説明

回転ロータ及び該回転ロータを用いたスクリュー式真空ポンプ

回転ロータのアンバランスモーメントを小さくし、簡易な構造で高速回転しても振動が起きないようにするために、その回転軸直角断面形状の重量重心が回転中心と一致しない回転ロータにおいて、回転ロータの軸方向端部にバランスウエイトを固定することにより、回転ロータのアンバランスモーメントを小さくし、前記バランスウエイトを回転ロータの軸方向両端部に固定し、前記バランスウエイトの軸直角断面の最外周部は、回転ロータの最外周から回転中心までの長さを半径とする半円内に収め、前記バランスウエイトの軸直角断面形状は、その特定の軸直角法線に対して対称になっており、スクリュー式真空ポンプ において、前記スクリューロータとして前記回転ロータを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速回転領域においても振動を生ずることのないようにバランシングさせた回転ロータに関し、特に該回転ロータをスクリュー回転ロータに適応し、高速回転領域においても振動を生じないスクリュー式真空ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にポンプ(真空ポンプ等)やコンプレッサー等の回転ロータを持つ回転式機械の中に、回転ロータの軸直角断面形状の重量重心が回転軸と一致しない回転ロータを用いているものがある。例えば、複数のねじ山を持った単数のスクリュー回転ロータまたは互いに同期して噛合う2本のスクリュー回転ロータは各スクリュー回転ロータの軸直角断面形状で回転軸と重心は一致していない。該スクリュー回転ロータは一般にハウジング内に密閉収納されて、スクリュー回転ロータの歯とハウジング間にできた空間がスクリュー回転ロータ回転とともにハウジングに形成された吸入口側から吐出口側へ気体や液体等の物質を移送する。このようなスクリュー式型回転式機械(スクリュー式真空ポンプ等)は、一般にリーク量は回転数に関係なく一定と考えられるので、排気量が一定の場合、高速回転にすればする程小型化でき、容積効率は高まることになる。しかし、該スクリューの軸直角断面形状はロータ回転軸に対して通常不均等であるので回転軸と重心が一致しないうえに、該重心を回転軸方向で連続的につなげると、回転軸を中心に螺旋形状となる。従って、回転数を上げていくと激しい振動が発生するため、高い回転数では運転が不可能であった。このように、回転数が低速領域しか使用出来ないと、吐出流量を増やすため機械が大型となり、しかも、吸入口側と吐出口側の圧力差が上昇するとリーク量もそれに応じて大きくなり、効率が低下する問題があった。
【0003】
これを解決するために、スクリュー回転ロータのねじのリード数を偶数にして静的バランスをとり、動的バランスに対しては、スクリュー回転ロータの両端のねじ山部分に空洞を設けるか、或いは、空洞を設けた部分に軽量の材質を鋳込むことによって軽量化してバランスをとる方法がある(特許文献1)。
また、スクリュー回転ロータのねじ部のねじリード数を(整数+0.5)とすることにより、スクリュー回転ロータのアンバランスモーメントを小さくしたものがある(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特公平2−17716号公報
【特許文献2】特開平11−270479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにスクリュー回転ロータの軸部の外面とねじ部のねじ底との間の端面にドリルで底付きのバランスホールを設ける場合、スクリュー回転ロータ固定部が長尺となると、その分該ドリルの長さが必要となり、機械加工が困難になる。さらに、容積効率を上げるために歯底径を小さくすると、歯底径がベアリングに支持されるジャーナル軸径に近づくため、バランスホールを設けるスペースが無くなってしまい、空洞部分を鋳物製作時に抜くにしても、大型で大リ−ドでないとその空洞部分を抜く製作が難しいという問題があった。また実際の半導体プロセスでポンプ運転時、空洞部には生成物がたまりやすい。その生成物が振動等で剥がれ落ちるとスクリューがそれを噛み込み、ポンプが過負荷で停止してしまう問題があった。
【0006】
