説明

回路基板の設計方法、回路基板の製造方法、回路基板、サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブ

【課題】2つの導体層を絶縁層を介して積層した積層構造を有する回路基板を、反りの少ないものとすることができる回路基板の設計方法を提供する。
【解決手段】金属支持基板1と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層2と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層3と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層4と、上記第二絶縁層上に形成された第二導体層5と、上記第二導体層上に形成された第三絶縁層6とを有する回路基板の設計方法であって、上記金属支持基板の線熱膨張係数に対して、上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を、特定の関係式を満足する条件決定工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの導体層を絶縁層を介して積層した積層構造を有する回路基板を、反りの少ないものとすることができる回路基板の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、HDD(ハードディスクドライブ)に用いられる回路基板として、磁気ヘッドスライダ等の素子を実装するサスペンション用基板が知られている。サスペンション用基板の一例として、図8に示すように、金属支持基板101と、金属支持基板101上に形成された絶縁層(ベース絶縁層)102と、絶縁層102上に形成された導体層(配線層)103と、導体層103上に形成された絶縁層(カバー層)104とを有するものが知られている。
【0003】
一方、このような回路基板においては、金属支持基板の線熱膨張係数と、絶縁層の線熱膨張係数との差により反りが生じるという問題がある。この問題に対して、特許文献1においては、金属支持基板の線熱膨張係数と同等の絶縁層用樹脂を用いることにより、反りを小さくすることが開示されている。
このように、これまでの回路基板の分野においては、絶縁層の線熱膨張係数を金属支持基板の熱膨張係数と同様の値とすることにより反りの低減を図る方法が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、サスペンション用基板の他の例として、2つの導体層を絶縁層を介して積層した積層構造(以下、単にスタックト構造とする場合がある。)を有するものの場合では、従来の方法では、反りを解消することができない場合があるといった問題があった。
具体的には、図9に示すように、金属支持基板101と、金属支持基板101上に形成された絶縁層(ベース絶縁層)102と、絶縁層102上に形成された導体層(配線層)103aと、導体層103a上に形成された絶縁層(中間絶縁層)105と、絶縁層105上に形成された導体層(配線層)103bと、導体層103b上に形成された絶縁層(カバー層)104とを有するもの(例えば特許文献2、3)では、各絶縁層の線熱膨張係数を金属支持基板の線熱膨張係数と同様のものとした場合であっても、反りを解消することができない場合があるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−248142号公報
【特許文献2】特開平9−22570号公報
【特許文献3】特開平10−3632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、2つの導体層を絶縁層を介して積層した積層構造を有する回路基板を、反りの少ないものとすることができる回路基板の設計方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、従来の回路基板における反りの低減方法を用いた場合、つまり、各絶縁層の線熱膨張係数を金属支持基板に近づけた場合に、回路基板が金属支持基板側に反る傾向があるといった新たな課題が存在することが分かった。
そして、一般的な設計方法で用いられるように、各絶縁層の線熱膨張係数を金属支持基板の線熱膨張係数と同様の値とするのではなく、上記絶縁層のうちの少なくとも一つの線熱膨張係数を金属支持基板のものより大きくし、かつ、各絶縁層の厚みと金属支持基板の線熱膨張係数からの差との積の合計が0より大きい所定の範囲内とすることにより、上述のようなスタックト構造の回路基板を反りの少ないものとすることができることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、上記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板の設計方法であって、上記金属支持基板の線熱膨張係数に対して、上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を、下記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内となるように決定する条件決定工程を有することを特徴とする回路基板の設計方法を提供する。
【0009】
t1×(CTE1−CTEbase)+t2×(CTE2−CTEbase)+t3×(CTE3−CTEbase)=X (A)
【0010】
(式(A)中のt1、t2およびt3はそれぞれ上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚み(μm)を示す。CTE1、CTE2およびCTE3は、それぞれ上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。CTEbaseは上記金属支持基板の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。)
【0011】
本発明によれば、上記式(A)で示されるXが24〜64(μm・ppm/℃)の範囲内となるように各絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を決定することにより、反りの少ないスタックト構造の回路基板を安定的に設計することができる。
【0012】
本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、上記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板の製造方法であって、上述の回路基板の設計方法を用いて回路基板を設計する設計工程を有することを特徴とする回路基板の製造方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、上記回路基板の設計方法を用いる設計工程を有することから、反りの少ないスタックト構造の回路基板を安定的に得ることができる。
【0014】
本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、上記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板であって、下記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内を満たすものであることを特徴とする回路基板を提供する。
【0015】
t1×(CTE1−CTEbase)+t2×(CTE2−CTEbase)+t3×(CTE3−CTEbase)=X (A)
【0016】
(式(A)中のt1、t2およびt3はそれぞれ上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚み(μm)を示す。CTE1、CTE2およびCTE3は、それぞれ上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。CTEbaseは上記金属支持基板の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。)
