四方巻き込み床材
【課題】従来の木質系フローリング材と同等の意匠性を有し、且つ、床材同士の継ぎ目からの水分の滲み込みが防止できる優れた耐水性を有する四方巻き込み床材を提供する。
【解決手段】 四方の端面に合いじゃくり、実はぎ、合いじゃくり実はぎ、又は嵌合形状の少なくとも一種の実加工が施されている床材用基材4の上部面に矩形状の化粧基材部2が形成され、化粧基材部2の表面と、各側面が被覆接着されている四方巻き床材で実同士を嵌め合わせることを特徴とする四方巻き込み床材。
【解決手段】 四方の端面に合いじゃくり、実はぎ、合いじゃくり実はぎ、又は嵌合形状の少なくとも一種の実加工が施されている床材用基材4の上部面に矩形状の化粧基材部2が形成され、化粧基材部2の表面と、各側面が被覆接着されている四方巻き床材で実同士を嵌め合わせることを特徴とする四方巻き込み床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物における室内床面、壁材、天井材等の建築内装材に使用するための、木質系基材または木粉含有熱可塑性樹脂基材に熱可塑性樹脂化粧シートを積層した四方巻き込み床材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物における室内床面用の床材としては、木質系フローリング材が最も広く使用されている。この木質系フローリング材は一般に厚み6〜15mm程度の天然木材の無垢板や、厚み6〜15mm程度の積層合板等の木質基材が用いられている。
【0003】
また、木質基材上に、厚み数百μm及至数mm程度の天然木材の突板を貼着したり、あるいは塗装品等をプレス加工等で施した床材が使用され、且つ、開発されている。
【0004】
前記木質基材上に、化粧単板が粘着されている建築用化粧床材および製造方法(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0005】
この化粧床材100は図12に示すように基材101上に複数枚の化粧単板102が粘着され、各化粧単板102の側縁に沿って溝103が形成されている。また、各化粧単板102の表面が塗装仕上げされており、溝103周囲の化粧単板101側縁がプレス金型で溝中に押し込まれ、側縁の外表面が放射線状に溝中に巻き込まれている。
【0006】
また、図13に示すような木質系基材に化粧シートが粘着された床材およびこれを用いた床面(例えば、特許文献2参照。)も知られている。
【0007】
この床材200は、図13に示すように木質系基材104の一方の面に化粧シート105が粘着された矩形状の床材であって、前記化粧シート105が粘着された側の四周縁部に前記化粧シート105で被覆された斜面106を形成している。
【0008】
前記木質基材は天然木材を使用しているために、日光による変色や、表面の傷が付き易く、且つ、耐水性等も弱いという問題が有る。しかし、その表面の意匠が天然木材の木目ということで、最も自然で親しみやすく、美麗な意匠であることが最大の強みとなっている。
【0009】
このために、耐候性の弱さは天然物ゆえに大目に見られ、表面の傷付きは研磨・塗装による補修で対応することで許容されて、消費者に広く受け入れられている現状がある。
【0010】
また、前記木質系フローリング材は、表面化粧材として天然木突板が使われているために、本質的に耐水性が弱い。例えば、浴室脱衣所や洗面所、厨房の流し台近傍等の様に、床面が水に濡れる機会の多い箇所に使用すると、水分が突板層やその下の木質基材にしみ込み易い。
【0011】
そして、突板層の膨れや木質基材からの剥離、あるいは床材に反り等が発生し易いという問題点があった。
【0012】
また、前記木質系フローリング材は、その表面意匠が天然木材に依存するため、色調や木目模様などの意匠品質の安定した製品を安定的に大量生産することが困難であるという
問題点がある。
【0013】
また、資源が比較的豊富なオーク材(楢材)であれば現在のところ問題はない。しかし、消費者の多様な嗜好に合わせて、例えば、バーチ材(樺材)やチェリー材(桜材)、メープル材(楓材)などを使用してライト調(淡色系)の意匠の製品を品揃えに加えようとすると、世界的に木材資源が不足しているために難しい。
【0014】
さらに、天然木材で意匠品質の安定した製品の大量供給は非常に困難であるという問題点がある。
【0015】
こうした問題点に鑑みて、木質系フローリング材と同等の意匠性を有し、且つ、床材の表面は勿論のこと、床材同士の継ぎ目部分においても、優れた耐水性を有する床材およびその製造方法(例えば、特許文献3参照。)も知られている。
【0016】
この床材300は、図14に示すように平板状の床材用基材107の上面から、その全外周における側面109、110の少なくても上側の一部111、112にかけて連続して、熱可塑性樹脂製の化粧シート113が積層されている。
【0017】
そして、この床材300は、表面意匠の自由度や安定性に優れることは勿論、化粧シート113が熱可塑性樹脂であることから耐候性や耐水性にも優れるなどの利点があると記載されている。
【0018】
しかし、木質基材の表面に熱可塑性樹脂製の化粧シートを貼着して作製した床材を、多数敷き詰めて施工した床面は、床材同士の継ぎ目から水分が容易に滲み込む問題がある。そして、継ぎ目から滲み込んだ水分が木質基材を膨潤させ、継ぎ目付近からの化粧シートの膨れや剥離が生じる。
【0019】
さらに、継ぎ目付近の湿潤部における黴や腐朽、滲み込んだ水分の作用による床材の反り等の問題が発生する場合がある。
【0020】
また、木質基材の実部の各種形状に熱可塑性樹脂製の化粧シートを貼り合わせるのは非常に難しいといわれ、且つ、記載されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0021】
また、前記床材同士の継ぎ目から水分が滲み込むのを防止するために合成樹脂等によるシーリング処理を施して、問題の解決が計られている。
【0022】
しかし、この方法では、床面に多数敷き詰めた床材の相互間の全ての継ぎ目にシーリング処理を施さなければ成らないという問題がある。さらに、床材の施工に非常に手間がかかるという問題もある。
【0023】
また、施工後は、シーリング剤が乾燥硬化するまでの間、施工箇所への立ち入りが出来なくなり、且つ、建築作業等の次工程作業に支障が生じるなど、施工面で著しい問題がある。
【0024】
また、上記したシーリング処理によって塞がれた床材間の継ぎ目は、従来の木質系フローリング材と比較して外観が非常に悪いという問題がある。
【0025】
さらに、床材とシーリング剤との色彩や艶を整合させることが非常に難しいという問題もある。そして、施工した床面の意匠性を減殺する結果ともなってしまい兼ねないという問題もある。
【0026】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特許第3497437号公報
【特許文献2】特開2002−339556号公報
【特許文献3】特開2003−49530号公報
【非特許文献1】株式会社彰国社編、「建築大辞典第」、第2版普及版、株式会社彰国社、2002年6月10日第7刷、P.8,9,638
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は上記した従来の問題点を鑑みてなされるものであり、従来の木質系フローリング材と同等の意匠性を有し、しかも個々の床材の表面は勿論のこと、床材同士の継ぎ目部分においても、優れた耐水性を有し、且つ、美観を有する四方巻き込み床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の課題を解決するために、まず本発明の請求項1に係る発明は、
四方の端面に合いじゃくり、実はぎ、合いじゃくり実はぎ、又は嵌合形状の少なくとも一種の実加工が施されている床材用基材の上部面に矩形状の化粧基材部が形成され、前記化粧基材部の表面と、各端面を被覆接着させる適宜の形状に形成された熱可塑性樹脂化粧シートで、化粧基材部の表面と、各側面が被覆接着されている四方巻き床材であって、
前記化粧基材部の短辺方向両端面の内側近傍裏側面にそれぞれV字状に切削されている折り返し溝を備え、
前記V字状に切削されている折り返し溝が内側に折り曲げられ接着接合されてなる化粧基材部が形成されている床材用基材の、実同士を嵌め合わせることを特徴とする四方巻き込み床材である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の四方巻き込み床材は四方の端面に合いじゃくり、実はぎ、合いじゃくり実はぎ、又は嵌合形状の少なくとも一種の実加工が施されている床材用基材とその床材用基材の上部面に矩形状の化粧基材部が設けられている。そして、前記化粧基材部表面と各側面が熱可塑性樹脂化粧シートで被覆接着されている。
【0030】
このために、実同士を嵌め合わせて施工した際に、床材同士を隙間無く密着させることができる。そして、化粧基材部の継ぎ目からの水分の滲み込みが防止でき、耐水性に優れている。
【0031】
また、床材同士が隙間無く密着させて突き合わせることができるために、継ぎ目から水分の滲み込みが防止できる。そして、床材の伸縮や反り、黴や腐朽等による劣化などが少ない。
【0032】
さらに、床材同士が隙間無く密着させて突き合わされるために、シーリング処理を施す必要がない。このために、美観が保持される。そして、施工する際に、余分な部材が不要となり、且つ、日程通りの作業ができる。
【0033】
また、水分が付着する機会の多い箇所にも施工できる。そして、長期に亘り表面の意匠
性を保持することができる。
【0034】
さらに、床材基材部表面に、従来の天然木突板を使用した木質系フローリングの外観を模した凹凸の模様を形成することができる。そして、十分な耐水性も確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の四方巻き込み床材を実施の形態に沿って以下に図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図11は本発明の一実施例を示す。
【0036】
図1は本発明の四方巻き込み床材が作製される一実施例の概略を示す概略図である。また、図2は図1の四方巻き込み床材の化粧基材部表面と、各側面が熱可塑性樹脂化粧シートで被覆接着されている一実施形態の概略を示す概略図である。さらに、図3は化粧基材部を被覆接着する熱可塑性樹脂化粧シートの一実施例の形状の概略を示す平面概略図である。
