説明

回転機構

【課題】正方形状をなす回転機構を提供する。
【解決手段】所定の固定中心線Pと、固定中心線Pに対して平行に設けてあって当該固定中心線Pを中心とした回転移動する態様で設けた移動中心線Gと、移動中心線Gを中心に回転可能に設けた羽根部材6と、固定中心線Pの周りに移動中心線Gを1回転させつつ、当該移動中心線Gの1回転に対して羽根部材6を逆方向に1/3回転させる駆動手段とを備え、移動中心線Gから垂直方向に所定長さ[L]で延在してあって移動中心線Gを中心に120°間隔で設けた基準線61と、基準線61の延在端Tの間を繋ぐ態様で設けてあって各基準線61間の角度の中央を[θ=0]とした移動中心線Gから垂直方向の距離[S]を特定の条件式に基づいて規定した外形線62とで羽根部材6を形成し、さらに固定中心線Pと移動中心線Gと間の距離を[L/3]と設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正方形状の軌跡をなす回転機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な掘削機は、回転機構によってカッタヘッドを回転させて当該カッタヘッドで地盤を掘削するものが知られている。このような掘削機は、カッタヘッドが所定の中心を以て回転することから必然的に断面形状が円形になる。しかし、鉄道や道路などのトンネル利用空間においては、必要とされる断面形状が非円形状であることが多い。よって、上記円形の掘削断面内に非円形状とした鉄道や道路などの空間を構築することになる。このため、利用空間以上の掘削を行うことになるので、用地面積が多く必要となることに加えて建設費が嵩むという問題がある。
【0003】
従来、例えばルーロー三角形なるルーロー三角形回転体に切削用バイトを設け、当該ルーロー三角形回転体を回転することで、被加工物に正方形状の穴明けを行う正方形穴明け加工装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
他に、加工部材をその中心周りに回転自在に加工部材自転支持装置に取り付け、当該加工部材自転支持装置を加工部材公転支持装置に取り付けた掘削機がある。加工部材には、中心と同芯状のほぼ正三角形の各頂点とその内方に掘削刃を設けて掘削作用面が形成してある。加工部材自転支持装置は、加工部材を前記正三角形の一辺の((1/2)/cos30°−(1/2))倍の半径で中心が回転するように加工部材公転支持装置に取り付けてある。そして、加工部材を自転させながらその自転方向とは逆の方向に3倍公転させる駆動手段を設けてある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また他に、正三角形の各頂点を中心とし、その一辺の長さを半径とする円弧を各対辺の外側に描き、これらの3つの円弧により囲まれたルーロー三角形を外形とするカッタを、矩形状スキンプレートの中心軸の回りに公転させながら自転させて掘削する矩形シールド工法がある。スキンプレートの中心軸に対するカッタの回転軸の偏芯距離は、(L/2)/cos30°−(L/2)を満足するように設定してある(L:ルーロー三角形の頂点間の距離)。なお、カッタの公転数は自転数の3倍で、公転方向と自転方向が逆方向である(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−267950号公報
【特許文献2】特開平1−158196号公報
【特許文献3】特許第2926125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の回転機構では、ルーロー三角形をその重心を中心として回転させ、かつルーロー三角形の重心を加工する正方形状の中心の周りに公転させる。しかし、このような構成で加工された孔断面は、正方形状の角部が丸みを帯びた断面であって完全な正方形断面にはなっていない。このため、加工した孔断面を正方形断面とするようにさらに加工する必要がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、正方形状をなす回転機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る回転機構は、所定の固定中心線と、前記固定中心線に対して平行に設けてあって当該固定中心線を中心として回転移動する態様で設けた移動中心線と、前記移動中心線を中心に回転可能に設けた羽根部材と、前記固定中心線の周りに前記移動中心線を1回転させつつ、当該移動中心線の1回転に対して前記羽根部材を逆方向に1/3回転させる駆動手段とを備え、移動中心線から垂直方向に所定長さ[L]で延在してあって移動中心線を中心に120°間隔で設けた基準線と、当該基準線の延在端の間を繋ぐ態様で設けてあって各基準線間の角度の中央を[θ=0]とした移動中心線から垂直方向の距離[S]を下記式(1)
【数1】

