説明

回転ヒンジ及び回転ヒンジを用いた情報機器

【課題】情報機器の表示部を時計回り及び反時計回りに90度回転可能とする回転ヒンジを小型化する。
【解決手段】2つのスリットが交叉しているプレートと、2つのスリットの一方である第1のスリットを移動可能な第1の突起と2つのスリットの他方である第2のスリットを移動可能な第2の突起とを連結する連結部とを有し、前記第1の突起が前記第1のスリット内を一方向に前記交叉箇所を通過して移動するとともに前記第2の突起が前記第2のスリット内を前記交叉箇所から遠ざかった後に近づく往復移動をし、前記連結部が回転可能であることを特徴とする回転ヒンジを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ヒンジ及び回転ヒンジを用いた情報機器に関する。特に、時計方向及び/又は反時計回りに90度回転可能な回転ヒンジ及び、そのような回転ヒンジを用いて表示画面を時計方向及び/又は反時計回りに90度回転可能な情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
情報機器、とりわけ携帯電話の普及が著しい。多くの携帯電話は、片手で操作がしやすいように操作部が縦長の矩形の形状をしており、持ち運びなどの容易性のために操作部と表示部との間に折畳用ヒンジを配置した二つ折り可能な構造(クラムシェル構造)を有している。この場合、二つ折りとなった場合に操作部と表示部との端部が揃うように、操作部の形状と表示部との形状はほぼ同じとなっている。このため、多くの携帯電話においては、通常、表示部も縦長の状態にて使用される。
【0003】
しかしながら、携帯電話に様々な機能が搭載されるようになり、表示部が縦長の状態にあるよりも、場合によっては横長の状態にするのが好ましい場合も出てきた。例えば、テレビ放送を受信して映像を表示する場合には、表示部を横長の状態にすると、表示部の全体を映像の表示に用いることができ、見やすい表示が行える。
【0004】
このため、操作部を縦長の状態を維持したまま、表示部を90度回転可能な表示部を有する携帯電話が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、そのような携帯電話は、表示部を可動筐体とし、回転ヒンジを介して操作部に接続し、表示部を保持する保持部を保持ベースとした場合、可動筐体に板カムが取り付けられ、板カムには、第1突起と第2突起とが設けられる。保持ベースには、第1突起が移動する上下方向の第1通路と第2突起が移動する上下方向の第2通路と、第1突起と第2突起とが移動可能であり、第1通路と第2通路とを接続する共通通路が設けられている。そして、第2突起が共通通路を第1通路側へ移動し、第1突起が第1通路を上に移動し、あるいは、第1突起が共通通路を第2通路側へ移動し、第2突起が第2通路を上に移動することにより、可動筐体が時計方向及び反時計方向に90度回転可能となっている。
【0005】
また、パーソナルコンピュータに接続可能な表示装置などの他の情報機器においても、必要に応じて、表示部を90度回転させ、縦長の状態と横長の状態のいずれかの形態に設定することが可能なものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−121751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように表示部を90度回転可能にするための回転ヒンジの好ましい条件の一つとしては、まず、表示部の円滑な回転動作が提供されるべきことが挙げられる。特許文献1に開示された技術においては、係止凸部及び係合凹部が形成されているために、第1突起、第2突起を係止凸部・係合凹部にはめ込む動作が必要となり、円滑な回転動作の提供が困難である。また、共通通路が水平に延びていると、第1突起又は第2突起が共通通路に存在する間、表示部は第1突起又は第2突起を中心として回転するため、共通通路の中央を上方に曲げる必要もあり、円滑な回転動作の提供が困難となる。
【0008】
また、別の条件の一つとしては、回転ヒンジの幅を小さくし、表示部の回転中に回転ヒンジを有する回転機構の部分が見えないようにするべきことが挙げられる。特許文献1に開示された技術においては、共通通路部を上方に曲げたとしても水平に延びている部分があるので、回転ヒンジの幅を小さくするべきことが困難である。
【0009】
また、別の条件の一つとしては、表示部を時計回り又は反時計回りに90度回転させる前と後とにおいて、表示部が操作部に対して可能な限り左右対称を維持することが挙げられる。言い換えれば、回転前の前の表示部の対称線と回転後の表示部の対称線が略同一になっていることである。特許文献1に開示された技術においては、例えば、その図13に示されるように、反時計回りに90度回転させた場合には表示部が操作部に対して大きく左に移動しており、対称性が維持されておらず、美感が損なわれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面においては、2本のスリットが交叉箇所にて交叉しているプレートと、その2本のスリットの一方である第1のスリット内を移動可能な第1の突起とその2本のスリットの他方である第2のスリット内を移動可能な第2の突起とを連結する連結部と、を有する回転ヒンジが提供される。そして、第1の突起が第1のスリット内を一方向に2つのスリットの交叉箇所を通過して移動し、また同時に、第2の突起が第2のスリット内を交叉箇所から遠ざかりその後に近づく往復移動をすることが可能になっている。これにより、連結部を円滑に回転させることが可能となり、課題が解決される。また、第2の突起を往復運動させることにより、回転ヒンジを小型化できる。
【0011】
また、第2の突起が第2のスリット内を一方向に2つのスリットの交叉箇所を通過して移動し、また同時に、第1の突起が第1のスリット内を交叉箇所から遠ざかりその後に近づく往復移動をすることが可能である。したがって、連結部を時計方向にもその逆方向にも回転させることが可能となる。
【0012】
本発明の第2の側面においては、上述の第1の側面において、第1のスリットと第2のスリットとのそれぞれは、2つある端のうちの一方の端と交叉箇所との間において、第1の屈曲箇所と、前記第1の屈曲箇所及び前記交叉箇所の間に第2の屈曲箇所とを有している回転ヒンジが提供される。そして、第1の突起と第2の突起とのそれぞれを、第1のスリットの第1の屈曲箇所と第2のスリットの第1の屈曲箇所に位置させることが可能となっている。この状態から、第1の突起が第1のスリットの第2の屈曲箇所に向けて移動するとともに第2の突起が第2のスリットの端に向けて移動する。さらに、第1の突起が第1スリットの第2の屈曲箇所から交叉箇所を通過して前記第1のスリットの端の反対の端に接近するとともに第2の突起が第2のスリットの端から第1の屈曲箇所に移動する。これにより、連結部が回転することになる。これにより、第1の突起が第1のスリットの第2の屈曲箇所に向けて移動するとともに第2の突起が第2のスリットの端に向けて移動すると、連結部を回転させながら上方に移動させることが可能となり、連結部に携帯電話などの情報機器の表示部や操作部を固定させた場合に、表示部の中心を回転ヒンジから一時的に離れるようにしつつ回転させることが可能であるので課題が解決される。
【0013】
また、本発明の第3の側面においては、上記の側面いずれかにおいて、第1の突起が第1のスリット内を一方向に交叉箇所を通過して移動しつつ第2の突起が第2のスリット内を往復移動すると連結部が90度回転する回転ヒンジが提供される。これにより、携帯電話などの情報機器において、表示部や操作部を90度回転させることが可能であり、課題が解決される。また、2つのスリットの形状を左右対称とすることにより、表示部を、90度回転する前と後とにおいて、略同一の鉛直線に対して左右対称とすることができる。
【0014】
また、本発明の第4の側面においては、上記の第1から第3の側面のいずれかにおいて、第1の突起が交叉箇所に到達した場合に第2のスリットに進入するのを阻止する進入阻止手段を備える回転ヒンジが提供される。これにより、第1の突起が第1のスリット内を移動することが保証される。
【0015】
また、進入阻止手段は、プレート上に突出する領域としてガイド部が形成され、また、連結部には、第3の突起が形成されており、第1の突起が交叉箇所に到達した場合、ガイド部の第1の突出箇所と第3の突起とが接近、接触、当接し、第1の突起が、第2のスリットへ進入するのを阻止するようになっていてもよい。
