説明

回転機械及び回転機械の内部ユニット

【課題】内部ユニットを一括して交換することで容易なメンテナンスが可能であって、且つ、周囲にスペースを確保することなく内部ユニットの取り出しが可能な回転機械を提供する。
【解決手段】本発明に係る洋上向け遠心圧縮機10は、上下二分割に構成されたケーシング11と、ケーシング11の内部に配設され、少なくとも、ロータ19、軸受部20、及びシール部21が一体的に構成された内部ユニット12と、を備え、ケーシング11と内部ユニット12の一方に設けられた嵌合凹部16と、他方に設けられ、嵌合凹部16に嵌合する嵌合凸部25,28とを少なくとも一組有し、ケーシング11と内部ユニット12との軸方向の相対移動を規制する軸方向移動規制部と、を備え、嵌合凹部16と嵌合凸部25,28には、径方向内周側に向かうに従って軸方向に幅広となるようにテーパ面18,27が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸回りに回転駆動されるロータがケーシングの内部に収容されてなる回転機械、及び回転機械の内部ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸回りに回転駆動されるロータがケーシングの内部に収容されてなる回転機械としては、遠心力を利用してガスを圧縮する遠心圧縮機が挙げられる。そして、この遠心圧縮機には、バレル型圧縮機と呼ばれるケーシングが筒状のものと、分割型圧縮機と呼ばれるケーシングが二分割可能なものとが知られている(例えば、特許文献1を参照)。ここで、バレル型圧縮機は、ケーシング以外の構成要素、すなわちロータや軸受やシール部材等が一体的に構成されてなる内部ユニットが収容されている。そして、内部のメンテナンスを行う場合には、筒状のケーシングの一端開口から内部ユニットを引き出すことにより、内部の部品を一括して交換することができる。尚、このバレル型圧縮機は、内部の気密性が高いため、内部の圧力が高い遠心圧縮機に対して適用される場合が多い。
【0003】
一方、分割型圧縮機は、二分割可能なケーシングのうち上側のケーシングを取り外すと、軸受やシール部材が上側のケーシングとともに外れるようになっている。これにより、内部のロータ等が露呈し、その場において内部のメンテナンスを行うことができる。尚、この分割型圧縮機は、ケーシングが二分割可能である分、バレル型圧縮機と比較すると内部の気密性に劣るため、内部の圧力が低い遠心圧縮機に対して適用される場合が多い。
【0004】
ところで、船舶の上で石油や天然ガスを精製する設備において使用される洋上向け圧縮機としては、バレル型圧縮機が多く用いられる。これは、限られたスペースと最低限の人員しか確保することができない洋上では、内部のメンテナンスを行うことは難しいため、内部の部品を一括して交換することによって容易なメンテナンスが可能なバレル型圧縮機の方が好適だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−513863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、洋上向け圧縮機として多く用いられる従来のバレル型圧縮機では、前述のようにケーシングの一端開口から内部ユニットを引き出す必要があるため、隣接した位置に十分なスペースを確保する必要があるとともに、ケーシングから内部ユニットを横方向に引き出す作業が困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、内部ユニットを一括して交換することで容易なメンテナンスが可能であって、且つ、周囲にスペースを確保することなく内部ユニットの取り出しが可能な回転機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る回転機械は、上下二分割に構成されて上側の上半部と下側の下半部とを有するケーシングと、前記ケーシングの内部に配設され、少なくとも、軸回りに回転可能なロータ、前記ロータを回転可能に支持する軸受部、及び前記ロータを回転可能にロータの周面との間を封止する環状のシール部が一体的に構成された内部ユニットと、を備え、前記ケーシングと前記内部ユニットの一方に設けられた嵌合凹部と、他方に設けられ、前記嵌合凹部に嵌合する嵌合凸部とを少なくとも一組有し、前記ケーシングと前記内部ユニットとの軸方向の相対移動を規制する軸方向移動規制部と、を備え、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部には、径方向内周側に向かうに従って軸方向に幅広となるようにテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、ケーシングの上半部を取り外し、内部ユニットを吊り上げてケーシングの下半部から取り出した後、新品の内部ユニットを吊り下ろして装着することにより、回転機械の内部の部品を一括して交換することができる。これにより、例えば洋上のように周囲に十分なスペースを確保することができない場合でも、内部ユニットのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0010】
