説明

回折格子装置及び表示装置

【課題】小型でかつ半導体素子の設計レベルで光学的なアライメントが可能な回折格子装置および表示装置を提供することを可能にする。
【解決手段】表面に空洞部22が形成された半導体基板20と、半導体基板に形成され、光源からの光を伝搬する導波路25と、空洞部上に形成されるとともに導波路から伝搬される光を回折する格子周期が可変な回折格子を有し、格子周期を変えることにより回折光の方向を変化させるフォーカスグレーティングカプラ30と、一端が半導体基板と連結されフォーカスグレーティングカプラを支持する支持部40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子装置及び表示装置に関し、具体的にはピッチを可変とした回折格子装置及びこの回折格子装置を利用した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用した電子デバイス、センサ、アクチュエータなどの高機能デバイスが急速に発展している。表示装置やスキャナなどの光学機器へMEMS技術を応用したものとしては、MEMSデバイスによりピクセル毎に入射光を変調する技術がある。この場合、MEMSデバイスは、光波に対してON/OFF制御を行うスイッチングデバイスの役割を果たしている。
【0003】
光波を変調する機構としては、デジタル・マイクロ・ミラーデバイス(以下、DMD(Digital micro Mirror Device)ともいう)に代表されるミラータイプと、回折格子ライト・バルブ(以下、GLV(Grating Light Valve)ともいう)に代表される回折格子タイプの2種類に分類される。
【0004】
DMDは、例えば15μm〜25μm程度のサイズの反射鏡を前後に10度程度傾斜可能とし、光軸の反射方向を可変としたものである。しかし、DMDは反射鏡を傾斜させる機構が必要となるため、鏡面を支持するヒンジ部の構造が複雑で製造コストが高く、製造歩留まり、耐久性、高速な応答性などの点で解決すべき課題も多い。
【0005】
GLVとしては、リボン状の回折素子をシリコン基板上に一列に並べた構造を有するものが開示されている(非特許文献1)。これら回折素子は、固定された回折素子と、静電力で引き込むことで下方に湾曲可能とした回折素子と、が交互に設けられている。バイアスを印加しない状態では、全ての回折素子は同一平面上にあり、回折光は生じない。一方、バイアスを印加すると可動する回折素子が下方に湾曲し、固定された回折素子との間で凹凸面が形成される。この凹凸面により光が回折され、回折光が生ずる。
【0006】
一方、光学自由度を高めるために、回折格子を基板水平方向に駆動することによって、駆動用電極を回折格子の下部に設置することを必要としない構造が提案されている(非特許文献2)。
【0007】
このような回折格子を利用したMEMSデバイスは、小さな機械的変位で大きな光学変調がかけられ、また高速な応答が可能であるという利点を持つ。また、機械的な信頼性も高い。このため、ディプレイデバイス、プリンタのスキャナ、光通信用ゲイン・イコライザーなどに応用されている。
【非特許文献1】D. Bloom,"The Grating Light Valve:Revolutionizing Display Technology," Projection Displays III Symposium, SPIE Proceedings Volume 3013, February 1997
【非特許文献2】K.Takahashi, H.Fujita, H.Toshiyoshi, K.Suzuki, H.Funaki, K.Itaya, "Tunable light grating integrated with high-voltage driver IC for image projection display," Proc. IEEE Micro Electro Mechanical Systems, pp. 147-150, 2007, Kobe, Japan
