説明

四方弁

【課題】伝熱促進が抑制されて熱移動が効果的に遮断され、熱損失を低減して冷暖房能力が向上される四方弁を得る。
【解決手段】弁室51を有するハウジング部材5と、上記弁室に設けられた座面部61を有する弁座6と、この弁座の座面部に互いに隣接する開口部1a、2aを有しそれぞれ該弁座を貫通して上記弁室の外に引き出された高温流体を通流する第1の流路1、低温流体を通流する第2の流路2及び高温流体を通流する第3の流路3と、上記弁座の座面部に対して移動するように設けられた弁体7とを備え、弁体7の内部に冷媒がUターンするよう形成された整流板12が設けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばヒートポンプ式空調装置の冷媒回路における冷暖房の切換弁などに好ましく用いられる四方弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の四方弁としては、切換弁におけるスライド弁の少なくとも弁座に対する摺接面を自己潤滑性樹脂で形成し、前記スライド弁の前記摺接面を除く残部を熱硬化性樹脂またはエステル基もしくはアミノ基を有さない結晶性熱可塑性樹脂で形成したものがある(例えば特許文献1参照。)。
また、ポートBを高温・高圧の冷媒が導入されるポートAまたは低温・低圧の冷媒が導出されるポートDと連通するよう切り換える三方切換弁のボディとポートCをポートAまたはポートDと連通するよう切り換える三方切換弁のボディとを分離し、共通のポートA、Dをパイプで接続し、各ボディの冷媒が流れる通路を断熱スリーブおよび断熱プラグで囲い、かつ弁体を構成するプラグを熱伝導性の低い材料で構成したものがある(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−201297号公報(第1頁、図2)
【特許文献2】特開2003−254453号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に例示される四方弁においては、圧縮機出口からの高温高圧冷媒と圧縮機入口に戻る低温低圧冷媒が接近して流れるため、両者間で熱漏洩による熱損失が発生する。熱損失が発生すると、暖房モードで言えば、暖房能力減少を招き、さらに圧縮機入口冷媒ガスが過熱されることにより圧縮機効率も低下するため、空調装置の効率が大幅に低下する問題があった。また、特許文献2に例示された四方弁においては、内部での熱損失が抑えられるが、樹脂など熱伝導性の低い材料からなるプラグをボディの中に設ける構造となっているので、部品数が増え、構造も複雑になるなどの課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、本件発明者らが四方弁の熱損失について鋭意研究、分析を重ねた結果、高温冷媒が入口流路から弁室に流入し出口流路から流出する際、出口流路では、開口部での冷媒流の衝突や縮流などにより壁面付近の表面流速が増速して温度境界層が薄くなり、伝熱が促進されること、その促進度合いは、発達した管内流れのものに対して、数倍から十数倍にも及ぶこと、同様に、低温冷媒の出口流路でも伝熱促進され、結局、これら2つの伝熱促進が主要因となり、弁室または弁座に設けられた出口流路間、特にその開口部付近で、高温冷媒と低温冷媒の熱損失が集中して発生するとの知見を得、この発明を完成させたもので、構造が簡単でしかも熱漏洩による熱損失が少なく、空調装置の省エネ性を向上させることができる四方弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る四方弁は、弁室を有するハウジング部材と、上記弁室に設けられた座面部を有する弁座と、この弁座の座面部に互いに隣接する開口部を有しそれぞれ該弁座を貫通して上記弁室の外に引き出された第1の流路、第2の流路、及び第3の流路と、上記ハウジング部材の弁室に向けて開口し高温の流体を流入させる第4の流路と、上記弁座の座面部に対して移動するように設けられ、上記第4の流路から流入された高温の流体を上記第1の流路に流出させるときに上記第3の流路から流入される低温の流体を上記第2の流路に流出させ、上記第4の流路から流入された高温の流体を上記第3の流路に流出させるときに上記第1の流路から流入される低温の流体を上記第2の流路に流出させるように流路を切り替える弁体とを備え、上記弁体の内部に冷媒がUターンするよう形成された整流板が設けられているものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、弁体の内部に冷媒がUターンするよう形成された整流板が設けられていることにより、壁面付近の表面流速が増加することなく、伝熱促進が抑制されて、熱移動が効果的に遮断され、熱損失が低減する。