回転方向検出手段
【課題】本発明は、回転の向きが検出できる回転方向検出手段を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の回転方向検出手段は、第1、第2のセンサ部11a,11bが直線状に配置されたX軸検出部8と、第3、第4のセンサ部11c,11dが直線状に配置されたY軸検出部9とを有し、さらに、前記第1のセンサ部11aで得られた信号と第2のセンサ部11bで得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部11cで得られた信号と第4のセンサ部11dで得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により回転部材1の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えたものである。
【解決手段】本発明の回転方向検出手段は、第1、第2のセンサ部11a,11bが直線状に配置されたX軸検出部8と、第3、第4のセンサ部11c,11dが直線状に配置されたY軸検出部9とを有し、さらに、前記第1のセンサ部11aで得られた信号と第2のセンサ部11bで得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部11cで得られた信号と第4のセンサ部11dで得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により回転部材1の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザによる物理的操作によりデータ処理装置へデータ要素を提供するための回転方向検出手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の回転方向検出手段は、磁性材料からなる内部コアの全周面に実質的に等間隔に位置する凸部または凹部を設けたボールと、互いに90度の角度位置にある2つの磁気コアセンサと、前記ボールが回転したとき、ボールの凸部または凹部によって生じた磁場変化を磁気コアセンサで検出する手段と、前記磁気コアセンサで検出された信号によってボールの回転を検出する手段とを備えていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平8−249116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の回転方向検出手段の構成では、ボール(回転部材)の回転方向(X軸方向またはY軸方向)は検出できるが、磁気コアセンサが2つしか設けられていないため、X軸方向、Y軸方向の回転それぞれに対して1つの磁気コアセンサでしか出力を検出できず、その結果、回転の向き(ボールを横から見て時計回りまたは反時計回り)が検出できないという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、回転の向きが検出できる回転方向検出手段を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、回転可能な回転部材と、この回転部材と所定の距離をおいて配置された検出部とを備え、前記検出部は、前記回転部材の回転に対応して信号を出力する第1〜第4のセンサ部と、前記第1、第2のセンサ部が直線状に配置されたX軸検出部と、前記第3、第4のセンサ部が直線状に配置されたY軸検出部とを有し、さらに、前記第1のセンサ部で得られた信号と第2のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部で得られた信号と第4のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により前記回転部材の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えたもので、この回転方向検出手段によれば、回転部材がX軸方向に回転した場合、X軸検出部を構成する第1、第2のセンサ部はそれぞれ配列順に順次出力することになるため、第1のセンサ部で出力される信号と第2の出力部で出力される信号には時間差が生じることになり、これにより、第1の検出手段において第1のセンサ部と第2のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じていると判断されるが、Y軸検出部を構成する第3、第4のセンサ部からは同時に出力されることになるため、第3のセンサ部で出力される信号と第4の出力部で出力される信号に時間差が生じることはなく、これにより、第2の検出手段において第3のセンサ部と第4のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じていないと判断される。この結果、第3の検出手段においては、第1の検出手段のみに位相差が生じていると判断されるため、回転部材がX軸方向に回転していることを検出でき、また、回転部材がX軸方向に回転していると検出されたとき、第1のセンサ部と第2のセンサ部でそれぞれ得られた信号には位相差が生じているため、第1の検出手段において第1のセンサ部と第2のセンサ部で得られた信号のうち、どちらの信号が遅れているかを検出すれば、その回転の向きを検出でき、さらに、これらのことは回転部材がY軸方向に回転した場合も同様であるため、回転部材の回転方向と回転の向きが検出できるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明の回転方向検出手段は、回転部材の回転に対応して信号を出力する第1〜第4のセンサ部と、前記第1、第2のセンサ部が直線状に配置されたX軸検出部と、前記第3、第4のセンサ部が直線状に配置されたY軸検出部とを有し、さらに、前記第1のセンサ部で得られた信号と第2のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部で得られた信号と第4のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により前記回転部材の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えているため、回転部材がX軸方向に回転した場合、X軸検出部を構成する第1、第2のセンサ部はそれぞれ配列順に順次出力することになり、これにより、第1のセンサ部で出力される信号と第2の出力部で出力される信号には時間差が生じるため、第1の検出手段において第1のセンサ部と第2のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じていると判断されるが、Y軸検出部を構成する第3、第4のセンサ部からは同時に出力されることになり、これにより、第3のセンサ部で出力される信号と第4の出力部で出力される信号に時間差が生じることはなくなるため、第2の検出手段において第3のセンサ部と第4のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じていないと判断される。この結果、第3の検出手段において、第1の検出手段のみに位相差が生じていると判断されるため、回転部材がX軸方向に回転していることを検出でき、また、回転部材がX軸方向に回転していると検出されたとき、第1のセンサ部と第2のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じているため、第1の検出手段において第1のセンサ部と第2のセンサ部で得られた信号のうち、どちらの信号が遅れているかを検出すれば、その回転の向きを検出でき、さらに、これらのことは回転部材がY軸方向に回転した場合も同様であるため、回転部材の回転方向と回転の向きが検出できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態における回転方向検出手段について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いる入力装置の正面図である。
【0011】
本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いられる入力装置は、図1に示すように、回転部材1と、この回転部材1の下方において、回転部材1と所定の距離をおいて配置された検出部2とからなるものである。
【0012】
前記回転部材1は、球状または多面体状に構成され、そして、前記検出部2に垂直なZ方向と直交し、かつ回転部材1の中心を通り、さらに互いに直交するX軸方向またはY軸方向に自由に回転できるように保持されている。
【0013】