【0016】
また、連結部の回転が90度に近づくと、第3の突起がガイド部の交叉箇所の反対側に位置する形状をガイド部が有していてもよい。言い換えると前記連結部が90度を超えて回転しようとすると、前記第3の突起がガイド部に接近、接触、ないしは当接するようになっていてもよい。これにより、連結部が90度を超えて回転することを阻止することができる。これにより、情報機器の破損などを防止することができる。
【0017】
第2の突起を、第2のスリットの第1の屈曲箇所に向く力を加えて付勢するようになっていてもよい。これにより、第2の突起が第2のスリットの第1の屈曲箇所に位置する場合の力学的エネルギーを最小にすることができ、安定な状態を実現することができる。
【0018】
付勢の手段は、一端がプレートに接続された弾性体に接続されているレバーが第2の突起に接触して第2のスリットの第1の屈曲箇所に向けた力を加えるようになっていてもよい。
【0019】
また、レバーの上辺は、第2の突起が第2のスリット内を移動する間、プレートの上辺の下方に位置するようになっていてもよい。これにより、レバーがプレートの上部に位置しないので、回転ヒンジの上方に空間を設ける必要がなく、回転ヒンジを用いる機器の小型化などを実現できる。
【0020】
また、プレートは2つの側辺と、この2つの側辺の間にスリットの交叉箇所の上側が窪んで凹部を有する上辺とを有していてもよい。この凹部を用いて情報機器の信号を伝送するためのケーブルなどを配置することが可能となる。
【0021】
また、レバーは、プレートの2つの側辺に平行な第1の部分及び第2の部分と、第1の部分と第2の部分とを接続する第3の部分とを有しており、第1の部分又は第2の部分が第2の突起に接触してもよい。これにより、第2の突起に加える力を発生させる弾性体を2つに分けることができ、小型化することができる。
【0022】
なお、第3の部分は、第1の部分及び第2の部分の上部を接続する。あるいは、第3の部分は第1の部分及び第2の部分の下部を接続する。特に、第3の部分が第1の部分及び第2の部分の下部を接続する場合には、回転ヒンジを情報機器の表示部などの回転に用いる場合、表示部との信号の送受信を行うためのケーブルがレバーに接触することを防止することができ、ケーブルの損傷の発生を抑制できる。
【0023】
また、本発明の第5の側面においては、上記の回転ヒンジを用いた情報機器が提供される。例えば、キーボードやジョイスティックなどの操作部やディスプレイ部を備えた表示部筐体などが回転ヒンジを介して本体に設けられた情報機器である。そして、操作部や表示部筐体は、その裏面などに配置されている取付部が、前記連結部に固定されている。上述したように、回転ヒンジの第1の突起が第1のスリット内を一方向に交叉箇所を通過して移動するとともに第2の突起が前記第2のスリット内を交叉箇所から遠ざかった後に近づく往復移動をして、操作部や表示部筐体などを時計方向にもその逆方向にも90度回転可能とすることができる。
【0024】
また、本発明の第5の側面の情報機器において、第1のスリットと第2のスリットとのそれぞれは、一方の端と交叉箇所との間において、第1の屈曲箇所と、第1の屈曲箇所及び交叉箇所の間に第2の屈曲箇所とを有し、第1の突起と第2の突起とのそれぞれを、第1のスリットの第1の屈曲箇所と第2のスリットの第1の屈曲箇所に位置させた後、第1の突起が第1のスリットの第2の屈曲箇所に向けて移動するとともに第2の突起が第2のスリットの端に向けて移動すると、操作部や表示部筐体などは、第1の突起と第2の突起とのそれぞれが第1のスリットの第1の屈曲箇所と前記第2のスリットの第1の屈曲箇所に位置しているときの高さ以上の領域を移動しながら回転するようになっていてもよい。これにより、表示部が回転する場合、表示部の下の領域に進入することを防ぐことができる。
【0025】
また、操作部や表示部筐体などは、時計方向又はその逆方向に90度回転する前と後とにおいて、略同一の鉛直線に対して左右対称となるようにしてもよい。これにより、回転によって情報機器の外形の左右対称性が損なわれることが防止できる。
【0026】
また、回転ヒンジのプレートは、直線状の側辺と、第1のスリットと第2のスリットとの上側が窪んで凹部を有する上辺とを有し、プレートの側辺から上辺に沿って引き回され、プレートの凹部の上の位置に設けられた操作部や表示部筐体など裏面の通線穴よりケーブルが操作部や表示部筐体などに接続されるようになっていてもよい。通線穴を操作部や表示部筐体などの回転中心の部分に位置させることで、左右に回転させた場合であっても、ケーブルに無理な力が加わることなどを防止できる。
【0027】
また、通線穴の上辺は、円弧状であるようにしてもよい。この場合、回転ヒンジが、直線状の側辺と側辺の間に第2の凹部を有するヒンジ取付筐体の後方に取り付けられ、また、表示部筐体は前記ヒンジ取付筐体の前方に取り付けられ、表示部筐体が回転しても、通線穴の上辺がヒンジ取付筐体の直線状の2つの側辺の上辺を結ぶ直線の下側に位置するようになっていてもよい。これにより、操作部や表示部筐体などの裏面側から見た場合、通線穴が見えてしまい、美感を損ねることを防止できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、回転ヒンジによる円滑な回転を提供可能である。また、表示部の中心を回転ヒンジから一時的に離れるようにしつつ回転させることが可能であるので、表示部を矩形に保ちつつ表示部との距離を開ける必要が無くなる。また、回転中に回転ヒンジを含む回転機構の部分が外部から見えないようにすることが可能となる。また、回転ヒンジを小さくすることができるので、表示部を左右どちらの方向に90度回転させた場合でも表示部の中心を略同一の位置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転ヒンジの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る回転ヒンジの組立構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る回転ヒンジのプレートの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る回転ヒンジの斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る回転ヒンジの回転過程の一例図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る情報機器の表示部の組立構成図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る情報機器の表示部の側面図と回転過程の一例図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る情報機器の表示部の後方にケーブルを引き回した一例図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る情報機器の表示部の通線穴の一例図と回転過程の一例図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る回転ヒンジの斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る情報機器の表示部の後方にケーブルを引き回した一例図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る回転ヒンジの通路の投影図の一例図と比較例に係る回転ヒンジの通路の投影図の一例図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下において、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明される形態に限定されることはなく、種々の変形を施して実施することが可能である。
【0031】
(実施形態1)
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジを一方向から見た場合の斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)に斜視図が示される回転ヒンジを別の一方向から見た場合の斜視図である。図2は、図1(a)及び図1(b)に斜視図が示される回転ヒンジの組み立て構成図である。
【0032】
