説明

回路基板およびそれを用いた自動車用発電機

【課題】エンジンルーム搭載の厳しい環境下においても、金属ベースプリント配線基板と回路構成部品のはんだあるいは導電性接着剤接合部に発生する熱ひずみを低減し、導通不良を防止可能な金属ベースプリント配線基板を提供する。
【解決手段】金属板20表面上に絶縁層21と、さらに銅配線22と、回路構成部品23の接合部となるランド24以外を覆ったレジスト層27と、を有し、前記銅配線22の幅Aはランド24の最小幅Bの1/2倍以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高信頼性が必要とされる、エンジンルーム内搭載の車載用電子制御モジュール用の回路基板に関する。また、それを用いた自動車用発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用電子制御モジュールは、車室内のスペース確保やハーネスの削減などの目的から、その搭載場所が車室内からエンジンルーム内、さらにはエンジン直付けへと変遷している。このため、車載用電子制御モジュールでは、大きい温度変化やエンジンによる振動などの厳しい環境に耐えることができる、高い信頼性が求められている。また、近年、電子制御モジュールは小型化,高機能化,高性能化に伴い、電子部品自体の発熱量が増大している。電子部品の表面温度は増大すると寿命が極端に短くなり、最悪の場合電子機器の動作不良を招く恐れがあるため、車載用電子制御モジュールでは、消費電力の大きい電子部品を実装する場合、配線基板として高い放熱性を有する金属ベースプリント配線基板を使用している。これを用いる車載用電子制御モジュールとして、好適な車載用電子制御モジュールには、自動車用発電機に装着される電圧制御用ICレギュレータがある。
【0003】
しかし、金属ベースプリント配線基板を構成する金属(例えばアルミニウム)は、温度変化時の熱膨張率が大きく、セラミックから構成されるチップ部品(例えばチップ抵抗)などの熱膨張率が小さい電子部品を実装した場合、基板と電子部品の電気的接続部(例えばはんだ)に熱ひずみが発生し、これが大きいと導通不良となる可能性がある。
【0004】
従来、銅配線幅を規定する手段としては、それぞれ特許文献1,2記載の「回路基板およびその回路基板を用いた電子機器」、「銅回路配線基板およびその製造方法」がある。
但し、本発明のように、放熱性に優れ、且つ、エンジンルーム内のように温度変化が厳しい環境下においても高信頼性を有する金属ベースプリント配線基板については開示されていない。また、特許文献1,2では、ランドに架橋するように接続される回路構成部品の信頼性を確保することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−303540号公報
【特許文献2】特開2010−171170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を鑑み、本発明の目的は、温度変化が大きく、かつ消費電力の大きい回路構成部品を実装する車載用電子制御モジュールにおいて、金属ベースプリント基板上のランドを架橋するように接続される回路構成部品と、金属ベースプリント配線基板との熱膨張率差によって、はんだあるいは導電性接着剤に発生する熱ひずみを低減し、はんだあるいは導電性接着剤の完全破断を防止可能な回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、金属板と、前記金属板に絶縁層を介して設けられた銅配線と、前記銅配線に接続される回路部品とを備え、前記銅配線は接続部と導線部とを有し、前記回路部品は複数の端子を有し、前記接続部が前記複数の端子とはんだにより各々接続された回路基板において、前記導線部の幅が前記接続部の幅の1/2以下であることを特徴とする回路基板により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明実施形態の金属ベースプリント配線基板を示している。
【図2】ランド最小幅に対する銅配線幅と、はんだあるいは導電性接着剤に発生するする熱ひずみとの関係を示すグラフである。
【図3】銅配線幅に対する銅配線の長さと、はんだあるいは導電性接着剤に発生するする熱ひずみとの関係を示すグラフである。
【図4】自動車用発電機の充電系統を示す制御回路図である。
【図5】自動車用発電機の充電系統を示す制御回路図である。
【図6】電圧制御用ICレギュレータの実装構造図である。
【図7】自動車用発電機の縦断面図である。
【図8】電圧制御用ICレギュレータとICケース52の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の金属ベースプリント配線基板の実施例を説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であって、本発明の金属ベースプリント配線基板はここに示す実施形態に限定される趣旨ではない。
【0010】
まず、図1は本発明実施形態の金属ベースプリント配線基板を示した図である。図1に示すように、本発明の金属ベースプリント配線基板は、アルミニウム板20表面上にエポキシ系樹脂から構成される絶縁層21と、さらにその表面に銅配線22と、前記銅配線22の内、回路構成部品23が装着されるランド24以外を樹脂コートで覆うことによってなるレジスト層27が形成されている。
【0011】
