回転状態検出方法および装置
【課題】術具の回転状態を一目で把握でき、術具の操作を容易にするとともに、安全性を向上する。
【解決手段】医療用内視鏡システムの挿入手段3には、内視鏡レンズ6を設けた内視鏡挿入部2'と、術具部4を設けた可撓伝達部1'を内挿し、可撓伝達部1'の他端には術具部4を操作する操作端1を設けている。可撓伝達部1'の術具側には三角形など連続した模様のマーカ5が周方向に1回り分、設けてある。内視鏡2は術具部4の画像と共にマーカ画像を読み取り、画像処理装置8はマーカ画像を画像処理して基準位置からの回転角を求め、その回転角に応じた矢印を術具画像に付与して表示する。術具部4の可撓伝達部1'に捩れが生じても、一目で術具の動作方向を認識できるので、操作が容易になる。
【解決手段】医療用内視鏡システムの挿入手段3には、内視鏡レンズ6を設けた内視鏡挿入部2'と、術具部4を設けた可撓伝達部1'を内挿し、可撓伝達部1'の他端には術具部4を操作する操作端1を設けている。可撓伝達部1'の術具側には三角形など連続した模様のマーカ5が周方向に1回り分、設けてある。内視鏡2は術具部4の画像と共にマーカ画像を読み取り、画像処理装置8はマーカ画像を画像処理して基準位置からの回転角を求め、その回転角に応じた矢印を術具画像に付与して表示する。術具部4の可撓伝達部1'に捩れが生じても、一目で術具の動作方向を認識できるので、操作が容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像で捉えた物体の回転状態を検出する方法に関し、特に術者の手元操作端と術具との回転状態に捩れが生じている場合に、画面上の術具の回転状態と操作端の回転方向を対応付ける回転状態検出方式に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床現場で用いる医療用マニュピュレータの従来技術として、特許文献1に示すように、ワイヤ駆動方式関節部を持つ手術具について、手元操作部とハンドル部を上、下動作することにより先端関節部を下、上動作させ、また手元操作部とハンドル部を左、右動作することにより先端関節部を右、左動作させ、操作部を開、閉動作させることにより先端関節部を開、閉動作させて、位置及び姿勢を操作される多自由度鉗子に対して擬似的操作を可能とする機構の記載がある。
【0003】
医師が内視鏡画面を見ながら手術をする場合、手元で医療器具の操作端を動かしながら画面に映る術具を操作するときに、手元の操作方向に対して、画面内で術具がどちらに動くか分からないときがある。その理由は、術具の挿入手段が軟性(可撓性)の場合、操作端と術具の間に捩れを生じているためで、内視鏡にリジッドに固定されている撮像手段と術具の間の相対的な関係は、入口部分である操作端(医者の手元)と出口部分である術具とで異なってしまう。このため、医者は、画面に映る術具を動かしてその動作方向を確認し、操作方向と動作方向の関係を把握する作業を行っている。
【0004】
しかし、手術中に確認のため術具を動かしたりすると、捩れ具合が変わってしまい、再び思うような方向に動かせなくなってしまう場合がある。また、術具の動きを確認するための動作は、術野が狭い場合に周囲に接触する危険があるので高い技量が必要となり、安全性の面からも改善が求められている。
【0005】
特許文献2では、医者が手元で容易に内視鏡の視野方向に望む位置に移動できるようにする内視鏡下外科手術装置が開示されている。ここでは、体内に挿入する処置具(把持鉗子)に色マーカを設け、画面上で色マーカが検出されると、その現在位置から画面中心位置に色マーカを移動させる移動量を求め、アクチュェータ回路を制御する。
【0006】
【特許文献1】特開2006−61364号公報
【特許文献2】特開平10−118015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の例では、不連続な色マーカの位置から移動量を求めるため、検出できる角度も間欠的になる。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を克服し、物体(術具)の回転角度を簡単かつ連続的に検知し、画面上における物体の回転方向と操作端の操作方向とを対応付けるようにした回転状態検出方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、操作部の操作量を伝達部により術具部に伝えるとともに、術野における術具部の動作を撮影する撮像手段を用いて前記術具部の回転状態を検出する方法であって、前記伝達部の前記術具部側に設けられ周方向に連続する模様を備えたマーカを有し、前記撮像手段で前記マーカを撮像したマーカ画像情報を取り込んで画像処理し、前記マーカの回転角を求めることで前記術具部の回転状態を検出することを特徴とする。ここで、マーカ画像情報とは前記マーカを撮像したマーカ画像の電子情報であり、以下では単にマーカ画像という。
【0010】
前記マーカは、前記連続模様の領域を区切る境界線の少なくとも一つが、周方向に対して軸方向の位置が連続的に変化する直線もしくは曲線である。また、前記マーカは、前記連続模様の領域を区切る一方の境界線が直線と、この境界線に対して他方の境界線は軸方向の位置が連続的に変化する直線もしくは曲線とを有し、これらの境界線により前記マーカは多角形もしくは曲線図形を含み、前記マーカは前記境界線を挟んで軸方向に色の特徴量が異なる。また、前記マーカは前記伝達部の軸方向に複数の前記連続模様の領域を有していてよい。
【0011】
さらに前記マーカ画像情報を画像処理して前記マーカ画像情報におけるマーカ表示領域の奥行き方向の中心を示す計測ラインを求め、この計測ラインに沿って前記軸方向に区切られている領域の軸方向位置の比率を求め、この比率に該当する前記マーカ上の周方向位置から回転角を求める。
【0012】
ここで述べるマーカの奥行き方向とは、前記術具部が設けられている先端側の方向となる。たとえば撮像手段のレンズ近辺から患部がある術野にむかって医療器具が延ばされるため、医療器具の先端側は画面の奥方向(撮像手段のレンズから遠ざかる方向)に伸びる。そこで、医療器具(前記伝達部)に取り付けたマーカにおいて、術具部に近い方をマーカ画像の奥行き方向と記述する。また、マーカ画像の奥行き方向の中心を示す計測ラインとは、画面奥に伸びる医療器具を軸方向に対して垂直に切った断面の中心点を連続に繋げた直線である。
【0013】
前記マーカは前記連続模様の領域を区切る境界線を挟んで青色と緑色の領域を有していて、前記比率は青色領域と緑色領域の比率である。ここで、青色と表現しているのは青味が強い色を意味し、同様に緑色は緑味が強い色を意味している。いずれも単一の色を特定しているものではなく、相対的に識別できる色であればよい。
【0014】
前記比率に該当する回転角が2つある場合に、前記マーカ画像情報におけるマーカ表示領域の横軸と前記計測ラインが交わる交点と、前記区切られた1つの領域の面の重心と前記交点を結ぶ延長線を求め、前記計測ラインと前記横軸がなす角度と前記延長線と前記横軸のなす角度に基づいて回転角を選択する。
【0015】
本発明の回転状態検出方法では、マーカと動作方向の相対角度および計測ラインで計測された角度を元に前記術具部の動作方向を示す指示画像を生成し、前記撮像手段の撮像画像における術具部表示領域に付して表示する。ここで、マーカと動作方向の相対角度とは、動作方向Mxとマーカが0度を示す模様の位置との間の相対角度である。マーカを伝達部に貼り付けるときには、動作方向がマーカの0度になるような関係に貼り付けるが、Mxとは別の動作方向Myが存在し、二つの動作方向が直交している場合は動作方向Myはマーカの90度の位置となる。このとき、マーカと動作方向Myの相対角度は90度である。たとえば、計測ラインで計測した見た目の角度が100度であるとすると、動作方向Myは差分の10度だけ計測ラインの方向からずれていることになるので、この分だけ回転させた矢印を表示させる。一方、動作方向Mxは90度ずれていることになるので、動作方向Mxを示す矢印は計測ラインの方向から90度ずらして表示することになる。
【0016】
本発明のより具体的な方法は、操作部の操作方向を伝達部により術具部に伝えるとともに、術野における前記術具部の動作を撮像する撮像手段を用いて前記術具部の回転状態を検出する方法であって、前記伝達部の前記術具部側に設けられ特徴量の異なる領域がそれぞれ周方向に連続する連続模様を備えたマーカを前記伝達部は有し、前記撮像手段で前記マーカを撮像したマーカ画像情報を取り込んで画像処理し、前記マーカの回転角を求めて前記術具部の回転状態を検出する場合に、取り込んだマーカ画像情報におけるマーカ表示領域の歪を補正して補正画像情報を生成し、この補正画像情報をフィルタリング手段によってマーカ画像の特徴量を基に前記マーカと背景との分離および前記マーカの模様の分離を行って抽出したマーカ画像領域の境界情報を抽出し、該境界情報からアフィン変換行列を作成し、該アフィン変換行列を用いてマーカの正面から見たマーカ画像領域に補正し、該補正されたマーカ画像領域の中心を通る計測ライン上で前記特徴量の異なる領域の長さの比率を求め、該比率に応じた角度を術具部の回転角として求めることを特徴とする。前記特徴量の異なる領域は、青色と緑色で配色された領域であり、前記フィルタリング手段は、前記補正画像をR(赤の画像)、G(緑の画像)、B(青の画像)に分割し、分割した画像に対し画素毎にGとBの和からRを差し引く合成処理を行って緑色領域と青色領域の組によるマーカ領域を抽出することを特徴とする。あるいは、前記特徴量の異なる領域は、異なる蛍光色素で塗り分けられた領域であり、前記フィルタリング手段は前記蛍光色素の励起波長もしくは蛍光波長のみを抽出することで、前記蛍光色素の領域およびマーカ領域を抽出することを特徴とする。
【0017】
本発明の回転状態検出装置は、術野における作業をする術具と、その操作部と、操作部の操作方向を術具部に伝える伝達部と、術野における術具部の動作を観察する撮像手段と、該撮像手段により術具部の回転状態を検出する装置であって、前記伝達部の術具部側の周方向に設けられた連続模様のマーカと、前記撮像手段で取り込んだマーカ画像を画像処理し、マーカの回転角を求める画像処理装置を備え、マーカの回転角を求めることで術具部の回転状態を検出することを特徴とする。
【0018】
前記画像処理装置は、術具部とマーカの画像を取り込む画像取り込み手段と、取り込んだ画像の歪を補正する画像補正手段と、補正された画像をマーカの特徴量によって,マーカと背景との分離およびマーカの模様の分離を行ってマーカ領域を抽出するフィルタリング手段と、抽出したマーカ領域のエッジを抽出し、該エッジからアフィン変換行列を作成し、該アフィン変換行列を用いてマーカの正面から見たマーカ画像に拡大補正し、前記マーカが第1の色と第2の色の連続模様による組の場合に、前記拡大補正されたマーカ画像の中心を通る計測ライン上で第1の色領域と第2の色領域の長さの比率を求め、該比率に応じた角度を術具部の回転角として求める角度検出手段を備えることを特徴とする
前記フィルタリング手段は前記第1の色が緑、前記第2の色が青の場合に、前記補正された画像をR(赤の画像)、G(緑の画像)、B(青の画像)に分割し、分割した画像に対し画素毎にGとBの和からRを差し引く合成処理を行って緑色領域と青色領域の組によるマーカ領域を抽出することを特徴とする。
【0019】
ここで,R,G,B画像とは、元のカラー画像の各画素が赤(R),緑(G),青(B)の3色のパラメータから色が定義されており、その色パラメータのR成分(赤のパラメータ)だけを抽出して、この値をグレー値としたグレー画像がR画像である。G画像、B画像も同様である。G+B−Rの合成処理とは、各グレー画像のグレー値のパラメータについて、前記合成処理で算出した値で表現したグレー画像を生成することである。