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のDMD、GLV、回折格子、またはこれらのいずれかを用いた表示装置では、機械的に光波をスイッチングする素子に対し、空間的に離間された位置に光源を配置する必要があった。このため、バックライトを近接した背面に有する液晶表示装置等に対し、占有するシステムのサイズが大きくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、小型でかつ半導体素子の設計レベルで光学的なアライメントが可能な回折格子装置および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様による回折格子装置は、表面に空洞部が形成された半導体基板と、前記半導体基板に形成され、光源からの光を伝搬する導波路と、前記空洞部上に形成されるとともに前記導波路から伝搬される光を回折する格子周期が可変な回折格子を有し、前記格子周期を変えることにより回折光の方向を変化させるフォーカスグレーティングカプラと、一端が前記半導体基板と連結され前記フォーカスグレーティングカプラを支持する支持部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様による表示装置は、第1の態様による回折格子装置と、前記フォーカスグレーティングカプラのそれぞれをタイミング駆動する駆動部と、前記フォーカスグレーティングカプラそれぞれからの回折光が投影される投影部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型でかつ半導体素子の設計レベルで光学的なアライメントが可能な回折格子装置および表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による回折格子装置を図1に示す。本実施形態の回折格子装置1は、光源10と、表面に空洞(凹部)22が設けられた半導体基板20と、半導体基板20に形成された導波路25と、凹部22の上方に配置されたフォーカスグレーティングカプラ(以下、FGC(Focusing Grating Coupler)ともいう)30と、FGC30を凹部22の上方で中空に浮いた状態で支持する支持部40と、半導体基板20に設けられた配線50とを備えている。
【0014】
導波路25は光源10に接続されて光源10からの光波をFGC30に伝達する。この導波路25とFGC30は光学的に接続されている。FGC30は、回折格子(グレーティング)32と、可動電極34と、固定電極36とを備えている。固定電極36に配線50を通して外部から電圧を印加することにより、FGC30の可動電極34との間に静電力が作用し、回折格子32の空間的周期(間隔)が変化する。すなわち、本実施形態においては、可動電極34および固定電極36によって回折格子32の間隔(周期)を電気的に可変にすることができる。グレーティング32の空間的周期(間隔)がある条件を満たすとき、導波モード−放射モード間の結合が生じる。このようなグレーティングは導波光の励振や外部の取り出しのための入出結合器として用いられるので、FGCと呼ばれる。
【0015】
以下、本実施形態に用いられる、自由空間に集光するFGCの概念について説明する。なお、以下の説明文は「光集積回路、西原浩、春名正光、栖原敏明著、オーム社(1985)」より引用したものである。FGCに導波光が入射した場合の導波モード−放射モード結合の例を図2(a)、2(b)に示す。2次元導波光路の導波面(xz面)に沿って広がり、
【数1】

で表される。Δεはグレーティング32を取り付けたことによる比誘電率分布の変化を表している。グレーティング32がある場合、この構造内をz方向に伝搬定数β=Nk(>0)をもつ導波光が伝搬するとき、この波に付随してz方向伝搬定数
【数2】

をもつ空間高調波が生じる。ここで、Nは導波層中を伝搬するモードの等価屈折率、Kは格子ベクトルとよばれるグレーティング面に垂直なベクトルで、Λはグレーティングの基本周期である。基板、導波層、上部クラッド層の屈折率を各々、n、n、nとし、空間高調波のうち|β|=nkまたは|β|=nkを満たす次数qが存在する場合は、この高調波の空気側または基板側にそれぞれ、
【数3】

で決まる伝搬角θ(c)q、θ(s)qの放射となる。このときFGCを伝搬する波は放射により導波路外部に漏洩する。グレーティングはz方向には長いがx方向には薄いので、結合する波動間はz方向の位相整合(3)式のみが満たされればよく、伝搬ベクトルダイアグラムは図2(b)に示すようになる。この結合で生じる放射ビームは(3)式を成立させる伝搬角θ(c)q、θ(s)qの実数値で決まる。(3)式において、n<n<N<nであることを考慮すれば、放射はq≦−1の次数に限られ、ある次数のみは基板側のみに放射する場合と、基板側と空気側の両方に放射する場合があることがわかる。図2(a)、(b)は複数の次数で3本以上のビームが生じる例で多ビーム結合とよばれる。基本次数(q=−1)の放射が生じる場合について、K/k、Nと式(3)で決まる放射ビーム数は図3で表される。FGCに導波光が入射した場合、上述のような出力結合が生じる。このグレーティングのパターンを変調することにより種々の波面変換を導波モード−放射モード結合と同時に実行することも可能になる。これを応用して、導波光を自由空間の点に集光するFGCを実現することができる。
