回転角度検出装置
【課題】磁気検出手段の出力信号を、回転角度に対応して直線的に変化する波形となるようにすることによって、CPUに対する負荷の大きいアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出し、CPUへの負荷を低減するとともに算出時間を短縮することが可能な回転角度検出装置を提供する。
【解決手段】回転センサ10は、リング磁石12、ホール素子13a及び13b、ヨーク15a〜15d、駆動回路20(図示略)、並びに回転角度算出部50(図示略)により構成されており、回転体11の回転角度を検出する。リング磁石12の形状は、リング磁石12の回転方向の磁束密度の変化が直線的になるように、リング磁石12の厚さを回転方向に変化させた形状になっている。
【解決手段】回転センサ10は、リング磁石12、ホール素子13a及び13b、ヨーク15a〜15d、駆動回路20(図示略)、並びに回転角度算出部50(図示略)により構成されており、回転体11の回転角度を検出する。リング磁石12の形状は、リング磁石12の回転方向の磁束密度の変化が直線的になるように、リング磁石12の厚さを回転方向に変化させた形状になっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置に関する。特に、回転角度の算出を短時間で実行することが可能な回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転角度検出装置として、回転体に固定した磁石と、磁気の強さを検出する磁気検出器とを組合せ、回転体を磁気検出器に対して、磁石とともに回転させることにより、回転角度を検出する構成の装置が開発され、例えば、車両用エンジン、ステアリングホイール、DCモータ等の様々な分野に利用されている。特に、磁気検出手段として、ホール素子を使用した回転角度検出装置が開発され、利用されている。
【0003】
また、磁気検出手段から出力される信号(波形)は、正弦波形であることが知られている。従って、磁気検出手段から出力される信号から回転体の回転角度を算出する場合には、アークタンジェント(tan−1)関数を使用して回転角度を算出する方法が用いられている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
アークタンジェント(tan−1)関数を使用して回転角度を算出する方法を、図13及び図14を参照して説明する。図13は、従来の回転角度検出装置の外観構成の一例を示す図であり、図14は、図13のホール素子の出力信号を示した図である。ここでは、回転角度検出装置を回転センサと呼ぶ。
【0005】
図13に示すように、回転センサ90は、リング磁石92、ホール素子93a、ホール素子93bを備えており、回転体91の回転角度を検出する。リング磁石92は、回転中心軸94に平行な方向(Z軸方向)に着磁され、N極、S極をそれぞれ交互に2極ずつ有している。また、リング磁石92は、回転体91に固定されており、回転体91とともに回転する。また、ホール素子93a及び93bは、リング磁石92の径方向に垂直な方向における磁気の強さの変化を検出できるように配置されている。ここでは、ホール素子93a及び93bは、回転中心軸94に対する感磁面の法線の傾きが概ね45°となるように、リング磁石92の円周外に配置されている。
【0006】
回転センサ90を使用してリング磁石92とともに回転体91が、θだけ回転したときに、ホール素子93a及び93bから出力される信号であるホール電圧V93a及びV93bは、下記の式によって表され、図14に示すような波形になる。
【0007】
V93a=V×sinθ
V93b=V×cosθ
従って、回転体91の回転角度θは、下記の式によって表される。
【0008】
θ=tan−1(V93a/V93b)
上述したように、従来の方法では、アークタンジェント(tan−1)関数を使用して回転角度を算出する。
【特許文献1】特開2003−75108号公報
【特許文献2】特開2007−333520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、回転角度に対して直線的に変化しない正弦波形の信号を用いて、さらにアークタンジェント(tan−1)関数を使用して回転角度を算出する演算は、CPUに対する負荷が非常に大きい計算であり、この回転角度の算出処理が実行されるとCPUに対する負荷が大きくなり、CPUで実行される他の処理の遅れや算出した回転角度を使用した次処理への遅れ等が発生するという問題があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、磁気検出手段の出力信号を、回転角度に対応して直線的に変化する波形となるようにすることによって、CPUに対する負荷の大きいアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出し、CPUへの負荷を低減するとともに算出時間を短縮することが可能な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかる回転角度検出装置は、被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記被検出回転体に固定され、当該被検出回転体とともに回転するリング状の磁石と、前記磁石による磁界の強さを検知して、磁界の強さに基づいた電気量の信号を出力する磁気検出手段と、前記磁気検出手段から出力された信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、を備え、前記磁石は、前記被検出回転体の回転軸に対して平行な方向の厚さが回転方向に変化していることを特徴とする。
【0012】
この手段により、磁気検出手段の出力信号を、CPUに対する負荷の小さい信号として、CPUに対する負荷の大きい正弦波形やアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出することができる。従って、回転角度の算出処理のCPUへの負荷を低減することができるとともに算出時間を短縮することができる。
