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四重極型質量分析装置
説明

四重極型質量分析装置

【課題】SIM測定において四重極質量フィルタへの印加電圧をステップ状に変化させる際に必要なセトリング時間をできるだけ短くするとともに、質量を切り替える際の過渡状態のときに不所望のイオンが検出器に多量に入射することを防止する。
【解決手段】四重極電極へ印加される直流電圧Uが高周波電圧の振幅Vよりも遅い応答である場合、SIM測定対象の複数の質量が指定されると、制御部は10はそれら質量を高い順に並び替え、最適セトリング時間算出部101は各質量毎に質量差と変化後の質量とからセトリング時間を決める。これにより、質量差が小さくなってセトリング時間を相対的に小さくすることができる。また、質量をステップ状に切り替える際にマチウ方程式による安定領域図上でU/Vが安定領域の外側を通るため、不所望のイオンが四重極質量フィルタを通過しにくくなり検出器のダメージを軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを質量(厳密にはm/z値)に応じて分離する質量分析器として四重極質量フィルタを用いた四重極型質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
四重極型質量分析装置では、四重極質量フィルタを構成する4本のロッド電極に高周波電圧と直流電圧とを重畳した電圧が印加され、その電圧に応じた質量を有するイオンのみが選択的に四重極質量フィルタを通り抜けてイオン検出器に到達する。近年、こうした四重極型質量分析装置とガスクロマトグラフや液体クロマトグラフとを組み合わせたガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)は、様々な分野で広く利用されている。
【0003】
上記四重極型質量分析装置の測定モードとして、スキャン測定と、SIM(選択イオンモニタリング)測定と、がよく知られている(特許文献1など参照)。スキャン測定は、四重極質量フィルタの各ロッド電極へ印加する電圧を走査することによりイオン検出器に到達するイオンの質量を所定質量範囲に亘って走査する、という制御・処理を繰り返すものであり、特に、質量が未知である物質が含まれる試料の定性分析に威力を発揮する。一方、SIM測定は、予めユーザが設定した複数の質量に順番に切り替えながらその質量を持つイオンの質量分析を繰り返し行うものであり、特に、質量が既知である物質の定量分析に威力を発揮する。
【0004】
SIM測定の場合、測定対象質量が測定パラメータとしてオペレータ(分析担当者)により指定されるが、従来の四重極型質量分析装置では、指定された順に測定対象質量が並べられる。そのため、オペレータが測定対象質量を低い順(又は高い順)に指定した場合には、図9(a)に示すようにSIM測定の1サイクルの中で印加電圧は階段状の変化となるが、そうでない場合には、図9(b)に示すようにSIM測定の1サイクルの中で印加電圧は上下する。このような場合、次のような問題がある。
【0005】
或る質量から別の質量に質量を変化させる際には、四重極質量フィルタのロッド電極への印加電圧をステップ状に変化させることになるが、こうした電圧変化に伴い、或る程度の電圧のオーバーシュート(アンダーシュート)やリンギングの発生が避けられない。そのため、電圧変化の後に電圧が適度に安定するまでの待ち時間(セトリング時間)を設け、そのセトリング時間の経過後にその印加電圧に対する実質的なイオンの検出動作を行う必要がある。セトリング時間の期間中には、GCやLCからイオン源に導入された試料成分に対する質量分析は実施されないことになる。したがって、セトリング時間が長いほど、同一質量に対する測定の時間間隔が開いてしまい、時間分解能が低下することになる。また、時間分解能を上げるには、1サイクルの時間を短くすればよいが、そうすると、1つの質量当たりのイオン検出時間が短くなり、感度やSN比の低下を招くことになる。図9(b)に示すように測定対象質量が不規則に設定された場合、平均的にみて電圧の変化が大きくなり、セトリング時間が長くなってしまう。
【0006】
また、或る質量のイオンのみを選択的に通過させるように四重極質量フィルタが設定されている状態から次の質量のイオンのみを選択的に通過させるように印加電圧が変更される過渡状態のときに、多数のイオンが四重極質量フィルタを通過し得る状態になっていると、過剰な量のイオンがイオン検出器に入射しイオン検出器の寿命を短くするおそれがある。しかしながら、従来の四重極型質量分析装置では、測定対象質量を切り替える際の不要なイオンの通過は考慮されていないため、測定対象質量の設定順序や装置自体の特性などによっては過剰な量のイオンがイオン検出器に到達するおそれがある。
【0007】
また、上記のような問題はSIM測定の際のみならず、複数の測定対象質量のSIM測定と所定質量範囲に亘るスキャン測定とを1サイクル中に実行し、これを繰り返すようなSIM/スキャン交互測定モード(例えば特許文献2など参照)においても同様である。
【0008】
【特許文献1】特開平8−129001号公報