また、内部ユニットとケーシングの一方に形成された嵌合凹部と他方に形成された嵌合凸部とを互いに嵌合させることにより、内部ユニットとケーシングとが軸方向に相対移動するのを規制することができる。
【0011】
更に、内部ユニットをケーシングに装着する際に、内部ユニットが、嵌合凹部と嵌合凸部とが正しく嵌合する位置から軸方向に若干位置ずれする場合がある。この場合でも、嵌合凹部と嵌合凸部に形成されたテーパ面によって内部ユニットが正しい位置へと案内されることにより、嵌合凹部と嵌合凸部とが確実に嵌合する。
【0012】
また、本発明に係る回転機械は、前記テーパ面が、前記嵌合凹部及び前記嵌合凸部の径方向断面それぞれにおいて、前記内部ユニットに作用するスラスト力の作用方向に向かって後方側の側壁にのみ形成されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、テーパ面がスラスト力の作用方向に向かって後方側の側壁にのみ形成され、前方側の側壁には形成されていない。従って、テーパ面の存在に拘らず軸方向移動規制部の機能が損なわれることがなく、スラスト力の作用に起因した内部ユニットとケーシングとの軸方向への相対移動を、前方側の側壁によって確実に規制することができる。
【0014】
また、本発明に係る回転機械は、前記テーパ面が、前記嵌合凹部及び前記嵌合凸部のそれぞれにおいて、前記ケーシングの上半部と下半部との接合部近傍の一部にのみ形成されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、内部ユニットをケーシングに装着する際に内部ユニットが正しい位置から軸方向に若干位置ずれした場合、嵌合凹部と嵌合凸部とが最初に嵌合し始める位置である上半部と下半部との接合部近傍において、テーパ面によって内部ユニットが正しい位置へと案内される。従って、接合部近傍から離れた位置において嵌合凹部と嵌合凸部が嵌合し始める時には、内部ユニットは既に正しい位置に存在し、テーパ面が形成されていなくても嵌合凹部と嵌合凸部とが確実に嵌合する。
【0016】
また、本発明に係る回転機械の内部ユニットは、上下二分割に構成されて上側の上半部と下側の下半部とを有するケーシングの内部に配設され、少なくとも、軸回りに回転可能なロータ、前記ロータを回転可能に支持する軸受部、及び前記ロータを回転可能にロータの周面との間を封止する環状のシール部が一体的に構成された回転機械の内部ユニットであって、前記ケーシングと前記内部ユニットの一方に設けられた嵌合凹部と、他方に設けられ、前記嵌合凹部に嵌合する嵌合凸部とを少なくとも一組有し、前記ケーシングと前記内部ユニットとの軸方向の相対移動を規制する軸方向移動規制部と、を備え、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部には、径方向内周側に向かうに従って軸方向に幅広となるようにテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、ケーシングの上半部を取り外し、内部ユニットを吊り上げてケーシングの下半部から取り出した後、新品の内部ユニットを吊り下ろして装着することにより、回転機械の内部の部品を一括して交換することができる。これにより、例えば洋上のように周囲に十分なスペースを確保することができない場合でも、内部ユニットのメンテナンスを容易に行うことができる。
また、内部ユニットとケーシングの一方に形成された嵌合凹部と他方に形成された嵌合凸部とを互いに嵌合させることにより、内部ユニットとケーシングとが軸方向に相対移動するのを規制することができる。
