説明

四置換ピリダジンヘッジホッグ経路アンタゴニスト

本発明は、癌の治療に有用な新規四置換ピリダジンヘッジホッグ経路アンタゴニストを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッジホッグ経路アンタゴニスト、より具体的には、新規四置換ピリダジン、及びその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達経路は、細胞の分化及び増殖を導くことにより、胚のパターン形成、及び成体組織の維持において重要な役割を果たしている。ソニックヘッジホッグ(Shh)、インディアンヘッジホッグ(Ihh)、及びデザートヘッジホッグ(Dhh)を含むヘッジホッグ(Hh)タンパク質ファミリーは、自己触媒的切断及びコレステロールのアミノ末端ペプチドへのカップリングを含む翻訳後修飾を受けて、シグナル伝達活性を有する断片を形成する分泌糖タンパク質である。Hhは、12回膜貫通型タンパク質Ptch(Ptch1及びPtch2)に結合して、Smoothened(Smo)のPtch介在性抑制を軽減する。Smoの活性化は、Gli転写因子(Gli1、Gli2、及びGli3)を安定化させ、且つ細胞増殖、細胞生存、血管形成、及び侵入に関与するGli依存性遺伝子を発現させる一連の細胞内事象を誘発する。
【0003】
Hhシグナル伝達は、近年、Shhシグナル伝達の異常な活性化が、種々の腫瘍、例えば、膵癌、髄芽腫、基底細胞癌、小細胞肺癌、及び前立腺癌の形成を導くという発見に基づいて、大きな注目を集めている。ステロイド性アルカロイド化合物IP−609、アミノプロリン化合物CUR61414、及び2,4−二置換チアゾール化合物JK18等の幾つかのHhアンタゴニストが、当該技術分野において報告されている。特許文献1は、ヘッジホッグアンタゴニストであると断定されている特定の1,4−二置換フタラジン化合物を開示している。同様に、特許文献2は、ヘッジホッグ経路関連病態の診断及び治療に関連する特定の1,4−二置換フタラジン化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005033288号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008110611号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
強力なヘッジホッグ経路阻害剤、特に所望の薬理学的、薬物動態学的、及び毒物学的プロファイルを有するものが、依然として必要とされている。本発明は、この経路の強力なアンタゴニストである新規四置換ピリダジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式I:
【化1】

の化合物、又はその薬学的に許容できる塩
(式中、
Xは、C−R又はNであり、
は、水素、フルオロ、又はシアノであり、
は、
【化2】

、ピペリジニル、又はgemジ−フルオロ置換シクロへキシルであり、
は、メチル又はトリフルオロメチルであり、
は、ピロリジニル、モルホリニル又はピリジル、アミノ又はジメチルアミノであり、
は、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルであり、
は、水素又はメチルであり、
、R、R、R10、及びR11は、独立して、水素、フルオロ、シアノ、クロロ、メチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、又はメチルスルホニルであるが、但し、R、R、R、R10、及びR11のうちの少なくとも2つは、水素である)
を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の化合物は、三級アミン部分を含み、且つ多くの無機酸及び有機酸と反応して、薬学的に許容できる酸付加塩を形成し得ることが、当業者には理解されるであろう。かかる薬学的に許容できる酸付加塩、及びそれを調製する慣用的な方法は、当該技術分野において周知である。例えば、P.Stahlら,HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley−VCH,2002);S.M.Bergeら,「Pharmaceutical Salts」,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol66,No.1,1977年,1月を参照。
【0008】
本発明の具体的な実施形態としては、
(a)Xが、C−Rである、
(b)Rが、フルオロである、
(c)Rが、シアノである、
(d)Rが、
【化3】

