様にして、2種類以上の嚥下物を嚥下する。この間、嚥下物を収容した後であって嚥下物収容室36,134を咥えさせる前に容器本体20,120の外部から力を加えて閉塞部70,172を開いてもよい。
【0016】
このようにして、嚥下物収容室36,134に収容可能な嚥下物を2種類以上嚥下することができる。そのため、嚥下物を嚥下する際における利便性を向上させることができる。
【0017】
また、上述した少なくとも2つの補助物質室30,32,130,132,136のいずれかに、他の補助物質室とは異なる味の嚥下補助物質が予め収容されていることが望ましい。
【0018】
この場合、次に述べる手順にしたがって嚥下物を嚥下することで、嚥下の際に感じる味覚を調整できる。その手順は、開口が存在する状態になるところまで、上述した手順と同じである。その後、人あるいは動物の口に嚥下物収容室36,134を咥えさせる。嚥下物収容室36,134が咥えられると、容器本体20,120の外部から力を加える。これにより、補助物質室30,32,130,132,136の間の閉塞部70,170,172を開かせる。その閉塞部70,170,172が開いてから、容器本体20,120の外部から力を加えて、互いに味が異なる嚥下補助物質を混ぜ合わせる。嚥下補助物質をどの程度混ぜ合わせるかによって嚥下補助物質の混合物の味を調整することができる。嚥下補助物質が混ぜ合わされると、容器本体20,120の外部から力を加える。これにより、嚥下物収容室36,134に隣接する閉塞部72を開かせる。その後の手順は上述した手順と同じである。この場合、1種類の嚥下物のみを嚥下してもよいし、嚥下補助物質を少しずつ使用することで2種類の嚥下物を嚥下してもよい。容器本体20,120が多くの補助物質室30,32,130,132,136を有していればいるほど、多様な味覚を生じさせることや、多種類の嚥下物を嚥下させることが可能になる。他の嚥下補助物質とは異なる味の嚥下補助物質が収容されている補助物質室30,32,130,132,136が多ければ多いほど、生じさせ得る味覚の種類は多くなる。なお、この手順において、嚥下物収容室36,134を人あるいは動物の口に咥えさせる前に嚥下補助物質を混ぜ合わせたり、嚥下補助物質を混ぜ合わせてから嚥下物を収容して人あるいは動物の口に咥えさせたりしてもよいことは言うまでもない。
【0019】
もしくは、上述した容器本体20,120は、互いに異なる味の嚥下補助物質がそれぞれ収容されている2つの補助物質室30,32,130,132,136間の閉塞部70,170,172で折り曲げ可能であることことが望ましい。
【0020】
2つの補助物質室30,32,130,132,136間の閉塞部70,170,172で折り曲げ可能な場合、その閉塞部70,170,172を折り曲げておくことで、輸送時保管時などに外部からの少しの外圧で閉塞部70,170,172が開いて互いに異なる味の嚥下補助物質が混ざる可能性が減少する。そのため、嚥下用容器10,12の機能低下を抑えることができる。
【0021】
もしくは、上述した互いに異なる味の嚥下補助物質がそれぞれ収容されており、かつ、隣り合っている2つの補助物質室30,32,130,132,136間の閉塞部70,170,172が、複数の密封部80,82と、連通部84,184とを有することが望ましい。密封部80,82は、容器本体20,120の外部から力を加えられると開く。連通部84,184は、密封部80,82の間に配置される。連通部84,184は、複数の密封部80,82が開くと2つの補助物質室30,32,130,132,136間を連通させる。
【0022】
閉塞部70,170,172が複数の密封部80,82を有しているので、複数の密封部80,82が開くまで2つの補助物質室30,32,130,132,136間は連通しない。そのため、1つの閉塞部70,170,172が1つの密封部80,82を有している場合に比べ、互いに異なる味の嚥下補助物質が混ざる可能性が減少する。そのため、嚥下用容器10,12の機能低下を抑えることができる。
【0023】
また、上述した容器本体20が折り曲げ可能であることが望ましい。この場合、嚥下用容器10が、容器本体20の一端に設けられ、容器本体20が折り曲げられているとき容器本体20の他端が挿入される筒部22をさらに備える。少なくとも3つの空洞30,32,34,36,130,132,134,136と筒部22とが1つの列を形成するように並んでいる。容器本体20の外部に連通する開口50が、容器本体20の他端のうち筒部22に挿入される部分から容器本体20の外部に連通する。
