説明

回転力発生機

【課題】開方向の駆動回転を油圧力で行い、閉方向の駆動回転をスプリングで行う回転力発生機を提供する。
【解決手段】スプリングリターン式の回転力発生機であり、ネジ手段を介して回転しつつ軸方向に進退移動するピストンと、該ピストンの回転駆動力を取出すシャフトを備えており、前記ピストン(42)を挟んで往動室(49a)と復動室(49b)を設けている。前記往動室(49a)は、油圧によりピストン(42)を往動させる油圧シリンダ(50)を構成する。前記復動室(49b)は、スプリング(54)によりピストン(42)を復動させるスプリング装備室(51)を構成する。前記スプリング(54)とピストン(42)の相互間の圧接部に、ベアリング(67)を介装しており、これによりピストン(42)の回転をスプリング(54)に伝達させないように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、船舶におけるハッチカバー開閉用、各種バルブの開閉回転用、各種ドアの開閉用、その他、開閉方向の回転力を与えるために使用される回転力発生機に関し、特に、開方向の駆動回転を油圧力で行い、閉方向の駆動回転をスプリング力で行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正逆油圧回転式の回転力発生機が公知であり、本出願人が過去に提案した1例を図5に基づいて説明する。
【0003】
ケーシング1内にはピストン2及びシャフト3が内装されている。シャフト3は、ケーシング1を挿通し、ケーシング1の両端を閉塞する第1カバー部材4及び第2カバー部材5に軸架されている。
【0004】
ピストン2は、前記ケーシング1のシリンダ6に内挿されるフランジ部2aと、前記シャフト3に同心状に外挿される筒部2bとを備えている。
【0005】
ピストン2の筒部2bは、シャフト3に対してスプライン7を介して同行回転自在且つ軸方向摺動自在となるように外挿されると共に、ケーシング1に対してネジ手段8を介して螺合されている。即ち、筒部2bの外周に雄ネジ9を形成し、該雄ネジをケーシング1の内周に形成した雌ネジ10に螺合している。
【0006】
シリンダ6は、ピストンのフランジ部2aを挟む軸方向前後に位置して、往動用油圧室6aと復動用油圧室6bを構成し、それぞれに圧油を供給・排出する出入口11a、11bが設けられている。
【0007】
前記出入口11aから往動用油圧室6aに油圧を作用させると、ピストン2は、フランジ部2aにおいて図示矢印X1で示す往動方向のスラスト力を受けつつ、筒部2bにおいてネジ手段8の螺合により回転力に変換され、これにより、ネジ手段8に沿って螺進しつつ正転方向Fに回転する。このピストン2の回転駆動力は、スプライン7によりシャフト3に伝達され、該シャフト3の端部の出力軸3aを正転方向Fに回転する。
【0008】
反対に、前記出入口11bから往動用油圧室6bに油圧を作用させると、ピストン2は、フランジ部2aにおいて図示矢印X2で示す復動方向のスラスト力を受けつつ、筒部2bにおいてネジ手段8の螺合により回転力に変換され、これにより、ネジ手段8に沿って螺退しつつ逆転方向Rに回転する。このピストン2の回転駆動力は、スプライン7によりシャフト3に伝達され、該シャフト3の端部の出力軸3aを逆転方向Rに回転する。
【0009】
油圧装置12は、タンク14から油圧源13により、出入口11a、11bの一方の出入口にオイルを供給するときは、他方の出入口からオイルをタンク14に戻す手動切換弁15を備えた油圧回路を構成している。シャフト3が正転又は逆転した状態で出力軸3aをロックするように構成されており、手動切換弁15をロック位置に切り換えると、油圧源13からの油圧がブロックされ、出入口11a、11bの油圧ラインを油圧的にブロックするためのパイロットチェック弁16a、16bが設けられている。これによりピストン2の往復動方向の動きが封じられ、シャフト3の動きがロックされる。
【0010】
【特許文献1】特許第2860329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した正逆油圧回転式の回転力発生機は、ピストン2のX1方向の往動とX2方向の復動を何れも油圧により行うものであるため、高いトルクを発生できる利点を有するが、回転力発生機が使用目的とする対象物によっては、必ずしも強大なトルクが求められない場合もあり、その場合は、むしろ省エネと、低コストを実現するのが望ましい。
【0012】
また、回転力発生機をドア開閉用のアクチュエータとして使用する場合、ドアを閉じた状態で、上述のようにロックしてしまうよりも、ドアに閉方向の予圧をかける方が、気密性が向上するので好ましい。