【0017】
本発明によれば、上記各絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数が上記式(A)を満たすことにより、反りの少ないものとすることができる。
【0018】
本発明は、上述した回路基板であることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0019】
本発明によれば、上述した回路基板を用いることで、反りの小さいサスペンション用基板とすることができる。
【0020】
本発明は、上述したサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンションを提供する。
【0021】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、反りの小さいサスペンションとすることができる。
【0022】
本発明は、上述したサスペンションと、上記サスペンションの素子実装領域に実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0023】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、反りの小さい素子付サスペンションとすることができる。
【0024】
本発明は、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0025】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、2つの導体層を絶縁層を介して積層した積層構造を有する回路基板を、反りの少ないものとすることができる回路基板の設計方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における回路基板の一例を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図5】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図6】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図7】実施例で得られた回路基板の寸法を示す概略断面図である。
【図8】従来の回路基板(サスペンション用基板)の一例を示す概略断面図である。
【図9】従来の回路基板(サスペンション用基板)の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の回路基板の設計方法、回路基板の製造方法、回路基板、サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブについて詳細に説明する。
【0029】
A.回路基板の設計方法
まず、本発明の回路基板の設計方法について説明する。
本発明の回路基板の設計方法は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、上記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板の設計方法であって、上記金属支持基板の線熱膨張係数に対して、上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を、下記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内となるように決定する条件決定工程を有することを特徴とするものである。
【0030】
t1×(CTE1−CTEbase)+t2×(CTE2−CTEbase)+t3×(CTE3−CTEbase)=X (A)
【0031】
(式(A)中のt1、t2およびt3はそれぞれ上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚み(μm)を示す。CTE1、CTE2およびCTE3は、それぞれ上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。CTEbaseは上記金属支持基板の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。)
【0032】
このような本発明により設計される回路基板を図を参照して説明する。図1は、本発明の回路基板の一例を示す概略平面図である。より具体的には、サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。図1に示される回路基板20は、ヘッド部側に形成され、素子を実装する素子実装領域11と、テイル部側に形成され、外部回路基板との接続を行う外部回路基板接続領域12と、素子実装領域11および外部回路基板接続領域12の間を電気的に接続する配線層13とを有するものである。なお、図1において、説明の容易のため、第三絶縁層(カバー層)の記載は省略している。
【0033】
また、図2は、図1のA−A断面図である。図2における回路基板は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された第一絶縁層2と、第一絶縁層2上に形成された第一導体層3と、第一導体層3を覆うように形成された第二絶縁層4と、第二絶縁層4上に形成された第二導体層5と、第二導体層5を覆うように形成された第三絶縁層6とを有する。さらに、この例においては、第一絶縁層2の線熱膨張係数が金属支持基板1の線熱膨張係数よりも大きく、各絶縁層の厚みと各絶縁層および金属支持基板の線熱膨張係数の差との積の合計が24〜64の範囲内であるものである。
【0034】
本発明によれば、上記条件決定工程が、金属支持基板の線熱膨張係数よりも値の大きい線熱膨張係数を有する絶縁層を含み、かつ、各絶縁層の厚みと金属支持基板の線熱膨張係数からの差との積の合計が0より大きい所定の範囲内とすることによりスタックト構造の回路基板を、金属支持基板側への反りの少ないものとすることができる。
また、上記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内となるように設計するものであることにより、上記回路基板38mm当たりの反り量を±2mm以下といった、極めて少ないものとすることができる。
このため、上記条件決定工程を有することにより、反りの少ないスタックト構造の回路基板を安定的に設計することができる。
【0035】
なお、上記式(A)に示すような絶縁層の厚みと絶縁層および金属支持基板の線熱膨張係数の差との積が反り量と相関がある理由については明らかではないが、線熱膨張係数が同値であり単位断面当たりの収縮力が同じであっても、厚みが厚い程、全断面の収縮力は全体として大きくなるからであると推察される。このため、回路基板全体を支持する役割を持つ金属支持基板に対して、上記式(A)で示されるXが所定の範囲内とすることにより、回路全体としての反り量を推し量ることが可能になると考えられる。
【0036】
本発明の回路基板の設計方法は、上記条件決定工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明の回路基板の設計方法に含まれる各工程について説明する。
【0037】
1.条件決定工程
本発明における条件決定工程は、前記金属支持基板の線熱膨張係数に対して、上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を、上記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内となるように決定する工程である。
【0038】
本工程における線熱膨張係数とは、温度の変化に対する、材料の長さの変化率をいう。さらに、「材料の長さ」とは、材料が各温度となった際の材料の長さをいい、「材料の長さの変化率」とは、各材料の温度が変化した際の、長さの変化(変化後の材料の長さから変化前の材料の長さの差)を、基準の温度における材料の全長で除した値をいう。一般に基準の温度は23℃である。
【0039】