また、この回転部材1は、回転することにより異なる光の強さ、静電容量、電流値、磁界の強さ等を外部に与えるようになっている。例えば、異なる光の強さを外部に与えるようにするには、回転部材1の表面に光を反射する部分と反射しない部分を交互に形成し、回転部材1の表面に光を当て、この反射光を光センサで検出するようにすればよい。
【0014】
以下、異なる磁界の強さを外部に与えるものを例にし、本発明の回転方向検出手段について説明する。
【0015】
図2は回転部材1の内部の正面図である。
【0016】
図2に示すように、回転部材1の内部には、その先端部が外方に向かって延出する複数の磁性体で構成されたピン3が形成されている。また、一方の極が検出部2の回転部材1が形成された側に、他方の極が検出部2の回転部材1が形成されていない側にそれぞれ位置するように磁石(図示せず)を外部に形成しているもので、このような構成とすることにより、ピン3が外部の磁石からの磁界を取り込むため、この取り込まれた磁界を検出部2に対して略垂直方向に印加することができる。
【0017】
そして、ピン3に取り込まれた磁界によって検出部2が受ける磁界の強さは、ピン3が検出部2に近づいたとき強くなり、ピン3が検出部2から遠ざかったとき(隣接する2つのピン3の中間部分が検出部2に近づいたとき)弱くなるものである。このように、回転部材1が回転することによりピン3が異なる強さの(強弱の)磁界を外部に与えるようになっている。
【0018】
なお、強弱の磁界を外部に与えるためには、上述したように回転部材1に複数のピン3を設けるようにするだけでなく、これ以外に、例えば磁性体で構成された回転部材1の表面形状を凹凸状に構成してもよく、さらにはピン3自体を磁石で構成し、そしてこのピン3で発生した磁界を検出部2に印加するようにしてもよい。
【0019】
前記検出部2は、回転部材1の下方に所定の距離をおいて配置される基板4と、この基板4の上面に形成された第1〜第8の磁気センサ5a〜5h、第1〜第4の出力部6a〜6d、第1〜第8の電極7a〜7hとで構成されているものである。
【0020】
以下、図3、図4を参照しながら、第1〜第8の磁気センサ5a〜5h、第1〜第4の出力部6a〜6d、第1〜第8の電極7a〜7hのそれぞれの関係について説明する。なお、図3は本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いる入力装置の回路パターンの模式図、図4は同入力装置の回路パターン図を示す。
【0021】
前記第1〜第8の磁気センサ5a〜5hは、GMR素子で構成されているもので、回転部材1が回転し、ピン3から与えられた磁界の変化に応じて抵抗値が変化するようになっている。
【0022】
また、これらの第1〜第8の磁気センサ5a〜5hのうち、第1〜第4の磁気センサ5a〜5dは、直線状に配置されてX軸検出部8を構成し、一方、第5〜第8の磁気センサ5e〜5hは、直線状に配置されてY軸検出部9を構成している。
【0023】
さらに、この第1〜第8の磁気センサ5a〜5hのパターンは図5に示すような蛇行状となっているもので、第1〜第4の磁気センサ5a〜5dは、その長手方向がX軸方向と平行になり、かつ第5〜第8の磁気センサ5e〜5hは、その長手方向がY軸方向と平行になっている。
【0024】
なお、前記第1〜第8の磁気センサ5a〜5hはMR素子(磁気抵抗効果素子)やホール素子で構成してもよいが、MR素子は電流方向と磁界の向きが直交する場合のみ抵抗値が変化するため、MR素子を使用する場合は、その長手方向をX軸方向、Y軸方向とそれぞれ直交させる必要がある。これに対し、GMR素子は電流方向と磁界の向きが平行でも抵抗値が変化するため、その必要はない。さらに、GMR素子の抵抗値変化率はMR素子の抵抗値変化率に対して数倍大きいため、磁気センサとしてGMR素子を使用すれば、非常に有利となるものである。
【0025】
そして、前記X軸検出部8における第1〜第4の磁気センサ5a〜5dの配置方向と、Y軸検出部9における第5〜第8の磁気センサ5e〜5hの配置方向は互いに直交させている。
【0026】
そしてまた、前記X軸検出部8は、Y軸検出部9が配置されている箇所を第5〜第8の磁気センサ5e〜5hの配置方向に伸ばした線に対して片側のみに形成し、かつ前記Y軸検出部9は、X軸検出部8が配置されている箇所を第1〜第4の磁気センサ5a〜5dの配置方向に伸ばした線に対して片側のみに形成しているもので、すなわち、図3に示すように、X軸検出部8を構成する第1〜第4の磁気センサ5a〜5dは、Y軸検出部9の配置されている箇所を第5〜第8の磁気センサ5e〜5hの配置方向に伸ばした線に対して右側のみに位置し、かつY軸検出部9を構成する第5〜第8の磁気センサ5e〜5hは、X軸検出部8の配置されている箇所を第1〜第4の磁気センサ5a〜5dの配置方向に伸ばした線に対して左側のみに位置している。
【0027】
この場合、前記X軸検出部8とY軸検出部9との関係は、十字状やT字状ではなく、L字状になっているもので、このとき、X軸検出部8、Y軸検出部9は回転部材1の中心から基板4に垂線を下ろした際の交点である中心点10よりずれた位置に配置されている。
【0028】
そしてまた、前記X軸検出部8においては、第2の磁気センサ5bを第3の磁気センサ5cと第4の磁気センサ5dとの間に位置させるとともに、第3の磁気センサ5cを第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bとの間に位置させているもので、すなわち、第1の磁気センサ5a、第3の磁気センサ5c、第2の磁気センサ5b、第4の磁気センサ5dの順に並んでいるものである。なお、この順番は、第1〜第4の磁気センサ5a〜5dをこの順番に位置させてもよい。
【0029】
さらに、前記Y軸検出部9においても、上記と同様に、第6の磁気センサ5fを第7の磁気センサ5gと第8の磁気センサ5hとの間に位置させるとともに、第7の磁気センサ5gを第5の磁気センサ5eと第6の磁気センサ5fとの間に位置させて、第5の磁気センサ5e、第7の磁気センサ5g、第6の磁気センサ5f、第8の磁気センサ5hの順に並ぶようにしているものである。なお、この順番は、第5〜第8の磁気センサ5e〜5hをこの順番に位置させてもよい。
【0030】
また、前記第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bは、図3に示すように直列に接続され、かつこれらの間に前記第1の出力部6aが接続されている。そしてまた、第3の磁気センサ5cと第4の磁気センサ5dも直列に接続され、かつこれらの間に前記第2の出力部6bが接続されている。さらに、第5の磁気センサ5eと第6の磁気センサ5fも直列に接続され、かつこれらの間に前記第3の出力部6cが接続されている。さらにまた、第7の磁気センサ5gと第8の磁気センサ5hも直列に接続され、かつこれらの間に前記第4の出力部6dが接続されている。そしてまた、前記第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bの直列回路の両端には、この両端間に電位差を与える第1、第2の電極7a,7bを設け、かつ第3の磁気センサ5cと第4の磁気センサ5dの直列回路の両端には、この両端間に電位差を与える第3、第4の電極7c,7dを設け、さらに第5の磁気センサ5eと第6の磁気センサ5fの直列回路の両端には、この両端間に電位差を与える第5、第6の電極7e,7fを設け、さらにまた、第7の磁気センサ5gと第8の磁気センサ5hの直列回路の両端には、この両端間に電位差を与える第7、第8の電極7g,7hを設けているものである。
【0031】
上記した構成とすることにより、例えば第1、第3、第5、第7の電極7a,7c,7e,7gをグランドとして、第2、第4、第6、第8の電極7b,7d,7f,7hに所定の電圧を印加すれば、上記直列回路にそれぞれ電位差を与えることができる。
【0032】
なお、前記検出部2を構成する第1〜第8の磁気センサ5a〜5h、第1〜第4の出力部6a〜6d、第1の電極7a、第2の電極7bは、すべて基板4上の同一面に形成されているもので、特に、X軸検出部8とY軸検出部9は同一平面上に形成されているため、X軸検出部8とY軸検出部9を別個に設ける必要はなく、同時に設けることができ、これにより、X軸検出部8とY軸検出部9との位置関係を精度良くすることができ、さらに、実装性および生産性が向上するものである。
【0033】
次に、本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いる入力装置の動作について説明する。
【0034】
図6はピン3の動きとGMR素子で構成された磁気センサ5が受ける磁界の向きとの関係を示す図である。なお、図中の矢印は磁界の方向を示す。