【0020】
本発明の回転状態検出装置は、前記マーカと動作方向の相対角度および計測ラインで計測された角度を元に前記術具部の動作方向を示す矢印などの画像を生成し、前記術具部の画像に付して表示する表示情報生成手段を有する。
【0021】
前記撮像手段は内視鏡であり、前記術具部は医者によって操作部が操作されて術具部による治療が行なわれる鉗子、電気メスなどの医療用器具,あるいは前記内視鏡よりも細い内視鏡であり、前記伝達部は捩れを生じる可能性のある可撓伝達部であることを特徴とする。
【0022】
なお、術具部の動作方向の表示に代えて、手術の記録のために検出した術具部の回転角をその時々の術野の画像とともに記録したり、医療器具の自動制御にフィードバックするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、操作端と被操作端との間に捩れのある伝達部(たとえば軟性術具)の回転状態が、画面上で術具部の動作方向として示されるので、術具部の回転状態を一目で把握することができ、術具部の操作が容易になるとともに、安全性が向上できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例について、親内視鏡内部で術具(手術器具)が捩れを生じる場合のある医療用内視鏡システムを例に説明する。ここで述べている親内視鏡とは、内視鏡のもつ挿入チャネルにさらに細径の内視鏡を挿入できる内視鏡であり、その相対関係から細径の内視鏡を子内視鏡,子内視鏡を挿入している内視鏡を親内視鏡などと呼ぶものの総称である。つまり、内視鏡の挿入チャネルに更に内視鏡を挿入することも可能な医療器具挿入具であり、子内視鏡の代わりに柔軟性があり、かつ外径が挿入チャネルの内径よりも細い医療器具を挿入することができるものである。また、親内視鏡のレンズ面と挿入チャネルの出口の位置関係が固定されているが、必ずしも同じ方向を向いていなくてもかまわない。つまり、親内視鏡から所定の角度で斜め方向に医療器具が出るように関係付けられていてもかまわない。患部の状態や治療内容に応じて親内視鏡と術具の角度を変えることで治療の作業のしやすさが向上する効果が期待できる。また、親内視鏡が無く、通常の内視鏡と、医療器具がそれぞれ別々に挿入されていてもかまわない。
【0025】
図1は、一実施例による医療用内視鏡システムの全体構成図である。挿入手段3には、内視鏡レンズ(内視鏡の先端部分)6を設けた内視鏡2の挿入部2'と、術具部4を設けた可撓伝達部1'を内挿している。挿入手段3が無く、内視鏡2の挿入部2'と、術具部4を設けた可撓伝達部1'が別々に体内に挿入される構成であってもよい。挿入手段3があることで、患部まで術具部4を安全に導くことができる。体表近くの広い範囲で治療をしたい場合は挿入手段3を用いない構成とすることで、術具部を挿入手段3に制限されることなく自由に動かせる利点がある。可撓伝達部1'の他端には術者が術具部4を操作する医療器具の操作端1が設けられている。可撓伝達部1'の術具部側にはマーカ5を設けている。
【0026】
図6A、B、Cは可撓伝達部の先端部に設けられるマーカの展開図の一例である。図の上方が術具部の先端方向である。マーカ5は、マーカシートの四角領域を、マーカシートの横幅に対して高さ方向が連続的に変化する関数で表される直線や曲線で分割している連続模様を持つ。この分割の仕方の例をAからCで示している。
【0027】
図6Aの展開図で示すマーカ5は、マーカシート50の四角形の領域(例えば53bと54bを組み合わせてなる領域)を、三角形の頂角のような折れ線で領域53bと領域54bにより分割した形状である。以降51から54の添え字のアルファベットが付いているものについて、アルファベットで識別する必要のない説明では、全てを代表して添え字なしの51,52,53,54で表現する。
【0028】
図6Bの展開図で示すマーカ5は、マーカシート50の四角領域を直線で領域53と領域54に分割した形状である。
【0029】
図6A、図6Bの展開図に示すように、マーカの境界線は三角形もしくは五角形、あるいは四角形の図形となる。さらに、特定の角度範囲の精度を上げるために、該当部の勾配を大きくした任意の多角形の図形としてもよい。
【0030】
図6Cの展開図で示すマーカ5は、マーカシート50の四角領域を三角関数で領域53と領域54に分割した形状である。
【0031】
これら以外に、二次曲線などで分割する形状であっても以下に示す方法において同様の処理が可能である。
【0032】
これ以降、代表例として図6Aの場合で説明する。領域53と領域54は、フィルタリング手段でそれぞれ分離抽出可能な特徴量を持つ色で配色する。例えば、フィルタリング手段が色の特徴量を抽出する手段であれば、領域53と領域54を異なる色で塗り分ける。あるいは、フィルタリング手段が特定の蛍光塗料の波長を抽出する手段であれば、領域53と領域54は異なる波長の蛍光塗料で塗り分ける。この例のように、領域53と領域54の塗りわけはフィルタリング手段にあわせて行うが、ここでは、その一例として領域53は緑色、領域54は青色として説明する。
【0033】
マーカの領域53、54の三角形のような形状はその底辺が横幅一杯で360度になるように作成され、マーカシート50は可撓伝達部1'(術具の柄とも言う)の円周方向に1回りで貼り付けている。
【0034】
マーカ5は、円筒状の弾性部材に印刷して術具の柄に嵌装したり、術具の柄に直接印刷してもよい。貼り付け固定する手段であれば、従来から所有する術具にマーカを貼り付けるだけで治療中の角度を検出することが可能となる。この場合、マーカの横幅を変化させたバリエーションを用意して術具の直径に合ったものを貼り付ければよい。弾性部材へ印刷したマーカは、術具の柄の直径が多少かわっても、ぴったりとマーカを固定することが可能であるため、対応する術具の直径にあわせて用意するバリエーションは貼り付ける物よりも少なくてすむ。さらに直接印刷したものは、術具とマーカとの間でズレが生じることがないため、経時的な安定が得られる。
【0035】
マーカの領域53,54は本実施例の図6Aで示す例では五角形に形成されている。つまり、三角形のような頂角をもつ模様の下に所定幅(たとえば1mm)の帯が設けられてある。この帯は、後述する青と緑の比を計算する場合に、頂点及び谷の部分の一方の長さが0になってしまうことを避けるためのゲタ部分であり、計算不可能な不連続点の発生を防ぐためのものである。また、本当に0なのか否かが区別しがたい状況を回避することもできる。
【0036】
マーカは軸方向に、52aから52bで一組、52bから52cで一組、52cから53dで一組で、原理的には一組でも角度計算は可能である。マーカは画面奥になるほど縮小されて表示されるためデータの誤差が大きくなる。よって、術具の奥行きが変化しても、できるだけ手前の組で角度計算するのがよい。しかし、手術中などに血などでマーカが汚れている場合は、次に近い組を利用して角度計算できるメリットがあり、汚れに対するロバスト性が向上する。
【0037】
マーカとマーカの間には、所定幅の帯51a、51b、51c、51d、帯52a、52b、52c、52dが設けてあり、この帯は角度を検出する際の開始ラインを示すランドマークである。
【0038】
図7はマーカを術具の柄に貼り付けた状態を内視鏡で観察した一例である。この図は画像補正手段10による歪補正後の画像で、術具の柄(可撓伝達部)がその長手方向の軸心を回転軸として回転した場合に、貼り付けられたマークの見え方が変わることを(a)−(d)に示している。つまり、可撓伝達部1'に捩れがある場合に、実際のマーカ4の画像は捩れた後の見た目の角度を示す。
【0039】
図8は1組のマーカの四角領域を示した展開図である。図6の3組のマークの1つを代表した図で、青色の五角形の領域34と緑色の領域33が対応して1組の連続模様を形成する。青色の領域34の横幅は術具の柄の円周の長さ同一で、回転角度で表すと360度分の長さとなる。横軸をθとし、領域34の左端を0度とすると、任意のθでの斜線(五角形の底辺(長さ0の軸上)からの長さ(高さ))は数式によって表すことができる。領域34と対応する上部の領域33は、円周上に巻かれたマーカ5を軸周りに180度回転させた位置で見れば緑色の領域33が五角形を成す構成となる。
【0040】
医療器具の術具部4は先端で治療行為を行う鉗子、電機メス、剪刀などを持つ治療器具のほか、内視鏡や撮像手段などの観察器具も含まれる。内視鏡2は患部を含む術野を観察するとともに、術野にある術具部4とマーカ5を観察する。
【0041】
画像コントローラ7は、内視鏡2と接続されて内視鏡画像を取得し、モニタ40に出力する。画像処理装置8は、入力された内視鏡画像を解析し、画面に映し出されているマーカ画像を読み取り、術具部4(可撓伝達部1'のマーカ貼付部)の回転角度を算出する。さらに、検出した回転角度をモニタ40に出力し、術具の回転状態を情報表示する。
【0042】
図2は画像処理装置の機能ブロック図で、処理の流れも示している。画像処理装置8は画像コントローラ7からのマーカを含む元画像を取り込む画像取り込み手段9、元画像の輝度や色のむら、元画像の歪みを補正する画像補正手段10、元画像をマーカの特徴量を抽出し,背景とマーカ領域と模様を分離する画像フィルタリング手段11を有している。この分離された画像を元にマーカ画像を抽出し、マーカ画像の中心ラインが読み取れる見た目の角度(回転角度)を検出する角度検出手段12、見た目の角度から術具部4の動作方向を示す矢印などを形成する情報生成手段13、術具部と矢印の画像を合成して出力する表示情報出力手段14、検出した回転角度を記録するデータ記録手段15を有している。
【0043】
マーカ5が緑色の領域53と青色の領域54に塗り分けられている場合,画像フィルタリング手段は各画素のR(赤)G(緑)B(青)の3つの特徴量で3つの画像に分割する。
【0044】
RGB分解以外のフィルタリング手法としては、色素による吸収バンド帯の違いを利用したバンドパスフィルタを用いた手法や,マーカが蛍光色素を含む場合はその蛍光色素の蛍光波長に合わせて蛍光領域を分離・抽出する手法やレンズ面に透過波長を選択するフィルタを物理的に取り付ける手法、投光する光の波長を変化させて内視鏡画像のRGBのパラメータを予め補正し、マーカ領域を特定しやすくする手法などがあり、このような手段によってもマーカの特徴を抽出して背景から分離することができる。いずれも、体内に無い特徴量をマーカにほどこし、その特徴量を効果的に抽出するフィルタリングを行うことが可能であるため、マーカと体内臓器との識別およびマーカ模様の識別を行いやすい利点がある。以降は、マーカ5が緑色の領域53と青色の領域54に塗り分けられている場合を前提として、RGB分解によるフィルタリングを実施する場合の詳細を説明する。
【0045】
3つの画像(R,G,B)からマーカ領域を特定、抽出し、マーカ領域の軸中心に設定した検出ラインに沿ってマーカのエッジを検出し、青と緑のエッジ比率から画面に表示されるマーカの中心ラインが示す角度(θ)を検出する角度検出手段12を有している。さらに、画面に表示されるマーカの中心ラインが示す角度に基づいて、術具部4の動作方向を示す矢印などを重ねた画像を生成し、モニタ40に出力する表示情報出力段14、医療行為を記録するデータ記録手段15を備えている。角度の情報については、画面から見た角度情報だけではなく、それを元に、特定の方向から見た角度に変換してデータ記録を行うなどの利用をしてもよい。
【0046】
図3は画像補正手段の機能ブロック図で、処理の流れも示している。画像補正手段10は前処理を行うためのもので、マーカを含む元画像の輝度ムラを補正し均一な明るさにする輝度補正手段16、画面全体が何らかの色にシフトしている場合、画面の色を補正する色補正手段17、画像の歪みを補正する歪補正手段18を有し、取り込んだ元画像をこれら前処理によって補正するもので、いずれも周知の手段である。