また、特許文献2のように、スクリュー回転ロータのねじ部のねじリード数を(整数+0.5)とした場合、伸ばしたリード数0.5の部分は真空ポンプ又はコンプレッサーの機能としては不要であり、この部分のために回転式機械の軸方向長さが必要以上に伸びてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明は上記問題に鑑み、請求項1の発明によれば、回転軸直角断面形状の重量重心が回転中心と一致しない回転ロータにおいて、回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を設けた。機構としてはロータのどの部分に配置してもよい。例えばロータの軸方向中間部分にアンバランスモーメント解消機構を設けてもよい。
【0008】
請求項2の発明によれば、前記回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を、回転ロータの回転軸方向端部に回転ロータとは別部材(バランスウエイト)を固着した。固着方法としてはねじやピンで相対的に回転しないように固着する方法や、接着材で固着する方法がある。
【0009】
請求項3の発明によれば、前記バランスウエイトを回転ロータの軸方向両端部に固着した。該バランスウエイトは回転ロータのアンバランスモーメントが最小になるように最適な厚み及び形状が選択される。
【0010】
請求項4の発明によれば、前記バランスウエイトの軸直角断面の肉部は、回転軸から回転ロータの最外周までの距離を半径とし、回転軸を中心とする円の半円内にある。
【0011】
請求項5の発明によれば、前記バランスウエイトの軸直角断面形状は、特定の軸直角法線に対して対称になっている。該軸直角法線は前記アンバランスモーメントの方向と略一致している。
【0012】
請求項6の発明によれば、前記回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を、回転ロータの回転軸方向端部を所定の長さ延長し該延長部分の肉部を所定量無くした。延長部は延長部以外の部分の形状と同じ、つまり連続的にたうながっていてもよいし、異なる形状例えばフランジ形状でもよい。
【0013】
請求項7の発明によれば、前記延長部分を回転ロータの軸方向両端部に形成した。該延長部は回転ロータのアンバランスモーメントが最小になるように最適な厚み及び形状が選択される。
【0014】
請求項8の発明によれば、前記延長部の軸直角断面の肉部は、回転軸から回転ロータの最外周までの距離を半径とし、回転軸を中心とする円の半円内にある。
【0015】
請求項9の発明によれば、前記バランスウエイトの軸直角断面形状は、特定の軸直角法線に対して対称になっている。
【0016】
請求項10の発明によれば、吸入口と吐出口を有するケーシング内に、非接触で噛合う一対のスクリュー回転ロータを収容し、所定の手段で前記一対のスクリュー回転ロータを同期回転させ、前記ケーシングを密封することにより前記吸入口及び吐出口以外で一対のスクリュー回転ロータ収納室とスクリュー回転ロータ収納室外との連通を封止する封止手段を設けたスクリュー式真空ポンプにおいて、前記一対のスクリュー回転ロータの各々に上記回転ロータの構成を用いた。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、回転軸直角断面形状の重量重心が回転中心と一致しない回転ロータにおいて、回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を設けたことにより、加工が用意にアンバランスモーメントを小さくできる。
【0018】
請求項2の発明によれば、前記回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を、回転ロータの回転軸方向端部に回転ロータとは別部材(バランスウエイト)を固着したことにより、回転ロータのアンバランスモーメントを小さくしたことにより、製作の容易な別部品のバランスウエイトを簡単に回転軸に固定できるので、回転ロータに手間のかかる加工をすることを無くすことができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、前記バランスウエイトを回転ロータの軸方向両端部に固着したことにより、さらにバランスを取りやすくなる。また、半導体プロセス時に発生する生成物がたまりやすい空洞部が少ないので、生成物を噛み込んでポンプが停止する事が無い。
【0020】
