説明

回路装置

【課題】リフローはんだ付けにおけるはんだ不良および電子部品の過熱を防止することが可能な回路装置を提供することを目的とする。
【解決手段】表面に電位の異なる複数の部品ランド13,14を有する回路基板10と、部品ランド13,14にそれぞれのリード部21,22をリフローはんだ付けにより接続される電子部品20と、電位の異なる部品ランド13,14それぞれに対して設けられる予熱用ランド30,31と、部品ランド13,14と予熱用ランド30,31を熱的に接続するブリッジ32,33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の部品ランドに電子部品をリフローはんだ付けして接続する回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路装置は、絶縁板に導電パターンを形成した回路基板の表面に、多数の電子部品が電気的に接続されることで構成される。多数の電子部品は、導電パターンの部品ランドにはんだ付けされることにより、回路基板と接続される。はんだ付けする方法として、リフローはんだ付けを用いることにより、電子部品を回路基板に高密度に実装することが一般に知られている。このリフローはんだ付けは、導電パターンの部品ランドにクリームはんだを塗布し、ここに接続する電子部品のリードを載置する。そして、リフロー炉によりクリームはんだを溶融した後、冷却することで電子部品が回路基板に実装されるものである。
【0003】
また、回路基板には個々に熱容量が相違する電子部品が混在して実装される。リフロー炉による加熱に対して、熱容量が小さい小型電子部品は温度上昇し易く、熱容量が大きい大型電子部品は温度上昇しにくい。そのため、小型電子部品を基準に加熱すると、大型電子部品のリード部でクリームはんだが十分に溶融せずにはんだ不良となることがある。一方、大型電子部品を基準に加熱すると、小型電子部品が過熱状態となり、部品破損や劣化の原因となることがある。
【0004】
そこで、特開2006−120866号公報(特許文献1)には、大型電子部品を接続する部品ランドから熱伝導部材を介して、回路基板の裏側にヒートシンクを設けるリフローはんだ付けが開示されている。このような構成では、回路基板の裏側への加熱を利用して、大型電子部品を接続する部品ランドにおけるクリームはんだを溶融できるとされている。また、特開2006−339264号公報(特許文献2)には、小型電子部品の上面に熱容量増大部材を配置するリフローはんだ付けが開示されている。このような構成では、小型電子部品の熱容量が増加することで、小型電子部品の過熱を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−120866号公報
【特許文献2】特開2006−339264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2により開示されたリフローはんだ付けの場合、熱伝導部材または熱容量増大部材を電子部品に配置する必要がある。そのため、リフロー炉に搬送する前に、回路基板に対してはんだ不良が生じないための準備工程が必要となり、回路装置のコストアップの原因となりうる。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、リフローはんだ付けにおけるはんだ不良および電子部品の過熱を防止することが可能な回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、
表面に電位の異なる複数の部品ランドを有する回路基板と、
電位の異なる複数のリード部を有し、前記回路基板上の所定位置に載置され、それぞれの前記部品ランドにそれぞれの前記リード部をリフローはんだ付けにより接続される電子部品と、
電位の異なる複数の前記部品ランドそれぞれに対して設けられる複数の予熱用ランドと、
前記部品ランドと前記予熱用ランドを熱的に接続するブリッジと、
を備えることである。
【0009】
請求項2に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1において、
前記予熱用ランドは、前記回路基板の表面において、前記電子部品および前記部品ランドを含む最小の矩形領域に配置されることである。
【0010】
請求項3に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1において、
前記予熱用ランドの周縁は、前記回路基板の表面において、他の前記電子部品を介在しないように前記部品ランドの周縁と対向することである。
【0011】
請求項4に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか一項において、
