説明

回転砥石装置

【課題】乾式で加工を行っても、砥石に目詰まりが生じにくい回転砥石装置を提供する。
【解決手段】回転砥石装置1は、円板状の砥石15と、砥石の中心を通る第一軸P1を軸心とし、砥石と一体的に回転する第一軸部10と、第一軸部を砥石の両側で回転自在に挿通させている一対の支持部41と、第一軸部と一体的に回転する第一回転子11と、一対の支持部が一端に設けられていると共に、第一軸に平行な第二軸P2を軸心とする第二軸部20を回転自在に挿通させている円筒体40と、円筒体の中心軸と一致すると共に第一軸と直交する直交軸Z周りに円筒体を回転させる回転駆動機構と、円筒体と同心の円環状で、円筒体を回転自在に挿通させている第一傘歯車45と、第一傘歯車と噛合し、第二軸部と一体的に回転する第二傘歯車25と、円筒体内で第二軸部と一体的に回転すると共に第一回転子を従動回転させる第二回転子21とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石を回転させて研削を行う回転砥石装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)など繊維強化複合材料は、高強度で弾性率が高いため耐衝撃性に優れると共に軽量である等の長所を有することから、航空機の部材や自動車のボディなどへの利用が期待されている材料であるが、高強度の繊維が絡み合っているため穿孔などの加工が困難である。このような難加工性材料の場合、通常の金属材料の加工に用いられる工具では、磨耗するのが極めて早いため、ダイヤモンド粒子がコーティングされたドリル等の工具が使用されることがある。ところが、かかる工具の使用はコストが嵩むという問題がある。
【0003】
そこで、炭化ケイ素、立方晶窒化ホウ素、溶融アルミナなど、非常に硬いがダイヤモンドほど高価ではないセラミックスの粒子を結合剤で結合し、焼成した回転砥石を使用して、難加工材料を加工する技術の開発が進められている。しかしながら、回転砥石を使用して研削を行う場合は、砥石に目詰まりが生じやすく、短時間の使用で研削能が低下してしまうという問題がある。すなわち、図8(a),(b)に示すように、ドリルによる穿孔と同様の態様で回転砥石Tを自転させて孔h1をあける場合、砥石は全周で被加工物Wと接触し、砥石の表面が研削粉と擦り合わされるように回転するため、研削粉が砥粒間に入り込んで容易に目詰まりしてしまう。
【0004】
また、穿孔加工として、図9(a),(b)に示すように、回転砥石Tを軸A1周りに自転させると同時に、加工すべき孔h2の中心軸A2周りに公転させながら孔h2の深さ方向に回転砥石Tを送ることにより螺旋状に研削を行う、いわゆるヘリカル加工が行われることがある(例えば、特許文献1参照)。一般的に、研削粉は砥石の自転軸に垂直な方向に飛散しやすいが、図9に例示したヘリカル加工では、回転砥石Tの自転軸A1と公転軸A2とが平行であるため、研削粉は加工される孔h2の内周面に付着しやすい。そして、研削粉が付着した孔h2の内周面に沿って、回転砥石Tが螺旋状に移動することとなるため、研削粉が砥粒間に入り込みやすく容易に目詰まりが生じてしまう。
【0005】
ここで、砥石の目詰まりを防止するために、液体で研削粉を洗い流しながら研削を行う湿式加工が公知である。しかしながら、湿式加工では、研削粉と液体とが混合した汚泥が被加工物の隙間などに入り込んでこびり付きやすく、加工後の洗浄工程が必須である。そのため、洗浄工程のために労力や経費がかかるという問題がある。特に、航空機部品など、被加工物が大型の場合は、洗浄工程に必要な設備が大掛かりとなると共に、労力や経費も多大となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、乾式で加工を行っても、砥石に目詰まりが生じにくい回転砥石装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる回転砥石装置は、「円板状の砥石と、該砥石の断面円の中心を通る第一軸を軸心とし、前記砥石と一体的に回転する第一軸部と、該第一軸部を前記砥石の両側で回転自在に挿通させている一対の支持部と、一対の該支持部間で前記第一軸部を挿通させ、前記第一軸部と一体的に回転する第一回転子と、一対の前記支持部が一端に設けられていると共に、前記第一軸に平行な第二軸を軸心とする第二軸部を回転自在に挿通させている円筒体と、該円筒体の中心軸と一致すると共に前記第一軸と直交する直交軸周りに前記円筒体を回転させる回転駆動機構と、前記円筒体と同心の円環状で、前記円筒体を回転自在に挿通させている第一傘歯車と、該第一傘歯車と噛合し、前記第二軸部と一体的に回転する第二傘歯車と、前記円筒体内で前記第二軸部を挿通させ、前記第二軸部と一体的に回転すると共に前記第一回転子を従動回転させる第二回転子と」を具備している。