に基づいて規定した外形線とで羽根部材を形成し、前記固定中心線と移動中心線との間の距離を[L/3]と設定したことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る回転機構は、所定の固定中心線を中心とした環状の内周部を有する固定の軸受と、前記固定中心線に平行な移動中心線を中心とした内周部および外周部を有して環状に形成してあってその外周部を前記軸受の内周部に当接係合して前記軸受に内装した環状軸と、前記固定中心線を回転中心として回転可能に設けてあって前記環状軸の内周部に対して自身の外周部を当接係合した回転軸と、前記回転軸の外周部と前記環状軸の内周部との係合を保持するとともに前記軸受の内周部と前記環状軸の外周部との係合を保持する保持部材と、前記回転軸を回転駆動する駆動部と、前記環状軸に固定した羽根部材とを備え、移動中心線から垂直方向に所定長さ[L]で延在してあって移動中心線を中心に120°間隔で設けた基準線と、当該基準線の延在端の間を繋ぐ態様で設けてあって各基準線間の角度の中央を[θ=0]とした移動中心線から垂直方向の距離[S]を下記式(2)
【数2】

に基づいて規定した外形線とで羽根部材を形成し、前記固定中心線と移動中心線との間の距離を[L/3]と設定し、前記軸受の内周部の径を[8・L/3]と設定し、前記環状軸の外周部の径を[6・L/3]と設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転運動に基づいた羽根部材の移動軌跡によってほぼ完全な正方形状を描くことが可能になる。この結果、例えば清掃機、表面処理機、掘削(切削)機、攪拌機など様々な用途に適用した場合に、角部の処理に対応できるので、作業を確実かつ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る回転機構の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明に係る回転機構を示す概略側断面図、図2は図1に示す回転機構を軸方向(前方向)から視た概念図である。ここで示す回転機構は、軸受1、環状軸2、回転軸3、保持部材4、駆動部5および羽根部材6を有している。
【0014】
軸受1は、駆動手段を構成し、本回転機構の基部100に固定してあり、基部100の前後方向に沿って配置した所定の固定中心線Pを中心として環状の内周部11を有している。
【0015】
環状軸2は、駆動手段を構成し、固定中心線Pと平行にして基部100の前後方向に沿って配置した所定の移動中心線Gを中心とした内周部21および外周部22を有してほぼ円環状に形成してある。この環状軸2は、軸受1の環状内に内装してあり、その外周部22を軸受1の内周部11に対して当接係合してある。なお、環状軸2は、内周部21および外周部22を一体に有した環状体、あるいは内周部21を有した管体と外周部22を有した管体とを組み合わせた構成とすることができる。
【0016】
回転軸3は、駆動手段を構成し、軸受1の固定中心線Pを回転中心として回転可能に基部100に支持してある。この回転軸3は、環状軸2の環状内に内装してあり、ほぼ円柱状の外周部31を環状軸2の内周部21に対して当接係合してある。
【0017】
保持部材4は、駆動手段を構成し、第一保持部41と第二保持部42とを有している。第一保持部41は、環状軸2の内周とほぼ同じ外周を有して所定厚さの円板状に形成してあり、環状軸2の内周に摺接して移動中心線Gを中心に回転する態様で環状軸2に内装してある。また、第一保持部41には、固定中心線Pを中心として回転軸3の外周とほぼ同じ内周を有した挿通孔411が偏芯して設けてある。この挿通孔411には、回転軸3が回転可能に挿通支持してある。すなわち、第一保持部41は、回転軸3を回転可能に挿通支持して回転軸3の外周部31と環状軸2の内周部21との係合を常に保持するものである。
【0018】
一方、第二保持部42は、軸受1の内周とほぼ同じ外周を有して所定厚さの円板状に形成してあり、軸受1の内周に摺接して固定中心線Pを中心に回転する態様で軸受1に内装してある。また、第二保持部42には、移動中心線Gを中心として環状軸2の外周とほぼ同じ内周を有した挿通孔421が偏芯して設けてある。この挿通孔421には、環状軸2が回転可能に挿通支持してある。すなわち、第二保持部42は、環状軸2を回転可能に挿通支持して環状軸2の外周部22と軸受1の内周部11との係合を常に保持するものである。
【0019】
駆動部5は、駆動手段を構成し、回転軸3を回転させるものであり、例えばモータなど基部100に設けた駆動源からなる。なお、駆動部5は、図には明示しないが回転軸3との間に適宜減速機構を有していてもよい。
【0020】
なお、軸受1と環状軸2との係合、環状軸2と回転軸3との係合には、例えば歯車の噛合による係合がある。あるいは、高摩擦材などを介して接触滑りが防止された係合であってもよい。
【0021】
羽根部材6は、環状軸2の前方に固定してある。具体的には、環状軸2の前側に円板状の取付台7が固定してあり、羽根部材6は当該取付台7の前面に移動中心線Gに沿って前方に延在して固定してある。羽根部材6は、環状軸2とともに移動中心線Gを中心として回転可能に設けてある。この羽根部材6は、図2に示す前面視で、移動中心線Gから垂直に所定長さで延在してあって移動中心線を中心に120°間隔で設けた3つの基準線61を有し、当該基準線61の延在端Tの間を繋ぐ態様で設けた外形線62からなる外形をなしている。すなわち、羽根部材6は、その重心(中心)を移動中心線Gの上に置いて設けてある。
【0022】
ここで、上記軸受1、環状軸2および羽根部材6に係る寸法設定について説明する。図2に示すように、回転軸3の中心(固定中心線P)から羽根部材6の重心(移動中心線G)に至る距離(偏芯量)を[r]として、環状軸2の外周部22の直径D1を[6r]、軸受1の内周部11の直径D2を[8r]と設定してある。さらに、偏芯量[r]は、羽根部材6の基準線61の移動中心線Gから延在端Tに至る延在長さ[L]の1/3に設定してある。そして、上記回転機構では、駆動手段において、駆動部5によって回転軸3を回転駆動させる。すると、この回転軸3の回転により環状軸2(移動中心線G)が羽根部材6を伴って固定中心軸Pの周りに回転移動(公転)し、同時に環状軸2が軸受1との係合によって移動中心線Gを中心にして公転と逆方向に羽根部材6が回転する。さらに、上記回転機構は、環状軸2の外周部22の直径D1と、軸受1の内周部11の直径D2との比を3:4としてあるため、環状軸2(移動中心線G)が羽根部材6を伴って固定中心軸Pの周りに1回転移動(公転)すると、同時に移動中心線Gを中心にして公転と逆方向に羽根部材6が1/3回転することになる。
【0023】
すなわち、図3に示すように羽根部材6における基準線61の延在端Tの軌跡がアステロイド曲線(内サイクロイド)となる。このアステロイド曲線は、図3で示す直交座標系の方程式として下記式(3)であらわすことができる。
【0024】
【数3】