請求項4の発明によれば、前記バランスウエイトの軸直角断面の肉部は、回転軸から回転ロータの最外周までの距離を半径とし、回転軸を中心とする円の半円内にあることにより、少ない材料でバランスを取ることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、前記バランスウエイトの軸直角断面形状は、特定の軸直角法線に対して対称になっていることにより、バランスウエイトの製作が容易になる。
【0022】
請求項6の発明によれば、前記回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を、回転ロータの回転軸方向端部を所定の長さ延長し該延長部分の肉部を所定量無くしたことにより、簡易な構造で、容易に回転ロータに手間のかかる加工をすることを無くすことができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、前記延長部分を回転ロータの軸方向両端部に形成したことにより、対称に配置できることから、さらにバランスを取りやすくなる。また、半導体プロセス時に発生する生成物がたまりやすい空洞部が少ないので、生成物を噛み込んでポンプが停止する事が無い。
【0024】
請求項8の発明によれば、前記延長部の軸直角断面の肉部は、回転軸から回転ロータの最外周までの距離を半径とし、回転軸を中心とする円の半円内にあることにより、少ない部品点数でバランスを取ることができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、前記バランスウエイトの軸直角断面形状は、特定の軸直角法線に対して対称になっていることにより、バランスの取れた回転ロータの製作が容易になる。
【0026】
請求項10の発明によれば、吸入口と吐出口を有するケーシング内に、非接触で噛合う一対のスクリュー回転ロータを収容し、所定の手段で前記一対のスクリュー回転ロータを同期回転させ、前記ケーシングを密封することにより前記吸入口及び吐出口以外で一対のスクリュー回転ロータ収納室とスクリュー回転ロータ収納室外との連通を封止する封止手段を設けたスクリュー式真空ポンプにおいて、前記一対のスクリュー回転ロータの各々を請求項1〜9に記載の回転ロータの構成を用いたことにより、スクリュー回転ロータのアンバランスモーメントを小さくすることができ、高速回転時のスクリュー回転ロータの振動を抑えることができる。また、バランスホールを設ける必要が無いので、歯底径を小さくして容積効率をアップさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1、図2及び図3に本件発明のバランスウエイトを装着したスクリュー回転ロータの第一実施例を示す。図1はスクリュー回転ロータの軸方向断面図であり、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図である。
【0028】
101はスクリュー回転ロータである。バランスウエイト103及び105は中心にスクリュー回転ロータの回転軸に挿入できるように穴が空いている。バランスウエイトの装着方法は、該穴にスクリュー回転ロータの回転軸を挿入し、予めスクリュー回転ロータに装着されている位置決部材(キー、ピン、ピンネジ等)107及び109にバランスウエイト103及び105の穴部にある切欠き部111及び113を合わせて挿入することにより、バランスウエイト103及び105がスクリュー回転ロータ101に対して相対的に回転しないように位置決固定される。さらにネジ115及び117を装着することにより、バランスウエイト103及び105は軸方向に動かなくなり、スクリュー回転ロータ101に完全に固定することができる。150はバランスウエイトの軸直角断面形状が対称になっている軸直角法線、151は回転中心である。
【0029】
バランスウエイトの軸直角断面の最外周部は回転軸を中心とし、回転ロータの最外周から回転軸までの長さを半径とする半円状(123,125部分)をしており全体として扇形で、アンバランスモーメントによる振動が起きないような最適な配置、形状及び軸方向厚みが選択される。最適な配置としては、例えば回転軸からバランスウエイトの重量重心を結ぶ軸直角法線と該軸直角法線を含む軸直角断面上のアンバランスモーメントが略一致するように配置する。複数の回転ロータを組合わせて使用する場合、例えば2つのスクリューロータを持ち互いを噛合わせて使用するスクリュー式真空ポンプでは、お互いバランスウエイトが干渉しないように端部119、121には切欠が設けられている。
