説明

回転ワーク支持装置

【目的】パレットで搬送されるワークを回転させながら接着剤塗布するとき、パレットを特別な構造にせず、簡単な構造でコストダウン可能にする。
【構成】パレット30に受け治具21〜24を介してワーク11〜14を支持し、回転駆動手段40の上に置いてパレット30を押し下げることにより、回転駆動手段40の筒部41〜44で受け治具21〜24をパレット30から脱着させ、同時に各受け治具21〜24と係合一体化し、この状態でモータ48を駆動すると、出力ギヤ49と各筒部の被動ギヤ47a〜dが噛み合って、全ワーク11〜14が一度に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パレット上に支持されたワークを回転させることができるようにした回転ワーク支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パレットに支持された円筒状のワークを押し上げて、回転駆動部との間に挟み、この状態でワークを回転させながら塗装するものが公知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−29918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで上記のようにパレットでワークを押し付けた場合、ワークを回転させるに際してパレットも一緒に回転させるか、パレットに対してワークのみが回転できるように軸受け構造を設ける必要がある。しかし、パレットは比較的大量に使用されるため、構造簡単でコストの安い回転ワーク支持装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本願の回転ワーク支持装置に係る請求項1の発明は、複数のワークと、これを嵌合させて支持するパレットと、ワークを回転させる回転手段とを備えたワーク支持装置において、
前記回転手段は、その上にパレットが置かれたとき、前記ワークを押し上げて前記パレットから離脱させるとともに、前記ワークと一体化してこれを回転させることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は上記請求項1において、前記ワークは受け治具を介して前記パレットへ嵌合するとともに、前記ワークの押し上げ時には前記受け治具と一緒に押し上げられ、かつ前記受け治具が前記回転手段と一体化することを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は上記請求項1において、前記回転手段は前記ワーク毎に駆動部を備えるとともに、各駆動部は相互に回転伝動手段で接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、回転手段でワークを押し上げてパレットから離脱させるとともに、回転手段とワークを一体化させるので、パレット側に特別な軸受構造等を設けることなくワークを回転させることができる。しかも、非回転時にはワークをパレットへ嵌合支持させて搬送することにより通常のパレットとして使用できるので、構造簡単でコストの安い回転ワーク支持装置を実現できる。
【0008】
請求項2の発明によれば、受け治具を介してワークをパレットへ着脱するとともに、ワークを回転させるときは、回転手段の押し上げによりワークと受け治具を一緒に押し上げ、かつ受け治具を回転手段と一体化させるので、そのまま回転させることができる。このとき受け治具を介するためワークをパレットへ密に嵌合しておく必要がない。しかもワークは受け治具に対して常時密に嵌合させておくことができるので、パレットに対するワークの着脱を容易にしてかつワークを常時安定支持できる。
【0009】
請求項3の発明によれば、回転手段は前記ワーク毎に駆動部を備えるとともに、各駆動部は相互に回転伝動手段で接続しているので、駆動部のいずれか一つを駆動すれば、全てを一緒に駆動できるので、装置の構造を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて一実施形態を説明する。図1は接着剤塗布に際して複数のワークを回転させる状態の概略を示す斜視図である。第1〜第4ワーク11〜14からなる複数のワークが、それぞれ受け治具21〜24を介して共通のパレット30に嵌合支持され、それぞれが後述する回転駆動手段により回転可能になっている。
