説明

回転格納式手摺

【課題】安全帯用ロープを連結するための手摺を簡単な作業によりジブの内側に格納する。
【解決手段】手摺本体20が取り付けられる回転側手摺取付ブラケット35は、ジブ縦材15の軸周りに回転可能である。よって、手摺本体20を、ジブ10の外側から内側へ簡単な作業により格納できる。したがって、このような格納ができない場合に比べ、ジブ10の組立および分解に要する作業時間の短縮と省力が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全帯用ロープを連結するためにラチス構造ジブのジブ縦材に取り付けられる回転格納式手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、組立および分解可能なラチス構造ジブを装着したクレーンが知られている(例えば特許文献1)。このようなクレーンの組立および分解時にはジブ上面に作業者が立つ必要が多々ある。このジブの上面は地上から例えば2メートル以上の高さとなる場合があるため、作業者は安全帯(安全ベルト)を使用する。この安全帯は手摺間に張られた安全帯用ロープに連結して使用される。なお、図13にラチス構造のジブ110に装着された手摺101および安全帯用ロープ114を示す。
【0003】
また、ジブ上面には足場が装備される。さらに、巻上げワイヤロープおよびジブ起伏ワイヤロープがジブ上面を擦るのを防ぐために、それらの移動範囲幅のケーブルローラがジブ上面に装着される。また、組立分解時には支持ロープ(ブームガイライン)がジブ上面に載る。
【0004】
このようにジブ上面には様々な物が載るため、手摺をジブの外側に取り付ける事が必要となる場合がある。そこで、図14および図15に示すように、ジブの主柱(ジブ縦材115)の外側にU−ボルト130uを用いて手摺取付ブラケット130を取り付け、この手摺取付ブラケット130に手摺(手摺本体120)を取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−139772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術には次の課題があった。ジブ110は輸送制限幅内の大きさである必要がある。そこでジブを輸送制限幅内の最大の大きさとした場合、ジブに手摺101を取り付けた状態では輸送制限幅を超える。この場合はU−ボルト130uを外して手摺101(手摺本体120および手摺取付ブラケット130)をジブ110から取り外す必要があり、時間と労力が掛かっていた。
【0007】
本発明の目的は、簡単な作業によりジブの内側に格納できる手摺(回転格納式手摺)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る回転格納式手摺は、安全帯用ロープを連結するためにラチス構造ジブのジブ縦材に取り付けられる手摺であって、手摺本体と、前記手摺本体を前記ジブ縦材に取り付けるための手摺取付ブラケットと、を備え、前記手摺取付ブラケットは、前記ジブ縦材に固定される固定側手摺取付ブラケットと、前記手摺本体が取り付けられるとともに前記固定側手摺取付ブラケットの外側に取り付けられ、前記ジブ縦材の軸周りに回転可能である、回転側手摺取付ブラケットと、を備える。
【0009】
この回転格納式手摺では、手摺本体が取り付けられる回転側手摺取付ブラケットは、ジブ縦材の軸周りに回転可能である。よって、手摺本体を、ジブの外側から内側へ簡単な作業により格納できる。したがって、このように格納できない場合に比べ、ジブの組立および分解に要する作業時間の短縮と省力が可能である。
【0010】
また、この回転格納式手摺では、ジブ縦材に固定される固定側手摺取付ブラケットの外側に回転側手摺取付ブラケットが取り付けられる。よって、回転側手摺取付ブラケットはジブ縦材の軸方向の移動が規制される。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明に述べたように本発明は、特に回転側手摺取付ブラケットがジブ縦材の軸周りに回転可能である構成により、簡単な作業で手摺本体をジブの内側に格納でき、作業時間の短縮と省力が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ジブの平面図である。