【0008】
「第一傘歯車」、及び、これと噛合する「第二傘歯車」の対は、歯筋が直線状の“すぐば傘歯車”の対とすることも、歯筋が曲線状の“まがりば傘歯車”の対とすることも可能である。
【0009】
「直交軸」は「第一軸」と直交すると共に円筒体の中心軸と一致する軸であり、砥石の重心を通ると共に第一軸と直交する軸と一致する場合、及び、砥石の重心を通ると共に第一軸と直交する軸と平行な場合があり得る。なお、円筒体の中心軸とは、断面の外周が円形となるように円筒体を任意位置で切断した場合において、断面の外周円の中心点を結んだ線を指している。
【0010】
「第二回転子が第一回転子を従動回転させる」構成としては、第一回転子及び第二回転子が共にプーリであって、両者に掛け回されたベルトによって第二回転子の回転が第一回転子に伝達される構成、第一回転子及び第二回転子が共にスプロケットであって、両者に掛け回されたチェーンによって第二回転子の回転が第一回転子に伝達される構成、第一回転子及び第二回転子が互いに噛合する歯車である構成を挙げることができる。なお、歯車は、平行な二軸間で噛合する、平歯車(歯筋が回転軸に平行)、あるいは、はすば歯車(歯筋が回転軸に対して傾斜)を使用することができる。
【0011】
上記構成により、本発明の回転砥石装置は次のように動作する。まず、回転駆動機構により円筒体が直交軸周りに回転させられると、支持部及び支持部を挿通している第一軸部を介して、砥石も直交軸周りに回転する。
【0012】
一方、円筒体は円環状の第一傘歯車内で自在に回転する構成であり、第一傘歯車には第二傘歯車が噛合している。そして、この第二傘歯車は、円筒体を回転自在に挿通している第二軸部と一体的に回転する構成である。そのため、円筒体の直交軸周りの回転に伴い第二軸部が直交軸周りに回転すると、第二傘歯車が第一傘歯車と噛合いながら第二軸周りに回転し、第二軸部が第二軸周りに回転する。その結果、円筒体内で第二軸部を挿通させている第二回転子が、第二軸部と一体的に第二軸周りに回転する。
【0013】
この第二回転子に従動して第一回転子が第一軸周りに回転すると、第一軸部が第一回転子と一体的に回転する。これにより、第一軸部と一体的に回転する砥石が第一軸周りに回転する。すなわち、円筒体を直交軸周りに回転させる一方向の回転駆動のみによって、直交する二つの軸(第一軸及び直交軸)周りに、同時に砥石を回転させることができる。そして、砥石を直交する二つの軸周りに同時に回転させながら、砥石が被加工物に押し込まれるように回転砥石装置を動作させることにより、被加工物に穿孔などの研削加工を行うことができる。
【0014】
従って、本発明によれば、直交する二つの軸周りに同時に砥石を回転させることができるため、一つの回転軸しか有しない砥石で加工する場合に比べて、砥石の表面において被加工物と接触する面積が増大する。そのため、所定量の研削粉が生じる加工を行う場合で比較すると、一つの回転軸しか有しない場合に比べて、砥石の単位表面積当たりの接触により生じる研削粉の量が少なく、その分、砥石表面の目詰まりが低減される。
【0015】
また、一般的に、被加工物の研削により生じる研削粉は、砥石の自転軸に直交する方向に飛散しやすいところ、本発明では砥石は第一軸周りに回転しながら、第一軸に直交する軸周りにも回転する。そのため、第一軸を自転軸と捉えれば、自転軸に直交する方向は直交軸周りに360度回転する。これにより、本発明の回転砥石装置による加工により生じる研削粉は全方向に飛散することとなり、砥石の回転軸が一つである場合に比べて、被加工物に付着する研削粉が低減される。従って、本発明の回転砥石装置は、乾式で研削加工を行っても、砥石の表面に目詰まりが生じにくい。