前記予熱用ランドおよび前記ブリッジは、導電体であることである。
【0012】
請求項5に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、
前記回路基板は、スルーホールを有し、
前記予熱用ランドは、前記回路基板の裏面に配置され、
前記ブリッジは、前記スルーホールを介して前記部品ランドと前記予熱用ランドを熱的に接続することである。
【0013】
請求項6に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜5の何れか一項において、
前記ブリッジは、絶縁性の積層板または皮膜によりマスクされていることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、熱容量が大きい大型の電子部品の複数のリード部を部品ランドにリフローはんだ付けする場合に、リフロー炉における予熱用ランドの加熱により、部品ランドを十分に温度上昇させることができる。これにより、部品ランドに塗布されるクリームはんだを溶融できるので、確実にリフローはんだ付けすることができる。つまり、本来、部品ランドに塗布されたクリームはんだを溶融させるのに必要であった加熱量を低減させることができる。よって、回路装置に大型の電子部品が混在している場合でも、大型の電子部品をリフローはんだ付けできると共に、その他の電子部品の過熱を防止することができる。
【0015】
ここで、一つの電子部品は、電位の異なる複数のリード部を有する。例えば、電子部品は、高電位のリード部と低電位のリード部とを備える。これらのリード部は、それぞれの電位に応じた部品ランドにリフローはんだ付けにより接続される。そして、予熱用ランドは、この複数の部品ランドそれぞれに対して設けられている。熱容量が大きい電子部品の場合に、電位の異なる複数のリード部において、クリームはんだが溶融しにくいという問題は、リード部が接続される部品ランドそれぞれに発生するものと考えられる。そこで、予熱用ランドを上記のように設けることで、より確実にリフローはんだ付けすることができる。
【0016】
また、ブリッジは、リフロー炉で加熱された予熱用ランドから部品ランドへと熱伝導している。このブリッジは、例えば、部品ランドおよび予熱用ランドのいずれよりも表面積が小さくなるように設定されている。または、ブリッジの幅は、部品ランドの幅および予熱用ランドの幅のいずれよりも小さくなるように設定されている。このような構成にすることにより、電子部品のリード部と部品ランドのリフローはんだ付けを阻害することなく、予熱用ランドから部品ランドへと熱を伝えることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、熱容量が大きい大型の電子部品を部品ランドにリフローはんだ付けする場合に、リフロー炉における予熱用ランドの加熱により、部品ランドを十分に温度上昇させることができる。よって、請求項1と同様の効果を得られる。
【0018】
ここで、本発明において、予熱用ランドは、回路基板の表面において、電子部品および部品ランドを含む最小の矩形領域に配置される。「最小の矩形領域」とは、電子部品が占める領域と、その電子部品のリード部が接続される部品ランドが占める領域を含むように囲んだ矩形領域のうち、面積が最小となる矩形領域をいう。そして、予熱用ランドは、この最小の矩形領域において、電子部品の熱容量に基づいて形状を設定されている。一般に、回路装置には小型化の要請があることから、電子部品は回路基板上において高密度に配置されている。つまり、このような構成において、部品ランドと予熱用ランドは近接した状態となる。
【0019】
そして、ブリッジは、この部品ランドと予熱用ランドを熱的に接続している。これにより、電子部品のリード部と部品ランドのリフローはんだ付けを阻害することなく、予熱用ランドから部品ランドへと効率的に熱を伝えることができる。
【0020】
請求項3に係る発明によると、熱容量が大きい大型の電子部品を部品ランドにリフローはんだ付けする場合に、リフロー炉における予熱用ランドの加熱により、部品ランドを十分に温度上昇させることができる。よって、請求項1と同様の効果を得られる。
【0021】
ここで、本発明において、予熱用ランドの周縁は、回路基板の表面において、部品ランドの周縁と対向する。さらに、これらの対向する周縁の間には他の電子部品が介在しない。つまり、このような構成において、部品ランドと予熱用ランドは近接した状態となる。
【0022】
そして、ブリッジは、この部品ランドと予熱用ランドを熱的に接続している。これにより、電子部品のリード部と部品ランドのリフローはんだ付けを阻害することなく、予熱用ランドから部品ランドへと効率的に熱を伝えることができる。