である、
(e)Rが、
【化4】

である、
(f)Rが、
【化5】

である、
(f)Rが、
【化6】

である、
(g)Rが、
【化7】

である、
(h)Rが、フルオロであり、且つRが、
【化8】

である、
(i)Rが、シアノであり、且つRが、
【化9】

である、
式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩が挙げられる。
【0009】
本発明はまた、薬学的に許容できる賦形剤、担体、又は希釈剤と組み合わせて、式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明の化合物は、様々な経路で投与される医薬組成物として処方されることが好ましい。かかる組成物は、経口投与又は静脈内投与用であることが好ましい。かかる医薬組成物及びそれを調製するプロセスは、当該技術分野において周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(A.Gennaroら,eds.,第19版,Mack Publishing Co.,1995)を参照。
【0011】
本発明はまた、患者の脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、又は黒色腫を治療する方法であって、かかる治療を必要としている患者に、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を投与することを含む方法を提供する。
【0012】
実際に投与される化合物の量は、治療される状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物(1又は複数)、個々の患者の年齢、体重、及び反応、並びに患者の症状の重篤度を含む、関連状況に基づいて、医師により決定されることが理解されるであろう。1日当たりの投与量は、通常、約0.1〜約5mg/kg体重の範囲内に入る。ある場合には、前述の範囲の下限を下回る投与量レベルでも十分な量を超えている場合もあり、他の場合には、更に多い投与量が用いられる場合もある。したがって、上記投与量範囲は、如何なる方法によっても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明はまた、医薬として使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を提供する。
【0013】
更に、本発明は、癌を治療するための医薬の製造における、式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩の使用を提供する。具体的には、前記癌は、脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、及び黒色腫から成る群から選択される。
【0014】
更に、本発明は、脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、又は黒色腫を治療するための活性成分として、式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
式Iの化合物、又はその塩は、当該技術分野において既知である様々な手順、並びに以下のスキーム、調製物、及び実施例に記載される手順により調製され得る。記載される各経路の具体的な合成工程を、異なる方法と組み合わせるか、又は異なるスキームの工程と併用して、式Iの化合物、又はその塩を調製してもよい。
【0016】
置換基は、特に指示しない限り、既に定義した通りである。試薬及び出発物質は、概して、当業者が容易に入手可能なものである。他の試薬及び出発物質は、有機化学及び複素環化学の標準的な技術、既知の構造的に類似の化合物の合成に類似する技術、並びに任意の新規手順を含む以下の調製物及び実施例に記載される手順により作製され得る。
【0017】
本明細書で使用するとき、以下の用語は、指定される意味を有する:「boc」又は「t−boc」は、tert−ブトキシカルボニルを指し、「BOP」は、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを指し、「DMA」は、N,N−ジメチルアセトアミドを指し、「DMF」は、N,N−ジメチルホルムアミドを指し、「DMSO」は、メチルスルホキシドを指し、「EDCI」は、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を指し、「EtO」は、ジエチルエーテルを指し、「EtOAc」は、酢酸エチルを指し、「iPrOH」は、イソプロパノールを指し、「MeOH」は、メタノールを指し、「TFA」は、トリフルオロ酢酸を指し、「SCX」は、強カチオン交換を指し、「PyBOP」は、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを指し、「IC50」は、ある剤が可能な最大阻害反応の50%を生じさせる前記剤の濃度を指す。
【0018】
【化10】

式Iの化合物は、スキーム1に図示されている反応に従って調製することができる。
【0019】
スキーム1の工程1では、100〜140℃に加熱しながら、トリエチルアミン及び/若しくはジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基、並びに/又は炭酸カリウム等の無機塩基の存在下で、DMF、DMA、又はDMSO等の極性非プロトン性溶媒中にて、芳香族求核置換反応(SNAr)によって、3,6−ジクロロ−4,5−ジメチルピリダジン(1)を、tert−ブチルメチル(ピペリジン−4−イル)カルバメート(2)で置換して、tert−ブチル1−(6−クロロ−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(3)を得る。工程2では、鈴木−宮浦クロスカップリング反応によって、ジメチルピリダジンの残りのクロリドを、アリールボロン酸(4)と反応させて、対応する4,5−ジメチル−6−置換アリールピリダジン−3−置換ピペリジン(5)を得ることができる。当業者は、かかるクロスカップリング反応を促進するために有用な様々な条件が存在することを認識するであろう。その反応条件では、約80〜160℃の温度で、不活性雰囲気下にて、炭酸セシウム又はフッ化セシウム等の塩基と、(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロリド又は(SP−4−1)−ビス[ビス(1,1−ジメチルエチル)(4−メトキシフェニル)ホスフィン−κP]ジクロロ−パラジウム(J.Org.Chem.2007,72,5104−5112に従って調製)等のパラジウム触媒との存在下で、ジオキサン又はジオキサン/水等の好適な溶媒を利用して、式(5)の化合物を得る。アミンは、標準的な脱保護方法によって脱保護し得る。窒素保護基を導入及び除去する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、GreeneおよびWuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley and Sons,New York,(1999)を参照)。例えば、塩化水素又はトリフルオロ酢酸等の酸性条件下で、式(5)のアミンのboc脱保護を行って、式(6)の化合物を得ることができる。ジクロロメタン等の不活性溶媒中にて置換酸塩化物(7)を用いて工程4におけるアミンのアシル化を行うか、或いはDMF及び/若しくはDMSO、又はジクロロメタン等の好適な溶媒中で、置換カルボン酸と、PyBOP、ペンタフルオロフェニルジフェニルホスフィネート、BOP、又はEDCI等の適切なカップリング試薬と、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン等の適切な塩基とを用いて、式(6)の化合物をアシル化して、式Iの中性化合物を得ることができる。式Iの化合物は、EtO中にHClを添加する等の当業者に既知の方法によりHCl塩等の塩に変換することができる、又は0〜20℃で、メタノール等のアルコール溶媒の溶液に塩化アセチルを滴加することによりインサイチュでHClを生成することができる。
【0020】
【化11】

所望のカルボン酸(7)(Y=OH、スキーム1の工程4)は、スキーム2に示すように調製され得る。工程1に示すように、アセトニトリル等の適切な溶媒中にて、塩化銅及び亜硝酸イソペンチルを用いてザントマイヤー反応により、チアゾール(8)の2位における一級アミンを塩化物で置換して、2−クロロ−4,5−置換チアゾール(9)を得る。次いで、DMSO等の極性非プロトン性溶媒中にて、工程2において前記塩化物を所望のアミン(10)で置換して、対応するアミノチアゾール(11)を得る。MeOH又はジオキサン等の好適な溶媒中にて、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化リチウム水溶液等の好適な塩基を用いて、工程3においてエステルを加水分解して、所望のカルボン酸(12)を得る。
【0021】
【化12】