本件発明のバランスウエイトは、フランジ状の肉厚の等しいものを用いているが、必要に応じて肉厚を変化させてもよい。例えばスクリュー形状にして、スクリュー歯の必要な部分を切削したバランスウエイトとすることもできる。
【0030】
次に、本件発明のスクリュー回転ロータを真空ポンプに用いた場合の実施例を図4に示す。
【0031】
真空ポンプ200は、2つのスクリュー回転ロータ202及び204を備えている。
スクリュー回転ロータ202及び204は、ハウジング210の内部に収納されている。詳述すると、スクリュー回転ロータ202は軸受231及び233によってハウジング210に回転可能に支持され、スクリュー回転ロータ204は軸受234及び236によってハウジング210に回転可能に支持されている。また、タイミングギア251及び253、モータ241、及びシール237、238、239及び240が図示のように配置されている。ここで、シール237及び238は軸受231及び233と回転ロータ収納室210bとを隔離し、軸受231及び233の潤滑油がスクリュー回転ロータ収納室210bに漏洩することを防止するとともに、スクリュー回転ロータ収納室210bから軸受231及び233に異物が侵入することを防止している。同様に、シール239及び240は軸受234及び236と回転ロータ収納室210bとを隔離し、軸受234及び236の潤滑油がスクリュー回転ロータ収納室210bに漏洩することを防止するとともに、スクリュー回転ロータ収納室210bから軸受234及び236に異物が侵入することを防止している。シールとしてはラビリンス、接触式シール、磁性流体シール等がある。
【0032】
また、スクリュー回転ロータ204の一端部には、スクリュー回転ロータ204の回転に伴ってスクリュー回転ロータ202を回転させるタイミングギア253及び251が、それぞれ互いに噛み合うように固定されている。更に、スクリュー回転ロータ204の一端部には、モータ241の出力軸が一体的に連結している。スクリュー回転ロータ202の両端部にはバランスウエイト255及び257が装着されており、スクリュー回転ロータ204の両端部にはバランスウエイト259及び261が装着されている。このような構成にすることにより、高速回転してもアンバランスモーメントは殆ど無くすことができ、スクリュー回転ロータが振動することにより、スクリュー回転ロータが干渉し真空ポンプを緊急停止させたり、最悪は破壊してしまうことを防ぐことができる上に、高速回転運転することにより、小型化することも、性能を上げることも可能になる。
【0033】
また、スクリュー回転ロータ収納室210bは、ハウジング210の内部に形成され、ハウジング210の外部からハウジング210の内部に圧縮性流体を吸入するための吸入口(図示していない。)によってハウジング210の外部と連通している。また、スクリュー回転ロータ収納室210bは、ハウジング210の内部からハウジング210の外部に圧縮性流体を排出するための吐出口(図示していない。)によってハウジング210の外部と連通している。ここで、吸入口は図示していない被真空容器に連通していて、吐出口は図示していない排気ガス処理装置に連通している。
【0034】
なお、ハウジング210は第一ハウジング部材211、第二ハウジング部材212、第三ハウジング部材213、第四ハウジング部材214及び第五ハウジング部材215から形成されている。第一ハウジング部材211はタイミングギア251及び253を収容し、第二ハウジング部材212は軸受及びシールを収容し、第三ハウジング部材213はスクリュー回転ロータのスクリュー部を収容し、第四ハウジング部材214は軸受及びシールを収容し、第五ハウジング部材215はモータ241を備える。ここで、第一ハウジング部材211は、吐出側フランジを構成し、第二ハウジング部材212、第三ハウジング部材213及び第四ハウジング部材214は、ハウジング本体を構成しており、第五ハウジング部材は吸入側フランジを構成している。
【0035】
次に、本実施形態に係る真空ポンプ200の作用について説明する。
【0036】