このため、空調装置に用いたときには冷暖房能力が向上し、さらには、圧縮機に流入する低温冷媒の過熱が防止されて圧縮機効率も向上し、空調装置の省エネ性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による四方弁の要部を概念的に示す断面図。
【図2】図1に示す四方弁の変形例を示す断面図。
【図3】図1に示す四方弁の他の変形例を示す要部断面図。
【図4】図1に示す四方弁のさらに他の変形例を示す断面図。
【図5】この発明の実施の形態2による四方弁の要部を概念的に示す断面図。
【図6】この発明の実施の形態3による四方弁の要部を概念的に示す断面図。
【図7】この発明の実施の形態4による四方弁の要部を概念的に示す断面図。
【図8】図7に示す四方弁の変形例を示す要部断面図。
【図9】この発明の実施の形態5による四方弁の要部を概念的に示す断面図。
【図10】この発明の実施の形態6による四方弁の要部を概念的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜図4はこの発明の実施の形態1による四方弁の要部を概念的に説明する図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib線における矢視断面図、図2は図1の四方弁の変形例を示すもので、図2(a)は断面図、図2(b)は図2(a)のIIb−IIb線における矢視断面図、図3は図1の四方弁の他の変形例を示す要部断面図、図4は図1の四方弁のさらに他の変形例を示す断面図である。図1において、四方弁10は、弁室51を有する略円筒状の両端部が塞がれたハウジング部材5と、上記弁室51に設けられた座面部61を有する弁座6と、この弁座6の座面部61に直線的に配置され互いに隣接する開口部1a、2a、3aを有し、それぞれ該弁座6を貫通して上記弁室51の外に引き出された何れもパイプ状の第1の流路1、第2の流路2、及び第3の流路3と、上記弁室51に開口され弁室5の外に引き出されたパイプ状の第4の流路4と、上記弁座6の座面部61に対して摺動するように設けられた弁体7とを備えている。
【0010】
上記弁体7は、この実施の形態1では例えば樹脂材料などの熱伝導率の低い材料を用いて構成されている。なお、該弁体7は、座面部61に対して密着させた状態で図1(a)の左右方向に移動(スライド)させて流路を切り替えるように構成されているが、そのための駆動機構は、公知の従来技術を特別な制限なく用いることができるものであり、この発明の要旨に直接関係しない部分であるので図示を省略している。
【0011】
上記弁座6の図の下面部における上記第1の流路1及び第2の流路2の間、並びに上記第2の流路2及び第3の流路3の間には、これら流路の開口部近傍相互間の熱移動を抑制する熱抵抗部としてのスリット状ないしは溝状の切れ目8が形成されている。なお、上記第1、第2、第3、及び第4の流路1、2、3、及び4は、何れも図示を省略している室内熱交換器、圧縮機入口、室外熱交換器、及び圧縮機出口にそれぞれ接続されて、ヒートポンプ式空調装置の冷媒回路を構成し、実線矢印RHは流体である高温冷媒の流れ、破線矢印RCは流体である低温冷媒の流れを示している。また、上記弁体7は、図1(a)に示す位置では、第4の流路4と第1の流路1を連通する一方、第2の流路2と第3の流路3を連通し、弁室51内を高温冷媒RHが流れる流路と低温冷媒RCが流れる流路の2つの流路に仕切っており、この場合暖房モードの冷媒回路構成となっている。なお、各図を通じて同一符号は同一もしくは相当部分を示すものとする。
【0012】