【0011】
第1ワーク11はカップ部15及び軸部16からなる略カップ状をなし、軸部16の下端側を略円錐状の受け治具21にてマスクした状態で軸部16及びカップ部15を回転させる。第2ワーク12〜第4ワーク14はそれぞれ略円筒状であり、やはり円筒状の受け治具22〜24上に乗せられて回転する。第4ワーク14の上部には広幅の外フランジ17が形成され、その一部にスタッドボルト18が上方へ一体に突出している。
【0012】
図2は各ワーク11〜14を支持した状態にあるパレット30の平面図である。パレット30は平面視略長方形状の平面部32を備え、ここに4つの取付穴31が長さ方向へ並んで設けられる。各取付穴31には各受け治具21〜24が嵌合され、さらに各受け治具21〜24には対応する第1乃至第4ワーク11〜14が嵌合される。
【0013】
パレット30の長さ方向両端側は拡幅部32をなし、この一部にガイドピン(後述)のためのガイド穴33が設けられている。図中に示すギヤ49は回転駆動手段を構成するものであり、被動ギヤ47a〜dは各受け治具21〜24と同軸で設けられ、モータ48の出力ギヤ49によって全体が一度に回転駆動される。
【0014】
図3は各ワーク11〜14に対する接着剤塗布状態を示す。各ワーク11〜14毎に塗布ノズル1及び2は上下一対で設けられ、各塗布ノズル1及び2の塗布パターンにおける中心線である塗布軸線をC2及びC3で示すように、上方及び下方等の2方向から同時に接着剤を塗布するようになっている。各ワーク11〜14はそれぞれ回転軸線C1の回りを回転可能である(図ではワーク11のみについて示す)。
【0015】
パレット30は回転駆動手段40の上に置くことにより各ワーク11〜14を回転できるようになる。回転駆動手段40は各受け治具21〜24に対応する筒部41〜44を備え、ベース45に対してベアリング46により回転自在に支持されている。筒部41の底部中央及び各筒部42〜44の底部外周には被動ギヤ47a〜dがそれぞれ一体回転可能に設けられている。被動ギヤ47b〜dは噛み合ってギヤ列を構成している。
【0016】
筒部41の被動ギヤ47aとこれに隣接する筒部42の被動ギヤ47bには、モータ48の出力ギヤ49が同時に噛み合う。したがって、筒部41及び42はモータ48の回転により同時に回転される。また、ギヤ列をなす筒部42〜44も同時に回転する。したがって、一つのモータ48により、全筒部41〜44を同時に回転駆動できる。
【0017】
図中の拡大部Aに示すように、受け治具22の下部は階段状断面をなして下方へ凸の環状凸部22aが形成され、この環状凸部22aがパレット30の取付穴31へ嵌合することにより受け治具22が開口縁部へ固定される。環状凸部22aには下方へ開放された環状溝22bが形成される、この環状溝22bへ筒部42の上端部に形成された環状凸部42aが嵌合する。受け治具22の上面側も階段状断面をなし、内周側の低くなった環状の段差部22cにワーク12の環状基部12aが嵌合固定される。
【0018】
このようにすると、受け具22の環状凸部22aをパレット30の取付穴31へ嵌合することにより第2ワーク12を確実にパレット30へ固定できる。また、拡大部Bに示すように、筒部42を押し上げると、環状溝22bへ環状凸部42aが嵌合するとともに、第2ワーク12を支持したまま受け具22を取付穴31から上方へ脱出させ、筒部42の上部が取付穴31内へ入る。このとき筒部42の上部外径が取付穴31の内径より若干小さくなっているので、筒部42は受け具22と一体になり、第2ワーク12を支持した状態で一体回転可能になる。
【0019】
他の受け具21、23及び24も同様にすることにより、各ワーク11〜14を確実にパレット30へ固定できるとともに、各筒部41、43及び44と一体回転可能にする。但し、第1ワーク11は軸部16の下端を受け具21の中央に設けられた首部21aの上端に形成されている軸穴へ嵌合するようになっている。
【0020】
第2〜第4ワーク12〜14は、略円筒状部材であり、各受け治具22〜24もそれぞれ略円筒状をなす。したがって、下側の塗布ノズル2は受け治具22〜24内へ入り込んで各ワークの裏側を同時に塗布できる。塗布ノズル1及び2の塗布角度は、上側の塗布ノズル1が略水平から略垂直下向きまで、下側の塗布ノズル2が略垂直上向きから略水平までの範囲で、予め設定された角度へ自由に変化させることができる。