更に、内部ユニットをケーシングに装着する際に、内部ユニットが、嵌合凹部と嵌合凸部とが正しく嵌合する位置から軸方向に若干位置ずれする場合がある。この場合でも、嵌合凹部と嵌合凸部に形成されたテーパ面によって内部ユニットが正しい位置へと案内されることにより、嵌合凹部と嵌合凸部とが確実に嵌合する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る回転機械によれば、内部ユニットを一括して交換することで容易なメンテナンスが可能であって、且つ、周囲にスペースを確保することなく内部ユニットを取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る洋上向け遠心圧縮機の構成を示す径方向断面図である。
【図2】図1におけるA方向矢視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る洋上向け遠心圧縮機のメンテナンス手順を示す説明図である。
【図4】ガイド板の内部ユニットへの取り付け状態を模式的に示す概略斜視図である。
【図5】内部ユニットとケーシングとの軸方向への位置決めを説明する概略断面図である。
【図6】第一の変形例に係る軸方向移動規制部を示す概略断面図である。
【図7】第二の変形例に係る軸方向移動規制部を示す概略断面図である。
【図8】第三の変形例に係る軸方向移動規制部を示す概略断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る洋上向け遠心圧縮機の配置例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の実施形態に係る回転機械の構成について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る回転機械としての洋上向け遠心圧縮機10を示す図であって、図1は径方向断面図、図2は図1におけるA方向矢視図である。
【0021】
洋上向け遠心圧縮機10は、図1に示すように、筐体としてのケーシング11と、このケーシング11の内部に収容された内部ユニット12と、を備えている。
【0022】
ケーシング11は、図1及び図2に示すように、略円筒形状のケーシング本体13と、このケーシング本体13の内部へ圧縮すべきガスを供給する吸込ポート14と、ケーシング本体13の内部から圧縮されたガスを排出する吐出ポート15と、を有している。
【0023】
ケーシング本体13は、図2に示すように、水平面で上下に二分割されることにより、上半部131と下半部132とを有している。そして、図1に示すように、上半部131及び下半部132の内周面には、断面略台形の嵌合凹部16(軸方向移動規制部)が、周方向に沿って延びるようにそれぞれ形成されている。この嵌合凹部16は、後述する嵌合凸部25,28と相俟ってケーシング11と内部ユニット12との相対移動を規制するものであって、軸方向に所定の間隔で複数本が形成されている。
【0024】
ここで、嵌合凹部16は、図1に拡大して示すように、径方向断面における側壁17それぞれにテーパ面18がそれぞれ形成されている。このテーパ面18は、径方向に沿って外周側から内周側に向かうに従って、軸方向への幅が徐々に広がるように形成されている。尚、嵌合凹部16の本数や隣接する嵌合凹部16の間隔等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。
【0025】
内部ユニット12は、図1に示すように、ケーシング本体13を軸方向に挿通して設けられたロータ19と、このロータ19を軸回りに回転可能に支持する軸受部20と、ロータ19の軸方向両端部を封止する一対のシール部21と、ケーシング本体13の両端開口をそれぞれ封止する一対のヘッド22と、所定幅の隙間を介してロータ19の周囲を覆う複数のダイヤフラム23と、を有している。尚、内部ユニット12は本実施形態の構成に限定されず、洋上向け遠心圧縮機10の構成要素のうち、ケーシング11を除いた他の構成要素を含んで内部ユニット12を構成してもよい。
【0026】
(ロータ)
ロータ19は、回転駆動される回転軸191の周面に、軸方向に沿って複数のインペラ192が固定されたものである。そして、このロータ19と前記ダイヤフラム23とヘッド22とによって、所定幅のガス流路193が形成されている。そして、このガス流路193の両端が、前記吸込ポート14と前記吐出ポート15に対してそれぞれ接続されている。尚、本実施形態では回転軸191の軸方向に沿って5段のインペラ192を設けているが、インペラ192の段数はこれに限られず適宜設計変更が可能である。
【0027】
(軸受部)
軸受部20は、ロータ19を構成する回転軸191を軸回りに回転可能に支持するものである。この軸受部20は、図1に示すように、ロータ19の軸方向両端部にそれぞれ設けられた一対のジャーナル軸受201と、ロータ19の軸方向一端部に設けられたスラスト軸受202と、を有している。