【0013】
そこで、図6に比較例として示すようなスプリングリターン式の回転力発生機を提案することができる。
【0014】
図6(A)に示すように、ケーシング21内にはピストン22及びシャフト23が内装されている。シャフト23は、ケーシング21を挿通し、ケーシング21の両端を閉塞する第1カバー部材24及び第2カバー部材25に軸架されている。
【0015】
ピストン22は、前記ケーシング21のシリンダ26に内挿されるフランジ部22aと、前記シャフト23に同心状に外挿される筒部22bとを備えている。
【0016】
ピストン22の筒部22bは、シャフト23に対してスプライン27を介して同行回転自在且つ軸方向摺動自在となるように外挿されると共に、ケーシング21に対してネジ手段28を介して螺合されている。筒部22bの外周に雄ネジ29が形成され、該雄ネジをケーシング21の内周に形成した雌ネジ30に螺合している。
【0017】
前記ネジ手段30を挟む軸方向前後に位置して往動室31と復動室32が設けられている。往動室31は、油圧によりピストン22を往動させる油圧シリンダ26を構成しており、復動室32は、スプリング33によりピストン22を復動させるスプリング装備室34を構成している。尚、油圧シリンダ26に圧油を供給・排出する出入口40が前記カバー25に開設されている。
【0018】
図6(B)に示すように、スプリング33は、中心に孔35を形成した皿バネ36の2枚を相互に外周部37を合掌させた状態で1組の単位バネ36Pとして、複数組の単位バネ36P、36P・・・を軸方向に列設し、対面する単位バネ間における皿バネ36の内周部38を当接させることにより、全体として圧縮スプリングを構成する。
【0019】
前記スプリング33は、圧縮された状態で、スプリング装備室34を挿通するシャフト23の軸部23bに外挿され、両端に受板39a、39bを配置しており、ピストン22に向けて臨む受板39aを筒部22bの軸端に圧接させている。
【0020】
前記出入口40からシリンダ26に油圧を作用させると、ピストン22は、フランジ部22aにおいて図示矢印X1で示す往動方向のスラスト力を受けつつ、筒部22bにおいてネジ手段28の螺合により回転力に変換され、これにより、ネジ手段28に沿って螺進しつつ正転方向Fに回転する。このピストン22の回転駆動力は、スプライン27によりシャフト23に伝達され、該シャフト23の端部の出力軸23aを正転方向Fに回転する。この際、ピストン22がX1方向に往動するので、スプリング33は、筒部22bにより圧縮され、復元力を蓄積する。
【0021】
シリンダ26に充填されたオイルが出入口40からタンクに向けて自由に還流されるように油圧回路(図示省略)を切換えると、スプリング33の復元力を受けることにより、ピストン22は、筒部22bにおいて図示矢印X2で示す復動方向のスラスト力を受けつつ、ネジ手段8の螺合により回転力に変換され、これにより、ネジ手段28に沿って螺退しつつ逆転方向Rに回転する。このピストン22の回転駆動力は、スプライン27によりシャフト23に伝達され、該シャフト23の端部の出力軸23aを逆転方向Rに回転する。
【0022】
図6に比較例として示したスプリングリターン式の回転力発生機によれば、図5に示した正逆油圧回転式の回転力発生機よりも、ロック機構を不要とすることにより油圧回路がシンプルとなるので、低コストで提供可能となり、しかも、スプリング33によりピストン22の復動を行わせるので、油圧モータの電力消費を省エネ可能にするという利点がある。更に、ピストン22が完全に復動した状態においても、常にスプリング33がピストン22を復動方向に弾発付勢しているので、ドア開閉用のアクチュエータとして使用した場合、閉じたドアに閉方向の予圧をかけた状態で保持することが可能になり、ドアの気密性を向上できるという利点がある。
【0023】
しかしながら、図6に示すような比較例のスプリングリターン式の回転力発生機は、次のような解決すべき課題を有している。
【0024】
シリンダ26に油圧を作用させ、ピストン22を往動させると、ピストン22の筒部22bが回転しながらスプリング33を押圧し圧縮するので、筒部22bの回転運動がスプリング33に伝達する。このため、隣り合う皿バネ36が摺擦することにより摩耗する。また、シリンダ26の油圧を解放し、スプリング33の復元力によりピストン22を復動させると、ピストン22の筒部22bが回転しながら後退し、スプリング33を連れ回りさせるので、前記と同様の摩耗を生じる。そして、このような摩耗が進行すると、皿バネ36を破損してしまうおそれがある。
【0025】