【0035】
図6において、回転部材の回転に伴ってピン3が左から右に移動しているとき、左側のようにピン3と磁気センサ5との距離が大きい(ピン3と右側に隣接する他のピン(図示せず)との中間部分に磁気センサ5が位置する)場合は、他のピンの影響により、磁気センサ5に対する磁界の右向き成分はゼロとなる。次に、ピン3が右に少し移動すると、磁気センサ5が回転部材の中心点10よりずれていることから、磁気センサ5に対する磁界の右向き成分が少し発生する。さらに、ピン3が右に少し移動すると、磁気センサ5に対する磁界の右向き成分が最大となり、そして、ピン3がさらに右に移動すると、左側に隣接するピン(図示せず)の影響により、磁気センサ5に対する磁界の右向き成分が再びゼロになるものである。
【0036】
このような磁気センサ5に対する磁界の右向き成分の変動により、磁気センサ5の抵抗値が変化する。
【0037】
図7はピン3の動きと第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bを示す図、図8は図7において第1、第2の電極7a,7b間に所定の電位を印加したときの第1の出力部6aから出力される信号を示す図である。
【0038】
図7において、矢印の向きにピン3が移動する(回転部材が回転する)と、第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bはともに上記したような抵抗値変化を起こすが、ピン3による磁界の影響を、第2の磁気センサ5bが第1の磁気センサ5aより後に受けるため、第1の磁気センサ5aの抵抗値と第2の磁気センサ5bの抵抗値に差が生じることになり、これにより、第1、第2の電極7a,7b間に所定の電位を印加すると、第1の出力部6aから出力される信号(電位)は、図8に示すような正弦波となる。なお、図8において、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
【0039】
このように、第1の出力部6aは、回転部材1の回転に伴う磁界の強さの変化に応じた信号を出力する。すなわち、第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bを第1のセンサ部11aとしたときは、この第1のセンサ部11aは、回転部材1の回転に対応した信号を第1の出力部6aから出力する。
【0040】
また、上記と同様に、第3の磁気センサ5cと第4の磁気センサ5dを第2のセンサ部11bとしたときは、この第2のセンサ部11bは、回転部材1の回転に対応した信号を第2の出力部6bから出力し、そしてまた、第5の磁気センサ5eと第6の磁気センサ5fを第3のセンサ部11cとしたときは、この第3のセンサ部11cは、回転部材1の回転に対応した信号を第3の出力部6cから出力し、さらに、第7の磁気センサ5gと第8の磁気センサ5hを第4のセンサ部11dとしたときは、この第4のセンサ部11dは、回転部材1の回転に対応した信号を第4の出力部6dから出力する。
【0041】
次に、第1の検出手段について説明する。
【0042】
この第1の検出手段では、第1のセンサ部11aで得られた信号(第1の出力部6aから発生する信号)と第2のセンサ部11bで得られた信号(第2の出力部6bから発生する信号)の2つの信号の位相差情報を検出する。
【0043】
図9は同入力装置におけるピン3の動きとX軸検出部8を示す図、図10は図9において第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13を示す図である。
【0044】
図9において、矢印の向きにピン3が移動する(回転部材がX軸方向に回転する、すなわち、Y軸方向と平行な軸を回転軸として回転する)と、ピン3による磁界の影響を、第3の磁気センサ5c、第4の磁気センサ5dからなる第2のセンサ部11bは、第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bからなる第1のセンサ部11aより後に受けるため、第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bが抵抗値変化を起こした後で、第3の磁気センサ5c、第4の磁気センサ5dが抵抗値変化を起こし、これにより、第1のセンサ部11aで得られる信号(電位)より第2のセンサ部11bで得られる信号(電位)が遅れ、図10に示すように、第1のセンサ部11aで得られる信号12(以下、実線で示す)と第2のセンサ部11bで得られる信号13(以下、破線で示す)とで位相差が生じる。なお、図10において、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
【0045】
また、図11は図9において矢印の向きと逆方向にピン3が移動したときの第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13を示す図である。
【0046】
図9において、矢印の向きと逆方向にピン3が移動すると、ピン3による磁界の影響を、第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bからなる第1のセンサ部11aは、第3の磁気センサ5c、第4の磁気センサ5dからなる第2のセンサ部11bより後で影響を受けるため、第1のセンサ部11aで得られる信号と第2のセンサ部11bで得られる信号は、図11に示すように、第2のセンサ部11bで得られる信号13より第1のセンサ部11aで得られる信号12が遅れる。なお、図11において、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
【0047】
さらに、図12はX軸検出部8に対して左側においてピンが移動するときのピン3の動きとX軸検出部8を示す図、図13は図12における第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13を示す図である。
【0048】
図3に示したように、X軸検出部8はY軸検出部9における第5〜第8の磁気センサ5e〜5h(第3のセンサ部11c、第4のセンサ部11d)の配置方向に対して右側のみに形成されているため、回転部材1がY軸方向に回転する場合は、図12に示すように、X軸検出部8に対して左側に、矢印の向きにピン3が移動する。そして、ピン3から受ける磁界は、第1〜第4の磁気センサ5a〜5d(第1のセンサ部11a、第2のセンサ部11b)のすべてに同時に印加されるため、磁界の影響を他より遅く受ける磁気センサ5はなく、これにより、その信号は図12に示すように、位相差が発生しない。
【0049】
この場合、第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bが第3の磁気センサ5c、第4の磁気センサ5dよりピン3に近いため、第1のセンサ部11aで得られる信号12が第2のセンサ部11bで得られる信号13より強く(電圧が大きく)なっている。
【0050】
なお、ピン3は中心点10を通らず、X軸検出部8の上を通る場合も考えられるが、これにおいては、位相差が発生する回数は僅かであり、回転方向の検出に影響を与えることはほとんどないものである。
【0051】
上記図9〜図13において説明したような動作原理により、X軸方向に回転部材1が回転すれば、X軸検出部8における第1、第2のセンサ部11a,11bで得られる2つの信号に位相差が生じ、一方、Y軸方向に回転部材1が回転すれば、X軸検出部8における第1、第2のセンサ部11a,11bで得られる信号に位相差は生じない。これはY軸検出部9についても同様である。
【0052】
上述したように、第1の検出手段においては、第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13の位相差を検出することができ、さらに、信号12と信号13のどちらが遅れているかを検出することができるもので、この結果から、回転部材1がX軸方向に回転しているかどうか、X軸方向に回転している場合、どちらの向きに回転しているかを検出することができるものである。ここで、回転の向きとは、回転部材1を検出部2と平行な方向から見て、時計回りの回転または反時計回りの回転をいう。
【0053】
また、第3のセンサ部11cで得られる信号と第4のセンサ部11dで得られる信号の位相差情報を検出する第2の検出手段も、上記と同様に、第3のセンサ部11cで得られる信号と第4のセンサ部11dで得られる信号の位相差を検出することができ、さらに、これらの2つの信号のどちらが遅れているかを検出することができるもので、この結果、回転部材1がY軸方向に回転しているかどうか、Y軸方向に回転している場合、どちらの向きに回転しているかを検出することができるものである。