【0047】
色補正手段17は、画面全体が特定の色にシフトしている場合にバランスを補正する手段で、事前に色のシフト状態をチェックし、そのパラメータを取得しておく。処理中(プログラムの稼動中)はこのパラメータに基づいて色の補正が行なわれる。
【0048】
歪補正手段18は、レンズの形状に依存して画像が湾曲して表示されるのを補正するもので、事前に格子模様などを撮影して歪み具合を計測して歪み補正のパラメータを取得する。処理中はこのパラメータを用いて画像を変換するので、歪み補正後の画像では、直線は直線として表示される。
【0049】
前処理された元画像は、画像フィルタリング手段11に入力する。ここでは、各画素のRGB各々のパラメータを用いて、元画像をR、G、B画像に分割する。G画像は三角パターン33(領域33)を強調した画像、B画像は三角パターン34(領域34)を強調した画像、R画像は背景となる体内を強調した画像である。
【0050】
図4は角度検出手段の機能ブロック図で、処理の流れも示している。マーカ領域抽出手段19は、画像フィルタリング手段11によって分割されたRGB画像に対し、G画像とB画像を加算し、R画像を減算する合成処理を行い、これによってマーカ領域を特定して抽出する。
【0051】
エッジ抽出手段20は、抽出されたマーカのエッジである直線成分を抽出し、その直線の傾きを計算し、エッジの2直線の交点を計算する。画像に映されている内視鏡は画面奥に向かう姿勢なので、術具部(マーカ)の先端ほど小さく表示される。拡大率補正手段21は、この交点部分が撮像手段の正面になるようにアフィン変換を行い、正面から見た画像にマーカ画像を変換する。マーカ読取手段22は、マーカ画像の軸の中心にエッジ検出ラインを設定し、このラインに沿って明暗が変わる位置にマーカ内エッジを検出する。
【0052】
角度算出手段23は、マーカ内エッジから青色と緑色の長さを読み取りその比率を計算する。この比率から読み取られる角度は、画面に映る術具の中心ラインから読み取れる見た目の角度θである。
【0053】
マーカは術具部の動作方向に対して,予め決められた条件で取り付けられる。つまり、術具部4の首振り方向がイ,ロとある場合(図示なし)、首振り方向イがマーカの0度と一致するように貼り付ける、などの条件である。このとき、マーカの0度の位置が基準となって、回転角度が記述される。
【0054】
計測によって検出される回転角度(見た目の角度)θはマーカの0度から計測した量となるが、前回検出したときのデータの差分を得ることで、経時的な相対的回転角度θ’を計算することもできる。
【0055】
ここで、θに依存した青と緑の長さは(1)、(2)式で表される。実施例の角度計算に用いたマーカの軸方向サイズは、開始ラインの高さは1mm,三角形の頂点の高さが5mmでこのうち帯の高さが1mmである。
0<θ<180度のとき、
緑の長さ=5−4θ/180、青の長さ=1+4θ/180 …(1)
180度<θ<360度のとき、
緑の長さ=−3+4θ/180、青の長さ=9−4θ/180 …(2)
なお、θ=0度のとき、緑の長さ=5、青の長さ=1、θ=180度のとき、緑の長さ=1、青の長さ=5である。
【0056】
またRa=緑の長さ÷青の長さとすると、Ra=5ならばθ=0、Ra=0.2ならばθ=180度となる。それ以外の場合は0<θ<180度、あるいは180<θ<360度となる。現在の角度がどちらに含まれるかの判別法は後述するが、それぞれにおいてRaからθを算出するには、式(1)式(2)を元に、(3)、(4)式の関係となる。
0<θ<180のとき、
θ=180(5−Ra)/(4(1+Ra)) …(3)
180<θ<360のとき、
θ=540(1+3Ra)/(4(1+Ra)) …(4)
ところで、マーカの計測点が斜面であれば、同じ青緑比に2つの解が存在する。図9はマーカの2つの斜面で同じ青緑比となるケースを示す説明図である。図のグラフで、任意の角度θ(たとえばθa)における青色の高さ(たとえば0〜点35の長さ)をその延長上である四角形領域の高さから差し引くと、五角形の領域33の緑色の高さが分かる。このときの、緑色と青色の高さ(長さ)比率が分かれば、任意の回転角度θを逆算できる。
【0057】
図9で、軸周方向回転角θに対する青緑長さの比が同一になるθa、θa'が存在する。θaは0〜180度の間、θa’は180度〜360度の間である。このように、同一角度となる計測点35、36の有る斜面の選択方法は次のように行なわれる。
【0058】
図10は緑を基準として選択する場合の説明図で、以下の(1)〜(5)の手順で斜面の一方が選択される。
(1)青と緑の境界を抽出する計測ライン(術具4または可撓挿入部1'の中心線)と画面横軸のなす角度をφとする。
(2)計測ラインと画面横軸の交点pを求める.
(3)緑領域の面の重心gを計算する。
(4)gとpを結ぶ直線が画面横軸となす角度φ’の大きさを計測ラインのなす角度φと比較する。
(5)φ’>φのとき、青色五角形の右斜面(180度<θ<360度)、φ>φ’のとき、青色五角形の左斜面(0度<θ<180度)、φ=φ’のとき、計測ラインが頂点を通っている(θ=0もしくは180度)ので、緑と青の比から0と180度を識別する。
【0059】
図5は情報生成手段の機能ブロック図と処理の流れを示している。情報生成手段13は角度検出手段12で検出したデータを基に、データの記録や情報の表示など、目的に合わせた処理を行う。
【0060】
情報利用による処理振り分け手段30は、検出した角度の利用の仕方で基準からの角度補正手段24と表示画像補正手段25に以後の処理を振り分ける。ここで、回転角度とは、基準の姿勢を決めて、その姿勢を初期姿勢とし、術具がこの初期姿勢からどのくらい回転しているかを回転角度と定義する。
【0061】
角度補正手段24は、見た目の角度と初期姿勢との差分を計算して、初期姿勢からの変化量(回転角度)をデータ記録手段15に記録する。画面に映る中心ラインの角度情報を保存する場合は、角度補正手段24を通さず、そのままデータ記録手段15で記録する。この回転角度は操作端側にフィードバックされて、軟性鉗子マニュピュレータなどの自動制御に用いることも可能である。
【0062】
表示画像補正手段25は、一例として動作方向を矢印で示す場合を説明する。回転角度が0(初期姿勢)の場合に表示する矢印の向き(正方向)は予め決めてあり、この初期の矢印の向きから、術具部の回転角度の量だけ向きをずらして矢印を表示する。
【0063】
画面に映る術具部の中心ライン(計測ライン)から読み取れる角度情報(見た目の角度)の場合、表示画像補正手段25はその中心ラインを回転の軸として、表示する矢印を角度情報の分だけ回転させる。情報生成手段26はその回転後の矢印を生成し、画像合成手段27はこの矢印が所定の位置となるように内視鏡画像と合成し、表示情報出力手段14に出力し、モニタ40に表示する。これにより、術具部4がどちらの方向に動くかを画面上の矢印を見ることで、一目で分かるように表示できる。なお、角度情報としては矢印のほかに、マーク、アイコンなどによってもよい。
【0064】
次に、一実施例による回転状態検出方法の手順を説明する。図11、図12、図13は画像処理装置8による回転角度の検出手順を示すフローチャートである。また図14〜図17は各処理の結果を示す説明図である。
【0065】
ステップs101は、画像補正手段10から画像フィルタリング手段11に対する出力処理である。図14のマーカ画像のうち、(a)の補正画像が出力される。
【0066】
ステップs102は、画像フィルタリング手段11による作業で、補正画像はR、G、Bの画像に分解される。図14(b)、(c)、(d)はそれぞれR画像61、G画像62、B画像63で、R画像、G画像、B画像はそれぞれ元のカラー画像の画素が持っていた赤,緑,青のパラメータをそのままグレー値とした画像である。
【0067】
ステップs103以降が角度検出手段12による作業である。まず、R画像、G画像、B画像により、G画像とB画像の和からR画像を差し引く(G+B−R)の合成処理を経てマーカ画像64が抽出される。これによって、図15(a)のように、マーカ画像のみを浮き上がらせて抽出する。
【0068】
ステップs104では、マーカ領域周囲の境界線を抽出し(図15(b))、曲線と直線に分解し、その中から直線のみを抽出し(図15(c))、長い直線2本66,67を選ぶ(s105)。ステップs106は、抽出した直線の傾きを計算し、ステップs107で2直線の延長線(点線)68,69の交点座標を計算する(図15(d)の点C)。
【0069】
ステップs108は、2本の直線の傾きの平均値c(平均値cを傾きcと呼ぶことにする)を計算し、ステップs109では、点Cを通り、傾きcの直線(図15(d)の直線70)を生成し、これを中心ラインとする。
【0070】
ステップs110では、2本の直線66,67の両端の座標(4点)を取得し、ステップs111では、2本の直線の1本を選び、その直線の手前側(術具の手前方向)の点a1を選び(図16(a))、ステップs112では点a1と中心ライン70の距離Lを算出する。ステップs113では、点a1に対し中心ライン70を挟んだ対象点(点A2)と、点a3に対し中心ライン70を挟んで等距離にある線対称な対象点(点a4')を作成し、ステップs114では、点a1を含む直線66の他方の端点(a3)を通り、中心ライン70に直交するライン上で、中心ラインから距離Lだけ離れた点A3を作成し、ステップs115では、点A3に対し中心ライン70を挟んだ対象点(A4)を作成する(図16(b))。
【0071】
ステップs116ではアフィン変換行列の作成を行う。点a1,A2,a3、a4’を変換前の4点、点a1、A2、A3、A4を変換後の4点として、変換前の4点が変換後の4点になるようなアフィン変換回転行列を作成する。
【0072】
ステップs117では、アフィン変換行列を用いてマーカの画像を変換する。図17に変換後の画像を示す。この例は、図14(c)の画像をアフィン変換行列によって変換したものである。図14では術具部の先端側になるに従い縮小されていたマーカ模様が、図17では根元側から先端側まで等しい拡大率となるように、画像を3次元的に回転変換した結果を示している。
【0073】
ステップs118では、アフィン変換後のマーカ領域と中心ラインとの和領域を求め、エッジ検出ライン72を作成している。ステップs119では、エッジ検出ライン72に沿って、マーカ模様のエッジを検出する。検出されたエッジは、図17にエッジ検出ライン72上の×印で示している。
【0074】
ステップs120では、青緑比率を計算する。マーカ模様のエッジとして検出された×印の手前側から見て、2個目(73)と3個目(74)の間の距離が青色領域の長さであり、3個目(74)と4個目(75)の距離が緑領域の長さである。緑色領域の長さを青色領域の長さで割った比率をRa(緑/青)とする。ここで、マーカに用いられる青色と緑色の比率は逆であってもよく、予め決めておけばよい。
【0075】
ステップs121は、上述したマーカの2つの斜面の選択に係る処理である。まず、図17で距離を計測した緑色領域77に注目し、緑色領域のうち、見えている緑色領域77の重心(g)76を計測する。重心76は中心ライン72の右側にあり、青領域の三角形部分の斜辺が右下がりになっている部分が見えていると判断できる。中心ラインと画面横軸の交点pがなす角度φ(図10)と、重心gと交点pを結ぶ直線がなす角度φ’(図10)の大きさを比較することで、上述したように選択する斜面を決定できる。
【0076】
ステップs122は、青緑の比率Raと選択した斜面の傾きから、画面に映る術具柄の中心ラインに沿った角度情報を算出する。
【0077】
図18は情報生成手段の処理を示すフローチャート、図19、図20は各処理の結果を示す説明図である。情報生成手段13は術具部4の動作方向を示す画像を生成する。ここでは、動作方向を矢印で示す例を説明する。
