説明

回転リフト式電動弁

【課題】遊星歯車機構を利用して、モータの回転出力を昇降運動に変換する際の弁体のリフト量の分解能を向上することにより、コンパクトで駆動源であるモータのコイルやロータを小型化し、構造を簡素化したリフト式電動弁を提供する。
【解決手段】ステッピングモータ2の出力回転軸14は、遊星歯車機構3を介して減速した回転を弁体4に伝達する。また、弁体4は、出力回転軸14に形成されている雄ねじ部13bと弁体4に形成されている雌ねじ部33とから成るねじ機構28によってねじ作用が与えられて弁座シート5に接離し、一対の弁口26,27間の流量を制御する。ステッピングモータ2の角度分解能が変わらなくても、弁体4の弁開閉のためのリフト量の分解能は、遊星歯車機構3による減速に応じて高くなり、弁開度を高精度に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遊星歯車機構を利用して弁開度を変更可能とした回転リフト式電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全開から全閉までのどの弁開度においても、正・逆両方向の流れにおいて略同一の流量特性を実現することができる電動弁が提案されている(特許文献1参照)。この電動弁は、弁体の回転角をステッピングモータで制御することで、弁の全閉時には弁体のフラット部が弁口を塞ぎ、全開時には弁体の貫通孔が弁口と完全に一致して開口する。また、弁体を回転させて、弁口に対向する円弧状溝の断面形状を変化させることにより、円弧状溝の断面積の大きさに応じて、全開時と全閉時との間で望みの流量が得られる。流れの方向がいずれであっても流体圧が弁体に及ぼす力は略同一であるので、流れの方向による流量のバラツキを抑制することができる。
【0003】
このような電動弁においては、ステッピングモータの出力部材であるロータの回転がロータに固着されている弁軸に直接に伝達されるので、弁開度の分解能はステッピングモータの回転角度分解能に直接に依存している。したがって、この電動弁においては、弁開度をステッピングモータの回転角分解能以上に高精度に制御することは困難である。また、ステッピングモータの回転角分解能を高めるにはロータの径を大きくして極数を多くすることが考えられるが、そうした対策では、モータが大型化し、電動弁の大きさが必然的に大きくなる傾向がある。
【特許文献1】特開2002−295694号公報(段落[0010]〜[0017]、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、弁体を略1回転させることで、全開と全閉を達成できるようにすると、弁体のリフト量が小さいため弁体の回転を規制するストッパは螺旋状のような複雑な構成にする必要がなく、面と面を衝突させるだけの簡素な構造にすることができる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁体の回動範囲が一回転以下でありながら高分解能を得ることができ、コンパクトで簡素な構造の電動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、この発明によるリフト式電動弁は、弁体と、弁座シートを有する弁本体と、前記弁体の回転を前記弁座シートに接離する動作に変換する送りねじ機構と、モータのロータの回転を減速して前記弁体に伝達する遊星歯車機構とを備えた回転リフト式電動弁であって、前記弁座シートに前記弁体と対向する1対の弁口が設けられ、前記弁体の前記弁座シートに対する間隔を変化させることによって前記1対の弁口間の流量を制御することを特徴としている。
【0007】
このリフト式電動弁によれば、モータのロータの回転は遊星歯車機構を介することで減速して弁体に伝達され、弁体は送りねじ機構を介して弁座シートに接離する。弁体のこの接離動作によって弁体と弁座シートとの間隔が変化するので、弁座シートに設けられる1対の弁口間の流量を制御することができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明による回転リフト式電動弁は、遊星歯車機構を用いてステッピングモータの出力回転を減速して弁体に伝達しているので、弁開度の分解能をロータの回転角の分解能以上にすることができ、高い分解能を得ることができる。また、モータの極数を少なくしても弁体の回転を十分減速できるので、駆動源であるステッピングモータのコイルやロータを小型化することができる。さらに、弁体を略1回転させることで、全開と全閉を達成することができるので、ストッパの構造を簡素にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付した図面に基づいて、この発明の実施形態を詳細に説明する。図1は第1の実施形態を示す図であり、(a)は要部の断面図、(b)は(a)のB−B線横断面図である。