【0024】
この場合、嚥下物が収容されるまで、容器本体20の他端のうち筒部22に挿入される部分を筒部22に挿入しておくことが可能になる。そのため、その部分を筒部22に挿入しておくと、その部分が筒部22に挿入されていない場合に比べ、その部分が咥えられるまでに手指で汚染される可能性は減少する。その結果、その部分を筒部22に挿入しておくと、その部分が筒部22に挿入されていない場合に比べ、嚥下物を嚥下するまでの、口に咥えられる部分の衛生状態を保持できる。そのため、嚥下物を嚥下する際における利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、嚥下物を嚥下する際における利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例にかかる嚥下用容器の一部破断図である。
【図2】本発明の第2実施例にかかる嚥下用容器の一部破断図である。
【図3】本発明の第1変形例にかかる嚥下用容器の一部破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0028】
<第1実施例>
図1は本実施例にかかる嚥下用容器14の一部破断図である
【0029】
本実施例にかかる嚥下用容器14は、1枚の合成樹脂(低密度ポリエチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、その複合樹脂などのように折り曲げ可能な柔らかいものであってヒートシールが可能なもの)製のシートを2つ折りとし、2つ折りとされたシートの端と端とを貼り合わせ、貼り合わされた部分を切り取って外形を整えることで形成される。シートの端と端とが貼り合わされた部分が外周強シール部274である。嚥下用容器14は、容器本体220と筒部222とを有する。
【0030】
容器本体220は、補助物質室230と第1嚥下物収容室232と第2嚥下物収容室234とを有する。補助物質室230と第1嚥下物収容室232とは、容器本体220の外部に対して気密性を保つように形成されている。補助物質室230と第1嚥下物収容室232と第2嚥下物収容室234とは、一列に並んでいる。
【0031】
補助物質室230内には、第1嚥下補助物質40が収容されている。本実施例における第1嚥下補助物質40は、水分を含有する、滅菌されたゼリーであって、粘液状の外観を呈しているものである。
【0032】
第1嚥下物収容室232と第2嚥下物収容室234とには、嚥下物が収容される。第1嚥下物収容室232には、嚥下物として錠剤300が予め収容されている。
【0033】
本実施例にかかる第2嚥下物収容室234は、開口250を有する。この開口250は、第2嚥下物収容室234の外部と内部とを連通させるものである。本実施例の場合、この開口250を介して第2嚥下物収容室234内に嚥下物が収容される。
【0034】
補助物質室230と第1嚥下物収容室232との間は、第1閉塞部270によって仕切られている。第1嚥下物収容室232と第2嚥下物収容室234との間は、第2閉塞部272によって仕切られている。第1閉塞部270は、補助物質室230を嚥下用容器14の外から押したとき、補助物質室230に第1嚥下補助物質40が与える力によって容易に開く。第2閉塞部272は、第1嚥下物収容室232を嚥下用容器14の外から押したとき、第1補助物質40が第1嚥下物収容室232に与える力などによって容易に開く。第1閉塞部70と第2閉塞部72とが容易に開く理由は後述する第2実施例と同様なのでここでは省略する。
【0035】
筒部222は、容器本体220の一端に設けられる。筒部222は、容器本体220と一体化している。容器本体220と筒部222との境界は、境界強シール部276によって区切られている。本実施例にかかる境界強シール部276は、2つ折りとされたシートの互いに対向する面同士を貼り合せたものである。
【0036】
筒部222は、補助物質室230、第1嚥下物収容室232、および、第2嚥下物収容室234と共に、1つの列を形成している。上述したように、折り曲げ可能な柔らかい合成樹脂製のシートの端と端とを貼り合わせることで嚥下用容器14が形成されているので、本実施例にかかる容器本体220は折り曲げ可能である。容器本体220が折り曲げ可能なので、筒部222には、容器本体220の他端(本実施例の場合、第2嚥下物収容室234が形成されている部分。)が挿入される。
【0037】