【0028】
一対のジャーナル軸受201は、回転軸191に作用する径方向への荷重を受ける役割を果たすものである。これらジャーナル軸受201は、ボルト等の固定手段を用いて前記一対のヘッド22の外側面にそれぞれ固定されている。
【0029】
スラスト軸受202は、回転軸191に作用する軸方向への荷重を受ける役割を果たすものである。このスラスト軸受202は、図1に示すように、箱状の軸受カバー24の内部に取り付けられ、この軸受カバー24が、ボルト等の固定手段を用いて一方のヘッド22の外側面に固定されている。
【0030】
(シール部)
一対のシール部21は、ロータ19を構成する回転軸191とヘッド22との間の隙間を封止する役割を果たすものである。これらシール部21は、いわゆるドライガスシールであって、図1に示すように、回転軸191を包囲するように環状に形成され、ボルト等の固定手段を用いて一対のヘッド22の内側面にそれぞれ固定されている。
【0031】
(ヘッド)
一対のヘッド22は、図1に示すように、略円柱形状の部材であって、その外径はケーシング本体13の両端開口と略等しく形成されている。そして、これらヘッド22に対し、ロータ19を構成する回転軸191の両端部がそれぞれ挿通される。また、これらヘッド22それぞれには、その外周面から突出して、断面略台形の嵌合凸部25(軸方向移動規制部)が、周方向に沿って延びるように形成されている。この嵌合凸部25は、前記嵌合凹部16と互いに嵌合することにより、ケーシング11と内部ユニット12との相対移動を規制するものである。
【0032】
ここで、嵌合凸部25は図1に拡大して示すように、径方向断面における側壁26それぞれにテーパ面27がそれぞれ形成されている。このテーパ面27は、嵌合凹部16のテーパ面27と同様に、径方向に沿って外周側から内周側に向かうに従って、軸方向への幅が徐々に広がるように形成されている。尚、嵌合凸部25の本数や隣接する嵌合凸部25の間隔等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。
【0033】
(ダイヤフラム)
ダイヤフラム23は、図1に示すように略円環形状の部材であって、その外周面から突出して、断面略台形の嵌合凸部28(軸方向移動規制部)が周方向に沿って延びるように形成されている。このダイヤフラム23の嵌合凸部28は、ヘッド22の嵌合凸部25と同じ形状及び機能を有するため、ここでは説明を省略する。
【0034】
そして、このダイヤフラム23は、図1に示すように、回転軸191の軸方向に沿って5個が設けられ、図に詳細は示さないが、隣接するダイヤフラム23同士が溶接によって互いに固定されている。また、一体化されたこれら5個のダイヤフラム23は、その一方の端部に位置するダイヤフラム23が、ボルト等の固定手段を用いて一方のヘッド22の内側面に固定されている。
【0035】
尚、隣接するダイヤフラム23同士の固定は、溶接に限られず、他の固定手段を用いてもよい。また、本実施形態では、インペラ192の段数に応じて5個のダイヤフラム23を設けたが、ダイヤフラム23の個数はこれに限られず適宜設計変更が可能である。
【0036】
以上により、内部ユニット12を構成するロータ19、軸受部20、シール部21、一対のヘッド22、及び5個のダイヤフラム23が、互いに固定されることにより、内部ユニット12は一体的に構成されている。
【0037】
(メンテナンス手順)
次に、本実施形態に係る洋上向け遠心圧縮機10のメンテナンス手順、及びその作用効果について説明する。図3は、本実施形態に係る洋上向け遠心圧縮機10のメンテナンス手順を示す説明図である。メンテナンスを行う作業者は、まず図2に示す状態において、ケーシング本体13を構成する上半部131と下半部132とを固定するボルト等の固定手段を取り外すことにより、上半部131と下半部132とを分離可能な状態とする。
【0038】
次に作業者は、図3(a)に示すように、上半部131にワイヤWを固定し、不図示のクレーンを使用してワイヤWを巻き上げることにより、上半部131を下半部132から分離させて上方へ吊り上げる。これにより、内部ユニット12が一部露呈した状態となる。
【0039】
次に作業者は、図3(b)に示すように、内部ユニット12の露呈した部分にワイヤWを固定し、クレーンを使用してワイヤWを巻き上げることにより、内部ユニット12を上方へ吊り上げる。これにより、内部ユニット12が下半部132から取り出される。
【0040】