【図2】図1に示すジブの正面図である。
【図3】図2に示す手摺取付ブラケット周辺の正面図である。
【図4】図3に示す手摺取付ブラケット周辺の右側面図である。
【図5】作業時の手摺取付ブラケットの平面図であり図4に示すF5矢視図である。
【図6】手摺本体の格納時の図5相当図である。
【図7】固定側手摺取付ブラケットを示す平面図である。
【図8】固定側手摺取付ブラケットを示す正面図である。
【図9】固定側手摺取付ブラケットを示す右側面図である。
【図10】回転側手摺取付ブラケットを示す平面図である。
【図11】回転側手摺取付ブラケットを示す正面図である。
【図12】回転側手摺取付ブラケットを示す右側面図である。
【図13】従来のジブ全体を示す正面図である。
【図14】従来の手摺取付ブラケットを示す正面図である。
【図15】従来の手摺取付ブラケットを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2はジブの平面図および正面図である。図3および図4は手摺取付ブラケット周辺の正面図および右側面図である。図5および図6は手摺取付ブラケットの平面図であり、図5は作業時の状態を示し、図6は手摺本体の格納時の状態を示す。また図5は図4に示すF5矢視図である。図7〜図9は固定側手摺取付ブラケットを示す平面図、正面図、および右側面図である。図10〜図12は回転側手摺取付ブラケットを示す平面図、正面図、および右側面図である。
以下、本発明に係る回転格納式手摺の実施形態について図1〜図12を参照して説明する。まず本発明に係る回転格納式手摺1が取り付けられるジブ10について説明する。
【0014】
ジブ10は、図1に示すように、ラチス構造ジブ(ブームやアタッチメントとも呼ばれる)である。このジブ10は、縦方向に配置されるジブ縦材15を備える。ジブ10の幅(図1における上下方向の幅)は、回転格納式手摺1が作業位置に取り付けられた状態(図1および図2に示す状態)では輸送制限幅を超える。また、このジブ10は、分解および組立が可能である。すなわち図13に示すジブ110は、ジブ110a〜110dに分解可能であり、分解された複数のジブのうちの1つが図1に示すジブ10に相当する。
【0015】
ジブ10の分解および組立の作業は、ジブ10の上面に作業者が乗って行われる。ジブ10の上面には様々な物が配置される。具体的には足場11、および、支持ロープ12(ブームガイライン等とも呼ばれる)がジブ10上面に載る。また、各種ケーブルがジブ10の上面を擦らないようにするために、ジブ10の上面にケーブルローラ13が装着される。ジブ10の上面に配置されたこれらの物を避けるように、ジブ10の幅方向外側に、回転格納式手摺1が配置される。
【0016】
回転格納式手摺1は、図1および図2に示すように、作業時に安全帯(安全ベルト)用ロープ14を連結するため、ジブ10の上方側に突出するように(図2、図13参照)複数本配置される。そして、複数の回転格納式手摺1の間には安全帯(安全ベルト)用ロープ14が連結される。また、図3および図4において二点鎖線で示すように、作業時以外の時には回転格納式手摺1はジブ10の内側に格納される(以下、この時を「格納時」という)。なお、回転格納式手摺1の動作の詳細は後述する。この回転格納式手摺1は、棒状の手摺本体20と、手摺本体20をジブ縦材15に取り付けるための手摺取付ブラケット30と、を備える。
【0017】
手摺本体20は、図1および図2に示すように、安全帯用ロープ14を連結するための棒状部材(ポール)である。この手摺本体20は、図2〜図4(特に図2)に示すように、手摺本体20の下端付近に形成されたピン孔20a、および、上端付近に形成されたピン孔20bを備える(これらのピン孔の機能については後述する)。
【0018】
手摺取付ブラケット30は、手摺本体20をジブ縦材15に取り付けるために、ジブ縦材15に取り付けられる。この手摺取付ブラケット30は、ジブ縦材15に固定される固定側手摺取付ブラケット31と、固定側手摺取付ブラケット31の外側に回転可能に取り付けられる回転側手摺取付ブラケット35と、を備える。