【0078】
s201では、s103(図11)で抽出したマーカ領域から円弧成分を抽出する。図19(a)の円弧成分64から(b)の円弧82を抽出する。s202では、抽出した円弧成分に対し楕円フィッティングを行う。すなわち、楕円の円弧の一部がs201で抽出した円弧82と一致する楕円パラメータが、図19(c)の83のように特定される。
【0079】
s203では、図19(c)のように、楕円の中心点a5を通る楕円の長軸と短軸と、円弧82との交点a6,a7,a8,a9を抽出する。短軸は中心ライン70の方向と一致する。
【0080】
s204では、点a5から点a7までの距離L2を取得する。s205では、中心点(a5)から短軸方向に向かい、距離L2の位置にある点A6,A8の座標を取得する。s206では、点a6,a7,a8,a9を変換前の4点、点A6,a7,A8,a9を変換後4点として、変換前の4点を変換後の4点になるような回転行列(アフィン変換行列)を作成する。変換後は、中心点から各点までの距離が等しい円の形状となる(図20の円84)。
【0081】
s207では、変換後の円上で、中心ラインの示す角度から、動作方向を示す矢印の向きを特定する。具体的に説明すると、マーカを医療器具に設けるときに、マーカが示すどの角度の位置が動作方向であるかを予め決め、医療器具が首振り動作Mx、首振り動作Myを行うとする。動作Mxを行う方向がマーカ上で示されるθx(度)の位置、動作Myを行う方向がマーカ上で示されるθy(度)の位置になっているとすると、MyとMxの動作方向が直交していれば、θx(度)とθy(度)の間隔は90度となる。医療器具に応じて、MyとMxの間隔が直交でなければ、おのずとθx(度)とθy(度)の間隔は動作方向にあわせた値となる。
【0082】
たとえば、中心ラインが示す角度がθa'(度)と算出され、動作方向Mx,Myを示すθx(度)とθy(度)も分かっているとする。そこで、θx(度)、θy(度)の角度に向けて矢印を表すためには、中心ラインからθx(度)とθa'(度)の差だけ矢印を回転させればよい。θy(度)を示す矢印も同様である。そこで、図20に示すように、円の中心から伸びる矢印を、中心ラインが示す方向から、θx(度)とθa'(度)の差だけ円の中心点回りに回転させて矢印86を表示する。
【0083】
s208では、s207で作成したθx(度)と、θy(度)を示す矢印は、円の形状84に重ねて作成したものであるので、円84を元の楕円83に戻す行列を用いて、矢印をアフィン変換する。変換後の矢印は86'となる。この変換のための行列はs206で作成した楕円から円へ変換する行列の逆行列である。以上が情報生成手段26の処理作業である。実際に表示をさせるにはマーカ画像との画像合成が必要になる。
【0084】
s209では、逆変換後の矢印を内視鏡画像上の所定の位置に表示する(図21(b)の矢印80、81)。
【0085】
図21は医療器具の操作部と内視鏡画面の様子を示す説明図である。医療器具の操作部は、図21(a)に示すように、互いに直交する軸の方向78と方向79に術具部4を動かすことができる(特許文献1参照)。これに合わせて、先端の術具部4も2方向に首振りをできるが、画面上ではどちらに首を振るか分からない場合がある。そこで、方向78の正方向(反時計回り)を図示の矢印方向、方向79の正方向(反時計回り)を図示の矢印方向と予め設定し、それぞれ正方向に動かしたときに術具がどの方向に首を振るかを、図21(b)のように画面上に矢印80、81で表示する。
【0086】
矢印のデザインや表示位置は図示のものに限られない。移動後の姿勢をCGにより薄く重ね合わせてもよく、操作者の好みに随時変更が可能である。また表示するタイミングは、常時表示してもよいし、操作者が必要とするときにフットスイッチ等によって表示させてもよい。
【0087】
本実施例では、情報生成手段13及び表示情報出力手段14によって、これらの表示を行うので、操作部と術具の間に捩れがある場合でも、操作によって動く方向を、実際に医療器具を動かさなくても画面上の情報として把握することができる。
本実施例で示した図6Aのマーカの展開図を用いた場合、青領域と緑領域の比率から該当する回転角度が二つあるため、上述のように、これを絞り込むためのステップが必要となる。これに対して図6Bのマーカの展開図を用いると、青領域と緑領域の比率から該当する回転角度は一つであるため、図6Aで必要となった絞込みのためのステップは必要なくなり、処理速度が向上する。
【0088】
また、図6Aのマーカの展開図は青領域と緑領域を直線で区切っているため、術具の回転角度に応じた青領域と緑領域の比率が変化する割合は常に一定である。これに対して図6Cのマーカの展開図を用いると、青領域と緑領域を三角関数で区切っているため、上記比率が緩やかに変化する範囲と急激に変化する範囲が存在する。急激に変化する範囲では、回転角度に対する青領域と緑領域の変化が大きくなるため、回転角度の検出精度が高くなる。よって、術具の回転角度の検出精度を高めたい範囲にあわせてマーカを貼り付けることで、精度が必要な範囲においては、図6Aのマーカを用いるよりも、高い精度で回転角度を検出することができる効果がある。
【0089】
図6Aから図6Cのいずれのマーカでも、領域の境界が途切れることなく連続しているため、術具の回転角度を全ての範囲において連続的に検出することが可能である。
【0090】
本実施例では、マーカを青領域と緑領域で配色したが、これは画像をRGBのパラメータで識別するときに、体内に多い赤と区別しやすい利点がある。これとは別に、二つの領域を異なる波長の蛍光塗料で配色する方法では、特定の波長を検出するフィルタリングによって、体内の色などに関係なく、蛍光領域のみを抽出できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記実施例においては、主に医療用軟性鉗子の制御を例にしているがこれに限られるものではない。工業用ロボットのマニュピュレータや配管等の検査・作業ロボットなどの作業端を、軟性術部を介して操作端から操作する場合に広く適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施例による医療用内視鏡システムの全体構成図。
【図2】一実施例による画像処理装置の機能ブロック図。
【図3】画像補正手段の機能ブロック図。
【図4】角度検出手段の機能ブロック図。
【図5】情報生成手段の機能ブロック図。
【図6A】マーカの展開図(三角形の頂点を含む領域分割)。
【図6B】マーカの展開図(斜めの直線による領域分割)。
【図6C】マーカの展開図(三角関数の曲線による領域分割)。
【図7】マーカを術具の柄に貼り付けた状態を内視鏡で観察した場合の説明図。
【図8】1組のマーカの展開図。
【図9】マーカの2つの斜面で同じ青緑比となるケースを示す説明図。
【図10】斜面の選択方法を示す説明図。
【図11】画像処理手段による回転角度の検出手順を示すフローチャート(その1)。
【図12】画像処理手段による回転角度の検出手順を示すフローチャート(その2)。
【図13】画像処理手段による回転角度の検出手順を示すフローチャート(その3)。
【図14】マーカ画像とRGB画像の説明図。
【図15】マーカ領域の直線分抽出の説明図。
【図16】アフィン変換行列作成の説明図。
【図17】アフィン変換後のマーカの拡大図。
【図18】表示画像生成処理を示すフローチャート。
【図19】表示画像生成処理の結果を示す説明図(その1)。
【図20】表示画像生成処理の結果を示す説明図(その2)。
【図21】医療器具の操作部と内視鏡画面の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0093】
1…医療器具の操作部、1'…可撓伝達部、2…内視鏡、2'…内視鏡挿入部、3…挿入手段、4…術具部、5…マーカ、6…内視鏡レンズ、7…画像コントローラ、8…画像処理装置、9…画像取り込み手段、10…画像補正手段、11…画像フィルタリング手段、12…角度検出手段、13…情報生成手段、14…表示情報出力手段、15…データ記録手段、16…輝度補正手段、17…色補正手段、18…歪み補正手段、19…マーカ領域抽出手段、20…エッジ抽出手段、21…拡大率補正手段、22…マーカ読取手段、23…角度算出手段、24…基準からの角度補正手段、25…表示画像補正手段、26…表示画像作成手段、27…画像合成手段、30…処理振り分け手段、40…モニタ、50…マーカシート。
【技術分野】
【0001】
本発明は画像で捉えた物体の回転状態を検出する方法に関し、特に術者の手元操作端と術具との回転状態に捩れが生じている場合に、画面上の術具の回転状態と操作端の回転方向を対応付ける回転状態検出方式に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床現場で用いる医療用マニュピュレータの従来技術として、特許文献1に示すように、ワイヤ駆動方式関節部を持つ手術具について、手元操作部とハンドル部を上、下動作することにより先端関節部を下、上動作させ、また手元操作部とハンドル部を左、右動作することにより先端関節部を右、左動作させ、操作部を開、閉動作させることにより先端関節部を開、閉動作させて、位置及び姿勢を操作される多自由度鉗子に対して擬似的操作を可能とする機構の記載がある。
【0003】
医師が内視鏡画面を見ながら手術をする場合、手元で医療器具の操作端を動かしながら画面に映る術具を操作するときに、手元の操作方向に対して、画面内で術具がどちらに動くか分からないときがある。その理由は、術具の挿入手段が軟性(可撓性)の場合、操作端と術具の間に捩れを生じているためで、内視鏡にリジッドに固定されている撮像手段と術具の間の相対的な関係は、入口部分である操作端(医者の手元)と出口部分である術具とで異なってしまう。このため、医者は、画面に映る術具を動かしてその動作方向を確認し、操作方向と動作方向の関係を把握する作業を行っている。
【0004】
しかし、手術中に確認のため術具を動かしたりすると、捩れ具合が変わってしまい、再び思うような方向に動かせなくなってしまう場合がある。また、術具の動きを確認するための動作は、術野が狭い場合に周囲に接触する危険があるので高い技量が必要となり、安全性の面からも改善が求められている。
【0005】
特許文献2では、医者が手元で容易に内視鏡の視野方向に望む位置に移動できるようにする内視鏡下外科手術装置が開示されている。ここでは、体内に挿入する処置具(把持鉗子)に色マーカを設け、画面上で色マーカが検出されると、その現在位置から画面中心位置に色マーカを移動させる移動量を求め、アクチュェータ回路を制御する。
【0006】
【特許文献1】特開2006−61364号公報
【特許文献2】特開平10−118015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の例では、不連続な色マーカの位置から移動量を求めるため、検出できる角度も間欠的になる。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を克服し、物体(術具)の回転角度を簡単かつ連続的に検知し、画面上における物体の回転方向と操作端の操作方向とを対応付けるようにした回転状態検出方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、操作部の操作量を伝達部により術具部に伝えるとともに、術野における術具部の動作を撮影する撮像手段を用いて前記術具部の回転状態を検出する方法であって、前記伝達部の前記術具部側に設けられ周方向に連続する模様を備えたマーカを有し、前記撮像手段で前記マーカを撮像したマーカ画像情報を取り込んで画像処理し、前記マーカの回転角を求めることで前記術具部の回転状態を検出することを特徴とする。ここで、マーカ画像情報とは前記マーカを撮像したマーカ画像の電子情報であり、以下では単にマーカ画像という。