本工程における絶縁層の線熱膨張係数の測定方法としては、まず、支持基板を準備し、支持基板上に測定用絶縁層を作製した後、上記測定用絶縁層を剥離する方法や、上記支持基材上に測定用絶縁層を作製した後、上記支持基板をエッチングで除去し、上記測定用絶縁層を得る方法がある。次いで、得られた測定用絶縁層を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/分、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(CTE)とする。
【0040】
本工程における各絶縁層の厚みとは、各絶縁層の塗工量基準の厚みをいうものである。
ここで、塗工量基準の厚みとは、凹凸のない平坦な面上に絶縁層形成用塗工液を塗工し、絶縁層を形成した場合に、所定の厚みの絶縁層となる塗工量の絶縁層形成用塗工液を用いて形成されたものを示すものである。
より具体的には、塗工量基準の厚みが5μmの第二絶縁層とは、第一導体層が形成されていない平坦な第一絶縁層上に塗工した場合に5μmの厚みの第二絶縁層とすることができる塗工量の絶縁層形成用塗工液を用いて形成された第二絶縁層をいうものである。なお、このように塗工液を用いて形成する場合には、通常、塗工液は重力の影響で高い場所から低い場所に流れ落ちるため、第一導体層直上の第二絶縁層の厚みは、上記塗工量基準の厚みよりも小さくなる。
また、絶縁層の形成方法としてドライフィルム状の絶縁層を積層する方法を用いる場合には、積層前のドライフィルム絶縁層の厚みをいうものである。
本工程において、各絶縁層の厚みを塗工量基準とする理由は、実際に塗工した絶縁層の厚みが基板反り量に影響を与えるからである。例えば、第一導体層直上の第二絶縁層厚が重力の影響で薄くなったとしても、その流れ落ちた塗工液により第一導体層が無い部分の第二絶縁層厚が厚くなる。そして、第二絶縁層は第一導体層よりも広い範囲で形成されるため、その両方を含んだ範囲になる。つまり、第二絶縁層が形成された範囲での第二絶縁層の厚みを平均すると塗工量基準の厚みに近くなるためである。
【0041】
本工程におけるXの範囲は、24〜64の範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも、34〜54の範囲内であることが好ましく、特に44付近であることが好ましい。Xがこのような範囲内であることにより、上記回路基板38mm当たりの反り量を極めて少ないものとすることができるからである。
【0042】
本工程における決定方法としては、上記Xを所定の範囲内とするものであれば特に限定されるものではない。通常、各絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数の値を上記式(A)に代入し、得られるXの値を所定の範囲内となるように、各厚み等の値を調整する方法が用いられる。
また、各絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数の全てを上記式(A)を用いて決定するものであっても良いが、各絶縁層の厚みを予め決定した後にそれぞれの線熱膨張係数を決定する方法、各絶縁層の線熱膨張係数を予め決定した後にそれぞれの厚みを決定する方法や、いずれかの絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を予め決定した後に、残りの絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を決定するものであっても良い。
【0043】
2.回路基板の設計方法
本発明の回路基板の設計方法は、上記条件決定工程を少なくとも含むものであるが、必要に応じてその他の工程を含むものであって良い。
このようなその他の工程としては、上記決定工程後に、それにより得られた線熱膨張係数の絶縁層を形成可能な材料を選択する選択工程や、上記選択工程後に、選択された材料により形成される絶縁層が他のパラメータを満たすことができるかを評価する評価工程や、金属支持基板や導体層等の回路基板を構成する絶縁層以外の部材を選択する部材選択工程等を挙げることができる。
【0044】
本発明における選択工程は、上記決定工程後に、それにより得られた線熱膨張係数の絶縁層を形成可能な絶縁層形成用材料を選択する工程である。
このような絶縁層形成用材料の選択方法としては、回路基板とした際に所望の線熱膨張係数とすることができるものを選択できる方法であれば特に限定されるものではなく、線熱膨張係数が既知の材料から選択する方法であっても良く、複数の材料を混合したり、絶縁層形成用材料を構成するモノマー成分等を変更して調整する方法を用いるものであっても良い。
なお、本工程により選択される絶縁層形成用材料としては、具体的には、後述する「3.回路基板」の項に記載のものを用いることができる。
【0045】
本発明における評価工程は、上記選択工程後に、選択された材料により形成される絶縁層が他のパラメータを満たすことができるかを評価する工程である。
ここで、評価するパラメータとしては、所望の性能の回路基板を得られるものであれば特に限定されるものではなく、回路基板の種類等に応じて選択されるものである。具体的には、絶縁性、線湿度膨張係数、耐熱性や回路基板形成時の工程通過性等を挙げることができる。
【0046】
本発明における部材選択工程は、金属支持基板や導体層等の回路基板を構成する絶縁層以外の部材を選択する工程である。このような部材選択工程のうち、金属支持基板の選択については、通常、上記条件決定工程前に行われる。また、導体層の選択については、上記条件決定工程の前であっても後であっても良い。
なお、本工程により選択される各部材については、後述する「3.回路基板」の項に記載のものを用いることができる。
【0047】
3.回路基板
本発明により設計される回路基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、上記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有するものである。また、上記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内を満たすものである。
以下、このような回路基板の各構成について詳細に説明する。
【0048】
(1)絶縁層
本発明における絶縁層(第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層)は、上記Xが所定の範囲内となるように、その厚みおよび線熱膨張係数が決定されるものである。
ここで、第一絶縁層は、金属支持基板上に形成されるものであり、第二絶縁層は、第一導体層上に形成されるものであり、第三絶縁層は、第二導体層上に形成されるものである。
【0049】
本発明における絶縁層の線熱膨張係数としては、上記式(A)で示されるXを所定の範囲内とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、金属支持基板の線熱膨張係数に応じて適宜設定されるものである。
本発明においては、各絶縁層の線熱膨張係数が4.3ppm/℃〜30.3ppm/℃の版囲内であることが好ましく、なかでも、9.3ppm/℃〜25.3ppm/℃の範囲内であることが好ましく、特に12.3ppm/℃〜22.3ppm/℃の範囲内であることが好ましい。絶縁層の線熱膨張係数が上述の範囲内であることにより、上記Xを満たすものとすることが容易だからである。
【0050】
本発明における絶縁層の線湿度膨張係数としては、上記回路基板を反りの少ないものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、小さいことが好ましい。湿度変化による反りを小さくすることができるからである。本発明においては、例えば20ppm/%RH以下であることが好ましく、12ppm/%RH以下であることがより好ましい。
【0051】
ここで、線湿度膨張係数の測定方法について下記に記載する。
まず、温度を25℃に固定し、湿度を15%RH、20%RH、50%RHと変化させる。その後、湿度20%RHと50%RHの伸び量から湿度1%あたりの伸びを計算し、線湿度膨張係数(CHE)とする。なお、計算式は次式の通りである。