前記スプリング33は、皿バネ36の孔35にシャフト23の軸部23bを挿通することにより保持されている。この際、軸部23bの外周面に対して皿バネ36の内周部38(孔35の内周縁)が僅かなクリアランスを有しているが、スプリング33を圧縮すると、前記クリアランスが減じて皿バネ36の内周部38(孔35の内周縁)を軸部23aの外周面に接触する可能性がある。そこで、回転するシャフト23の軸部23bに皿バネ36が接触すると、この点においても、前記のような摩耗を生じるという問題がある。
【0026】
ネジ手段28を構成する雄ネジ29と雌ネジ30の螺合部分は、高い面圧を受けるため、グリス等を添加する必要がある。ところが、経年使用により、グリスの油膜が欠乏すると、焼き付きや異常摩耗を生じ、作動不良を起こすおそれがある。このため、ネジ手段28に対するグリス注入口をケーシング21に設ける必要があり、また、定期的にグリス注入によるメンテナンスを行う必要があり、不便である。
【0027】
更に、スプリング33は、複数組の単位バネ36P、36P・・・を軸方向に列設しており、受板39a、39bにより、両端の単位バネ36Pにおける皿バネ36の内周部38を押圧するように構成されている。従って、ピストン22の往動によりスプリング33を圧縮する際、受板39aによる皿バネ36の押し付けが不安定である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、スプリングリターン式を基本としつつ上記課題を解決した回転力発生機を提供するものであり、その手段として構成したところは、ネジ手段を介して回転しつつ軸方向に進退移動するピストンと、該ピストンの回転駆動力を取出すシャフトを備えた回転力発生機において、前記ピストンを挟んで往動室と復動室を設け、前記往動室は、油圧によりピストンを往動させる油圧シリンダを構成し、前記復動室は、スプリングによりピストンを復動させるスプリング装備室を構成しており、前記スプリングとピストンの相互間の圧接部にベアリングを介装し、ピストンの回転をスプリングに伝達させないように構成して成る点にある。
【0029】
前記ネジ手段は、油圧シリンダに連設し、油圧シリンダ内の圧油をネジ手段に浸入させるように構成することが好ましい。
【0030】
前記スプリング装備室を挿通するシャフトの軸部に筒軸を外挿し、前記筒軸により、外周にスプリングを搭載するガイド手段を構成すると共に、軸端に往動時のピストンを当接させるストローク制限手段を構成することが好ましい。
【0031】
前記ピストンからスプリング装備室に向けて延びる筒状のアダプターを設けると共に、該アダプターとスプリングの間に受板を設け、前記アダプターと受板の圧接面の相互に前記ベアリングを設けることが好ましく、前記筒状のアダプターは、前記筒軸の外周に相対回転自在且つ摺動自在に外挿することが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に記載の本発明によれば、スプリングリターン式の回転力発生機を提供できるので、図5に示した従来の正逆油圧回転式の回転力発生機よりも、ロック機構を不要とすることにより油圧回路がシンプルとなり、特に、油圧装置69から回転力発生機までの配管が1本の配管77で済むことにより配管工数が半分になる利点があり、低コストでの提供が可能になる。しかも、スプリングリターン式であるから、省エネが可能になる。更に、ピストン42が完全に復動した状態においても、常にスプリング54がピストン42を復動方向に弾発付勢しているので、ドア開閉用のアクチュエータとして使用した場合、閉じたドアに閉方向の予圧をかけた状態で保持することが可能になり、ドアの気密性を向上できるという効果がある。
【0033】
特に、スプリングリターン式の回転力発生機に関して、スプリング54とピストン42の相互間の圧接部にベアリング67を介装し、ピストン42の回転をスプリング54に伝達させないように構成しているので、スプリング54の損耗を好適に防止し、長期間の耐用性を保証できる。
【0034】
この際、請求項2に記載の本発明によれば、ネジ手段53を油圧シリンダ50に連設し、油圧シリンダ内の圧油をネジ手段53に浸入させるように構成しているので、ネジ手段53に対するグリス注入手段等を設けなくても、ネジ手段53の焼き付きや異常摩耗による作動不良を起こすおそれはなく、メンテナンスフリーとなる効果がある。
【0035】
そして、請求項3に記載の本発明によれば、シャフト43の軸部43aに外挿した筒軸58により、スプリング54を搭載するガイド手段64を構成することができ、しかも、同時に、該筒軸58の軸端によりピストン42のストローク制限手段65を構成することができるという利点がある。
【0036】