【0010】
この発明による回転リフト式電動弁(以下、「電動弁」と略す。)1は、ステッピングモータ2と、ステッピングモータ2の出力回転を減速する遊星歯車機構3と、流体が流入出する弁口(後述する二つの弁口26,27)が形成されている弁座シート5と、弁開度を制御するため遊星歯車機構3によって減速された速度で回転すると共に弁座シート5に対して接離する弁体4とを備えている。電動弁1は内部機構全体を収容する有底且つ段付きの筒状のハウジング(キャン)6を備えており、弁座シート5はハウジング6の開口部に取り付けられている。更に、弁座シート5の各弁口26,27には流体流入出用の配管7,8が取り付けられている。
【0011】
ステッピングモータ2は、ハウジング6の縮径した上部の外側を取り巻くように設けられたステータとしての電磁コイル10と、ハウジング6の上部の内部に収容され電磁コイル10が生じる電磁作用で回転力を受けるロータ11とから成っており、ロータ11には筒状の出力軸12が同軸状に固定されている。中心軸13には出力軸12が回転自在に貫通していて、出力回転軸14を構成している。中心軸13は弁体4の中心を貫通し、その下端部13aが弁座シート5に形成されている軸受穴22内に嵌合して固定されている。
【0012】
遊星歯車機構3は、出力軸12に形成された太陽歯車15と、太陽歯車15を同心状に取り囲むとともにハウジング6に固定され且つ内周に内歯が形成されているリング歯車16と、太陽歯車15とリング歯車16との間に両歯車15,16に噛み合うように配置された複数の遊星歯車17とを備えている。また、リング歯車16は、ハウジング6に収容されている筒本体18の上部に筒本体18の一部として形成されている。弁座シート5、ハウジング6及び筒本体18により弁本体が構成されている。本実施形態では、遊星歯車17は、4個設けられている。太陽歯車15を出力回転軸12の一部とし、リング歯車16を筒本体18の一部として形成することによって、電動弁1の部品点数の減少を図ることができ、構造の簡素化と共に部品点数や組立て工数の減少に寄与することができる。
【0013】
弁体4は、遊星歯車17を自転自在に支持すると共に遊星歯車17と共に公転するためのキャリアを兼ねている。太陽歯車15、リング歯車16がそれぞれ出力軸12、筒本体18と兼用されていることと併せて、弁体4が遊星歯車17のキャリアを兼ねることにより、構成部品が多くなる傾向にある遊星歯車機構3を用いる電動弁の構造について簡素化を図ることができる。弁体4の詳細については、特に図3を参照して後述する。
【0014】
弁座シート5は、ハウジング6の下端部を閉じるように組み付けられている。図2は、弁座シート5の一例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は断面図である。弁座シート5は全体として略円板形状を呈しており、弁体4側のシート壁面20は平坦面に形成されている。シート壁面20には、その中心において、中心軸13の下端部13a(図1(a))が嵌入されて中心軸13を固定支持する軸受穴22が形成されている。弁座シート5の周縁部には段部23が形成されており、図1(a)に示すように、ハウジング6の端部が段部23に嵌合可能である。
【0015】
弁座シート5には、軸受穴22を直径方向に挟んだ対称位置において、断面積の大きさが等しい二つの流体流入出用の弁口26,27が形成されている。弁座シート5におけるシート壁面20とは反対側の壁面21側においてはそれぞれ、配管7,8が嵌入される有底の取り付け穴24,25が形成されており、弁口26,27は取り付け穴24,25に連通している。
【0016】