線湿度膨張係数=湿度1%あたりの伸び/初期長×10[ppm/%Rh]
=湿度20%RH〜50%RHの伸び量/30/初期長×10[ppm/%Rh]
1)サンプル形態
サンプルサイズ 幅5mm×長さ15mm(掴み+5mm)
厚み 7〜8μm程度
初期状態 十分に乾燥した状態
2)測定条件
装置 RIGAKU製 S−TMA(湿度発生装置付きTMA)
加重 5g
温度 25℃
3)測定方法
1.サンプルの環境が湿度15%RHで安定し、サンプル長が一定となり変化しなく
なってから、0.5h以上保持
2.次にサンプルの環境が湿度20%RHで安定し、サンプル長が一定となり変化し
なくなってから、0.5h以上保持(サンプル長を測定)
3.引き続いてサンプルの環境が湿度50%RHで安定し、サンプル長が一定となり
変化しなくなってから、0.5h以上保持(サンプル長を測定)
4.湿度20%時と湿度50%時の値の差を計算し、1/30して湿度1%あたりの
伸び量を出す
5.湿度1%あたりの伸び量を初期長(15mm)で割り、変化率とする
【0052】
本発明における絶縁層の体積抵抗率としては、上記金属支持基板および導体層の間、導体層間の短絡を防止することができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、上記絶縁層の体積抵抗率としては、1.0×1012Ω・m以上であることが好ましく、1.0×1013Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×1014Ω・m以上であることがさらに好ましい。上記体積抵抗率が上述の範囲内であることにより、安定的に短絡を防止できるからである。
なお、体積抵抗率は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0053】
本発明における絶縁層の厚みは、所望の絶縁性を発揮することができ、かつ、上記式(A)で示されるXを所定の範囲内とすることができるものであれば特に限定されるものではない。
具体的には、本発明において、第一絶縁層の厚さとしては、金属支持基板および第一導体層の間に所望の絶縁性を発揮できる程度の厚さであれば特に限定されるものではないが、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、第二絶縁層の厚さは、第一導体層および第二導体層の間に所望の絶縁性を発揮できる程度の厚さであれば特に限定されるものではない。第一導体層の頂面から第二導体層の底面までの第二絶縁層の厚さは、例えば3μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲内であることがより好ましく、7μm〜15μmの範囲内であることがさらに好ましい。
さらに、第三絶縁層の厚さは、第二導体層の劣化(腐食)を防止できる程度の厚さであることが好ましく、例えば2μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、2μm〜15μmの範囲内であることがより好ましく、2μm〜10μmの範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本発明における絶縁層の厚みは、塗工量基準の厚みをいうものである。
【0054】
本発明に用いられる絶縁層の材料は、各絶縁層に求められる線熱膨張係数や絶縁性等を達成できるものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。絶縁性、耐熱性および耐薬品性に優れているからである。また、絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。
【0055】
本発明においては、なかでも、ポリイミド樹脂(単に、ポリイミドと称する場合がある)が、下記の式(1)の構造を含有するものであることが好ましい。線熱膨張係数の調整が容易であり、特に、低い線熱膨張係数のものを容易に調製できるからである。
【0056】
【化1】

【0057】
(Rは4価の有機基、Rは2価の有機基、RおよびRは、単一構造でも良く、2種以上の組み合わせでも良い。nは1以上の自然数)
【0058】
式(1)において、一般に、Rは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造である。
本発明に用いられるポリイミドに適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、
【0059】
2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0060】
本発明に用いられるポリイミドの耐熱性、線熱膨張係数などの観点から好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が挙げられる。
【0061】
なかでも、ポリイミドの線熱膨張係数を金属支持基板や導体層と同等程度かそれより低いものとする観点からは、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。なかでも、線熱膨張係数と入手の容易性やコストとのバランスの観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物が特に好ましい。
また、吸湿膨張を低減させる観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
つまり、低い線熱膨張係数と低い線湿度膨張係数との観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0062】
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物を用いると、ポリイミドの線湿度膨張係数が低下する。しかし、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミドの前駆体は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある。
【0063】
酸二無水物として脂環骨格を有する場合、線吸湿膨張係数が小さくなり、紫外線や可視光領域の光に対する透明性が向上するというメリットがある。このことから、高感度の感光性樹脂組成物となる。一方で、ポリイミドとした後の耐熱性や絶縁性が芳香族ポリイミドと比較して劣る傾向にある。
【0064】
芳香族のテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミドとなるというメリットがある。従って、上記ポリイミドにおいて、上記式(1)中のRのうち33モル%以上が、下記式(2−1)〜(2−5)で表わされる構造のいずれかであることが好ましい。
【0065】
【化2】

【0066】
上記のような構造を有するポリイミドは、高耐熱、低線熱膨張係数を示すポリイミドである。その為、上記式(2−1)〜(2−5)で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、本発明においては33モル%以上含有すれば良く、50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましい。
【0067】
一方、本発明に用いられるポリイミドに適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は限定されるわけではないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
【0068】
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、
【0069】
1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
【0070】
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0071】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、最終的に得られるポリイミドは線熱膨張係数が小さくなる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