【0016】
次に、本実施形態の回折格子装置において、光源10と、光導波路25が設けられた半導体基板20とを光学的に結合した構成を図4に模式的に示す。ここで、光源10には一般的なストライプ型半導体レーザチップを例としている。ストライプ型半導体レーザチップ10は、光屈折特性を示す活性層10bに対し、その両側を活性層10bよりも低屈折率のクラッド層10a、10cで覆っている。赤色の半導体レーザを考えた場合、活性層にAlGaAs等の材料を用いることができる。半導体レーザ10と、光導波路25を有した半導体基板20との光学的な結合については、各々の端面で結合される。光導波路自身も、導波層(図示せず)の両側に低屈折材料層(図示せず)で覆われており、導波層が高い屈折率分布を持つ。光源10の活性層10bと、導波路25とを、軸ズレが起きないように結合することで、光波を伝搬させることができる。界面での光波エネルギーの減衰を避けるために、ARコート等の光学薄膜を施しても良い。
【0017】
図1および図4では、半導体レーザチップ10が半導体基板20から別位置に配置されているように記されているが、図5(a)に示すように、半導体基板20に予め凹部20aを設け、この凹部20aに半導体レーザチップ10を組み込んでも良い。また、図5(b)に示すように、光源に面発光型半導体レーザ10Aを用いることで、光源を半導体基板20の表面に配置することも可能である。この場合、面発光型半導体レーザ10Aの発光層下部の半導体基板20と接合する領域においては、光エネルギーの減衰を防ぐため、光導波路25の導波層に対して、垂直状の導波路を設ける必要がある。光源に面発光型レーザ10Aを用いれば、光波をアレイ化して照射することも可能になり、より多くの光線を低体積で扱うことが可能となる利点もある。このような構成とすることにより、従来、3次元空間の高さ方向(z軸方向)に位置していた光源を基板と同一平面状に設置することが可能になり、省スペース化を図れることができる。なお、光源10は、フォトカプラを介して半導体基板20と光学的に接続されていてもよい。
【0018】
次に、FGC30の静電駆動方式について図6を参照して説明する。周囲から分離され、支持部40にて連結されたFGC30には駆動用の可動電極34が設けられている。この可動電極34は櫛歯形状である。一方、FGC30に設けられた櫛歯状の可動電極34と対向するように基板20には櫛歯形状の固定電極36が設けられている。それぞれの電極36、34からは電気的に分離された電気配線50a、50bが引き出されている。ここで、電極36,34間に電気配線50a、50bを介して電源電圧60を印加することで、FGC30は固定電極36側に静電気力によって引き寄せられる。FGC30はバネとなる支持部40により支持されていることから、前述のように引き寄せられることでFGC30に設けられた回折格子32の格子周期が変化する。(1)式で示した、格子周期Λが変化することで、空間伝搬定数も変化し、法線方向のベクトルもまた変化することになる。つまり、静電引力によって任意の格子周期に変化させることで、空間に伝搬する回折光の方向をシフトすることができる。このように、本実施形態によれば、静電気力を発生していない初期状態のFGCと、静電引力によって格子周期が変化したFGCとで、回折光の方向性を任意の周期あるいは角度にスイッチングすることが可能になる。
【0019】
図7は、図6に示す格子周期可変型FGC30を2次元配列した回折格子装置を示す。この装置の動作メカニズムは上述の通りで、アレイ化することで表示装置として機能させることができる。各FGC30は制御回路70によって制御され、任意の位置のFGC30を任意のタイミングで制御回路70によって静電駆動することで、回折光の回折角を可変できる。例えば、FGC30のアレイ数を640×480素子とし、一様に配列し、スイッチングすることでVGAクラスの表示が可能となる。つまり、格子周期を可変することで、表示すべき方向に取り出す光波100をON光とし、捨てる光波をOFF光としてスイッチする。ここで、ON光/OFF光は、静電気的に格子周期を変化する前のもの、または変化したものの何れを用いてもよい。
【0020】