【特許文献2】特開2000−195464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、SIM測定やSIM/スキャン交互測定などを行う際に、実質的に質量分析に寄与しないセトリング時間をできるだけ短縮することにより繰り返し周期を短縮して時間分解能を向上させるとともに、測定対象質量の切り替わりの際に不所望のイオンが過剰にイオン検出器に到達することを回避することができる四重極型質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された第1発明は、特定の質量を持つイオンを選択的に通過させる四重極質量フィルタと、該四重極質量フィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を予め設定された複数の質量に順次切り替えるサイクルを繰り返すSIM測定又はMRM測定を実行する四重極型質量分析装置において、
a)電圧可変の直流電圧源及び振幅可変の交流電圧源を含み、前記直流電圧源による直流電圧と前記交流電圧源による交流電圧とを加算した電圧を前記四重極質量フィルタを構成する各電極に印加するものであって、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を離散的に変化させる際の前記直流電圧源の電圧変化の応答が前記交流電圧源の振幅変化の応答よりも遅い特性を有する四重極駆動手段と、
b)SIM測定又はMRM測定を行うべく指定された複数の測定対象質量を、質量の高いものから順に並べ替えて1サイクルのSIM測定又はMRM測定のシーケンスを作成する測定シーケンス作成手段と、
を備えることを特徴としている。
【0011】
また上記課題を解決するために成された第2発明は、特定の質量を持つイオンを選択的に通過させる四重極質量フィルタと、該四重極質量フィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を予め設定された複数の質量に順次切り替えるサイクルを繰り返すSIM測定又はMRM測定を実行する四重極型質量分析装置において、
a)電圧可変の直流電圧源及び振幅可変の交流電圧源を含み、前記直流電圧源による直流電圧と前記交流電圧源による交流電圧とを加算した電圧を前記四重極質量フィルタを構成する各電極に印加するものであって、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を離散的に変化させる際の前記直流電圧源の電圧変化の応答が前記交流電圧源の振幅変化の応答よりも速い特性を有する四重極駆動手段と、
b)SIM測定又はMRM測定を行うべく指定された複数の測定対象質量を、質量の低いものから順に並べ替えて1サイクルのSIM測定又はMRM測定のシーケンスを作成する測定シーケンス作成手段と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
第1発明に係る四重極型質量分析装置では、例えばSIM測定を行う1乃至複数の測定対象質量はユーザにより指定されるが、その測定対象質量の高低の順序に拘わらず、測定シーケンス作成手段は、質量の高いものから順に並べ替えて1サイクルのSIM測定シーケンスを作成する。他方、第2発明に係る四重極型質量分析装置では、指定された測定対象質量の高低の順序に拘わらず、測定シーケンス作成手段は、質量の低いものから順に並べ替えて1サイクルのSIM測定シーケンスを作成する。このように測定対象質量を並べ替えることにより、少なくともSIM測定の1サイクルの中では、或る測定対象質量と次の測定対象質量との質量差を平均的に最小にすることができる。それによって、測定対象質量を切り替える際に四重極駆動手段から四重極質量フィルタを構成する電極に印加する電圧の変化が相対的に小さくなり、電圧が安定するまでのセトリング時間を短縮することができる。
【0013】
また、第1発明に係る四重極型質量分析装置では、四重極駆動手段における直流電圧源の電圧変化の応答が交流電圧源の振幅変化の応答よりも遅い。そのため、測定対象質量が高いものから低いものに切り替わる際に、つまり印加電圧が高いほうから低いほうへ移行する際に、縦軸を直流電圧値、横軸を高周波電圧の振幅値にとった安定領域図で略三角形状の安定領域を逸脱し易くなる。安定領域を逸脱するということは、そのときに四重極質量フィルタを通過しようとしているイオンが途中で発散してしまって通過し得ないことを意味する。したがって、測定対象質量が切り替わる際に不所望のイオンが四重極質量フィルタを通り抜けて検出器に到達することを抑制することができる。
【0014】
逆に、第2発明に係る四重極型質量分析装置では、四重極駆動手段における高流電圧源の振幅変化の応答が直流電圧源の電圧変化の応答よりも遅い。そのため、測定対象質量が低いものから高いものに切り替わる際に、つまり印加電圧が低いほうから高いほうへ移行する際に、上記安定領域図上で安定領域を逸脱し易くなる。したがって、この場合にも、測定対象質量が切り替わる際に不所望のイオンが四重極質量フィルタを通り抜けて検出器に到達することを抑制することができる。
【0015】
なお、第1発明及び第2発明のいずれにおいても、1つのサイクルの最終の測定対象質量から次のサイクルの最初の測定対象質量に移行する際に、サイクル中の測定対象質量の高低の変化とは逆の変化を生じるため、上記安定領域図上で安定領域を通過し易くなる。
【0016】
そこで、このときに不所望のイオンが検出器に到達することが問題となる場合には、第1発明及び第2発明に係る四重極型質量分析装置において好ましくは、