【0072】
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(3)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
【0073】
【化3】

【0074】
(aは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位または、パラ位に結合する。)
【0075】
さらに、上記式(3)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。
【0076】
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0077】
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると線湿度膨張係数を低減させることができる。しかし、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
【0078】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、基板との密着性を改善したり最終的に得られるポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させることができる。
【0079】
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
【0080】
また、上記ポリイミドにおいては、上記式(1)中のRのうち33モル%以上が下記式(4−1)〜(4−6)で表わされる構造のいずれかであることが好ましい。
【0081】
【化4】

【0082】
(Rは2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、又はスルホン基であり、R及びRは1価の有機基、又はハロゲン原子である。)
【0083】
上記のような構造を有する場合、最終的に得られるポリイミドの耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。その為、上記式(4−1)〜(4−6)で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、本発明においては33%以上含有すれば良く、50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましい。
【0084】
上記のポリイミドに加えて必要に応じて適宜、接着性のポリイミドなどと組み合わせて、本発明における絶縁層(第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層)として用いてもよい。
【0085】
また、上記のポリイミドを感光性ポリイミドとして利用する際には、公知の手法を用いることができる。たとえば、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し得られるポリイミド前駆体に、光ラジカル開始剤を混合し、溶剤現像ネガ型感光性ポリイミドとするもの、ポリアミック酸やその部分エステル化物にナフトキノンジアジド化合物を添加し、アルカリ現像ポジ型感光性ポリイミドとするもの、ポリアミック酸にニフェジピン系化合物を添加しアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミドとするものなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0086】
これらの感光性ポリイミドはポリイミドの重量に対して15%〜35%の感光性付与成分が添加されている。その為、パターン形成後に300℃〜400℃で加熱したとしても、感光性付与成分由来の残差がポリイミド中に残存する。その為、本発明においては、非感光性ポリイミドを用いることが好ましい。
【0087】
特に、本発明においては、絶縁層を構成するポリイミド樹脂が、下記式(A−1)または(A−2)で表される構造のいずれかを含有することが、線熱膨張係数が小さいポリイミド樹脂とする観点から好ましい。反りの小さい回路基板を得ることができるからである。
【0088】
【化5】

【0089】
(上記式(A−1)および(A−2)中、Rは、2価の有機基である。)
【0090】
さらに、本発明においては、第二絶縁層を構成するポリイミド樹脂が、上記式(A−1)で表される構造を含有することが好ましい。線熱膨張係数が小さいポリイミド樹脂とするだけでなく、低湿度膨張を示すポリイミドとすることができ、より反りの小さい回路基板を得ることができるからである。
【0091】
さらに、本発明においては、上記2価の有機基が、下記式(B−1)〜(B−5)で表される構造のいずれかであることが好ましい。
【0092】
【化6】

【0093】
(上記式(B−3)中、RおよびRは、水素または1価の有機基であり、それぞれ同一でも、異なっていても良い。)
【0094】
また、本発明においては、上記2価の有機基が、下記式(B−1)〜(B−3)で表される構造のいずれかであることが好ましい。
【0095】
【化7】

【0096】
(上記式(B−3)中、RおよびRは、水素、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、それぞれ同一でも、異なっていても良い。)
【0097】
本発明における絶縁層の形成方法としては、所望の厚みの絶縁層を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、絶縁層を形成可能な材料を含む絶縁層形成用塗工液を塗布する方法や、ドライフィルム状の絶縁層を貼り合わせる方法等を挙げることができる。
なお、パターン状に形成された第一導体層および第二導体層上に形成される第二絶縁層および第三絶縁層を絶縁層形成用塗工液を塗布して形成する際に、導体層上の絶縁層形成用塗工液の一部が重力の影響でその導体層が形成された絶縁層上に流れ落ちる。このため、このような場合には、導体層上に塗布する各絶縁層形成用塗工液の量を流れ落ちる量を考慮して調整するのが好ましい。具体的には、導体層直上に5μmや10μmの絶縁層を形成する仕様の場合には、6.5μm、12μmといった目標の厚みよりも厚みの厚い塗膜となるように塗布量を調整するのが好ましい。
【0098】
(2)金属支持基板
本発明における金属支持基板は、回路基板の支持体として機能するものである。また、本発明における回路基板がサスペンション用基板である場合は、金属支持基板が所定のばね性を有することが好ましい。
【0099】
金属支持基板の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばステンレス鋼を挙げることができ、中でもSUS304(線熱膨張係数:17.3ppm/℃)、SUS410(線熱膨張係数:10.4ppm/℃)、SUS430(線熱膨張係数:10.4ppm/℃)、SUS630(線熱膨張係数:11.6ppm/℃)等を挙げることができ、特に、SUS304が好ましい。特に本発明においては、金属支持基板、第一導体層および第二導体層の材料の線熱膨張係数が10ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましい。
【0100】
金属支持基板の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば3μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜25μmの範囲内であることがより好ましい。金属支持基板の厚さが薄すぎると、機械的強度が低下する可能性があり、金属支持基板の厚さが厚すぎると、剛性が高くなり過ぎる可能性があるからである。また、金属支持基板の厚さが薄いほど、より各絶縁層の線熱膨張係数のコントロールを精密に行う必要がある。