【0023】
請求項4に係る発明によると、より確実に予熱用ランドから部品ランドに熱伝達することができる。例えば、導電体として銅または銅合金が考えられる。銅合金は、電気伝導率と熱伝導度が比例関係にあることが知られている。そして、回路基板の導電パターンには、多くの場合に銅が用いられることから、ブリッジを部品ランドと同様に銅とすることが考えられる。このような構成とすることで、導電パターンと同じ工程でブリッジを形成することができるので、低コスト化を図ることができる。
【0024】
請求項5に係る発明によると、回路基板の裏面への加熱を利用することができるので、部品ランドにおいて確実にリフローはんだ付けできる。一般にリフロー炉では、ヒータにより回路基板の表面と裏面に対して加熱される。そして、本発明において、予熱用ランドを回路基板の裏面における最小の矩形領域に配置する。または、予熱用ランドの周縁を部品ランドの周縁と対向するように配置する。さらに、ブリッジは、熱伝導可能なスルーホールを介して部品ランドと予熱用ランドを熱的に接続している。このスルーホールは、例えば、回路基板の最小の矩形領域において、回路基板の層間を貫通するように形成されている。そして、スルーホールは、各層の導電パターンを電気的に接続している。このような構成とすることで、回路基板の裏面に配置され、リフロー炉で加熱された予熱用ランドから表面の部品ランドに熱伝達することができる。よって、回路基板の表面に十分な予熱用ランドの面積を確保できない場合に、回路基板の裏面を有効に利用し、確実にリフローはんだ付けできる。
【0025】
請求項6に係る発明によると、ブリッジは絶縁性の積層板または皮膜によってマスクされている。回路基板は、複数の導電パターンと絶縁性の積層板からなる多層基板であることがある。その他に、回路基板の表面の一部を、例えば熱硬化性エポキシ樹脂皮膜などの絶縁性皮膜であるソルダーレジストにより被覆することがある。そこで、ブリッジは、部品ランドと別層を経由することでマスクされる構成、または絶縁性皮膜によりマスクされる構成とする。これにより、部品ランドのクリームはんだが溶融した場合に、ブリッジに流入することを防止できる。よって、電子部品のリード部と部品ランドを確実にリフローはんだ付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第一実施形態:回路装置1の一部の斜視図である。
【図2】回路装置1の一部の平面図である。
【図3】回路装置1のA−A断面の拡大図である。
【図4】リフロー炉40を示した模式図である。
【図5】第二実施形態:回路装置101の一部の平面図である。
【図6】第三実施形態:回路装置201の断面の拡大図である。
【図7】第四実施形態:回路装置301の断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の回路装置1を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
<第一実施形態>
第一実施形態の回路装置1の全体構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、回路装置1の一部の斜視図である。図2は、回路装置1の一部の平面図である。図3は、回路装置1のA−A断面の拡大図である。
【0029】
回路装置1は、図1,2に示すように、回路基板10と、電解コンデンサ20(本発明の「電子部品」に相当する)と、予熱用ランド30,31とを有する。
【0030】
回路基板10は、絶縁板11に銅箔の導電パターン12が形成されている。この回路基板10上には、後述する電解コンデンサ20を含む多数の電子部品が実装される。導電パターン12には、これらの電子部品の端子を接続するために、電子部品のリード部とはんだ付けされる部品ランド13,14が形成されている。部品ランド13および部品ランド14は、電解コンデンサ20のうち電位の異なるリード部21,22と接続される。そして、回路装置1がリフローはんだ付けされる前の状態において、この部品ランド13,14には、クリームはんだ15が塗布される。多数の電子部品は、部品ランド13,14に塗布されたクリームはんだ15の上にチップマウンターなどにより載置される。
【0031】
電解コンデンサ20は、円柱状のケースに収納されるコンデンサ素子と、一対のリード部21,22を有する。リード部21は、電解コンデンサ20において高電位側の端子である。一方、リード部22は、電解コンデンサ20において低電位側の端子である。また、この電解コンデンサ20は、例えば、車両用エアバッグを起動させるバックアップ電源として使用される。そして、このような電解コンデンサ20は、大きな容量を必要とされるため、本体も大きなものとなる。つまり、回路装置1に実装される電子部品の中でも熱容量の大きな電子部品である。他の電子部品と比較して、熱容量が大きい電解コンデンサ20は、リフロー炉において温度が上昇しにくい。よって、電解コンデンサ20のリード部21,22がそれぞれ接続される部品ランド13,14の温度も上昇にくいものである。