まず、モータ241がスクリュー回転ロータ204を回転させると、スクリュー回転ロータ204及びスクリュー回転ロータ202の一端部には、タイミングギア253及び251がそれぞれ互いに噛み合うように固定されているので、スクリュー回転ロータ204の回転に伴ってスクリュー回転ロータ202が回転する。スクリュー回転ロータ202及びスクリュー回転ロータ204が回転することによって、スクリュー回転ロータ収納室210b内に導入された圧縮性流体は吸入口側からハウジング210とスクリュー回転ロータ202及び204により形成された移送室210c側に移送され、移送室210cを介して排出される。また、スクリューロータ収納室210b内の圧縮性流体が移送室210cを介してスクリュー回転ロータ収納室210b外へ排出されると、スクリュー回転ロータ収納室210bには、吸入口を介して被真空容器から新たな圧縮性流体が吸入される。
【0037】
なお、本実施形態においては、容積移送型のスクリュー式真空ポンプについて述べたが、本発明をクロー式やスクロール式ポンプ等の回転軸に対して軸直角断面形状の重心と回転中心が一致しないポンプに適用しても同様の効果を得ることができる。また、半導体製造装置用真空ポンプとして、当該構造の回転式真空ポンプを用いた場合、発熱による熱膨張でバランスウエイトとハウジングが当たらないようにし、さらに腐食性ガスに汚染されないため、バランスウエイトは回転ロータと同じ材質を用いるとよい。
【0038】
次に本件発明にかかるスクリュー回転ロータの第2実施例を示す。
図5は第2実施例にかかるスクリュー回転ロータを回転軸垂直方向から見た図、図6は該スクリュー回転ロータのC方向矢視図、図7は該スクリュー回転ロータのD方向矢視図である。
ここではスクリュー部311は第1実施例と同様なので、軸方向両端に形成されたバランス部301について説明する。バランス部301は排気作用をする整数巻のスクリュー部311を同形状のスクリュー形状で同一部材を所定長さ延長加工している。つまりスクリューの巻数が整数+αとなっている。αとしては最大でも各両端面で2以下となっている。つまり、図5のx長がピッチ長以下となっている。
該バランス部301のスクリュー歯部303をモーメントバランスが回転軸上にくるように削る。整数巻の場合のスクリュー歯部303の削り方としては、バランス部301において、スクリュー部311との接合面上で歯先部と軸方向から見て回転軸に対して反対側のスクリュー歯部301を歯先部に沿って扇状に切削する。さらに、該切削部305とは軸方向から見て回転軸に対して反対側のスクリュー歯部301も歯先部から切削し、静的バランスをとると共に、モーメントバランスが回転軸上にくるようにする。従って、本件の場合、回転軸に対してほぼ対称な配置で歯先から削った扇型の切削部分305と軸方向歯先、先端部の切欠き切削部分306がある。モーメントバランスをとるためだけであれば、扇形の切削部分305を削除するだけでも良いが、軸方向歯先先端部は薄く不安定な部分なため、歯先先端部分306も含めてモーメントバランスをとって削除した方が良い。また、モーメントバランスを取り易い形状であれば切削部分の形状は扇形に限らず任意に選択することができる。このような構成にすることにより、モーメントバランスを取るために別部材を別途装着する必要がなくなり、工数もコストも削減できる。ここで点線曲線321はスクリューロータ最端面における切削前のスクリュー歯面を示す。
【0039】
図8は実施例1におけるスクリューロータとバランスウェイトを一体にした第3実施例である。このような構成にすることにより、バランス部401を歯型形状に切削する必要が無くなりコストも削減できる。また、モーメントバランスを取るために別部材を別途装着する必要がなくなり、工数もコストも削減できる。
さらに、第1実施例、第2実施例についても同様に言えるが、排気室のシール性には関係の無いバランス部の歯先面部403に側面からバランスの最終調整を行うための所定の穴を空けることにより、さらに高精度なバランスの微調整を行うことができる。例えばドリルを用いることにより容易に穴を空けることができ、該部分に穴をあけても吸気口から吐出口間の排気室内の移送室のシール性には全く影響が無いので、該バランス部の無い従来のスクリューと比べて、真空ポンプの性能を落とすことは無い。
【0040】
スクリューのバランス部とハウジングとの間の隙間は、反応生成ガスが滞留するのを防ぐため、スクリュー部と同様にできるだけ狭くするとよい。隙間が狭ければスクリューロータが回転することにより反応生成ガスが対流するので、生成物ができたとしても、剥がれ落ち易いので生成物が溜まりにくくできる。
吸気口又は吐出口がハウジングの側面に空いている場合、スクリューのバランス部に面しているハウジング部分は全て任意に穴を空けることができるので、大きな吸気口や吐出口が形成できる。従って、例え生成物が吸気口や吐出口に付着しても簡単に塞がれる事は無い。