スキーム3に示すように、所望のカルボン酸(7)(Y=OH、スキーム1の工程4)を調製する更なる例では、アセトン等の溶媒中にて、炭酸カリウム等の無機塩基を用いて、工程1に示すように、ピラゾール(13)を4−メトキシベンジル等の好適な保護基で保護して、保護ピラゾール(14)を得る。次いで、工程3に示すように、好適な塩基を用いてエステルを加水分解して、式(15)の化合物を得る。スキーム1の工程4におけるアシル化に続いて、TFA等の酸性条件下でピラゾールの脱保護を行い、式1の化合物を得ることができる。
【0022】
スキーム4は、カルボン酸(7)(Y=OH、スキーム1の工程4)を調製する更なる例を示す。
【0023】
【化13】

工程1に示すように、アミノピラゾール(16)及びジメチルジスルフィドの不活性溶媒溶液、例えば、クロロホルム溶液に亜硝酸イソペンチルを滴加して、一級アミンをチオメチル基に変換し、エチル1−メチル−5−(メチルチオ)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(17)を形成し得る。工程2では、酢酸等の適切な溶媒中にて、過酸化水素等の酸化剤を用いて、化合物(17)のチオメチル基をメチルスルホンに酸化して、式18の化合物を得ることができる。既に記載した通り、エステルの加水分解により、工程3に示すように適切なカルボン酸である化合物(7)が得られる。
【0024】
以下の調製物及び実施例は、本発明を更に詳細に例証し、式(1)の化合物の典型的な合成を示すために提供される。本発明の化合物の名称は、概して、ChemDraw Ultra(登録商標)10.0により得られたものである。
【0025】
調製物1
tert−ブチル1−(6−クロロ−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート
【化14】

120℃で2日間、DMSO(310mL)中にて、3,6−ジクロロ−4,5−ジメチルピリダジン(11.0g、62.1mmol)、tert−ブチルメチル(ピペリジン−4−イル)カルバメート(23.3g、109mmol)、及び粉末化KCO(17.2g、124mmol)の混合物を加熱する。反応混合物を冷却し、HOで希釈し、固体を濾しとる。前記固体をHOですすぎ、45℃にて真空下で乾燥させる。CHClに前記固体を溶解させ、その溶液をシリカゲルのパッドに通し、CHClで溶出する。減圧下で有機層を濃縮して、黄色固体として標題の化合物を得る(14.3g、65%)。ES/MS m/z(35Cl)355.0(M+1)。
【0026】
調製物2
tert−ブチル1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート
【化15】

下、90℃で一晩、1,4−ジオキサン(30mL)及びHO(10mL)の混合物中にて、tert−ブチル1−(6−クロロ−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(1.5g、4.23mmol)、4−フルオロフェニルボロン酸(887mg、6.34mmol)、CsCO(5.51g、16.9mmol、及び(SP−4−1)−ビス[ビス(1,1−ジメチルエチル)(4−メトキシフェニル)ホスフィン−κP]ジクロロ−パラジウム(J.Org.Chem.2007,72,5104−5112)の混合物(29mg、0.042mmol)を加熱する。HOとCHClとの間で反応混合物を分配する。層を分離させ、CHClで水層を抽出する。有機層をまとめ、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜2% 2M NH/MeOH、CHCl中)により、残留物を精製して、白色発泡体として標題の化合物を得る(1.05g、60%)。ES/MS m/z 415.2(M+1)。
【0027】
代替手順
1,4−ジオキサン(80mL)中のtert−ブチル1−(6−クロロ−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(3.01g、8.48mmol)、4−フルオロフェニルボロン酸(1.23g、8.80mmol)、及びCsF(4.08g、26.8mmol)のN脱気混合物を、(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロリド(1.10g、1.35mmol)で処理する。N下、95℃で一晩、得られる混合物を加熱する。HOとEtOAcとの間で反応混合物を分配する。層を分離させ、有機層をブラインで洗浄する。前記有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配20〜80% EtOAc、ヘキサン中)により、残留物を精製して、標題の化合物を得る(3.05g、87%)。ES/MS m/z 415.2(M+1)。
【0028】
調製物3
tert−ブチル1−(6−(4−シアノフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート
【化16】

下、90℃で一晩、1,4−ジオキサン(30mL)及びHO(10mL)の混合物中にて、tert−ブチル1−(6−クロロ−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(1.5g、4.23mmol)、4−シアノフェニルボロン酸(932mg、6.34mmol)、CsCO(5.51g、16.9mmol)、及び(SP−4−1)−ビス[ビス(1,1−ジメチルエチル)(4−メトキシフェニル)ホスフィン−κP]ジクロロ−パラジウム(29mg、0.042mmol)の混合物を加熱する。EtOAcとNaHCOの溶解したHOとの間で反応混合物を分配する。層を分離させ、水層をEtOAcで抽出する。有機層をまとめ、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜2% 2M NH/MeOH、CHCl中)により、残留物を精製して、黄色固体として標題の化合物を得る(1.68g、94%)。ES/MS m/z 422.2(M+1)。
【0029】
適切に置換されたアリールボロン酸を用いて、調製物3に記載された手順に本質的に従って、以下の表中の置換フェニルピリダジンを調製する。調製物5では、粗反応混合物をシリカゲルのパッドで直接濾過し、CHCl中の5%M NH/MeOHで溶出する。溶出液を濃縮し、水系後処理(aqueous work−up)を行うことなく精製する。
【表1】