【0054】
そして、位相差が発生したとき、その位相差の回数を検出して、回転部材1のX軸方向またはY軸方向への移動量を検出する。
【0055】
次に、第3の検出手段について説明する。
【0056】
図14はY軸方向に回転部材1が回転した(矢印の向きにピン3が移動した)場合のピン3の動きとX軸検出部8、Y軸検出部9を示す図である。また、図15は図14におけるY軸検出部9の第3の出力部6cから出力される信号14と第4の出力部6dから出力される信号15を示す図、図16は図14におけるX軸検出部8の第1の出力部6aから出力される信号12と第2の出力部6bから出力される信号13を示す図である。
【0057】
このときのY軸検出部9における第3のセンサ部11cで得られる信号14と第4のセンサ部11dで得られる信号15を図15に示し、X軸検出部8における第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13を図16に示す。そして、図15、図16において、それぞれ上の波形は実際の信号、下の波形はその信号を矩形波に変換したときの信号を示す。また、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
【0058】
このとき、正弦波における信号(電圧)の最大値と最小値の中間の値を基準値として、この基準値より大きい部分を大きく、基準値より小さい部分を小さくした矩形波に変換している。矩形波に変換すれば、基準値に対する2つの信号の大小の関係を検出するのが容易となるため、2つの信号の位相差を容易に検出できる。
【0059】
図15、図16から明らかなように、Y軸方向に回転部材1が回転すると、Y軸検出部9における第3のセンサ部11cで得られる信号14と第4のセンサ部11dで得られる信号15とには位相差が発生するが、X軸検出部8における第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13とには図15のような位相差は発生しない。そして、信号15が信号14より遅く出力されるものである。
【0060】
このとき、X軸検出部8、Y軸検出部9においてそれぞれ得られた位相差の回数を検出する。
【0061】
さらに、矢印の向きと逆方向にピン3が移動すると、図8〜図10において説明したように、信号14が信号15より遅く出力される。そして、ピン3の移動方向が逆方向というのは(回転部材1が同じY軸方向に回転しても)、回転部材1の回転の向きが異なることをいう。例えば、図14においては、紙面を右手側から見て、回転部材1が時計回りに回転する場合と、反時計回りに回転する場合があり、両者の回転の向きは異なる。したがって、回転部材1の回転の向きを検出できる。
【0062】
なお、ピン3が中心点10を通らない場合があるため、図16において必ずしも図12に示した波形が検出されるわけではなく、また、図15において最大値が小さくなることもある。
【0063】
そして、第3の検出手段においては、第1の検出手段で、第2の検出手段のそれぞれで得られた位相差情報により、回転部材1の回転方向と回転の向きを検出する。すなわち、X軸検出部8における第1のセンサ部11aで得られる信号と第2のセンサ部11bで得られる信号との間で発生した位相差の回数と、Y軸検出部9における第3のセンサ部11cで得られる信号と第4のセンサ部11dで得られる信号との間で発生した位相差の回数をそれぞれ検出し、回転部材1がX軸方向に回転した移動量とY軸方向に回転した移動量を検出する。さらに、位相差が発生したことを検出した場合、2つの信号のうちどちらの信号に遅れが生じたかを検出することによって、回転の向きを検出する。
【0064】
このとき、図16に示すように、X軸検出部8における位相差がゼロの場合は、回転部材1がY軸方向に回転していることがわかる。
【0065】
また、回転部材1の回転方向が、X軸方向、Y軸方向に対して斜めの場合、第1の検出手段で得られた位相差の単位時間当たりの回数と第2の検出手段で得られた位相差の単位時間当たりの回数の比を第3の検出手段で検出することによってその角度を検出する。
【0066】
上記した本発明の一実施の形態においては、回転部材1の回転に対応して信号を出力する第1〜第4のセンサ部11a〜11dと、前記第1、第2のセンサ部11a,11bが直線状に配置されたX軸検出部8と、前記第3、第4のセンサ部11c,11dが直線状に配置されたY軸検出部9とを有し、さらに、前記第1のセンサ部11aで得られた信号と第2のセンサ部11bで得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部11cで得られた信号と第4のセンサ部11dで得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により前記回転部材1の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えているため、回転部材1がX軸方向に回転した場合、X軸検出部8を構成する第1、第2のセンサ部11a,11bはそれぞれ配列順に順次出力することになり、これにより、第1のセンサ部11aで出力される信号と第2のセンサ部11bで出力される信号には時間差が生じるため、第1の検出手段において第1のセンサ部11aと第2のセンサ部11bでそれぞれ得られた信号に位相差が生じていると判断されるが、Y軸検出部9を構成する第3、第4のセンサ部11c,11dからは同時に出力されることになり、これにより、第3のセンサ部11cで出力される信号と第4の出力部11dで出力される信号に時間差が生じることはなくなるため、第2の検出手段において第3のセンサ部11cと第4のセンサ部11dでそれぞれ得られた信号に位相差が生じていないと判断される。この結果、第3の検出手段において、第1の検出手段のみに位相差が生じていると判断されるため、回転部材1がX軸方向に回転していることを検出でき、また、回転部材1がX軸方向に回転していると検出されたとき、第1のセンサ部11aと第2のセンサ部11bでそれぞれ得られた信号に位相差が生じているため、第1の検出手段において第1のセンサ部11aと第2のセンサ部11bで得られた信号のうち、どちらの信号が遅れているかを検出すれば、その回転の向きを検出でき、さらに、これらのことは回転部材1がY軸方向に回転した場合も同様であるため、回転部材1の回転方向と回転の向きが検出できるという効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る回転方向検出方法は、回転の向きが検出できるという効果を有するものであり、特にユーザによる物理的操作によりデータ処理装置へデータ要素を提供するための回転方向検出手段等において有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いる入力装置の正面図
【図2】同入力装置に使用される回転部材の内部の正面図
【図3】同入力装置の回路パターンの模式図
【図4】同入力装置の回路パターン図
【図5】同入力装置における第1〜第8の磁気センサのパターンを示す図
【図6】同入力装置におけるピンの動きと磁気センサが受ける磁界の強さとの関係を示す図
【図7】同入力装置におけるピンの動きと第1の磁気センサ、第2の磁気センサを示す図
【図8】図7において第1、第2の電極間に所定の電位を印加したときの第1の出力部から出力される信号を示す図
【図9】同入力装置におけるピンの動きとX軸検出部を示す図
【図10】図9において第1のセンサ部で得られる信号と第2のセンサ部で得られる信号を示す図
【図11】図9において矢印の向きと逆方向にピンが移動したときの第1のセンサ部で得られる信号と第2のセンサ部で得られる信号を示す図
【図12】同入力装置におけるX軸検出部に対して左側においてピンが移動するときのピンの動きとX軸検出部を示す図
【図13】図12における第1のセンサ部で得られる信号と第2のセンサ部で得られる信号を示す図
【図14】同入力装置におけるY軸方向に回転部材が回転した場合のピンの動きとX軸検出部、Y軸検出部を示す図
【図15】図14における第3のセンサ部で得られる信号と第4のセンサ部で得られる信号を示す図
【図16】図14における第1のセンサ部で得られる信号と第2のセンサ部で得られる信号を示す図
【符号の説明】
【0069】
1 回転部材
2 検出部
8 X軸検出部
9 Y軸検出部