前記四重極質量フィルタの前段に配設したプレフィルタ、又は四重極質量フィルタ若しくはプレフィルタにイオンを導入するイオン光学系の少なくともいずれか一方と、
1サイクルの測定が終了して次のサイクルの測定を開始するまでの期間の少なくとも一部期間で、前記プレフィルタ又は前記イオン光学系に測定対象のイオンの通過を阻止するようにイオンと逆極性の直流電圧を印加する印加電圧制御手段と、
を備える構成とするとよい。
【0017】
これにより、SIM測定やMRM測定において1サイクル中に測定対象質量が順に切り替わる際の切替え時のみならず、1サイクルの終了時から次のサイクルの開始時へ移行する際の大きな質量の変化に対しても、不所望のイオンが検出器に到達することを抑制することができる。
【0018】
また上記課題を解決するために成された第3発明は、特定の質量を持つイオンを選択的に通過させる四重極質量フィルタと、該四重極質量フィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を予め設定された複数の質量に順次切り替えるSIM測定と所定の質量範囲に亘り通過させるイオンの質量を連続的に走査するスキャン測定とを交互に繰り返すSIM/スキャン交互測定を実行する四重極型質量分析装置において、
a)電圧可変の直流電圧源及び振幅可変の交流電圧源を含み、前記直流電圧源による直流電圧と前記交流電圧源による交流電圧とを加算した電圧を前記四重極質量フィルタを構成する各電極に印加するものであって、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を離散的に変化させる際の前記直流電圧源の電圧変化の応答が前記交流電圧源の振幅変化の応答よりも遅い特性を有する四重極駆動手段と、
b)SIM測定を行うべく指定された複数の測定対象質量を、質量の高いものから順に並べ替えるとともに、スキャン測定を行うべく指定された質量範囲に亘り質量増加方向の質量走査を行うようにSIM/スキャン交互測定シーケンスを作成する測定シーケンス作成手段と、
を備えることを特徴としている。
【0019】
また上記課題を解決するために成された第4発明は特定の質量を持つイオンを選択的に通過させる四重極質量フィルタと、該四重極質量フィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を予め設定された複数の質量に順次切り替えるSIM測定と所定の質量範囲に亘り通過させるイオンの質量を連続的に走査するスキャン測定とを交互に繰り返すSIM/スキャン交互測定を実行する四重極型質量分析装置において、
a)電圧可変の直流電圧源及び振幅可変の交流電圧源を含み、前記直流電圧源による直流電圧と前記交流電圧源による交流電圧とを加算した電圧を前記四重極質量フィルタを構成する各電極に印加するものであって、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を離散的に変化させる際の前記直流電圧源の電圧変化の応答が前記交流電圧源の振幅変化の応答よりも速い特性を有する四重極駆動手段と、
b)SIM測定を行うべく指定された複数の測定対象質量を、質量の低いものから順に並べ替えるとともに、スキャン測定を行うべく指定された質量範囲に亘り質量減少方向の質量走査を行うようにSIM/スキャン交互測定シーケンスを作成する測定シーケンス作成手段と、
を備えることを特徴としている。
【0020】
これら発明に係る四重極型質量分析装置においても、第1発明及び第2発明に係る四重極型質量分析装置と同様に、SIM測定の際の測定対象質量が高い順又は低い順に並べ替えられるので、セトリング時間を短くすることができる。また、測定対象質量が切り替わる際に不所望のイオンが四重極質量フィルタを通り抜けることを防止して、過剰なイオンの入射による検出器のダメージを抑制することができる。
【0021】
なお、第3発明及び第4発明においても、スキャン測定からSIM測定へ又はその逆の移行の際に、不所望のイオンが検出器に到達することが問題となる場合には、
前記四重極質量フィルタの前段に配設したプレフィルタ、又は四重極質量フィルタ若しくはプレフィルタにイオンを導入するイオン光学系の少なくともいずれか一方と、
スキャン測定が終了して次のサイクルのSIM測定を開始するまでの期間、又は1サイクルのSIM測定が終了して次のスキャン測定を開始するまでの期間に、質量が高い方向に変化する場合に、その期間の少なくとも一部期間で、前記プレフィルタ又は前記イオン光学系に測定対象のイオンの通過を阻止するようにイオンと逆極性の直流電圧を印加する印加電圧制御手段と、
を備える構成とするとよい。
【発明の効果】
【0022】
第1発明乃至第4発明に係る四重極型質量分析装置によれば、SIM測定などにおいて測定対象質量を変化させる際に、四重極質量フィルタを構成する電極への印加電圧の安定が迅速に行われるので、必要な時間以上の無用な待ち時間を短縮することができる。それにより、例えばSIM測定やMRM測定において各測定対象質量当たりの測定時間が同じであっても、複数の質量の繰り返し周期を短くすることができ、不感時間を短くして、時間分解能を向上させることができる。一方、繰り返し周期を短くしない場合においては、1周期の中で実質的にイオンの検出にあてられる期間が長くなるので、その分、感度やSN比の向上を図ることができる。
【0023】