【0025】
上記式(3)での[c]は、固定中心線Pから基準線61の延在端Tまでの長さである。また、これをパラメータ表示とすると下記式(4)であらわすことができる。
【0026】
【数4】

【0027】
具体的に、図4に示すように羽根部材6の座標系で基準線61の1つを垂直から45°傾けた場合について定式化すると下記式(5)のようになる。
【0028】
【数5】

【0029】
これを下記式(6)〜式(8)のごとく整理する。
【0030】
【数6】

【0031】
【数7】

【0032】
【数8】

【0033】
これは、回転中心(固定中心線P)からの最大長さが[4L/3]のアステロイドである。
【0034】
ところで、上記アステロイド曲線では、図3に示すように正方形の各辺が凹んだ形状となる。そこで、羽根部材6において、基準線61の延在端Tの間を繋ぐ外形線62を凸形状することで、外形線62をなす点の軌跡を加えて凹みに対処する。
【0035】
基準線61の延在端Tがアステロイドの隣接する頂点間を90°移動する際、羽根部材6は、自転と公転を合わせて120°回転する。すなわち、基準線61の延在端Tを繋ぐ三角形上に固定された座標系からみた場合、固定座標系での回転量は3/4倍になる。そして、図2に示すように、移動中心線Gから外形線62に至る距離[S]の点[A]、移動中心線G、固定中心線Pが、この順で直線上に並んだときには、固定中心線Pから点[A]が最も遠く、ここで正方形の辺に接することになる。これは、図5に示すように移動中心線Gから点[A]までの距離[S]が不変ということであって、下記式(9)であらわされる。
【0036】
【数9】