更に、請求項4に記載の本発明によれば、ピストン42に設けたアダプター66とスプリング54の間に受板63aを設け、該アダプター66と受板63aの圧接面の相互にベアリング67を設けた構成であるから、スプリング54の全長(皿バネ式の場合は皿バネ60の枚数)に応じて、長さの異なるアダプター66を準備すれば良く、大小トルクの異なる回転力発生機に容易に対応することが可能となり、設計及び生産の容易性に寄与する。
【0037】
この際、請求項5に記載の本発明によれば、筒状のアダプター66を前記筒軸58の外周に相対回転自在且つ摺動自在に外挿する構成であるから、アダプター66の取付状態が安定するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0039】
図1に示すように、ケーシング41内には、ピストン42及びシャフト43が内装されている。シャフト43は、ケーシング41を挿通し、該ケーシング41の尾端を閉塞するエンドプレート44と先端を閉塞する軸受プレート45に軸架されている。図例の場合、ケーシング41は、先端側の径小筒体41aと尾端側の径大筒部41bを相互にボルト46で連結一体化しており、径大筒部41bの尾端にエンドプレート44をボルト47で結合し、径小筒部41aの先端に油密的に挿入した軸受プレート45を係止リング48で固定している。
【0040】
ピストン42は、径小筒部41aと径大筒部41bの連結部の近傍に位置して、径小筒部41aに内装されており、図3の矢印X1で示す往動方向と、図1の矢印X2で示す復動方向に摺動自在なフランジ部42aを有している。このフランジ部42aを挟んで、前記径小筒部41aにより往動室49aが形成され、前記径大筒部41bにより復動室49bが形成されており、前記往動室49aは、油圧によりピストン42を往動させる油圧シリンダ50を構成し、前記復動室49bは、スプリング54によりピストン42を復動させるスプリング装備室51を構成する。
【0041】
ピストン42は、前記フランジ部42aから復動方向X2に延びる筒部42bを備えている。筒部42bは、シャフト43に対して、スプライン52を介して同行回転自在且つ軸方向摺動自在となるように同心状に外挿され、径小筒部41aにネジ手段53を介して螺合されている。ネジ手段53は、筒部42bの外周に形成した雄ネジ53aと径小筒部41aの内周に形成した雌ネジ53bを螺合している。
【0042】
図1に示すようにピストン42が復動方向X2に移動された状態で、前記筒部42bの端部に臨むフランジ56がシャフト43に設けられており、該フランジ56と前記軸受プレート45の間にスラストベアリング57が介装されている。
【0043】
前記スプリング装備室51を挿通するシャフト43の軸部43aには筒軸58が外挿され、該筒軸53にスプリング54が外挿されており、スプリング54の両端を圧接する受板63a、63bを該筒軸53に外挿している。図2に示すように、スプリング42は、中心に孔59を形成した皿バネ60の2枚を相互に外周部61を合掌させた状態で1組の単位バネ60Pを構成し、複数組の単位バネ60P、60P・・・を軸方向に列設し、対面する単位バネ間における皿バネ60の内周部62を当接させることにより、全体として圧縮スプリングを構成する。その際、両端の単位バネ60Pの外側には、更に各1枚の皿バネ60を追加することにより端部皿バネ60a、60bが配置され、該端部皿バネ60a、60bを受板63a、63bに圧接させられる。従って、端部皿バネ60a、60bは、それぞれの外周部61を受板63a、63bに圧接する。
【0044】
図1及び図3に示すように、筒軸53は、外周にスプリング54を搭載するガイド手段64を構成すると共に、往動室49aに向けて臨む軸端に、往動時のピストン42のフランジ部42aを当接させるストローク制限手段65を形成している。
【0045】
ピストン42とスプリング54の間には、フランジ部42aからスプリング装備室51に向けて延びる筒状のアダプター66が設けられている。該アダプター66は、図例ではピストン42と別体に形成されているが、ピストン42と一体に形成しても良い。アダプター66を別体に形成する場合、ピストン42のフランジ部42aに結合しても良いが、図示のように、スプリング54の力により、フランジ部42aと受板63aの間に挟着するだけでも良い。
【0046】
前記アダプター66は、延長端部を前記筒軸58の軸端の外周に相対回転自在且つ摺動自在に外挿されており、該延長端部に設けたフランジ66aと前記受板63aの相互間にスラストベアリング67を介装している。
【0047】