また、第1発明乃至第4発明に係る四重極型質量分析装置によれば、SIM測定などにおいて測定対象質量を変化させる際に、測定対象質量以外の質量を持つ不所望のイオンが四重極質量フィルタを通り抜けて検出器に入射することを抑制することができる。それによって、検出器の無用なダメージを軽減でき、検出器の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例である四重極型質量分析装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施例による四重極型質量分析装置の要部の構成図である。
【0025】
本実施例の四重極型質量分析装置において、図示しない真空室の内部には、イオン源1、イオン輸送光学系2、四重極質量フィルタ3、及びイオン検出器4が配設されている。四重極質量フィルタ3は、イオン光軸Cを中心とする所定半径の円筒に内接するように配置された4本のロッド電極3a、3b、3c、3dを備える。この4本のロッド電極3a、3b、3c、3dのうち、イオン光軸Cを挟んで対向する2本のロッド電極、つまりロッド電極3aと3c、ロッド電極3bと3dがそれぞれ接続されている。この4本のロッド電極3a、3b、3c、3dに電圧を印加する手段としての四重極駆動手段が、イオン選択用電圧発生部13、バイアス電圧発生部18、バイアス加算部19、20である。イオン選択用電圧発生部13は、直流(DC)電圧発生部16、高周波(RF)電圧発生部15、高周波/直流(RF/DC)加算部17を含む。
【0026】
図示しないが、この四重極型質量分析装置の前段にはGCが接続され、GCのカラムで成分分離された気体状の試料がイオン源1に導入される。但し、四重極型質量分析装置の前段にLCを接続することもでき、その場合には、イオン源1としてエレクトロスプレイイオン源などの大気圧イオン源を用い、このイオン源1を略大気圧雰囲気とし、四重極質量フィルタ3やイオン検出器4を高真空雰囲気中に配置するために多段差動排気系の構成とすればよい。
【0027】
イオン光学系電圧発生部21は、通常、四重極質量フィルタ3の前段のイオン輸送光学系2に直流電圧Vdc1を印加する。但し、後述するように、必要に応じてイオンを誘引するようにイオンと逆極性の直流電圧を印加することも可能である。制御部10は、イオン光学系電圧発生部21、イオン選択用電圧発生部13、バイアス電圧発生部18などの動作を制御するものであり、機能的に、最適セトリング時間算出部101と測定シーケンス決定部102とを含む。また、制御部10にはオペレータが操作する入力部11も接続されている。なお、制御部10や図示しないデータ処理部は、CPU、メモリなどを含んで構成されるコンピュータを中心にその機能が実現される。
【0028】
イオン選択用電圧発生部13にあって、直流電圧発生部16は、制御部10による制御の下に、互いに極性の異なる±Uなる直流電圧を発生する。高周波電圧発生部15は、同様に制御部10の制御の下に、互いに位相が180°異なる±V・cosωtなる高周波電圧を発生する。高周波/直流加算部17は直流電圧±Uと高周波電圧±V・cosωtとを加算、U+V・cosωt、及び、−(U+V・cosωt)なる2系統の電圧を発生する。これが、四重極質量フィルタ3を通過するイオンの質量(厳密にはm/z値)を左右するイオン選択用電圧である。
【0029】
バイアス電圧発生部18は、四重極質量フィルタ3の長軸方向の空間に効率良くイオンが導入されるような直流電場を、四重極質量フィルタ3の手前に形成するために、イオン輸送光学系2に印加される直流電圧Vdc1との間の電圧差が適切になるように各ロッド電極3a〜3dに印加すべき共通の直流バイアス電圧Vdc2を生成する。バイアス加算部19はイオン選択用電圧U+V・cosωtと直流バイアス電圧Vdc2とを加算してVdc2+U+V・cosωtなる電圧をロッド電極3a、3cに印加し、バイアス加算部20はイオン選択用電圧−(U+V・cosωt)と直流バイアス電圧Vdc2とを加算し、Vdc2−(U+V・cosωt)なる電圧をロッド電極3b、3dに印加する。なお、直流バイアス電圧Vdc1、Vdc2は、標準試料などを用いて行われる自動チューニングにより、最適な値が設定されるようにすることができる。
【0030】
一般に、イオン選択用電圧発生部13において、直流電圧発生部16と高周波電圧発生部15とでは、電圧が安定するまでに要する時間に差がある。この差は例えばLC共振回路などを用いたことによる回路構成上、生じる場合もあれば、制御部10から与えられる電圧設定指令の時間遅れなど、制御の制約上、生じる場合もある。いま、ここでは、直流電圧発生部16による電圧変化の応答が高周波電圧発生部15による振幅変化の応答よりも遅い、つまりイオン選択用電圧±(U+V・cosωt)においてUがVよりも遅い場合を例に挙げて説明する。
【0031】
SIM測定モードによる測定を実行する場合、測定に先立って分析担当者は、分析条件として、1サイクル中の複数の測定対象質量と、1サイクルの時間長であるインターバル時間Taとを入力部11から指示する。このときに指示する測定対象質量の高低の順序は任意であり、特に規定はない。また、1サイクル中に実施する測定対象質量の数も基本的には任意である(もちろん、指定数の上限を設けることもできる)。制御部10は指定された測定対象質量を高い順に並び替える。M11<M12<M13<M14<M15である5つの測定対象質量が指定されたものとすると、それらをM15、M14、M13、M12、M11と並べ替える。