図8(a)、8(b)はFGC30の一具体例の動作を示した図である。図8(a)によれば、FGC30はスプリング(図示せず)に支持された4本のアンカー90によって基板に接続されている。また、FGC30の一端には光波を導入するための導波路が接続される。FGC30を構成する回折格子32は、それぞれ互いに細いバネ92で連結している。一方、FGC30の他端には、櫛歯状の可動電極34が備えられ、基板に形成された固定櫛歯状の固定電極36と対向配置されている。櫛歯状の可動電極34と櫛歯状の固定電極36との間でバイアス電圧を印加することで、櫛歯状の可動電極34が櫛歯状の固定電極36の方へ静電気力により引き寄せられる。ここで、回折格子32は、細いバネで互いを連結しているため、あたかも蛇腹のように全体が伸縮し格子周期を変える(図8(b))。この回折格子32の周期の変動は、印加する電圧量により制御することが可能である。図2および図3で示したように、格子周期が変化することで、回折光の放射角度を可変にできる。
【0021】
次に、本実施形態による回折格子装置の製造方法を図9(a)乃至図9(e)に示す。光導波路25が形成される半導体基板20にシリコン基板を用いた場合(図9(a))、屈折率が比較的高い(n=3.42(λ=1μmの波長の光に対して))ため、光導波路25の導波層を形成する前にバッファ層25aを形成することが望ましい。バッファ層25aに適応する材料の一例としてSiO(n=1.5程度)が挙げられる。バッファ層25aを例えばシリコンのような半導体基板上20にスパッタ法あるいはCVD法によって形成する(図9(b))。続いて、このバッファ層25a上に導波層25bを形成する(図9(b))。導波層25bにはバッファ層25aよりも屈折率が若干高い材料を用いる。例えば、Siであれば、屈折率nが2程度であるため、上述した構成では有用な材料となる。このSiからなる導波層25bを同様に、スパッタあるいはCVDによって形成する。Si以外にもPMMAやポリマー、フォトレジストといった有機材料を用いることも考えられる。ここで、これらのバッファ層25aや導波層25bを所望の形状にする必要がある。
【0022】
次に、この導波層25b上の一部分にFGC30を形成する(図9(c))。FGC30はパターニングしたフォトレジストによって形成するか、あるいはこのフォトレジストをマスクとして導波層材料を一部分エッチングしたものによって形成する。続いて、図9(d)に示すように、FGC30が形成された領域を他の領域から分離するように導波層25bバッファ層25aに開口26を形成し、この開口26の底部に半導体基板20の表面を露出させる。その後、ウェットエッチング等を用いて半導体基板20に空洞22を設ける(図9(e))。図中では、この空洞化プロセスが異方的に行われているが、特に、これに限定されることはなく、ドライプロセスによって等方的に行ってもよい。このようにして、光導波路を作製後、半導体レーザチップ10とカップリングさせ、回折格子装置1が完成する。
【0023】
前述したように、基板にシリコンのような高屈折材料を用いた場合、バッファ層の形成が望まれる。しかし、基板にSOI基板を用い、埋め込み酸化膜(以下、BOXともいう)をバッファ層として活用することもできる。半導体基板として、SOI基板を用いて形成した光導波路の構成例を図10に示す。支持基板21a、埋め込み酸化膜21b、およびSOI層21cを有するSOI基板21のSOI層21cに溝を形成し、この溝を導波層材料で埋め込むことにより、導波層25bを形成する。SOI基板を用いた場合の製造方法を図11(a)乃至図12(d)に示す。図11(a)、図11(c)、図12(a)、図12(c)は、図10に示す切断線A−A’で切断した断面図であり、図11(b)、図11(d)、図12(b)、図12(d)は、図10に示す切断線B−B’で切断した断面図である。
【0024】
まず、支持基板21a、埋め込み酸化膜21a、SOI層21cを有するSOI基板21を用意する。続いて、SOI層21cに、導波路領域となる開口23をリソグラフィー技術によって形成する(図11(a)、(b))。この開口23の底部に埋め込み酸化膜21bが露出している。すなわち、埋め込み酸化膜21bはエッチストップ層として用いられる。続いて、開口23に屈折率が埋め込み酸化膜よりも高い例えばSiNからなる膜24を、CVD法等を用いて埋め込む(図11(c)、(d))。その後、SiN膜24の一部分に、パターニングしたフォトレジストレジストあるいは導波層材料を若干エッチングしたものでFGC30を形成する。次に、FGC30が形成された領域を他の領域から分離する溝26を形成する(図12(a)、(b))。この溝26の底部には支持基板21aの上面が露出する。その後、ウェットエッチング等を用いて支持基板21aに空洞22を設ける(図12(c)、(d))。
【0025】
なお、SOI基板を用いた場合でも、SOI層上にバッファ層、導波層を形成して、FGCおよびこれを基板から分離した構造の回折格子装置を形成することができる。これを図13(a)乃至図14(d)を参照して説明する。図13(a)、図13(c)、図14(a)、図14(c)は、第1方向の断面図(例えば、図10に示す切断線A−A’で切断した断面図)であり、図13(b)、図13(d)、図14(b)、図14(d)は、第1方向と直交する第2方向の断面図(例えば、図10に示す切断線B−B’で切断した断面図)である。