前記油圧シリンダ50に圧油を供給・排出する出入口68が径小筒部41aに設けられており、図4に示すような油圧装置69に連結される。油圧装置69は、オイルを貯留するタンク70と、オイルを給送する油圧源71と、油圧源71によりオイルを給送する流路72に設けた第1バルブ73と、前記流路72から分岐してタンク70に連絡される還流路74に設けた第2バルブ75を備えており、該油圧装置69の流路72を1本の配管77で回転力発生機の出入口68に連絡している。従って、第1バルブ73を開、第2バルブ75を閉とすることにより、出入口68にオイルを供給し、反対に、第1バルブ73を閉、第2バルブ75を開とすることにより、出入口68からオイルを排出してタンク70に戻すように構成されており、油圧源71と第1バルブ73の間にはリリース弁76が設けられている。尚、油圧源71は、モータ駆動式のポンプであるか又は人力式のポンプであるかを問わない。
【0048】
油圧装置69の第1バルブ73を開、第2バルブ75を閉とすることにより、出入口68にオイルを給送すると、図3に示すように、油圧シリンダ50に油圧が作用し、ピストン42は、フランジ部42aにおいて図示矢印X1で示す往動方向のスラスト力を受けつつ、筒部42bにおいてネジ手段53の螺合により回転力に変換され、これにより、ネジ手段28に沿って螺進しつつ正転方向Fに回転される。このピストン42の回転駆動力は、スプライン52によりシャフト43に伝達され、該シャフト43の端部の出力軸43bを正転方向Fに回転する。この際、ネジ手段53は、油圧シリンダ50に連設されているので、該油圧シリンダ50に供給されたオイルがネジ手段53に浸入して潤滑する。尚、径小筒部41aの先端には軸受プレート45が油密的に挿入されており、オイル漏れを防止している。
【0049】
ピストン42の往動中、アダプター66は、回転しながらX1方向に往動し、受板63aを押動することにより、スプリング54を圧縮する。この際、アダプター66と受板63aの間にはスラストベアリング67が介装されているので、該アダプター66の回転力が受板63aを介してスプリング54に伝達されることはない。従って、図6の比較例に関して説明したような皿バネ60の摩耗等を招来することはない。尚、アダプター66の回転力が筒軸58に伝達されないように、図示のような隙間S1を形成しておくのが好ましく、或いは、相互間にベアリングを介装しても良い。
【0050】
アダプター66が往動すると、スプリング54は、受板63a、63bの間隔を狭めることにより圧縮されるが、両端に配置された端部皿バネ60a、60bの外周部61を受板63a、63bで押動するので、圧縮動作が安定する。
【0051】
スプリング54を搭載した筒軸58にシャフト43の回転力が伝達されないように、筒軸58をシャフト43の軸部43aに対して相対回転自在に外挿するのが好ましく、図示のような隙間S2が形成され、或いは、相互間にベアリングが介装される。これにより、筒軸58は、スプリング54に回転力を与えない状態で搭載するガイド手段64を構成する。
【0052】
ピストン42は、往動した後、フランジ部42aを筒軸58のストローク制限手段65に当接した位置で停止する。
【0053】
前述のようにピストン42が往動した状態で、スプリング54は圧縮され、復元力を蓄積する。そこで、油圧装置69の第1バルブ73を閉、第2バルブ75を開とすることにより、油圧シリンダ50に充填されたオイルが出入口68から排出自由となるように解放すると、図1に示すように、圧縮されたスプリング54の復元力が受板63a及びアダプター66を介してピストン42に作用し、ピストン22は、図示矢印X2方向で示す復動方向のスラスト力を受けつつ、ネジ手段53の螺合により回転力に変換され、これにより、ネジ手段53に沿って螺退しつつ逆転方向Rに回転する。このピストン42の回転駆動力は、スプライン52によりシャフト43に伝達され、該シャフト43の端部の出力軸43bを逆転方向Rに回転する。
【0054】
このようにピストン42が逆転方向に回転しながら復動方向に移動するときも、往動時と同様に、その回転力がスプリング54に伝達されることはない。また、油圧シリンダ内のオイルがネジ手段53に浸入することも上記と同様である。
【0055】
ピストン42は、筒部42bの端部がフランジ56に当接した位置で停止する。この停止状態から、出力軸43bに正転方向Fの回転力を与えると、スプライン52を介してピストン42が回転され、ネジ手段53により往動方向X1に螺進しつつスプリング54を圧縮しようとするが、スプリング54がこれに反発するため、回転力発生機をドア開閉用のアクチュエータとして使用した場合、閉じたドアに閉方向の与圧をかけた状態で保持することが可能になり、ドアの気密性が向上する。
【0056】