【0032】
最適セトリング時間算出部101には、予め図6に示すようなセトリング時間設定テーブルが格納されている。このテーブルは、質量差ΔMと変更後質量とを入力としたときに最適セトリング時間が導出されるものである。同一の変更後質量の場合には、質量差ΔMが小さくなるに従いセトリング時間が短くなる。一方、同一の質量差ΔMの場合には、変更後質量が大きくなるに従いセトリング時間が短くなる。この例では、質量差ΔMが0−99の範囲で変更後質量が100−1090の範囲であるときに、セトリング時間は最短の1[ms]である。反対に、質量差ΔMが300以上の範囲で変更後質量が2−49の範囲であるときに、セトリング時間は最長の5[ms]である。
【0033】
同一の変更後質量の場合、質量差ΔMが小さいほどロッド電極3a〜3dへの印加電圧U、Vの変化も小さいから、アンダーシュート(オーバーシュート)やリンギングもそれだけ小さく、短い時間で静定する。これが、同一変更後質量において質量差ΔMが小さくなるに従いセトリング時間を短くしている理由である。一方、同一の質量差ΔMの場合、変更後質量が大きいほどロッド電極への印加電圧U、Vも高い。そのため、或る電圧からその印加電圧に急に電圧が変化した際に生じるアンダーシュート(オーバーシュート)やリンギングが同程度であったとしても、相対的にその影響は小さくなる。また、イオンの質量が大きいと、それだけ電圧の変動の影響を受けにくいという、イオンの感受性の差もある。そのために、同一質量差ΔMである場合に、変更後質量が大きくなるに従いセトリング時間を短くすることができる。
【0034】
上記のように分析条件が指定されると制御部10において、最適セトリング時間算出部101は、指定された質量毎にその直前に測定する質量との質量差ΔMを計算し、その質量差ΔMと測定しようとする質量とを、上記セトリング時間設定テーブルに照らして対応するセトリング時間を求める。上述したように5つの測定対象質量が高い順に並べ替えられた状態(図2参照)では、質量M14と質量差ΔM=M15−M14とから質量M14の測定実行前のセトリング時間Tset4、質量M13と質量差ΔM=M14−M13とから質量M13の測定実行前のセトリング時間Tset3、質量M12と質量差ΔM=M13−M12とから質量M12の測定実行前のセトリング時間Tset2、質量M11と質量差ΔM=M12−M11とから質量M11の測定実行前のセトリング時間Tset1を決定する。質量M15の測定実行前のセトリング時間Tset5は、その質量M15と質量差ΔM=M15−M11とから決定する。これにより、質量差ΔMが大きいほど長いセトリング時間が設定され、質量が小さいほど長いセトリング時間が設定される。
【0035】
測定シーケンス決定部102は、インターバル時間Ta、上記のセトリング時間Tset1〜Tset5、測定対象質量の総数n(この場合には5)から、各質量に対する測定時間Tdw’を次の式により計算する。
Tdw’[ms]={Ta−(Tset1+Tset2+Tset3+Tset4+Tset5)}/n
そして、このTdw’の整数値を測定時間Tdwに定め、整数化によって生じた剰余をインターバル間調整時間Tadjとする。これにより、図2に示したようなSIM測定を繰り返すための制御シーケンスが決まる。測定対象の質量に応じて、印加電圧U、Vは一義的に決まるから、SIM測定のための電圧制御パターンが決定する。
【0036】
測定の実行開始が指示されると制御部10は、決定した電圧制御パターンに従ってイオン選択用電圧発生部13を制御し、四重極質量フィルタ3の各ロッド電極3a〜3dに印加する電圧(具体的には直流電圧U及び高周波電圧の振幅V)を適宜に変化させる。その結果、図2に示したように、質量の切替えの前後の質量差が大きい場合には小さい場合に比べてセトリング時間は相対的に短く、質量の切替え後の質量が大きい場合には小さい場合に比べてセトリング時間は相対的に短くなる。この場合には、インターバル時間Taは固定であるから、セトリング時間が短くなるとその分だけ測定時間Tdwが長くなる。つまり、1つの質量あたりのイオン検出時間が長くなるので、感度やSN比が向上する。
【0037】
これに対し、インターバル時間Taが固定されておらず、例えば測定時間Tdwが分析条件としてユーザにより設定される場合には、セトリング時間が短くなるとその分だけインターバル時間Taが短くなる。これは1秒間中のインターバル時間Taの繰り返し回数が増加する、或いは、1つの質量(例えばM11)の測定の時間間隔が短くなることを意味するから、時間分解能が向上する。それによって、GCからこの質量分析装置に導入される試料ガス中の目的成分の出現時間が短い、つまりクロマトグラム上のピークがシャープである場合にも、該目的成分のピークを取り逃がすことなく正確な分析が可能となる。
【0038】
また、印加電圧UがVよりも応答が遅いという条件の下で、上述のようにSIM測定の質量を高い順に並べると、質量を切替える過渡状態の際に不所望のイオンが四重極質量フィルタ3を通り抜けることを抑制することができる。このことを、マチウ(Mathieu:マシューと呼ばれることもある)方程式の解の安定条件に基づく安定領域図で説明する。四重極電場においてイオンが安定的に存在し得る(つまり発散しない)安定領域は、図3中に示すような略三角形状となる。SIM測定において、質量がM15→M14→…と順次変化するに伴い安定領域は図3に示すように移動する。したがって、電圧U、Vを図中の線Lで示すように段階的に変化させることで、四重極質量フィルタ3を通過するイオンの質量を上述のように変化させることができる。