図3は弁体4の図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は下面図、(e)は断面図である。弁体4は、概略短円柱体状に形成され、遊星歯車側に第1壁面31を、またその反対側に第2壁面32を備えており、第1壁面31及び第2壁面32は中心軸13の軸線に直交する平坦面に形成されている。弁体4には、その中心部において貫通穴が形成され、その内周に雌ねじ部33が形成されており、雌ねじ部33は中心軸13に形成されている雄ねじ部13bと螺合して送りねじ機構28を構成している。弁体4の第1壁面31の周縁部には、各遊星歯車17の回転軸17aを回転自在に軸支する軸受穴35が周方向に90度の角度間隔をおいて形成されている。弁体4の外周面36は、筒本体18の内周面37(図1(a)参照)に液密状に摺接している。
【0017】
弁体4の下部は縮径しており、その外周面とその上方の大径部の下面との間に跨がるように係止部38が形成されている。この係止部38が筒本体18の内周に内方に向けて突出するように形成されている突起39と当接するときに弁体4の回転、即ち、ロータ11の回転が規制される。即ち、弁体4は、その開弁時又は閉弁時において、係止部38が突起39と当接した後はそれ以上同じ回転方向には回転できない。したがって、ロータ11が数回転するのに対して、弁体4の回転量は略1回転に制限されている。なお、突起39(図1(a)参照)が形成された筒本体18がハウジング6に固定されていることによって、ハウジング6を弁座シート5に溶接等によって気密接合する際、ハウジング6を回転させて突起39で弁体4の係止部38を押すことにより弁体4が回転するので、弁体4が最下端位置にあるときの弁体4と弁座シート5との間の間隔を調節できる。
【0018】
弁体4は、弁座シート5からリフトしたときに弁座シート5との間に弁口26,27を連通する隙間を形成する。出力回転軸14によって弁体4が回転されるときにその回転角度に応じて弁体4が昇降し、そのリフト量に応じてこの隙間の断面積が次第に増減するので、これによって電動弁1の弁開度が変化する。弁開度を変化させるために弁体を回転させる機構が配置される上側の領域と、弁体4によって流量が制御される液体が流れる下側の領域とで機能が明確に分担されるので、電動弁1の構造の簡素化を図ることができる。
【0019】
図4は、図1〜図3に示した電動弁1の作用を説明する断面図であり、(a)は略閉弁状態、(b)は全開状態をそれぞれ示す図であり、(c)は(a)のC−C線横断面図、(d)は(b)のD−D線横断面図である。図4(a)及び(c)は、弁体4が閉弁方向に回転して係止部38が突起39に当接したときの電動弁1の状態を示す図である。出力回転軸14はキャリアを兼ねる弁体4に対して雄ねじ部13bと雌ねじ部33とから成る送りねじ機構28によって連結されているので、閉弁時に、弁体4は、遊星歯車17からの公転回転を受けながら、出力回転軸14からのねじ作用を受けて下動する。弁体4の係止部38が突起39に当接して弁体4がそれ以上回転しない状態では、弁体4の第2壁面32と弁座シート5のシート壁面20との間に僅かな隙間40が形成されるようになっており、両面は面接触することはない。したがって、隙間40を通って流体が僅かに流通可能である。
【0020】
弁体4は、最も閉弁方向に移動しても弁口26,27を完全には閉鎖しない。これは、弁体4を全閉位置まで移動させると、弁体4は回転しながらねじ作用によって第2壁面32が弁シート面20に強く圧接されることになるので、その後、反対方向に弁体4を回転させようとしたときに雄ねじ部13bと雌ねじ部33が強く噛み合っているため弁体4が回転せず、開弁させることができなくなるおそれがあるからである。突起39によって弁体4の回転を制限することで、こうした締め込み過ぎ状態が生じるのを防止することができる。これは、単一の室内機を運転するルームエアコンに適用される場合に好都合である。即ち、ルームエアコンの停止時にも冷媒が僅かに流れ得るので、運転開始時の衝撃を緩和することができるからである。
【0021】
ステッピングモータ2を開弁方向に駆動すると、弁体4は閉弁時と逆の動作、即ち、回転方向及び昇降方向は異なるが同様の回転、移動をする。弁体4と雄ねじ部13aとの間には、遊星歯車機構から与えられるゆっくりとした回転が生じ、弁体4はねじ機構28のねじ作用によって中心軸13の軸方向に移動する。図4(b)及び(d)に示す全開状態では、弁体4は弁座シート5から最も離れた位置にあり、弁座シート5との間に隙間41を形成している。流量の調整は、弁体4のリフト量を制御することのみによって行われる。弁開度は高分解能で制御できるので、安定した流量制御を確保することができる。また、ステッピングモータ2を大型化することなく弁開度の分解能を高くすることができるため、コンパクト化を図ることができる。更に、弁体4を略1回転することで全閉と全開を達成できるため、弁体4の回転を規制するストッパ(突起39及び係止部38)を面で接触させる簡素な構造のものとすることができる。