【0037】
図1に示すように、本発明の四方巻き込み床材1は雌実部6と雄実部7を有する床材用基材4と、床材用基材4の上部に熱可塑性樹脂化粧シート10で上方表面と長辺方向の両長辺側面5が被覆接着されている化粧基材部2から構成されている。
【0038】
前記化粧基材部2の短辺方向両端面の内側近傍裏側面にそれぞれV字状に切削されている折り返し溝8が設けられている。そして、短辺方向両端面が内側に折り曲げられ接着接合された際に、熱可塑性樹脂化粧シート10で被覆接着されている短辺側面が形成される。尚、化粧基材部2の表面3が矩形状の場合は、最初に熱可塑性樹脂化粧シート10を長辺側面5にラッピング加工しておけば、折り曲げ後に熱可塑性樹脂化粧シート10が余らずに折り曲げられる。
【0039】
また、四方巻き込み床材1の外観形状は図1では矩形状に施されているが、特に限定されるものではない。例えば、正方形状、正三角形状、正六角形状、あるいは複雑多角形状等であっても良い。さらに、前記形状の1種又は2種以上を組み合わせた幾何学的形状であっても良い。
【0040】
さらに、床材用基材4に形成される実形状は図1に示す形状に特に限定されるものではない。例えば、図8に示す合いじゃくり20あるいは図9に示す実はぎ30または図10に示す合いじゃくり実はぎ40、さらに図11に示すスナップフィト50等の形状であっても良い。
【0041】
そして、図2に示すように床材用基材4の上部に形成されている、化粧基材部2が熱可塑性樹脂化粧シート10で化粧基材部2の表面3と両長辺側面5及び両短辺側面が被覆接着されている四方巻き込み床材が形成される。
【0042】
前記化粧基材部2の短辺方向の両端面が内側方向に折り曲げられ、熱可塑性樹脂化粧シート10で被覆接着されている短辺側面が設けられた両長辺側面5の一部に化粧基材部2が剥き出しになる場合には、塗料やコーキング剤等を充填しておくことが好ましい。
【0043】
また、本発明の四方巻き込み床材1において、床材用基材4と熱可塑性樹脂化粧シート10の材質あるいは構成は、特に限定されるものではない。そして、従来の類似の床材に使用されているものと同様の材質から要求品質に基づき適宜選択して使用することができる。
【0044】
前記熱可塑性樹脂化粧シート10と化粧基材部2の表面3と長辺方向の両長辺側面5等
の被覆接着は必要に応じて、適宜の接着剤が使用される。この接着剤の種類としては 、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系水性エマルジョン接着剤や、水性または油性の二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂やポリエーテル樹脂等の湿気硬化型ホットメルト接着剤等、従来公知のものが適宜使用可能であり、本発明において特に限定されるものではない。
【0045】
前記熱可塑性樹脂化粧シート10は熱可塑性樹脂からなる基材シートあるいは透明樹脂層表面に絵柄層を形成した単層構成の熱可塑性樹脂化粧シートであっても良い。
【0046】
また、前記単層構成の熱可塑性樹脂化粧シートの絵柄層上に図4あるいは図5に示すような透明な熱可塑性樹脂からなる表面保護層15を設けた熱可塑性樹脂化粧シート10であっても良い。
【0047】
また、図6に示すような、熱可塑性樹脂からなる基材シート11の表面に絵柄層12、接着層13、透明樹脂層14、表面保護層15が順に積層されている前記熱可塑性樹脂化粧シート10であっても良い。
【0048】
さらに、図7に示すような、硬質基材シート16、基材シート11、絵柄層12、接着層13、透明樹脂層14、表面保護層15が順に積層されている熱可塑性樹脂化粧シート10であっても良い。
【0049】
図6あるいは図7に示す構成の熱可塑性樹脂化粧シート10は意匠性、接着適性、耐候性、耐溶剤性、耐摩耗性等に優れている。
【0050】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10は、化粧基材部2の表面の好ましくない色彩や色ムラ、欠陥等を隠蔽して意匠性を高めるために、隠蔽性が要求される。このために、熱可塑性樹脂化粧シート10を構成する絵柄層12の下側の熱可塑性樹脂からなる基材シート11は隠蔽性を付与するために不透明な基材シート11が望ましい。
【0051】
前記不透明な基材シート11は熱可塑性樹脂に酸化チタンや酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化鉄等の不透明顔料を添加して成される。また、不透明印刷インキ等により隠蔽層を形成したり、これらを併用することもできる。
【0052】
また、前記不透明な基材シート11あるいは透明樹脂層14の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、延伸、未延伸ポリエステル樹脂、共重合ポリエステル(通称PET−G)樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を使用することができる。
【0053】
前記熱可塑性樹脂の中でも、化粧基材部を被覆接着した際に、表面物性や加工性、経済性、廃棄性(焼却性も含む)等を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂を使用することが望ましい。
【0054】
また、前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂や、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、その金属中和物(所謂アイオノマー樹脂)、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体樹脂等のオレフィン系共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂等が挙げられる。
【0055】
さらに、前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等の結晶性ポリエステル樹脂や、ポリアリレート樹脂、非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂(所謂A−PET樹脂)、共重合ポリエステル樹脂(例.1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である所謂PET−G樹脂)等の非晶質ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0056】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10は前記各種の熱可塑性樹脂から複数種を適宜選択し、組み合わせて構成することも出来る。そして、四方巻き込み床材に要求される表面の耐傷付き性等に優れている熱可塑性樹脂化粧シート10が適宜作製される。
【0057】
また、化粧基材部2の表面3と両長辺側面5の熱可塑性樹脂化粧シート10の被覆接着は、真空成形法又はソフトラッピング法等により施すことができる。
【0058】
前記加工に際しては、熱可塑性樹脂化粧シート10が軟質性であるほうが好ましい。
【0059】
また、前記真空成形法又はソフトラッピング法等の加工適性に好ましい2層構成の熱可塑性樹脂化粧シートとして、例えば、基材シート11の樹脂は柔軟性に優れた軟質ポリオレフィン系樹脂やオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂、非晶質ポリエステル樹脂等を用い、透明樹脂層14の樹脂は硬度の高いポリプロピレン樹脂や結晶性ポリエステル樹脂等を組み合わせて構成することができる。
【0060】
なお、前記軟質ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂等の通常のポリオレフィン系樹脂に、低密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィン重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物等の軟質成分を添加又は共重合させて、柔軟性を改善した樹脂等を使用することができる。
【0061】
次ぎに、絵柄層12は、所望の意匠の絵柄を印刷等によって表現したものであり、その絵柄の種類や構成材料、形成方法等に関しては一切制限はない。
【0062】
一般的に絵柄層の絵柄としては、木目柄や石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等であり、単色無地(ベタ)であっても勿論かまわない。
【0063】
また、基材シート11の隠蔽性が不十分である場合には、意匠絵柄と併用して若しくは単独で、不透明顔料を大量に含有する隠蔽ベタ層を設けることもできる。
【0064】
また、絵柄層12の構成材料は、染料又は顔料等の着色剤を合成樹脂等の展色剤と共に適宜の溶剤中に溶解又は分散した印刷インキ又は塗料等を使用するのが一般的である。
【0065】
また、着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄(弁柄、黄色酸化鉄、鉄黒)コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料や、アゾ顔料、イミダゾロン顔料等の有機顔料等が例示できる。
【0066】
さらに、展色剤としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、繊維素誘導体等を使用することができる。
【0067】
また、絵柄層12の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、
グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、転写印刷法、静電印刷法、インキジェット印刷法などの各種印刷法が例示出来る。
【0068】
さらに、絵柄層12がベタ状の場合には、例えば、グラビアコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、キスコート法、ロッドコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種塗工方法等を適宜選択して使用される。