【0019】
固定側手摺取付ブラケット31は、上述したようにジブ縦材15に固定される。そして、後述する回転側手摺取付ブラケット35の縦方向の移動を規制する。さらに詳しくは、固定側手摺取付ブラケット31は、図7〜図9に示すように、2つの半割れパイプ31aおよび31bをボルト41(図4参照)で締結したものであり、全体として筒状である。また、固定側手摺取付ブラケット31は、ジブ縦材15(図4参照)に固定される筒状の部分(「固定側筒状部32」という)と、固定側筒状部32の下方側に取り付けられる固定側下部板33と、上方側に取り付けられる上部板34と、を備える。
【0020】
固定側下部板33は、後述する回転側手摺取付ブラケット35(図4参照)の移動を規制する板である。さらに詳しくは、固定側下部板33は、回転側手摺取付ブラケット35(図4参照)の下端よりも下方側に位置するように、固定側筒状部32に取り付けられる。これにより回転側手摺取付ブラケット35(図4参照)の下向きの移動が規制される。また、この固定側下部板33は、図7および図9に示すように、ジブ10の外側の固定側下部板33Aと、同内側の固定側下部板33Bと、を備える。そして固定側下部板33Aにはピン孔33aが、固定側下部板33Bにはピン孔33bが形成される(ピン孔33aおよび33bの機能については後述する)。
【0021】
上部板34は、固定側下部板33と同様に、後述する回転側手摺取付ブラケット35(図4参照)の移動を規制する板である。すなわち、回転側手摺取付ブラケット35(図4参照)の上端よりも上方側に位置するように、固定側筒状部32に取り付けられる。これにより回転側手摺取付ブラケット35(図4参照)の上向きの移動が規制される。
【0022】
回転側手摺取付ブラケット35は、図3および図4に示すように、手摺本体20が取り付けられるとともに、固定側手摺取付ブラケット31の外側に取り付けられ、ジブ縦材15の軸周りに回転可能である。さらに詳しくは、この回転側手摺取付ブラケット35は、図10〜図12に示すように、固定側手摺取付ブラケット31(図4参照)の外側に取り付けられるジブ縦材側取付部36と、手摺本体20(図4参照)が取り付けられる手摺本体側取付部37と、ジブ縦材側取付部36と手摺本体側取付部37とを連結する連結部38と、連結部38の下部に取り付けられる回転側下部板39と、を備える。
【0023】
ジブ縦材側取付部36は、固定側手摺取付ブラケット31(図4参照)の外側に取り付けられる、筒状の部分である。このジブ縦材側取付部36は、図4に示すように、固定側手摺取付ブラケット31の固定側下部板33と上部板34との間に配置される。これにより回転側手摺取付ブラケット35の上下方向の移動が規制される。また、ジブ縦材側取付部36は、図10〜図12に示すように、2つの半割れパイプ状の部材36aおよび36bをボルトで締結することで筒状に形成される。
【0024】
手摺本体側取付部37は、手摺本体20(図4参照)が取り付けられる、筒状の部分である。さらに詳しくは、手摺本体側取付部37の内側に手摺本体20(図4参照)が配置される。また、この手摺本体側取付部37には、ピン孔37aが形成される(ピン孔37aの機能については後述する)。
【0025】
連結部38は、ジブ縦材側取付部36と手摺本体側取付部37とを連結する部分である。この連結部38の下部には回転側下部板39が取り付けられる。
【0026】
回転側下部板39は、ジブ縦材側取付部36および連結部38の下部に取り付けられた板状部分であり、ピン孔39aが形成される(ピン孔39aの機能については後述する)。
【0027】
(回転格納式手摺の動作)
次に、回転格納式手摺1の格納時および使用時の動作について説明する。
【0028】
まず、ジブ10の分解および組立作業時(手摺本体20の使用時)の状態について説明する。図1〜図4に示すように、手摺本体20は、ジブ10の幅方向外側に配置され、かつ、ジブ10の上面よりも上方側へ突出して配置される(図2参照)。このとき、図3〜図5(特に図5)に示すように、固定側下部板33Aのピン孔33aと、回転側下部板39のピン孔39aと、にブラケット固定ピン51が差し込まれている。これにより、回転側手摺取付ブラケット35が固定される。また、図3および図4に示すように、手摺本体20のピン孔20aと、手摺本体側取付部37のピン孔37aと、に手摺本体固定ピン52が差し込まれている。これにより手摺本体20が固定される。