【0030】
調製物6
1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)−N−メチルピペリジン−4−アミン
【化17】

tert−ブチル1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(1.04g、2.51mmol)の1,4−ジオキサン溶液(10mL)を、1,4−ジオキサン(15.0mL)中の4M HClで処理する。周囲温度で2時間、得られる混合物を撹拌する。減圧下で反応混合物を濃縮する。残留物をMeOHに溶解させ、SCXカラム(Varian、10g)に注ぐ。MeOH及びCHClでカラムをすすぎ、CHClと2M NH/MeOHとの1:1混合物で生成物を溶出する。減圧下で濃縮して、オフホワイトの固体として標題の化合物を得る(784mg、99%)。ES/MS m/z 315.2(M+1)。
【0031】
調製物7
4−(4,5−ジメチル−6−(4−(メチルアミノ)ピペリジン−1−イル)ピリダジン−3−イル)ベンゾニトリル
【化18】

tert−ブチル1−(6−(4−シアノフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(1.68g、3.99mmol)の1,4−ジオキサン溶液(20mL)を、1,4−ジオキサン(20mL)中の4M HClで処理する。周囲温度で2時間、得られる混合物を撹拌する。減圧下で反応混合物を濃縮する。残留物をMeOHに溶解させ、SCXカラム(Varian、20g)に注ぐ。MeOH及びCHClでカラムをすすぎ、CHClと2M NH/MeOHとの1:1混合物で生成物を溶出する。減圧下で濃縮して、黄色固体として標題の化合物を得る(1.28g、定量)。ES/MS m/z 322.2(M+1)。
【0032】
適切なboc−保護ピペリジンを用いて、調製物7に記載された手順に本質的に従って、以下の表中の脱保護N−メチルアミノピペリジンを調製する。
【表2】

【0033】
調製物9
1−(4,5−ジメチル−6−(ピリジン−4−イル)ピリダジン−3−イル)−N−メチルピペリジン−4−アミン
【化19】

CHCl(20mL)及びトリフルオロ酢酸(20mL)を、tert−ブチル−1−(4,5−ジメチル−6−(ピリジン−4−イル)ピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(1.19g、2.99mmol)に添加する。周囲温度で3日間撹拌する。減圧下で濃縮して、残留物を得る。CHClと1N NaOHとの間で前記残留物を分配する。層を分離させ、水層をCHClで2回抽出する。有機層をまとめ、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、標題の化合物を得る(790mg、89%)。ES/MS m/z 298.2(M+1)。
【0034】
調製物10
エチル2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)チアゾール−5−カルボキシレート
【化20】

アセトニトリル(10mL)中のCuCl(671mg、4.99mmol)及び亜硝酸イソペンチル(732mg、6.24mmol)の0℃の混合物を、エチル2−アミノ−4−(トリフルオロメチル)チアゾール−5−カルボキシレート(1.0g、4.16mmol)でゆっくりと処理する。周囲温度で1時間、得られる混合物を撹拌する。1時間、50℃に加熱する。溶媒の大部分を除去し、氷と濃HClとの混合物に注ぐ。CHClで抽出する。有機層をブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(20:1 ヘキサン:EtOAc)により、得られる残留物を精製して、標題の化合物を得る(762mg、71%)。H NMR(300MHz,DMSO−d)δ 1.26(t,J=7.0Hz,3H),4.31(q,J=7.0Hz,2H)。
【0035】
調製物11
エチル2−モルホリノ−4−(トリフルオロメチル)チアゾール−5−カルボキシレート
【化21】

エチル2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)チアゾール−5−カルボキシレート(4.00g、15.4mmol)を、モルホリン(4.03g、46.2mmol)のDMSO溶液(10mL)に添加する。周囲温度で一晩、反応物を撹拌する。CHClを添加し、混合物をHOで洗浄する。有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(20:5:1 ヘキサン:EtOAc:2M NH/MeOH)により、残留物を精製して、標題の化合物を得る(4.58g、96%)。ES/MS m/z 311.0(M+1)。
【0036】
適切なアミンを用いて、調製物11に記載される手順に本質的に従って、以下の表中のアミノチアゾールエステルを調製する。
【表3】

【0037】
調製物15
2−モルホリノ−4−(トリフルオロメチル)チアゾール−5−カルボン酸
【化22】

MeOH(20mL)中の1N NaOH(20mL)混合物に、エチル2−モルホリノ−4−(トリフルオロメチル)チアゾール−5−カルボキシレート(4.58g、14.8mmol)を添加し、50℃で1時間反応物を加熱する。減圧下で反応物を濃縮し、残留物にHOを添加する。混合物をpH4に酸性化し、固体を濾過する。前記固体をHOで洗浄し、乾燥させて、標題の化合物を得る(4.13g、99%)。ES/MS m/z 283.0(M+1)。
【0038】
適切なエステルを用いて、調製物15に記載される手順に本質的に従って、以下の表中のアミノチアゾール酸を調製する。
【表4】

【0039】
調製物19
(S)−tert−ブチル2−((1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)(メチル)カルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレート
【化23】

1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)−N−メチルピペリジン−4−アミン(100mg、0.318mmol)のCHCl溶液(3.2mL)を、(S)−1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸(109mg、0.477mmol)、トリエチルアミン(0.067mL、0.477mmol)、及びEDCI(92mg、0.477mmol)で順次処理する。周囲温度で2日間、得られる混合物を撹拌する。NaHCOを含有するHOに反応混合物を注ぐ。層を分離させ、水層をCHClで抽出する。有機層をまとめ、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜2% 2M NH/MeOH、CHCl中)により、残留物を精製して、白色固体として標題の化合物を得る(82mg、49%)。ES/MS m/z 526.2(M+1)。
【0040】
調製物20
エチル1−(4−メトキシベンジル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート
【化24】