【0037】
上記式(9)において、θ=60°、S=Lである場合では、下記式(10)により、下記式(11)が得られることになる。
【0038】
【数10】

【0039】
【数11】

【0040】
具体的に、羽根部材6の1つの外形線62の形状を、移動中心線Gを原点とした直交座標で表すと、−60°≦θ≦60°の範囲において下記式(12)のようにあらわすことができる。
【0041】
【数12】

【0042】
上記式(12)によって羽根部材6の各外形線62について計算をし、羽根部材6の外形を規定する。そして、移動中心線Gから基準線61の延在端Tまでの長さを[L=3]としたときの結果を図6に示す。ここでは、ルーロー三角形を一点鎖線にてあらわしている。本実施の形態における羽根部材6は、差し渡し長さが一定のルーロー三角形と比較して、外形(外形線62)の外への膨らみが小さく、正三角形に近づいている。また、羽根部材6の頂部の角度は90°であり、ルーロー三角形(120°)と異なる。
【0043】
すなわち、上記構成の回転機構では、駆動部5の駆動力を回転軸3に伝達することによって、回転軸3が軸受1の固定中心線Pを中心として回転(例えば図2における反時計回り方向)する。すると、回転軸3の外周部31に係合する環状軸2が移動中心線Gを中心として回転軸3と同方向(例えば図2における反時計回り方向)に回転する。すると、環状軸2は、回転軸3の回転に伴って、保持部材4(第一保持部41)に保持された形態で移動中心線Gを中心として回転する。さらに、移動中心線Gを中心として回転する環状軸2は、その外周部22が軸受1の内周部11に係合し、この係合が保持部材4(第二保持部42)によって保持された形態で、軸受1の内周部11に沿って固定中心線Pの周りに回転軸3と逆方向(例えば図2における時計回り方向)に輪転運動(公転)することになる。このため、環状軸2に設けた羽根部材6は、環状軸2の輪転運動に伴って自転および公転移動する。移動する羽根部材6は、図2に一点鎖線で示す正方形状の軌跡をなす。
【0044】
具体的には、図7〜図15に示すように環状軸2が固定中心線Pを中心に1回転公転すると、当該環状軸2は移動中心線Gを中心に1/3自転する。ここで、羽根部材6は、基準線61の延在端である頂点T1,T2,T3を有し、図7示すように移動中心線Gから外形線62に至る距離[S]の点[A]、移動中心線G、固定中心線Pが、この順で直線上に並んだ状態で、頂点T3と頂点T1との間の外形線62の中央(距離Sが最短の点)が正方形の辺の中央に接している。
【0045】
この図7の状態から図8の状態、すなわち環状軸2が固定中心線Pを中心に45°公転しつつ移動中心線Gを中心に15°自転すると、羽根部材6の頂点T1が正方形の角部頂点に至り移動する。これにより、上記外形線62の中央から頂点T1に至る範囲によって図8に太線で示すように正方形状の辺の中央から角部頂点に至る範囲が描かれる。
【0046】
次いで、図8の状態から図9の状態、すなわち環状軸2が固定中心線Pを中心に45°さらに公転しつつ移動中心線Gを中心に15°さらに自転すると、羽根部材6の頂点T1と頂点T2との間の外形線62の中央が正方形の次の辺の中央に接するまで移動する。これにより、頂点T1から外形線62の中央に至る範囲によって図9に太線で示すように正方形の角部頂点から次の辺の中央に至る範囲が描かれる。
【0047】
次いで、図9の状態から図10の状態、すなわち環状軸2が固定中心線Pを中心に45°さらに公転しつつ移動中心線Gを中心に15°さらに自転すると、羽根部材6の頂点T2が正方形の次の角部頂点に至り移動する。これにより、外形線62の中央から頂点T2に至る範囲によって図10に太線で示すように正方形状の次の辺の中央から次の角部頂点に至る範囲が描かれる。
【0048】
次いで、図10の状態から図11の状態、すなわち環状軸2が固定中心線Pを中心に45°さらに公転しつつ移動中心線Gを中心に15°さらに自転すると、羽根部材6の頂点T2と頂点T3との間の外形線62の中央(距離Sが最短の点)が正方形の次の辺の中央に接するまで移動する。これにより、頂点T2から外形線62の中央に至る範囲によって図11に太線で示すように正方形の次の角部頂点から次の辺の中央に至る範囲が描かれる。
【0049】
次いで、図11の状態から図12の状態、すなわち環状軸2が固定中心線Pを中心に45°さらに公転しつつ移動中心線Gを中心に15°さらに自転すると、羽根部材6の頂点T3が正方形の次の角部頂点に至り移動する。これにより、外形線62の中央から頂点T3に至る範囲によって図12に太線で示すように正方形状の次の辺の中央から次の角部頂点に至る範囲が描かれる。
【0050】
次いで、図12の状態から図13の状態、すなわち環状軸2が固定中心線Pを中心に45°さらに公転しつつ移動中心線Gを中心に15°さらに自転すると、羽根部材6の頂点T3と頂点T1との間の外形線62の中央(距離Sが最短の点)が正方形の次の辺の中央に接するまで移動する。これにより、頂点T3から外形線62の中央に至る範囲によって図13に太線で示すように正方形の次の角部頂点から次の辺の中央に至る範囲が描かれる。
【0051】
次いで、図13の状態から図14の状態、すなわち環状軸2が固定中心線Pを中心に45°さらに公転しつつ移動中心線Gを中心に15°さらに自転すると、羽根部材6の頂点T1が正方形の次の角部頂点に至り移動する。これにより、外形線62の中央から頂点T1に至る範囲によって図14に太線で示すように正方形状の次の辺の中央から次の角部頂点に至る範囲が描かれる。
【0052】
次いで、図14の状態から図15の状態、すなわち環状軸2が固定中心線Pを中心に45°さらに公転(図7の状態から360°公転)しつつ移動中心線Gを中心に15°さらに自転(図7の状態から120°自転)すると、羽根部材6の頂点T1と頂点T2との間の外形線62の中央(距離Sが最短の点)が正方形の次の辺の中央に接するまで移動する。これにより、頂点T1から外形線62の中央に至る範囲によって図15に太線で示すように正方形の次の角部頂点から次の辺の中央に至る範囲が描かれる。
【0053】
すなわち、環状軸2が固定中心線Pを中心に360°公転しつつ移動中心線Gを中心に120°自転すると、羽根部材6が移動し、この移動に伴って正方形状が描かれることになる。この正方形状は、羽根部材6の頂点T1,T2,T3が上述したアステロイド曲線をなす駆動手段の構成、および羽根部材6の外形線62の形状によって、完全な正方形状と言えるほどの正方形状Hを描くことが可能である。
【0054】
この回転機構では、図16に示すように羽根部材6を、移動中心線Gを中心に自転させながら固定中心線Pを中心に逆方向に公転させることで、辺長[a]が下記式(13)の正方形を描くことが可能になる。
【0055】
【数13】