11a〜11d 第1〜第4のセンサ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザによる物理的操作によりデータ処理装置へデータ要素を提供するための回転方向検出手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の回転方向検出手段は、磁性材料からなる内部コアの全周面に実質的に等間隔に位置する凸部または凹部を設けたボールと、互いに90度の角度位置にある2つの磁気コアセンサと、前記ボールが回転したとき、ボールの凸部または凹部によって生じた磁場変化を磁気コアセンサで検出する手段と、前記磁気コアセンサで検出された信号によってボールの回転を検出する手段とを備えていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平8−249116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の回転方向検出手段の構成では、ボール(回転部材)の回転方向(X軸方向またはY軸方向)は検出できるが、磁気コアセンサが2つしか設けられていないため、X軸方向、Y軸方向の回転それぞれに対して1つの磁気コアセンサでしか出力を検出できず、その結果、回転の向き(ボールを横から見て時計回りまたは反時計回り)が検出できないという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、回転の向きが検出できる回転方向検出手段を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、回転可能な回転部材と、この回転部材と所定の距離をおいて配置された検出部とを備え、前記検出部は、前記回転部材の回転に対応して信号を出力する第1〜第4のセンサ部と、前記第1、第2のセンサ部が直線状に配置されたX軸検出部と、前記第3、第4のセンサ部が直線状に配置されたY軸検出部とを有し、さらに、前記第1のセンサ部で得られた信号と第2のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部で得られた信号と第4のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により前記回転部材の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えたもので、この回転方向検出手段によれば、回転部材がX軸方向に回転した場合、X軸検出部を構成する第1、第2のセンサ部はそれぞれ配列順に順次出力することになるため、第1のセンサ部で出力される信号と第2の出力部で出力される信号には時間差が生じることになり、これにより、第1の検出手段において第1のセンサ部と第2のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じていると判断されるが、Y軸検出部を構成する第3、第4のセンサ部からは同時に出力されることになるため、第3のセンサ部で出力される信号と第4の出力部で出力される信号に時間差が生じることはなく、これにより、第2の検出手段において第3のセンサ部と第4のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じていないと判断される。この結果、第3の検出手段においては、第1の検出手段のみに位相差が生じていると判断されるため、回転部材がX軸方向に回転していることを検出でき、また、回転部材がX軸方向に回転していると検出されたとき、第1のセンサ部と第2のセンサ部でそれぞれ得られた信号には位相差が生じているため、第1の検出手段において第1のセンサ部と第2のセンサ部で得られた信号のうち、どちらの信号が遅れているかを検出すれば、その回転の向きを検出でき、さらに、これらのことは回転部材がY軸方向に回転した場合も同様であるため、回転部材の回転方向と回転の向きが検出できるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明の回転方向検出手段は、回転部材の回転に対応して信号を出力する第1〜第4のセンサ部と、前記第1、第2のセンサ部が直線状に配置されたX軸検出部と、前記第3、第4のセンサ部が直線状に配置されたY軸検出部とを有し、さらに、前記第1のセンサ部で得られた信号と第2のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部で得られた信号と第4のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により前記回転部材の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えているため、回転部材がX軸方向に回転した場合、X軸検出部を構成する第1、第2のセンサ部はそれぞれ配列順に順次出力することになり、これにより、第1のセンサ部で出力される信号と第2の出力部で出力される信号には時間差が生じるため、第1の検出手段において第1のセンサ部と第2のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じていると判断されるが、Y軸検出部を構成する第3、第4のセンサ部からは同時に出力されることになり、これにより、第3のセンサ部で出力される信号と第4の出力部で出力される信号に時間差が生じることはなくなるため、第2の検出手段において第3のセンサ部と第4のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じていないと判断される。この結果、第3の検出手段において、第1の検出手段のみに位相差が生じていると判断されるため、回転部材がX軸方向に回転していることを検出でき、また、回転部材がX軸方向に回転していると検出されたとき、第1のセンサ部と第2のセンサ部でそれぞれ得られた信号に位相差が生じているため、第1の検出手段において第1のセンサ部と第2のセンサ部で得られた信号のうち、どちらの信号が遅れているかを検出すれば、その回転の向きを検出でき、さらに、これらのことは回転部材がY軸方向に回転した場合も同様であるため、回転部材の回転方向と回転の向きが検出できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態における回転方向検出手段について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いる入力装置の正面図である。
【0011】
本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いられる入力装置は、図1に示すように、回転部材1と、この回転部材1の下方において、回転部材1と所定の距離をおいて配置された検出部2とからなるものである。
【0012】
前記回転部材1は、球状または多面体状に構成され、そして、前記検出部2に垂直なZ方向と直交し、かつ回転部材1の中心を通り、さらに互いに直交するX軸方向またはY軸方向に自由に回転できるように保持されている。
【0013】
また、この回転部材1は、回転することにより異なる光の強さ、静電容量、電流値、磁界の強さ等を外部に与えるようになっている。例えば、異なる光の強さを外部に与えるようにするには、回転部材1の表面に光を反射する部分と反射しない部分を交互に形成し、回転部材1の表面に光を当て、この反射光を光センサで検出するようにすればよい。
【0014】
以下、異なる磁界の強さを外部に与えるものを例にし、本発明の回転方向検出手段について説明する。
【0015】
図2は回転部材1の内部の正面図である。
【0016】
図2に示すように、回転部材1の内部には、その先端部が外方に向かって延出する複数の磁性体で構成されたピン3が形成されている。また、一方の極が検出部2の回転部材1が形成された側に、他方の極が検出部2の回転部材1が形成されていない側にそれぞれ位置するように磁石(図示せず)を外部に形成しているもので、このような構成とすることにより、ピン3が外部の磁石からの磁界を取り込むため、この取り込まれた磁界を検出部2に対して略垂直方向に印加することができる。
【0017】
そして、ピン3に取り込まれた磁界によって検出部2が受ける磁界の強さは、ピン3が検出部2に近づいたとき強くなり、ピン3が検出部2から遠ざかったとき(隣接する2つのピン3の中間部分が検出部2に近づいたとき)弱くなるものである。このように、回転部材1が回転することによりピン3が異なる強さの(強弱の)磁界を外部に与えるようになっている。
【0018】
なお、強弱の磁界を外部に与えるためには、上述したように回転部材1に複数のピン3を設けるようにするだけでなく、これ以外に、例えば磁性体で構成された回転部材1の表面形状を凹凸状に構成してもよく、さらにはピン3自体を磁石で構成し、そしてこのピン3で発生した磁界を検出部2に印加するようにしてもよい。
【0019】