【0010】
前記マーカは、前記連続模様の領域を区切る境界線の少なくとも一つが、周方向に対して軸方向の位置が連続的に変化する直線もしくは曲線である。また、前記マーカは、前記連続模様の領域を区切る一方の境界線が直線と、この境界線に対して他方の境界線は軸方向の位置が連続的に変化する直線もしくは曲線とを有し、これらの境界線により前記マーカは多角形もしくは曲線図形を含み、前記マーカは前記境界線を挟んで軸方向に色の特徴量が異なる。また、前記マーカは前記伝達部の軸方向に複数の前記連続模様の領域を有していてよい。
【0011】
さらに前記マーカ画像情報を画像処理して前記マーカ画像情報におけるマーカ表示領域の奥行き方向の中心を示す計測ラインを求め、この計測ラインに沿って前記軸方向に区切られている領域の軸方向位置の比率を求め、この比率に該当する前記マーカ上の周方向位置から回転角を求める。
【0012】
ここで述べるマーカの奥行き方向とは、前記術具部が設けられている先端側の方向となる。たとえば撮像手段のレンズ近辺から患部がある術野にむかって医療器具が延ばされるため、医療器具の先端側は画面の奥方向(撮像手段のレンズから遠ざかる方向)に伸びる。そこで、医療器具(前記伝達部)に取り付けたマーカにおいて、術具部に近い方をマーカ画像の奥行き方向と記述する。また、マーカ画像の奥行き方向の中心を示す計測ラインとは、画面奥に伸びる医療器具を軸方向に対して垂直に切った断面の中心点を連続に繋げた直線である。
【0013】
前記マーカは前記連続模様の領域を区切る境界線を挟んで青色と緑色の領域を有していて、前記比率は青色領域と緑色領域の比率である。ここで、青色と表現しているのは青味が強い色を意味し、同様に緑色は緑味が強い色を意味している。いずれも単一の色を特定しているものではなく、相対的に識別できる色であればよい。
【0014】
前記比率に該当する回転角が2つある場合に、前記マーカ画像情報におけるマーカ表示領域の横軸と前記計測ラインが交わる交点と、前記区切られた1つの領域の面の重心と前記交点を結ぶ延長線を求め、前記計測ラインと前記横軸がなす角度と前記延長線と前記横軸のなす角度に基づいて回転角を選択する。
【0015】
本発明の回転状態検出方法では、マーカと動作方向の相対角度および計測ラインで計測された角度を元に前記術具部の動作方向を示す指示画像を生成し、前記撮像手段の撮像画像における術具部表示領域に付して表示する。ここで、マーカと動作方向の相対角度とは、動作方向Mxとマーカが0度を示す模様の位置との間の相対角度である。マーカを伝達部に貼り付けるときには、動作方向がマーカの0度になるような関係に貼り付けるが、Mxとは別の動作方向Myが存在し、二つの動作方向が直交している場合は動作方向Myはマーカの90度の位置となる。このとき、マーカと動作方向Myの相対角度は90度である。たとえば、計測ラインで計測した見た目の角度が100度であるとすると、動作方向Myは差分の10度だけ計測ラインの方向からずれていることになるので、この分だけ回転させた矢印を表示させる。一方、動作方向Mxは90度ずれていることになるので、動作方向Mxを示す矢印は計測ラインの方向から90度ずらして表示することになる。
【0016】
本発明のより具体的な方法は、操作部の操作方向を伝達部により術具部に伝えるとともに、術野における前記術具部の動作を撮像する撮像手段を用いて前記術具部の回転状態を検出する方法であって、前記伝達部の前記術具部側に設けられ特徴量の異なる領域がそれぞれ周方向に連続する連続模様を備えたマーカを前記伝達部は有し、前記撮像手段で前記マーカを撮像したマーカ画像情報を取り込んで画像処理し、前記マーカの回転角を求めて前記術具部の回転状態を検出する場合に、取り込んだマーカ画像情報におけるマーカ表示領域の歪を補正して補正画像情報を生成し、この補正画像情報をフィルタリング手段によってマーカ画像の特徴量を基に前記マーカと背景との分離および前記マーカの模様の分離を行って抽出したマーカ画像領域の境界情報を抽出し、該境界情報からアフィン変換行列を作成し、該アフィン変換行列を用いてマーカの正面から見たマーカ画像領域に補正し、該補正されたマーカ画像領域の中心を通る計測ライン上で前記特徴量の異なる領域の長さの比率を求め、該比率に応じた角度を術具部の回転角として求めることを特徴とする。前記特徴量の異なる領域は、青色と緑色で配色された領域であり、前記フィルタリング手段は、前記補正画像をR(赤の画像)、G(緑の画像)、B(青の画像)に分割し、分割した画像に対し画素毎にGとBの和からRを差し引く合成処理を行って緑色領域と青色領域の組によるマーカ領域を抽出することを特徴とする。あるいは、前記特徴量の異なる領域は、異なる蛍光色素で塗り分けられた領域であり、前記フィルタリング手段は前記蛍光色素の励起波長もしくは蛍光波長のみを抽出することで、前記蛍光色素の領域およびマーカ領域を抽出することを特徴とする。
【0017】
本発明の回転状態検出装置は、術野における作業をする術具と、その操作部と、操作部の操作方向を術具部に伝える伝達部と、術野における術具部の動作を観察する撮像手段と、該撮像手段により術具部の回転状態を検出する装置であって、前記伝達部の術具部側の周方向に設けられた連続模様のマーカと、前記撮像手段で取り込んだマーカ画像を画像処理し、マーカの回転角を求める画像処理装置を備え、マーカの回転角を求めることで術具部の回転状態を検出することを特徴とする。
【0018】
前記画像処理装置は、術具部とマーカの画像を取り込む画像取り込み手段と、取り込んだ画像の歪を補正する画像補正手段と、補正された画像をマーカの特徴量によって,マーカと背景との分離およびマーカの模様の分離を行ってマーカ領域を抽出するフィルタリング手段と、抽出したマーカ領域のエッジを抽出し、該エッジからアフィン変換行列を作成し、該アフィン変換行列を用いてマーカの正面から見たマーカ画像に拡大補正し、前記マーカが第1の色と第2の色の連続模様による組の場合に、前記拡大補正されたマーカ画像の中心を通る計測ライン上で第1の色領域と第2の色領域の長さの比率を求め、該比率に応じた角度を術具部の回転角として求める角度検出手段を備えることを特徴とする
前記フィルタリング手段は前記第1の色が緑、前記第2の色が青の場合に、前記補正された画像をR(赤の画像)、G(緑の画像)、B(青の画像)に分割し、分割した画像に対し画素毎にGとBの和からRを差し引く合成処理を行って緑色領域と青色領域の組によるマーカ領域を抽出することを特徴とする。
【0019】
ここで,R,G,B画像とは、元のカラー画像の各画素が赤(R),緑(G),青(B)の3色のパラメータから色が定義されており、その色パラメータのR成分(赤のパラメータ)だけを抽出して、この値をグレー値としたグレー画像がR画像である。G画像、B画像も同様である。G+B−Rの合成処理とは、各グレー画像のグレー値のパラメータについて、前記合成処理で算出した値で表現したグレー画像を生成することである。
【0020】
本発明の回転状態検出装置は、前記マーカと動作方向の相対角度および計測ラインで計測された角度を元に前記術具部の動作方向を示す矢印などの画像を生成し、前記術具部の画像に付して表示する表示情報生成手段を有する。
【0021】
前記撮像手段は内視鏡であり、前記術具部は医者によって操作部が操作されて術具部による治療が行なわれる鉗子、電気メスなどの医療用器具,あるいは前記内視鏡よりも細い内視鏡であり、前記伝達部は捩れを生じる可能性のある可撓伝達部であることを特徴とする。
【0022】
なお、術具部の動作方向の表示に代えて、手術の記録のために検出した術具部の回転角をその時々の術野の画像とともに記録したり、医療器具の自動制御にフィードバックするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、操作端と被操作端との間に捩れのある伝達部(たとえば軟性術具)の回転状態が、画面上で術具部の動作方向として示されるので、術具部の回転状態を一目で把握することができ、術具部の操作が容易になるとともに、安全性が向上できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例について、親内視鏡内部で術具(手術器具)が捩れを生じる場合のある医療用内視鏡システムを例に説明する。ここで述べている親内視鏡とは、内視鏡のもつ挿入チャネルにさらに細径の内視鏡を挿入できる内視鏡であり、その相対関係から細径の内視鏡を子内視鏡,子内視鏡を挿入している内視鏡を親内視鏡などと呼ぶものの総称である。つまり、内視鏡の挿入チャネルに更に内視鏡を挿入することも可能な医療器具挿入具であり、子内視鏡の代わりに柔軟性があり、かつ外径が挿入チャネルの内径よりも細い医療器具を挿入することができるものである。また、親内視鏡のレンズ面と挿入チャネルの出口の位置関係が固定されているが、必ずしも同じ方向を向いていなくてもかまわない。つまり、親内視鏡から所定の角度で斜め方向に医療器具が出るように関係付けられていてもかまわない。患部の状態や治療内容に応じて親内視鏡と術具の角度を変えることで治療の作業のしやすさが向上する効果が期待できる。また、親内視鏡が無く、通常の内視鏡と、医療器具がそれぞれ別々に挿入されていてもかまわない。
【0025】
図1は、一実施例による医療用内視鏡システムの全体構成図である。挿入手段3には、内視鏡レンズ(内視鏡の先端部分)6を設けた内視鏡2の挿入部2'と、術具部4を設けた可撓伝達部1'を内挿している。挿入手段3が無く、内視鏡2の挿入部2'と、術具部4を設けた可撓伝達部1'が別々に体内に挿入される構成であってもよい。挿入手段3があることで、患部まで術具部4を安全に導くことができる。体表近くの広い範囲で治療をしたい場合は挿入手段3を用いない構成とすることで、術具部を挿入手段3に制限されることなく自由に動かせる利点がある。可撓伝達部1'の他端には術者が術具部4を操作する医療器具の操作端1が設けられている。可撓伝達部1'の術具部側にはマーカ5を設けている。
【0026】
図6A、B、Cは可撓伝達部の先端部に設けられるマーカの展開図の一例である。図の上方が術具部の先端方向である。マーカ5は、マーカシートの四角領域を、マーカシートの横幅に対して高さ方向が連続的に変化する関数で表される直線や曲線で分割している連続模様を持つ。この分割の仕方の例をAからCで示している。
【0027】
図6Aの展開図で示すマーカ5は、マーカシート50の四角形の領域(例えば53bと54bを組み合わせてなる領域)を、三角形の頂角のような折れ線で領域53bと領域54bにより分割した形状である。以降51から54の添え字のアルファベットが付いているものについて、アルファベットで識別する必要のない説明では、全てを代表して添え字なしの51,52,53,54で表現する。
【0028】
図6Bの展開図で示すマーカ5は、マーカシート50の四角領域を直線で領域53と領域54に分割した形状である。
【0029】
図6A、図6Bの展開図に示すように、マーカの境界線は三角形もしくは五角形、あるいは四角形の図形となる。さらに、特定の角度範囲の精度を上げるために、該当部の勾配を大きくした任意の多角形の図形としてもよい。
【0030】
図6Cの展開図で示すマーカ5は、マーカシート50の四角領域を三角関数で領域53と領域54に分割した形状である。
【0031】
これら以外に、二次曲線などで分割する形状であっても以下に示す方法において同様の処理が可能である。
【0032】
これ以降、代表例として図6Aの場合で説明する。領域53と領域54は、フィルタリング手段でそれぞれ分離抽出可能な特徴量を持つ色で配色する。例えば、フィルタリング手段が色の特徴量を抽出する手段であれば、領域53と領域54を異なる色で塗り分ける。あるいは、フィルタリング手段が特定の蛍光塗料の波長を抽出する手段であれば、領域53と領域54は異なる波長の蛍光塗料で塗り分ける。この例のように、領域53と領域54の塗りわけはフィルタリング手段にあわせて行うが、ここでは、その一例として領域53は緑色、領域54は青色として説明する。