【0039】
ところが、直線Lに沿うような変化は電圧比U/Vが一定に維持される場合であり、電圧Uの変化が電圧Vの変化よりも遅れる場合、極端に書くと、図3中に下り階段状に示す矢印のように変化する。即ち、直線Lよりも上側にU/Vの変化の軌跡が形成される。質量が切り替わる過渡状態のときには、U/Vはこの軌跡上に位置し、その大部分が安定領域の外側になる。そのため、質量が切り替わる過渡状態のときに四重極質量フィルタ3に導入されるイオンは不安定になり易く、その途中でロッド電極に衝突したり外側に飛び出したりして散逸し易い。つまり、質量が切り替わる過渡状態のときに四重極質量フィルタ3を不所望に通り抜けて検出器4に到達するイオンを少なくすることができる。印加電圧UがVよりも応答が遅いという条件の下で、仮に、逆に質量の低い順にSIM測定を実行しようとすると、U/Vの変化の軌跡は直線Lよりも下側に位置し、安定領域を通り易くなる。そのため、不所望のイオンが四重極質量フィルタ3を通り抜けやすくなり、検出器4に過剰な量のイオンが入射するおそれがある。
【0040】
図3で明らかなように、1サイクルの中で質量が順次切り替わる際には、U/Vの変化の軌跡は安定領域外を通り易いが、1サイクルの最後の質量M11の測定を終了し次のサイクルの最初の質量M15の測定に移行する際には、U/Vの変化の軌跡は安定領域内を通り易くなる。このときの質量差は大きいため、図3でみると、その際のU/Vの変化の軌跡は非常に長くなるが、実際に掛かる時間は質量差にはそれほど依存しない。したがって、測定対象質量をM11からM15に切り替える過渡状態において四重極質量フィルタ3を通過し得るイオンの量は、例えば測定対象質量をM15からM14に切り替える過渡状態においてU/Vの変化の軌跡が安定領域内を通過するとした場合に四重極質量フィルタ3を通過し得るイオンの量とほぼ同等である。それ故に、電圧Uの変化が電圧Vの変化よりも遅れる場合には、測定対象質量を高い順に並べて順次測定を実行したほうが、相対的に検出器4に到達する不所望のイオンの量を少なくすることができる。
【0041】
なお、上述したように実際的には、指定された測定対象質量の中で最小質量から最大質量に切り替わる際に四重極質量フィルタ3を通り抜けてしまうイオンの影響はそれほど大きくないものの、これを阻止するための電圧制御を加えてもよい。具体的には、制御部10は質量M11の測定が終了してから電圧U、Vをそれぞれ質量M15に対応した値に戻す際に所定期間だけ、イオン輸送光学系2への印加電圧がイオンと逆極性の所定の直流電圧となるようにイオン光学系電圧発生部21を制御するとよい。これにより、四重極質量フィルタ3に入射する手前で、イオンはイオン輸送光学系2により生成される電場に誘引されて軌道を外れるため、四重極質量フィルタ3へのイオンの入射は抑制される。それによって、四重極質量フィルタ3をイオンが通り抜けることも阻止することができる。
【0042】
また、四重極質量フィルタ3がメインフィルタの前にプレフィルタを設けた構成である場合には、プレフィルタにイオンと逆極性の直流電圧を一時的に印加し、メインフィルタにイオンが入射することを阻止するようにしてもよい。
【0043】
上記説明では、直流電圧発生部16による電圧変化の応答が高周波電圧発生部15による振幅変化の応答よりも遅い、つまりイオン選択用電圧±(U+V・cosωt)においてUがVよりも遅いことを条件としていたが、逆に、高周波電圧発生部15による振幅変化の応答が直流電圧発生部16による電圧変化の応答よりも遅い、つまりイオン選択用電圧±(U+V・cosωt)においてVがUよりも遅い場合には、上記説明とは全く逆になる。この場合、図2及び図3に対応する図面は図4及び図5であり、指定された複数の測定対象質量を低い順に並べることにより、上記説明と同様に、セトリング時間の短縮化と検出器4へ入射する不所望イオンの抑制の効果を得ることができる。
【0044】
次に、指定された複数の測定対象質量についてのSIM測定と指定された質量範囲に亘るスキャン測定とを交互に行うSIM/スキャン交互測定モードを実行する場合について説明する。まず、直流電圧発生部16による電圧変化の応答が高周波電圧発生部15による振幅変化の応答よりも遅い場合について考える。
【0045】
SIM/スキャン交互測定モードによる測定を実行する場合、測定に先立って分析担当者は、分析条件として、SIM測定の複数の測定対象質量、スキャン測定の最低質量及び最高質量、SIM/スキャン全体(1サイクル)の時間長であるインターバル時間Ta、スキャン測定のみの時間長であるインターバル時間Tbなどを入力部11から指示する。ここでは、SIM測定の質量として、M11<M12<M13<M14<M15である5つの測定対象質量が指定され、スキャン測定の質量範囲はMs〜Meが指定されたものとする。
【0046】