【0056】
そして、図17に示すように羽根部材6の外形線62上の、移動中心線Gから距離[S]の点[A]の軌跡は、移動中心線Gと外形線62の中央とを結ぶ直線と、移動中心線Gと点[A]とを結ぶ直線とのなす角度をθとすると、羽根部材6の頂点間(−60°≦θ≦60°)の範囲において、下記式(14)のように求められる。
【0057】
【数14】

【0058】
なお、羽根部材6の頂点Tの1つ、固定中心線P、移動中心線Gが、この順で直線上に並んだ直線方向であって、当該直線に垂直に正方形状の辺が描かれるため、描く正方形状の向きを必要に応じて合わせればよい。
【0059】
このように、上述した回転機構は、所定の固定中心線Pと、固定中心線Pに対して平行に設けてあって当該固定中心線Pを中心として回転移動する態様で設けた移動中心線Gと、移動中心線Gを中心に回転可能に設けた羽根部材6と、固定中心線Pの周りに移動中心線Gを1回転させつつ、移動中心線Gの1回転に対して羽根部材6を逆方向に1/3回転させる駆動手段とを備えている。そして、羽根部材6は、移動中心線Gから垂直方向に所定長さ[L]で延在してあって移動中心線Gを中心に120°間隔で設けた基準線61を有し、固定中心線Pと移動中心線Gとの間の距離(偏芯量)を[L/3]と設定してある。さらに、羽根部材6は、基準線61の延在端Tの間を繋ぐ態様で設けてあって各基準線61間の角度の中央を[θ=0]とした移動中心線Gから垂直方向の距離[S]を上記式(11)に基づいて規定した外形線62を有している。
【0060】
この回転機構を具体的にすると、所定の固定中心線Pを中心とした環状の内周部11を有する固定の軸受1と、固定中心線Pに平行な移動中心線Gを中心とした内周部21および外周部22を有して環状に形成してあってその外周部22を軸受1の内周部11に当接係合して軸受1に内装した環状軸2と、固定中心線Pを回転中心として回転可能に設けてあって環状軸2の内周部21に対して自身の外周部31を当接係合した回転軸3と、回転軸3の外周部31と環状軸2の内周部21との係合を保持するとともに軸受1の内周部11と環状軸2の外周部22との係合を保持する保持部材4と、回転軸3を回転駆動する駆動部5と、環状軸2に固定した羽根部材6とを備えている。そして、羽根部材は、移動中心線Gから垂直方向に所定長さ[L]で延在してあって移動中心線Gを中心に120°間隔で設けた基準線61を有し、固定中心線Pと移動中心線Gとの間の距離(偏芯量)を[L/3]と設定してある。さらに、羽根部材6は、基準線61の延在端Tの間を繋ぐ態様で設けてあって各基準線61間の角度の中央を[θ=0]とした移動中心線Gから垂直方向の距離[S]を上記式(11)に基づいて規定した外形線62を有している。またさらに、軸受1の内周部11の径を[8・L/3]と設定し、環状軸2の外周部22の径を[6・L/3=2L]と設定してある。
【0061】
したがって、上述した回転機構によれば、回転運動に基づいた羽根部材6の移動軌跡によってほぼ完全な正方形状を描くことが可能になる。この回転機構の適用例としては、清掃機、表面処理機、掘削(切削)機、攪拌機などがある。
【0062】
掃除機としては、羽根部材6の少なくとも基準線61上および外形線62上に刷毛機能を設けた掃き掃除、羽根部材6の少なくとも基準線61上および外形線62上に吸引機能を設けた吸引掃除、羽根部材6の少なくとも基準線61上および外形線62上に拭き取り機能を設けた拭き掃除がある。すなわち、建物の床、壁、天井、窓ガラスなどの角部にまで対応して掃除を行うことが可能である。さらに、掃除機として車両の窓ガラスに設けるワイパーにも適用できる。
【0063】
また、表面処理機としては、羽根部材6の少なくとも基準線61上および外形線62上に研磨機能や塗装機能を設ければ、各所角部にまで対応してコーティングや塗装を行うことが可能である。さらに表面処理機として建設工事での床コンクリート打設後に行うコテ均しも適用できる。
【0064】
掘削(切削)機としては、羽根部材6の基準線61上、外形線62上および羽根部材6の外周にカッタを設けて、正方形状の穴の掘削や切削、正方形状の連続加工によるほぞ溝の加工に適用できる。なお、カッタは、羽根部材6の基準線61上に設ける場合には羽根部材6の回転方向に有効となるように、例えば回転方向に向けて斜めに配置する。さらに、カッタは、羽根部材6の外周に設ける場合には回転の放射方向に有効となるように、例えば放射方向に向けて斜めに配置する。また、カッタは、外形線62上に設ける場合には羽根部材6の回転方向および回転の放射方向に有効となるように、例えば回転方向および放射方向に向けて斜めに配置する。