ここで、第1閉塞部270について具体的に説明する。本実施例の場合、第1閉塞部270は、第1密封部280と、第2密封部282と、連通部284とを有する。第1密封部280と第2密封部282との具体的な内容は第2実施例と同様なので、ここではその詳細な説明を省略する。本実施例にかかる連通部284の機能は第2実施例にかかる連通部84と同様である。
【0038】
本実施例の場合、第2閉塞部272は、第1密封部80あるいは第2密封部82と同一構造である。
【0039】
次に、嚥下用容器14を用いて嚥下物を嚥下するための手順例を簡単に説明する。
【0040】
最初に、患者または介護者などが容器本体220の端部を筒部222から引き抜く。そうすると開口250が露出する。患者または介護者などは、第2嚥下物収容室234に嚥下物を入れる。嚥下物が入ったら、第2嚥下物収容室234を患者の口に咥えさせ、嚥下用容器14のうち補助物質室230の部分を挟んで押す。こうすると第1密封部80と第2密封部82と第2閉塞部272とが開く。第1密封部80と第2密封部82と第2閉塞部272とが開くので、容器本体220の中は連通する。このとき、容器本体220を押すと、第1嚥下補助物質40と錠剤300と第2嚥下物収容室234に収容された図示しない嚥下物とが患者の口の中に入る。患者は、それらを嚥下する。
【0041】
以上のようにして、本実施例にかかる嚥下用容器14は、次に述べる効果を奏する。第1の効果は、嚥下が困難な者が何種類かの嚥下物を嚥下しなければならないとき、それらの嚥下物を効率よく服用できるという効果である。とりわけ、第2嚥下物収容室234がある場合、そこに嚥下物を入れてから第2閉塞部272を開くことができるので、嚥下の前に第1嚥下物収容室232内の嚥下物(錠剤300)をこぼさずに済む。第2の効果は、容器本体220の端部が筒部222によって覆われており、事前に粉塵・外部や手指に触れる確率が小さいため、製造から服用までの、流通・保管、さらに、外包装開封から、実際の服用までのバージン性を保証でき、衛生的であるという効果である。
【0042】
<第2実施例>
図2は本実施例にかかる嚥下用容器10の一部破断図である。
【0043】
本実施例にかかる嚥下用容器10は、1枚の合成樹脂(低密度ポリエチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、その複合樹脂などのように折り曲げ可能な柔らかいもの)製のシートを2つ折りとし、2つ折りとされたシートの端と端とを貼り合わせ、貼り合わされた部分を切り取って外形を整えることで形成される。シートの端と端とが貼り合わされた部分が外周強シール部76である。嚥下用容器10は、容器本体20と筒部22とを有する。
【0044】
容器本体20は、第1補助物質室30と第2補助物質室32と第1嚥下物収容室34と第2嚥下物収容室36とを有する。第1補助物質室30と第2補助物質室32と第1嚥下物収容室34とは、容器本体20の外部に対して気密性を保つように形成されている。第1補助物質室30と第2補助物質室32と第1嚥下物収容室34と第2嚥下物収容室36とは、一列に並んでいる。
【0045】
第1補助物質室30内には、第1嚥下補助物質40が収容されている。本実施例における第1嚥下補助物質40は、水分を含有する、滅菌されたゼリーであって、粘液状の外観を呈しているものである。
【0046】
第2補助物質室32内には、第2嚥下補助物質42が収容されている。本実施例における第2嚥下補助物質42は、第1嚥下補助物質40と同様、水分を含有する、滅菌されたゼリーであって、粘液状の外観を呈しているものである。ただし、第2嚥下補助物質42は、第1嚥下補助物質40とは味が異なる。
【0047】
第1補助物質室30と第2補助物質室32とには、第1嚥下補助物質40や第2嚥下補助物質42に影響を与えない気体(たとえば窒素ガス)が封入される。ただしこの気体は封入されていなくてもよい。
【0048】
第1嚥下物収容室34には、嚥下物として錠剤300が予め収容されている。第2嚥下物収容室36は空室である。本実施例にかかる第2嚥下物収容室36は、開口50を有する。この開口50は、第2嚥下物収容室36の外部と内部とを連通させるものである。本実施例の場合、この開口50を介して第2嚥下物収容室36内に嚥下物が収容される。
【0049】