本発明では、回転ヒンジを、図1(a)に図示されるように見る場合を、「斜め前方の向きから見る」といい、回転ヒンジを図1(b)に図示されるように見る場合を、「斜め後方の向きから見る」という。本発明の一実施形態に係る回転ヒンジの前方、後方はこれによって定義されるものとする。また、本発明では、図1(a)及び図1(b)における上の向き、言い換えると、図2の奥行きへ行く向きを、「上方の向き」といい、図1(a)及び図1(b)における下の向き、言い換えると、図2の手前へ来る向きを、「下方の向き」という。水平、垂直及び鉛直とは、この上方の向きと下方の向きに対して直行する向き及び平行な方向として定義される。
【0033】
本発明の一実施形態に係る回転ヒンジは、プレート1を有し、プレート1には、通路2が形成されている。通路2は、2つのスリットが交叉した形状として構成されている。通路2は、全体としてX字に似た形状となっている。ただし、図1などにおいて、それぞれのスリットは、X字の各辺のように直線ではなく、例えば、S字形となっている。また、プレート1は、左右対称な形状として図示されているが、かならずしもこれに限定されることはない。
【0034】
また、通路2を構成するそれぞれのスリットは、上方の端3と第1の屈曲箇所4との間の第1区間、第1の屈曲箇所4から第2の屈曲箇所5との間の第2の区間及び第2の屈曲箇所5と下方の端6との間の第3の区間に分割される。2つのスリットの交わる箇所は、第3の区間内に位置している。通路2のそれぞれのスリットには、後に説明する可動ピン9が1つずつ貫通しスリット内を移動可能となっている。後に説明するように、情報機器の表示部が回転するに伴って連結部7が回転し連結部7に固定されている可動ピン9それぞれが、通路2を構成するそれぞれのスリットを移動する。なお、可動ピン9は、連結部7に各スリット内を移動可能な突起を設ける一例である。
【0035】
ここに「スリット」とは、細長い孔を意味する。これは、本発明の一実施形態においては、後に説明するように連結部7に、フランジを有する可動ピン9をプレート1の後方からスリットを介して固定して、連結部7がプレート1から離れないようにするためである。連結部7がプレート1から離れないようにする手段は、これに限定されない。その場合、通路2は、スリットで形成される必要はなく、底面を有する溝として形成されていてもよい。なお、スリットないし溝は、細長い形状であるので、両端を有することになる。図1などに示すように、両端の一方のうち上方にある端を「上方の端」、他方の端を「下方の端」という。
【0036】
通路2を構成するそれぞれのスリットの形状について説明する。それぞれのスリットにおいて、第1の屈曲箇所4は、上方の端3より、下方に位置し、かつ2つのスリットの交わる箇所の側に位置している。また、図1、図2においては、第1の区間は、上方の端3から第1の屈曲箇所4に向かって下に凸の曲線に沿った形状となっている。また、第2の屈曲箇所5は第1の屈曲箇所4より、その上方に位置し、かつ2つのスリットの交わる箇所の側に位置している。第2の区間は、例えば、他方のスリットの第1の区間の中の一点を中心にする円弧に沿った形状に形成することができる。あるいは略直線の形状に形成してもよい。また、下方の端6は第2の屈曲箇所5より、その下方に位置し、かつ2つのスリットの交わる箇所の反対の側に位置している。図1、図2においては、第3の区間は、第2の屈曲箇所5から下方の端6に向かって上に凸の曲線に沿って形成されているが、略直線の形状であってもよい。
【0037】
スリット内の任意の箇所における傾きを、その箇所におけるスリットの中心線の傾きとして定義した場合、本発明の一実施形態においては、第1の屈曲箇所4の前後における第1の区間の傾きと第2の区間の傾きの符号は異なり、また、第2の屈曲箇所5の前後における第2の区間の傾きと第3の区間の傾きの符号も異なっている。したがって、スリットの中心線の高さに着目すると、上方の端3において高さは最大となり、第1の屈曲箇所4において極小となり、第2の屈曲箇所5において極大となり、下方の端6において最小となる。
【0038】
上述のように、それぞれのスリット内を、2つの可動ピン9のそれぞれが移動する。そこで次に、2つの可動ピン9の位置関係とスリット内の移動とについて説明する。なお、以下では、2つあるスリットの内の一つを「一方のスリット」と呼び、他を「他方のスリット」と呼ぶ。そして、一方のスリットを移動する可動ピン9を「一方の可動ピン9」と呼び、他方のスリットを移動する可動ピン9を「他方の可動ピン9」と呼ぶ。なお、一方のスリット、他方のスリットを、第1のスリット、第2のスリットと呼ぶ場合がある。また、一方の可動ピン9、他方の可動ピン9を、第1の可動ピン9、第2の可動ピン9と呼ぶ場合がある。また、一方と他方は、第1と第2とにそれぞれ対応させるのみならず、第2と第1とにそれぞれ対応させることもできる。
【0039】
二つの可動ピン9は連結部7に固定され、二つの可動ピン9の間の距離は一定に保たれている。そして、一方の可動ピン9が一方のスリットの第1の屈曲箇所4に位置している時には、他方の可動ピン9も他方のスリットの第1の屈曲箇所4に位置することができる。そして、一方の可動ピン9が一方のスリットの第2の区間を第1の屈曲箇所4から第2の屈曲箇所5に向けて移動すると、他方の可動ピン9は、他方のスリットの第1の区間を第1の屈曲箇所4から上方の端3へ向けて移動する。また、一方の可動ピン9が一方のスリットの第3の区間を第2の屈曲箇所5から下方の端6に向けて移動する際には、2つのスリットが交わる箇所(交叉箇所)まで移動する間は、他方の可動ピン9は、他方のスリットの第1の区間に位置する。例えば、他方の可動ピン9は他方のスリットの上方の端3に向かって移動するか、上方の端3に停留する。一方の可動ピン9が一方のスリットの交叉箇所を通過すると、他方の可動ピン9は、他方のスリットの第1の区間を第1の屈曲箇所4に向かって移動し、最終的に他方のスリットの第1の屈曲箇所4に到達する。
【0040】
本発明の一実施形態においては、2つのスリットの第1の屈曲箇所4それぞれを結ぶ線は水平となるように、第1の屈曲箇所4が配置される。また、一方のスリットの第1の屈曲箇所4から垂線を下ろした場合、その垂線は他方のスリットの第3の区間と交わるようにスリットの形状が定められる。この場合、垂線の長さは、2つの可動ピン9の間の距離に等しくなっていることが好ましい。2つの可動ピン9が第1の屈曲箇所4に位置している状態と、一方の可動ピン9が第1の屈曲箇所4に位置し他方の可動ピン9が他方のスリットの第3の区間に位置する状態とを比較すると、2つの可動ピン9を結ぶ線分は90度回転しているからである。また、2つのスリットの形状は左右対称であってもよいが、左右対称であることに限定はされない。
【0041】
このようなスリットの形状と可動ピン9の配置及び移動によれば、2つの可動ピン9それぞれがそれぞれのスリットの第1の屈曲箇所4に位置している時は、二つの可動ピン9を結ぶ線は水平となる。そして、一方の可動ピン9が一方のスリットの第2の区間を第1の屈曲箇所4から第2の屈曲箇所5に向けて移動すると、2つの可動ピン9の中心点は上方に移動しながら連結部7が回転する。さらに一方の可動ピン9が一方のスリットの第2の屈曲箇所5から2つのスリットの交わる箇所へ移動すると、連結部7はさらに回転を続ける。その後、他方の可動ピン9が他方のスリットの第1の区間を上方の端3の方向から第1の屈曲箇所4に移動すると、連結部7は回転を続ける。最終的に他方の可動ピン9が他方のスリットの第1の屈曲箇所4に到達すると、二つの可動ピン9を結ぶ線は垂直となる。これにより、二つの可動ピン9を結ぶ線が、水平となる状態と垂直となる状態とを遷移することになり、連結部7の90度回転が実現される。
【0042】
連結部7は、スリーブ8を介してプレート1の前方の側に配置される。これは、実施形態2において説明するように、連結部7の連結孔25、26にネジなどを挿入して表示部筐体に連結される場合に、そのネジなどがプレート1に接触しないようにするためである。また、連結部7に、ヒンジ取付筐体よりも前方の側を回転と移動をさせ、表示部の厚みを小さくするためである。
【0043】
プレート1の後方の側より可動ピン9がスリット及びスリーブ8を貫通して連結部7に固定される。可動ピン9の後方の端にはフランジが形成され、連結部7とプレート1とが離れることが防止される。
【0044】