【0021】
第1ワーク11は略円錐状で側面視略山形をなす受け治具11の頂部へ嵌合された軸部16の先端を除く、露出部全体が塗布パターン内に存在し、かつ第1ワーク11が回転することにより、接着剤塗布必要部が同時にかつ所定の塗膜条件を満足した状態で均一に塗布される。
【0022】
第2ワーク12はフランジ部分が円筒状の受け治具22の上部内側へ嵌合された状態で支持される。上側の塗布軸線C2は第2ワーク12の上部の内側を指向し、下側の塗布軸線C3は受け治具22の上端縁近傍における下部の内側を指向する。これにより、第2ワーク12の接着剤塗布必要部の表裏が同時にかつ所定の塗膜条件を満足した状態で均一に塗布される。
【0023】
第3ワーク13は、円筒状の受け治具23の上部内側へ嵌合された状態で支持される。上側の塗布軸線C2は図示の被支持状態における第3ワーク13の上部内側を指向し、下側の塗布軸線C3は受け治具23の内径よりも内側へ張り出している下部の内側部分を指向する。これにより、接着剤塗布必要部の表裏が同時にかつ所定の塗膜条件を満足した状態で均一に塗布される。
【0024】
第4ワーク14は、円筒状の受け治具24の上部へ嵌合して支持され、上側の塗布軸線C2は外フランジ17の上面の内周側及び筒部内側を指向し、下側の塗布軸線C3は側面を下側から指向する。これにより、接着剤塗布必要部の表裏が同時にかつ所定の塗膜条件を満足した状態で均一に塗布される。
【0025】
上下の各塗布ノズル1及び2は、それぞれロボットにより塗布軸線C2及びC3の回転軸線C1に対する角度を自由に変化させることができる。また、各ワーク11〜14を回転させることにより、接着剤を塗膜を均一にできる。
さらに、回転速度を調整しつつ接着剤の吐出圧と吐出量を調整すれば、塗膜を任意の厚さで均一かつ正確に形成できる。そのうえ、接着剤の吐出圧を低圧とし、かつ吐出量を少量にすれば、塗布部分を正確に限定できるので、スタッドボルト18等をマスクしない、マスキングレスで塗膜を形成できる。
【0026】
図4は、パレット30の回転駆動手段40に対するセットを示す図であり、回転駆動手段40は基台50上に設けられている。各ワーク11〜14を支持した状態でコンベヤ3上を搬送されてきたパレット30は、回転駆動手段40上方で停止し、上方より、押さえ治具61〜64を対応する各ワーク11〜14の上に乗せ、シリンダ61a〜64a等により、各押さえ治具61〜64で対応する各ワーク11〜14を各受治具21〜24を介してパレット32に固定する。
【0027】
各シリンダ61a〜64aはスライダ65に支持されている。スライダ65は枠部材66に対して上下左右へ移動自在である。ここで左右とはコンベヤ(後述)の長さ方向と平行な方向とする。
【0028】
各押さえ治具61〜64で各ワーク11〜14を固定されたパレット30は、クランプ51を基台50側に設けられているシリンダ52で押し下げることにより、パレット30を下降させて回転駆動手段40へ押し付ける。このとき、スライダ65が同期して下降することにより固定状態を維持する。また、ガイドピン53をパレット30へ嵌合して位置決めすることにより、パレット30の各受け治具21〜24が対応する各筒部41〜44と一致させる。
【0029】
この状態でパレット30が回転駆動手段40へ押し付けられると、図3の拡大図A、Bに示すように、各筒部41〜44が対応する受け治具21〜24と結合一体化しつつ各受け治具21〜24をパレット30の取付穴から脱出させる。その後、各押さえ治具61〜64を上昇させて各ワーク11〜14を自由にし、回転可能な状態にするので、図3に示すようにモーター48を回転させて各ワーク11〜14を回転させながら接着剤の塗布を行う。
【0030】
なお、接着剤塗布直前の段階までは各押さえ治具61〜64で各ワーク11〜14を固定することにより、各ワーク11〜14を傾いて浮き上がる等の不都合な事態を生じないよう、正確に位置決めした固定状態を維持できる。
【0031】
図5はパレット30の流れを示す平面図である。パレット30を搬送するコンベヤ3の一部、押さえ治具61〜64を支持するスライダ65、このスライダ65を移動自在に支持する枠部材66、及び、回転駆動手段40を支持する基台50(いずれも図示省略)は接着剤塗布ブース4内に設けられている。