【0013】
本発明の第2の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第1の態様にかかる回転角度検出装置において、前記磁石は、前記磁気検出手段の出力が、前記被検出回転体の回転角度に対応して直線的に変化するように着磁されていることを特徴とする。
【0014】
この手段により、磁気検出手段の出力信号を、回転角度に対応して直線的に変化する波形にして、CPUに対する負荷を最小化することができる。
【0015】
本発明の第3の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第1の態様にかかる回転角度検出装置において、前記磁気検出手段の出力が、前記被検出回転体の回転に対応する角度信号であることを特徴とする。
【0016】
この手段により、磁気検出手段の出力信号を角度信号として取り扱うことができるため、CPUに対する負荷を最小化することができる。
【0017】
本発明の第4の態様にかかる回転角度検出装置は、被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記被検出回転体に固定され、当該被検出回転体とともに回転するリング状の磁石と、前記磁石による磁界の強さを検知して、磁界の強さに基づいた電気量の信号を出力し、互いに角度をもって配置される複数個の磁気検出手段と、複数個の前記磁気検出手段から出力された信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、を備え、前記磁石は、前記被検出回転体の回転軸に対して平行な方向の厚さが回転方向に変化しており、前記磁気検出手段は、前記被検出回転体の回転角度に対応して変化する波形の信号を出力し、前記回転角度算出手段は、前記複数個の磁気検出手段から出力された回転角度に対応して変化する信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出することを特徴とする。
【0018】
この手段により、CPUに入力される複数の磁気検出手段の出力信号を、CPUに対する負荷の小さい信号として、CPUに対する負荷の大きい正弦波形やアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出することができる。従って、回転角度の算出処理のCPUへの負荷を低減することができるとともに算出時間を短縮することができる。
【0019】
本発明の第5の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第4の態様にかかる回転角度検出装置において、前記磁石は、前記複数個の磁気検出手段のうち2つから出力された信号の比が、前記被検出回転体の回転角度に対して直線的に変化するように着磁されていることを特徴とする。
【0020】
この手段により、CPUに入力される複数の磁気検出手段の出力信号の比を、被検出回転体の回転角度に対応して直線的に変化するようにして、CPUに対する負荷を最小化することができる。
【0021】
本発明の第6の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第4の態様にかかる回転角度検出装置において、前記複数個の磁気検出手段のうち2つから出力された信号の比が、前記被検出回転体の回転に対応する角度信号であることを特徴とする。
【0022】
この手段により、2つの磁気検出手段の出力信号の比を角度信号として取り扱うことができるため、CPUに対する負荷を最小化することができる。
【0023】
本発明の第7の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第1から第6のいずれか1つの態様にかかる回転角度検出装置において、リング状のバックヨークを備え、前記磁石の内周側面と当該バックヨークの外周側面とが対向して接していることを特徴とする。
【0024】
この手段により、磁石の磁束密度の大きさを調整することが可能である。即ち、磁気検出手段から出力される信号の大きさを調整することができる。
【0025】
本発明の第8の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第1から第7のいずれか1つの態様にかかる回転角度検出装置において、前記磁気検出手段は、ホール素子であり、前記ホール素子を定電流駆動または低電圧駆動する駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0026】
この手段により、被検出回転体の回転角度の算出処理のCPUへの負荷を低減することができるとともに算出時間を短縮することができる回転角度検出装置を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、磁気検出手段の出力信号または複数の磁気検出手段の出力信号の比を、回転角度に対応して直線的に変化する波形にして、CPUに対する負荷の大きい正弦波形やアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出することができる。従って、回転角度の算出処理のCPUへの負荷を低減することができるとともに算出時間を短縮することができる。また、磁石の磁束密度の大きさを調整することが可能である。即ち、磁気検出手段から出力される信号の大きさを調整することができる。また、CPUに入力される複数個の磁気検出手段の出力信号の関係を、回転角度に対応して直線的に変化する波形にすることで、よりその効果が顕著となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
この発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0029】