また、プレート1の形状の特徴としては、2つのスリットが形成されていることに加え、各部材を取り付けるためのネジ孔などの連結用の孔が形成される。また、実施形態2において説明するように、連結部7を表示部筐体に取り付けるための連結孔25にネジなどをプレート1の後方から挿入するための孔27が設けられる。なお、連結部7の連結孔26にネジなどをプレート1の後方から挿入するためには、2つの可動ピン9それぞれが第1の屈曲箇所4に位置している時に、2つのスリットの交わる箇所が連結孔26の後方に位置するようになっている。
【0045】
また、プレート1のうち、2つのスリットの交叉箇所の上方に位置する上辺の部分は、2つのスリットの上方の端に向かって窪み凹部30が形成されていることが好ましい。この凹部30を用いて、表示部筐体のディスプレイ部などと信号を送受信するためのケーブルを引き回して表示部筐体に接続するためである。
【0046】
なお、一方の可動ピン9が一方のスリットの第3の区間を第2の屈曲箇所5から下方の端6に向けて移動する際には、一方の可動ピン9は、途中で2つのスリットが交わる箇所に到達する。このとき、一方の可動ピン9が、他方のスリットへ移動すると、連結部7が90度回転しないことがある。そこで、一方の可動ピン9が、途中でスリットが交わる箇所に到達した時に、他方の可動ピン9の位置するスリットに進入することを防止する手段が回転ヒンジに備わっていることが好ましい。
【0047】
この手段を実現する一例として、可動ピン9をプレート1の表面またはそれと平行な面で切断した際の断面形状を回転対称の円形などではなく、楕円、長方形のように一方の向きの長さをそれと直行する向きの長さよりも大きくし、一方の向きの長さをスリットの幅よりも大きくする。これにより、一方の可動ピン9がスリットの交わる箇所に移動しても、他方の可動ピン9が移動する他方のスリットに進入することを阻止することができる。
【0048】
別の実現手段として、図1(a)及び図2に示されるように、連結部7にガイドピン10を固定し、プレート1の通路2の左右にガイド11を設けてもよい。ガイド11は、連結部7と接触しないようにスリーブ8の厚みより薄い平面形状となっている。また、ガイドピン10は、連結部7のプレート1の側に突起を形成し、その突起はプレート1と接触しない。この突起の位置は、例えば、二つの可動ピン9の垂直二等分線上であり、二つの可動ピン9を結ぶ線が水平であるとき、可動ピン9の下方の側とする。また、ガイド11の形状の満たす条件としては、一方の可動ピン9が一方のスリットの第3の区間を第2の屈曲箇所5から下方の端6に向けて移動し、スリットの交わる箇所に到達すると、ガイドピン10の下方にガイド11が位置し、ガイドピン10とガイド11とが接近、接触ないし当接することにより、ガイド11がさらに下方に移動することを阻止することである。
【0049】
例えば、図1(a)、図2では、ガイド11は、略Z字状となっており、一方の可動ピン9が一方のスリットの第3の区間を第2の屈曲箇所5から下方の端6に向けて移動し、スリットの交わる箇所に到達すると、ガイドピン10の下方にガイド11のZ字の上の水平線分に相当する箇所に接近、接触ないし当接することで、ガイド11がさらに下方に移動することを阻止する。
【0050】
なお、ガイド11がさらに下方に移動することを阻止するためには、ガイド11の形状が略Z字状になっていることは必須ではなく、一方の可動ピン9がスリットの交わる箇所に到達すると、ガイドピン10の下方にガイド11が位置するようになっていればよい。そして、他方のスリットの下方の端へ向けて移動しようとして移動するのを、ガイドピン10がガイド11に接近、接触ないし当接して、阻止するようになっていればよい。
【0051】
また、ガイド11の形状を図1(a)、図2に示すような略Z字状のように、凸部分を有する形状とすることにより、連結部7が回転して2つの可動ピン9を結ぶ線が水平から垂直になった状態から、さらに連結部7が回転することを防止することができる一方の可動ピン9がスリットの交わる箇所を通過した後、ガイドピン10が凸部分を回り込みながら移動する。そして、交叉箇所に対してガイド11の反対側に位置するようになる。この状態から、一方の可動ピン9を中心にして連結部が90度を超えて回転しようとすると、ガイドピン10がガイド11のZ字の水平でない線分の箇所に接近、接触ないし当接する。これにより、一方の可動ピン9を中心にして連結部が90度を越えて回転することが阻止される。
【0052】
また、さらに、図1(a)、図2に示すように、一方の可動ピン9が一方のスリットの第3の区間を第2の屈曲箇所5から下方の端6に向けて移動し、スリットの交わる箇所に到達した後に、ガイドピン10を、ガイド11の側面のうち、スリットが交わる箇所とは反対の側に位置する凹部に進入させ、二つの可動ピン9を結ぶ線が垂直になった場合に、その凹部にガイドピン10を位置させる。これにより、連結部7がさらに回転しようとしても、ガイド11がガイドピン10の移動をより効果的に阻止し、連結部7がさらに回転することが抑制され、阻止される。
【0053】
なお、ガイド11は、図1(a)及び図2に示すように、プレート1とは別の部品として形成されてもよい。この場合、ガイド固定ピン12によりプレート1に固定することができる。あるいは、プレート1とガイド11とを接着や溶接により固定することもできる。あるいは、ガイド11はプレート1と一体に形成することもできる。例えば、プレート1をプレス加工により形成する場合には、そのプレス加工により、図3に示すように、ガイド31を凸部分として形成することができる。もちろん、先にプレート1を形成した後、プレス加工によりガイド31を形成することもできる。
【0054】
二つの可動ピン9を結ぶ線が水平である場合と、垂直である場合とを力学的に安定な状態とするために、連結部7を上方から付勢してもよい。この場合、図1(b)に示されるように、プレート1の後方にレバー14を設け、両方又は一方の可動ピン9の上方から力を加えるようにする。この場合、レバー14は、図1(b)に示されるように内側が下向きの略U字形であり、そのU字形の底部が両方又は一方の可動ピン9に接触する。レバー14は、レバー取付ピン13を用いてプレート1から離れないようにしつつ上方及び下方に移動可能とする。
【0055】
図1(a)、図1(b)及び図2に示されるように、固定ピン15によりU字形の開放側の端部にトーションスプリング17の一端が接続され、トーションスプリング17の別の端が固定ピン16によりプレート1に固定される。トーションスプリング17が、その両端の距離が小さくなるように変形しようとすると、可動ピン9にレバー14により上方から力が加わる。これにより、可動ピン9の両方または一方が、第1の屈曲箇所4にあると、その状態から可動ピン9を移動させようとすると、レバー14に対してトーションスプリング17により加わっている力とは反対向きの力を加える必要が生じる。すなわち、二つの可動ピン9を結ぶ線が水平である場合と、垂直である場合とが力学的に安定な状態となる。
【0056】
なお、付勢は、トーションスプリング17を用いることに限定されない。ゴムやバネなどの弾性体により、レバー14に下向きの力を加えることができる。例えば、図4(a)に示すように、図1(a)、図1(b)及び図2に示されるよりもレバー144の高さを小さくして、U字形の開放部の端部41と、プレート1に設けられた凸部42とをコイルバネ43により接続し、引き合うようにしてもよい。この場合、コイルバネ43などの弾性体は、配置後、自然長よりも長くなる。これにより、コイルバネ43などは自然長に戻ろうとして、U字形の開放部の端点41を引くので、レバー144に下向きの力が加わる。
【0057】
あるいは、弾性体の長さを自然長よりも小さくした状態で付勢を行うこともできる。例えば、図4(b)に示すように、レバー145のU字形の垂直に延びる部分の内部にスリットなどを設け、プレート1に向けられた凸部44と、スリットなどの下方の端点45との間に、コイルバネ46を配置してもよい。この場合、コイルバネ46長さは、自然長よりも短くなる。これにより、コイルバネ43などは自然長に戻ろうとして、スリットのなどの下方の端点45を押すので、レバー145に下向きの力が加わる。
【0058】
図1、図4のいずれの場合においても、レバーが上下する移動距離は、可動ピン9が通路2のスリットの第1の区間を移動する際の上下の高さとなり、移動距離を小さくすることができる。
【0059】
また、2つの可動ピン9がそれぞれ第1の屈曲箇所4に位置しているとき、レバーの外側の上辺が、凹部30よりも下に位置し、プレート1内に位置することが好ましい。このようにすると、後に説明されるように、凹部30にケーブルを引き回して表示部筐体に接続することが可能となるからである。