第1補助物質室30と第2補助物質室32との間は、第1閉塞部70によって仕切られている。第2補助物質室32と第1嚥下物収容室34との間は、第2閉塞部72によって仕切られている。第1嚥下物収容室34と第2嚥下物収容室36との間は、第3閉塞部74によって仕切られている。第1閉塞部70は、第1補助物質室30を嚥下用容器10の外から押したとき、第1補助物質室30に第1嚥下補助物質40が与える力によって容易に開く。第2閉塞部72は、第2補助物質室32を嚥下用容器10の外から押したとき、第2補助物質室32に第2嚥下補助物質42が与える力などによって容易に開く。第3閉塞部74は、第2補助物質室32を嚥下用容器10の外から押したとき、第1嚥下物収容室34内に進入した第2嚥下補助物質42が与える力などによって容易に開く。第1閉塞部70と第2閉塞部72と第3閉塞部74とが容易に開く理由は後述する。
【0050】
筒部22は、容器本体20の一端に設けられる。筒部22は、容器本体20と一体化している。容器本体20と筒部22との境界は、境界強シール部78によって区切られている。本実施例にかかる境界強シール部78は、2つ折りとされたシートの互いに対向する面同士を貼り合せたものである。
【0051】
筒部22は、第1補助物質室30、第2補助物質室32、第1嚥下物収容室34、および、第2嚥下物収容室36と共に、1つの列を形成している。上述したように、折り曲げ可能な柔らかい合成樹脂製のシートの端と端とを貼り合わせることで嚥下用容器10が形成されているので、本実施例にかかる容器本体20も折り曲げ可能である。容器本体20が折り曲げ可能なので、筒部22には、容器本体20の他端(本実施例の場合、第2嚥下物収容室36が形成されている部分。以下、「端部」と称する)が挿入される。
【0052】
図2を参照しつつ、第1閉塞部70について具体的に説明する。本実施例の場合、第1閉塞部70は、第1密封部80と、第2密封部82と、連通部84とを有する。
【0053】
第1密封部80は、第1補助物質室30に隣接する。第2密封部82は、第2補助物質室32に隣接する。本実施例の場合、第1密封部80と第2密封部82とは、いずれも、2つ折りのシートの面と面とを貼り合せて密封したものである。第1密封部80と第2密封部82との強度は、外周強シール部76の強度よりも低くなっている。これは、2つ折りのシートの面と面とを貼り合せる際、外周強シール部76や境界強シール部78が形成される部分にシート(加熱されると容易に溶けるもの。以下「特殊シート」と称する。)を用いることで可能になる(ちなみに、本実施例の場合、外周強シール部76と境界強シール部78とは、同一のシートで接着されている)。このような構造となっているため、第1密封部80を形成しているシートの面と面とは、第1補助物質室30を嚥下用容器10の外から押したとき、第1補助物質室30に第1嚥下補助物質40が与える力によって容易に剥離する。第1密封部80が剥離した後、第1補助物質室30を引き続き嚥下用容器10の外から押すと、第2密封部82を形成しているシートの面と面とは、第1補助物質室30に第1嚥下補助物質40が与える力によって容易に剥離する。
【0054】
連通部84は、第1密封部80と第2密封部82との間に配置される。本実施例の場合、連通部84は、2つ折りとされたシートのうち、第1密封部80と第2密封部82と外周強シール部76とによって挟まれた部分である。そのため、第1密封部80と第2密封部82とが開くと、第1補助物質室30と第2補助物質室32との間は、連通部84によって連通することとなる。
【0055】
本実施例の場合、第2閉塞部72は、第1密封部80あるいは第2密封部82と同一構造である。したがって、第2閉塞部72を形成しているシートの面と面とは、第2補助物質室32を嚥下用容器10の外から押したとき、第2補助物質室32に第2嚥下補助物質42が与える力によって容易に剥離する。
【0056】
次に、本実施例にかかる嚥下用容器10の製造手順を簡単に説明する。本実施例にかかる嚥下用容器10は、まず、上述したシートの表面に特殊シートを貼る。この特殊シートは、容器本体20を形成しているシートの面と面とを接着させる役割を持つ。このため、特殊シートの種類はそれが形成される位置によって異なる。特殊シートが形成されると、そのシートを2つに折る。シートが折られると、そのシートの端と端とが重なった部分を加熱する。これにより、そのシートの端と端とが重なった部分の特殊シートが溶ける。特殊シートが溶けることで、シートの端と端とが接着される。シートの端と端とが接着されることで、筒状の部材が形成される。筒状の部材が形成されると、その部材のうち第1密封部80が形成される部分と第2密封部82が形成される部分とを挟み、加熱する。これにより、シートのうちそれらの部分の面と面とが接着され、第1閉塞部70が形成される。