【0032】
予熱用ランド30は、図2に示すように、部品ランド13と並設され、ブリッジ32により熱的に接続されている。同様に、予熱用ランド31は、部品ランド14と並設され、ブリッジ33により熱的に接続されている。つまり、リフロー炉において、予熱用ランド30は、電解コンデンサ20の高電位側のリード部21を接続する部品ランド13を温度上昇させるために設けられている。そして、予熱用ランド31は、電解コンデンサ20の低電位側のリード部22を接続する部品ランド14を温度上昇させるために設けられている。また、本実施形態において、予熱用ランド30,31およびブリッジ32,33は、部品ランド13,14と同様に、絶縁板11に導電パターン12を形成する際に同時に形成される。また、予熱用ランド30,31およびブリッジ32,33は、クリームはんだ15が塗布されていない。
【0033】
また、この予熱用ランド30,31は、図2において、破線で囲まれた最小の矩形領域Sに収まるように配置されている。この最小の矩形領域Sは、電解コンデンサ20が占める領域と、電解コンデンサ20のリード部21,22をはんだ付けするための部品ランド13,14が占める領域を含むように囲んだ矩形領域のうち、面積が最小となる矩形領域をいう。よって、本実施形態において、最小の矩形領域Sの長辺は、回路装置1を上から見て、電解コンデンサ20のケースの上下部で接している。そして、最小の矩形領域Sの短辺は、部品ランド13,14の一辺をそれぞれ含むものとなっている。そして、予熱用ランド30,31は、この最小の矩形領域Sにおいて、電解コンデンサ20の熱容量に基づいて形状を設定されている。
【0034】
さらに、予熱用ランド30の一部の周縁30aは、図2,3に示すように、回路基板10の表面において部品ランド13の一部の周縁13aと対向している。本実施形態において、部品ランド13は、電解コンデンサ20のリード部21をはんだ付けするために必要な面積を確保した矩形状となっている。そして、予熱用ランド30の周縁30aは、矩形状の部品ランド13の周縁13aと所定間隔だけ離間して、平行に形成されている。さらに、これらの対向する周縁13a,30aの間には他の電子部品が介在しない。このような予熱用ランド30および部品ランド13の構成は、予熱用ランド31および部品ランド14においても同様である。
【0035】
上述したように、部品ランド13,14は、最小の矩形領域Sに収まるように配置され、且つ、その一部の周縁が予熱用ランド30,31の一部の周縁と対向している。このような構成により、電子部品が高密度に配置される回路基板10上において、部品ランド13と予熱用ランド30、および部品ランド14と予熱用ランド31は、近接した状態で配置されることになる。
【0036】
ブリッジ32,33は、上述したように、導電体である銅箔により部品ランド13,14と予熱用ランド30,31をそれぞれ熱的に接続するように形成されている。ブリッジ32は、部品ランド13および予熱用ランド30の何れよりも表面積が小さく設定されている。同様に、ブリッジ33は、部品ランド14および予熱用ランド31の何れよりも表面積が小さく設定されている。そして、ブリッジ32,33は、リフロー炉による加熱された予熱用ランド30,31から部品ランド13,14へそれぞれ熱伝導可能となっている。また、ブリッジ32,33は、上述したように、クリームはんだ15が塗布されていない。
【0037】
このように、予熱用ランド30,31およびブリッジ32,33は、電解コンデンサ20の部品ランド13,14にそれぞれ設けられる構成とした。そして、このような構成は、回路装置1において、熱容量の大きな他の電子部品に対しても同様に設けられている。つまり、他の電子部品に対して、予熱用ランドは、それぞれの最小の矩形領域に収まるように配置され、他の電子部品の熱容量に基づいて形状を設定されている。さらに、予熱用ランドは、他の電子部品の電位の異なる複数のリード部と接続される複数の部品ランドそれぞれに対して設けられている。
【0038】
次に、回路装置1のリフローはんだ付けについて図4を参照して説明する。図4は、リフロー炉40を示した模式図である。また、上述したように、回路装置1は、リフローはんだ付けされる前の状態において、回路基板10の部品ランド13,14にクリームはんだ15が塗布されている。そして、このクリームはんだ15の上に電解コンデンサ20を含む多数の電子部品が載置されている状態にある。