【0016】
本発明にかかる回転砥石装置は、上記構成において、「前記第一回転子及び前記第二回転子はそれぞれプーリであり、前記第一回転子は、前記第一回転子と前記第二回転子との間に掛け回されたベルトを介して、前記第二回転子に従動する回転を行う」ものとすることができる。
【0017】
上記のように、第二回転子の回転をベルトを介して第一回転子に伝達することにより、第二軸部と第一軸部との間の距離が大きくても、第二軸部の回転を第一軸部に伝達することができる。加えて、難加工性材料を加工する際に、砥石に過負荷がかかったとしても、ベルトはプーリに対して滑ることが可能であるため、砥石への過負荷に起因して、第一軸部や第一回転子等が破損するおそれを低減することができる。
【0018】
本発明にかかる回転砥石装置は、上記構成において、「前記第一軸と前記第二軸との間で前記第一軸に平行な第三軸を軸心とし、前記円筒体を挿通している第三軸部と、共に前記円筒体内で前記第三軸部を挿通させ、前記第三軸部と一体的に回転する二つの第三回転子とを更に具備し、一方の前記第三回転子は前記第二回転子に従動して回転し、前記第一回転子は他方の前記第三回転子に従動して回転する」ものとすることができる。
【0019】
「第三軸」は第一軸に平行であるため、当然ながら、第一軸に平行な第二軸とも平行である。
【0020】
第二回転子の回転が一方の第三回転子に伝達される構成、及び、他方の第三回転子の回転が第一回転子に伝達される構成としては、それぞれ二つのプーリ間にベルトが掛け回される構成、二つのスプロケット間にチェーンが掛け回される構成、或いは、二つの歯車が噛合する構成を挙げることができる。なお、二つの歯車は、上記と同様に、平行な二軸間で噛合する、平歯車、または、はすば歯車を使用することができる。
【0021】
上記構成により、第二軸部の回転に伴い第二回転子が回転すると、これに従動して一方の第三回転子が回転し、第三回転軸部が第三軸周りに回転する。これに伴い、他方の第三回転子が第三軸部と一体的に回転し、その回転に従動して第一回転子が回転し、第一回転子と一体的に第一軸部が第一軸周りに回転する。
【0022】
以上のように、第二軸部と第一軸部との間に第三軸部を設け、二つの第三回転子を介して第二回転子の回転を第一回転子に伝達することにより、第二軸部と第一軸部との間の距離が更に大きくても、第二軸部の回転を第二軸部の回転を第一軸部に伝達することができる。また、第二回転子と一方の第三回転子との対、及び、他方の第三回転子と第一回転子との対の少なくとも一方を、噛合する二つの歯車で構成させた場合は、それぞれの歯車の歯数の調整により、伝達される回転の速度を減速または増速することができる。
【0023】
本発明にかかる回転砥石装置は、上記構成において、「前記回転駆動機構は、モータの駆動により前記直交軸周りに前記円筒体と一体的に回転する駆動軸部を備える」ものとすることができる。
【0024】
上記構成により、モータの回転駆動力で円筒体を直接的に回転させることができるため、エネルギーの伝達効率が良く、装置全体の構成も簡易なものとなる。
【0025】
本発明にかかる回転砥石装置は、上記構成において、「前記回転駆動機構は、前記円筒体の外周面に固着されて前記直交軸周りに回転する円環状の従動歯車と、該従動歯車と噛合し、モータの駆動により回転する駆動軸部の軸心を回転中心とする駆動歯車とを備える」ものとすることができる。
【0026】
上記構成により、「従動歯車」及び「駆動歯車」の種類を選択することにより、モータにより回転駆動される軸の方向を異ならせることができる。これにより、回転砥石装置の寸法や全体形状を、被加工物の種類や加工を行う作業スペースに応じたものとすることができる。例えば、「従動歯車」及び「駆動歯車」を平歯車とした場合は、モータにより回転駆動される軸の方向は、円筒体の回転軸(直交軸)に平行となる。また、「従動歯車」及び「駆動歯車」を傘歯車とした場合は、モータにより回転駆動される軸の方向は、円筒体の回転軸に直交する。或いは、「従動歯車」をウォームホイールとし、「駆動歯車」をウォームとした場合は、モータにより回転駆動される軸の方向は、円筒体の回転軸の方向と平行でもなく交差することもない食い違い方向となる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明の効果として、乾式で加工を行っても、砥石に目詰まりが生じにくい回転砥石装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施形態の回転砥石装置の斜視図である。