第1閉塞部70が形成されると、筒状の部材の一端から第1補助物質室30が形成される予定の箇所に第1嚥下補助物質40を充填する。第1嚥下補助物質40が充填されると、境界強シール部78が形成される部分を挟み、加熱する。これにより、シートのうち境界強シール部78が形成される部分の面と面とが接着され、境界強シール部78が形成される。このとき、筒部22も併せて形成されることとなる。境界強シール部78が形成されると、筒状の部材の他端から第2補助物質室32が形成される予定の箇所へ第2嚥下補助物質42を充填する。第2嚥下補助物質42が充填されると、第2閉塞部72が形成される部分を挟み、加熱する。これにより、第2閉塞部72が形成される。第2閉塞部72が形成されると、上述した筒状の部材の他端から第1嚥下物収容室34が形成される予定の箇所へ錠剤300を入れる。錠剤300が入ると、第3閉塞部74が形成される部分を挟み、加熱する。第3閉塞部74が形成されると、外周強シール部76などの端を適宜切断することで嚥下用容器10の外形を整える。嚥下用容器10の外形が整えられると、容器本体20のうち第1閉塞部70の部分と第3閉塞部74の部分とを折り曲げて、容器本体20の端部を筒部22に挿入する。これにより、嚥下用容器10が完成する。
【0057】
次に、嚥下用容器10を用いて嚥下物を嚥下するための手順例を簡単に説明する。
【0058】
[第1の手順例]
最初に、患者または介護者などが容器本体20の端部を筒部22から引き抜く。そうすると開口50が露出する。患者または介護者などは嚥下用容器10のうち第1補助物質室30の部分を挟んで押す。こうすると第1密封部80と第2密封部82とが開く。第1密封部80と第2密封部82とが開くので、第1補助物質室30と第2補助物質室32との間が連通部84によって連通する。第1補助物質室30と第2補助物質室32との間が連通するので、これらを押すと、第1補助物質室30から第1嚥下補助物質40が押し出され、第2補助物質室32から第2嚥下補助物質42が押し出される。これにより、第1嚥下補助物質40と第2嚥下補助物質42とが混じり合うことが可能になる。この状態で、患者または介護者などは、第1補助物質室30から第2補助物質室32へ第1嚥下補助物質40を適宜押し出し、第1嚥下補助物質40と第2嚥下補助物質42とを混ぜる。第1嚥下補助物質40と第2嚥下補助物質42とが混ぜられると、患者または介護者などは、開口50を介して第2嚥下物収容室36に嚥下物(第1嚥下物収容室34に予め収容されている錠剤300とは別の嚥下物)を収容する(第1嚥下補助物質40と第2嚥下補助物質42とを混ぜる直前など、他のタイミングで嚥下物が収容されてもよいことは言うまでもない)。嚥下物が収容されると、患者は、容器本体20の端部を口に咥える。容器本体20の端部が口に咥えられると、患者または介護者などは、第1閉塞部70を折り曲げてから、第2補助物質室32の部分を強く握ったり押したりする。これにより、第2閉塞部72の接着部分と第3閉塞部74の接着部分とが剥離するため、第2閉塞部72と第3閉塞部74とは開く。第2閉塞部72と第3閉塞部74とが開くので、第1嚥下補助物質40と第2嚥下補助物質42との混合物が患者の口の中に入る。これと同時に錠剤300と第2嚥下物収容室36に収容された嚥下物とが患者の口の中に入る。患者は、混合物と錠剤300と第2嚥下物収容室36に収容された嚥下物とを嚥下する。
【0059】
[第2の手順例]
第1の手順例と同様にして開口50を露出させると、患者または介護者などは、開口50を介して第2嚥下物収容室36に嚥下物(錠剤300とは別の嚥下物)を収容する。嚥下物が収容されると、患者は、容器本体20の端部を口に咥える。容器本体20の端部が口に咥えられると、患者または介護者などは、第1閉塞部70が折り曲げられた状態のまま、第2補助物質室32の部分を強く握ったり押したりする。これにより、第2閉塞部72の接着部分と第3閉塞部74の接着部分とが剥離するため、第2閉塞部72と第3閉塞部74とが開き、第2嚥下補助物質42が押し出される。第2嚥下補助物質42が押し出されるので、第2嚥下補助物質42と錠剤300と第2嚥下物収容室36に収容された嚥下物とが患者の口の中に入る。患者は、第2嚥下補助物質42と錠剤300と第2嚥下物収容室36に収容された嚥下物とを嚥下する。第2嚥下補助物質42と錠剤300と第2嚥下物収容室36に収容された嚥下物とが嚥下されると、患者または介護者などは、患者の口から容器本体20の端部を抜き、第2嚥下物収容室36にさっきとは別の嚥下物を収容する。その嚥下物が収容されると、患者は、容器本体20の端部を口に咥える。容器本体20の端部が口に咥えられると、患者または介護者などは、第1閉塞部70を伸ばしてから、第1補助物質室30の部分を強く握ったり押したりする。これにより第1閉塞部70が開き、第1嚥下補助物質40が押し出される。第1嚥下補助物質40が押し出されるので、第1嚥下補助物質40と嚥下物とが患者の口の中に入る。患者は、第1嚥下補助物質40と嚥下物とを嚥下する。