下、周囲温度で、エチル3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(500mg、2.40mmol)のアセトン溶液(8mL)にKCO(503mg、3.60mmol)を添加する。1−ブロモメチル−4−メトキシベンゼン(0.51mL、3.6mmol)を混合物に滴加し、N下で一晩撹拌する。HOで反応を停止させ、EtOAcで2回抽出する。まとめた有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜15%EtOAc、ヘキサン中)により、残留物を精製して、標題の化合物を得る(789mg、定量)。ES/MS m/z 351.0(M+Na)。
【0041】
調製物21
1−(4−メトキシベンジル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
【化25】

LiOH(122mg、5.03mmol)のHO溶液(3mL)を、エチル1−(4−メトキシベンジル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(550mg、1.68mmol)の1,4−ジオキサン撹拌溶液(10mL)に添加する。周囲温度で一晩撹拌する。1N HClでpH5に酸性化し、CHClで抽出し、CHCl中20% iPrOHで2回抽出する。まとめた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色固体として標題の化合物140mgを得る。水層を1N HClでpH2〜3に酸性化し、CHCl中20% iPrOHで2回抽出する。まとめた有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、最初に得られた白色固体140mgに溶液を添加する。濃縮して、白色固体として標題の化合物を得る(426mg、85%)。ES/MS m/z 299.0(M−1)。
【0042】
調製物22
N−(1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)−1−(4−メトキシベンジル)−N−メチル−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド
【化26】

PyBOP(343mg、0.65mmol)及びトリエチルアミン(0.21mL、1.50mmol)を、1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)−N−メチルピペリジン−4−アミン(157mg、0.50mmol)及び1−(4−メトキシベンジル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(165mg、0.55mmol)の無水DMF撹拌溶液(2.5mL)に添加する。N下、周囲温度で一晩、得られる混合物を撹拌する。濃縮し、MeOHを添加し、固体を濾過し、濾液を濃縮する。残留物をMeOHで希釈し、SCXカラム(Thermo Scientific、10g)に注ぐ。MeOHで洗浄し、次いで2M NH/MeOHで生成物を溶出する。濃縮し、ヘキサン中0〜10%の勾配(10% 2M NH/MeOH、EtOAc中)を用いてフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、白色固体として標題の化合物を得る(170mg、43%)。ES/MS m/z 597.0(M+1)。
【0043】
調製物23
エチル1−メチル−5−(メチルチオ)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート
【化27】

温度計及び冷却器を備える3つ口フラスコ中、窒素下にて、5℃のエチル1−メチル−5−アミノ−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(1.69g、10.0mmol)及びジメチルジスルフィド(1.79mL、20.0mmol)のCHCl溶液に亜硝酸イソペンチル(0.5mL、3.75mmol)を添加する。反応物をHO浴中で20℃に加温し、更なる亜硝酸イソペンチル(1.5mL、11.3mmol)滴で処理する。15分後、反応物を20℃のHO浴から取り出す(発熱により、約1分間にわたって温度が50℃まで上昇する)。N下、周囲温度で一晩撹拌する。HOで洗浄し、層を分離させる。水層をCHClで抽出し、有機層をまとめ、MgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜35%EtOAc、ヘキサン中)により、残留物を精製して、標題の化合物を得る(1.94g、97%)。ES/MS m/z 201.0(M+1)。
【0044】
調製物24
エチル1−メチル−5−(メチルスルホニル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート
【化28】

エチル1−メチル−5−(メチルチオ)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(1.68g、8.39mmol)、氷酢酸(11mL)、及び過酸化水素(5.10mL、50.3mmol)を混合し、得られる混合物を100℃で1.5時間加熱する。反応物を周囲温度まで冷却し、一晩撹拌する。氷を添加し、CHClで2回抽出する。有機層をまとめ、MgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜50%EtOAc、ヘキサン中)により、残留物を精製して、標題の化合物を得る(1.95g、100%)。ES/MS m/z 233.0(M+1)。
【0045】
調製物25
1−メチル−5−(メチルスルホニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
【化29】

周囲温度で、エチル1−メチル−5−(メチルスルホニル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(175mg、0.75mmol)の1,4−ジオキサン急速撹拌溶液(3mL)に、LiOH(22mg、0.90mmol)のHO溶液(1mL)を添加する。反応混合物を更なるLiOH(5mg、0.21mmol)で処理し、一晩撹拌する。1N HClでpH2に酸性化し、CHClで2回抽出する。有機層をまとめ、MgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色固体として標題の化合物を得る(98mg、64%)。ES/MS m/z 202.9(M−1)。
【実施例】
【0046】
実施例1
4−シアノ−N−(1−(6−(4−シアノフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)−N−メチルベンズアミド塩酸塩
【化30】