【0101】
回路基板における金属支持基板の残存割合は、特に限定されるものではないが、例えば30%以上であることが好ましく、30%〜60%の範囲内であることがより好ましい。なお、金属支持基板の残存割合とは、回路基板の平面視面積に占める、金属支持基板の平面視面積の割合をいう。また、回路基板の平面視面積とは、回路基板の外径線によって囲まれる面積であり、内部に貫通孔が形成されている場合は、その貫通孔の平面視面積をも含むものである。
【0102】
(3)導体層
本発明における導体層(第一導体層および第二導体層)は、上記絶縁層上に形成されるものである。より具体的には、第一導体層は第一絶縁層上に形成される層であり、第二導体層は第二絶縁層上に形成される層である。
【0103】
第一導体層および第二導体層の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅(Cu:圧延銅、電解銅)等を挙げることができる。なお、銅の線熱膨張係数は、通常、16.7ppm/℃である。第一導体層および第二導体層の厚さは、特に限定されるものではないが、それぞれ、例えば1μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、3μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。また、第一導体層および第二導体層の線幅は、特に限定されるものではないが、それぞれ、例えば10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、15μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。
【0104】
さらに、第一導体層および第二導体層の表面は、Niめっき、Auめっき等により保護めっき層が形成されていても良い。劣化(腐食等)を効果的に防止できるからである。保護めっき層の厚さは、5μm以下であることが好ましく、1μm〜2μmの範囲内であることがより好ましい。
【0105】
第一導体層および第二導体層の機能は、特に限定されるものではない。上記機能の具体例としては、信号伝送配線としての機能、グランド配線としての機能、電源配線等を挙げることができる。特に、本発明における回路基板がサスペンション用基板である場合、上記の機能の具体例としては、ライト配線またはリード配線としての機能、フライトハイトコントロール用配線としての機能、グランド配線としての機能、電源配線としての機能、センサー用配線としての機能、アクチュエータ用配線としての機能、熱アシスト用配線としての機能、マイクロ波アシスト用配線としての機能等を挙げることができる。また、本発明においては、第一導体層および第二導体層が、それぞれ複数形成されていても良い。
【0106】
(4)回路基板
本発明における回路基板は、上述した、金属支持基板、第一絶縁層、第一導体層、第二絶縁層、第二導体層および第三絶縁層を有するものである。中でも、本発明における回路基板は、金属支持基板の材料がSUS304であり、第一導体層および第二導体層の材料がCuであり、第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の材料がポリイミド樹脂であり、さらに、金属支持基板の厚さが16μm〜20μmの範囲内であり、第一絶縁層の厚さが4μm〜12μmの範囲内であり、第一導体層の厚さが4μm〜6μmの範囲内であり、第一導体層上に形成された第二絶縁層の厚さが4μm〜12μmの範囲内であり、第二導体層の厚さが4μm〜6μmの範囲内であり、第二導体層上に形成された第三絶縁層の厚さが4μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。
【0107】
また、本発明における回路基板の用途は、特に限定されるものではないが、サスペンション用基板、デジタルスチルカメラ用基板、デジタルビデオカメラ用基板、携帯電話用基板、携帯用パーソナルコンピューター用基板、液晶テレビ用基板、液晶表示素子用ドライバ基板、カセットデッキ用基板、CDプレーヤー用基板、DVDプレーヤー用基板、ブルーレイプレーヤー用基板、コピー機用基板、ファックス用基板、人工衛星用基板、ミサイル用基板、ジェット戦闘機用基板等を挙げることができる。
【0108】
本発明における回路基板のサイズとしては、本発明の設計方法により設計される回路基板の用途等に応じて異なるものであるが、
スタックト構造の部位の最大長さが25mm以上であることが好ましく、なかでも30mm〜40mmの範囲内であることが好ましい。上記式(A)で示されるXが上述の範囲内であることによる反り低減効果を効果的に発揮することができるからである。
【0109】
B.回路基板の製造方法
次に、本発明の回路基板の製造方法について説明する。
本発明の回路基板の製造方法は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、上記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板の製造方法であって、上記回路基板の設計方法を用いて回路基板を設計する設計工程を有することを特徴とするものである。
【0110】
このような本発明の回路基板の製造方法について図を参照して説明する。図3は、本発明の回路基板の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、金属支持基板の線熱膨張係数に対して、上記設計方法を用いて、上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を決定し、決定された線熱膨張係数の絶縁層を形成可能な絶縁層形成用材料を選択することにより回路基板を設計する(設計工程)。
次いで、金属支持基板1X、第一絶縁層2Xおよび第一導体層3Xがこの順に積層した積層部材を準備する(図3(a))。次に、積層部材の両面にドライフィルムレジスト(DFR)を配置し、露光現像を行うことにより、所定のレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出する部分をウェットエッチングし、金属支持基板1および第一導体層3を形成する(図3(b))。その後、第一導体層3を覆うように、第二絶縁層4を形成する(図3(c))。第二絶縁層4の材料が感光性材料である場合は、露光現像により所定のパターンを形成することができる。一方、第二絶縁層4の材料が非感光性材料である場合は、DFRを用いて所定のレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する部分をウェットエッチングすることにより、所定のパターンを形成することができる。次に、第二絶縁層4の上にシード層を形成し、シード層の上に、DFRを用いて所定のレジストパターンを形成する。次に、電解めっき法により、第二導体層5を形成する(図3(d))。次に、第二導体層5を覆うように第三絶縁層6を形成し、その後、第一絶縁層2Xをウェットエッチングし、第一絶縁層2を形成する(図3(e))。これにより、回路基板を得ることができる。
【0111】
本発明によれば、上記回路基板の設計方法を用いる設計工程を有することから、反りの少ないスタックト構造の回路基板を安定的に得ることができる。
【0112】
本発明の回路基板の製造方法は、上記設計工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明の回路基板の製造方法における各工程について詳細に説明する。
【0113】
1.設計工程
本発明における設計工程は、上記回路基板の設計方法を用いて回路基板を設計する工程である。
このような設計方法については、上記「A.回路基板の設計方法」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0114】
2.回路基板の製造方法
本発明の回路基板の製造方法は、上記設計工程を少なくとも含むものであるが、通常、上記設計工程により設計された回路基板を形成する回路基板形成工程を有するものである。
【0115】
