説明

回転操作型入力器及び回転操作型入力器装着方法

【課題】ノブのぐらつきを抑えて、品位の低下を防ぐ回転操作型入力器を提供する。
【解決手段】使用者の操作により情報を入力するための回転操作型入力器1は、一端に操作軸12が挿入可能な軸固定孔53を設け、軸固定孔53を介して挿入された操作軸12を固定する軸固定部を有するとともに、使用者が他端を回転操作するノブ50と、操作軸12に取り付けられ、操作軸12の回転により情報を生成するボリューム素子10と、ボリューム素子10の操作軸12が挿通可能な挿通孔33を設け、操作軸12を挿通孔33に挿通させて、ボリューム素子10を固定するハウジング30と、ノブ50の一端側の外側面を内輪に嵌合可能に形成するとともに、外輪をハウジング30の内側面に嵌合可能に形成するベアリング40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器等に装着され、使用者の操作により機器内部に情報を入力するための回転操作型入力器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音響機器等の電子機器においては、使用者の回転操作により機器内部に操作情報を入力するための回転操作型入力器が用いられている。図1に、従来の回転操作型入力器の軸方向に沿った断面図を示す。例えば、音響機器における音量調節用ボリュームにおいては、図1に示すように、回転により電気信号を出力できるボリューム素子90の軸91を、ナット92を介してパネルベース93に固定し、このパネルベース93に固定されたボリューム素子90の軸91を音響機器のフロントパネル94から外部に突出させる。そして、この突出されたボリューム素子90の軸91を、使用者が回転操作可能な形状を有するノブ(ツマミ)95の内部に形成された軸受け部96に挿入して固定することにより、回転操作型入力器9を構成している。
【0003】
しかしながら、従来の回転操作型入力器9においては、ボリューム素子90の軸91をノブ95の軸受け部96に挿入して固定している構成であるため、使用者がノブ95を回転操作した際、軸受け部96および軸91が傾斜してノブ95がぐらつく操作感を受けることがあり、機器の品位を低下させるという問題が存在する。
【0004】
この点、実公昭62−42488号公報には、上記ぐらつきを改善するため、樹脂製のケース(上記パネルベース93に相当)のツマミ穴(上記ボリューム素子90の軸91をパネルベース93に挿入して固定するための孔に相当)にガイド片を設けることにより、ぐらつきを防止する発明が開示されている。
【0005】
【特許文献1】実公昭62−42488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に開示された発明及び図1に示す従来技術の構成においては、パネルベース93に形成された孔を介してボリューム素子90の軸91を挿入するため、ボリューム素子90の軸91とパネルベース93(孔)との間には多少の隙間が必要である。そのため、このボリューム素子90の軸91とパネルベース93との隙間により、ノブ95のぐらつきが生じてしまうという問題がある。また、ボリューム素子90の軸91の強度の観点からも、ノブ95に力を加えた際には軸91自体がたわみ、ぐらつきが生じてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、その課題の一例としては、ノブのぐらつきを抑えて、品位の低下を防ぐ回転操作型入力器及び回転操作型入力器装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するため、本発明の一態様に係る回転操作型入力器は、使用者の操作により情報を入力するための回転操作型入力器であって、一端に軸が挿入可能な挿入孔を設け、前記挿入孔を介して挿入された前記軸を固定する軸固定部を有するとともに、前記使用者が他端を回転操作するノブと、前記軸に取り付けられ、前記軸の回転により前記情報を生成する情報生成部と、前記情報生成部の前記軸が挿通可能な挿通孔を設け、前記軸を前記挿通孔に挿通させて、前記情報生成部を固定するハウジングと、前記ノブの前記一端側の外側面を内輪に嵌合可能に形成するとともに、外輪を前記ハウジングの内側面に嵌合可能に形成するベアリングと、を備えている。
【0009】