【0022】
図5には、この発明による回転リフト式電動弁の別の実施例が示されている。図5(a)は閉弁状態、(b)は全開状態をそれぞれ示す図であり、(c)は(a)のE−E線横断面図、(d)は(b)のF−F線横断面図である。本実施形態では、図4に示す実施形態と異なり全閉機能を備えている。図5に示す電動弁50において、図4に示す実施形態が備える要素や部位と同じものについては、同じ符号を付すことにより再度の説明を省略する。本実施形態の電動弁50は、中心軸13の下端部が弁座シート5の軸受穴22に回転自在かつ上下動自在に嵌合すると共に中心軸13の上端が出力軸12に固定され、かつ出力回転軸14を弁座シート5に向けて付勢する付勢手段としてのコイル状のばね51がハウジング6との間に設けられている点で、図4に示されている電動弁1と異なっている。更に、遊星歯車17は弁体4に上下動自在かつ回転自在に軸支され、出力軸12の頂部には、上端に開口するボア52が形成されている。ボア52内にばね51が圧縮状態で配置されている。ハウジング6の頂壁とばね51の上端との間にはボール53が設けられており、ばね51とハウジング6の間に生じる回転摩擦を軽減し、出力回転軸14の回転を円滑にしている。
【0023】
図5(a)及び(c)に示すように、この電動弁50においては、ステッピングモータ2を閉弁方向に駆動する閉弁動作時に、キャリアを兼ねる弁体4が下限まで下動するときに、弁体4が弁座シート5のシート壁面20に当接して全閉となる。弁体4は付勢手段であるばね51によって弁座シート5に完全密着状態に押し付けられるので、電動弁1の全閉状態が維持される。それ以後も、出力回転軸14が回転しようとすると、遊星歯車機構3の作用によって弁体4は更に回転するが、このとき弁体4は弁座シート5よりも更に下方に移動ができないので、その反作用として、出力回転軸14がねじ作用によってばね51のばね力に抗して上動する。これにより、中心軸13の下端部13aは、軸受穴22の底面から僅かに浮いて、隙間55を形成する。即ち、弁体4には、上動する出力回転軸14により一層圧縮されるばね51による下向きの力がねじを介して作用するが、このときのばね力は、ばね51を設けない(図1〜図4に示した先の実施形態の場合)ときにねじ作用のみで全閉させるときに生じる機械的な強い圧接力と比較して、充分小さい力である。それゆえ、この電動弁50においては、全閉としても送りねじ機構28の締め込み過ぎで弁体4が開弁方向に戻らなくなるおそれは無い。
【0024】
図5(b)及び(d)は、全閉状態からステッピングモータ2を開弁方向に駆動して、弁体4が回転して開弁したときの状態を示す図である。開弁時の動作は閉弁時と逆の動作であるが、開弁開始直後は、出力回転軸14は弁体4に対して回転して降下するので、伸長する方向に変形するばね51のばね力は減少する。出力回転軸14が下降しその下端部13aが軸受穴22の底端に当接して隙間55が無くなると、ばね51のばね力が軸受穴22の底面に作用する。その後更に、出力回転軸14が開弁方向に回転すると、弁体4は、回転しながら、ねじ機構28における出力回転軸14の回転と遊星歯車機構3の作用によるキャリアとしての回転との回転差に応じたねじ動作によって上動する。これにより、弁体4が弁座シート5から離れて隙間56が形成された開弁状態となり、弁座シート5からのリフト量によって弁開度が変更可能となる。係止部38がストッパ39に当接(全閉のときとは反対側から当接)することにより全開状態となる。
【0025】
この形式の電動弁は、マルチエアコンに適している。即ち、マルチエアコンの場合には、一つの室外機から複数の部屋に設けられた室内機にそれぞれ冷媒を供給しており、使用している室内機にのみ冷媒を供給して、使用していない室外機には冷媒を供給しないことが求められる。電動弁に全閉機能があることにより、使用していない室外機には冷媒がまったく流れなくすることができるので、空調効率の低下を防止することができる。
【0026】