前記検出部2は、回転部材1の下方に所定の距離をおいて配置される基板4と、この基板4の上面に形成された第1〜第8の磁気センサ5a〜5h、第1〜第4の出力部6a〜6d、第1〜第8の電極7a〜7hとで構成されているものである。
【0020】
以下、図3、図4を参照しながら、第1〜第8の磁気センサ5a〜5h、第1〜第4の出力部6a〜6d、第1〜第8の電極7a〜7hのそれぞれの関係について説明する。なお、図3は本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いる入力装置の回路パターンの模式図、図4は同入力装置の回路パターン図を示す。
【0021】
前記第1〜第8の磁気センサ5a〜5hは、GMR素子で構成されているもので、回転部材1が回転し、ピン3から与えられた磁界の変化に応じて抵抗値が変化するようになっている。
【0022】
また、これらの第1〜第8の磁気センサ5a〜5hのうち、第1〜第4の磁気センサ5a〜5dは、直線状に配置されてX軸検出部8を構成し、一方、第5〜第8の磁気センサ5e〜5hは、直線状に配置されてY軸検出部9を構成している。
【0023】
さらに、この第1〜第8の磁気センサ5a〜5hのパターンは図5に示すような蛇行状となっているもので、第1〜第4の磁気センサ5a〜5dは、その長手方向がX軸方向と平行になり、かつ第5〜第8の磁気センサ5e〜5hは、その長手方向がY軸方向と平行になっている。
【0024】
なお、前記第1〜第8の磁気センサ5a〜5hはMR素子(磁気抵抗効果素子)やホール素子で構成してもよいが、MR素子は電流方向と磁界の向きが直交する場合のみ抵抗値が変化するため、MR素子を使用する場合は、その長手方向をX軸方向、Y軸方向とそれぞれ直交させる必要がある。これに対し、GMR素子は電流方向と磁界の向きが平行でも抵抗値が変化するため、その必要はない。さらに、GMR素子の抵抗値変化率はMR素子の抵抗値変化率に対して数倍大きいため、磁気センサとしてGMR素子を使用すれば、非常に有利となるものである。
【0025】
そして、前記X軸検出部8における第1〜第4の磁気センサ5a〜5dの配置方向と、Y軸検出部9における第5〜第8の磁気センサ5e〜5hの配置方向は互いに直交させている。
【0026】
そしてまた、前記X軸検出部8は、Y軸検出部9が配置されている箇所を第5〜第8の磁気センサ5e〜5hの配置方向に伸ばした線に対して片側のみに形成し、かつ前記Y軸検出部9は、X軸検出部8が配置されている箇所を第1〜第4の磁気センサ5a〜5dの配置方向に伸ばした線に対して片側のみに形成しているもので、すなわち、図3に示すように、X軸検出部8を構成する第1〜第4の磁気センサ5a〜5dは、Y軸検出部9の配置されている箇所を第5〜第8の磁気センサ5e〜5hの配置方向に伸ばした線に対して右側のみに位置し、かつY軸検出部9を構成する第5〜第8の磁気センサ5e〜5hは、X軸検出部8の配置されている箇所を第1〜第4の磁気センサ5a〜5dの配置方向に伸ばした線に対して左側のみに位置している。
【0027】
この場合、前記X軸検出部8とY軸検出部9との関係は、十字状やT字状ではなく、L字状になっているもので、このとき、X軸検出部8、Y軸検出部9は回転部材1の中心から基板4に垂線を下ろした際の交点である中心点10よりずれた位置に配置されている。
【0028】
そしてまた、前記X軸検出部8においては、第2の磁気センサ5bを第3の磁気センサ5cと第4の磁気センサ5dとの間に位置させるとともに、第3の磁気センサ5cを第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bとの間に位置させているもので、すなわち、第1の磁気センサ5a、第3の磁気センサ5c、第2の磁気センサ5b、第4の磁気センサ5dの順に並んでいるものである。なお、この順番は、第1〜第4の磁気センサ5a〜5dをこの順番に位置させてもよい。
【0029】
さらに、前記Y軸検出部9においても、上記と同様に、第6の磁気センサ5fを第7の磁気センサ5gと第8の磁気センサ5hとの間に位置させるとともに、第7の磁気センサ5gを第5の磁気センサ5eと第6の磁気センサ5fとの間に位置させて、第5の磁気センサ5e、第7の磁気センサ5g、第6の磁気センサ5f、第8の磁気センサ5hの順に並ぶようにしているものである。なお、この順番は、第5〜第8の磁気センサ5e〜5hをこの順番に位置させてもよい。
【0030】
また、前記第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bは、図3に示すように直列に接続され、かつこれらの間に前記第1の出力部6aが接続されている。そしてまた、第3の磁気センサ5cと第4の磁気センサ5dも直列に接続され、かつこれらの間に前記第2の出力部6bが接続されている。さらに、第5の磁気センサ5eと第6の磁気センサ5fも直列に接続され、かつこれらの間に前記第3の出力部6cが接続されている。さらにまた、第7の磁気センサ5gと第8の磁気センサ5hも直列に接続され、かつこれらの間に前記第4の出力部6dが接続されている。そしてまた、前記第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bの直列回路の両端には、この両端間に電位差を与える第1、第2の電極7a,7bを設け、かつ第3の磁気センサ5cと第4の磁気センサ5dの直列回路の両端には、この両端間に電位差を与える第3、第4の電極7c,7dを設け、さらに第5の磁気センサ5eと第6の磁気センサ5fの直列回路の両端には、この両端間に電位差を与える第5、第6の電極7e,7fを設け、さらにまた、第7の磁気センサ5gと第8の磁気センサ5hの直列回路の両端には、この両端間に電位差を与える第7、第8の電極7g,7hを設けているものである。
【0031】
上記した構成とすることにより、例えば第1、第3、第5、第7の電極7a,7c,7e,7gをグランドとして、第2、第4、第6、第8の電極7b,7d,7f,7hに所定の電圧を印加すれば、上記直列回路にそれぞれ電位差を与えることができる。
【0032】
なお、前記検出部2を構成する第1〜第8の磁気センサ5a〜5h、第1〜第4の出力部6a〜6d、第1の電極7a、第2の電極7bは、すべて基板4上の同一面に形成されているもので、特に、X軸検出部8とY軸検出部9は同一平面上に形成されているため、X軸検出部8とY軸検出部9を別個に設ける必要はなく、同時に設けることができ、これにより、X軸検出部8とY軸検出部9との位置関係を精度良くすることができ、さらに、実装性および生産性が向上するものである。
【0033】
次に、本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いる入力装置の動作について説明する。
【0034】
図6はピン3の動きとGMR素子で構成された磁気センサ5が受ける磁界の向きとの関係を示す図である。なお、図中の矢印は磁界の方向を示す。
【0035】
図6において、回転部材の回転に伴ってピン3が左から右に移動しているとき、左側のようにピン3と磁気センサ5との距離が大きい(ピン3と右側に隣接する他のピン(図示せず)との中間部分に磁気センサ5が位置する)場合は、他のピンの影響により、磁気センサ5に対する磁界の右向き成分はゼロとなる。次に、ピン3が右に少し移動すると、磁気センサ5が回転部材の中心点10よりずれていることから、磁気センサ5に対する磁界の右向き成分が少し発生する。さらに、ピン3が右に少し移動すると、磁気センサ5に対する磁界の右向き成分が最大となり、そして、ピン3がさらに右に移動すると、左側に隣接するピン(図示せず)の影響により、磁気センサ5に対する磁界の右向き成分が再びゼロになるものである。
【0036】
このような磁気センサ5に対する磁界の右向き成分の変動により、磁気センサ5の抵抗値が変化する。
【0037】
図7はピン3の動きと第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bを示す図、図8は図7において第1、第2の電極7a,7b間に所定の電位を印加したときの第1の出力部6aから出力される信号を示す図である。
【0038】
図7において、矢印の向きにピン3が移動する(回転部材が回転する)と、第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bはともに上記したような抵抗値変化を起こすが、ピン3による磁界の影響を、第2の磁気センサ5bが第1の磁気センサ5aより後に受けるため、第1の磁気センサ5aの抵抗値と第2の磁気センサ5bの抵抗値に差が生じることになり、これにより、第1、第2の電極7a,7b間に所定の電位を印加すると、第1の出力部6aから出力される信号(電位)は、図8に示すような正弦波となる。なお、図8において、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