【図2】図1の回転砥石装置の側面図である。
【図3】本発明の第二実施形態の回転砥石装置の側面図である。
【図4】本発明の第三実施形態の回転砥石装置の側面図である。
【図5】本発明の第四実施形態の回転砥石装置の側面図である。
【図6】本発明の第五実施形態の回転砥石装置の側面図である。
【図7】他の実施形態を、第一実施形態の変形として例示する側面図である。
【図8】従来のドリル式の加工方法による穿孔を説明する(a)断面図、及び(b)平面図である。
【図9】従来のヘリカル式の加工方法による穿孔を説明する(a)断面図、及び(b)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第一実施形態である回転砥石装置1について、図1及び図2を用いて説明する。回転砥石装置1は、円板状の砥石15と、砥石15の断面円の中心を通る第一軸P1を軸心とし、砥石15と一体的に回転する第一軸部10と、第一軸部10を砥石15の両側で回転自在に挿通させている一対の支持部41と、一対の支持部41間で第一軸部10を挿通させ、第一軸部10と一体的に回転する第一回転子11と、一対の支持部41が一端に設けられていると共に、第一軸P1に平行な第二軸P2を軸心とする第二軸部20を回転自在に挿通させている円筒体40と、円筒体40の中心軸と一致すると共に第一軸P1と直交する直交軸Z周りに円筒体40を回転させる回転駆動機構と、円筒体40と同心の円環状で、円筒体40を回転自在に挿通させている第一傘歯車45と、第一傘歯車45と噛合し、第二軸部20と一体的に回転する第二傘歯車25と、円筒体40内で第二軸部20を挿通させ、第二軸部20と一体的に回転すると共に第一回転子11を従動回転させる第二回転子21とを具備している。
【0030】
そして、第一実施形態では、第一回転子11及び第二回転子21はそれぞれプーリであり、第一回転子11は、第一回転子11と第二回転子21との間に掛け回されたベルト27を介して、第二回転子21に従動する回転を行う。
【0031】
また、第一実施形態の回転駆動機構は、モータMの駆動により直交軸Z周りに円筒体40と一体的に回転する駆動軸部47を備えている。
【0032】
より詳細に説明すると、円筒体40は、一端が蓋部42で閉塞され他端が開口した形態である。開口端側の側周面は、対向する位置で二箇所が切り欠かれており、残片が一対の支持部41を形成している。この一対の支持部41間の空間を横切るように、第一軸部10が一端側と他端側でそれぞれ支持部41を挿通している。
【0033】
第一軸部10には、砥石15がその断面円の中心点を結んだ線が第一軸P1と一致させた状態で固着されている。これにより、第一軸部10が第一軸P1周りに回転すると、砥石15も第一軸部10と一体的に回転する。なお、本実施形態では、直交軸Zは砥石15の重心を通っている。
【0034】
また、第一軸部10には、第一回転子11としてのプーリが、回転軸を第一軸P1と一致させた状態で固着されている。なお、第一回転子11は、砥石15より小径である。
【0035】
第一軸部10より蓋部42側で、円筒体40は円環状の第一傘歯車45を挿通しているが、この第一傘歯車45の内周面と円筒体40の外周面との間には、円環状の軸受け46が介設されている。かかる構成により、円筒体40が回転しても、第一傘歯車45は回転しない。すなわち、円筒体40は第一傘歯車45内で回転自在である。
【0036】
第一傘歯車45より更に蓋部42側で、円筒体40には第二軸部20が回転自在に挿通されており、第二軸部20の方向は、第二軸部20の軸心である第二軸P2が第一軸P1と平行で、且つ、直交軸Zと直交する方向である。この第二軸部20の一端には、円筒体40より外側で第一傘歯車45と噛合する第二傘歯車25が、回転軸を第二軸P2と一致させて固着されている。なお、図1及び図2では、歯筋が先端に向かって縮径する第二傘歯車25と、外周縁から内周縁に向かって低くなるように歯筋が傾斜している第一傘歯車45が噛合している形態を例示しているが、逆に、歯筋が先端に向かって拡径する第二傘歯車と、外周縁から内周縁に向かって高くなるように歯筋が傾斜している第一傘歯車が噛合する形態であっても構わない。