本工程において回路基板を形成する方法としては、設計工程により設計された回路基板を精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な回路基板の形成方法を用いることができる。
本工程においては、なかでも、既に説明した図3に示すように、まず、金属支持基板、第一絶縁層および第一導体層がこの順に積層した積層部材を出発材料として用いる方法であることが好ましい。形成が容易だからである。
【0116】
なお、本工程により形成される回路基板については、上記「A.回路基板の設計方法」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0117】
C.回路基板
次に本発明の回路基板について説明する。
本発明の回路基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、上記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板であって、下記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内を満たすものであることを特徴とするものである。
【0118】
t1×(CTE1−CTEbase)+t2×(CTE2−CTEbase)+t3×(CTE3−CTEbase)=X (A)
【0119】
(式(A)中のt1、t2およびt3はそれぞれ上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚み(μm)を示す。CTE1、CTE2およびCTE3は、それぞれ上記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。CTEbaseは上記金属支持基板の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。)
【0120】
このような回路基板としては、具体的には、既に説明した図1および図2に示すものを挙げることができる。
【0121】
本発明によれば、上記各絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数が上記式(A)を満たすことにより、反りの少ないものとすることができる。
【0122】
なお、本発明の回路基板については、上記「A.回路基板の設計方法」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0123】
D.サスペンション用基板
次に、本発明のサスペンション用基板について説明する。本発明のサスペンション用基板は、上述した回路基板であることを特徴とするものである。
【0124】
上述した図1および図2は、本発明のサスペンション用基板を説明する模式図である。本発明においては、図1および図2に示すように、第一導体層3および第二導体層5が、素子実装領域11および外部回路基板接続領域12の間を電気的に接続する配線層であることが好ましい。低インピーダンス化が容易だからである。なお、第一導体層3および第二導体層5は、図2に示すように、平面視上、少なくとも両者が重複するように配置されていることが好ましく、完全に重複していることがより好ましい。また、第一導体層3および第二導体層5から構成される配線対は、ライト配線であっても良く、リード配線であっても良いが、ライト配線であることが好ましい。ライト配線では、特に低インピーダンス化が求められているからである。さらに、本発明においては、図2に示すように、金属支持基板1が、平面視上、第一導体層3および第二導体層5から構成される配線対の下に開口領域を有していても良い。これにより、電気信号(特に高周波信号)が導電性の低い金属支持基板を伝送することで伝送ロスが大きくなることを防止できる。
【0125】
本発明によれば、上述した回路基板を用いることで、反りの小さいサスペンション用基板とすることができる。なお、回路基板については、上記「A.回路基板の設計方法」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0126】
E.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板を含むことを特徴とするものである。
【0127】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、反りの小さいサスペンションとすることができる。
【0128】
図4は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図4に示されるサスペンション40は、上述したサスペンション用基板20と、素子実装領域11が形成されている表面とは反対側のサスペンション用基板20の表面に備え付けられたロードビーム30とを有するものである。
【0129】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用基板を有し、通常は、さらにロードビームを有する。サスペンション用基板については、上記「D.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、ロードビームは、一般的なサスペンションに用いられるロードビームと同様のものを用いることができる。
【0130】
F.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションの素子実装領域に実装された素子と、を有することを特徴とするものである。
【0131】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、反りの小さい素子付サスペンションとすることができる。
【0132】
図5は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図5に示される素子付サスペンション50は、上述したサスペンション40と、サスペンション40の素子実装領域11に実装された素子41とを有するものである。
【0133】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび素子を有するものである。サスペンションについては、上記「E.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、素子実装領域に実装される素子としては、例えば、磁気ヘッドスライダ、アクチュエータ、半導体等を挙げることができる。また、上記アクチュエータは、磁気ヘッドを有するものであっても良く、磁気ヘッドを有しないものであっても良い。
【0134】
G.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0135】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0136】
図6は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図6に示されるハードディスクドライブ60は、上述した素子付サスペンション50と、素子付サスペンション50がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク51と、ディスク51を回転させるスピンドルモータ52と、素子付サスペンション50の素子を移動させるアーム53およびボイスコイルモータ54と、上記の部材を密閉するケース55とを有するものである。
【0137】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「F.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0138】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0140】
[作製例1]
まず、厚さ18μmのSUS304(金属支持基板、線熱膨張係数17.3ppm/℃)、厚さ5μmのポリイミド樹脂層(第一絶縁層、線熱膨張係数21.0ppm/℃)、厚さ5μmの電解銅層(第一導体層、線熱膨張係数16.7ppm/℃)を有する積層部材を準備した。