次に上記図1のように構成された実施の形態1の動作について説明する。図示省略している圧縮機出口から吐出された高温冷媒RHは第4の流路4から弁室51内に流入し、第1の流路1を通って室内熱交換器に送られ、該室内熱交換器に対して図示を省略している膨張弁を介して直列に接続された室外熱交換器を経由して戻ってきた低温冷媒RCは、第3の流路3から弁体7に流入し、弁体7内でUターンして、第2の流路2から外部に流出して圧縮機入口に戻るように循環されて、暖房モードの運転が行なわれる。一方、弁体7を座面部61に密着させた状態で図1(a)の左方向にスライドさせて、第1の流路1と第2の流路2、及び第3の流路3と第4の流路4をそれぞれ連通する流路に切り換えることにより、高温冷媒RHが第4の流路4から第3の流路3を通って室外熱交換器に送られ、室内熱交換器からの低温冷媒RCが第1の流路1から第2の流路2を通って圧縮機入口に戻る冷房モードの冷媒回路構成に切り換わる。
【0013】
四方弁10内では、このように高温冷媒RHと低温冷媒RCが接近して流れるため、両冷媒間で熱漏洩による熱損失が発生する。ここで、四方弁の熱損失についてさらに詳細に分析すると、次の通りである。すなわち、暖房モードの場合で説明すると、第4の流路4から流入した高温冷媒RHは噴流となって出口流路となる第1の流路1の開口部1aに衝突し、流出するため、まず第1の流路1の開口部1a及びその近傍の流出直後の壁面1bで冷媒流の衝突や縮流などにより壁面1b付近の表面流速が増速して温度境界層が薄くなり、伝熱が促進される。
【0014】
一方、第3の流路3から流入した低温冷媒RCは弁体7内でUターンして第2の流路2から流出するため、第2の流路2の流出前で流れが剥離して外周側に寄せられ、開口部2a近傍の流路壁面2b付近の表面流速が増速して同様に伝熱が促進される。これらの伝熱促進度合いは、発達した管内流れのものに対して、数倍から十数倍にも及ぶ。このため、高温冷媒と低温冷媒の熱損失は、この伝熱促進が主要因となって、第1の流路1と第2の流路2の間、すなわち高温冷媒と低温冷媒の出口流路の開口部1a、2a付近で集中して発生する。なお、冷房モードの場合は同様の理由で、熱損失は第2の流路2と第3の流路3の間の開口部2a、3a付近に集中する。
【0015】
この実施の形態1では、第1の流路1と第2の流路2の間、すなわち熱損失の主要経路である第1及び第2の流路1、2間で熱が移動する方向に対し交わる方向に形成されたスリット状の切れ目8が設けられているため、該切れ目8による弁座6の薄肉部分が熱の移動方向に対する熱抵抗部を構成し、熱移動が効果的に遮断されることによって、四方弁10での熱損失が低減し、冷暖房能力が向上する。さらには、圧縮機入口冷媒ガスが過熱されるのを防止できるため、圧縮機効率も向上し、空調装置の省エネ性が大幅に向上する。また、熱損失の主要経路にスリット状の切れ目8を設けるという比較的簡単な構造で効果が得られるため、コスト増を招かないという効果を奏する。
【0016】
なお、熱抵抗部としてのスリット状の切れ目8は、例えば図2の変形例及び図3の他の変形例に示すように第1の流路1と、第2の流路2の外周部に流路の断面形状と同心円状に設けた環状の凹部からなる切れ目81(図2)によって構成し、あるいは流路を構成するパイプ材の先端部を外側に折り返して形成された袋状の空気層82(図3)で構成しても良い。環状の切れ目81(図2)の場合、流路からの熱が弁体7及び弁座6内で拡散して拡がるのを防止できるため、流路間の熱移動がより一層抑えられ、冷暖房能力の向上、空調装置の省エネ性が向上する。また、袋状の空気層82の場合も同様に流路間の熱移動がより一層抑えられ、弁座6または弁室51内での熱伝導による熱の拡散を抑制できるため、熱損失がより一層低減する。
【0017】
なお、これらの切れ目8、81は、弁座6の座面部61側に設けても良く、さらには、図4のさらに他の変形例に示すように、弁座6の内外両面に交互に熱抵抗部としての切れ目83を設けてもよい。この場合、図1のように片面に切れ目8を設けた場合に比べ、同一の切れ目幅(スリット幅)で比較すると、曲げ強度が向上するため、強度信頼性が増し、また、同一曲げ強度で比較すると、切れ目幅(スリット幅)を大きくできるため、流路間の熱移動をより低減することができる。