【0037】
円筒体40の内部において、第二軸部20には第二回転子21としてのプーリが、回転軸を第二軸P2と一致させた状態で固着されている。ここで、第二回転子21の取り付け位置は、第一回転子11と第二回転子21それぞれの中心を結んだ線が直交軸Zに平行となる位置となっている。これにより、第一回転子11及び第二回転子21に掛け回されたベルト27の周回方向が、第一軸P1及び第二軸P2と直交する。また、第二軸部20において、第二傘歯車25が取り付けられている端部と反対側の端部には、第二傘歯車25の重量とバランスをとるためのバランサー29が取り付けられている。
【0038】
一方、回転駆動機構の構成である駆動軸部47は、その軸心を直交軸Zと一致させた状態で円筒体40の蓋部42に固着されており、モータMの駆動により回転する。
【0039】
上記構成により、単一のモータMによる回転駆動により、砥石15を直交する二つの軸(第一軸P1及び直交軸Z)周りに回転させることができる。すなわち、モータMの回転駆動により駆動軸部47が回転すると、円筒体40が直交軸Z周りに回転し、円筒体40と一体の支持部41、及び支持部41を挿通している第一軸部10を介して、砥石15も直交軸Z周りに回転する。一方で、円筒体40が回転すると、円筒体40を挿通している第二軸部20も直交軸Z周りに回転する。この第二軸部20の端部には第二傘歯車25が取り付けられているため、第二傘歯車25も直交軸Z周りに回転する。この第二傘歯車25は円環状の第一傘歯車45と噛合しているが、第一傘歯車45は円筒体40の回転に伴って回転することはないため、第一傘歯車45と噛合しながら直交軸Z周りに回転することにより、第二傘歯車25は第二軸P2周りに回転する。これにより、第二傘歯車25と一体的に第二軸部20が第二軸P2周りに回転し、更に、第二軸部20と一体的に第二回転子21が第二軸P2周りに回転する。そして、第二回転子21が回転すると、その回転がベルト27を介して第一回転子11に伝達され、第一回転子11は第二回転子21と同方向に第一軸P1周りに回転する。その結果、第一回転子11が固着された第一軸部10が第一軸P1周りに回転し、砥石15が第一軸部10と一体的に回転する。
【0040】
従って、砥石15を直交する二つの軸周りに同時に回転させながら、砥石15が被加工物に押し込まれるよう、回転砥石装置1を直交軸Zの方向に前進させることにより、被加工物に穿孔加工を行うことができる。このとき、図2に示すように、第一軸P1と直交軸Zとの交点から支持部41までの距離Lを砥石15の半径Rより短くすれば、砥石15の直径2Rよりわずかに大きな径の貫通孔を被加工物Wに穿設することができる。
【0041】
また、砥石15が直交軸Zの方向に前進しつつ直交軸Zに平行な方向に移動するように、回転砥石装置1を移動させることにより、表面研削や面取りなどの研削加工を行うことができる。なお、砥石15が直交軸Zの方向に前進・後退する、或いは、直交軸Zと平行に移動するような回転砥石装置1の移動には、多軸ロボット等の図示しない変位装置を使用することができる。例えば、図1及び図2に例示したように、円筒体40を回転自在に支持する軸受け49を円筒体40の外周面に取り付け、この軸受け49を介して回転砥石装置1全体をケーシング内に保持することにより、変位装置でケーシングごと回転砥石装置1を移動させることが可能である。或いは、回転砥石装置1全体を、ケーシングごと直交軸Zに平行な軸周りに回転させることにより、砥石15の径によらない大径の貫通孔Hを、被加工物に穿設することができる。
【0042】
以上のように、第一実施形態の回転砥石装置1によれば、円筒体40を直交軸Z周りに回転させる一方向の回転駆動のみによって、直交する二つの軸(第一軸P1及び直交軸Z)周りに、同時に砥石15を回転させることができる。
【0043】