【0026】
まず、支持基板21a、埋め込み酸化膜21a、SOI層21cを有するSOI基板21を用意する(図13(a)、(b))。続いて、SOI層21c上にバッファ層25a、導波層25bを形成する。その後、導波層25b上にFGC30を形成する(図13(c)、(d))。次に、FGC30が形成された領域を他の領域から分離する溝26を形成する(図14(a)、(b))。この溝26の底部には支持基板21aの上面が露出する。その後、ウェットエッチング等を用いて支持基板21aに空洞22を設ける(図14(c)、(d))。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、小型でかつ半導体素子の設計レベルで光学的なアライメントが可能な回折格子装置を提供することができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による表示装置を図15に示す。本実施形態の表示装置は、図7に示すように、半導体基板20に、2次元的に配列された第1実施形態の格子周期可変のFGC30を有する回折格子装置1と、FGC30によって回折された光波160の放射先に設けられたスクリーン等の投影部150と、を備えている。なお、図15においては、光源は図示していないが、回折格子装置1には含まれている。このような構成とすることにより、基板20から放射された光波を可視化することができる。投影された光スポット170が2次元化され、各々が表示装置としてのピクセルを形成する。ここで、スクリーン150上に投影したい光波(表示ピクセル)170については、光線の放射角をスクリーン150へ向ける。一方、非表示のピクセルについては、スクリーン外の角度へ放射し除外する。上記のように、スクリーン150に対する表示/非表示のピクセルに対応するように、FGC30の格子周期を変化させ回折光のスイッチングを行う。基板20に形成するFGC30のアレイは、表示したい画像の解像度によってその数値は定義される。上記では、2次元画像を形成するピクセル相当するFGCアレイと同数のものを2次元的に用意した。
【0029】
一方で、ライン走査を適応し、1次元光線を2次元化してもよい。図14はこれを説明した模式図である。基板上に1次元的に配置されたFGC30からの放射光は、ガルバノミラー140に投影される。図示されるように、1次元的に配列されたFGC30からの光線は、ガルバノミラー140上で高さ方向に1次元で映し出される。ガルバノミラー140から反射された回折光はスクリーン150へと投影される。ここで、ガルバノミラー140を水平スキャニングすることで、スクリーン150上では、回折光が2次元的に走査される。ガルバノミラー140の駆動周波数は例えば60Hzである。スクリーン150上における、各ピクセルの表示/非表示の手法については、図13で説明した第2実施形態の表示装置と同様である。上述のとおり、FGC30が1次元あるいは2次元に配置された光変調素子基板において、FGC30から放射された光波をスクリーン上に投影することで表示装置として作用させることが可能になる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、小型でかつ半導体素子の設計レベルで光学的なアライメントが可能な表示装置を提供することができる。
【0031】
このような回折格子装置および表示装置は、2次元或いは3次元の空間方向に占有するスペースの軽減を大幅にはかることができ、システムの小型化をはかることが可能になる。
【0032】
FGCに導入する光波の光源としては、化合物半導体を用いたレーザダイオード(LD)や垂直共振器表面発光半導体レーザ(VCSEL)を使用するほか、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)に特異な発光特性を持つ光源を用いることでカラー表示が可能となる。
【0033】
一方、シリコンナノクリスタルによる発光や、シリコン基板上に発光性化合物を積層することで、FGCを有した半導体基板中に光源を形成でき、より小型化されたシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態による回折格子装置を示す斜視図。
【図2】FGCの概念を説明する図。
【図3】基本次数の放射が生じる場合について、K/k、Nと、放射ビーム数との関係を示す図。
【図4】光源と半導体基板との結合を説明する図。