【0018】
また、上記図1〜図4に示した例では、流路の開口部近傍に設ける熱抵抗部を直線状のスリット状の切れ目8、83、あるいは環状の切れ目81、袋状の空気層82などによって構成したが、熱抵抗部を熱伝導率の低い材料、例えばステンレス鋼、セラミック、硬質樹脂などを用いて構成しても、同様の熱遮断効果が得られる。さらに、この実施の形態1では、弁座6に3本の流路が接続された例で示したが、当然ながら弁座6に設ける流路の数や弁形式は特に限定されるものではなく、数や形式に限らず同様な熱遮断効果が得られる。なお、弁室51を形成するハウジング部材5についても上記例示した熱伝導率が低い材料を用いて構成することにより、さらに熱損失が低減され、合わせて強度の大きい材質を用いることで薄肉化による一層の熱損失低減効果が得られる。
【0019】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2による四方弁の要部を概念的に説明する図であり、図
5(a)は断面図、図5(b)は図5(a)のVb−Vb線における矢視断面図である。図において、50は弁座6と一体的に構成され、弁室51を構成する内周面の下部に弁座6の断面円弧状の座面部61が形成され、全体的に薄肉に構成された略円筒状で両端部が塞がれたハウジング部材である。弁体7は弁座6の座面部61の形状に対応して合わせ面が曲面に形成され、さらに第2の流路2の開口部2aは、座面部61よりも弁室51の中に突き出るように設けられており、弁体7の回転止めの機能を有している。84は弁座6(同時にハウジング部材50でもある)によって形成された薄肉材からなる熱抵抗部である。その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0020】
上記のように構成された実施の形態2においては、弁座6がハウジング部材50と一体的に薄肉材によって形成されているので、該弁座6が、高温冷媒RHの出口流路となる第1の流路1と低温冷媒RCの出口流路となる第2の流路2の開口部1a、2a近傍、または冷房時には高温冷媒RHの出口流路となる第3の流路3と低温冷媒RCの出口流路となる第2の流路2の開口部3a、2a近傍の流路相互間の熱抵抗部84を形成して熱移動を抑制し、上記実施の形態1におけるスリット状の切れ目8、81、83、あるいは袋状の空気層からなる熱抵抗部82と同様な効果が得られる。
【0021】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による四方弁の要部を概念的に示す断面図である。図において、85は第1の流路1と第2の流路2の間における開口部1aと2a付近の流路壁面に施された熱抵抗部としてのコーティング層である。該コーティング層85は、例えば、0.1W/mK前後の低い熱伝導率の材料、例えば樹脂材料などを好ましく用いることができ、膜厚は0.1〜1mm程度である。この実施の形態3は、熱抵抗部をスリット状の切れ目に替えて熱伝導率の低いコーティング層によって構成したものであり、その他の構成は、上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0022】
上記のように構成された実施の形態3では、実施の形態1と同様に例えば、暖房モードでは、第1の流路1と第2の流路2の間、すなわち冷媒の出口流路となる開口部1a、2a付近の流路壁面での伝熱促進が熱損失の主たる要因となるが、この部位に熱伝導率の低いコーティング層85が施されているため、該コーティング層85が断熱層となって、隣接する第1、第2の流路1、2間での熱移動が効果的に遮断され、四方弁10での熱損失を大幅に低減でき、空調装置の省エネ性が大きく向上する。また、比較的簡単な方法で断熱層を設けることができるため構造の簡素化を図ることができる。なお、図6では、第1の流路1と第2の流路2の間の開口部1a、2a付近の流路壁面の一部にコーティング層85を施しているが、コーティング層85は当然ながら該流路の開口部1a、2a付近の内周面の全周囲に設けても良く、さらに、第3の流路3の開口部3a近傍にもコーティング層を設けると、冷房、暖房何れのモードでも熱損失を低減する効果が得られる。
【0023】
実施の形態4.