制御部10はスキャン測定の最低質量をスキャン開始質量、最高質量をスキャン終了質量に設定することで質量が増加する方向のスキャンを設定し、さらにSIM測定について指定された測定対象質量を高い順に並び替える。これは上述したSIM測定の単独モードの場合と同じである。それから、最適セトリング時間算出部101がSIM/スキャン全体のインターバル時間Taからスキャン測定のみのインターバル時間Tbを差し引いてSIM測定に与えられたインターバル時間を求めるとともに、質量が変化する前後の質量差と変化後の質量とから、それぞれセトリング時間を求める。セトリング時間の求め方は上述した通りである。セトリング時間が決まったならば、測定シーケンス決定部102が、SIM測定に与えられたインターバル時間、各セトリング時間、測定対象質量の総数から、各質量に対する測定時間Tdwを計算する。そうして最終的に、図7に示すような1サイクルのSIM/スキャン交互測定のシーケンスを決定し、これに従って、制御部10がイオン選択用電圧発生部13を制御し、四重極質量フィルタ3を構成するロッド電極3a〜3dに電圧を印加する。
【0047】
このときにも、SIM測定の各測定対象質量におけるセトリング時間を短くすることができ、また質量の切替え時に不所望のイオンが検出器4に入射することを抑制することができる点は上述の通りである。さらにまた、SIM測定の最後の質量からスキャン開始質量に移行する際、及びその逆に、スキャン終了質量からSIM測定の最初の質量に移行する際に、質量差が相対的に小さくなるため、その点でもセトリング時間を短くすることができる。
【0048】
続いて、高周波電圧発生部15による振幅変化が直流電圧発生部16による電圧変化の応答よりも遅い場合について考える。この場合には、測定に先立って上述したような分析条件が設定されると、制御部10はスキャン測定の最高質量をスキャン開始質量、最低質量をスキャン終了質量に設定することで質量が減少する方向のスキャンを設定し、さらにSIM測定について指定された測定対象質量を低い順に並び替える。その後、各測定対象質量のセトリング時間を求め、図8に示すような測定シーケンスを決定すればよい。得られる効果は、上述の通りである。
【0049】
なお、高周波電圧発生部15による振幅変化と直流電圧発生部16による電圧変化とのいずれの応答が遅いのかは、一般的に、装置の構成に依存する。したがって、通常、装置を設計する又は製造する段階で、SIM測定モードでは図2又は図4の測定シーケンスのいずれが適当であるのか、或いは、SIM/スキャン交互測定モードでは図7と図8の測定シーケンスのいずれが適当であるのか、が一義的に決まる。
【0050】
また、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜に変形、追加、修正を行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例である四重極型質量分析装置の要部の構成図。
【図2】本実施例の四重極型質量分析装置において電圧Uが電圧Vより遅い応答である場合のSIM測定のシーケンスの一例を示す図。
【図3】図2の場合のU、Vの変化を示す安定領域図。
【図4】本実施例の四重極型質量分析装置において電圧Vが電圧Uより遅い応答である場合のSIM測定のシーケンスの一例を示す図。
【図5】図4の場合のU、Vの変化を示す安定領域図。
【図6】本実施例の四重極型質量分析装置においてセトリング時間設定テーブルの一例を示す図。
【図7】本実施例の四重極型質量分析装置において電圧Uが電圧Vより遅い応答である場合のSIM/スキャン交互測定のシーケンスの一例を示す図。
【図8】本実施例の四重極型質量分析装置において電圧Vが電圧Uより遅い応答である場合のSIM/スキャン交互測定のシーケンスの一例を示す図。
【図9】SIM測定における測定シーケンスの一例を示す図。
【符号の説明】
【0052】
1…イオン源
2…イオン輸送光学系
3…四重極質量フィルタ
3a〜3d…ロッド電極
4…イオン検出器
10…制御部
101…最適セトリング時間算出部
102…測定シーケンス決定部
11…入力部
13…イオン選択用電圧発生部
15…高周波電圧発生部
16…直流電圧発生部
17…高周波/直流加算部
18…バイアス電圧発生部
19、20…バイアス加算部
21…イオン光学系電圧発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の質量を持つイオンを選択的に通過させる四重極質量フィルタと、該四重極質量フィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を予め設定された複数の質量に順次切り替えるサイクルを繰り返すSIM測定又はMRM測定を実行する四重極型質量分析装置において、
a)電圧可変の直流電圧源及び振幅可変の交流電圧源を含み、前記直流電圧源による直流電圧と前記交流電圧源による交流電圧とを加算した電圧を前記四重極質量フィルタを構成する各電極に印加するものであって、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を離散的に変化させる際の前記直流電圧源の電圧変化の応答が前記交流電圧源の振幅変化の応答よりも遅い特性を有する四重極駆動手段と、
b)SIM測定又はMRM測定を行うべく指定された複数の測定対象質量を、質量の高いものから順に並べ替えて1サイクルのSIM測定又はMRM測定のシーケンスを作成する測定シーケンス作成手段と、
を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
【請求項2】