【0032】
図の左側からコンベヤ3上を塗装ブース4内へ搬送されて来たパレット30は、コンベヤ3から下ろされて別の左右方向移動用コンベヤ3aへ移されてから基台50上へ搬送され、ここで回転駆動手段40上へセットされて接着剤の塗布が行われる。その後は、パレット30を回転駆動手段40から外し、各受け治具21〜24を介して各ワーク11〜14を支持させた状態で再びコンベヤ3a及び3上に乗せて次工程へ搬送する。
【0033】
次に、本実施例の作用を説明する。図3に示すように、回転駆動手段40で各ワーク11〜14を嵌合した状態のまま各受け治具21〜24を押し上げてパレット30から離脱させるとともに、回転駆動手段40と各受け治具21〜24を介して各ワーク11〜14を一体化させるので、パレット30側に特別な軸受構造等を設けることなく各ワーク11〜14を回転させることができる。しかも、非回転時には各ワーク11〜14をパレット30へ嵌合支持させて搬送することにより通常のパレット30として使用できるので、構造簡単でコストの安い回転ワーク支持装置を実現できる。
【0034】
また、各受け治具21〜24を介して各ワーク11〜14のパレット30に対する着脱を行うので、各ワーク11〜14をパレット30へ密に嵌合しておく必要がない。しかも各ワーク11〜14は各受け治具21〜24に対して常時密に嵌合させておくことができるので、パレット30に対する各ワーク11〜14の着脱を容易にしてかつ各ワーク11〜14を常時安定支持できる。
【0035】
そのうえ、回転駆動手段40は各ワーク11〜14毎に駆動部として被動ギヤ47a〜dを備えるとともに、各被動ギヤ47a〜dはモータ48の出力ギヤ49とギヤ列を構成して相互に回転伝動しているので、モータ48の出力ギヤ49だけを駆動すれば、全てを一緒に駆動できることになり、装置の構造を簡素化できる。
【0036】
なお、本願発明は上記の実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、ワークは種々の用途のものが可能であり、接着剤塗布ばかりでなく、塗装等に用いることができる。また、受け治具を省略してワークを直接パレットへ支持させてもよい。さらに一つのパレットに取付けるワークの数は複数であれば足り、回転伝動機構もギヤ伝動に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ワークの支持状態を示す斜視図
【図2】ワークを支持した状態におけるパレットの平面図
【図3】各ワークの塗布状態を示す断面図
【図4】パレットの回転駆動手段に対するセットを示す図
【図5】パレットの流れを示す平面図
【符号の説明】
【0038】
1:塗布用のノズル、2:塗布用のノズル、11:第1ワーク、12:第2ワーク、13:第3ワーク、14:第4ワーク、21〜24:受け治具、30:パレット、40:回転駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークと、これを嵌合させて支持するパレットと、ワークを回転させる回転手段とを備えたワーク支持装置において、
前記回転手段は、その上にパレットが置かれたとき、前記ワークを押し上げて前記パレットから離脱させるとともに、前記ワークと一体化してこれを回転させることを特徴とする回転ワーク支持装置。
【請求項2】
前記ワークは受け治具を介して前記パレットへ嵌合するとともに、前記ワークの押し上げ時には前記受け治具と一緒に押し上げられ、かつ前記受け治具が前記回転手段と一体化することを特徴とする請求項1記載の回転ワーク支持装置。
【請求項3】
前記回転手段は前記ワーク毎に駆動部を備えるとともに、各駆動部は相互に回転伝動手段で接続していることを特徴とする請求項1の回転ワーク支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−347740(P2006−347740A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178940(P2005−178940)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000177900)山下ゴム株式会社 (60)
【Fターム(参考)】