次に作業者は、図3(c)に示すように、取り出した内部ユニット12に代えて、予備の内部ユニット12をケーシング11の下半部132に収容する。すなわち作業者は、まず下半部132から両側方へそれぞれ突出したフランジ132aに、棒状のガイドバー29を上方へ向かって延びるようにそれぞれ取り付ける。次に作業者は、予備の内部ユニット12の両側部に、一対のガイド板30をそれぞれ取り付ける。
【0041】
図4は、ガイド板30の内部ユニット12への取り付け状態を模式的に示す概略斜視図である。ガイド板30は、取付片301と突出片302とが略90°の角度をなす断面略L字形状の平板部材である。作業者は、このガイド板30の取付片301を予備の内部ユニット12の側部に当接させ、ボルトを用いて取付片301を内部ユニット12に固定する。これにより、図3(c)及び図4に示すように、予備の内部ユニット12の両側部から両側方へ向かって突出片302がそれぞれ突出した状態となる。
【0042】
そして作業者は、ガイド板30を取り付けた内部ユニット12にワイヤWを固定し、クレーンを使用してワイヤWを巻き上げることにより、予備の内部ユニット12を一旦吊り上げる。更に作業者は、クレーンを操作して予備の内部ユニット12を降下させ、その両側部に取り付けられた一対のガイド板30の突出片302に、一対のガイドバー29をそれぞれ挿通させる。その後、作業者がクレーンを操作して予備の内部ユニット12を更に降下させると、内部ユニット12は一対のガイドバー29に沿って降下する。
【0043】
そして作業者は、予備の内部ユニット12が下半部132の近傍まで降下すると、内部ユニット12の両側部からガイド板30をそれぞれ取り外すとともに、下半部132から一対のガイドバー29をそれぞれ取り外す。その後作業者は、内部ユニット12を下半部132の内部へと降下させる。
【0044】
ここで、図5は、予備の内部ユニット12とケーシング11との軸方向への位置決めを説明する概略断面図である。内部ユニット12を下半部132の内部へ降下させると、内部ユニット12が正しい位置から軸方向に若干位置ずれする場合がある。ここで、内部ユニット12の正しい位置とは、内部ユニット12の嵌合凸部28の第一中心線C1と下半部132の嵌合凹部16の第二中心線C2とが一致せず、図5(a)に示すように両者が軸方向に所定距離だけ離間した状態を意味する。
【0045】
この場合、図5(a)の状態から内部ユニット12を更に降下させると、図5(b)に示すように、嵌合凸部28のテーパ面27が嵌合凹部16のテーパ面18に接触する。そして、この状態から内部ユニット12が更に降下すると、嵌合凹部16のテーパ面18に沿って嵌合凸部28が斜め下方へスライドする。これに伴って、嵌合凸部28の第一中心線C1が、嵌合凹部16の第二中心線C2に対して徐々に近付いて行く。
【0046】
そして、図5(b)の状態から内部ユニット12を更に降下させると、図5(c)に示すように、嵌合凸部28の第一中心線C1が嵌合凹部16の第二中心線C2に一致する。この時、嵌合凸部28が嵌合凹部16に対して完全に嵌合する。このように、内部ユニット12が正しい位置から軸方向に位置ずれした場合でも、嵌合凹部16のテーパ面18と嵌合凸部28のテーパ面27とによって内部ユニット12が正しい位置へと案内されるので、嵌合凸部28を嵌合凹部16に確実に嵌合させることができる。これにより、洋上向け遠心圧縮機10の運転時に内部ユニット12や下半部132に対してスラスト力が作用しても、内部ユニット12と下半部132とが軸方向に相対移動することが規制される。
【0047】
最後に作業者は、図3(d)に示すように、上半部131と下半部132とを一体化させる。すなわち作業者は、前述のように分離させた上半部131にワイヤWを固定し、クレーンを使用してワイヤWを巻き上げることにより、上半部131を吊り上げる。そして、クレーンを操作して上半部131を降下させ、上半部131から両側方へ突出した一対のフランジ131aを、下半部132から両側方へ突出したフランジ132aにそれぞれ接合させる。
【0048】
この時、上半部131を降下させると、上半部131が正しい位置から軸方向に若干位置ずれする場合がある。しかし、この場合、内部ユニット12の降下時と同様に、嵌合凹部16のテーパ面18と嵌合凸部28のテーパ面27とによって上半部131が正しい位置へと案内されるので、内部ユニット12の嵌合凸部28を上半部131の嵌合凹部16に確実に嵌合させることができる。これにより、洋上向け遠心圧縮機10の運転時に内部ユニット12や上半部131に対してスラスト力が作用しても、内部ユニット12と上半部131とが軸方向に相対移動することが規制される。
【0049】