【0060】
なお、プレート1の上辺には、凹部が設けられる点を除けば、プレートの形状は任意のものとすることができる。例えば、図4(a)のように凹部以外に水平部分があったり、図4(b)に示すように、上に凸な形状となっていたりしていてもよい。
【0061】
図5は、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジを前方からみた場合において、連結部7が時計回りに90度回転する様子を示す。図5においては、2つの可動ピンを結ぶ線が水平である場合の回転角度を0度としている。そして、90度に至るまでの途中の3段階を、22.5度、45度、67.5度としている。図5の上から第1行には、回転ヒンジを前方から見た場合を、次の第2行には、回転ヒンジを後方から見た場合を示している。なお、また、回転途中の角度である22.5度、45度、67.5度という値は例示であって、通路2のスリットの形状により異なる場合がある。
【0062】
回転角度が0度である場合には、2つの可動ピンは、それぞれのスリットの第1の屈曲箇所に位置している。そして、レバーにより下向きの力が加えられているので、力学的に安定である。
【0063】
回転角度が22.5度である場合には、一方の可動ピンが一方のスリットの第2の屈曲箇所に位置し、他方の可動ピンは、他方のスリットの第1の区間の途中に位置している。0度である場合と比べると、連結部は、上に位置している。
【0064】
回転角度が45度である場合には、一方の可動ピンが2つのスリットの交わる箇所に位置し、他方の可動ピンは、他方のスリットの上方の端に位置している。このとき、可動ピンが左のガイドの上部に接触している。これにより、一方の可動ピンが他方のスリットに入り込むことが阻止される。図5の第3行に示されるように、ガイドが存在しないと、一方の可動ピンは、両方のスリットのいずれへも移動が可能であり、連結部の90度の回転を実現できない場合がある。
【0065】
さらに回転角度が67.5度となると、一方の可動ピンがスリットの交わる箇所を通過し、また他方の可動ピンは、他方のスリットの第1の区間の途中に位置することになる。
【0066】
回転角度が90度となると、他方の可動ピンが他方のスリットの第1の屈曲箇所に位置する。このとき、レバーにより下向きの力が加えられているので、力学的に安定となる。また、図5においては、一方の可動ピンは、一方のスリットの下の端に位置している。また、ガイドピンは、左のガイドの凹部に位置することとなる。可動ピンを結ぶ線分とガイドピンとの間にはガイドが存在する。これにより、ガイドピンの斜め右上方への移動が阻止される。したがって、90度を超えて回転することが阻止される。図5の第3行に示されるように、ガイドが存在しないと、90度を超えて回転してしまうこととなる。
【0067】
なお、上記の説明においては、連結部7が時計回りに90度回転する過程を説明したが、反時計回りに90度回転する過程も同様に説明が可能である。上記の説明における「一方のスリット」、「他方のスリット」をそれぞれ「第1のスリット」、「第2のスリット」とし、「一方の可動ピン」、「他方の可動ピン」を「第1の可動ピン」、「第2の可動ピン」とすると、連結部7が反時計回りに90度回転する過程は、以下のように説明できる。
【0068】
すなわち、連結部7が反時計回りに22.5度回転した場合には、第2の可動ピンが第2のスリットの第2の屈曲箇所に位置し、第1の可動ピンは、第1のスリットの第1の区間の途中に位置する。
【0069】
連結部7が反時計回りに45度回転した場合には、第2の可動ピンが2つのスリットの交わる箇所に位置し、第1の可動ピンは、第1のスリットの上方の端に位置している。このとき、可動ピンが右のガイドの上部に接触している。
【0070】
さらに連結部7が反時計回りに67.5度回転すると、第2の可動ピンが第2のスリットの交わる箇所を通過し、また第1の可動ピンは、第1のスリットの第1の区間の途中に位置することになる。
【0071】
その後、第1の可動ピンは、第1のスリットの第1の屈曲箇所に移動し、第2の可動ピンは、第2のスリットの第3の区間を移動し、連結部7が反時計回りに90度回転する。
【0072】
以上のように、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジにおいては、略S字形のスリットを2つ交わらせた形状の通路を連結部に固定された可動ピンが移動する。特に、連結部が0度から90度まで回転する間にスリットの第1の区間を可動ピンが往復するので、通路の全体の幅を小さくでき、回転ヒンジの小型化を実現できる。また、通路のスリットの全体形状は比較的緩やかに曲がっているS字形状であるので連結部を円滑に回転させることが可能となる。
【0073】
また、連結部を左に90度回転させた場合の可動ピンの位置と、連結部を右に90度回転させた場合の可動ピンの位置とを、2つの第1の屈曲箇所の垂直二等分線上の点に対して点対称とすることができる。したがって、連結部7に表示部筐体を固定した場合に、表示部筐体を左右に90度回転しても表示部筐体の中心部を操作部の略中心線上に位置させることができ、これにより、情報機器の線対称性を維持でき、操作者に美感を与えることができる。
【0074】
また、回転ヒンジ全体を線対称とすることができるので、情報機器の重心が偏ることを防ぐことができる。
【0075】
また、一方の可動ピンが第2の区間を移動する際には、連結部が回転しながら上方へ移動するので、回転部に固定された表示部筐体の下の角が、回転角度が0度であるときの表示部筐体の下辺より下の部分に侵入することを防止できる。
【0076】
また、回転ヒンジのプレートの上辺に凹部を設けることができ、表示部筐体と信号を送受信するためのケーブルを、その凹部を通して引き回して表示部筐体に接続することができる。
【0077】
(実施形態2)
図6は、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジを、情報機器の一例である携帯電話の表示部の構成に適用した場合の表示部の組み立て構成図である。
【0078】
本発明の一実施形態に係る回転ヒンジが、ヒンジ取付筐体64の後方に、ビス65を用いて取り付けられる。すなわち、プレート1とヒンジ取付筐体64とのそれぞれに設けられたネジ孔などを一致させ、ビス65などを挿入する。これにより、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジがヒンジ取付筐体64に固定される。この場合、連結部7がヒンジ取付筐体64より前方を回転、移動可能となるように、スリーブ8の厚さとヒンジ取付筐体64の厚さとを選択する。すなわち、スリーブ8の厚さがヒンジ取付筐体64の厚さ以上となるようにする。
【0079】
次に、ヒンジ取付筐体64の前方からディスプレイ部71を備える表示部筐体70を、その後方に取り付けられている取付部72を用いて、連結部7に固定する。すなわち、プレート1の後方より、孔27と2つのスリットの交わる箇所とを介して、固定用ビス81などを挿入し、連結部7に取付部72を固定する。なお、表示部筐体70は、取付部72が取り付けられている部分が、窪んだ形状となっており、連結部7がプレート1と離れていることによる表示部全体の厚みの増加を打ち消すことができるようになっていてもよい。
【0080】
なお、ヒンジ取付筐体64の2つの側辺の間の上辺部分には、凹部82が設けられている。言い換えると、ヒンジ取付筐体64に凹部82が設けられ、結果として、ヒンジ取付筐体64の2つの側辺は突出している。この理由の一つは、固定用ビス81を用いて連結部7に取付部72を固定できるようにするためである。また、別の理由としては、ガイド11を凹部82の内側の部分83に配置することにより、ガイド11による厚みの増加を打ち消すためでもある。また、凹部82により、プレート1の凹部30を通してケーブルを引き回すこともできるようにするためでもある。
【0081】
なお、ガイド11をプレート1に設ける必要はない。ヒンジ取付筐体の凹部82の内側の部分83によりガイドピン10の可動範囲を制限することが可能であり、この制限により、連結部7に取り付けられている可動ピン9の可動範囲を制限することができる。したがって、可動ピン9が他のスリットに進入したり、連結部7が90度以上回転したりすることを阻止することができる。
【0082】