【0069】
また。絵柄層12の印刷形成に先立ち、基材シート11の表面に、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、電離放射線処理、酸処理、アルカリ処理、プライマー又はアンカー処理等、易接着化のための表面処理を施しておくことにより、層間密着性の向上を図ることもできる。
【0070】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10の意匠絵柄の付与方法としては、前記のような
印刷又は塗工方法による代わりに、無着色の熱可塑性樹脂と着色した熱可塑性樹脂を不十分な混合状態でシート状に形成する。そして、木目に類似した着色模様を呈するようにした基材シート11も使用することもできる。
【0071】
熱可塑性樹脂化粧シート10を作製する積層方法としては、例えば、適宜の接着剤を介したドライラミネート法、ウェットラミネート法や、接着剤層を介した又は介さない熱ラミネート法、高周波ラミネート法、熱可塑性樹脂を溶融状態で押し出すと同時に積層する押出ラミネート法等がある。そして適宜選択して用いられる。
【0072】
前記押出ラミネート法にあっては、必要に応じて、接着剤層としての酸変性オレフィン系樹脂又はオレフィン−(メタ)アクリレート共重合体樹脂等の接着性樹脂を共押出にて同時に積層形成してもよい。
【0073】
また、透明樹脂層14から構成する場合には、これらを共押出法により製膜すると、層間密着性に優れたものが容易に得られるので好適である。
【0074】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10は、通常、類似の化粧シートの場合と同様に、透明樹脂層14の表面に表面保護層15を形成したり、エンボス(凹凸模様)等を施すことができる。さらに、基材シート11の裏面に図には示していないが易接着コート層を形成したりしておくこともできる。
【0075】
前記易接着コート層は、熱可塑性樹脂化粧シート10で化粧基材部2を被覆接着する際に使用される酢酸ビニル系やウレタン系等の汎用接着剤に対する接着性を確保するためのものである。例えば、2液硬化型ウレタン系樹脂やアクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の易接着性樹脂組成物を主体としたものが用いられる。
【0076】
そして、これらの樹脂に粒径0.5〜5μm程度のシリカ等の無機質粉体を添加することにより、投錨効果による接着力の向上と共に、熱可塑性樹脂化粧シート10、20の巻取保存時でのブロッキングの防止を計ることもできる。
【0077】
次に、表面保護層15は、基材シート11や透明樹脂層14を構成する熱可塑性樹脂よりも硬質、且つ強靱な材質である硬化型樹脂を使用することが望ましい。具体的には、例えば、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化型樹脂や不飽和ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂などが例示できる。
【0078】
前記硬化型樹脂の中でも、架橋密度が高く硬質で耐摩耗性や耐擦傷性に優れた硬化被膜が得られる電離放射線硬化型樹脂を使用することが最も望ましい。
【0079】
前記電離放射線硬化型樹脂とは、紫外線又は電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に少なくとも一つ有するプレポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーを適宜配合してなるものである。係るプレポリマー、オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系プレポリマー又はオリゴマー類等、モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートという意味である。
【0080】
前記電離放射線硬化型樹脂の塗工被膜を紫外線の照射によって硬化させる場合には、当該電離放射線硬化型樹脂に、例えば、ベンゾイン類、アセトフェノン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類、アゾ化合物の光ラジカル重合開始剤が添加される。また必要に応じて、例えば、トリエタノールアミン等の第3級アミン類や、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸誘導体等の光増感剤が併用される。
【0081】
さらに、副成分として、着色剤、充填剤、艶消剤、消泡剤、離型剤、耐磨剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、防黴剤、希釈溶剤その他の添加物を、必要に応じて適宜含有させても良い。
【0082】
また、表面保護層15の厚みや形成方法には特に制限はなく、四方巻き込み床材1の表面に要求される物性に合わせて適宜設計すればよい。
【0083】
一般的には、表面保護層15の厚みは1〜100μm程度、更に好ましくは5〜50μm程度の範囲内とするのが良い。
【0084】
また、表面保護層15の形成方法としては、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、マイクログラビアコート法等の各種コーティング法から任意に選択すればよい。
【0085】
さらに、表面保護層15には、耐摩耗性向上のために減摩剤を添加することもできる。減摩剤としては、例えば、アルミナ、ダイアモンド、炭化珪素、シリカ、ガラス、ジルコニア、ゼオライト、シラスバルーン、珪藻土等少なくとも表面保護層15の主成分である樹脂よりも高硬度の材質からなる、平均粒径5〜50μm程度の粉粒体が用いられる。
【0086】
また、減摩剤の粒径と表面保護層15の膜厚との関係を適宜設計することにより、減摩剤が表面保護層15の平均表面より突出して、表面保護層15の表面に微細凸状部を形成する様に構成すると、得られる化粧基材部2の表面3の表面硬度や耐摩耗性、耐擦傷性等を更に向上させると共に、化粧基材部2の表面3に耐滑り性(滑り止め性)を付与するこ
ともできる。
【0087】
但し、減摩剤が表面保護層15の表面に突出した状態で露出していると、床材の上を歩行する人の靴下の裏面を摩耗させたり、子供が転んだときに膝小僧をすりむいたりするという問題が発生するおそれがある。
【0088】
そこで、表面保護層15を複数層から構成すると共に、減摩剤はその最上層以外の層(例えば、下塗層及び上塗層の2層構成における下塗層や、下塗層、中塗層及び上塗層の3層構成における下塗層及び/又は中塗層)に添加しておき、その層の平均表面より突出した減摩剤の表面を覆うように、減摩剤が添加されていない最上層(上塗層)を設けることが望ましい。
【0089】
このようにすると、表面保護層15の平均表面から減摩剤の突出による微細凸部がなす鋭い表面凹凸が、最上層の表面保護層15(上塗層)によって鈍化される結果、上記した接触物の摩耗を低減する。そして、表面に触れたときのざらつきや、視覚的な過度の艶消し感(粉っぽさ)なども軽減することができる。
【0090】
本発明の四方巻き込み床材1の作製にあたり、表面保護層15の形成は、熱可塑性樹脂化粧シート10が化粧基材部2を被覆接着する前であっても良いし、被覆接着後であっても良い。また、その一部(例えば下塗層)を被覆接着前、残部(例えば上塗層)を被覆接着後というように、複数層を被覆接着前後に分けて形成することもできる。
【0091】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10の化粧基材部2との被覆接着後に表面保護層15の一部又は全部を形成する方法によれば、巻取状での取扱いに適さない大塗布量の表面保護層15を設ける場合にも容易に対応可能であるので、より耐傷付き性等の表面物性に優れた床材を容易に製造できる利点がある。
【0092】
さらに、熱可塑性樹脂化粧シート10の表面に表面保護層15を設けるにあたり、該表面保護層15の形成面、すなわち透明樹脂層14の表面と表面保護層15との間に、十分な密着性を確保する必要がある。そのために、透明樹脂層14の表面に、例えば、コロナ放電処理又は、オゾン処理等の表面活性化処理が施される。
【0093】
または、透明樹脂層14を構成する熱可塑性樹脂と、表面保護層15を構成する樹脂との双方に対して、図には示していないが密着性の優れた樹脂組成物からなるリコート性樹脂層を、透明樹脂層14の表面に設けておくこともできる。
【0094】
前記リコート性樹脂層としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、尿素樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することが望ましい。また、前記の中でもポリオール化合物とイソシアネート化合物との配合による二液硬化型ウレタン系樹脂を使用することが最も望ましい。
【0095】
前記ポリオール化合物としては、例えば、アクリルポリオール化合物、ポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物等が使用可能である。
【0096】
また、前記の中でも熱可塑性樹脂及び電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂との密着性と内部凝集力とのバランス面から、ポリエステルポリオール化合物を使用することが最も望ましい。
【0097】
また、透明樹脂層14と表面保護層15との間にリコート性樹脂層を設けた構成とすると、表面保護層15を熱可塑性樹脂化粧シート10で化粧基材部2を被覆接着させた後に
形成することができる。そして、工程の都合上、表面保護層15が形成されていない熱可塑性樹脂化粧シート10で化粧基材部2を被覆接着した後に、長期間経過後に、表面保護層15を形成しても、透明樹脂層14と表面保護層15との間に十分な密着性が容易に得られる利点がある。
【0098】
その他、本発明の四方巻き込み床材1には、床下の湿気の影響や、環境の温湿度変化による湿気移動の影響による、床材の伸縮や反りの発生等を防止するために、四方巻き込み床材1の裏面に防湿シート等が積層される。