このように、砥石15が直交する二つの軸周りに同時に回転することにより、一つの回転軸しか有しない砥石で加工する場合に比べて、砥石の単位表面積当たりの接触により生じる研削粉の量が少なく、砥石15表面の目詰まりが低減される。例えば、穿孔加工を行う場合、図8を用いて上述したドリル様の動作による穿孔とは異なり、ある時点で砥石15が全周にわたって加工される孔の内周と接触していることはないため、砥石15表面に目詰まりが生じにくい。
【0044】
また、研削粉は砥石の自転軸に直交する方向に飛散しやすいところ、本実施形態において砥石15は直交する二つの軸周りに同時に回転するため、研削粉は全方向に飛散する。その結果、砥石の回転軸が一つである場合に比べて、被加工物に付着する研削粉が低減され、乾式で研削加工を行っても、砥石15の表面に目詰まりが生じにくい。
【0045】
更に、第一実施形態では、第二回転子21及び第一回転子11を共にプーリとし、ベルト27により回転を伝達する構成であるため、第二軸部20と第一軸部10との間の距離が大きくても、第二軸部20の回転を第一軸部10に伝達することができる。加えて、加工の際に砥石15に過負荷がかかった場合であっても、ベルト27はプーリに対して滑ることが可能であるため、砥石15への過負荷に起因して第一軸部10や第一回転子11等が破損するおそれを低減することができる。
【0046】
また、第一実施形態では、駆動軸部47の軸心を直交軸Zと一致させ、モータMの回転駆動力で直接的に円筒体40を回転させているため、エネルギーの伝達効率が良く、装置全体の構成も簡易である。
【0047】
次に、第二実施形態の回転砥石装置2について、図3を用いて説明する。以下では、第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。回転砥石装置2は、円板状の砥石15と、砥石15の断面円の中心を通る第一軸P1を軸心とし、砥石15と一体的に回転する第一軸部10と、第一軸部10を砥石15の両側で回転自在に挿通させている一対の支持部41と、一対の支持部41間で第一軸部10を挿通させ、第一軸部10と一体的に回転する第一回転子12と、一対の支持部41が一端に設けられていると共に、第一軸P1に平行な第二軸P2を軸心とする第二軸部20を回転自在に挿通させている円筒体40と、円筒体40の中心軸と一致すると共に第一軸P1と直交する直交軸Z周りに円筒体40を回転させる回転駆動機構と、円筒体40と同心の円環状で、円筒体40を回転自在に挿通させている第一傘歯車45と、第一傘歯車45と噛合し、第二軸部20と一体的に回転する第二傘歯車25と、円筒体40内で第二軸部20を挿通させ、第二軸部20と一体的に回転すると共に第一回転子12を従動回転させる第二回転子21とを具備している。また、回転駆動機構は、回転砥石装置1と同様に、モータMの駆動により直交軸Z周りに円筒体40と一体的に回転する駆動軸部47を備えている。
【0048】
第二実施形態が第一実施形態と相違する点は、第二回転子21の回転を第一回転子12に伝達するための構成である。すなわち、回転砥石装置2は、第一軸P1と第二軸P2との間で第一軸P1に平行な第三軸P3を軸心とし、円筒体40を挿通している第三軸部30と、共に円筒体40内で第三軸部30を挿通させ、第三軸部30と一体的に回転する二つの第三回転子31,32とを更に具備し、一方の第三回転子31は第二回転子21に従動して回転し、第一回転子12は他方の第三回転子32に従動して回転するものである。
【0049】
より詳細に説明すると、第三軸部30は、第一軸部10と第二軸部20との間で円筒体40に回転自在に挿通されているが、この第三軸部30の方向は、軸心である第三軸P3が第一軸P1及び第二軸P2と平行で、且つ、直交軸Zと直交する方向である。また、第三軸部30には、円筒体40の内部において、二つの第三回転子31,32がそれぞれ回転軸を第三軸P3と一致させた状態で固着されている。
【0050】
本実施形態では、第二回転子21及び一方の第三回転子31はプーリであり、両者間にベルト28が掛け回されている。そして、他方の第三回転子32及び第一回転子12は、互いに噛合する平歯車である。かかる構成により、第二回転子21の回転はベルト28を介して第三回転子31に伝達され、第三回転子31の回転に伴い第三軸部30が第三軸P3周りに回転する。これにより、他方の第三回転子32が回転し、これと噛合いながら第一回転子12が回転することにより、第一回転子12と一体的に第一軸部10が第一軸P1周りに回転する。