【0060】
以上のようにして、本実施例にかかる嚥下用容器10は、次に述べる効果を奏する。第1の効果は、嚥下の際に感じる味覚を適宜調整できるという効果である。第2の効果は、何種類かの嚥下物を嚥下しなければならないとき、それらの嚥下物を順次効率よく服用できるという効果である。第3の効果は、容器本体20の端部が筒部22によって覆われているため、洗浄や消毒が必要(衛生的概念、輸送・保管時の保証)となる可能性が低くなるという効果である。
【0061】
<変形例の説明>
本実施例で説明した嚥下用容器10は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。これは、シートの材質を上述した実施例に限定するものではない。これは、シートの形状、各空間の形状、開口の形状、それらの寸法、それらの構造、およびそれらの配置などを上述した実施例に限定するものでもない。本実施例で説明した嚥下用容器10は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0062】
例えば、本発明にかかる嚥下用容器は、シートを2つ折りにして貼り合わせたものに限定されない。嚥下用容器は、2枚のシートを貼り合せたものであってもよいし、1本のチューブのところどころを貼り合わせたものであってもよい。嚥下用容器は、ブロー成形によって形成されるものであってもよい。シートの接着方法も上述したものに限定されない。例えば、ヒートシール、あるいは、インパルスシールによってシートが貼りあわされてもよい。
【0063】
また、本発明にかかる嚥下物収容室は、開口50に代えて、開口形成予定部60を有していてもよい。開口形成予定部60は、開口50の形成が予定される部分である。また、本発明にかかる嚥下用容器において筒部22は必ずしも必要ではない。本発明にかかる嚥下用容器は補助物質室を3つ以上有していてもよい。図3は、上述した嚥下用容器10の変形例にかかる嚥下用容器12の一部破断図である。
【0064】
図3に示す嚥下用容器12において、嚥下用容器12は、2枚のシートを第1外周強シール部180と第2外周強シール部182とにおいて貼り合せたものである。嚥下用容器12は、容器本体120を備える。嚥下用容器12は、嚥下用容器10の筒部22に相当する部分を備えていない。
【0065】
容器本体120は、第1補助物質室130と第2補助物質室132と第3補助物質室136と嚥下物収容室134とを有する。
【0066】
第1補助物質室130の端は、第1端部強シール部176によって塞がれている。第1端部強シール部176は、第1外周強シール部180や第2外周強シール部182と同様、嚥下用容器12の素材であるシートの面と面とを接着することで形成される。第1補助物質室130内には、第1嚥下補助物質40が収容されている。第2補助物質室132内には、第2嚥下補助物質42が収容されている。第3補助物質室136内には、第3嚥下補助物質44が収容されている。第3嚥下補助物質44は、第1嚥下補助物質40や第2嚥下補助物質42と同様、水分を含有する、滅菌されたゼリーであって、粘液状の外観を呈しているものである。ただし、ここでは、第3嚥下補助物質44は、第1嚥下補助物質40や第2嚥下補助物質42とは味が異なることとする。
【0067】
嚥下物収容室134の端は、第2端部強シール部178によって塞がれている。第2端部強シール部178は、第1端部強シール部176や第1外周強シール部180や第2外周強シール部182と同様、嚥下用容器12の素材であるシートの面と面とを接着することで形成される。嚥下物収容室134は、開口形成予定部60を有する。嚥下用容器12における開口形成予定部60は、第1外周強シール部180に形成されたV字形の切り口である。この開口形成予定部60は、嚥下物収容室134の外部と内部とを連通させるための開口を形成するためのものである。介護者や患者などが、この切り口にせん断力を加え、嚥下物収容室134に開口を設ける。嚥下用容器12の場合、この開口を介して嚥下物収容室134内に嚥下物が収容される。もちろん、開口形成予定部60の具体的な形態は図3に示したものに限定されない。