なお、実際の製品においては、回転ヒンジが表示部の後方から見えないようにするため、あるいは、回転ヒンジに接触ができないようにするために、ヒンジ取付筐体64に回転ヒンジと表示部筐体70とが取り付けられた後に、ヒンジ取付筐体64にカバーが取り付けられる。このカバーの高さは可能な限り小さくするのが好ましい。表示部筐体70を時計方向又は反時計方向に90度回転しても、カバーが表示部筐体70の前方から見えないようにするのが好ましいからである。そこでカバーの上辺は、ヒンジ取付筐体64の凹部82を形成するための突出している側辺の上辺を結ぶ直線状となっているのが好ましい。
【0083】
図7は、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジを携帯電話の表示部の構成に用いた本発明の一実施形態における表示部筐体70の回転の様子を示す。また、図7の左側には、本発明の一実施形態に係る携帯電話の側面図が示されている。携帯電話は、テンキーや電源ボタンなどが配置された操作部筐体701と、ヒンジ取付筐体702とが折畳用ヒンジ703を介して接続されている。そして、ヒンジ取付筐体702と、表示部筐体704とは、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジを介して接続されている。なお、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジは、符号705で指し示される箇所に配置され、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジによる表示部の厚みの増加が打ち消されている。
【0084】
図7に示す携帯電話の側面の右側には、折畳用ヒンジ703の上部の位置を基準位置として一点鎖線により示し、表示部筐体704の回転の様子を、表示部筐体704の回転角が0度から90度まで、22.5度、45度、67.5度として例示して5段階示している。なお、見やすさのために、表示部筐体は透明とし、ヒンジ取付筐体64を不透明として図示がされている。なお、22.5度、45度、67.5度という回転角度の値は、図5におけるように、例示に過ぎない。
【0085】
回転角度0度において、連結部は、凹部82内部の中央に位置している。回転角度を0度から22.5度へ回転させると、一方の可動ピンが一方の通路の第2の区間を第1の屈曲箇所から第2の屈曲箇所に向けて移動し、また、他方の可動ピンが通路の他方のスリットの第1の区間を第1の屈曲箇所から上方の端へ向けて移動する。これにより連結部は回転しつつ、斜め上方へも移動することになる。したがって、表示部筐体704の右下の角部が、一点鎖線より下方に侵入することを防止できる。逆にいえば、回転角が0度である場合の表示部筐体704の下辺の上方に、回転された表示部筐体704を位置させることができる。
【0086】
回転角度を22.5度から45度へ増加させる間、他方の可動ピンが他方の通路の第1の区間をさらに斜め上方に移動可能であるので、この間においても表示部筐体704の右下の角は、一点鎖線より下方に侵入することがない。
【0087】
なお、実施形態1にて述べたように、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジは、小型化が可能であるので、図7に示すように、回転角度が22.5度から45度へ変化する間、ヒンジ取付筐体の上辺の凹部82の内部が常に表示部筐体704により覆われるようにすることが可能である。
【0088】
回転角度を45度から67.5度へ増加させると、他方の可動ピンを中心にして表示部筐体704が回転する。これにより、表示部筐体704の右下の角は、一点鎖線より上方を移動する。
【0089】
そして、回転角度を67.5度から90度へ回転させると、他方の可動ピンが他方の通路の第1の区間を下方に移動し、一方の可動ピンも一方の通路の第3の区間を下方に移動する。したがって、最終的に表示部筐体704が90度回転することになる。
【0090】
最終的に表示部筐体704が90度回転しても、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジは、小型化が可能であるので、図に示すように、ヒンジ取付筐体の上部が表示部筐体により覆われるので、美感を損ねることを防止できる。
【0091】
表示部筐体704を逆に反時計回りに90度回転させる場合を、図7の下方の半分の部分に示す。時計回りに90度回線させる場合と同様であるので説明は省略する。連結部を時計回りに90度回転させた場合の可動ピンの位置と、逆に90度回転させた場合の可動ピンの位置とを、第1の屈曲箇所の垂直二等分線上の点に対して点対称とすることができるので、図7に示されるように、表示部筐体704を時計回りに90度回転させた場合と、逆に90度回転させた場合とにおいて、表示部筐体の上下左右の位置を同じにすることが可能となる。言い換えると、回転角度が0度である場合と、時計回りまたは反時計回りに90度回転させた場合とにおいて、表示部筐体の形状を略同一の鉛直線に対して左右対称とすることができる。これにより、美感を損ねることをさらに防止できる。
【0092】
なお、「略同一の鉛直線」とは、回転角度が0度である場合の対称線となる鉛直線と時計回りまたは反時計回りに90度回転させた場合の対称線となる鉛直線との2つの鉛直線が同一である場合を含む。また、同一でない場合であっても、2つの鉛直線の距離が、表示部筐体を90度回転させた場合の幅に対して5%以下の距離、好ましくは2%以下の距離であるこという。5%以下、好ましくは2%以下であれば、人の視覚では、回転の前と後とにおいて、ほぼ左右対称であるように見えるからである。
【0093】
(実施形態3)
上述したように、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジは、図1(a)などに示されるように、プレート1に凹部30が形成されるので、凹部30を介して表示部筐体のディスプレイ部との信号を送受信するためのするケーブルを接続することができる。
【0094】
図8は、本発明の一実施形態に係る情報機器の一例である携帯電話において、上述のケーブルを表示部筐体に接続した状態を後方から見た場合の斜視図である。表示部筐体70の後方に通線穴801が設けられ、折畳用ヒンジ703から延びるケーブル802が本発明の一実施形態に係る回転ヒンジのプレート1の側方から上辺を引き回され、通線穴801へ挿入されている。
【0095】
図9は、表示部筐体70に設けられた通線穴801の形状、位置を示している。通線穴801は、取付部72の上部に設けられている。特に、表示部筐体704の回転角度が0度である場合の上下の中央位置に扁平な形状として設けられている。図9において、通線穴801の形状は、円周角が180度より小さな円弧で円を切り取った形状から円弧の端点付近を切り取った形状となっているが、これに限定されることはないが、以下に説明されるように、通線穴801の上辺は円弧になっていることが好ましい。そして、円弧の円の中心は、表示部筐体70の回転中心であることが好ましい。
【0096】
また図9は、表示部筐体70に通線穴801を設けた場合において、通線穴801の位置を、表示部筐体70の回転角度が0度から90度まで、22.5度、45度、67.5度の場合についても示している。
【0097】
通線穴801の上辺が円弧となっていると、図9に、符号901、902、903、904として示される箇所にケーブルを通すことができる。表示部筐体70の回転角度が90度であると、通線穴801の全体が、回転ヒンジのプレートにより覆われてしまうようにも見える。しかし、図6に示されるように回転ヒンジのプレート1と表示部筐体70との間は、ヒンジ取付筐体64の厚さの距離、離れているので、ケーブルの直径をヒンジ取付筐体64の厚さ以下とすることにより、符号905で示される箇所介してケーブルを引き回すことが可能となる。
【0098】
もちろん、通線穴801の幅を図9に示すよりも大きくすることにより、表示部筐体704の回転角度が90度であっても、通線穴801の全体が、回転ヒンジのプレートにより覆われてしまうことが防止できる。しかし、そのようにした場合、表示部筐体704の回転角度が45度や67.5度などであると、表示部筐体70の後方から通線穴801の一部が見えてしまう場合がある。
【0099】
そこで、通線穴801の形状、位置は、ヒンジ取付筐体64に取り付けられるカバーにより常に覆われているのが好ましい。言い換えると、表示部筐体70を0度から時計回り又は/及び反時計回りに90度回転させても、通線穴801全体が表示部取付筐体64の凹部82を形成するための突出している側辺の上辺を結ぶ直線の下に位置するのが好ましい。