【0039】
このように、第1の出力部6aは、回転部材1の回転に伴う磁界の強さの変化に応じた信号を出力する。すなわち、第1の磁気センサ5aと第2の磁気センサ5bを第1のセンサ部11aとしたときは、この第1のセンサ部11aは、回転部材1の回転に対応した信号を第1の出力部6aから出力する。
【0040】
また、上記と同様に、第3の磁気センサ5cと第4の磁気センサ5dを第2のセンサ部11bとしたときは、この第2のセンサ部11bは、回転部材1の回転に対応した信号を第2の出力部6bから出力し、そしてまた、第5の磁気センサ5eと第6の磁気センサ5fを第3のセンサ部11cとしたときは、この第3のセンサ部11cは、回転部材1の回転に対応した信号を第3の出力部6cから出力し、さらに、第7の磁気センサ5gと第8の磁気センサ5hを第4のセンサ部11dとしたときは、この第4のセンサ部11dは、回転部材1の回転に対応した信号を第4の出力部6dから出力する。
【0041】
次に、第1の検出手段について説明する。
【0042】
この第1の検出手段では、第1のセンサ部11aで得られた信号(第1の出力部6aから発生する信号)と第2のセンサ部11bで得られた信号(第2の出力部6bから発生する信号)の2つの信号の位相差情報を検出する。
【0043】
図9は同入力装置におけるピン3の動きとX軸検出部8を示す図、図10は図9において第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13を示す図である。
【0044】
図9において、矢印の向きにピン3が移動する(回転部材がX軸方向に回転する、すなわち、Y軸方向と平行な軸を回転軸として回転する)と、ピン3による磁界の影響を、第3の磁気センサ5c、第4の磁気センサ5dからなる第2のセンサ部11bは、第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bからなる第1のセンサ部11aより後に受けるため、第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bが抵抗値変化を起こした後で、第3の磁気センサ5c、第4の磁気センサ5dが抵抗値変化を起こし、これにより、第1のセンサ部11aで得られる信号(電位)より第2のセンサ部11bで得られる信号(電位)が遅れ、図10に示すように、第1のセンサ部11aで得られる信号12(以下、実線で示す)と第2のセンサ部11bで得られる信号13(以下、破線で示す)とで位相差が生じる。なお、図10において、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
【0045】
また、図11は図9において矢印の向きと逆方向にピン3が移動したときの第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13を示す図である。
【0046】
図9において、矢印の向きと逆方向にピン3が移動すると、ピン3による磁界の影響を、第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bからなる第1のセンサ部11aは、第3の磁気センサ5c、第4の磁気センサ5dからなる第2のセンサ部11bより後で影響を受けるため、第1のセンサ部11aで得られる信号と第2のセンサ部11bで得られる信号は、図11に示すように、第2のセンサ部11bで得られる信号13より第1のセンサ部11aで得られる信号12が遅れる。なお、図11において、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
【0047】
さらに、図12はX軸検出部8に対して左側においてピンが移動するときのピン3の動きとX軸検出部8を示す図、図13は図12における第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13を示す図である。
【0048】
図3に示したように、X軸検出部8はY軸検出部9における第5〜第8の磁気センサ5e〜5h(第3のセンサ部11c、第4のセンサ部11d)の配置方向に対して右側のみに形成されているため、回転部材1がY軸方向に回転する場合は、図12に示すように、X軸検出部8に対して左側に、矢印の向きにピン3が移動する。そして、ピン3から受ける磁界は、第1〜第4の磁気センサ5a〜5d(第1のセンサ部11a、第2のセンサ部11b)のすべてに同時に印加されるため、磁界の影響を他より遅く受ける磁気センサ5はなく、これにより、その信号は図12に示すように、位相差が発生しない。
【0049】
この場合、第1の磁気センサ5a、第2の磁気センサ5bが第3の磁気センサ5c、第4の磁気センサ5dよりピン3に近いため、第1のセンサ部11aで得られる信号12が第2のセンサ部11bで得られる信号13より強く(電圧が大きく)なっている。
【0050】
なお、ピン3は中心点10を通らず、X軸検出部8の上を通る場合も考えられるが、これにおいては、位相差が発生する回数は僅かであり、回転方向の検出に影響を与えることはほとんどないものである。
【0051】
上記図9〜図13において説明したような動作原理により、X軸方向に回転部材1が回転すれば、X軸検出部8における第1、第2のセンサ部11a,11bで得られる2つの信号に位相差が生じ、一方、Y軸方向に回転部材1が回転すれば、X軸検出部8における第1、第2のセンサ部11a,11bで得られる信号に位相差は生じない。これはY軸検出部9についても同様である。
【0052】
上述したように、第1の検出手段においては、第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13の位相差を検出することができ、さらに、信号12と信号13のどちらが遅れているかを検出することができるもので、この結果から、回転部材1がX軸方向に回転しているかどうか、X軸方向に回転している場合、どちらの向きに回転しているかを検出することができるものである。ここで、回転の向きとは、回転部材1を検出部2と平行な方向から見て、時計回りの回転または反時計回りの回転をいう。
【0053】
また、第3のセンサ部11cで得られる信号と第4のセンサ部11dで得られる信号の位相差情報を検出する第2の検出手段も、上記と同様に、第3のセンサ部11cで得られる信号と第4のセンサ部11dで得られる信号の位相差を検出することができ、さらに、これらの2つの信号のどちらが遅れているかを検出することができるもので、この結果、回転部材1がY軸方向に回転しているかどうか、Y軸方向に回転している場合、どちらの向きに回転しているかを検出することができるものである。
【0054】
そして、位相差が発生したとき、その位相差の回数を検出して、回転部材1のX軸方向またはY軸方向への移動量を検出する。
【0055】
次に、第3の検出手段について説明する。
【0056】
図14はY軸方向に回転部材1が回転した(矢印の向きにピン3が移動した)場合のピン3の動きとX軸検出部8、Y軸検出部9を示す図である。また、図15は図14におけるY軸検出部9の第3の出力部6cから出力される信号14と第4の出力部6dから出力される信号15を示す図、図16は図14におけるX軸検出部8の第1の出力部6aから出力される信号12と第2の出力部6bから出力される信号13を示す図である。
【0057】
このときのY軸検出部9における第3のセンサ部11cで得られる信号14と第4のセンサ部11dで得られる信号15を図15に示し、X軸検出部8における第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13を図16に示す。そして、図15、図16において、それぞれ上の波形は実際の信号、下の波形はその信号を矩形波に変換したときの信号を示す。また、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
【0058】
このとき、正弦波における信号(電圧)の最大値と最小値の中間の値を基準値として、この基準値より大きい部分を大きく、基準値より小さい部分を小さくした矩形波に変換している。矩形波に変換すれば、基準値に対する2つの信号の大小の関係を検出するのが容易となるため、2つの信号の位相差を容易に検出できる。
【0059】
図15、図16から明らかなように、Y軸方向に回転部材1が回転すると、Y軸検出部9における第3のセンサ部11cで得られる信号14と第4のセンサ部11dで得られる信号15とには位相差が発生するが、X軸検出部8における第1のセンサ部11aで得られる信号12と第2のセンサ部11bで得られる信号13とには図15のような位相差は発生しない。そして、信号15が信号14より遅く出力されるものである。