【0065】
攪拌機としては、正方形断面の容器内の液体などにおいて容器内全体の攪拌を行うことが可能である。
【0066】
このように上述した回転機構は、ほぼ完全な正方形状を描くことが可能であるため、様々な用途に適用した場合に、角部の処理に対応できるので、作業を確実かつ迅速に行うことが可能になる。
【0067】
なお、上記回転機構の係合を歯車による噛合にした場合、羽根部材6を固定した環状軸2の外周部22の歯車と、軸受1の内周部11の歯車とが噛み合う。ここで、羽根部材6の自転:公転を1:−3の比にするため、外周部22の歯数:内周部11の歯数を3:4にする。この際、互いの歯車の大きさが異なるため、本実施の形態では保持部材4を用いることで安定した噛み合わせを実現している。
【0068】
また、羽根部材6の中心である移動中心線Gは、駆動軸となる回転軸3の中心である固定中心線Pから偏芯している。本実施の形態では、保持部材4(第二保持部42)が移動中心線Gの偏芯方向に対して逆方向に偏芯しているため、この第二保持部42の重量を利用して重量偏芯を低減して振動を抑えることが可能である。
【0069】
また、図1に示すように回転軸3の外周に溝32を設けてこの溝32に係合する爪23を環状軸2に設けたり、軸受1の前端縁に環状軸2の前端に係合する爪12を設けたりすることで、各中心線P,Gに沿う方向や各中心線P,Gに交わる方向のズレやガタを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る回転機構を示す概略側断面図である。
【図2】図1に示す回転機構を軸方向(前方向)から視た概念図である。
【図3】羽根部材の頂点の軌跡を示す概念図である。
【図4】羽根部材の頂点の軌跡の座標系を示す図である。
【図5】羽根部材の外形線の座標系を示す図である。
【図6】羽根部材の外形を示す概念図である。
【図7】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図8】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図9】図2に示す回転機構を説明する概念図である。
【図10】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図11】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図12】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図13】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図14】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図15】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図16】本発明に係る回転機構によって描かれる正方形状を示す概念図である。
【図17】羽根部材の外形線の軌跡の座標系を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 軸受
11 内周部
12 爪
2 環状軸
21 内周部
22 外周部
23 爪
3 回転軸
31 外周部
32 溝
4 保持部材
41 第一保持部
411 挿通孔
42 第二保持部
421 挿通孔
5 駆動部
6 羽根部材
61 基準線
62 外形線
7 取付台
100 基部
G 移動中心線
P 固定中心軸
T(T1,T2,T3) 延在端(頂点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の固定中心線と、
前記固定中心線に対して平行に設けてあって当該固定中心線を中心として回転移動する態様で設けた移動中心線と、
前記移動中心線を中心に回転可能に設けた羽根部材と、
前記固定中心線の周りに前記移動中心線を1回転させつつ、当該移動中心線の1回転に対して前記羽根部材を逆方向に1/3回転させる駆動手段と
を備え、
移動中心線から垂直方向に所定長さ[L]で延在してあって移動中心線を中心に120°間隔で設けた基準線と、当該基準線の延在端の間を繋ぐ態様で設けてあって各基準線間の角度の中央を[θ=0]とした移動中心線から垂直方向の距離[S]を下記式(1)
【数1】