このための一つの解決手段としては、通線穴801の上辺を円弧状にする。
【0100】
本発明の一実施形態に係る回転ヒンジは小型化が可能であるので、その側方にケーブルを配置することが可能である。また、プレートに凹部を設けることが可能であるので、そこにケーブルを引き回すことが可能である。さらに、表示部筐体の中心として回転が可能であるので、通線穴をその中心部分に設けると、表示部筐体を回転させてもケーブルに無理な力が加わることを防止できる。
【0101】
(実施形態4)
本発明の実施形態4として、可動ピンの上方から力を加えるために用いるレバーのバリエーションを用いた回転ヒンジとそれを用いた情報機器について説明を行う。
【0102】
図10(a)は、本実施形態に係る回転ヒンジを斜め前方の向きからみた斜視図であり、図10(b)は、本実施形態に係る回転ヒンジを斜め後方の向きからみた斜視図である。図1(a)、(b)などにおいては、可動ピン9の上方から力を加えるために用いるレバー14は、逆U字形となっているが、図10(a)、(b)においては、レバー146はU字形となっている。
【0103】
すなわち、レバー146は、プレートの側辺に平行に上下に延びている第1の部分と第2の部分とを有する。レバー146の第1の部分と第2の部分の両方または一方は、可動ピン9の両方または一方に接触している。レバー146とプレート1との両方を接続するトーションスプリングなどの弾性体により、第1の部分と第2の部分の両方または一方が接触している可動ピン9を第1の屈曲箇所に向けて力を加えている。図11では、レバー146の第1の部分と第2の部分の両方それぞれが、可動ピン9の両方に接触しているが、連結部の回転の角度が所定以上になると、レバー146の第1の部分と第2の部分との一方が、可動ピン9の一方に接触しなくなり、レバー146の第1の部分と第2の部分との他方が、可動ピン9の他方に接触して、第1の屈曲箇所に向けて力を加え続ける。
【0104】
また、レバー146は、第1の部分と第2の部分とを連結する第3の部分を有している。図11においては、第3の部分は、プレート1の下方に位置し、第1の部分の下部の端と第2の部分の下部の端とを接続しているが、これに限定されることはない。本実施形態の特徴の一つは、第3の部分が、第1の部分の上部と第2の部分の上部とを接続しておらず、プレート1の上部の凹部30の下に常に位置していることである。
【0105】
また、連結部分が回転しても、レバー146の上辺は、プレート1の上辺よりも上に位置することもないのが好ましい。言い換えると、連結部分の回転に伴い、可動ピンの一つが上方の端に向かって移動する間、レバー146の上辺は、プレート1の上辺の下方に位置することもできる。特に、可動ピンの一つがスリットの交叉位置から最も遠ざかっても、レバー146の上辺は、プレート1の上辺の下方に位置する。なお、「プレート1の上辺の下方」は、プレート1の上辺の高さと一致する場合も含まれ得るものとする。
【0106】
このように、第3の部分が、プレート1の上部の凹部30の下に常に位置し、また、好ましくは、可動ピンの一つがスリットの交叉位置から最も遠ざかっても、レバー146の上辺は、プレート1の上辺の下方に位置することにより、本実施形態に係る回転ヒンジを情報機器などに用いた場合、次に説明されるように、情報機器の表示部筐体に接続されるケーブルとレバーとが接触することがないようにでき、ケーブルの損傷などを防止することができる。またケーブルの引き回しの変更なども容易に行うことができる。
【0107】
図11は、本実施形態に係る回転ヒンジを用いた情報機器を、表示部の斜め後ろから見た斜視図である。図8と同様に、表示部筐体70の後方に通線穴801が設けられ、折畳用ヒンジ703の方から延びるケーブル802が本発明の一実施形態に係る回転ヒンジのプレート1の側方から上辺を引き回され、通線穴801へ挿入されている。ただし、図11と図8の違いは、レバーの形状である。
【0108】
このレバーの形状の違いにより、表示部筐体70の回転に伴い、連結部が回転し、レバー146が上方に移動したとてしても、レバー146の上辺は、プレート1の上辺より上に位置しない。したがって、プレート1の上辺を引き回されているケーブルにレバー146が接触することがなくなる。
【0109】
なお、レバー146から第3の部分を取り除き、第1の部分と第2の部分とを分離してレバー146を構成することも可能である。ただし、この場合、第1の部分と第2の部分の一方しか可動ピンに接触しない状態では、第3の部分が存在する場合に比べて、可動ピンを第1の屈曲箇所に向けて押す力が小さくなるので、力学的な安定度が減少する。このため、大きな力を発生させるトーションスプリングなどを用いて、第1の部分及び第2の部分とプレート1とを接続する必要がある。この場合、トーションスプリングなどのサイズの増大を招く虞がある。
【0110】
なお、本実施形態においても、図4に示したように、トーションスプリングの代わりにコイルバネを用いることも可能である。
【0111】
また、図1などのように、レバー14の第3の部分が、第1の部分の上部と第2の部分の上部とを接続する場合であっても、プレート1の凹部30の形状を工夫して、窪みの程度を小さくしたり、レバー14の第3の部分の幅を小さくしたりすることにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、前者の場合には、回転ヒンジの高さの増加を招く虞がある。また、後者の場合には、第3の部分の強度が不足する虞がある。
【0112】
以上のように、本実施形態によれば、レバーがケーブルに接触することを抑制することができ、ケーブルの損傷などを防止することが可能となる。また、回転ヒンジの高さの増加やレバーの強度を低下させることを防止できる。
【0113】
(実施例及び比較例)
図12(a)は、携帯電話用の表示部筐体として幅が50mm、高さが93.5mmを選択した場合、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジを表示部筐体に取り付けた場合の通路2の形状を表示部筐体に投影した例を示す。図12(a)に示すように、通路2の最大の幅を約23mmとすることができた。したがって、表示部筐体の幅の半分未満とすることが可能であることが示された。
【0114】
一方、図12(b)は、比較例として、携帯電話用の表示部筐体を時計回り、反時計回りに90度回転させる別の回転ヒンジの通路を設計し、その通路の形状を表示部筐体に投影した例を示す。図12(b)に示すように、通路の幅の最大の幅は、約38mmとなった。したがって、本発明の一実施形態に係る回転ヒンジよりもサイズが大きくなってしまう。
【0115】
なお、図12(b)の回転ヒンジの構成の概略は次の通りである。すなわち、通路は、上に凸な左側部分1001と、同じく上に凸な右側部分1002とが連結された第1の通路と、第1の通路と離れて上方に設けられ、垂直な直線状である第2の通路1003とで構成される。そして、第1の通路を移動可能な第1ピンと第2の通路を移動可能な第2ピンとを連結する連結部材が、表示部筐体に固定される。表示部筐体の回転角度が0度である場合には、第1ピンは、左側部分1001と右側部分1002との連結部分に位置し、第2ピンは、第2の通路の上の端の部分に位置する。表示部筐体の回転角度が大きくなると、第1ピンは、左側部分1001又は右側部分1002の端の部分に向けて移動するとともに、第2ピンは、第2の通路を下の端の部分へ向けて移動する。表示部筐体の回転角度が90度となると、第1ピンは、左側部分1001の最も左の端又は右側部分1002の最も右の端に位置し、第2ピンは、第2の通路の下の端部分に位置することになる。
【0116】
図12(a)と図12(b)の通路の形状を比較すると、図12(b)においては、表示部筐体の回転角度が90度近くになると、第1ピンの位置する第1の通路の曲率が、図12(a)に比較すると、大きくなっている。このため、本発明の一実施形態に係る図12(a)の回転ヒンジを用いると、図12(b)の回転ヒンジよりも、表示部筐体の回転を円滑にすることが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明によれば、円滑な回転を提供可能であり、また、表示部の中心を回転ヒンジから一時的に離れるようにしつつ回転させることが可能であるので、表示部を矩形に保ちつつ表示部との距離を開ける必要が無くなる。また、回転中に回転ヒンジを含む回転機構の部分が外部から見えないようにすることが可能となる。また、表示部を左右どちらの方向に90度回転させた場合でも表示部の中心をほぼ同じ位置にすることができるなどの効果が得られることとなる。したがって、産業上有用である。