【0039】
リフロー炉40は、図4に示すように、プリヒート区間41と、リフロー区間42と、冷却区間43から構成されている。そして、リフロー炉40は、ベルトコンベア44と、プリヒート用ヒータ45と、リフロー用ヒータ46と、クーラー47とを備えている。ベルトコンベア44は、所定間隔を空けた二本のベルトから構成され、リフロー炉40の各区間を貫通して設けられている。回路装置1は、この二本のベルトにまたいで載置され、ベルトコンベア44の下方向からも加熱および冷却可能となっている。そして、ベルトコンベア44は、図示しないコントローラにより、複数の回路装置1を所定時間かけてリフロー炉40の入口から出口まで(図4の左側から右側まで)通過するように制御されている。
【0040】
リフロー炉40のプリヒート区間41は、プリヒート用ヒータ45により回路装置1の回路基板10と電子部品を加熱する。プリヒート区間41における加熱は、リフロー炉40における回路装置1の急激な加熱による熱衝撃を防ぐための予備加熱であり、リフロー区間42における温度よりも低く設定されている。リフロー区間42は、リフロー用ヒータ46によりクリームはんだ15が溶融する温度まで加熱する。リフロー区間42における加熱は、クリームはんだ15を溶融する本加熱であり、使用するクリームはんだ15の溶融温度と電子部品の耐熱保証温度などに基づき、リフロー区間42よりも高温かつ短時間になるように設定されている。冷却区間43は、クーラー47により回路装置1を所定温度まで冷却する。これにより、溶融したクリームはんだ15を固化させると共に、電子部品の熱ストレスを軽減させている。また、本実施形態では、冷却区間43において、クーラー47により冷却したが、回路装置1の電子部品によって急冷が不要の場合は、自然冷却としてもよい。
【0041】
ここで、従来の回路装置のリフローはんだ付けでは、リフロー炉40のプリヒート区間41において、熱容量の大きな電子部品に対する加熱が不足することがあった。そして、従来の回路装置がプリヒート区間41からリフロー区間42に搬送された際に、回路装置に載置された複数の電子部品は、熱容量の差異により個々に温度が大きく異なっている状態となっている。この状態で、リフロー区間42において、加熱が不足した電信部品が接続される部品ランドのクリームはんだが溶融温度に達しないと、はんだ不良が生じることがあった。このような問題は、熱容量の小さい電子部品が過熱状態となり、耐熱保証温度を超えることを防ぐために小さい電子部品を基準に加熱したことが一因と考えられる。
【0042】
これに対して、本実施形態の回路装置1のリフローはんだ付けでは、リフロー炉40のプリヒート区間41において、ブリッジ32を介して加熱された予熱用ランド30の熱量を高電位側の部品ランド13に熱伝導することになる。同様に、プリヒート区間41において、ブリッジ33を介して加熱された予熱用ランド31の熱量を低電位側の部品ランド14に熱伝導することになる。これにより、熱容量の大きな電子部品である電解コンデンサ20は、プリヒート用ヒータ45および予熱用ランド30,31からの熱伝導により加熱されることになる。よって、電解コンデンサ20は、プリヒート区間41において、従来の回路装置と比較して早く温度上昇することができる。
【0043】
また、この予熱用ランド30,31を含む回路装置1に配置された予熱用ランドは、対象とする電子部品の熱容量に基づいて形状を設定されている。さらに、対象とする電子部品の異なる電位のリード部と接続される複数の部品ランドそれぞれに対して設けられている。これにより、従来と比較して、複数の電子部品は、ほぼ一様に温度上昇することになる。よって、本実施形態の回路装置1がプリヒート区間41からリフロー区間42に搬送された際に、回路装置1に載置された複数の電子部品は、熱容量の差異があるものの個々の温度差が小さい状態となる。従って、リフロー区間42において、回路装置1の部品ランドに塗布されたクリームはんだ15を溶融しやすい状態にすることができる。そうすると、リフロー区間42にでは、回路装置1を高温で短時間の加熱することで十分にクリームはんだ15を溶融できる。よって、熱容量が異なる電子部品が混在している場合でも、熱容量の小さい電子部品の過熱状態となることを防止すると共に、良好なリフローはんだ付けすることができる。
【0044】
また、部品ランド13と予熱用ランド30を熱的に接続しているブリッジ32は、何れのランド13,30よりも表面積が小さく設定されている。さらに、予熱用ランド30の周縁30aは、部品ランド13の周縁13aと所定間隔だけ離間して対向している。これにより、プリヒート区間41およびリフロー区間42において、電解コンデンサ20のリード部21と部品ランド13のリフローはんだ付けを阻害することなく、予熱用ランド30から部品ランド13へ熱を伝えることができる。これは、部品ランド14と予熱用ランド31を接続しているブリッジ33についても同様である。