【0068】
第1補助物質室130と第2補助物質室132との間は、第1閉塞部170によって仕切られている。第2補助物質室132と第3補助物質室136との間は、第3閉塞部172によって仕切られている。第3補助物質室136と嚥下物収容室134との間は、第2閉塞部72によって仕切られている。図2に示す第1閉塞部70と同様、第1閉塞部170は、第1補助物質室130を嚥下用容器12の外から押したとき、第1補助物質室130に第1嚥下補助物質40が与える力によって容易に開く。第3閉塞部172は、第2補助物質室132を嚥下用容器12の外から押したとき、第2補助物質室132に第2嚥下補助物質42が与える力によって容易に開く。第1閉塞部170と第3閉塞部172とが容易に開く理由は図2に示す第1閉塞部70と同様である。なお、第1閉塞部170の構成と第3閉塞部172の構成とは同一である。第1閉塞部170と第3閉塞部172とは、嚥下用容器10の連通部84に代え、これよりも短い連通部184を有する。連通部184の機能は嚥下用容器10の連通部84と同様である。
【0069】
なお、嚥下物収容室134に嚥下物が予め収容されていてもよい。これにより、少なくとも1種類の嚥下物については、これを嚥下物収容室に収容する手間が省ける。その予め収容される嚥下物や、第2実施例の第1嚥下物収容室34に収容される嚥下物は、ソフトカプセルあるいはハードカプセルに収容された状態で嚥下物収容室に収容されてもよい。それら嚥下物は、次に述べるような素材で作られたシートにくるまれた状態で嚥下物収容室に収容されてもよい。その素材とは、食べることができ、かつ、次に述べる嚥下補助物質によって少なくとも表面が溶ける素材である。その嚥下補助物質は、嚥下物収容室と閉塞部を挟んで隣り合う補助物質室に収容された嚥下補助物質である。その素材の具体例には、デンプン製のシートがある。このようなシートに嚥下物をくるむと、嚥下の際、シートの表面はすべりやすくなる。シートの表面がすべりやすくなるのは、シートの表面が嚥下補助物質に溶けるためである。シートの表面がすべりやすくなるため、嚥下の際、シートにくるまれた嚥下物はスムーズに患者の喉を容易に通過する。このため、嚥下が困難な患者であってもその嚥下物を嚥下しやすくなる。
【0070】
なお、嚥下物がカプセルに収容されていたりシートにくるまれていたりした場合、嚥下物は、カプセルあるいはシートと嚥下補助物質とによって二重に包まれているため、嚥下物が不快な味(例えば苦い味)を有していても、患者の舌がその味を感じ取る可能性は低くなる。その結果、嚥下物が不快な味を有していてもその味が抑制される。しかも、嚥下物が口内で散乱することを抑制できる。
【0071】
嚥下補助物質によって少なくとも表面が溶ける素材で作られたシートに嚥下物をくるむ場合、以下の手順によって嚥下物をくるむことが望ましい。その手順とは、シートを筒状に丸め、その一端を塞いだ後、筒状のシートの中に嚥下物を充填し、筒状のシートの他端を塞ぐというものである。このようにして嚥下物をくるむと、ハードカプセルに嚥下物を充填するのと同様の手順で上述したようなシートに嚥下物を充填できるので、嚥下用容器のうち、シートでくるまれた嚥下物が予め収容されているものを製造する場合、この嚥下用容器を効率よく製造できる。
【0072】
上述した各変形例の他にも、本発明にかかる嚥下物収容室は種々の変更を加え得る。例えば、嚥下物の剤形は散剤や顆粒剤に限定されない。嚥下物の成分も限定されない。人や動物を治療するために服用される物質のほか、健康増進のために消費される食品などであってもよい。
【0073】
また、嚥下補助物質は、水分を含有する滅菌された粘液状の外観を呈しているゼリーに限られない。ただし、嚥下物収容室に隣接している補助物質収容室に収容されている嚥下補助物質は、人または人以外の動物の口内を移動する際に嚥下対象物を伴う程度の粘度を有し、かつ、人または人以外の動物が嚥下できる流動体であることを必要とする。一方、嚥下物収容室に隣接していない補助物質収容室に収容されている嚥下補助物質は、水であってもかまわない。嚥下補助物質の例には、濃厚なシロップ、ハチミツ、カスタードクリーム、ピーナツ・スプレッド、チーズ・スプレッドがある。さらに、多様な味覚を生じさせる必要がないのであれば、各補助物質室に予め収容される嚥下補助物質は、すべて同一の味であってもよい。もちろん、嚥下補助物質が滅菌されていることは必須要件ではない。つまり、嚥下補助物質は滅菌されていなくともかまわない。また、本発明の課題と解決手段との関係においては、嚥下補助物質の成分に防腐剤が含まれていてもよい。ちなみに、嚥下補助物質の成分に防腐剤が含まれている場合、しばしば、滅菌されていない嚥下補助物質が収容される。