【0033】
マーカの領域53、54の三角形のような形状はその底辺が横幅一杯で360度になるように作成され、マーカシート50は可撓伝達部1'(術具の柄とも言う)の円周方向に1回りで貼り付けている。
【0034】
マーカ5は、円筒状の弾性部材に印刷して術具の柄に嵌装したり、術具の柄に直接印刷してもよい。貼り付け固定する手段であれば、従来から所有する術具にマーカを貼り付けるだけで治療中の角度を検出することが可能となる。この場合、マーカの横幅を変化させたバリエーションを用意して術具の直径に合ったものを貼り付ければよい。弾性部材へ印刷したマーカは、術具の柄の直径が多少かわっても、ぴったりとマーカを固定することが可能であるため、対応する術具の直径にあわせて用意するバリエーションは貼り付ける物よりも少なくてすむ。さらに直接印刷したものは、術具とマーカとの間でズレが生じることがないため、経時的な安定が得られる。
【0035】
マーカの領域53,54は本実施例の図6Aで示す例では五角形に形成されている。つまり、三角形のような頂角をもつ模様の下に所定幅(たとえば1mm)の帯が設けられてある。この帯は、後述する青と緑の比を計算する場合に、頂点及び谷の部分の一方の長さが0になってしまうことを避けるためのゲタ部分であり、計算不可能な不連続点の発生を防ぐためのものである。また、本当に0なのか否かが区別しがたい状況を回避することもできる。
【0036】
マーカは軸方向に、52aから52bで一組、52bから52cで一組、52cから53dで一組で、原理的には一組でも角度計算は可能である。マーカは画面奥になるほど縮小されて表示されるためデータの誤差が大きくなる。よって、術具の奥行きが変化しても、できるだけ手前の組で角度計算するのがよい。しかし、手術中などに血などでマーカが汚れている場合は、次に近い組を利用して角度計算できるメリットがあり、汚れに対するロバスト性が向上する。
【0037】
マーカとマーカの間には、所定幅の帯51a、51b、51c、51d、帯52a、52b、52c、52dが設けてあり、この帯は角度を検出する際の開始ラインを示すランドマークである。
【0038】
図7はマーカを術具の柄に貼り付けた状態を内視鏡で観察した一例である。この図は画像補正手段10による歪補正後の画像で、術具の柄(可撓伝達部)がその長手方向の軸心を回転軸として回転した場合に、貼り付けられたマークの見え方が変わることを(a)−(d)に示している。つまり、可撓伝達部1'に捩れがある場合に、実際のマーカ4の画像は捩れた後の見た目の角度を示す。
【0039】
図8は1組のマーカの四角領域を示した展開図である。図6の3組のマークの1つを代表した図で、青色の五角形の領域34と緑色の領域33が対応して1組の連続模様を形成する。青色の領域34の横幅は術具の柄の円周の長さ同一で、回転角度で表すと360度分の長さとなる。横軸をθとし、領域34の左端を0度とすると、任意のθでの斜線(五角形の底辺(長さ0の軸上)からの長さ(高さ))は数式によって表すことができる。領域34と対応する上部の領域33は、円周上に巻かれたマーカ5を軸周りに180度回転させた位置で見れば緑色の領域33が五角形を成す構成となる。
【0040】
医療器具の術具部4は先端で治療行為を行う鉗子、電機メス、剪刀などを持つ治療器具のほか、内視鏡や撮像手段などの観察器具も含まれる。内視鏡2は患部を含む術野を観察するとともに、術野にある術具部4とマーカ5を観察する。
【0041】
画像コントローラ7は、内視鏡2と接続されて内視鏡画像を取得し、モニタ40に出力する。画像処理装置8は、入力された内視鏡画像を解析し、画面に映し出されているマーカ画像を読み取り、術具部4(可撓伝達部1'のマーカ貼付部)の回転角度を算出する。さらに、検出した回転角度をモニタ40に出力し、術具の回転状態を情報表示する。
【0042】
図2は画像処理装置の機能ブロック図で、処理の流れも示している。画像処理装置8は画像コントローラ7からのマーカを含む元画像を取り込む画像取り込み手段9、元画像の輝度や色のむら、元画像の歪みを補正する画像補正手段10、元画像をマーカの特徴量を抽出し,背景とマーカ領域と模様を分離する画像フィルタリング手段11を有している。この分離された画像を元にマーカ画像を抽出し、マーカ画像の中心ラインが読み取れる見た目の角度(回転角度)を検出する角度検出手段12、見た目の角度から術具部4の動作方向を示す矢印などを形成する情報生成手段13、術具部と矢印の画像を合成して出力する表示情報出力手段14、検出した回転角度を記録するデータ記録手段15を有している。
【0043】
マーカ5が緑色の領域53と青色の領域54に塗り分けられている場合,画像フィルタリング手段は各画素のR(赤)G(緑)B(青)の3つの特徴量で3つの画像に分割する。
【0044】
RGB分解以外のフィルタリング手法としては、色素による吸収バンド帯の違いを利用したバンドパスフィルタを用いた手法や,マーカが蛍光色素を含む場合はその蛍光色素の蛍光波長に合わせて蛍光領域を分離・抽出する手法やレンズ面に透過波長を選択するフィルタを物理的に取り付ける手法、投光する光の波長を変化させて内視鏡画像のRGBのパラメータを予め補正し、マーカ領域を特定しやすくする手法などがあり、このような手段によってもマーカの特徴を抽出して背景から分離することができる。いずれも、体内に無い特徴量をマーカにほどこし、その特徴量を効果的に抽出するフィルタリングを行うことが可能であるため、マーカと体内臓器との識別およびマーカ模様の識別を行いやすい利点がある。以降は、マーカ5が緑色の領域53と青色の領域54に塗り分けられている場合を前提として、RGB分解によるフィルタリングを実施する場合の詳細を説明する。
【0045】
3つの画像(R,G,B)からマーカ領域を特定、抽出し、マーカ領域の軸中心に設定した検出ラインに沿ってマーカのエッジを検出し、青と緑のエッジ比率から画面に表示されるマーカの中心ラインが示す角度(θ)を検出する角度検出手段12を有している。さらに、画面に表示されるマーカの中心ラインが示す角度に基づいて、術具部4の動作方向を示す矢印などを重ねた画像を生成し、モニタ40に出力する表示情報出力段14、医療行為を記録するデータ記録手段15を備えている。角度の情報については、画面から見た角度情報だけではなく、それを元に、特定の方向から見た角度に変換してデータ記録を行うなどの利用をしてもよい。
【0046】
図3は画像補正手段の機能ブロック図で、処理の流れも示している。画像補正手段10は前処理を行うためのもので、マーカを含む元画像の輝度ムラを補正し均一な明るさにする輝度補正手段16、画面全体が何らかの色にシフトしている場合、画面の色を補正する色補正手段17、画像の歪みを補正する歪補正手段18を有し、取り込んだ元画像をこれら前処理によって補正するもので、いずれも周知の手段である。
【0047】
色補正手段17は、画面全体が特定の色にシフトしている場合にバランスを補正する手段で、事前に色のシフト状態をチェックし、そのパラメータを取得しておく。処理中(プログラムの稼動中)はこのパラメータに基づいて色の補正が行なわれる。
【0048】
歪補正手段18は、レンズの形状に依存して画像が湾曲して表示されるのを補正するもので、事前に格子模様などを撮影して歪み具合を計測して歪み補正のパラメータを取得する。処理中はこのパラメータを用いて画像を変換するので、歪み補正後の画像では、直線は直線として表示される。
【0049】
前処理された元画像は、画像フィルタリング手段11に入力する。ここでは、各画素のRGB各々のパラメータを用いて、元画像をR、G、B画像に分割する。G画像は三角パターン33(領域33)を強調した画像、B画像は三角パターン34(領域34)を強調した画像、R画像は背景となる体内を強調した画像である。
【0050】
図4は角度検出手段の機能ブロック図で、処理の流れも示している。マーカ領域抽出手段19は、画像フィルタリング手段11によって分割されたRGB画像に対し、G画像とB画像を加算し、R画像を減算する合成処理を行い、これによってマーカ領域を特定して抽出する。
【0051】
エッジ抽出手段20は、抽出されたマーカのエッジである直線成分を抽出し、その直線の傾きを計算し、エッジの2直線の交点を計算する。画像に映されている内視鏡は画面奥に向かう姿勢なので、術具部(マーカ)の先端ほど小さく表示される。拡大率補正手段21は、この交点部分が撮像手段の正面になるようにアフィン変換を行い、正面から見た画像にマーカ画像を変換する。マーカ読取手段22は、マーカ画像の軸の中心にエッジ検出ラインを設定し、このラインに沿って明暗が変わる位置にマーカ内エッジを検出する。
【0052】
角度算出手段23は、マーカ内エッジから青色と緑色の長さを読み取りその比率を計算する。この比率から読み取られる角度は、画面に映る術具の中心ラインから読み取れる見た目の角度θである。
【0053】
マーカは術具部の動作方向に対して,予め決められた条件で取り付けられる。つまり、術具部4の首振り方向がイ,ロとある場合(図示なし)、首振り方向イがマーカの0度と一致するように貼り付ける、などの条件である。このとき、マーカの0度の位置が基準となって、回転角度が記述される。
【0054】
計測によって検出される回転角度(見た目の角度)θはマーカの0度から計測した量となるが、前回検出したときのデータの差分を得ることで、経時的な相対的回転角度θ’を計算することもできる。
【0055】
ここで、θに依存した青と緑の長さは(1)、(2)式で表される。実施例の角度計算に用いたマーカの軸方向サイズは、開始ラインの高さは1mm,三角形の頂点の高さが5mmでこのうち帯の高さが1mmである。
0<θ<180度のとき、
緑の長さ=5−4θ/180、青の長さ=1+4θ/180 …(1)
180度<θ<360度のとき、
緑の長さ=−3+4θ/180、青の長さ=9−4θ/180 …(2)
なお、θ=0度のとき、緑の長さ=5、青の長さ=1、θ=180度のとき、緑の長さ=1、青の長さ=5である。
【0056】
またRa=緑の長さ÷青の長さとすると、Ra=5ならばθ=0、Ra=0.2ならばθ=180度となる。それ以外の場合は0<θ<180度、あるいは180<θ<360度となる。現在の角度がどちらに含まれるかの判別法は後述するが、それぞれにおいてRaからθを算出するには、式(1)式(2)を元に、(3)、(4)式の関係となる。
0<θ<180のとき、
θ=180(5−Ra)/(4(1+Ra)) …(3)
180<θ<360のとき、
θ=540(1+3Ra)/(4(1+Ra)) …(4)
ところで、マーカの計測点が斜面であれば、同じ青緑比に2つの解が存在する。図9はマーカの2つの斜面で同じ青緑比となるケースを示す説明図である。図のグラフで、任意の角度θ(たとえばθa)における青色の高さ(たとえば0〜点35の長さ)をその延長上である四角形領域の高さから差し引くと、五角形の領域33の緑色の高さが分かる。このときの、緑色と青色の高さ(長さ)比率が分かれば、任意の回転角度θを逆算できる。
【0057】
図9で、軸周方向回転角θに対する青緑長さの比が同一になるθa、θa'が存在する。θaは0〜180度の間、θa’は180度〜360度の間である。このように、同一角度となる計測点35、36の有る斜面の選択方法は次のように行なわれる。
【0058】
図10は緑を基準として選択する場合の説明図で、以下の(1)〜(5)の手順で斜面の一方が選択される。
(1)青と緑の境界を抽出する計測ライン(術具4または可撓挿入部1'の中心線)と画面横軸のなす角度をφとする。
(2)計測ラインと画面横軸の交点pを求める.