【0060】
このとき、X軸検出部8、Y軸検出部9においてそれぞれ得られた位相差の回数を検出する。
【0061】
さらに、矢印の向きと逆方向にピン3が移動すると、図8〜図10において説明したように、信号14が信号15より遅く出力される。そして、ピン3の移動方向が逆方向というのは(回転部材1が同じY軸方向に回転しても)、回転部材1の回転の向きが異なることをいう。例えば、図14においては、紙面を右手側から見て、回転部材1が時計回りに回転する場合と、反時計回りに回転する場合があり、両者の回転の向きは異なる。したがって、回転部材1の回転の向きを検出できる。
【0062】
なお、ピン3が中心点10を通らない場合があるため、図16において必ずしも図12に示した波形が検出されるわけではなく、また、図15において最大値が小さくなることもある。
【0063】
そして、第3の検出手段においては、第1の検出手段で、第2の検出手段のそれぞれで得られた位相差情報により、回転部材1の回転方向と回転の向きを検出する。すなわち、X軸検出部8における第1のセンサ部11aで得られる信号と第2のセンサ部11bで得られる信号との間で発生した位相差の回数と、Y軸検出部9における第3のセンサ部11cで得られる信号と第4のセンサ部11dで得られる信号との間で発生した位相差の回数をそれぞれ検出し、回転部材1がX軸方向に回転した移動量とY軸方向に回転した移動量を検出する。さらに、位相差が発生したことを検出した場合、2つの信号のうちどちらの信号に遅れが生じたかを検出することによって、回転の向きを検出する。
【0064】
このとき、図16に示すように、X軸検出部8における位相差がゼロの場合は、回転部材1がY軸方向に回転していることがわかる。
【0065】
また、回転部材1の回転方向が、X軸方向、Y軸方向に対して斜めの場合、第1の検出手段で得られた位相差の単位時間当たりの回数と第2の検出手段で得られた位相差の単位時間当たりの回数の比を第3の検出手段で検出することによってその角度を検出する。
【0066】
上記した本発明の一実施の形態においては、回転部材1の回転に対応して信号を出力する第1〜第4のセンサ部11a〜11dと、前記第1、第2のセンサ部11a,11bが直線状に配置されたX軸検出部8と、前記第3、第4のセンサ部11c,11dが直線状に配置されたY軸検出部9とを有し、さらに、前記第1のセンサ部11aで得られた信号と第2のセンサ部11bで得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部11cで得られた信号と第4のセンサ部11dで得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により前記回転部材1の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えているため、回転部材1がX軸方向に回転した場合、X軸検出部8を構成する第1、第2のセンサ部11a,11bはそれぞれ配列順に順次出力することになり、これにより、第1のセンサ部11aで出力される信号と第2のセンサ部11bで出力される信号には時間差が生じるため、第1の検出手段において第1のセンサ部11aと第2のセンサ部11bでそれぞれ得られた信号に位相差が生じていると判断されるが、Y軸検出部9を構成する第3、第4のセンサ部11c,11dからは同時に出力されることになり、これにより、第3のセンサ部11cで出力される信号と第4の出力部11dで出力される信号に時間差が生じることはなくなるため、第2の検出手段において第3のセンサ部11cと第4のセンサ部11dでそれぞれ得られた信号に位相差が生じていないと判断される。この結果、第3の検出手段において、第1の検出手段のみに位相差が生じていると判断されるため、回転部材1がX軸方向に回転していることを検出でき、また、回転部材1がX軸方向に回転していると検出されたとき、第1のセンサ部11aと第2のセンサ部11bでそれぞれ得られた信号に位相差が生じているため、第1の検出手段において第1のセンサ部11aと第2のセンサ部11bで得られた信号のうち、どちらの信号が遅れているかを検出すれば、その回転の向きを検出でき、さらに、これらのことは回転部材1がY軸方向に回転した場合も同様であるため、回転部材1の回転方向と回転の向きが検出できるという効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る回転方向検出方法は、回転の向きが検出できるという効果を有するものであり、特にユーザによる物理的操作によりデータ処理装置へデータ要素を提供するための回転方向検出手段等において有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態における回転方向検出手段に用いる入力装置の正面図
【図2】同入力装置に使用される回転部材の内部の正面図
【図3】同入力装置の回路パターンの模式図
【図4】同入力装置の回路パターン図
【図5】同入力装置における第1〜第8の磁気センサのパターンを示す図
【図6】同入力装置におけるピンの動きと磁気センサが受ける磁界の強さとの関係を示す図
【図7】同入力装置におけるピンの動きと第1の磁気センサ、第2の磁気センサを示す図
【図8】図7において第1、第2の電極間に所定の電位を印加したときの第1の出力部から出力される信号を示す図
【図9】同入力装置におけるピンの動きとX軸検出部を示す図
【図10】図9において第1のセンサ部で得られる信号と第2のセンサ部で得られる信号を示す図
【図11】図9において矢印の向きと逆方向にピンが移動したときの第1のセンサ部で得られる信号と第2のセンサ部で得られる信号を示す図
【図12】同入力装置におけるX軸検出部に対して左側においてピンが移動するときのピンの動きとX軸検出部を示す図
【図13】図12における第1のセンサ部で得られる信号と第2のセンサ部で得られる信号を示す図
【図14】同入力装置におけるY軸方向に回転部材が回転した場合のピンの動きとX軸検出部、Y軸検出部を示す図
【図15】図14における第3のセンサ部で得られる信号と第4のセンサ部で得られる信号を示す図
【図16】図14における第1のセンサ部で得られる信号と第2のセンサ部で得られる信号を示す図
【符号の説明】
【0069】
1 回転部材
2 検出部
8 X軸検出部
9 Y軸検出部
11a〜11d 第1〜第4のセンサ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な回転部材と、この回転部材と所定の距離をおいて配置された検出部とを備え、前記検出部は、前記回転部材の回転に対応して信号を出力する第1〜第4のセンサ部と、前記第1、第2のセンサ部が直線状に配置されたX軸検出部と、前記第3、第4のセンサ部が直線状に配置されたY軸検出部とを有し、さらに、前記第1のセンサ部で得られた信号と第2のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部で得られた信号と第4のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により前記回転部材の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えた回転方向検出手段。
【請求項1】
回転可能な回転部材と、この回転部材と所定の距離をおいて配置された検出部とを備え、前記検出部は、前記回転部材の回転に対応して信号を出力する第1〜第4のセンサ部と、前記第1、第2のセンサ部が直線状に配置されたX軸検出部と、前記第3、第4のセンサ部が直線状に配置されたY軸検出部とを有し、さらに、前記第1のセンサ部で得られた信号と第2のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第1の検出手段と、前記第3のセンサ部で得られた信号と第4のセンサ部で得られた信号の位相差情報を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段、第2の検出手段により得られた位相差情報により前記回転部材の回転方向と回転の向きを検出する第3の検出手段とを備えた回転方向検出手段。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−168704(P2009−168704A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8869(P2008−8869)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]