【0045】
その他、ブリッジ32,33は、導電体である銅箔により形成されている。銅は、電気伝導率と熱伝導度が比例関係にあることが知られている。そして、回路基板1の導電パターン12も同様に、銅により形成されている。つまり、このような構成とすることで、熱伝導度が優れた銅により、導電パターン12と同じ工程でブリッジ32,33を形成することができるので、低コスト化を図ることができる。
【0046】
さらに、リフロー区間42においてクリームはんだ15が溶融した後、回路装置1は、ベルトコンベア44により冷却区間43に搬送される。そして、回路装置1は、冷却区間43のクーラー47により冷却される。この時、電解コンデンサ20のリード部21,22のクリームはんだ15は固化する。また、本実施形態の回路装置1により、高温であるリフロー区間42の通過時間を短縮することが可能となるが、一方で、電子部品の熱ストレスを軽減するためには、速やかに冷却することが好ましい。ここで、電解コンデンサ20などの熱容量の大きな電子部品は、熱容量の小さい電子部品と比較して冷却されにくい。しかし、本実施形態の回路装置1において、電解コンデンサ20の熱は、リード部21から固化したクリームはんだ15、部品ランド13、およびブリッジ32に介して、予熱用ランド30に熱伝導する。これは、部品ランド14と予熱用ランド31を接続しているブリッジ33についても同様である。つまり、予熱用ランド30,31は、冷却区間43においては、電解コンデンサ20の放熱性を向上させることができる。これにより、電解コンデンサ20などの熱容量の大きな電子部品は、冷却区間43のクーラー47により速やかに冷却され、部品破損や劣化を防止することができる。
【0047】
<第二実施形態>
第二実施形態の構成について、図5を参照して説明する。図5は、回路装置101の一部の平面図である。
【0048】
ここで、第二実施形態の構成は、主に、第一実施形態の予熱用ランド30,31が最小の矩形領域Sの外部に配置される点が相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0049】
予熱用ランド130は、図5に示すように、回路基板110の表面において、電解コンデンサ20の高電位側のリード部21と接続される部品ランド13を対象としている。そして、予熱用ランド130の一部の周縁130aは、この部品ランド13の一部の周縁13aと対向している。同様に、予熱用ランド131は、回路基板110の表面において、電解コンデンサ20の低電位側のリード部22と接続される部品ランド14を対象としている。そして、予熱用ランド131の周縁131aは、この部品ランド14の一部の周縁14aと対向している。この時、予熱用ランド130,131は、最小の矩形領域Sの外部に位置している。ブリッジ132は、部品ランド13,14と予熱用ランド130,131を熱的にそれぞれ接続している。
【0050】
このような構成とすることで、本実施形態の回路装置201のリフローはんだ付けでは、図4に示すリフロー炉40のプリヒート区間41において、ブリッジ132(133)を介して加熱された予熱用ランド130(131)の熱量を部品ランド13(14)に熱伝導することになる。これにより、熱容量の大きな電子部品である電解コンデンサ20は、プリヒート用ヒータ45および予熱用ランド130,131からの熱伝導により加熱されることになる。よって、電解コンデンサ20は、プリヒート区間41において、従来の回路装置と比較して早く温度上昇することができる。従って、第一実施形態と同様の効果を得られる。
【0051】
本実施形態のように、予熱用ランド130,131を最小の矩形領域Sの外部に配置しても、対象とする部品ランド13,14に近接していれば同様の効果を得られる。回路基板110上に配置される電子部品の高密度化により、最小の矩形領域Sの内部においても他の電子部品が配置されたり、導電パターン12が形成されたりすることがある。このような場合には、予熱用ランド130,131は、最小の矩形領域Sの内部または外部において、部品ランド13,14に近接する位置に配置する構成としてもよい。また、他の電子部品や導電パターン12に接触しなければ、最小の矩形領域Sの内部に限らず、予熱用ランド130,131に十分な面積を確保する構成としてもよい。
【0052】
<第三実施形態>
第三実施形態の構成について、図6を参照して説明する。図6は、回路装置201の断面の拡大図である。
【0053】