(3)緑領域の面の重心gを計算する。
(4)gとpを結ぶ直線が画面横軸となす角度φ’の大きさを計測ラインのなす角度φと比較する。
(5)φ’>φのとき、青色五角形の右斜面(180度<θ<360度)、φ>φ’のとき、青色五角形の左斜面(0度<θ<180度)、φ=φ’のとき、計測ラインが頂点を通っている(θ=0もしくは180度)ので、緑と青の比から0と180度を識別する。
【0059】
図5は情報生成手段の機能ブロック図と処理の流れを示している。情報生成手段13は角度検出手段12で検出したデータを基に、データの記録や情報の表示など、目的に合わせた処理を行う。
【0060】
情報利用による処理振り分け手段30は、検出した角度の利用の仕方で基準からの角度補正手段24と表示画像補正手段25に以後の処理を振り分ける。ここで、回転角度とは、基準の姿勢を決めて、その姿勢を初期姿勢とし、術具がこの初期姿勢からどのくらい回転しているかを回転角度と定義する。
【0061】
角度補正手段24は、見た目の角度と初期姿勢との差分を計算して、初期姿勢からの変化量(回転角度)をデータ記録手段15に記録する。画面に映る中心ラインの角度情報を保存する場合は、角度補正手段24を通さず、そのままデータ記録手段15で記録する。この回転角度は操作端側にフィードバックされて、軟性鉗子マニュピュレータなどの自動制御に用いることも可能である。
【0062】
表示画像補正手段25は、一例として動作方向を矢印で示す場合を説明する。回転角度が0(初期姿勢)の場合に表示する矢印の向き(正方向)は予め決めてあり、この初期の矢印の向きから、術具部の回転角度の量だけ向きをずらして矢印を表示する。
【0063】
画面に映る術具部の中心ライン(計測ライン)から読み取れる角度情報(見た目の角度)の場合、表示画像補正手段25はその中心ラインを回転の軸として、表示する矢印を角度情報の分だけ回転させる。情報生成手段26はその回転後の矢印を生成し、画像合成手段27はこの矢印が所定の位置となるように内視鏡画像と合成し、表示情報出力手段14に出力し、モニタ40に表示する。これにより、術具部4がどちらの方向に動くかを画面上の矢印を見ることで、一目で分かるように表示できる。なお、角度情報としては矢印のほかに、マーク、アイコンなどによってもよい。
【0064】
次に、一実施例による回転状態検出方法の手順を説明する。図11、図12、図13は画像処理装置8による回転角度の検出手順を示すフローチャートである。また図14〜図17は各処理の結果を示す説明図である。
【0065】
ステップs101は、画像補正手段10から画像フィルタリング手段11に対する出力処理である。図14のマーカ画像のうち、(a)の補正画像が出力される。
【0066】
ステップs102は、画像フィルタリング手段11による作業で、補正画像はR、G、Bの画像に分解される。図14(b)、(c)、(d)はそれぞれR画像61、G画像62、B画像63で、R画像、G画像、B画像はそれぞれ元のカラー画像の画素が持っていた赤,緑,青のパラメータをそのままグレー値とした画像である。
【0067】
ステップs103以降が角度検出手段12による作業である。まず、R画像、G画像、B画像により、G画像とB画像の和からR画像を差し引く(G+B−R)の合成処理を経てマーカ画像64が抽出される。これによって、図15(a)のように、マーカ画像のみを浮き上がらせて抽出する。
【0068】
ステップs104では、マーカ領域周囲の境界線を抽出し(図15(b))、曲線と直線に分解し、その中から直線のみを抽出し(図15(c))、長い直線2本66,67を選ぶ(s105)。ステップs106は、抽出した直線の傾きを計算し、ステップs107で2直線の延長線(点線)68,69の交点座標を計算する(図15(d)の点C)。
【0069】
ステップs108は、2本の直線の傾きの平均値c(平均値cを傾きcと呼ぶことにする)を計算し、ステップs109では、点Cを通り、傾きcの直線(図15(d)の直線70)を生成し、これを中心ラインとする。
【0070】
ステップs110では、2本の直線66,67の両端の座標(4点)を取得し、ステップs111では、2本の直線の1本を選び、その直線の手前側(術具の手前方向)の点a1を選び(図16(a))、ステップs112では点a1と中心ライン70の距離Lを算出する。ステップs113では、点a1に対し中心ライン70を挟んだ対象点(点A2)と、点a3に対し中心ライン70を挟んで等距離にある線対称な対象点(点a4')を作成し、ステップs114では、点a1を含む直線66の他方の端点(a3)を通り、中心ライン70に直交するライン上で、中心ラインから距離Lだけ離れた点A3を作成し、ステップs115では、点A3に対し中心ライン70を挟んだ対象点(A4)を作成する(図16(b))。
【0071】
ステップs116ではアフィン変換行列の作成を行う。点a1,A2,a3、a4’を変換前の4点、点a1、A2、A3、A4を変換後の4点として、変換前の4点が変換後の4点になるようなアフィン変換回転行列を作成する。
【0072】
ステップs117では、アフィン変換行列を用いてマーカの画像を変換する。図17に変換後の画像を示す。この例は、図14(c)の画像をアフィン変換行列によって変換したものである。図14では術具部の先端側になるに従い縮小されていたマーカ模様が、図17では根元側から先端側まで等しい拡大率となるように、画像を3次元的に回転変換した結果を示している。
【0073】
ステップs118では、アフィン変換後のマーカ領域と中心ラインとの和領域を求め、エッジ検出ライン72を作成している。ステップs119では、エッジ検出ライン72に沿って、マーカ模様のエッジを検出する。検出されたエッジは、図17にエッジ検出ライン72上の×印で示している。
【0074】
ステップs120では、青緑比率を計算する。マーカ模様のエッジとして検出された×印の手前側から見て、2個目(73)と3個目(74)の間の距離が青色領域の長さであり、3個目(74)と4個目(75)の距離が緑領域の長さである。緑色領域の長さを青色領域の長さで割った比率をRa(緑/青)とする。ここで、マーカに用いられる青色と緑色の比率は逆であってもよく、予め決めておけばよい。
【0075】
ステップs121は、上述したマーカの2つの斜面の選択に係る処理である。まず、図17で距離を計測した緑色領域77に注目し、緑色領域のうち、見えている緑色領域77の重心(g)76を計測する。重心76は中心ライン72の右側にあり、青領域の三角形部分の斜辺が右下がりになっている部分が見えていると判断できる。中心ラインと画面横軸の交点pがなす角度φ(図10)と、重心gと交点pを結ぶ直線がなす角度φ’(図10)の大きさを比較することで、上述したように選択する斜面を決定できる。
【0076】
ステップs122は、青緑の比率Raと選択した斜面の傾きから、画面に映る術具柄の中心ラインに沿った角度情報を算出する。
【0077】
図18は情報生成手段の処理を示すフローチャート、図19、図20は各処理の結果を示す説明図である。情報生成手段13は術具部4の動作方向を示す画像を生成する。ここでは、動作方向を矢印で示す例を説明する。
【0078】
s201では、s103(図11)で抽出したマーカ領域から円弧成分を抽出する。図19(a)の円弧成分64から(b)の円弧82を抽出する。s202では、抽出した円弧成分に対し楕円フィッティングを行う。すなわち、楕円の円弧の一部がs201で抽出した円弧82と一致する楕円パラメータが、図19(c)の83のように特定される。
【0079】
s203では、図19(c)のように、楕円の中心点a5を通る楕円の長軸と短軸と、円弧82との交点a6,a7,a8,a9を抽出する。短軸は中心ライン70の方向と一致する。
【0080】
s204では、点a5から点a7までの距離L2を取得する。s205では、中心点(a5)から短軸方向に向かい、距離L2の位置にある点A6,A8の座標を取得する。s206では、点a6,a7,a8,a9を変換前の4点、点A6,a7,A8,a9を変換後4点として、変換前の4点を変換後の4点になるような回転行列(アフィン変換行列)を作成する。変換後は、中心点から各点までの距離が等しい円の形状となる(図20の円84)。
【0081】
s207では、変換後の円上で、中心ラインの示す角度から、動作方向を示す矢印の向きを特定する。具体的に説明すると、マーカを医療器具に設けるときに、マーカが示すどの角度の位置が動作方向であるかを予め決め、医療器具が首振り動作Mx、首振り動作Myを行うとする。動作Mxを行う方向がマーカ上で示されるθx(度)の位置、動作Myを行う方向がマーカ上で示されるθy(度)の位置になっているとすると、MyとMxの動作方向が直交していれば、θx(度)とθy(度)の間隔は90度となる。医療器具に応じて、MyとMxの間隔が直交でなければ、おのずとθx(度)とθy(度)の間隔は動作方向にあわせた値となる。
【0082】
たとえば、中心ラインが示す角度がθa'(度)と算出され、動作方向Mx,Myを示すθx(度)とθy(度)も分かっているとする。そこで、θx(度)、θy(度)の角度に向けて矢印を表すためには、中心ラインからθx(度)とθa'(度)の差だけ矢印を回転させればよい。θy(度)を示す矢印も同様である。そこで、図20に示すように、円の中心から伸びる矢印を、中心ラインが示す方向から、θx(度)とθa'(度)の差だけ円の中心点回りに回転させて矢印86を表示する。
【0083】
s208では、s207で作成したθx(度)と、θy(度)を示す矢印は、円の形状84に重ねて作成したものであるので、円84を元の楕円83に戻す行列を用いて、矢印をアフィン変換する。変換後の矢印は86'となる。この変換のための行列はs206で作成した楕円から円へ変換する行列の逆行列である。以上が情報生成手段26の処理作業である。実際に表示をさせるにはマーカ画像との画像合成が必要になる。
【0084】
s209では、逆変換後の矢印を内視鏡画像上の所定の位置に表示する(図21(b)の矢印80、81)。
【0085】
図21は医療器具の操作部と内視鏡画面の様子を示す説明図である。医療器具の操作部は、図21(a)に示すように、互いに直交する軸の方向78と方向79に術具部4を動かすことができる(特許文献1参照)。これに合わせて、先端の術具部4も2方向に首振りをできるが、画面上ではどちらに首を振るか分からない場合がある。そこで、方向78の正方向(反時計回り)を図示の矢印方向、方向79の正方向(反時計回り)を図示の矢印方向と予め設定し、それぞれ正方向に動かしたときに術具がどの方向に首を振るかを、図21(b)のように画面上に矢印80、81で表示する。
【0086】
矢印のデザインや表示位置は図示のものに限られない。移動後の姿勢をCGにより薄く重ね合わせてもよく、操作者の好みに随時変更が可能である。また表示するタイミングは、常時表示してもよいし、操作者が必要とするときにフットスイッチ等によって表示させてもよい。
【0087】
本実施例では、情報生成手段13及び表示情報出力手段14によって、これらの表示を行うので、操作部と術具の間に捩れがある場合でも、操作によって動く方向を、実際に医療器具を動かさなくても画面上の情報として把握することができる。
本実施例で示した図6Aのマーカの展開図を用いた場合、青領域と緑領域の比率から該当する回転角度が二つあるため、上述のように、これを絞り込むためのステップが必要となる。これに対して図6Bのマーカの展開図を用いると、青領域と緑領域の比率から該当する回転角度は一つであるため、図6Aで必要となった絞込みのためのステップは必要なくなり、処理速度が向上する。
【0088】
また、図6Aのマーカの展開図は青領域と緑領域を直線で区切っているため、術具の回転角度に応じた青領域と緑領域の比率が変化する割合は常に一定である。これに対して図6Cのマーカの展開図を用いると、青領域と緑領域を三角関数で区切っているため、上記比率が緩やかに変化する範囲と急激に変化する範囲が存在する。急激に変化する範囲では、回転角度に対する青領域と緑領域の変化が大きくなるため、回転角度の検出精度が高くなる。よって、術具の回転角度の検出精度を高めたい範囲にあわせてマーカを貼り付けることで、精度が必要な範囲においては、図6Aのマーカを用いるよりも、高い精度で回転角度を検出することができる効果がある。
【0089】
図6Aから図6Cのいずれのマーカでも、領域の境界が途切れることなく連続しているため、術具の回転角度を全ての範囲において連続的に検出することが可能である。
【0090】
本実施例では、マーカを青領域と緑領域で配色したが、これは画像をRGBのパラメータで識別するときに、体内に多い赤と区別しやすい利点がある。これとは別に、二つの領域を異なる波長の蛍光塗料で配色する方法では、特定の波長を検出するフィルタリングによって、体内の色などに関係なく、蛍光領域のみを抽出できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記実施例においては、主に医療用軟性鉗子の制御を例にしているがこれに限られるものではない。工業用ロボットのマニュピュレータや配管等の検査・作業ロボットなどの作業端を、軟性術部を介して操作端から操作する場合に広く適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施例による医療用内視鏡システムの全体構成図。
【図2】一実施例による画像処理装置の機能ブロック図。
【図3】画像補正手段の機能ブロック図。
【図4】角度検出手段の機能ブロック図。
【図5】情報生成手段の機能ブロック図。
【図6A】マーカの展開図(三角形の頂点を含む領域分割)。
【図6B】マーカの展開図(斜めの直線による領域分割)。
【図6C】マーカの展開図(三角関数の曲線による領域分割)。
【図7】マーカを術具の柄に貼り付けた状態を内視鏡で観察した場合の説明図。
【図8】1組のマーカの展開図。
【図9】マーカの2つの斜面で同じ青緑比となるケースを示す説明図。
【図10】斜面の選択方法を示す説明図。
【図11】画像処理手段による回転角度の検出手順を示すフローチャート(その1)。
【図12】画像処理手段による回転角度の検出手順を示すフローチャート(その2)。
【図13】画像処理手段による回転角度の検出手順を示すフローチャート(その3)。
【図14】マーカ画像とRGB画像の説明図。
【図15】マーカ領域の直線分抽出の説明図。
【図16】アフィン変換行列作成の説明図。
【図17】アフィン変換後のマーカの拡大図。
【図18】表示画像生成処理を示すフローチャート。
【図19】表示画像生成処理の結果を示す説明図(その1)。
【図20】表示画像生成処理の結果を示す説明図(その2)。
【図21】医療器具の操作部と内視鏡画面の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0093】