に基づいて規定した外形線とで羽根部材を形成し、
前記固定中心線と移動中心線との間の距離を[L/3]と設定した
ことを特徴とする回転機構。
【請求項2】
所定の固定中心線を中心とした環状の内周部を有する固定の軸受と、
前記固定中心線に平行な移動中心線を中心とした内周部および外周部を有して環状に形成してあってその外周部を前記軸受の内周部に当接係合して前記軸受に内装した環状軸と、
前記固定中心線を回転中心として回転可能に設けてあって前記環状軸の内周部に対して自身の外周部を当接係合した回転軸と、
前記回転軸の外周部と前記環状軸の内周部との係合を保持するとともに前記軸受の内周部と前記環状軸の外周部との係合を保持する保持部材と、
前記回転軸を回転駆動する駆動部と、
前記環状軸に固定した羽根部材と
を備え、
移動中心線から垂直方向に所定長さ[L]で延在してあって移動中心線を中心に120°間隔で設けた基準線と、当該基準線の延在端の間を繋ぐ態様で設けてあって各基準線間の角度の中央を[θ=0]とした移動中心線から垂直方向の距離[S]を下記式(2)
【数2】

に基づいて規定した外形線とで羽根部材を形成し、
前記固定中心線と移動中心線との間の距離を[L/3]と設定し、
前記軸受の内周部の径を[8・L/3]と設定し、
前記環状軸の外周部の径を[6・L/3]と設定した
ことを特徴とする回転機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−327278(P2007−327278A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160188(P2006−160188)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】