ここで、第三実施形態の構成は、主に、第一実施形態の予熱用ランド30,31が回路基板10の裏面に配置される点が相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0054】
予熱用ランド230は、図6に示すように、回路基板210の裏面に配置されている。そして、ブリッジ232は、スルーホール50を介して、部品ランド13と予熱用ランド230を熱的に接続している。予熱用ランド230は、第一実施形態の予熱用ランド30に相当するもので、電解コンデンサ20の高電位側のリード部21と接続される部品ランド13を対象としている。よって、図示しない低電位側のリード部22が接続される部品ランド14を対象とする予熱用ランド31も回路基板210の裏面に配置する構成としても良い。
【0055】
回路基板210の裏面に配置された予熱用ランド230は、第一実施形態の予熱用ランド30と同様に、最小の矩形領域Sに収まるように配置されている。予熱用ランド230は、この最小の矩形領域Sにおいて、電解コンデンサ20の熱容量に基づいて形状を設定される。この時、対象とする電解コンデンサ20が載置される面と異なるので、予熱用ランド230は、上面から見て、電解コンデンサ20が占める領域と部品ランド13,14が占める領域にも配置することが可能となる。よって、予熱用ランド230を回路基板210の裏面に配置することにより、予熱用ランド230の設計自由度を向上させることができる。
【0056】
スルーホール50は、回路基板210の最小の矩形領域Sにおいて、回路基板210の層間を貫通するように形成されている。このスルーホール50は、各層の導電パターン12を電気的に接続している。また、スルーホール50は、回路基板210の導電パターン12の設計上形成されたものを利用してもよい。一方、回路基板210の裏面に配置された予熱用ランド230と接続するために形成してもよい。
【0057】
このような構成とすることで、本実施形態の回路装置201のリフローはんだ付けでは、図4のプリヒート区間41において、加熱された予熱用ランド230の熱量をブリッジ232およびスルーホール50を介して高電位側の部品ランド13に熱伝導することになる。これにより、熱容量の大きな電子部品である電解コンデンサ20は、プリヒート用ヒータ45、予熱用ランド230および図示しない低電位側の予熱用ランドからの熱伝導により加熱されることになる。よって、電解コンデンサ20は、プリヒート区間41において、従来の回路装置と比較して早く温度上昇することができる。従って、本実施形態においても第一実施形態と同様の作用効果を得られる。また、回路基板210の表面に十分な予熱用ランド230の面積を確保できない場合に、回路基板210の裏面を有効に利用し、確実にリフローはんだ付けできる。
【0058】
<第三実施形態の変形態様>
第三実施形態において、予熱用ランド230は、回路基板210の裏面に配置する構成としたが、回路基板210の表面と裏面の両面に配置しても良い。このような構成とすることで、熱容量がより大きな電子部品に対して、予熱用ランド230の面積を確保することができる。つまり、プリヒート区間41において、部品ランド13に熱伝導する熱量を多くすることができる。よって、熱容量のより大きな電子部品に対応し、良好なリフローはんだ付けが可能となる。
【0059】
また、本実施形態においても予熱用ランド230は対象とする部品ランド13に近接していれば同様の効果を得られる。よって、予熱用ランド230は、最小の矩形領域Sの内部または外部において、部品ランド13に近接する位置に配置する構成としてもよい。また、回路基板210の裏面において、他の電子部品や導電パターン12に接触しなければ、最小の矩形領域Sの内部に限らず、予熱用ランド230に十分な面積を確保する構成としてもよい。
【0060】
<第四実施形態>
第四実施形態の構成について、図7を参照して説明する。図7は、回路装置301の断面の拡大図である。
【0061】
ここで、第四実施形態の構成は、主に、第一実施形態のブリッジ32,33が部品ランド13,14と別層を経由して部品ランド13,14と予熱用ランド30,31を熱的に接続している点が相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0062】
回路基板310は、複数の導電パターン12と絶縁性の積層板11からなる多層基板である。そして、ブリッジ332は、この多層基板のうち、部品ランド13とは別層に配置されている。このブリッジ332は、別層の導電パターンと同じ工程で形成される。ブリッジ332は、銅めっきを施されたブラインドビアホール51を介して、部品ランド13と予熱用ランド30を熱的に接続している。これは、部品ランド14と予熱用ランド31を接続しているブリッジについても同様である。
【0063】