アルミニウム板20として、本実施形態ではアルミニウム(熱伝導率が約237W/m・K)を使用しているが、熱伝導率が高いものであれば良く、例えば熱伝導率が80W/m・K以上である、鉄材(熱伝導率が約83W/m・K),銅材(熱伝導率が約401W/m・K),金材(熱伝導率が約317W/m・K),銀材(熱伝導率が約429W/m・K),ニッケル材(熱伝導率が約90W/m・K),マグネシウム材(熱伝導率が約156W/m・K)、これらから成る合金材でも適用可能である。
【0012】
絶縁層21は、本実施形態ではエポキシ系樹脂を使用しているが、ポリイミド系樹脂,スチレン系樹脂、その他の絶縁材でも良い。
【0013】
銅配線22には回路構成部品23の接合部となるランド24が形成されており、ランド24を架橋するように回路構成部品23が搭載され、はんだあるいは導電性接着剤26によって接合する。
【0014】
回路構成部品23は、例えばセラミックによって構成されるチップ抵抗,チップコンデンサ,チップバリスタ,水晶振動子が用いられているが、この限りではない。
【0015】
はんだあるいは導電性接着剤26はSn/Ag系のはんだを用いているが、他の組成のはんだやAgペーストなどの導電性接着剤を用いる構成としても構わない。
【0016】
図2,図3は本発明の効果を説明する図である。
【0017】
まず、図2はランド最小幅Bに対する銅配線幅Aが異なる金属ベースプリント配線基板のモデルを3つ作成し、ランド最小幅Bに対する銅配線幅Aと、はんだあるいは導電性接着剤26に発生する熱ひずみとの関係を求めたグラフである。
【0018】
各モデルについて、銅配線幅Aをランド最小幅Bに対して、モデルIは1/3、モデルIIは1/2、モデルIIIは1比率で形成したものである。
【0019】
図2より、ランド最小幅Bに対して銅配線幅Aが1/2倍以下ではんだあるいは導電性接着剤に発生する熱ひずみが急減していることが分かる。従って、銅配線幅Aはランド最小幅Bの1/2倍以下であることが望ましい。
【0020】
図3は、銅配線幅に対する銅配線の長さが異なる金属ベースプリント配線基板のモデルを3つ作成し、銅配線幅に対する銅配線の長さと、はんだあるいは導電性接着剤に発生する熱ひずみとの関係を求めたグラフである。
【0021】
各モデルについて、銅配線の長さCを銅配線幅Aに対して、モデルIVは1/2、モデルVは2、モデルVIは5/2の比率で形成したものである。
【0022】
図3より、銅配線幅Aに対して銅配線の長さCが2倍以上ではんだあるいは導電性接着剤に発生する熱ひずみが急減していることが分かる。従って、銅配線の長さCは銅配線幅の2倍以上であることが望ましい。
【0023】
これらより、本発明の金属ベースプリント配線基板をエンジンルーム搭載の車載用電子制御モジュールに用いることにより、大きい温度変化の繰り返し熱負荷によって、金属ベースプリント配線基板と回路構成部品の接合部であるはんだあるいは導電性接着剤に発生する熱ひずみを低減し、クラック進展速度を制御することが可能である。
【0024】
次に、本発明の金属ベースプリント配線基板を車両用交流発電機の制御基板として用いた実施例を説明する。図4,図5は自動車用発電機の充電系統を示す制御回路図である。
図6は電圧制御用ICレギュレータの実装構造図である。図7はこの自動車用発電機の縦断面図であり、図8は電圧制御用ICレギュレータとICケース52の構成図である。
【0025】
まず構成部品を説明する。11は電気子巻線、12は全波整流用ダイオードであり、121,122,123,124,125,126のパワーツエナーダイオードで構成される。13は界磁巻線である。30は電圧制御用ICレギュレータであり、パワーMOSトランジスタ141とフライホイールダイオード142と電圧制御部1450から構成されている1チップICレギュレータ14を有する。なお、この1チップICレギュレータ14は誘電体分離型半導体で構成されているため、パワー素子部と制御部を1つの半導体基板上に実装している。
【0026】
19は雑音防止用フィルムコンデンサー、60は車両側の制御装置であり、16はバッテリ、18は車両側の電気負荷であり、17は電気負荷18の負荷スイッチである。
【0027】
以下本構成部品での動作を説明する。
【0028】
界磁巻線13は、図7に図示した回転子13aに装着され、エンジンの回転と同期して回転し回転磁界を発生する。
【0029】
界磁巻線13に並列に接続されたフライホイールダイオード142はスイッチングノイズを吸収するために接続されている。前記回転子と空隙を持って対向する図6に図示した固定鉄心11aに巻装された電機子巻線11は、界磁巻線13のつくる回転磁界の大きさに応じて交流波形をもった電圧を出力する。該交流出力は三相全波整流器12を構成する整流用パワーツエナーダイオード121,122,123,124,125,126で全波整流される。
【0030】
界磁巻線13に流れる電流は電圧制御用ICレギュレータ30で制御することで、発電機出力電圧を一定電圧に制御する。
【0031】
電圧制御用ICレギュレータ30は1チップICレギュレータ14を有し、1チップICレギュレータ14の回路構成を図4に示す。1チップICレギュレータ14は電圧制御部1450を有し、電圧制御を行うパワーMOSトランジスタ141をコントロールする。
【0032】
電圧制御用ICレギュレータ30によって電圧制御された出力は、出力端子“B”を介してバッテリ16が充電される。また、同時に、三相全波整流器12の出力はこの出力端子“B”から、負荷スイッチ17を介して、ランプ等の電気負荷18に供給される。