図7及び図8はこの発明の実施の形態4による四方弁の要部を概念的に説明するもので、図7(a)は断面図、図7(b)は開口部近傍の詳細を示す拡大図、図8は図7の四方弁の変形例(a)、及び他の変形例(b)を示す要部断面図である。図7において、9は熱抵抗部としてのガス滞留層86を形成するための先細りのロート状に形成されたガス滞留層形成部材であり、直径の大きい図の上部が第1の流路1、または第2の流路2の開口部1aまたは2aに圧入固定され、直径の小さい図の下部が第1の流路1または第2の流路2内に、流路壁面から離間して流路中心部側で開口している。
【0024】
この実施の形態4では、図6に示すコーティング層の代わりに、上記部位にガス(冷媒ガス)が滞留するガス滞留層86を設けたものである。ガスの熱伝導率は低いため、コーティング層と同様の熱遮断効果が得られる。なお、ガス滞留層86は図8(a)の変形例に示すように、管端部を内側に折り返して形成された先端袋管によって構成してもよい。また、図8(b)の他の変形例に示すように、第1の流路1(第2の流路)を構成するパイプ(外管)の内側に、外径が該パイプよりも小径の内管1c(2c)が間隙を保持して内装された2重管を用い、該内管1c(2c)と外管の間隙部をガス滞留層86としたものでも同様の効果が得られる。
【0025】
なお、図8(b)では、内管1c(2c)の保持部を示していないが、該内管1c(2c)の保持手段は特に限定されるものではなく、例えば図の下端部のみで固定し、開口部1a(2a)側の上端部が図8(b)のようにフリーであっても差し支えない。また、ガス滞留層86は弁室に開口していても、開口していなくても良い。図8(b)のように上端部が弁室に開口していても外管のパイプとの間隙が狭いので冷媒が流れにくく、内管1c(2c)の流れに比べればほぼ滞留層と見なすことができる。さらに、第3の流路3の開口部3aにガス滞留層86を設けても良いことは言うまでもない。このように、ガス滞留層86は、第1〜第3の流路1〜3を構成する例えば銅などの材料に比べて熱伝導率が低いため断熱効果があり、また、比較的簡単な方法で断熱層を設けることができるため構造の簡素化を図ることができる。
【0026】
実施の形態5.
図9はこの発明の実施の形態5による四方弁の要部を概念的に示す断面図である。図において、弁室51内には、第4の流路4から流入した流体である高温冷媒を衝突させ、弁室51内に拡散させる邪魔板11がハウジング部材5に対して図示省略している固定手段により固定して設けられ、また弁体7の内部には冷媒の通流方向に沿って滑らかに曲げられた整流板12が弁体7に対して図示省略している固定手段により固定して設けられている。さらに、第2の流路2と第3の流路3の間の開口部2a、3aの角部Rは、曲面状のR形状に形成されており、弁室51の方向に向かって流路断面積が徐々に広げられている。
【0027】
上記のように構成された実施の形態5においては、例えば、暖房モードでは、出口流路となる第1の流路1の開口部1aと、第2の流路2の開口部2aの間付近では、冷媒流の衝突、曲がりや流路面積の縮小などによって偏流、縮流し、流路壁面付近の表面流速増加により、伝熱促進されることが熱損失の主たる要因であるが、邪魔板11により、冷媒が第1の流路1の開口部1aに直接衝突することが防止される。また、第3の流路3から流入した低温冷媒は弁体7内でUターンして第2の流路2に流出する際、開口部3a、2aの角がR形状で弁室51に向かって流路面積が除々に広がっているため、流れの剥離が抑制され、さらに、弁体7内の整流板12の整流効果により、流れが整流されるため、壁面付近の表面流速が増加することなく、伝熱促進が抑制される。
【0028】
このように、実施の形態5によれば、出口流路である第1の流路1、または第3の流路3の開口部1a、または3a付近の表面流速が増加することなく、伝熱促進が抑制されて熱移動が効果的に遮断され、熱損失が低減する。このため、冷暖房能力が向上し、さらには、圧縮機に流入する低温冷媒の過熱が防止されて圧縮機効率も向上し、空調装置の省エネ性が大幅に向上する。なお、弁体7の内部に設けられた整流板12は、冷房運転時に弁体7を図の左方向にスライドさせたときに弁体7と共に移動することはいうまでもない。また、冷房運転時の熱移動を抑制するために、第1の流路1の開口部1aもR形状にすることは望ましい。また、上記邪魔板11と整流板12は、何れか一方を単独で設けても相応の効果が得られる。更に、弁座6に上記実施の形態1〜4に示す切れ目、空気層、薄肉材、ガス滞留層やコーティング層などからなる熱抵抗部を設けることは更なる効果の増大が期待できる。
【0029】
実施の形態6.