【符号の説明】
【0118】
1 プレート
2 2つのスリットが交わった形状の通路
3 スリットの上方の端部
4 スリットの第1の屈曲箇所
5 スリットの第2の屈曲箇所
6 スリットの下方の端部
7 連結部
8 スリーブ
9 可動ピン
10 ガイドピン
11 ガイド
12 ガイド固定ピン
13 レバー取付ピン
14 レバー
15 トーションスプリングの固定ピン(レバー側)
16 トーションスプリングの固定ピン(プレート側)
17 トーションスプリング
25 連結孔
26 連結孔
27 連結孔25に対応するプレート側孔
30 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のスリットが交叉箇所にて交叉しているプレートと、
前記2本のスリットの一方である第1のスリットを移動可能な第1の突起と前記2本のスリットの他方である第2のスリットを移動可能な第2の突起とを連結する連結部と
を有し、
前記第1の突起が前記第1のスリット内を一方向に前記交叉箇所を通過して移動するとともに前記第2の突起が前記第2のスリット内を前記交叉箇所から遠ざかった後に近づく往復移動をし、前記連結部が回転可能であることを特徴とする回転ヒンジ。
【請求項2】
前記第1のスリットと前記第2のスリットとのそれぞれは、その一方の端と前記交叉箇所との間において、第1の屈曲箇所と、前記第1の屈曲箇所及び前記交叉箇所の間に第2の屈曲箇所とを有し、
前記第1の突起と前記第2の突起とのそれぞれを、前記第1のスリットの第1の屈曲箇所と前記第2のスリットの第1の屈曲箇所に位置させた後、前記第1の突起が前記第1のスリットの第2の屈曲箇所に向けて移動するとともに前記第2の突起が前記第2のスリットの端に向けて移動し、前記第1の突起が前記第1スリットの第2の屈曲箇所から前記交叉箇所を通過して前記第1のスリットの端の反対の端に接近するとともに前記第2の突起が前記第2のスリットの端から第1の屈曲箇所に移動して、前記連結部が回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の回転ヒンジ。
【請求項3】
前記第1の突起が前記第1のスリット内を一方向に前記交叉箇所を通過して移動しつつ前記第2の突起が前記第2のスリット内を往復移動すると前記連結部が90度回転することを特徴とする請求項1または2に記載の回転ヒンジ。
【請求項4】
前記第1の突起が前記交叉箇所に到達した場合に前記第2のスリットに進入するのを阻止する手段を備える請求項1から3のいずれか一に記載の回転ヒンジ。
【請求項5】
前記プレート上に突出する領域としてガイド部が形成され、
前記連結部には、第3の突起が形成されており、
前記第1の突起が前記交叉箇所に到達した場合、前記ガイド部の第1の突出箇所と前記第3の突起とが接近または接触し、前記第1の突起が、第2のスリットへ進入するのを阻止することを特徴とする請求項4に記載の回転ヒンジ。
【請求項6】
前記第1の突起が前記交叉箇所を通過した後、前記連結部が90度を超えて回転しようとすると、前記第3の突起が前記ガイド部の第2の突出箇所に接近または接触することを特徴とする請求項3に記載の回転ヒンジ。
【請求項7】
前記第2の突起を、前記第2のスリットの第1の屈曲箇所に向けて付勢する付勢手段を有する請求項2に記載の回転ヒンジ。
【請求項8】
前記付勢手段は、一端がプレートに接続された弾性体に接続されているレバーが前記第2の突起に接触して前記第1の屈曲箇所に向けて付勢することを特徴とする請求項7に記載の回転ヒンジ。
【請求項9】
前記レバーの上辺は、前記第2の突起が前記第2のスリット内を移動する間、前記プレートの上辺の下方に位置することを特徴とする請求項8に記載の回転ヒンジ。
【請求項10】
前記プレートは、2つの側辺と、前記2つの側辺との間に前記交叉箇所の上側が窪んで凹部を有する上辺とを有することを特徴とする請求項9に記載の回転ヒンジ。
【請求項11】
前記レバーは、前記プレートの2つの側辺に平行な第1の部分及び第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する第3の部分とを有し、
前記第1の部分又は前記第2の部分が前記第2の突起に接触し、前記第3の部分は前記第1の部分及び前記第2の部分の下部又は上部を接続することを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の回転ヒンジ。
【請求項12】
ディスプレイ部を備えた表示部筐体が回転ヒンジを介して本体に設けられた前記表示部筐体が回転可能な情報機器であって、
前記回転ヒンジは、
2本のスリットが交叉箇所にて交叉しているプレートと、
前記2本のスリットの一方である第1のスリットを移動可能な第1の突起と前記2本のスリットの他方である第2のスリットを移動可能な第2の突起とを連結する連結部とを有し、
前記前記表示部筐体の裏面に配置されている取付部は、前記連結部に固定されており、
前記第1の突起が前記第1のスリット内を一方向に前記交叉箇所を通過して移動するとともに前記第2の突起が前記第2のスリット内を前記交叉箇所から遠ざかった後に近づく往復移動をし、前記表示部筐体が90度回転可能であることを特徴とする情報機器。
【請求項13】
前記第1のスリットと前記第2のスリットとのそれぞれは、一方の端と前記交叉箇所との間において、第1の屈曲箇所と、前記第1の屈曲箇所及び前記交叉箇所の間に第2の屈曲箇所とを有し、
前記第1の突起と前記第2の突起とのそれぞれを、前記第1のスリットの第1の屈曲箇所と前記第2のスリットの第1の屈曲箇所に位置させた後、前記第1の突起が前記第1のスリットの第2の屈曲箇所に向けて移動するとともに前記第2の突起が前記第2のスリットの端に向けて移動すると、前記表示部筐体は、前記第1の突起と前記第2の突起とのそれぞれが前記第1のスリットの第1の屈曲箇所と前記第2のスリットの第1の屈曲箇所に位置しているときの高さ以上の領域を移動しながら回転することを特徴とする請求項12に記載の情報機器。
【請求項14】
前記表示部筐体は、90度回転する前と後とにおいて、略同一の鉛直線に対して左右対称であることを特徴とする請求項12または13に記載の情報機器。
【請求項15】
前記回転ヒンジの前記プレートは、2つの直線状の側辺と、前記2つの側辺の間に前記第1のスリットと前記第2のスリットとの上側が窪んで凹部を有する上辺とを有し、
前記プレートの側辺から前記上辺に沿って引き回され、前記凹部の上に設けられた前記表示部筐体の通線穴より前記ディスプレイ部に接続されるケーブルを有する請求項9から14のいずれか一に記載の情報機器。
【請求項16】
前記通線穴の上辺は、円弧状であり、前記回転ヒンジは、直線状の2つの側辺の間に第2の凹部を有するヒンジ取付筐体の後方取り付けられ、前記表示部筐体は前記ヒンジ取付筐体の前方に取り付けられ、前記前記表示部筐体が回転しても、前記通線穴の上辺が前記ヒンジ取付筐体の直線状の2つの側辺の上辺を結ぶ直線の下側に位置することを特徴とする請求項15に記載の情報機器。
【請求項17】
前記回転ヒンジは、前記第2の突起を、前記第2のスリットの第1の屈曲箇所に向けて付勢するレバーを有し、前記レバーの上辺は、前記第2の突起が前記第2のスリット内を移動する間、前記プレートの上辺の下方に位置することを特徴とする請求項15に記載の情報機器。
【請求項18】
前記レバーは、前記プレートの2つの側辺に平行な第1の部分及び第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する第3の部分とを有し、
前記第1の部分又は前記第2の部分が前記第2の突起に接触し、前記第3の部分は前記第1の部分及び前記第2の部分の下部または上部を接続することを特徴とする請求項17に記載の情報機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−281350(P2010−281350A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133517(P2009−133517)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(592245432)スタッフ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】