また、本発明の別の態様に係る回転操作型入力器装着方法は、使用者の操作により情報を入力するための回転操作型入力器をパネルに装着する回転操作型入力器装着方法であって、前記使用者が一端を回転操作するノブの他端側の外側面をベアリングの内輪に圧入嵌合するステップと、圧入嵌合し、ノブと一体化した前記ベアリングの外輪をハウジングの内側面に圧入嵌合するステップと、軸の回転により前記情報を生成する情報生成部の前記軸を、前記ノブ及び前記ベアリングと一体化した前記ハウジングに形成された挿通孔、及び前記ノブの他端に形成された挿入孔に挿入するステップと、前記ノブの側面に設けられたネジ孔を介して挿入された止めネジが、前記挿通孔及び前記挿入孔に挿入された前記軸を固定するステップと、前記ノブ、前記ベアリング、前記ハウジング、及び情報生成部を一体化した前記回転操作型入力器を前記パネルの裏側から前記パネルに装着するステップと、を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
図2は、本発明の実施の形態に係る回転操作型入力器1の構成を示す分解斜視図であり、図3は本発明の実施の形態に係る回転操作型入力器1の軸方向に沿った断面図である。
【0012】
本発明の実施の形態に係る回転操作型入力器1は、各種機器、例えばアンプ、カーナビゲーション装置、音響コンポーネントシステム等の電子機器において、フロントパネル2に装着され、使用者の回転操作により機器内部に電子的あるいは機械的な操作情報を入力するための回転操作型入力器である。
【0013】
回転操作型入力器1は、概略、ボリューム素子10、板金20、ハウジング30、ベアリング40、及びノブ50を備えている。
【0014】
ボリューム素子10は、ノブ50の回転に対応して回転する回転体であり、回転することによりボリュームを調整する情報生成素子である。ボリューム素子10は、図2及び図3に示すように、本体部11と、この本体部11の一端面から延びる操作軸12と、を備えている。
【0015】
板金20は、ボリューム素子10をハウジング30に固定するための仲介部材であり、中心にボリューム素子10の操作軸12を挿通させるための挿通孔21が形成されている。すなわち、ボリューム素子10の操作軸12を挿通孔21に挿通した状態において、ナット3がボリューム素子10の操作軸12に設けられたネジと螺合することで、ボリューム素子10と板金20は一体化され、この一体化されたボリューム素子10と板金20が、ビス4aによりビス止めされてハウジング30に固定されるようになっている。
【0016】
ハウジング30は、上述したように、一体化されたボリューム素子10と板金20を固定するとともに、後述するように、一体化されたノブ50とベアリング40を内側空間に嵌合して固定するハット型部材である。すなわち、突出形成された突出部31と、その周縁に形成されたフランジ部32と、を備え、突出部31の底面中央には、ボリューム素子10の操作軸12を挿通させるための挿通孔33が形成されている。
【0017】
ノブ50は、使用者が回転操作可能であるとともに、ボリューム素子10に接合されるツマミ部材である。ノブ50は、図2及び図3に示すように、略円筒形状の外周壁及び中空内部を有しており、その中空内部には、ボリューム素子10の操作軸12を嵌入可能な径を有する軸固定孔53が形成されている。詳しくは、ノブ50は、フロントパネル装着時に外観に露出して使用者に操作される操作部51と、操作部51よりも小さな径を有し、ベアリング40と嵌合する部位を形成する嵌合部52と、を備えている。
【0018】
また、ノブ50には、操作部51の側面上に止めネジ5が挿入可能なネジ孔54が形成されており、この止めネジ5によってボリューム素子10の操作軸12はノブ50に固定されるようになっている。
【0019】
ベアリング40は、ノブ50の嵌合部52を内輪に圧入可能な内径を有するとともに、ハウジング30の突出部31の内側面に圧入可能な外径を有するボールベアリングである。このため、ノブ50はベアリング40を介してハウジング30に隙間なく固定されるので、ノブ50の操作においてぐらつきを低減させることができる。すなわち、ベアリングは摩擦抵抗が小さく、回転時に余計な負荷がかからないとともに、内部隙間が0でもスムーズに回転することができる素材であるため、ベアリング40を用いることにより、ノブ50とハウジング30の隙間を詰めることができるとともに、隙間を詰めても、ノブ50を円滑に回転させることが可能となる。また、ベアリング40でノブ外周を押圧して固定しているため、ボリューム素子10の操作軸12とハウジング30の間に隙間が生じていたり、ボリューム素子10の操作軸12の強度が弱かったりしても、操作軸12とハウジング30の間の隙間や操作軸12の強度の影響を受けることなく、力を加えた際のノブ30のぐらつきを低減することができる。
【0020】
次に、図4及び図5を用いて、回転操作型入力器1のフロントパネル2への取付手順について説明する。
【0021】
まず、取付者は、図4(a)に示すように、ベアリング40をノブ50の嵌合部52に圧入して、ベアリング40をノブ50に取り付ける。すなわち、ベアリング40の内輪はノブ50の嵌合部52に嵌合され、ベアリング40とノブ50は一体化される。