【0033】
車両側の制御部であるECU部60は車両の状態を検出し、最適な調整電圧指令値をCOM端子から1チップICレギュレータ14に伝え、調整電圧値が変更される。
【0034】
1チップICレギュレータ14は、パワーMOSトランジスタ141をコントロールして、界磁巻線13への界磁電流通流率を変更することで、回転磁界の大きさを変更し、その結果、調整電圧値は車両側の制御部であるECU部60が指令した調整電圧値に制御される。
【0035】
本実施例では、電圧制御用ICレギュレータ30を図6のような実装構造としている。
金属ベースプリント配線基板40は、アルミニウム板(なお、本実施例ではアルミニウム材を使用しているが、鉄材,銅材,金材,銀材,ニッケル材,マグネシウム材、これらから成る合金材でも適用可能である。)表面上に、エポキシ系樹脂から構成される絶縁層(実施例ではエポキシ系樹脂を使用したが、ポリイミド系樹脂,スチレン系樹脂、その他絶縁材などでも良い。)と、さらにその表面に回路を形成するための銅配線とランドとを形成し、ランド以外の表面を樹脂コートで覆ったレジスト層とで形成されている。金属ベースプリント配線基板40上に、チップ抵抗23やチップコンデンサ23(実施例ではチップ抵抗,チップコンデンサを用いたが、チップバリスタ,水晶振動子などでも良い。)と、パワー素子部と小信号系である制御部を誘電体分離型半導体で1つの半導体基板上に実装した1チップICレギュレータ14の樹脂封止パッケージ147とをはんだあるいは導電性接着剤で接合する。樹脂封止パッケージ147は、1チップICレギュレータ14を銅板から構成されるダイパッド146上にはんだあるいは導電性接着剤によって接続し、リードフレームが樹脂の長辺両側から突出、かつダイパッド146の一部が露出するよう線膨張係数約11ppm/℃前後の樹脂で封止したHSOP(Small Outline Package with Heat-sink)を採用している。本実施例ではHSOP(Small Outline Package with Heat-sink)を採用したが、HQFP(Quad Flat Package with Heat-sink),HLQFP(Low-profile Quad Flat Package with Heat-sin)でも良い。金属ベースプリント配線基板40は放熱プレート50に熱伝導性接着剤51を介して接続されている。また、放熱プレートには、放熱性向上のため放熱フィン53が形成されている。本実装構造を採用することで、1チップICレギュレータ14の発生する熱を安価なダイパッド14経由、金属ベースプリント配線基板40,熱伝導性接着剤51,放熱プレート50,放熱フィン53に伝達されるため、1チップICレギュレータ14から放熱フィン53までの熱抵抗を低減することが可能となる。
【0036】
金属ベースプリント配線基板40は温度変化に対する信頼性を確保するために、チップ抵抗23やチップコンデンサ28が搭載されるランド最小幅Bに対して銅配線幅Aを1/2倍以下とする。あるいは、銅配線Aに対して銅配線長さCを2倍以上としている。これにより、金属ベースプリント配線基板40の金属板であり、線膨張係数約23ppm/℃のアルミニウム板20と、線膨張係数約7ppm/℃のチップ抵抗23や線膨張係数約9ppm/℃のチップコンデンサ23との熱膨張率差によってはんだあるいは導電性接着剤26に発生する熱ひずみを低減し、エンジンルーム内のように温度変化の厳しい環境下においても導通不良に至るクラック発生を防止することができる。
【0037】
これらより、本実施例の実装構造である図6が放熱性に優れ且つ、エンジンルーム内のように温度変化の激しい環境下においても信頼性が高い、最適な実装構造であることが判る。
【符号の説明】
【0038】
20 アルミニウム板
21 絶縁層
22 銅配線
24 ランド
26 はんだあるいは導電性接着剤
27 レジスト層
A 銅配線幅
B ランド最小幅
C 銅配線長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
前記金属板に絶縁層を介して設けられた銅配線と、
前記銅配線に接続される回路部品とを備え、
前記銅配線は接続部と導線部とを有し、
前記回路部品は複数の端子を有し、
前記接続部が前記複数の端子とはんだにより各々接続された
回路基板において、
前記導線部の幅が前記接続部の幅の1/2以下であることを特徴とする回路基板
【請求項2】
請求項1において、
前記銅配線の長さは、前記接続部の幅の2倍以上であることを特徴とする回路基板。
【請求項3】
請求項1において、
前記金属板は、アルミニウム材、あるいはアルミニウムからなる合金材であることを特徴とする回路基板。
【請求項4】
請求項1から3いずれか記載の回路基板を、前記回路部品として自動車用発電機の電圧制御用ICレギュレータが設置される制御回路基板として備えたことを特徴とする自動車用発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−8886(P2013−8886A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141339(P2011−141339)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】