特定の質量を持つイオンを選択的に通過させる四重極質量フィルタと、該四重極質量フィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を予め設定された複数の質量に順次切り替えるサイクルを繰り返すSIM測定又はMRM測定を実行する四重極型質量分析装置において、
a)電圧可変の直流電圧源及び振幅可変の交流電圧源を含み、前記直流電圧源による直流電圧と前記交流電圧源による交流電圧とを加算した電圧を前記四重極質量フィルタを構成する各電極に印加するものであって、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を離散的に変化させる際の前記直流電圧源の電圧変化の応答が前記交流電圧源の振幅変化の応答よりも速い特性を有する四重極駆動手段と、
b)SIM測定又はMRM測定を行うべく指定された複数の測定対象質量を、質量の低いものから順に並べ替えて1サイクルのSIM測定又はMRM測定のシーケンスを作成する測定シーケンス作成手段と、
を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の四重極型質量分析装置であって、
前記四重極質量フィルタの前段に配設したプレフィルタ、又は四重極質量フィルタ若しくはプレフィルタにイオンを導入するイオン光学系の少なくともいずれか一方と、
1サイクルの測定が終了して次のサイクルの測定を開始するまでの期間の少なくとも一部期間で、前記プレフィルタ又は前記イオン光学系に測定対象のイオンの通過を阻止するようにイオンと逆極性の直流電圧を印加する印加電圧制御手段と、
を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
【請求項4】
特定の質量を持つイオンを選択的に通過させる四重極質量フィルタと、該四重極質量フィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を予め設定された複数の質量に順次切り替えるSIM測定と所定の質量範囲に亘り通過させるイオンの質量を連続的に走査するスキャン測定とを交互に繰り返すSIM/スキャン交互測定を実行する四重極型質量分析装置において、
a)電圧可変の直流電圧源及び振幅可変の交流電圧源を含み、前記直流電圧源による直流電圧と前記交流電圧源による交流電圧とを加算した電圧を前記四重極質量フィルタを構成する各電極に印加するものであって、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を離散的に変化させる際の前記直流電圧源の電圧変化の応答が前記交流電圧源の振幅変化の応答よりも遅い特性を有する四重極駆動手段と、
b)SIM測定を行うべく指定された複数の測定対象質量を、質量の高いものから順に並べ替えるとともに、スキャン測定を行うべく指定された質量範囲に亘り質量増加方向の質量走査を行うようにSIM/スキャン交互測定シーケンスを作成する測定シーケンス作成手段と、
を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
【請求項5】
特定の質量を持つイオンを選択的に通過させる四重極質量フィルタと、該四重極質量フィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を予め設定された複数の質量に順次切り替えるSIM測定と所定の質量範囲に亘り通過させるイオンの質量を連続的に走査するスキャン測定とを交互に繰り返すSIM/スキャン交互測定を実行する四重極型質量分析装置において、
a)電圧可変の直流電圧源及び振幅可変の交流電圧源を含み、前記直流電圧源による直流電圧と前記交流電圧源による交流電圧とを加算した電圧を前記四重極質量フィルタを構成する各電極に印加するものであって、前記四重極質量フィルタを通過するイオンの質量を離散的に変化させる際の前記直流電圧源の電圧変化の応答が前記交流電圧源の振幅変化の応答よりも速い特性を有する四重極駆動手段と、
b)SIM測定を行うべく指定された複数の測定対象質量を、質量の低いものから順に並べ替えるとともに、スキャン測定を行うべく指定された質量範囲に亘り質量減少方向の質量走査を行うようにSIM/スキャン交互測定シーケンスを作成する測定シーケンス作成手段と、
を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の四重極型質量分析装置であって、
前記四重極質量フィルタの前段に配設したプレフィルタ、又は四重極質量フィルタ若しくはプレフィルタにイオンを導入するイオン光学系の少なくともいずれか一方と、
スキャン測定が終了して次のサイクルのSIM測定を開始するまでの期間、又は1サイクルのSIM測定が終了して次のスキャン測定を開始するまでの期間に、質量が高い方向に変化する場合に、その期間の少なくとも一部期間で、前記プレフィルタ又は前記イオン光学系に測定対象のイオンの通過を阻止するようにイオンと逆極性の直流電圧を印加する印加電圧制御手段と、
を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−92630(P2010−92630A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259155(P2008−259155)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】