図6には、この発明によるリフト式電動弁の更に別の実施例が示されている。図6(a)は閉鎖状態、(b)は全開状態をそれぞれ示す図である。図6に示す電動弁60は、図1に示す実施形態と比較して、更に弁開度の分解能を向上させるため、遊星歯車機構として、所謂、不思議歯車機構61を備えている。この電動弁60においては、図1に示す実施形態が備える要素や部位と同じものについては同じ符号を付すことにより再度の説明を省略する。この電動弁60は、内歯歯車として、固定のリング歯車62と、リング歯車62の歯数と僅かに異なる歯数を有するとともに弁体4に一体形成されたリング部63とを備えている。中心軸13に回転自在に嵌合しているキャリア64に回転自在に支持される遊星歯車17は、リング歯車62とリング部63との両方に同時に噛み合っている。したがって、遊星歯車17がリング歯車62と噛み合いつつ自転しながら公転するとき、遊星歯車17に噛み合うリング部63は、リング歯車62との歯数の差に応じて、キャリア64の回転と比較して更に大きく減速された回転を取り出すことができる。このリング部63の回転に応じて、雄ねじ部13bと雌ねじ部33とから成る送りねじ機構28のねじ作動によって、弁体4が上下動する。
【0027】
この電動弁60は、図1〜図4に示した電動弁1や、図5に示した電動弁50と比較して更により高精度な流量制御を行うのに適している。この電動弁60では、(a)で示す閉弁状態でも弁体4とシート壁面20との間に微小な隙間65が形成されて、電動弁1が全閉となるのを防止している。また、(b)に示すように、開弁状態では弁体4がリフトして弁体4とシート壁面20との間に隙間66が形成される。
【0028】
図6に示す電動弁60には、図5に示したばね51と同等のばねを設けることができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態を説明したが、弁機能を得るための構造として、弁座シート5については、平坦なシート壁面20と、直線状の弁口26, 27とを形成するのみであるので、製造が容易である。また、弁体4の流量制御面は平坦な面構造とすることができる。したがって、弁開度を全閉から全開の間で変更可能にする弁体4と弁座シート5の具体的な組合せ構造として、製造が容易な構造とすることができる。
【0030】
また、ステッピングモータ2の出力回転軸12の回転は大きな減速比を得ることができる遊星歯車機構3や不思議歯車機構61を介することで弁体4に伝達される。それと同時に、送りねじ機構28による回転が弁体4に作用して弁体4のリフト量が変更されるので、弁開度を高精度に制御することができる。また、減速による分解能の向上の効果が十分であれば、ステッピングモータ2としては電極数が少なくて高速で回転する小型のモータを使用することもできるので、電動弁の小型化を図ることができる。また、上記の各実施形態では、中心軸に設けた雄ねじ部と弁座シートの貫通穴に設けた雌ねじ部とによって送りねじ機構を構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、弁体の外周に雄ねじ部を設け、弁本体又は弁本体に対して上下に移動可能な部材に雌ねじ部を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明による回転リフト式電動弁の一実施形態を示す図であって、(a)は要部の縦断面図、(b)は(a)の矢印B−Bで見た横断面図である。
【図2】図1に示す回転リフト式電動弁に用いられる弁座シートの図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は断面図である。
【図3】図1に示す回転リフト式電動弁に用いられる弁体の図であって、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は下面図、(e)は断面図である。
【図4】図1に示す回転リフト式電動弁の動作を説明するための説明図であって、(a)は略閉弁状態を示す縦断面図、(b)は全開状態を示す縦断面図、(c)は(a)のC−C線横断面図、(d)は(b)のD−D線横断面図である。
【図5】この発明による回転リフト式電動弁の他の実施形態を示す図であって、(a)は閉弁状態を示す縦断面図、(b)は開弁状態を示す縦断面図、(c)は(a)のE−E線横断面図、(d)は(b)のF−F線横断面図である。