【0099】
さらに、防湿シートに代わり、床下地面の不陸の吸収やガタツキ防止、断熱性、防音性、防振性等の付与を目的として、四方巻き込み床材1の裏面に発泡層を積層したりしてもよい。
【0100】
前記防湿シートは、厚み10〜100μm程度の防湿性樹脂層を主体として、必要に応じてその表面及び/又は裏面に、例えば、薄葉紙、樹脂含浸紙、紙間強化紙等の紙層を積層したシートなどである。
【0101】
前記防湿性樹脂層としては、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)等のポリオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等の透湿性の低い疎水性熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。
【0102】
また、前記防湿シートの透湿度は一般的には、3〜30g/m2・24h程度とすることが望ましい。また、上記紙層に含窒素化合物等のホルムアルデヒド捕捉剤を含有させることにより、積層合板等の木質基材が発散するホルムアルデヒドの捕捉除去機能を付与することも可能である。
【0103】
前記発泡層としては、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)等のポリオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂等を公知の発泡剤で発泡させたものや、軟質ポリウレタンフォーム等が例示できる。
【0104】
また、発泡倍率は2倍〜20倍程度、厚みは2〜12mm程度のシート状のものを使用することができる。なお、発泡層は、床材用基材4の裏面に積層された防湿シートの裏面に積層しても良い。また、防湿シートを設けずに直接床材用基材4の裏面に積層しても良い。
【0105】
次ぎに、床材用基材4又は化粧基材部2の材質として最も代表的なものは、積層合板等の木質基材である。積層合板は、複数枚(通常奇数枚)の木材単板をその繊維方向を交互に直交させて積層接着されている。
【0106】
前記木材単板の材種は、ラワン材等の広葉樹材やパイン材(松材)等の針葉樹材のいずれかもしくはそれらの混合であっても良い。そして、最表面の木材単板として、例えば、クルイン材、カプール材、メンクラン材等が使用できる。
【0107】
また、前記最表面の木材単板はシリカ分を含み硬質で耐久性の高い南洋材系の材種を使用すれば、更に表面強度や耐キャスター性等に優れた床材用基材4又は化粧基材部2が得られる。
【0108】
また、前記積層合板の他にも、例えば、単板積層材、配向性ボード、パーティクルボー
ド、高密度繊維板等、従来公知の各種の木質系ボード類を任意に使用することができる。
【0109】
さらに、前記木質基材以外にも、例えば、陶磁器又はコンクリート板等の無機質系基材、鉄、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼等の金属系基材、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂に木粉を添加した熱可塑性樹脂、またはポリプロピレン樹脂に木粉と発泡剤を添加して内部を発泡させた異形押出成形体や繊維強化プラスチック(FRP)等の合成樹脂系基材等を使用することもできる。
【0110】
前記金属系基材や合成樹脂系基材は一般に、水分の滲み込みによる膨潤や反り等の問題はない。
【0111】
前記各種の材質のうち、実加工や施工現場での切断・釘打ち等の加工性や、肌に触れた時の暖かい触感、適度の弾性による歩行感、経済性などの各面で、最も望ましいものは、積層合板などの木質基材である。
【0112】
しかし、近年、住宅等の室内で、キャスター付き家具や車椅子等の利用が増加するにつれて、木質基材を用いた床材はキャスターの軌跡に沿って凹み傷が残り易い問題が指摘されている。この問題を回避するために、図6に示すような熱可塑性樹脂化粧シート10に高硬度の材質からなる硬質シート層16を設けた、図7に示すような構成の熱可塑性樹脂化粧シート10を化粧基材部2上面に被覆接着した四方巻き込み床材が好ましい。
【0113】
前記硬質シート層16は、硬度の高い材質、望ましくは表面硬度がデュロメーター硬さ試験タイプD(JIS K 6253)にて60以上、より望ましくは65以上の材質からなり、厚みが0.5〜3mm程度のシート状であればよく、その具体的な材質は特に問わない。
【0114】
また、硬質シート層16に用いる材質の具体例を挙げれば、木質系材料の中でも特に硬度の高いもの、例えば、圧縮木材、樹脂含浸木材、無機含浸木材、高密度繊維板、中密度繊維板の高密度表層部分などや、木質系材料では窯業系不燃板などの無機質系材料、熱硬化性樹脂含浸紙(木材パルプ繊維紙やケナフ繊維紙、合成又は半合成繊維紙等の紙類にジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたもの)、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂シート類等を挙げることができる。中でも、加工性やリサイクル性等を考慮すると、熱可塑性樹脂シート類を使用することが最も望ましい。
【0115】
前記熱可塑性樹脂シート10は単体物では一般に硬度が不足するために、適宜の充填剤を添加して表面強度を強化した物を使用することが望ましい。
【0116】
前記充填剤とし、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、ガラス粉末、ガラス繊維、金属粉等の無機系充填剤や、木粉、紙粉等の有機充填剤などが例示できる。その配合量は通常、熱可塑性樹脂100重量部当たり5〜400重量部程度である。また、表面硬度の強化には高充填化が必要であり、より好ましくは熱可塑性樹脂100重量部当たり150〜400重量部程度の充填剤を配合することが望ましい。
【0117】
前記熱可塑性樹脂の種類には特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系ゴム等)、延伸、未延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂、アクリル樹脂及びこれらの混合物や複層品などを好適に使用することができる。
【0118】
前記樹脂の単体のシートや、前記樹脂に木粉(平均粒径0.005〜0.3mm程度)
を添加して押出成形したシートなどが、硬質シート層16として好適に使用可能である。尚、硬質シート層16の耐水性や表面強度に支障のない範囲であれば、公知の化学的及び/又は物理的手法により発泡させても良い。
【0119】
熱可塑性樹脂化粧シート10は、本発明の四方巻き込み床材の表面に所望の意匠や耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐候性、耐油性等の表面物性を付与させる。さらに、床材用基材4の露出面を覆って耐水性も付与する。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物における室内床面、壁材、天井材等の建築内装材に使用するための、木質系基材または木粉含有熱可塑性樹脂基材に熱可塑性樹脂化粧シートを被覆接着した床材として優れていることはもとより、装飾用木箱あるいは工業用の通い箱等包装分野にも利用できるなど、広い分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の四方巻き込み床材が作製される概略を説明するための概略図である。
【図2】本発明の四方巻き込み床材が作製された一実施例の概略を示す概略図である。
【図3】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの一実施例の形状を示す概略平面図である。
【図4】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの一実施例の断面構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの他の一実施例の断面構成を示す概略断面図である。
【図6】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの他の一実施例の断面構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの他の一実施例の断面構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の四方巻き込み床材の床用基材に形成されるエッヂジョイント形状の一実施例の形態を示す概略図である。
【図9】本発明の四方巻き込み床材の床用基材に形成されるエッヂジョイント形状の他の一実施例の形態を示す概略図である。
【図10】本発明の四方巻き込み床材の床用基材に形成されるエッヂジョイント形状の他の一実施例の形態を示す概略図である。
【図11】本発明の四方巻き込み床材の床用基材に形成されるエッヂジョイント形状の他の一実施例の形態を示す概略図である。
【図12】従来使用されている建築用化粧床材である。
【図13】従来使用されている化粧シートが粘着されている床材である。
【図14】従来使用されている、耐水性を有する床材である。
【符号の説明】
【0122】
1…四方巻き込み床材
2…化粧基材部
3…化粧基材部の表面
4…床材用基材
5…長辺側面
6…雌実部
7…雄実部
8…折り返し溝
9…長辺方向
10…熱可塑性樹脂化粧シート
11…基材シート
12…絵柄層
13…接着層
14…透明樹脂層
15…表面保護層
16…硬質シート
17…短辺方向
18…短辺側面
19…接着接合部
20…合いじゃくり形状
30…実はぎ形状
40…合いじゃくり実はぎ形状
50…スナップフィト形状
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物における室内床面、壁材、天井材等の建築内装材に使用するための、木質系基材または木粉含有熱可塑性樹脂基材に熱可塑性樹脂化粧シートを積層した四方巻き込み床材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物における室内床面用の床材としては、木質系フローリング材が最も広く使用されている。この木質系フローリング材は一般に厚み6〜15mm程度の天然木材の無垢板や、厚み6〜15mm程度の積層合板等の木質基材が用いられている。