1…医療器具の操作部、1'…可撓伝達部、2…内視鏡、2'…内視鏡挿入部、3…挿入手段、4…術具部、5…マーカ、6…内視鏡レンズ、7…画像コントローラ、8…画像処理装置、9…画像取り込み手段、10…画像補正手段、11…画像フィルタリング手段、12…角度検出手段、13…情報生成手段、14…表示情報出力手段、15…データ記録手段、16…輝度補正手段、17…色補正手段、18…歪み補正手段、19…マーカ領域抽出手段、20…エッジ抽出手段、21…拡大率補正手段、22…マーカ読取手段、23…角度算出手段、24…基準からの角度補正手段、25…表示画像補正手段、26…表示画像作成手段、27…画像合成手段、30…処理振り分け手段、40…モニタ、50…マーカシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部の操作量を伝達部により術具部に伝えるとともに、術野における術具部の動作を撮影する撮像手段を用いて前記術具部の回転状態を検出する方法であって、
前記伝達部の前記術具部側に設けられ周方向に連続する連続模様を備えたマーカを有し、前記撮像手段で前記マーカを撮像したマーカ画像情報を取り込んで画像処理し、前記マーカの回転角を求めることで前記術具部の回転状態を検出することを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項2】
請求項1において、前記マーカは、前記連続模様の領域を区切る境界線の少なくとも一つが、周方向に対して軸方向の位置が連続的に変化する直線もしくは曲線である回転状態検出方法。
【請求項3】
請求項1において、前記マーカは、前記連続模様の領域を区切る一方の境界線が直線と、この境界線に対して他方の境界線は軸方向の位置が連続的に変化する直線もしくは曲線とを有し、これらの境界線により前記マーカは多角形もしくは曲線図形を含み、前記マーカは前記境界線を挟んで軸方向に色の特徴量が異なる回転状態検出方法。
【請求項4】
請求項2または3において、前記マーカ画像情報を画像処理して前記マーカ画像情報におけるマーカ表示領域の奥行き方向の中心を示す計測ラインを求め、この計測ラインに沿って前記軸方向に区切られている領域の比率を求め、この比率に該当する前記マーカ上の周方向位置から回転角を求める回転状態検出方法。
【請求項5】
請求項4において、前記マーカは前記連続模様の領域を区切る境界線を挟んで青色と緑色の領域を有していて、前記比率は青色領域と緑色領域の比率である回転状態検出方法。
【請求項6】
請求項2または3において、前記マーカは前記伝達部の軸方向に複数の前記連続模様の領域を有している回転状態検出方法。
【請求項7】
請求項4において、前記比率に該当する回転角が2つある場合に、前記マーカ画像情報におけるマーカ表示領域の横軸と前記計測ラインが交わる交点と、前記区切られた1つの領域の面の重心と前記交点を結ぶ延長線を求め、前記計測ラインと前記横軸がなす角度と前記延長線と前記横軸のなす角度に基づいて回転角を選択する回転状態検出方法。
【請求項8】
請求項7において、マーカと動作方向の相対角度および計測ラインで計測された角度を元に前記術具部の動作方向を示す指示画像を生成し、前記撮像手段の撮像画像における術具部表示領域に付して表示する回転状態検出方法。
【請求項9】
操作部の操作方向を伝達部により術具部に伝えるとともに、術野における前記術具部の動作を撮像する撮像手段を用いて前記術具部の回転状態を検出する方法であって、
前記伝達部の前記術具部側に設けられ特徴量の異なる領域がそれぞれ周方向に連続する連続模様を備えたマーカを有し、前記撮像手段で前記マーカを撮像したマーカ画像情報を取り込んで画像処理し、前記マーカの回転角を求めて前記術具部の回転状態を検出する場合に、
取り込んだマーカ画像情報におけるマーカ表示領域の歪を補正して補正画像情報を生成し、この補正画像情報をフィルタリング手段によってマーカ画像の特徴量を基に前記マーカと背景との分離および前記マーカの模様の分離を行って抽出したマーカ画像領域の境界情報を抽出し、該境界情報からアフィン変換行列を作成し、該アフィン変換行列を用いてマーカの正面から見たマーカ画像領域に補正し、該補正されたマーカ画像領域の中心を通る計測ライン上で前記特徴量の異なる領域の長さの比率を求め、該比率に応じた角度を術具部の回転角として求めることを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項10】
請求項9において、前記特徴量の異なる領域は、青色と緑色で配色された領域であり、前記フィルタリング手段は、前記補正画像をR(赤の画像)、G(緑の画像)、B(青の画像)に分割し、分割した画像に対し画素毎にGとBの和からRを差し引く合成処理を行って緑色領域と青色領域の組によるマーカ領域を抽出することを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項11】
請求項9において、前記特徴量の異なる領域は、異なる蛍光色素で塗り分けられた領域であり、前記フィルタリング手段は前記蛍光色素の励起波長もしくは蛍光波長のみを抽出することで、前記蛍光色素の領域およびマーカ領域を抽出することを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項12】
術野における作業をする術具と、その操作部と、操作部の操作方向を術具部に伝える伝達部と、術野における術具部の動作を観察する撮像手段と、該撮像手段により術具部の回転状態を検出する装置であって、
前記伝達部の術具部側の周方向に設けられた連続模様のマーカと、前記撮像手段で取り込んだマーカ画像を画像処理し、マーカの回転角を求める画像処理装置を備え、マーカの回転角を求めることで術具部の回転状態を検出することを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項13】
請求項12において、前記画像処理装置は、術具部とマーカの画像を取り込む画像取り込み手段と、取り込んだ画像の歪を補正する画像補正手段と、補正された画像をマーカの特徴量によって,マーカと背景との分離およびマーカの模様の分離を行ってマーカ領域を抽出するフィルタリング手段と、抽出したマーカ領域のエッジを抽出し、該エッジからアフィン変換行列を作成し、該アフィン変換行列を用いてマーカの正面から見たマーカ画像に拡大補正し、前記マーカが第1の色と第2の色の連続模様による組の場合に、前記拡大補正されたマーカ画像の中心を通る計測ライン上で第1の色領域と第2の色領域の長さの比率を求め、該比率に応じた角度を術具部の回転角として求める角度検出手段を備えることを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項14】
請求項13において、前記フィルタリング手段は前記第1の色が緑、前記第2の色が青の場合に、前記補正された画像をR(赤の画像)、G(緑の画像)、B(青の画像)に分割し、分割した画像に対し画素毎にGとBの和からRを差し引く合成処理を行って緑色領域と青色領域の組によるマーカ領域を抽出することを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項15】
請求項12において、前記マーカと動作方向の相対角度および計測ラインで計測された角度を元に前記術具部の動作方向を示す矢印などの画像を生成し、前記術具部の画像に付して表示する表示情報生成手段を有することを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項16】
請求項12において、前記撮像手段は内視鏡であり、前記術具部は医者によって操作部が操作されて術具部による治療が行なわれる鉗子、電気メスなどの医療用器具,あるいは前記内視鏡よりも細い内視鏡であり、前記伝達部は捩れを生じる可能性のある可撓伝達部であることを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項1】
操作部の操作量を伝達部により術具部に伝えるとともに、術野における術具部の動作を撮影する撮像手段を用いて前記術具部の回転状態を検出する方法であって、
前記伝達部の前記術具部側に設けられ周方向に連続する連続模様を備えたマーカを有し、前記撮像手段で前記マーカを撮像したマーカ画像情報を取り込んで画像処理し、前記マーカの回転角を求めることで前記術具部の回転状態を検出することを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項2】
請求項1において、前記マーカは、前記連続模様の領域を区切る境界線の少なくとも一つが、周方向に対して軸方向の位置が連続的に変化する直線もしくは曲線である回転状態検出方法。
【請求項3】
請求項1において、前記マーカは、前記連続模様の領域を区切る一方の境界線が直線と、この境界線に対して他方の境界線は軸方向の位置が連続的に変化する直線もしくは曲線とを有し、これらの境界線により前記マーカは多角形もしくは曲線図形を含み、前記マーカは前記境界線を挟んで軸方向に色の特徴量が異なる回転状態検出方法。
【請求項4】
請求項2または3において、前記マーカ画像情報を画像処理して前記マーカ画像情報におけるマーカ表示領域の奥行き方向の中心を示す計測ラインを求め、この計測ラインに沿って前記軸方向に区切られている領域の比率を求め、この比率に該当する前記マーカ上の周方向位置から回転角を求める回転状態検出方法。
【請求項5】
請求項4において、前記マーカは前記連続模様の領域を区切る境界線を挟んで青色と緑色の領域を有していて、前記比率は青色領域と緑色領域の比率である回転状態検出方法。
【請求項6】
請求項2または3において、前記マーカは前記伝達部の軸方向に複数の前記連続模様の領域を有している回転状態検出方法。
【請求項7】
請求項4において、前記比率に該当する回転角が2つある場合に、前記マーカ画像情報におけるマーカ表示領域の横軸と前記計測ラインが交わる交点と、前記区切られた1つの領域の面の重心と前記交点を結ぶ延長線を求め、前記計測ラインと前記横軸がなす角度と前記延長線と前記横軸のなす角度に基づいて回転角を選択する回転状態検出方法。
【請求項8】
請求項7において、マーカと動作方向の相対角度および計測ラインで計測された角度を元に前記術具部の動作方向を示す指示画像を生成し、前記撮像手段の撮像画像における術具部表示領域に付して表示する回転状態検出方法。
【請求項9】
操作部の操作方向を伝達部により術具部に伝えるとともに、術野における前記術具部の動作を撮像する撮像手段を用いて前記術具部の回転状態を検出する方法であって、
前記伝達部の前記術具部側に設けられ特徴量の異なる領域がそれぞれ周方向に連続する連続模様を備えたマーカを有し、前記撮像手段で前記マーカを撮像したマーカ画像情報を取り込んで画像処理し、前記マーカの回転角を求めて前記術具部の回転状態を検出する場合に、
取り込んだマーカ画像情報におけるマーカ表示領域の歪を補正して補正画像情報を生成し、この補正画像情報をフィルタリング手段によってマーカ画像の特徴量を基に前記マーカと背景との分離および前記マーカの模様の分離を行って抽出したマーカ画像領域の境界情報を抽出し、該境界情報からアフィン変換行列を作成し、該アフィン変換行列を用いてマーカの正面から見たマーカ画像領域に補正し、該補正されたマーカ画像領域の中心を通る計測ライン上で前記特徴量の異なる領域の長さの比率を求め、該比率に応じた角度を術具部の回転角として求めることを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項10】
請求項9において、前記特徴量の異なる領域は、青色と緑色で配色された領域であり、前記フィルタリング手段は、前記補正画像をR(赤の画像)、G(緑の画像)、B(青の画像)に分割し、分割した画像に対し画素毎にGとBの和からRを差し引く合成処理を行って緑色領域と青色領域の組によるマーカ領域を抽出することを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項11】
請求項9において、前記特徴量の異なる領域は、異なる蛍光色素で塗り分けられた領域であり、前記フィルタリング手段は前記蛍光色素の励起波長もしくは蛍光波長のみを抽出することで、前記蛍光色素の領域およびマーカ領域を抽出することを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項12】
術野における作業をする術具と、その操作部と、操作部の操作方向を術具部に伝える伝達部と、術野における術具部の動作を観察する撮像手段と、該撮像手段により術具部の回転状態を検出する装置であって、
前記伝達部の術具部側の周方向に設けられた連続模様のマーカと、前記撮像手段で取り込んだマーカ画像を画像処理し、マーカの回転角を求める画像処理装置を備え、マーカの回転角を求めることで術具部の回転状態を検出することを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項13】
請求項12において、前記画像処理装置は、術具部とマーカの画像を取り込む画像取り込み手段と、取り込んだ画像の歪を補正する画像補正手段と、補正された画像をマーカの特徴量によって,マーカと背景との分離およびマーカの模様の分離を行ってマーカ領域を抽出するフィルタリング手段と、抽出したマーカ領域のエッジを抽出し、該エッジからアフィン変換行列を作成し、該アフィン変換行列を用いてマーカの正面から見たマーカ画像に拡大補正し、前記マーカが第1の色と第2の色の連続模様による組の場合に、前記拡大補正されたマーカ画像の中心を通る計測ライン上で第1の色領域と第2の色領域の長さの比率を求め、該比率に応じた角度を術具部の回転角として求める角度検出手段を備えることを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項14】
請求項13において、前記フィルタリング手段は前記第1の色が緑、前記第2の色が青の場合に、前記補正された画像をR(赤の画像)、G(緑の画像)、B(青の画像)に分割し、分割した画像に対し画素毎にGとBの和からRを差し引く合成処理を行って緑色領域と青色領域の組によるマーカ領域を抽出することを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項15】
請求項12において、前記マーカと動作方向の相対角度および計測ラインで計測された角度を元に前記術具部の動作方向を示す矢印などの画像を生成し、前記術具部の画像に付して表示する表示情報生成手段を有することを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項16】
請求項12において、前記撮像手段は内視鏡であり、前記術具部は医者によって操作部が操作されて術具部による治療が行なわれる鉗子、電気メスなどの医療用器具,あるいは前記内視鏡よりも細い内視鏡であり、前記伝達部は捩れを生じる可能性のある可撓伝達部であることを特徴とする回転状態検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−201682(P2009−201682A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46634(P2008−46634)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(590001452)国立がんセンター総長 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(590001452)国立がんセンター総長 (80)
【Fターム(参考)】
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