【0051】
以上のように、第二実施形態の回転砥石装置2によれば、第二軸部20と第一軸部10との間に第三軸部30を設け、二つの第三回転子31,32を介して第二回転子21の回転を第一回転子12に伝達させているため、第二軸部20と第一軸部10との間の距離が更に大きくても、第二軸部20の回転を第二軸部20の回転を第一軸部10に伝達することができる。特に、第二回転子21の回転はベルト28を介して第三回転子31に伝達しているため、第二軸部20と第三軸部30間の距離を大きくとることが可能である。
【0052】
また、第三回転子32と第一回転子12を噛合する平歯車としたことにより、両者の歯数の調整により、伝達される回転の速度を減速または増速することができる。なお、第三回転子32及び第一回転子12は、平歯車に替えてはすば歯車を使用することができる。
【0053】
第一実施形態及び第二実施形態は、第二軸部20の回転を第一軸部10に伝達する構成が異なる例であったが、以下、回転駆動機構が上記と異なる実施形態として、第三実施形態〜第五実施形態を例示する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0054】
第三実施形態の回転砥石装置3、第四実施形態の回転砥石装置4、及び、第五実施形態の回転砥石装置5は、共通する構成として、次の構成を備えている。すなわち、回転砥石装置3,4,5において、回転駆動機構は、円筒体40の外周面に固着されて直交軸Z周りに回転する円環状の従動歯車と、従動歯車と噛合し、モータMの駆動により回転する駆動軸部の軸心を回転中心とする駆動歯車とを備えている。
【0055】
具体的には、第三実施形態の回転砥石装置3では、図4に示すように、従動歯車53及び駆動歯車63は平歯車である。かかる構成により、駆動歯車63の回転中心は直交軸Zと平行な軸Z2となり、この軸Z2を軸心とする駆動軸部63pをモータで回転させることにより円筒体40を回転させることができる。
【0056】
一方、第四実施形態の回転砥石装置4では、図5に示すように、従動歯車54及び駆動歯車64は傘歯車である。かかる構成により、駆動歯車64の回転中心は直交軸Zと直交する軸P4となり、この軸P4を軸心とする駆動軸部64pをモータで回転させることにより円筒体40を回転させることができる。
【0057】
更に、第五実施形態の回転砥石装置5では、図6に示すように、従動歯車55はウォームホイールであり、駆動歯車はウォーム65である。かかる構成により、駆動歯車65の回転中心は直交軸Zと平行でもなく交差することもない食い違い軸Qとなり、この軸Qを軸心とする駆動軸部65pをモータで回転させることにより、円筒体40を回転させることができる。
【0058】
上記のように、第三実施形態〜第五実施形態の回転砥石装置3,4,5によれば、従動歯車及び駆動歯車の種類を選択することにより、モータMにより回転駆動される軸の方向を種々とすることができ、回転砥石装置の寸法や全体形状を、被加工物の種類や加工を行う作業スペースに応じたものとすることができる。
【0059】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0060】
例えば、上記の実施形態では、砥石15の重心を通り第一軸P1と直交する軸が、直交軸Zと一致している場合を例示したが、図7に示す変形例の回転砥石装置6のように、砥石15の重心を通り第一軸10と直交する軸は直交軸Zに平行な軸Z3であっても良い。この場合は、第一軸P1と直交軸Zとの交点から支持部41のまでの距離Lを、交点から砥石15の外周縁までの最短距離dより短くすれば、交点から砥石15の外周縁までの最長距離Dを半径とする円よりわずかに大きな貫通孔を穿設することができる。なお、図7では、第一実施形態を変形した例を図示しているが、他の実施形態においても、砥石15の重心を通り第一軸P1と直交する軸を直交軸Zに平行な軸とすることが可能である。
【0061】