【0003】
また、木質基材上に、厚み数百μm及至数mm程度の天然木材の突板を貼着したり、あるいは塗装品等をプレス加工等で施した床材が使用され、且つ、開発されている。
【0004】
前記木質基材上に、化粧単板が粘着されている建築用化粧床材および製造方法(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0005】
この化粧床材100は図12に示すように基材101上に複数枚の化粧単板102が粘着され、各化粧単板102の側縁に沿って溝103が形成されている。また、各化粧単板102の表面が塗装仕上げされており、溝103周囲の化粧単板101側縁がプレス金型で溝中に押し込まれ、側縁の外表面が放射線状に溝中に巻き込まれている。
【0006】
また、図13に示すような木質系基材に化粧シートが粘着された床材およびこれを用いた床面(例えば、特許文献2参照。)も知られている。
【0007】
この床材200は、図13に示すように木質系基材104の一方の面に化粧シート105が粘着された矩形状の床材であって、前記化粧シート105が粘着された側の四周縁部に前記化粧シート105で被覆された斜面106を形成している。
【0008】
前記木質基材は天然木材を使用しているために、日光による変色や、表面の傷が付き易く、且つ、耐水性等も弱いという問題が有る。しかし、その表面の意匠が天然木材の木目ということで、最も自然で親しみやすく、美麗な意匠であることが最大の強みとなっている。
【0009】
このために、耐候性の弱さは天然物ゆえに大目に見られ、表面の傷付きは研磨・塗装による補修で対応することで許容されて、消費者に広く受け入れられている現状がある。
【0010】
また、前記木質系フローリング材は、表面化粧材として天然木突板が使われているために、本質的に耐水性が弱い。例えば、浴室脱衣所や洗面所、厨房の流し台近傍等の様に、床面が水に濡れる機会の多い箇所に使用すると、水分が突板層やその下の木質基材にしみ込み易い。
【0011】
そして、突板層の膨れや木質基材からの剥離、あるいは床材に反り等が発生し易いという問題点があった。
【0012】
また、前記木質系フローリング材は、その表面意匠が天然木材に依存するため、色調や木目模様などの意匠品質の安定した製品を安定的に大量生産することが困難であるという
問題点がある。
【0013】
また、資源が比較的豊富なオーク材(楢材)であれば現在のところ問題はない。しかし、消費者の多様な嗜好に合わせて、例えば、バーチ材(樺材)やチェリー材(桜材)、メープル材(楓材)などを使用してライト調(淡色系)の意匠の製品を品揃えに加えようとすると、世界的に木材資源が不足しているために難しい。
【0014】
さらに、天然木材で意匠品質の安定した製品の大量供給は非常に困難であるという問題点がある。
【0015】
こうした問題点に鑑みて、木質系フローリング材と同等の意匠性を有し、且つ、床材の表面は勿論のこと、床材同士の継ぎ目部分においても、優れた耐水性を有する床材およびその製造方法(例えば、特許文献3参照。)も知られている。
【0016】
この床材300は、図14に示すように平板状の床材用基材107の上面から、その全外周における側面109、110の少なくても上側の一部111、112にかけて連続して、熱可塑性樹脂製の化粧シート113が積層されている。
【0017】
そして、この床材300は、表面意匠の自由度や安定性に優れることは勿論、化粧シート113が熱可塑性樹脂であることから耐候性や耐水性にも優れるなどの利点があると記載されている。
【0018】
しかし、木質基材の表面に熱可塑性樹脂製の化粧シートを貼着して作製した床材を、多数敷き詰めて施工した床面は、床材同士の継ぎ目から水分が容易に滲み込む問題がある。そして、継ぎ目から滲み込んだ水分が木質基材を膨潤させ、継ぎ目付近からの化粧シートの膨れや剥離が生じる。
【0019】
さらに、継ぎ目付近の湿潤部における黴や腐朽、滲み込んだ水分の作用による床材の反り等の問題が発生する場合がある。
【0020】
また、木質基材の実部の各種形状に熱可塑性樹脂製の化粧シートを貼り合わせるのは非常に難しいといわれ、且つ、記載されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0021】
また、前記床材同士の継ぎ目から水分が滲み込むのを防止するために合成樹脂等によるシーリング処理を施して、問題の解決が計られている。
【0022】
しかし、この方法では、床面に多数敷き詰めた床材の相互間の全ての継ぎ目にシーリング処理を施さなければ成らないという問題がある。さらに、床材の施工に非常に手間がかかるという問題もある。
【0023】
また、施工後は、シーリング剤が乾燥硬化するまでの間、施工箇所への立ち入りが出来なくなり、且つ、建築作業等の次工程作業に支障が生じるなど、施工面で著しい問題がある。
【0024】
また、上記したシーリング処理によって塞がれた床材間の継ぎ目は、従来の木質系フローリング材と比較して外観が非常に悪いという問題がある。
【0025】
さらに、床材とシーリング剤との色彩や艶を整合させることが非常に難しいという問題もある。そして、施工した床面の意匠性を減殺する結果ともなってしまい兼ねないという問題もある。
【0026】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特許第3497437号公報
【特許文献2】特開2002−339556号公報
【特許文献3】特開2003−49530号公報
【非特許文献1】株式会社彰国社編、「建築大辞典第」、第2版普及版、株式会社彰国社、2002年6月10日第7刷、P.8,9,638
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は上記した従来の問題点を鑑みてなされるものであり、従来の木質系フローリング材と同等の意匠性を有し、しかも個々の床材の表面は勿論のこと、床材同士の継ぎ目部分においても、優れた耐水性を有し、且つ、美観を有する四方巻き込み床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の課題を解決するために、まず本発明の請求項1に係る発明は、
四方の端面に合いじゃくり、実はぎ、合いじゃくり実はぎ、又は嵌合形状の少なくとも一種の実加工が施されている床材用基材の上部面に矩形状の化粧基材部が形成され、前記化粧基材部の表面と、各端面を被覆接着させる適宜の形状に形成された熱可塑性樹脂化粧シートで、化粧基材部の表面と、各側面が被覆接着されている四方巻き床材であって、
前記化粧基材部の短辺方向両端面の内側近傍裏側面にそれぞれV字状に切削されている折り返し溝を備え、
前記V字状に切削されている折り返し溝が内側に折り曲げられ接着接合されてなる化粧基材部が形成されている床材用基材の、実同士を嵌め合わせることを特徴とする四方巻き込み床材である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の四方巻き込み床材は四方の端面に合いじゃくり、実はぎ、合いじゃくり実はぎ、又は嵌合形状の少なくとも一種の実加工が施されている床材用基材とその床材用基材の上部面に矩形状の化粧基材部が設けられている。そして、前記化粧基材部表面と各側面が熱可塑性樹脂化粧シートで被覆接着されている。
【0030】
このために、実同士を嵌め合わせて施工した際に、床材同士を隙間無く密着させることができる。そして、化粧基材部の継ぎ目からの水分の滲み込みが防止でき、耐水性に優れている。
【0031】
また、床材同士が隙間無く密着させて突き合わせることができるために、継ぎ目から水分の滲み込みが防止できる。そして、床材の伸縮や反り、黴や腐朽等による劣化などが少ない。
【0032】
さらに、床材同士が隙間無く密着させて突き合わされるために、シーリング処理を施す必要がない。このために、美観が保持される。そして、施工する際に、余分な部材が不要となり、且つ、日程通りの作業ができる。
【0033】
また、水分が付着する機会の多い箇所にも施工できる。そして、長期に亘り表面の意匠
性を保持することができる。
【0034】
さらに、床材基材部表面に、従来の天然木突板を使用した木質系フローリングの外観を模した凹凸の模様を形成することができる。そして、十分な耐水性も確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の四方巻き込み床材を実施の形態に沿って以下に図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図11は本発明の一実施例を示す。
【0036】
図1は本発明の四方巻き込み床材が作製される一実施例の概略を示す概略図である。また、図2は図1の四方巻き込み床材の化粧基材部表面と、各側面が熱可塑性樹脂化粧シートで被覆接着されている一実施形態の概略を示す概略図である。さらに、図3は化粧基材部を被覆接着する熱可塑性樹脂化粧シートの一実施例の形状の概略を示す平面概略図である。
【0037】
図1に示すように、本発明の四方巻き込み床材1は雌実部6と雄実部7を有する床材用基材4と、床材用基材4の上部に熱可塑性樹脂化粧シート10で上方表面と長辺方向の両長辺側面5が被覆接着されている化粧基材部2から構成されている。
【0038】
前記化粧基材部2の短辺方向両端面の内側近傍裏側面にそれぞれV字状に切削されている折り返し溝8が設けられている。そして、短辺方向両端面が内側に折り曲げられ接着接合された際に、熱可塑性樹脂化粧シート10で被覆接着されている短辺側面が形成される。尚、化粧基材部2の表面3が矩形状の場合は、最初に熱可塑性樹脂化粧シート10を長辺側面5にラッピング加工しておけば、折り曲げ後に熱可塑性樹脂化粧シート10が余らずに折り曲げられる。
【0039】
また、四方巻き込み床材1の外観形状は図1では矩形状に施されているが、特に限定されるものではない。例えば、正方形状、正三角形状、正六角形状、あるいは複雑多角形状等であっても良い。さらに、前記形状の1種又は2種以上を組み合わせた幾何学的形状であっても良い。
【0040】
さらに、床材用基材4に形成される実形状は図1に示す形状に特に限定されるものではない。例えば、図8に示す合いじゃくり20あるいは図9に示す実はぎ30または図10に示す合いじゃくり実はぎ40、さらに図11に示すスナップフィト50等の形状であっても良い。