本発明が図示の実施形態に限定されないことは勿論である。例えば、スラストベアリング67は、アダプター66と受板63aの相互に設けておけば良く、図示実施形態のようにアダプターのフランジ66aに設ける場合の他、受板63aに設けても良い。更に、スラストベアリング67は、ピストン42の回転力をスプリング54に伝達させないことを目的とするものであるから、ピストン42のフランジ部42aとアダプター66の相互に設けても良く、要するに、ピストン42とスプリング54の相互間に設ける構成であれば良い。
【0057】
また、このような構成により、ピストン42の回転力がスプリング54に伝達されないものであるから、スプリング54は、上述のような皿バネの他、コイルスプリングにより構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の回転力発生機の1実施形態を示しており、ピストンを復動させた状態を示す断面図である。
【図2】本発明の回転力発生機におけるスプリングの1例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の回転力発生機の1実施形態を示しており、ピストンを往動させた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の回転力発生機に連結される油圧装置の1例を示す油圧回路図である。
【図5】従来の正逆油圧回転式の回転力発生機を示す断面図である。
【図6】比較例としてのスプリングリターン式の回転力発生機を示しており、(A)は回転力発生機の断面図、(B)はスプリングを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
41 ケーシング
42 ピストン
42a フランジ部
42b 筒部
43 シャフト
43a 軸部
43b 出力軸
49a 往動室
49b 復動室
50 油圧シリンダ
51 スプリング装備室
53 ネジ手段
54 スプリング
58 筒軸
60 皿バネ
60a 端部皿バネ
63a、63b 受板
64 ガイド手段
65 ストローク制限手段
66 アダプター
67 スラストベアリング
68 出入口
69 油圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ手段を介して回転しつつ軸方向に進退移動するピストンと、該ピストンの回転駆動力を取出すシャフトを備えた回転力発生機において、
前記ピストン(42)を挟んで往動室(49a)と復動室(49b)を設け、前記往動室(49a)は、油圧によりピストン(42)を往動させる油圧シリンダ(50)を構成し、前記復動室(49b)は、スプリング(54)によりピストン(42)を復動させるスプリング装備室(51)を構成しており、
前記スプリング(54)とピストン(42)の相互間の圧接部にベアリング(67)を介装し、ピストン(42)の回転をスプリング(54)に伝達させないように構成して成ることを特徴とする回転力発生機。
【請求項2】
前記ネジ手段(53)を油圧シリンダ(50)に連設し、油圧シリンダ内の圧油をネジ手段(53)に浸入させるように構成して成ることを特徴とする請求項1に記載の回転力発生機。
【請求項3】
前記スプリング装備室(51)を挿通するシャフト(43)の軸部に筒軸(58)を外挿しており、
前記筒軸(58)は、外周にスプリング(54)を搭載するガイド手段(64)を構成すると共に、軸端に往動時のピストン(42)を当接させるストローク制限手段(65)を構成して成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の回転力発生機。
【請求項4】
前記ピストン(42)からスプリング装備室(51)に向けて延びる筒状のアダプター(66)を設けると共に、該アダプター(66)とスプリング(54)の間に受板(63a)を設け、前記アダプター(66)と受板(63a)の圧接面の相互に前記ベアリング(67)を設けて成ることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の回転力発生機。
【請求項5】
前記筒状のアダプター(66)が前記筒軸(58)の外周に相対回転自在且つ摺動自在に外挿されて成ることを特徴とする請求項4に記載の回転力発生機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−71309(P2010−71309A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236213(P2008−236213)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(508278882)株式会社シー・オー・シー (3)
【Fターム(参考)】