【0141】
次に、SUS側で位置精度が重要な治具孔と、電解銅側で目的とする第一導体層とを形成できるように、ドライフィルムを用いて同時にパターニングし、パターン状のレジストを形成した。その後、塩化第二鉄液を用いてエッチングし、エッチング後レジスト剥膜を行った。ここでは、ドライフィルムを同時にパターニングすることで、SUS側および第一導体層側の両面の位置精度を向上させることができる。
【0142】
次に、パターニングされた第一導体層上に、線熱膨張係数が18.7ppm/℃になるように合成したポリイミド前駆体溶液1をダイコーターでコーティングし、乾燥後、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜をエッチングし、その後、窒素雰囲気下、加熱することにより硬化(イミド化)させ、ポリイミド1からなる第二絶縁層を形成した。第二絶縁層は第一導体層を覆うように形成され、第一導体層直上に形成された第二絶縁層の厚さは5μm(実際の塗工量基準で6.5μm)であった。
【0143】
次に、第二絶縁層上にスパッタリング法によりシード層を形成し、シード層の上にDFRを用いてレジストパターンを形成した。その後、レジストパターンから露出するシード層上に、電解めっき法により、厚さ5μmの電解銅層(第二導体層、線熱膨張係数16.7ppm/℃)を形成した。
【0144】
次に、第二導体層上に、線熱膨張係数が18.3ppm/℃になるように合成したポリイミド前駆体溶液2を用いて、第二絶縁層を形成したときと同様の手法でポリイミド2からなる第三絶縁層を形成した。第三絶縁層は第二導体層を覆うように形成され、第二導体層直上に形成された第三絶縁層の厚さは4μm(実際の塗工量基準で6.0μm)であった。その後、第一絶縁層および金属支持基板のエッチングを行い、回路基板(サスペンション用基板)を得た。なお、得られた回路基板の寸法を図7に示す。
【0145】
[作製例2〜9]
金属支持体、第一絶縁層、第一導体層、第二絶縁層、第二導体層、第三絶縁層の厚みおよびCTEを下記表1に示す値のものを用いたこと以外は、製造例1と同様にして、回路基板を得た。
なお、表1中の絶縁層の厚みは塗工量基準のものである。また、第二絶縁層の導体層直上の厚みについては、塗工量基準で6.5μm、12μmの場合にはそれぞれ5μm、10μm、第三絶縁層の導体直上の厚みについては、塗工量基準で6.0μm、6.5μmの場合にはそれぞれ4.0μm、4.5μmであった。
【0146】
[実施例1〜4および比較例1〜5]
作製例1〜9で得られた回路基板について基板反り量を測定した。
なお、基板反り量は、回路基板のピースをシートから切り離し、基板を定盤の上に置き、テイル部分(回路基板の一端)を押さえ治具で固定するそして、回路基板のヘッド部(回路基板のもう一端)での反り量を定規により測定した。また、回路基板のテイル部とヘッド部間の長さは38mmであった。結果を下記表1に示す。
なお、表1中のXは上記式(A)で示されるものであり、各層の厚みおよび線熱膨張係数の単位はμmおよびppm/℃である。
なお、基板反り量の単位はmmであり、値が正の値の場合には、絶縁層側に反っていることを示し、負の値の場合には、金属支持基板側に反っていることを示すものである。
【0147】
【表1】

【0148】
表1より、Xの値を24〜64(μm・ppm/℃)の範囲内とすることで、回路基板の長さ38mm当たりの反り量を±2mm以内とすることができ、安定的に反りの少ないものとすることができることを確認できた。
また、各絶縁層の厚みについて導体層上の厚みを基準として、上記式(1)を計算したXの値としては、24〜57の範囲内であることが好ましいことが確認できた。
【符号の説明】
【0149】
1…金属支持基板
2…第一絶縁層
3…第一導体層
4…第二絶縁層
5…第二導体層
6…第三絶縁層
11…素子実装領域
12…外部回路基板接続領域
13…配線層
20…回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、前記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、前記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板の設計方法であって、
前記金属支持基板の線熱膨張係数に対して、前記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚みおよび線熱膨張係数を、下記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内となるように決定する条件決定工程を有することを特徴とする回路基板の設計方法。
t1×(CTE1−CTEbase)+t2×(CTE2−CTEbase)+t3×(CTE3−CTEbase)=X (A)
(式(A)中のt1、t2およびt3はそれぞれ前記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚み(μm)を示す。CTE1、CTE2およびCTE3は、それぞれ前記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。CTEbaseは前記金属支持基板の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。)
【請求項2】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、前記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、前記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板の製造方法であって、
請求項1に記載の回路基板の設計方法を用いて回路基板を設計する設計工程を有することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項3】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、前記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二導体層と、前記第二導体層上に形成された第三絶縁層とを有する回路基板であって、
下記式(A)で示されるXが24〜64の範囲内を満たすものであることを特徴とする回路基板。
t1×(CTE1−CTEbase)+t2×(CTE2−CTEbase)+t3×(CTE3−CTEbase)=X (A)
(式(A)中のt1、t2およびt3はそれぞれ前記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の厚み(μm)を示す。CTE1、CTE2およびCTE3は、それぞれ前記第一絶縁層、第二絶縁層および第三絶縁層の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。CTEbaseは前記金属支持基板の線熱膨張係数(ppm/℃)を示す。)
【請求項4】
請求項3に記載の回路基板であることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項5】
請求項4に記載のサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンション。
【請求項6】
請求項5に記載のサスペンションと、前記サスペンションの素子実装領域に実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項7】
請求項6に記載の素子付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−93081(P2013−93081A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235414(P2011−235414)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】