【0041】
そして、図2に示すように床材用基材4の上部に形成されている、化粧基材部2が熱可塑性樹脂化粧シート10で化粧基材部2の表面3と両長辺側面5及び両短辺側面が被覆接着されている四方巻き込み床材が形成される。
【0042】
前記化粧基材部2の短辺方向の両端面が内側方向に折り曲げられ、熱可塑性樹脂化粧シート10で被覆接着されている短辺側面が設けられた両長辺側面5の一部に化粧基材部2が剥き出しになる場合には、塗料やコーキング剤等を充填しておくことが好ましい。
【0043】
また、本発明の四方巻き込み床材1において、床材用基材4と熱可塑性樹脂化粧シート10の材質あるいは構成は、特に限定されるものではない。そして、従来の類似の床材に使用されているものと同様の材質から要求品質に基づき適宜選択して使用することができる。
【0044】
前記熱可塑性樹脂化粧シート10と化粧基材部2の表面3と長辺方向の両長辺側面5等
の被覆接着は必要に応じて、適宜の接着剤が使用される。この接着剤の種類としては 、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系水性エマルジョン接着剤や、水性または油性の二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂やポリエーテル樹脂等の湿気硬化型ホットメルト接着剤等、従来公知のものが適宜使用可能であり、本発明において特に限定されるものではない。
【0045】
前記熱可塑性樹脂化粧シート10は熱可塑性樹脂からなる基材シートあるいは透明樹脂層表面に絵柄層を形成した単層構成の熱可塑性樹脂化粧シートであっても良い。
【0046】
また、前記単層構成の熱可塑性樹脂化粧シートの絵柄層上に図4あるいは図5に示すような透明な熱可塑性樹脂からなる表面保護層15を設けた熱可塑性樹脂化粧シート10であっても良い。
【0047】
また、図6に示すような、熱可塑性樹脂からなる基材シート11の表面に絵柄層12、接着層13、透明樹脂層14、表面保護層15が順に積層されている前記熱可塑性樹脂化粧シート10であっても良い。
【0048】
さらに、図7に示すような、硬質基材シート16、基材シート11、絵柄層12、接着層13、透明樹脂層14、表面保護層15が順に積層されている熱可塑性樹脂化粧シート10であっても良い。
【0049】
図6あるいは図7に示す構成の熱可塑性樹脂化粧シート10は意匠性、接着適性、耐候性、耐溶剤性、耐摩耗性等に優れている。
【0050】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10は、化粧基材部2の表面の好ましくない色彩や色ムラ、欠陥等を隠蔽して意匠性を高めるために、隠蔽性が要求される。このために、熱可塑性樹脂化粧シート10を構成する絵柄層12の下側の熱可塑性樹脂からなる基材シート11は隠蔽性を付与するために不透明な基材シート11が望ましい。
【0051】
前記不透明な基材シート11は熱可塑性樹脂に酸化チタンや酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化鉄等の不透明顔料を添加して成される。また、不透明印刷インキ等により隠蔽層を形成したり、これらを併用することもできる。
【0052】
また、前記不透明な基材シート11あるいは透明樹脂層14の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、延伸、未延伸ポリエステル樹脂、共重合ポリエステル(通称PET−G)樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を使用することができる。
【0053】
前記熱可塑性樹脂の中でも、化粧基材部を被覆接着した際に、表面物性や加工性、経済性、廃棄性(焼却性も含む)等を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂を使用することが望ましい。
【0054】
また、前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂や、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、その金属中和物(所謂アイオノマー樹脂)、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体樹脂等のオレフィン系共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂等が挙げられる。
【0055】
さらに、前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等の結晶性ポリエステル樹脂や、ポリアリレート樹脂、非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂(所謂A−PET樹脂)、共重合ポリエステル樹脂(例.1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である所謂PET−G樹脂)等の非晶質ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0056】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10は前記各種の熱可塑性樹脂から複数種を適宜選択し、組み合わせて構成することも出来る。そして、四方巻き込み床材に要求される表面の耐傷付き性等に優れている熱可塑性樹脂化粧シート10が適宜作製される。
【0057】
また、化粧基材部2の表面3と両長辺側面5の熱可塑性樹脂化粧シート10の被覆接着は、真空成形法又はソフトラッピング法等により施すことができる。
【0058】
前記加工に際しては、熱可塑性樹脂化粧シート10が軟質性であるほうが好ましい。
【0059】
また、前記真空成形法又はソフトラッピング法等の加工適性に好ましい2層構成の熱可塑性樹脂化粧シートとして、例えば、基材シート11の樹脂は柔軟性に優れた軟質ポリオレフィン系樹脂やオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂、非晶質ポリエステル樹脂等を用い、透明樹脂層14の樹脂は硬度の高いポリプロピレン樹脂や結晶性ポリエステル樹脂等を組み合わせて構成することができる。
【0060】
なお、前記軟質ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂等の通常のポリオレフィン系樹脂に、低密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィン重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物等の軟質成分を添加又は共重合させて、柔軟性を改善した樹脂等を使用することができる。
【0061】
次ぎに、絵柄層12は、所望の意匠の絵柄を印刷等によって表現したものであり、その絵柄の種類や構成材料、形成方法等に関しては一切制限はない。
【0062】
一般的に絵柄層の絵柄としては、木目柄や石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等であり、単色無地(ベタ)であっても勿論かまわない。
【0063】
また、基材シート11の隠蔽性が不十分である場合には、意匠絵柄と併用して若しくは単独で、不透明顔料を大量に含有する隠蔽ベタ層を設けることもできる。
【0064】
また、絵柄層12の構成材料は、染料又は顔料等の着色剤を合成樹脂等の展色剤と共に適宜の溶剤中に溶解又は分散した印刷インキ又は塗料等を使用するのが一般的である。
【0065】
また、着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄(弁柄、黄色酸化鉄、鉄黒)コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料や、アゾ顔料、イミダゾロン顔料等の有機顔料等が例示できる。
【0066】
さらに、展色剤としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、繊維素誘導体等を使用することができる。
【0067】
また、絵柄層12の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、
グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、転写印刷法、静電印刷法、インキジェット印刷法などの各種印刷法が例示出来る。
【0068】
さらに、絵柄層12がベタ状の場合には、例えば、グラビアコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、キスコート法、ロッドコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種塗工方法等を適宜選択して使用される。
【0069】
また。絵柄層12の印刷形成に先立ち、基材シート11の表面に、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、電離放射線処理、酸処理、アルカリ処理、プライマー又はアンカー処理等、易接着化のための表面処理を施しておくことにより、層間密着性の向上を図ることもできる。
【0070】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10の意匠絵柄の付与方法としては、前記のような
印刷又は塗工方法による代わりに、無着色の熱可塑性樹脂と着色した熱可塑性樹脂を不十分な混合状態でシート状に形成する。そして、木目に類似した着色模様を呈するようにした基材シート11も使用することもできる。
【0071】
熱可塑性樹脂化粧シート10を作製する積層方法としては、例えば、適宜の接着剤を介したドライラミネート法、ウェットラミネート法や、接着剤層を介した又は介さない熱ラミネート法、高周波ラミネート法、熱可塑性樹脂を溶融状態で押し出すと同時に積層する押出ラミネート法等がある。そして適宜選択して用いられる。
【0072】
前記押出ラミネート法にあっては、必要に応じて、接着剤層としての酸変性オレフィン系樹脂又はオレフィン−(メタ)アクリレート共重合体樹脂等の接着性樹脂を共押出にて同時に積層形成してもよい。