そして作業者は、図に詳細は示さないが、上半部131からワイヤWを取り外した後、ボルト等の固定手段を用いて上半部131と下半部132とを固定する。これにより、内部ユニット12を予備の内部ユニット12に交換するメンテナンスが完了する。
【0050】
(軸方向移動規制部の変形例)
尚、嵌合凹部16及び嵌合凸部28の断面形状は、本実施形態のように断面略台形に限定されず、適宜設計変更が可能である。図6は、第一の変形例に係る軸方向移動規制部40を示す概略断面図である。本変形例の嵌合凹部41及び嵌合凸部42は、本発明の実施形態に係る前記嵌合凹部16及び前記嵌合凸部28と比較すると、径方向断面における側壁43,44にテーパ面45,46がそれぞれ形成されている点で同じであるが、側壁43,44の一部にだけテーパ面45,46が形成されている点で異なっている。より詳細には、本変形例の嵌合凹部41及び嵌合凸部42は、嵌合凹部41の開口縁部及び嵌合凸部42の基端部にだけテーパ面45,46がそれぞれ形成されている。従って、嵌合凹部41の底部には、底面411に垂直な垂直部412が形成されている。また、嵌合凸部42の先端部には、天面421に垂直な垂直部422が形成されている。このような構成によれば、テーパ面45,46の存在によって嵌合凹部41及び嵌合凸部42の機能が損なわれることを最低限に抑え、スラスト力の作用に起因した内部ユニット12及びケーシング11の軸方向への相対移動を、垂直部と垂直部の接合によって確実に規制することができる。
【0051】
図7は、第二の変形例に係る軸方向移動規制部50を示す概略断面図である。本変形例の嵌合凹部51及び嵌合凸部52は、第一の変形例の嵌合凹部41及び嵌合凸部42と比較すると、スラスト力の作用方向に向かって後方側の側壁53,54にのみテーパ面55,56が形成され、前方側の側壁57,58には形成されていない点で異なっている。このような構成によれば、テーパ面55,56の存在に拘らず嵌合凹部51及び嵌合凸部52の機能が損なわれることがなく、スラスト力の作用に起因した内部ユニット12とケーシング11との軸方向への相対移動を、前方側の側壁57,58の接合によって確実に規制することができる。
【0052】
図8は、第三の変形例に係る軸方向移動規制部60の嵌合凹部61を示す概略断面図である。本変形例の嵌合凹部61は、本発明の実施形態に係る前記嵌合凹部16及び前記嵌合凸部28と比較すると、嵌合凹部61において、図2に示すケーシング11の上半部131と下半部132との接合部近傍(図8では下半部132のみを示す)の一部にだけテーパ面63が形成されている点で異なっている。このような構成によれば、内部ユニット12をケーシング11に装着する際に内部ユニット12が正しい位置から軸方向に若干位置ずれした場合、嵌合凹部61と嵌合凸部62とが最初に嵌合し始める位置である上半部131と下半部132との接合部近傍において、テーパ面63によって内部ユニット12が正しい位置へと案内される。従って、接合部近傍から離れた位置において嵌合凹部61と嵌合凸部62が嵌合し始める時には、内部ユニット12は既に正しい位置に存在し、テーパ面63が形成されていなくても嵌合凹部61と嵌合凸部62とが確実に嵌合する。
【0053】
(その他の変形例)
尚、本実施形態では洋上向け遠心圧縮機10について説明したが、本発明に係る回転機械はこれに限られず、周囲に十分なスペースを確保することができない狭小な場所で使用する回転機械であればよい。
【0054】
また、本実施形態ではヘッド22とダイヤフラム23に嵌合凸部25,28を形成したが、これに限られず、内部ユニット12を構成する他の部材に嵌合凸部25,28を形成してもよい。
【0055】
また、本実施形態ではケーシング11に嵌合凹部16を内部ユニット12に嵌合凸部25,28をそれぞれ形成したが、これとは逆に、ケーシング11に嵌合凸部25,28を内部ユニット12に嵌合凹部16をそれぞれ形成してもよい。
【0056】
(配置例)
次に、本発明の実施形態に係る洋上向け遠心圧縮機10の配置例について説明する。図9は、本実施形態に係る洋上向け遠心圧縮機10の配置例を示す概略平面図である。洋上向け遠心圧縮機10は、圧縮比の低い低圧用であって、圧縮機駆動用の蒸気タービン70と、圧縮比が高い高圧圧縮機71との間の狭小な空間に配置される。このような配置によれば、洋上向け遠心圧縮機10の片側には蒸気タービン70が、もう片側には高圧圧縮機71が位置しているため、内部ユニット12をケーシング11の側方へ抜き出すスペースを確保することができない。しかし、洋上向け遠心圧縮機10は、ケーシング11が上下二分割に構成されるとともに、ケーシング11以外の構成要素が内部ユニット12して一体化されている。従って、前述のように内部ユニット12を上方へ吊り上げて予備の内部ユニット12に交換することにより、メンテナンスを容易に行うことができる。尚、このような効果は、ケーシング11の嵌合凹部16や内部ユニット12の嵌合凸部28にテーパ面18,27が形成されていなくても得られるものである。