【0074】
また、閉塞部の構造は上述したものに限定されない。図2に示す第1閉塞部70のような閉塞部のみが採用されてもよいし、第2閉塞部72のような閉塞部のみが採用されてもよい。ただし、閉塞部の構造は、容器本体の外部から力を加えられると開いて嚥下物収容室や補助物質室を互いに連通させるものであることを必要とする。
【符号の説明】
【0075】
10,12,14 嚥下用容器
20,120,220 容器本体
22,222 筒部
30,130 第1補助物質室
32,132 第2補助物質室
34,232 第1嚥下物収容室
36,234 第2嚥下物収容室
40 第1嚥下補助物質
42 第2嚥下補助物質
44 第3嚥下補助物質
50,250 開口
60 開口形成予定部
70,170 第1閉塞部
72 第2閉塞部
74,172 第3閉塞部
76,274 外周強シール部
78,276 境界強シール部
80 第1密封部
82 第2密封部
84,184,284 連通部
134 嚥下物収容室
136 第3補助物質室
176 第1端部強シール部
178 第2端部強シール部
180 第1外周強シール部
182 第2外周強シール部
230 補助物質室
270 閉塞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内に、複数の空洞と、隣り合う2つの前記空洞の間を閉塞する閉塞部とを有しており、
前記空洞はそれぞれ少なくとも1つの前記閉塞部と隣り合っており、
前記閉塞部が、前記容器本体の外部から力を加えられると開く、嚥下用容器であって、
前記空洞のいずれかが、嚥下物が収容される嚥下物収容室であり、
前記空洞のいずれかが、嚥下補助物質が予め収容されており、かつ、前記容器本体の外部から力を加えられると前記嚥下補助物質を押し出す補助物質室であることを特徴とする、嚥下用容器。
【請求項2】
容器本体内に、少なくとも3つの空洞と、隣り合う2つの前記空洞の間を閉塞する閉塞部とを有しており、
前記空洞はそれぞれ少なくとも1つの前記閉塞部と隣り合っており、
前記閉塞部が、前記容器本体の外部から力を加えられると開く、嚥下用容器であって、
前記空洞のうち少なくとも1つが、前記容器本体の外部に連通する開口を介して嚥下物が収容可能な嚥下物収容室であり、
前記嚥下物収容室のいずれかが、前記開口、または、前記開口の形成が予定される開口形成予定部を有しており、
前記空洞のうち少なくとも2つが、嚥下補助物質が予め収容されており、かつ、前記容器本体の外部から力を加えられると前記嚥下補助物質を押し出す補助物質室であることを特徴とする、嚥下用容器。
【請求項3】
前記少なくとも2つの補助物質室のいずれかに、他の前記補助物質室とは異なる味の嚥下補助物質が予め収容されていることを特徴とする、請求項2に記載の嚥下用容器。
【請求項4】
前記容器本体は、互いに異なる味の前記嚥下補助物質がそれぞれ収容されている2つの前記補助物質室間の前記閉塞部で折り曲げ可能であることを特徴とする、請求項3に記載の嚥下用容器。
【請求項5】
互いに異なる味の前記嚥下補助物質がそれぞれ収容されており、かつ、隣り合っている2つの前記補助物質室間の前記閉塞部が、
前記容器本体の外部から力を加えられると開く、複数の密封部と、
前記密封部の間に配置され、前記複数の密封部が開くと前記2つの補助物質室間を連通させる連通部とを有することを特徴とする、請求項3に記載の嚥下用容器。
【請求項6】
前記容器本体が折り曲げ可能であり、
前記嚥下用容器が、前記容器本体の一端に設けられ、前記容器本体が折り曲げられているとき前記容器本体の他端が挿入される筒部をさらに備え、
前記少なくとも3つの空洞と前記筒部とが1つの列を形成するように並んでおり、
前記容器本体の外部に連通する開口が、前記容器本体の他端のうち前記筒部に挿入される部分から前記容器本体の外部に連通することを特徴とする、請求項2に記載の嚥下用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−147659(P2011−147659A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12338(P2010−12338)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(505180313)株式会社モリモト医薬 (9)
【Fターム(参考)】