4−(4,5−ジメチル−6−(4−(メチルアミノ)ピペリジン−1−イル)ピリダジン−3−イル)ベンゾニトリル(90mg、0.28mmol)、及びトリエチルアミン(0.12mL、0.84mmol)のCHCl溶液(2.8mL)を、4−シアノベンゾイルクロリド(56mg、0.34mmol)で処理する。周囲温度で一晩反応物を撹拌する。HOで洗浄し、層を分離させる。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜2% 2M NH/MeOH、CHCl中)により、有機層を直接精製する。濃縮して、白色固体を得る。MeOHに物質を溶解させ、1.1当量のメタノールHClを添加する(塩化アセチルをMeOHに滴下することにより実施)。Nガス流下で混合物を濃縮し、45℃の真空オーブン中で残留物を乾燥させて、黄色固体として標題の化合物を得る(130mg、95%)。ES/MS m/z 451.2(M+1)。
【0047】
6時間〜3日間の範囲の反応時間で、適切な酸塩化物を用いて、実施例1に記載される手順に本質的に従って、以下の表中のピペラジニルアミドを調製する。実施例7、8、及び13では、過剰のEtO中1M HClを用いて、塩を形成する。実施例10では、3当量の予め作製しておいたメタノールHClを用いて、塩を形成する。
【表5−1】

【表5−2】

【0048】
実施例14
N−(1−(6−(4−シアノフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)−N−メチル−2−(トリフルオロメチル)ニコチンアミド二塩酸塩
【化31】

DMF(10mL)中で4−(4,5−ジメチル−6−(4−(メチルアミノ)ピペリジン−1−イル)ピリダジン−3−イル)ベンゾニトリル(102mg、0.32mmol)、2−(トリフルオロメチル)ニコチン酸(70mg、0.38mmol)、及びトリエチルアミン(0.13mL、0.96mmol)を混合する。混合物にPyBOP(200mg、0.38mmol)を添加し、周囲温度で一晩撹拌する。CHClを反応混合物に添加し、ブラインで洗浄する。有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(20:5:1 ヘキサン:EtOAc:2M NH/MeOH)により、得られる残留物を精製する。過剰のEtO中1M HClを、遊離塩基のCHCl/MeOH溶液に添加し、Nガス下で溶媒を蒸発させて、標題の化合物を得る(103mg、57%)。ES/MS m/z 495.2(M+1)。
【0049】
代替カップリング手順:
DMF及びDMSOの4:1混合物(20mL)中で、4−(4,5−ジメチル−6−(4−(メチルアミノ)ピペリジン−1−イル)ピリダジン−3−イル)ベンゾニトリル(300mg、0.93mmol)、2−(トリフルオロメチル)ニコチン酸(210mg、1.12mmol)、及びジイソプロピルエチルアミン(0.79mL、4.51mmol)を混合する。一時的に混合物を60℃に加熱して固体を溶解させ、次いで0℃に冷却する。ペルフルオロフェニルジフェニルホスフィネート(750mg、1.96mmol)溶液を、DMF及びDMSOの4:1混合物(1mL)に滴加する。得られる混合物を60℃で一晩加熱する。NaHCO水溶液とCHClとの間で反応混合物を分配する。有機層をブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(20:5:1 ヘキサン:EtOAc:2M NH/MeOH)により、得られる残留物を精製して、標題の化合物の遊離塩基を得る(346mg、75%)。ES/MS m/z 495.2(M+1)。上記のようにHCl塩を形成する。
【0050】
適切なジメチルピリダジン及びカルボン酸を用いて、実施例14の最初の手順に記載される手順に本質的に従って、以下の表中のピペリジニルアミドを調製する。実施例28では、1.1当量のMeOH中1M HClを用い(塩化アセチルをMeOHに滴下することにより実施)、次いで濃縮して、一塩酸塩を得る。実施例28は、実施例14の代替手順に従う。
【表6−1】

【表6−2】

【表6−3】

【0051】
実施例29
N−(1−(6−(4−シアノフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)−N−メチル−4−(トリフルオロメチル)ニコチンアミド塩酸塩
【化32】

4−(4,5−ジメチル−6−(4−(メチルアミノ)ピペリジン−1−イル)ピリダジン−3−イル)ベンゾニトリル(102mg、0.32mmol)、4−(トリフルオロメチル)ニコチン酸(81mg、0.42mmol)、トリエチルアミン(0.07mL、0.5mmol)のCHCl溶液(4mL)を、EDCI(99mg、0.52mmol)で処理し、3日間撹拌する。反応混合物をHOに注ぎ、EtOAcで抽出する。有機層をHOで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜10%MeOH、CHCl中)により精製する。遊離塩基をMeOH(2mL)に溶解させ、EtO中1M HCl(0.5mL)を添加する。濃縮して、標題の化合物を得る(82mg、49%)。ES/MS m/z 495.2(M+1)。
【0052】
適切なカルボン酸を用いて、実施例29に記載される手順に本質的に従って、以下の表中のピペリジニルアミドを調製する。実施例31〜33では、一晩撹拌する。実施例31〜33においてHCl塩を形成するために、対応する遊離塩基をMeOHに溶解させ、1.1当量のメタノールHClを添加し(塩化アセチルをMeOHに滴下することにより実施)、次いで濃縮する。
【表7】

【0053】
実施例34
(S)−N−(1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)−N−メチルピペリジン−2−カルボキサミド二塩酸塩
【化33】

1,4−ジオキサン(1.00mL、4.00mmol)中4M HClを、(S)−tert−ブチル2−((1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)(メチル)カルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレート(80mg、0.152mmol)のCHCl溶液(2mL)に添加する。周囲温度で4時間、得られる混合物を撹拌する。減圧下で濃縮し、45℃の真空オーブン内で残留物を乾燥させて、淡黄色発泡体として標題の化合物を得る(79mg、定量)。ES/MS m/z 426.2(M+1)。
【0054】
実施例35
N−(1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)−N,1−ジメチル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド二塩酸塩
【化34】