図10はこの発明の実施の形態6による四方弁の要部を概念的に示す断面図である。図において、弁体7は上記実施の形態1と同様形状の内側の弁体7と、その外方に配設された整流部材71からなる2重構造となっており、外側の整流部材71は、上面が開口しており、第4の流路4から流入した高温冷媒を第1の流路1(暖房運転時)もしくは第3の流路3(冷房運転時)に導く通路を形成している。
【0030】
上記のように構成された実施の形態6においては、実施の形態5と同様、例えば、暖房モードでは、整流部材71が開口部4a近傍に伸びて設けられていることにより、冷媒が弁室51内壁や第1の流路1の開口部1aに直接衝突することを防止し、また、外側の整流部材71の形成する通路で流れが整流されるため、出口流路となる第1の流路1の開口部1a近傍における壁面付近の表面流速が増加することなく、伝熱促進が抑制される。また、弁体7が座面部61上を図の左方向にスライドし冷房モードになると、当然ながら整流部材71も左側に移動しているため、第4の流路4から流入した冷媒は弁体7の外周部と整流部材71の間を通過して第3の流路3に導かれるため、暖房モード同様の伝熱促進抑制効果が得られる。このように、熱移動が効果的に遮断され、熱損失が低減して、冷暖房能力が向上し、さらには、圧縮機に流入する低温冷媒の過熱が防止されて圧縮機効率も向上し、空調装置の省エネ性が大幅に向上する。
【0031】
なお、上記実施の形態の説明では、弁室51に設けられた弁座6の座面部61に3つの流路の開口部が直線的に並設され、弁室51に高温の流体を流入させ、弁体7を座面部61に摺接してスライド移動させる方式の四方弁を例に説明したが、特にこの方式や例に限定されるものではないことは勿論である。また、例えば図10に示す弁座6に図1に示す切れ目を設けるなど、各実施の形態に示した発明を適宜組み合わせて構成することは容易であり、複数の発明を組み合わせた場合には、断熱効果を更に高めることができる。さらに切れ目8、83はスリット状に設けた例で説明したが、該形状はスリット状に限定されるものではなく、例えばV字状、U字状の溝などであっても同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0032】
1 第1の流路、 1a 開口部、 1b 壁面、 1c 内管、 2 第2の流路、 2a 開口部、 2c 内管、 3 第3の流路、 3a 開口部、 4 第4の流路、 4a 開口部、 5、50 ハウジング部材、 51 弁室、 6 弁座、 61 座面部、 7 弁体、 71 整流部材、 8 熱抵抗部(切れ目)、 81 熱抵抗部(環状の切れ目)、 82 熱抵抗部(空気層)、 83 熱抵抗部(切れ目)、 84 熱抵抗部(薄肉材)、 85 熱抵抗部(コーティング層)、 86 熱抵抗部(ガス滞留層)、 9 ガス滞留層形成部材、 10 四方弁、 11 邪魔板、 12 整流板、 RC 流体(低温冷媒)、 RH 流体(高温冷媒)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を有するハウジング部材と、上記弁室に設けられた座面部を有する弁座と、この弁座の座面部に互いに隣接する開口部を有しそれぞれ該弁座を貫通して上記弁室の外に引き出された第1の流路、第2の流路、及び第3の流路と、上記ハウジング部材の弁室に向けて開口し高温の流体を流入させる第4の流路と、上記弁座の座面部に対して移動するように設けられ、上記第4の流路から流入された高温の流体を上記第1の流路に流出させるときに上記第3の流路から流入される低温の流体を上記第2の流路に流出させ、上記第4の流路から流入された高温の流体を上記第3の流路に流出させるときに上記第1の流路から流入される低温の流体を上記第2の流路に流出させるように流路を切り替える弁体とを備え、上記弁体の内部に冷媒がUターンするよう形成された整流板が設けられていることを特徴とする四方弁。
【請求項2】
上記整流板は、滑らかに曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項3】
上記第2の流路および上記第3の流路は、上記弁室に向かって流路断面積が徐々に広げられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の四方弁。
【請求項4】
上記第1の流路は、上記弁室に向かって流路断面積が徐々に広げられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の四方弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−193855(P2012−193855A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151028(P2012−151028)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2010−85625(P2010−85625)の分割
【原出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】