【図5】光源としての半導体レーザと、半導体基板との結合の例を示す斜視図。
【図6】第1実施形態による回折格子装置の駆動方法を説明する斜視図。
【図7】FGCが2次元的に配列された、第1実施形態の変形例による回折格子装置を示す斜視図。
【図8】第1実施形態による回折格子装置の動作を説明する図。
【図9】第1実施形態による回折格子装置の第1の製造方法を説明する断面図。
【図10】第1実施形態による回折格子装置の第2の製造方法を説明する斜視図。
【図11】第1実施形態による回折格子装置の第2の製造方法を説明する断面図。
【図12】第1実施形態による回折格子装置の第2の製造方法を説明する断面図。
【図13】第1実施形態による回折格子装置の第3の製造方法を説明する断面図。
【図14】第1実施形態による回折格子装置の第3の製造方法を説明する断面図。
【図15】本発明の第2実施形態による表示装置を示す模式図。
【図16】第2実施形態の変形例による表示装置を示す模式図。
【符号の説明】
【0035】
1 回折格子装置
10 光源
10A 面発光型半導体レーザチップ
10a クラッド層
10b 活性層
10c クラッド層
20 半導体基板
20a 凹部
21 SOI基板
21a 支持基板
21b 埋め込み酸化膜
21c SOI層
22 空洞部(凹部)
24 導波層
25 導波路
25a バッファ層
25b 導波層
30 FGC
32 回折格子
34 可動電極
36 固定電極
40 支持部
50 電気配線
60 電源電圧
70 制御回路
90 アンカー
92 スプリング
140 ガルバノミラー
150 スクリーン
160 光波
170 投影光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に空洞部が形成された半導体基板と、
前記半導体基板に形成され、光源からの光を伝搬する導波路と、
前記空洞部上に形成されるとともに前記導波路から伝搬される光を回折する格子周期が可変な回折格子を有し、前記格子周期を変えることにより回折光の方向を変化させるフォーカスグレーティングカプラと、
一端が前記半導体基板と連結され前記フォーカスグレーティングカプラを支持する支持部と、
を備えていることを特徴とする回折格子装置。
【請求項2】
前記光源は、前記半導体基板の導波路と光学的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の回折格子装置。
【請求項3】
前記フォーカスグレーティングカプラは、第1電極と、前記半導体基板に固定された第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に発生する静電気力によって前記格子周期が変化することを特徴とする請求項1または2記載の回折格子装置。
【請求項4】
前記半導体基板に搭載され、前記回折格子の格子周期を変化させるための制御回路を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の回折格子装置。
【請求項5】
前記フォーカスグレーティングカプラは、前記格子周期を変化させることで、前記導波路から伝搬された光波を任意のタイミングで、任意の角度に放射することが可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回折格子装置。
【請求項6】
前記フォーカスグレーティングカプラが前記半導体基板上に1次元的または2次元的に複数個配列されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の回折格子装置。
【請求項7】
請求項6記載の回折格子装置と、前記フォーカスグレーティングカプラのそれぞれをタイミング駆動する駆動部と、前記フォーカスグレーティングカプラそれぞれからの回折光が投影される投影部と、を備えていることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記回折格子装置は、前記フォーカスグレーティングカプラが前記半導体基板上に1次元的に複数個配列されており、前記フォーカスグレーティングカプラそれぞれからの回折光を前記投影部に反射するガルバノミラーを更に備えていることを特徴とする請求項7記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−230055(P2009−230055A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78399(P2008−78399)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】