【図6】この発明による回転リフト式電動弁の更に別の実施形態を示す図であって、(a)は閉弁状態を示す縦断面図、(b)は開弁状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 回転リフト式電動弁 2 ステッピングモータ
3 遊星歯車機構 4 弁体
5 弁座シート 6 ハウジング(キャン)
7,8 配管 10 電磁コイル(ステータ)
11 ロータ 12 出力軸
13 中心軸 13a 下端部
13b 雄ねじ部 14 出力回転軸
15 太陽歯車 16 リング歯車
17 遊星歯車 17a 回転軸
18 筒本体 19 突起
20 シート壁面 21 壁面
22 軸受穴 23 溝
24,25 取り付け穴 26,27 弁口
28 送りねじ機構 30 係合穴
31 第1壁面 32 第2壁面
33 雌ねじ部 35 軸受穴
36 周筒面 38 係止部(ストッパ)
39 突起(ストッパ) 40 隙間
41 弁路
50 電動弁 51 ばね
52 ボア 53 ボール
55 隙間 56 隙間
60 電動弁 61 不思議歯車機構
62 リング歯車 63 リング部
64 キャリア
65 隙間 66 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、弁座シートを有する弁本体と、前記弁体の回転を前記弁座シートに接離する動作に変換する送りねじ機構と、モータのロータの回転を減速して前記弁体に伝達する遊星歯車機構とを備えた回転リフト式電動弁であって、前記弁座シートに前記弁体と対向する1対の弁口が設けられ、前記弁体の前記弁座シートに対する間隔を変化させることによって前記1対の弁口間の流量を制御することを特徴とする回転リフト式電動弁。
【請求項2】
前記送りねじ機構は、前記弁座シートに支持された中心軸の外周面に形成された雄ねじ部と、前記弁体に設けられ前記中心軸が貫通する穴の内周面に形成された雌ねじ部とから成ることを特徴とする請求項1記載の回転リフト式電動弁。
【請求項3】
前記中心軸が前記弁座シートに固定されていることを特徴とする請求項2記載の回転リフト式電動弁。
【請求項4】
前記弁体が前記弁座シートに最も接近した状態において前記1対の弁口が微小な隙間を介して連通していることを特徴とする請求項3記載の回転リフト式電動弁。
【請求項5】
前記遊星歯車機構は、前記ロータに対して固定されるとともに前記中心軸に対して回転自在に嵌合し、太陽歯車を有する出力軸と、前記太陽歯車に噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を回転自在に支持するとともに前記中心軸に対して回転自在のキャリアと、前記中心軸に対して同軸状に配置されるとともに前記弁本体に固定され、内周に前記遊星歯車に噛み合う内歯を有するリング歯車と、前記中心軸に対して同軸状に配置されるとともに前記弁体に固定され、内周に前記遊星歯車に噛み合うとともに前記リング歯車と歯数が異なる内歯を有するリング部と、を備えたことを特徴とする請求項3又は4記載の回転リフト式電動弁。
【請求項6】
前記中心軸が前記弁座シートに回転自在かつ軸方向に移動自在に支持されており、前記中心軸を前記弁座シートに向けて付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の回転リフト式電動弁。
【請求項7】
前記弁体が、前記遊星歯車機構の遊星歯車を回転自在に支持するキャリアを兼ねることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の回転リフト式電動弁。
【請求項8】
前記弁体の回転を規制するストッパを備えており、このストッパは、前記弁体に固定された第1のストッパと、前記弁本体に固定された第2のストッパとから成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の回転リフト式電動弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−52655(P2009−52655A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219828(P2007−219828)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】