1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)−N−メチルピペリジン−4−アミン(800mg、4.12mmol)をDMF(25mL)に溶解させる。1−メチル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(1.08g、3.44mmol)、トリエチルアミン(1.44mL、10.3mmol)、及びPyBOP(2.68g、5.15mmol)を添加する。周囲温度で3時間撹拌する。反応混合物を濃縮し、ヘキサン中勾配0〜100%(5:1 EtOAc:2M NH/MeOH)を用いてフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーにより、残留物を精製する。単離された生成物をCHCl(10mL)に溶解させ、EtO中2M HCl(8mL)を添加する。N流下で溶媒を除去し、一晩50℃の真空オーブン内で乾燥させて、標題の化合物を得る(612mg、32%)。ES/MS(m/z)491.2(M+1)。
【0055】
適切なカルボン酸を用いて、実施例34に記載される手順に本質的に従って、以下の表中のアミドを調製する。実施例36は、SCXカラム(2M NH/MeOHで溶出)で精製し、次いでフラッシュクロマトグラフィーで精製する。
【表8】

【0056】
実施例38
N−(1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)−N−メチル−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド二塩酸塩
【化35】

トリフルオロ酢酸(10mL)をN−(1−(6−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジメチルピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−イル)−1−(4−メトキシベンジル)−N−メチル−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド(99mg、0.12mmol)に添加し、N下で還流させながら一晩加熱する。減圧下で濃縮する。残留物をCHCl中20% iPrOHに溶解させ、飽和NaCO水溶液で洗浄する。水層をCHCl中20% iPrOHで抽出する。有機層をまとめ、MgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(勾配0〜10% 2M NH/MeOH、CHCl中)により、残留物を精製する。精製された遊離塩基をCHCl(2mL)に溶解させ、EtO中1M HCl(0.5mL)を滴加する。30分間撹拌する。濃縮し、50℃の真空オーブン内で一晩乾燥させて、標題の化合物を得る(55mg、60%)。ES/MS m/z 477.0(M+1)。
【0057】
生物学
ヘッジホッグは、以下の癌の生存因子として意味づけられてきた:基底細胞癌;上部消化管癌(食道、胃、膵臓、及び胆道);前立腺癌;乳癌;小細胞肺癌;非小細胞肺癌;B細胞リンパ腫:多発性骨髄腫;胃癌;卵巣癌;大腸癌;肝癌;黒色腫;腎癌;及び脳癌。
【0058】
ヘッジホッグ経路の要素は、癌治療の潜在的創薬標的であると断定されてきた。髄芽腫腫瘍から確立されたDaoy細胞株(ATCC、HTB−186)は、Hhリガンドに反応する。これら細胞を体外から添加されたShh条件培地で処理すると、Hhシグナル伝達経路が活性化され、Gli1の発現が増加する。イキシア(Veratrum californicum)から単離されたアルカロイドであるシクロパミンは、弱いヘッジホッグアンタゴニストであり、Shh刺激に応答してGli1の発現を抑制することが示されている。最近の研究によれば、シクロパミンが培養髄芽腫細胞及び同種移植片の増殖を阻害することが示唆されている。このDaoy細胞モデル系を用いて、ヘッジホッグシグナル伝達経路の強力な阻害剤を同定することができる。本発明の化合物は、ヘッジホッグアンタゴニストであるため、前述の種類の腫瘍の治療に好適である。
【0059】
生物活性IC50の測定
以下のアッセイプロトコル及びその結果は、本発明の化合物及び方法の有用性並びに有効性を更に示す。機能アッセイは、本発明の化合物がShhシグナル伝達阻害能を示すことを支持する。以下のアッセイで用いられるリガンド、溶媒、及び試薬は全て、商業的供給元から容易に入手可能であるか、又は当業者により容易に調製され得る。
【0060】
生物活性は、Daoy神経細胞性癌細胞における機能アッセイを用いて測定され、bDNA(分岐デオキシリボ核酸)アッセイ系(Panomics,Inc.,Fremont,CA)を用いて、Gli1リボ核酸の量を測定する。Gliは、最初に神経膠芽腫細胞株で発見され、Shhシグナル伝達により活性化されるジンクフィンガータンパク質をコードする。最大反応は、24時間、条件培地(組換えShhを安定的に発現するヒト胚腎臓、HEK293細胞)でDaoy細胞におけるGli1転写を誘導し、次いで刺激されたGli転写量を測定することにより得られる。最小反応は、24時間、条件培地(組換えShhを安定的に発現するヒト胚腎臓、HEK293細胞)で刺激されたDaoy細胞中にて、対照化合物で阻害されたGli転写量である。
【0061】
Daoy細胞におけるGli1の阻害を測定するための機能アッセイ
bDNAアッセイ系は、標的リボ核酸(転写物)を増幅させるために、分岐鎖DNA技術を利用する。前記技術は、標的転写物と複合体としてハイブリダイズして、ハイブリダイゼーションシグナルを増幅させる、標的転写物の特異性を決定する3種の合成ハイブリッド短Gli1特異的cDNAプローブ[キャプチャエキステンダ(CE)、ラベルエキステンダ(LE)、及びブロッカ(BL)]を用いる。増幅工程中、化学発光基質を添加することにより、発光を用いる検出が可能になる。
【0062】
アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture collection)(ATCC)から入手したDaoy細胞株は、Shh反応性ヒト神経細胞性腫瘍細胞株であり、線維形成性小脳髄芽腫腫瘍から1985年に確立された、生理学的に関連する腫瘍細胞株である。Gli転写量の体内レベルは、Daoy細胞では低いが、ヒトShhを安定的に過剰発現している細胞(hShhで安定的に形質転換されたHEK293細胞株)から取られた条件培地を用いることにより刺激することができる。
【0063】
0.1nM 非必須アミノ酸及び1mM ピルビン酸ナトリウムを含む10%ウシ胎仔血清(FBS)を加えた最小必須培地(MEM)を含有するDaoy増殖培地中にて、組織培養用T225−フラスコ内で、コンフルエントになるまでDaoy細胞を増殖させる。トリプシンエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いてT−225フラスコから細胞を取り出し、遠心分離し、培地に再懸濁させ、次いで計数する。
【0064】
次いで、Daoy細胞を、50,000細胞/ウェルで、Costar96ウェル透明組織培養プレート内の増殖培地に播種し、37℃、5%二酸化炭素(CO)下で一晩インキュベートする。細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、次いで100μLのShh条件培地(Shh−CM)を添加して、Gli1発現量を刺激する。対照増殖培地(0.1% FBS/DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地))を用いて最大刺激に達するまでShh−CMを希釈する。次いで、Shh−CMで処理したDaoy細胞を、約1μM〜0.1nMの範囲の様々な濃度のヘッジホッグ阻害剤で処理する。37℃、5%CO下で24時間、試験化合物をインキュベートする。
【0065】
Gli1転写物の測定は、製造業者(Panomics,Inc.)により記載されている通り、Quantigene2.0 Gli1アッセイを用いて実施する。プロテイナーゼKを含む希釈溶解混合物(DLM)緩衝液を調製する。化合物と共に24時間インキュベートした後、細胞をPBSで1回洗浄し、180μLのDLMを前記細胞に添加する。溶解緩衝液を含む細胞プレートをシールし、55℃で30〜45分間放置する。次いで、得られる細胞溶解物を5回すりつぶす。製造業者の指示に従ってプローブをDLMで希釈し、次いで20μLのワーキングプローブセットを、80μLのDaoy溶解物と共にbDNAアッセイプレートに添加することにより、Gli1プローブを含むワーキングプローブセットを作製する。プレートをシールし、55℃で一晩インキュベートする。次いで、製造業者の指示に従ってbDNAプレートを処理する。発光を検出するPerkin Elmer Envisionリーダーを用いてプレートを読み取ることにより、シグナルを定量する。発光シグナルは、サンプル中に存在する標的転写物の量に正比例する。
【0066】
機能アッセイから得られた発光シグナルデータを用いて、インビトロアッセイのIC50を算出する。データは、最大対照値(Shh−CMで処理したDaoy細胞)及び最小対照値(Shh−CM、及び抑制濃度の対照化合物である1μMのN−(3−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−4−クロロフェニル)−3,5−ジメトキシベンズアミドで処理したDaoy細胞)に基づいて算出される。4つのパラメータのロジスティック曲線適合を用いて、ActivityBaseソフトウェアプログラムバージョン5.3、式205(Assay Guidance Manual Version 5.0,2008,Eli Lilly and Company及びNIH Chemical Genomics Center)を用いてIC50値を求める。
【0067】
記載されたプロトコルに従うと、本明細書で例証される本発明の化合物は、15nM未満のIC50を示す。例えば、上記アッセイにおいて、実施例14の化合物は、約1.27nMのIC50(標準誤差0.114(n=4))を有し、実施例34の化合物は、約1.22nMのIC50(標準誤差0.293(n=3))を有する。これらの結果は、本発明の化合物がヘッジホッグアンタゴニストであり、したがって、抗癌剤として有用であるという証拠を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