本件発明は特に1条のスクリューに対して有効である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
回転軸に対して軸直角断面形状の重心と回転中心が一致しないポンプ式の真空ポンプやコンプレッサーに適用できる。また半導体製造装置のような極希薄な反応生成ガスを流し排気するための真空ポンプにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本件発明の第1実施例のスクリュー回転ロータの回転軸直角方向断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】本件発明のスクリュー回転ロータを用いた真空ポンプの断面図である。
【図5】本件発明の第2実施例のスクリュー回転ロータの回転軸直角方向矢視図である。
【図6】図1のC方向矢視図である。
【図7】図1のD方向矢視図である。
【図8】本件発明の第3実施例のスクリュー回転ロータの回転軸直角方向矢視図である。
【符号の説明】
【0043】
101、202、204 スクリュー回転ロータ
103、105 バランスウエイト
107、109 位置決部材
111、113 切欠き部
115、117 ネジ
119、121 切欠
200 真空ポンプ
210 ハウジング
231、233、234、236 軸受
251、253 タイミングギア
241 モータ
237、238、239、240 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸直角断面形状の重量重心が回転中心と一致しない回転ロータにおいて、回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を設けたことを特徴とする回転ロータ。
【請求項2】
前記回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を、回転ロータの回転軸方向端部に回転ロータとは別部材(バランスウエイト)を固着したことを特徴とする請求項1に記載の回転ロータ。
【請求項3】
前記バランスウエイトを回転ロータの軸方向両端部に固着したことを特徴とする請求項2に記載の回転ロータ。
【請求項4】
前記バランスウエイトの軸直角断面の肉部は、回転軸から回転ロータの最外周までの距離を半径とし、回転軸を中心とする円の半円内にあることを特徴とする請求項2または3に記載の回転ロータ。
【請求項5】
前記バランスウエイトの軸直角断面形状は、特定の軸直角法線に対して対称になっていることを特徴とする請求項2〜4に記載の回転ロータ。
【請求項6】
前記回転ロータのアンバランスモーメントを小さくするための機構を、回転ロータの回転軸方向端部を所定の長さ延長し該延長部分の肉部を所定量無くしたことを特徴とする請求項1に記載の回転ロータ。
【請求項7】
前記延長部分を回転ロータの軸方向両端部に形成したことを特徴とする請求項6に記載の回転ロータ。
【請求項8】
前記延長部の軸直角断面の肉部は、回転軸から回転ロータの最外周までの距離を半径とし、回転軸を中心とする円の半円内にあることを特徴とする請求項6または7に記載の回転ロータ。
【請求項9】
前記バランスウエイトの軸直角断面形状は、特定の軸直角法線に対して対称になっていることを特徴とする請求項6〜8に記載の回転ロータ。
【請求項10】
吸入口と吐出口を有するケーシング内に、非接触で噛合う一対のスクリュー回転ロータを収容し、所定の手段で前記一対のスクリュー回転ロータを同期回転させ、前記ケーシングを密封することにより前記吸入口及び吐出口以外で一対のスクリュー回転ロータ収納室とスクリュー回転ロータ収納室外との連通を封止する封止手段を設けたスクリュー式真空ポンプにおいて、前記一対のスクリュー回転ロータの各々を請求項1〜9に記載の回転ロータの構成を用いたことを特徴とするスクリュー式真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/042978
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515118(P2005−515118)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015638
【国際出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】