【0022】
次に、取付者は、図4(b)に示すように、ベアリング40と一体化されたノブ50を、ハウジング30の突出部31の内側面に圧入する。この結果、ベアリング40と一体化されたノブ50は、隙間のない状態でハウジング30に堅固に固定されるとともに、円滑に回転可能となる。
【0023】
次に、取付者は、図4(c)に示すように、ボリューム素子10の操作軸12を板金20の挿通孔21に挿通し、操作軸12を挿通孔21に挿通した状態で、ナット3を用いて、ボリューム素子10を板金20に螺着させる。この結果、ボリューム素子10は、板金20と一体化される。
【0024】
次に、取付者は、図5(a)に示すように、板金20と一体化されたボリューム素子10の操作軸12を、ベアリング40及びノブ50と一体化されたハウジング30の挿通孔33及び軸固定孔51に挿入する。次いで、取付者は、この挿入状態において、ボリューム素子10とハウジング30を固定する。具体的には、ビス4aを、ハウジング30の突出部31の底面及び板金20に形成された4箇所のビス孔に挿入して、螺合することにより、ボリューム素子10とハウジング30を固定する。次いで、取付者は、ボリューム素子10の側面に形成されたネジ孔54に止めネジ5を挿入して、ノブ50とボリューム素子10の操作軸12を固定する。
【0025】
この結果、ボリューム素子10、板金20、ハウジング30、ベアリング40、及びノブ50が一体化されたノブアッセイ、すなわち、回転操作型入力器1が組み立てられる。
【0026】
次に、取付者は、組み立てられた回転操作型入力器1を、フロントパネル2の取付孔6に裏面2b側から挿通して、ノブ50をフロントパネル2から表面2a側に突出させる。そして、この状態で、取付者は、回転操作型入力器1とフロントパネル2を固定する。具体的には、ビス4bを、ハウジング30のフランジ部32に形成された4箇所のビス孔に挿入して、螺合することにより、ハウジング30をフロントパネル2に固定する。
【0027】
この結果、回転操作型入力器1はフロントパネル2に固定される。
【0028】
以上、述べたように本実施の形態の回転操作型入力器1によれば、一端に操作軸12が挿入可能な軸固定孔53を設け、軸固定孔53を介して挿入された操作軸12を固定する軸固定部を有するとともに、使用者が他端を回転操作するノブ50と、操作軸12に取り付けられ、操作軸12の回転により情報を生成するボリューム素子10と、ボリューム素子10の操作軸12が挿通可能な挿通孔33を設け、操作軸12を挿通孔33に挿通させて、ボリューム素子10を固定するハウジング30と、ノブ50の一端側の外側面を内輪に嵌合可能に形成するとともに、外輪をハウジング30の内側面に嵌合可能に形成するベアリング40と、を備えているので、ノブ50のぐらつきを抑えて、品位の低下を防ぐことができる。
【0029】
すなわち、本実施の形態の回転操作型入力器1においては、ベアリング40を用いることにより、ノブ50とハウジング30の隙間を詰めることができるので、ノブ50のぐらつきを低減することができる。また、ベアリング40を用いているため、隙間を詰めても、ノブ50を円滑に回転させることができる。また、ベアリング40でノブ50の外周を押圧して固定しているため、ボリューム素子10の操作軸12の強度が弱くても、操作軸12の強度の影響を受けることなく、力を加えた際のノブ30のぐらつきを低減することができる。さらには、ノブ30のぐらつきが低減するので、ノブ50を突出させるフロントパネル2の取付孔6の大きさを従来と比べて小さくすることができ、ノブ50と取付孔6の隙間を小さくすることができる(図1のS1>図3のS2)。
【0030】
また、本実施の形態回転操作型入力器1によれば、ベアリング40を用いたことにより、ノブ50の回転時の擦れ音を低減することができるとともに、感触良く回転操作を行うことができる。また、ベアリング40は熱膨張率が小さいため、温度変化によるぐらつき等も生じることはない。
【0031】
さらには、本実施の形態の回転操作型入力器1によれば、安価なベアリング40と安価なボリューム素子10を用いて、ぐらつきを低減させる回転操作型入力器を作成することができるので、回転操作型入力器1のコストを下げることができる。なお、従来においては、ボリューム素子の操作軸の強度を高めるなどのぐらつき対策を施すと、高コストのボリューム素子となっていた。
【0032】