の化合物、又はその薬学的に許容できる塩
(式中、
Xは、C−R又はNであり、
は、水素、フルオロ、又はシアノであり、
は、
【化2】

、ピペリジニル、又はgem−ジ−F−置換シクロへキシルであり、
は、メチル又はトリフルオロメチルであり、
は、ピロリジニル、モルホリニル又はピリジル、アミノ又はジメチルアミノであり、
は、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルであり、
は、水素又はメチルであり、
、R、R、R10、及びR11は、独立して、水素、フルオロ、シアノ、クロロ、メチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、又はメチルスルホニルであるが、但し、R、R、R、R10、及びR11のうちの少なくとも2つは、水素である)。
【請求項2】
XがC−Rである、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項3】
が、
【化3】

である、請求項1又は2に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
がフルオロである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項5】
が、
【化4】

である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
がトリフルオロメチルであり、且つRがメチルである、請求項5に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項7】
がシアノである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項8】
が、
【化5】

である、請求項1〜3、若しくは7のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項9】
がトリフルオロメチルであり、且つR、R10、及びR11が水素である、請求項8に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項10】
薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物。
【請求項11】
哺乳類の脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、又は黒色腫を治療する方法であって、かかる治療を必要としている哺乳類に、有効量の請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項13】
癌の治療に使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。

【公表番号】特表2012−509263(P2012−509263A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536395(P2011−536395)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/063370
【国際公開番号】WO2010/056588
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】