【0057】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 洋上向け遠心圧縮機
11 ケーシング
12 内部ユニット
13 ケーシング本体
131 上半部
131a フランジ
132 下半部
132a フランジ
14 吸込ポート
15 吐出ポート
16 嵌合凹部
17 側壁
18 テーパ面
19 ロータ
191 回転軸
192 インペラ
193 ガス流路
20 軸受部
201 ジャーナル軸受
202 スラスト軸受
21 シール部
22 ヘッド
23 ダイヤフラム
24 軸受カバー
25 嵌合凸部
26 側壁
27 テーパ面
28 嵌合凸部
29 ガイドバー
30 ガイド板
301 取付片
302 突出片
40 軸方向移動規制部
41 嵌合凹部
411 底面
412 垂直部
42 嵌合凸部
421 天面
422 垂直部
43 側壁
44 側壁
45 テーパ面
46 テーパ面
50 軸方向移動規制部
51 嵌合凹部
52 嵌合凸部
53 側壁
54 側壁
55 テーパ面
56 テーパ面
57 側壁
58 側壁
60 軸方向移動規制部
61 嵌合凹部
62 嵌合凸部
63 テーパ面
70 蒸気タービン
71 高圧圧縮機
C1 第一中心線
C2 第二中心線
W ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下二分割に構成されて上側の上半部と下側の下半部とを有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に配設され、少なくとも、軸回りに回転可能なロータ、前記ロータを回転可能に支持する軸受部、及び前記ロータを回転可能にロータの周面との間を封止する環状のシール部が一体的に構成された内部ユニットと、を備え、
前記ケーシングと前記内部ユニットの一方に設けられた嵌合凹部と、他方に設けられ、前記嵌合凹部に嵌合する嵌合凸部とを少なくとも一組有し、前記ケーシングと前記内部ユニットとの軸方向の相対移動を規制する軸方向移動規制部と、を備え、
前記嵌合凹部と前記嵌合凸部には、径方向内周側に向かうに従って軸方向に幅広となるようにテーパ面が形成されていることを特徴とする回転機械。
【請求項2】
前記テーパ面が、前記嵌合凹部及び前記嵌合凸部の径方向断面それぞれにおいて、前記内部ユニットに作用するスラスト力の作用方向に向かって後方側の側壁にのみ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記テーパ面が、前記嵌合凹部及び前記嵌合凸部のそれぞれにおいて、前記ケーシングの上半部と下半部との接合部近傍の一部にのみ形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機械。
【請求項4】
上下二分割に構成されて上側の上半部と下側の下半部とを有するケーシングの内部に配設され、少なくとも、軸回りに回転可能なロータ、前記ロータを回転可能に支持する軸受部、及び前記ロータを回転可能にロータの周面との間を封止する環状のシール部が一体的に構成された回転機械の内部ユニットであって、
前記ケーシングと前記内部ユニットの一方に設けられた嵌合凹部と、他方に設けられ、前記嵌合凹部に嵌合する嵌合凸部とを少なくとも一組有し、前記ケーシングと前記内部ユニットとの軸方向の相対移動を規制する軸方向移動規制部と、を備え、
前記嵌合凹部と前記嵌合凸部には、径方向内周側に向かうに従って軸方向に幅広となるようにテーパ面が形成されていることを特徴とする回転機械の内部ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72356(P2013−72356A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211928(P2011−211928)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(310010564)三菱重工コンプレッサ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】