このような構成とすることで、ブリッジ332は、積層板11によってマスクされることになる。これにより、図4のリフロー区間42において、溶融したクリームはんだ15がブリッジ332へ流入することを防止することができる。よって、電解コンデンサ20のリード部21,22と部品ランド13,14を確実にリフローはんだ付けすることができる。
【0064】
<第四実施形態の変形態様>
第四実施形態において、ブリッジ332は、多層基板である回路基板310の中間層を経由することで、被覆されていた。これに対して、例えば熱硬化性エポキシ樹脂皮膜などの絶縁性被膜であるソルダーレジストによりマスクしてもよい。このような構成とすることで、ソルダーレジストは、溶融したクリームはんだ15の隔壁となりブリッジ332へ流入することを防止することができる。
【0065】
<その他>
第一〜第四実施形態において、ブリッジ32,33,132,232,332は、部品ランド13,14と予熱用ランド30,31,130,230をそれぞれ一本の経路で熱的に接続していた。これに対して、複数のブリッジを設けてもよい。このような構成とすることで、予熱用ランドから部品ランドへの熱伝導度を向上させることができる。
【0066】
また、電解コンデンサ20を熱容量の大きな電子部品として説明したが、同様の電子部品が回路装置上に密集して配置されることがある。このような場合に、例えば、電解コンデンサ20の最小の矩形領域Sと、近接する電子部品の最小の矩形領域が重なることがある。この時、対象とする部品ランドに接続されるそれぞれのリード部が同電位で使用される場合には、この重なった矩形領域に共通の予熱用ランドを設けてもよい。このような構成とすることで、回路基板の省スペース化を図ると共に、確実なリフローはんだ付けすることができる。
【符号の説明】
【0067】
1,101,201,301:回路装置
10,110,210,310:回路基板、 11:絶縁板、 12:導電パターン
13,14:部品ランド、 13a,14a:周縁、 15:クリームはんだ
20:電解コンデンサ(電子部品)、 21,22:リード部
30,31,130,131,230:予熱用ランド
30a,130a,131a:周縁
32,33,132,133,232,332:ブリッジ、 34:スルーホール
40:リフロー炉、 41:プリヒート区間、 42:リフロー区間
43:冷却区間、 44:ベルトコンベア、 45:プリヒート用ヒータ
46:リフロー用ヒータ、 47:クーラー
50:スルーホール、 51:ブラインドビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電位の異なる複数の部品ランドを有する回路基板と、
電位の異なる複数のリード部を有し、前記回路基板上の所定位置に載置され、それぞれの前記部品ランドにそれぞれの前記リード部をリフローはんだ付けにより接続される電子部品と、
電位の異なる複数の前記部品ランドそれぞれに対して設けられる複数の予熱用ランドと、
前記部品ランドと前記予熱用ランドを熱的に接続するブリッジと、
を備えることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記予熱用ランドは、前記回路基板の表面において、前記電子部品および前記部品ランドを含む最小の矩形領域に配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記予熱用ランドの周縁は、前記回路基板の表面において、他の前記電子部品を介在しないように前記部品ランドの周縁と対向することを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記予熱用ランドおよび前記ブリッジは、導電体であることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記回路基板は、スルーホールを有し、
前記予熱用ランドは、前記回路基板の裏面に配置され、
前記ブリッジは、前記スルーホールを介して前記部品ランドと前記予熱用ランドを熱的に接続することを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
前記ブリッジは、絶縁性の積層板または皮膜によりマスクされていることを特徴とする回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−171056(P2010−171056A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9880(P2009−9880)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】