【0073】
また、透明樹脂層14から構成する場合には、これらを共押出法により製膜すると、層間密着性に優れたものが容易に得られるので好適である。
【0074】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10は、通常、類似の化粧シートの場合と同様に、透明樹脂層14の表面に表面保護層15を形成したり、エンボス(凹凸模様)等を施すことができる。さらに、基材シート11の裏面に図には示していないが易接着コート層を形成したりしておくこともできる。
【0075】
前記易接着コート層は、熱可塑性樹脂化粧シート10で化粧基材部2を被覆接着する際に使用される酢酸ビニル系やウレタン系等の汎用接着剤に対する接着性を確保するためのものである。例えば、2液硬化型ウレタン系樹脂やアクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の易接着性樹脂組成物を主体としたものが用いられる。
【0076】
そして、これらの樹脂に粒径0.5〜5μm程度のシリカ等の無機質粉体を添加することにより、投錨効果による接着力の向上と共に、熱可塑性樹脂化粧シート10、20の巻取保存時でのブロッキングの防止を計ることもできる。
【0077】
次に、表面保護層15は、基材シート11や透明樹脂層14を構成する熱可塑性樹脂よりも硬質、且つ強靱な材質である硬化型樹脂を使用することが望ましい。具体的には、例えば、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化型樹脂や不飽和ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂などが例示できる。
【0078】
前記硬化型樹脂の中でも、架橋密度が高く硬質で耐摩耗性や耐擦傷性に優れた硬化被膜が得られる電離放射線硬化型樹脂を使用することが最も望ましい。
【0079】
前記電離放射線硬化型樹脂とは、紫外線又は電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に少なくとも一つ有するプレポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーを適宜配合してなるものである。係るプレポリマー、オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系プレポリマー又はオリゴマー類等、モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートという意味である。
【0080】
前記電離放射線硬化型樹脂の塗工被膜を紫外線の照射によって硬化させる場合には、当該電離放射線硬化型樹脂に、例えば、ベンゾイン類、アセトフェノン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類、アゾ化合物の光ラジカル重合開始剤が添加される。また必要に応じて、例えば、トリエタノールアミン等の第3級アミン類や、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸誘導体等の光増感剤が併用される。
【0081】
さらに、副成分として、着色剤、充填剤、艶消剤、消泡剤、離型剤、耐磨剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、防黴剤、希釈溶剤その他の添加物を、必要に応じて適宜含有させても良い。
【0082】
また、表面保護層15の厚みや形成方法には特に制限はなく、四方巻き込み床材1の表面に要求される物性に合わせて適宜設計すればよい。
【0083】
一般的には、表面保護層15の厚みは1〜100μm程度、更に好ましくは5〜50μm程度の範囲内とするのが良い。
【0084】
また、表面保護層15の形成方法としては、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、マイクログラビアコート法等の各種コーティング法から任意に選択すればよい。
【0085】
さらに、表面保護層15には、耐摩耗性向上のために減摩剤を添加することもできる。減摩剤としては、例えば、アルミナ、ダイアモンド、炭化珪素、シリカ、ガラス、ジルコニア、ゼオライト、シラスバルーン、珪藻土等少なくとも表面保護層15の主成分である樹脂よりも高硬度の材質からなる、平均粒径5〜50μm程度の粉粒体が用いられる。
【0086】
また、減摩剤の粒径と表面保護層15の膜厚との関係を適宜設計することにより、減摩剤が表面保護層15の平均表面より突出して、表面保護層15の表面に微細凸状部を形成する様に構成すると、得られる化粧基材部2の表面3の表面硬度や耐摩耗性、耐擦傷性等を更に向上させると共に、化粧基材部2の表面3に耐滑り性(滑り止め性)を付与するこ
ともできる。
【0087】
但し、減摩剤が表面保護層15の表面に突出した状態で露出していると、床材の上を歩行する人の靴下の裏面を摩耗させたり、子供が転んだときに膝小僧をすりむいたりするという問題が発生するおそれがある。
【0088】
そこで、表面保護層15を複数層から構成すると共に、減摩剤はその最上層以外の層(例えば、下塗層及び上塗層の2層構成における下塗層や、下塗層、中塗層及び上塗層の3層構成における下塗層及び/又は中塗層)に添加しておき、その層の平均表面より突出した減摩剤の表面を覆うように、減摩剤が添加されていない最上層(上塗層)を設けることが望ましい。
【0089】
このようにすると、表面保護層15の平均表面から減摩剤の突出による微細凸部がなす鋭い表面凹凸が、最上層の表面保護層15(上塗層)によって鈍化される結果、上記した接触物の摩耗を低減する。そして、表面に触れたときのざらつきや、視覚的な過度の艶消し感(粉っぽさ)なども軽減することができる。
【0090】
本発明の四方巻き込み床材1の作製にあたり、表面保護層15の形成は、熱可塑性樹脂化粧シート10が化粧基材部2を被覆接着する前であっても良いし、被覆接着後であっても良い。また、その一部(例えば下塗層)を被覆接着前、残部(例えば上塗層)を被覆接着後というように、複数層を被覆接着前後に分けて形成することもできる。
【0091】
また、熱可塑性樹脂化粧シート10の化粧基材部2との被覆接着後に表面保護層15の一部又は全部を形成する方法によれば、巻取状での取扱いに適さない大塗布量の表面保護層15を設ける場合にも容易に対応可能であるので、より耐傷付き性等の表面物性に優れた床材を容易に製造できる利点がある。
【0092】
さらに、熱可塑性樹脂化粧シート10の表面に表面保護層15を設けるにあたり、該表面保護層15の形成面、すなわち透明樹脂層14の表面と表面保護層15との間に、十分な密着性を確保する必要がある。そのために、透明樹脂層14の表面に、例えば、コロナ放電処理又は、オゾン処理等の表面活性化処理が施される。
【0093】
または、透明樹脂層14を構成する熱可塑性樹脂と、表面保護層15を構成する樹脂との双方に対して、図には示していないが密着性の優れた樹脂組成物からなるリコート性樹脂層を、透明樹脂層14の表面に設けておくこともできる。
【0094】
前記リコート性樹脂層としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、尿素樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することが望ましい。また、前記の中でもポリオール化合物とイソシアネート化合物との配合による二液硬化型ウレタン系樹脂を使用することが最も望ましい。
【0095】
前記ポリオール化合物としては、例えば、アクリルポリオール化合物、ポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物等が使用可能である。
【0096】
また、前記の中でも熱可塑性樹脂及び電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂との密着性と内部凝集力とのバランス面から、ポリエステルポリオール化合物を使用することが最も望ましい。
【0097】
また、透明樹脂層14と表面保護層15との間にリコート性樹脂層を設けた構成とすると、表面保護層15を熱可塑性樹脂化粧シート10で化粧基材部2を被覆接着させた後に
形成することができる。そして、工程の都合上、表面保護層15が形成されていない熱可塑性樹脂化粧シート10で化粧基材部2を被覆接着した後に、長期間経過後に、表面保護層15を形成しても、透明樹脂層14と表面保護層15との間に十分な密着性が容易に得られる利点がある。
【0098】
その他、本発明の四方巻き込み床材1には、床下の湿気の影響や、環境の温湿度変化による湿気移動の影響による、床材の伸縮や反りの発生等を防止するために、四方巻き込み床材1の裏面に防湿シート等が積層される。
【0099】
さらに、防湿シートに代わり、床下地面の不陸の吸収やガタツキ防止、断熱性、防音性、防振性等の付与を目的として、四方巻き込み床材1の裏面に発泡層を積層したりしてもよい。
【0100】
前記防湿シートは、厚み10〜100μm程度の防湿性樹脂層を主体として、必要に応じてその表面及び/又は裏面に、例えば、薄葉紙、樹脂含浸紙、紙間強化紙等の紙層を積層したシートなどである。
【0101】
前記防湿性樹脂層としては、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)等のポリオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等の透湿性の低い疎水性熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。
【0102】
また、前記防湿シートの透湿度は一般的には、3〜30g/m2・24h程度とすることが望ましい。また、上記紙層に含窒素化合物等のホルムアルデヒド捕捉剤を含有させることにより、積層合板等の木質基材が発散するホルムアルデヒドの捕捉除去機能を付与することも可能である。
【0103】
前記発泡層としては、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)等のポリオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂等を公知の発泡剤で発泡させたものや、軟質ポリウレタンフォーム等が例示できる。