また、図4,5,6では、プーリである第一回転子11を図示しているが、第三実施形態〜第五実施形態の回転砥石装置3,4,5において第二回転子21の回転を第一回転子に伝達する構成は、第一実施形態で例示した構成であっても、第二実施形態で例示した構成であっても良い。更に、第二回転子及び第一回転子を噛合う二つの歯車とする構成、第二回転子、二つの第三回転子、及び、第一回転子を全て歯車で構成させ、隣接する平行な軸間で歯車を噛合させる構成、第二回転子、二つの第三回転子、及び、第一回転子を全てプーリで構成させ、隣接する平行な軸間でプーリにベルトを掛け回すなど、種々の設計とすることが可能である。
【0062】
なお、本発明の回転砥石装置は、乾式で研削を行っても砥石の表面に目詰まりが生じにくいという優れた作用効果を奏するが、湿式で研削を行うことを排除したものではない。
【符号の説明】
【0063】
1,2,3,4,5 回転砥石装置
10 第一軸部
11,12 第一回転子
15 砥石
20 第二軸部
21 第二回転子
25 第二傘歯車
27 ベルト
30 第三軸部
31,32 第三回転子
45 第一傘歯車
47,63p,64p,65p 駆動軸部
53,54,55 従動歯車
63,64,65 駆動歯車
P1 第一軸
P2 第二軸
P3 第三軸
Z 直交軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開平11−216720号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の砥石と、
該砥石の断面円の中心を通る第一軸を軸心とし、前記砥石と一体的に回転する第一軸部と、
該第一軸部を前記砥石の両側で回転自在に挿通させている一対の支持部と、
一対の該支持部間で前記第一軸部を挿通させ、前記第一軸部と一体的に回転する第一回転子と、
一対の前記支持部が一端に設けられていると共に、前記第一軸に平行な第二軸を軸心とする第二軸部を回転自在に挿通させている円筒体と、
該円筒体の中心軸と一致すると共に前記第一軸と直交する直交軸周りに前記円筒体を回転させる回転駆動機構と、
前記円筒体と同心の円環状で、前記円筒体を回転自在に挿通させている第一傘歯車と、
該第一傘歯車と噛合し、前記第二軸部と一体的に回転する第二傘歯車と、
前記円筒体内で前記第二軸部を挿通させ、前記第二軸部と一体的に回転すると共に前記第一回転子を従動回転させる第二回転子と
を具備することを特徴とする回転砥石装置。
【請求項2】
前記第一回転子及び前記第二回転子はそれぞれプーリであり、前記第一回転子は、前記第一回転子と前記第二回転子との間に掛け回されたベルトを介して、前記第二回転子に従動する回転を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の回転砥石装置。
【請求項3】
前記第一軸と前記第二軸との間で前記第一軸に平行な第三軸を軸心とし、前記円筒体を挿通している第三軸部と、
共に前記円筒体内で前記第三軸部を挿通させ、前記第三軸部と一体的に回転する二つの第三回転子とを更に具備し、
一方の前記第三回転子は前記第二回転子に従動して回転し、前記第一回転子は他方の前記第三回転子に従動して回転する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転砥石装置。
【請求項4】
前記回転駆動機構は、モータの駆動により前記直交軸周りに前記円筒体と一体的に回転する駆動軸部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の回転砥石装置。
【請求項5】
前記回転駆動機構は、
前記円筒体の外周面に固着されて前記直交軸周りに回転する円環状の従動歯車と、
該従動歯車と噛合し、モータの駆動により回転する駆動軸部の軸心を回転中心とする駆動歯車とを備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の回転砥石装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−45688(P2012−45688A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192006(P2010−192006)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(391016842)岐阜県 (70)
【Fターム(参考)】