【0029】
次に手摺本体20の格納時の動作について説明する。まず手摺本体20に連結されていた安全帯用ロープ14(図2参照)を外す。次に、図3および図4に示す、手摺本体固定ピン52を外し、手摺本体20を下方側へスライドさせる(作業位置から格納位置へ下げる)。そして手摺本体20の上端付近に形成されたピン孔20b(図2参照)と、手摺本体側取付部37のピン孔37aと、が連通するように手摺本体20の位置を合わせる。そしてピン孔20bとピン孔37aとに手摺本体固定ピン52を差し込み、手摺本体20を固定する。
次に、図5に示すブラケット固定ピン51を外し、回転側手摺取付ブラケット35をジブ10の内側に回転させる(作業位置から格納位置へ回転させる。すなわち図5の状態から図6の状態にする)。そして、図6に示すように、回転側下部板39のピン孔39aと、固定側下部板33Bのピン孔33bと、が連通するように回転側手摺取付ブラケット35の位置を合わせる。そしてピン孔33bとピン孔39aとにブラケット固定ピン51を差し込み、回転側手摺取付ブラケット35を固定する。このようにして手摺本体20が格納位置で固定される。
【0030】
次に手摺本体20を使用する際の動作について説明する。この動作は上述した手摺本体20の格納時の動作と逆の動作である。まず、ブラケット固定ピン51を外し、回転側手摺取付ブラケット35を作業位置に回転させ(図6の状態から図5の状態にして)、ブラケット固定ピン51で回転側手摺取付ブラケット35を固定する。次に、図4に示す手摺本体固定ピン52を外し、手摺本体20を上方側へスライドさせ、手摺本体固定ピン52で手摺本体20を固定する。そして、手摺本体20間に安全帯用ロープ14(図1および図2参照)を張る。
【0031】
(本実施形態の回転格納式手摺の特徴)
本実施形態の回転格納式手摺1には以下の特徴がある。
【0032】
この回転格納式手摺1では、図4等に示す手摺本体20が取り付けられる回転側手摺取付ブラケット35は、ジブ縦材15の軸周りに回転可能である。よって、手摺本体20を、ジブ10の外側から内側へ簡単な作業により格納できる(特に図5および図6参照)。したがって、このような格納ができない場合に比べ、ジブ10の組立および分解に要する作業時間の短縮と省力が可能である。
【0033】
また、この回転格納式手摺1では、図4等に示すように、ジブ縦材15に固定される固定側手摺取付ブラケット31の外側に回転側手摺取付ブラケット35が取り付けられる。よって、回転側手摺取付ブラケット35は、固定側下部板33と固定側上部板34とによりジブ縦材15の軸方向の移動が規制される。
【0034】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 回転格納式手摺
10 ジブ
14 安全帯用ロープ
15 ジブ縦材
20 手摺本体
30 手摺取付ブラケット
31 固定側手摺取付ブラケット
35 回転側手摺取付ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全帯用ロープを連結するためにラチス構造ジブのジブ縦材に取り付けられる手摺であって、
手摺本体と、
前記手摺本体を前記ジブ縦材に取り付けるための手摺取付ブラケットと、
を備え、
前記手摺取付ブラケットは、
前記ジブ縦材に固定される固定側手摺取付ブラケットと、
前記手摺本体が取り付けられるとともに前記固定側手摺取付ブラケットの外側に取り付けられ、前記ジブ縦材の軸周りに回転可能である、回転側手摺取付ブラケットと、
を備える回転格納式手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−121780(P2011−121780A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283266(P2009−283266)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】