【0104】
また、発泡倍率は2倍〜20倍程度、厚みは2〜12mm程度のシート状のものを使用することができる。なお、発泡層は、床材用基材4の裏面に積層された防湿シートの裏面に積層しても良い。また、防湿シートを設けずに直接床材用基材4の裏面に積層しても良い。
【0105】
次ぎに、床材用基材4又は化粧基材部2の材質として最も代表的なものは、積層合板等の木質基材である。積層合板は、複数枚(通常奇数枚)の木材単板をその繊維方向を交互に直交させて積層接着されている。
【0106】
前記木材単板の材種は、ラワン材等の広葉樹材やパイン材(松材)等の針葉樹材のいずれかもしくはそれらの混合であっても良い。そして、最表面の木材単板として、例えば、クルイン材、カプール材、メンクラン材等が使用できる。
【0107】
また、前記最表面の木材単板はシリカ分を含み硬質で耐久性の高い南洋材系の材種を使用すれば、更に表面強度や耐キャスター性等に優れた床材用基材4又は化粧基材部2が得られる。
【0108】
また、前記積層合板の他にも、例えば、単板積層材、配向性ボード、パーティクルボー
ド、高密度繊維板等、従来公知の各種の木質系ボード類を任意に使用することができる。
【0109】
さらに、前記木質基材以外にも、例えば、陶磁器又はコンクリート板等の無機質系基材、鉄、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼等の金属系基材、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂に木粉を添加した熱可塑性樹脂、またはポリプロピレン樹脂に木粉と発泡剤を添加して内部を発泡させた異形押出成形体や繊維強化プラスチック(FRP)等の合成樹脂系基材等を使用することもできる。
【0110】
前記金属系基材や合成樹脂系基材は一般に、水分の滲み込みによる膨潤や反り等の問題はない。
【0111】
前記各種の材質のうち、実加工や施工現場での切断・釘打ち等の加工性や、肌に触れた時の暖かい触感、適度の弾性による歩行感、経済性などの各面で、最も望ましいものは、積層合板などの木質基材である。
【0112】
しかし、近年、住宅等の室内で、キャスター付き家具や車椅子等の利用が増加するにつれて、木質基材を用いた床材はキャスターの軌跡に沿って凹み傷が残り易い問題が指摘されている。この問題を回避するために、図6に示すような熱可塑性樹脂化粧シート10に高硬度の材質からなる硬質シート層16を設けた、図7に示すような構成の熱可塑性樹脂化粧シート10を化粧基材部2上面に被覆接着した四方巻き込み床材が好ましい。
【0113】
前記硬質シート層16は、硬度の高い材質、望ましくは表面硬度がデュロメーター硬さ試験タイプD(JIS K 6253)にて60以上、より望ましくは65以上の材質からなり、厚みが0.5〜3mm程度のシート状であればよく、その具体的な材質は特に問わない。
【0114】
また、硬質シート層16に用いる材質の具体例を挙げれば、木質系材料の中でも特に硬度の高いもの、例えば、圧縮木材、樹脂含浸木材、無機含浸木材、高密度繊維板、中密度繊維板の高密度表層部分などや、木質系材料では窯業系不燃板などの無機質系材料、熱硬化性樹脂含浸紙(木材パルプ繊維紙やケナフ繊維紙、合成又は半合成繊維紙等の紙類にジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたもの)、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂シート類等を挙げることができる。中でも、加工性やリサイクル性等を考慮すると、熱可塑性樹脂シート類を使用することが最も望ましい。
【0115】
前記熱可塑性樹脂シート10は単体物では一般に硬度が不足するために、適宜の充填剤を添加して表面強度を強化した物を使用することが望ましい。
【0116】
前記充填剤とし、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、ガラス粉末、ガラス繊維、金属粉等の無機系充填剤や、木粉、紙粉等の有機充填剤などが例示できる。その配合量は通常、熱可塑性樹脂100重量部当たり5〜400重量部程度である。また、表面硬度の強化には高充填化が必要であり、より好ましくは熱可塑性樹脂100重量部当たり150〜400重量部程度の充填剤を配合することが望ましい。
【0117】
前記熱可塑性樹脂の種類には特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系ゴム等)、延伸、未延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂、アクリル樹脂及びこれらの混合物や複層品などを好適に使用することができる。
【0118】
前記樹脂の単体のシートや、前記樹脂に木粉(平均粒径0.005〜0.3mm程度)
を添加して押出成形したシートなどが、硬質シート層16として好適に使用可能である。尚、硬質シート層16の耐水性や表面強度に支障のない範囲であれば、公知の化学的及び/又は物理的手法により発泡させても良い。
【0119】
熱可塑性樹脂化粧シート10は、本発明の四方巻き込み床材の表面に所望の意匠や耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐候性、耐油性等の表面物性を付与させる。さらに、床材用基材4の露出面を覆って耐水性も付与する。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物における室内床面、壁材、天井材等の建築内装材に使用するための、木質系基材または木粉含有熱可塑性樹脂基材に熱可塑性樹脂化粧シートを被覆接着した床材として優れていることはもとより、装飾用木箱あるいは工業用の通い箱等包装分野にも利用できるなど、広い分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の四方巻き込み床材が作製される概略を説明するための概略図である。
【図2】本発明の四方巻き込み床材が作製された一実施例の概略を示す概略図である。
【図3】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの一実施例の形状を示す概略平面図である。
【図4】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの一実施例の断面構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの他の一実施例の断面構成を示す概略断面図である。
【図6】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの他の一実施例の断面構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の四方巻き込み床材に使用される熱可塑性樹脂化粧シートの他の一実施例の断面構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の四方巻き込み床材の床用基材に形成されるエッヂジョイント形状の一実施例の形態を示す概略図である。
【図9】本発明の四方巻き込み床材の床用基材に形成されるエッヂジョイント形状の他の一実施例の形態を示す概略図である。
【図10】本発明の四方巻き込み床材の床用基材に形成されるエッヂジョイント形状の他の一実施例の形態を示す概略図である。
【図11】本発明の四方巻き込み床材の床用基材に形成されるエッヂジョイント形状の他の一実施例の形態を示す概略図である。
【図12】従来使用されている建築用化粧床材である。
【図13】従来使用されている化粧シートが粘着されている床材である。
【図14】従来使用されている、耐水性を有する床材である。
【符号の説明】
【0122】
1…四方巻き込み床材
2…化粧基材部
3…化粧基材部の表面
4…床材用基材
5…長辺側面
6…雌実部
7…雄実部
8…折り返し溝
9…長辺方向
10…熱可塑性樹脂化粧シート
11…基材シート
12…絵柄層
13…接着層
14…透明樹脂層
15…表面保護層
16…硬質シート
17…短辺方向
18…短辺側面
19…接着接合部
20…合いじゃくり形状
30…実はぎ形状
40…合いじゃくり実はぎ形状
50…スナップフィト形状
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四方の端面に合いじゃくり、実はぎ、合いじゃくり実はぎ、又は嵌合形状の少なくとも一種の実加工が施されている床材用基材の上部面に矩形状の化粧基材部が形成され、前記化粧基材部の表面と、各端面を被覆接着させる適宜の形状に形成された熱可塑性樹脂化粧シートで、化粧基材部の表面と、各側面が被覆接着されている四方巻き床材であって、
前記化粧基材部の短辺方向両端面の内側近傍裏側面にそれぞれV字状に切削されている折り返し溝を備え、
前記V字状に切削されている折り返し溝が内側に折り曲げられ接着接合されてなる化粧基材部が形成されている床材用基材の、実同士を嵌め合わせることを特徴とする四方巻き込み床材。
【請求項1】
四方の端面に合いじゃくり、実はぎ、合いじゃくり実はぎ、又は嵌合形状の少なくとも一種の実加工が施されている床材用基材の上部面に矩形状の化粧基材部が形成され、前記化粧基材部の表面と、各端面を被覆接着させる適宜の形状に形成された熱可塑性樹脂化粧シートで、化粧基材部の表面と、各側面が被覆接着されている四方巻き床材であって、
前記化粧基材部の短辺方向両端面の内側近傍裏側面にそれぞれV字状に切削されている折り返し溝を備え、
前記V字状に切削されている折り返し溝が内側に折り曲げられ接着接合されてなる化粧基材部が形成されている床材用基材の、実同士を嵌め合わせることを特徴とする四方巻き込み床材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−328840(P2006−328840A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155019(P2005−155019)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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