また、本実施の形態の回転操作型入力器1によれば、フロントパネル2への取付手順で示したように、フロントパネル2の裏側から回転操作型入力器1を取り付けるので、ノブ50の側面に形成されたネジ孔54が外観に表出することはない。すなわち、本実施の形態の取付手順においては、ノブ50をフロントパネル2に装着する前の段階で止めネジ5による固定作業を行えるので、ネジ孔54を操作者が視認可能な外観に形成される必要はなく、品位を向上させることができる。なお、従来のフロントパネル2への取付手順においては、図1に示すように、ノブ95をフロントパネル94に表側から取り付けた後に、止めネジ98でボリューム素子90の軸91を固定したので、ネジ孔97は外観に露出せざるを得なかった。
【0033】
また、本実施の形態の回転操作型入力器1によれば、ハウジング30はノブ50単体をフロントパネル2に取り付ける部位となっているので、ノブ50の位置決めを容易かつ正確に行えるという効果がある。なお、従来においては、図1に示すパネルベース93は、フロントパネル94の全体に亘って形成されていたため、ノブ94の位置決めの精度を出すことは困難であった。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の実施の形態に対して種々の変形や変更を施すことができ、そのような変形や変更を伴うものもまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の回転操作型入力器の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る回転操作型入力器の構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る回転操作型入力器の構成を示す断面図である。
【図4】図5とともに、本発明の実施の形態に係る回転操作型入力器のフロントパネルへの装着手順を示す図である。
【図5】図4とともに、本発明の実施の形態に係る回転操作型入力器のフロントパネルへの装着手順を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 回転操作型入力器
2 フロントパネル
3 ナット
4 ビス
5 止めネジ
6 取付孔
10 ボリューム素子
11 本体部
12 操作軸
20 板金
21 挿通孔
30 ハウジング
31 突出部
32 フランジ部
33 挿通孔
40 ベアリング
50 ノブ
51 操作部
52 嵌合部
53 軸固定孔
54 ネジ孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の操作により情報を入力するための回転操作型入力器であって、
一端に軸が挿入可能な挿入孔を設け、前記挿入孔を介して挿入された前記軸を固定する軸固定部を有するとともに、前記使用者が他端を回転操作するノブと、
前記軸に取り付けられ、前記軸の回転により前記情報を生成する情報生成部と、
前記情報生成部の前記軸が挿通可能な挿通孔を設け、前記軸を前記挿通孔に挿通させて、前記情報生成部を固定するハウジングと、
前記ノブの前記一端側の外側面を内輪に嵌合可能に形成するとともに、外輪を前記ハウジングの内側面に嵌合可能に形成するベアリングと、
を備えることを特徴とする回転操作型入力器。
【請求項2】
前記ハウジングと前記情報生成部との間に介在し、前記情報生成部及び前記ハウジングに固定される板金をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の回転操作型入力器。
【請求項3】
前記軸固定部は、前記ノブの側面に設けられたネジ孔を介して挿入された止めネジが前記軸を固定することを特徴とする請求項1又は2記載の回転操作型入力器。
【請求項4】
使用者の操作により情報を入力するための回転操作型入力器をパネルに装着する回転操作型入力器装着方法であって、
前記使用者が一端を回転操作するノブの他端側の外側面をベアリングの内輪に圧入嵌合するステップと、
圧入嵌合し、ノブと一体化した前記ベアリングの外輪をハウジングの内側面に圧入嵌合するステップと、
軸の回転により前記情報を生成する情報生成部の前記軸を、前記ノブ及び前記ベアリングと一体化した前記ハウジングに形成された挿通孔、及び前記ノブの他端に形成された挿入孔に挿入するステップと、
前記ノブの側面に設けられたネジ孔を介して挿入された止めネジが、前記挿通孔及び前記挿入孔に挿入された前記軸を固定するステップと、
前記ノブ、前記ベアリング、前記ハウジング、及び情報生成部を一体化した前記回転操作型入力器を前記パネルの裏側から前記パネルに装着するステップと、
を備えることを特徴とする回転操作型入力器装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−3472(P2010−3472A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159857(P2008−159857)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】