図1は、本発明を適用可能な回転角度検出装置の外観構成の一例を示す図である。図2は、リング磁石の外観斜視図である。また、図3は、回転方向に対するリング磁石の厚さの変化の一例を示した図である。図4は、回転方向に対するリング磁石の磁束密度の変化の一例を示した図である。図5は、図1のA−A断面図である。以下、回転角度検出装置を回転センサと呼ぶ。
【0030】
図1に示すように、回転センサ10は、リング磁石12、ホール素子13a及び13b、ヨーク15a〜15d、駆動回路20(図示略)、並びに回転角度算出部50(図示略)により構成されており、回転体11の回転角度を検出する。リング磁石12は、回転中心軸14に平行な方向(Z軸方向)に着磁され、N極、S極をそれぞれ交互に2極ずつ有している。また、リング磁石12は、回転体11に固定されており、回転体11とともに回転する。
【0031】
また、リング磁石12の形状は、図2に示すように、回転中心軸14に平行な方向のリング磁石12の厚さ(以下、リング磁石12の厚さと呼ぶ)を回転方向に変化させた形状になっている。
【0032】
リング磁石12の厚さの回転方向の変化は、P点を0°としたとき、図3に示すように、リング磁石12の厚さは0°〜45°の間は滑らかに大きくなり、45°〜90°の間は滑らかに小さくなるように形成されている。また、0°〜45°の間の厚さ曲線と、45°〜90°の間の厚さ曲線とは、45°を中心線として線対称な曲線となっている。
【0033】
このとき、リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化は、図4に示すように、リング磁石12の磁束密度は0°〜45°の間は直線的(1次関数的)に大きくなり、45°〜90°の間は直線的(1次関数的)に小さくなる。また、0°〜45°の間の磁束密度の波形と、45°〜90°の間の磁束密度の波形とは、45°を中心線として線対称な波形となっている。
【0034】
90°〜180°の間、180°〜270°の間、及び270°〜360°の間のリング磁石12の厚さの変化は、それぞれ0°〜90°の間のリング磁石12の厚さの変化と同じである。
【0035】
また、90°〜180°の間、180°〜270°の間、及び270°〜360°の間のリング磁石12の磁束密度の変化は、180°〜270°の間は着磁方向が0°〜90°の間の方向と同じ方向になっているので、0°〜90°の間のリング磁石12の磁束密度の変化と同じ波形となり、90°〜180°の間及び270°〜360°の間では、着磁方向が0°〜90°の間及び180°〜270°の間の方向と反対になっているので、0°〜90°の間のリング磁石12の磁束密度の波形及び180°〜270°の間のリング磁石12の磁束密度の波形と、90°及び270°においてそれぞれ点対称な波形となっている。
【0036】
ホール素子13a及び13bは、図1に示すようにリング磁石12の径方向に垂直な方向における磁気の強さの変化を検出できるように配置されている。ここでは、ホール素子13a及び13bは、回転中心軸14に対する感磁面の法線の傾きが概ね45°となるように、リング磁石12の円周外に配置されている。
【0037】
図1、図2及び図5に示すように、ヨーク15a〜15dは、四角柱をL字型に変形した形状に形成されている。また、ヨーク15aの端面16aとヨーク15bの端面16bの間にホール素子13aが配置され、ヨーク15aの端部17aとヨーク15bの端部17bの間にリング磁石12が配置されている。ヨーク15cの端面16cとヨーク15dの端面16dの間にホール素子13bが配置され、ヨーク15cの端部17cとヨーク15dの端部17dの間にリング磁石12が配置されている。
【0038】
次に、回転角度の算出方法について説明する。
磁場中に置かれたホール素子に発生するホール電圧Vは、ホール係数及びホール素子形状等により決定されるホール感度をα、磁石等により発生する磁場の磁束密度をB、ホール素子の駆動電流をIとしたとき、下記の式によって表される。
【0039】
V=α×B×I
即ち、ホール電圧Vは、ホール感度αを一定としたとき、磁束密度B及び駆動電流Iに比例する。ホール電圧Vは、磁束密度B一定にも関わらず駆動電流Iに比例するので、この関係を感磁特性(ゲイン)と呼ぶ。
【0040】
また、リング磁石12の回転方向の磁束密度Bの変化は、図4に示したように、直線的に変化することから、リング磁石12の回転方向のホール電圧Vも直線的に変化する。図6は、図1のホール素子13a及び13bの出力信号の一例を示した図である。図6に示すように、リング磁石12とともに回転体11が、θだけ回転したときに、ホール素子13a及び13bから出力される信号であるホール電圧V13a及びV13bは、45°だけ位相のずれた信号になる。
【0041】
従って、ホール電圧V13a及びV13bの比(V13a/V13b)は、回転体11の回転角度θに比例する。これにより、アークタンジェント(tan−1)関数を使用せずに、ホール電圧V13a及びV13bの比(V13a/V13b)に基づいて、回転体11の回転角度θを算出する。
【0042】
上述したような回転センサ10を使用して回転体11の回転角度θを算出することによって、回転角度の算出処理のCPUへの負荷を大幅に低減することができる。即ち、回転体11の回転角度θの算出時間を短縮することができる。
【0043】
次に、バックヨークを備えたリング磁石を使用した場合の回転センサについて説明する。図7は、本発明を適用可能な別の回転センサ80の外観構成の一例を示す図である。図8は、バックヨークを備えたリング磁石の外観斜視図であり、図9は、図7のA−A断面図である。以下、図1に示した回転センサ10と異なる点についてのみ説明する。
【0044】
図7に示すように、回転センサ80は、リング磁石12、バックヨーク18、ホール素子13a及び13b、ヨーク15a〜15d、駆動回路20(図示略)、並びに回転角度算出部50(図示略)により構成されており、回転体11の回転角度を検出する。
【0045】
図7、図8及び図9に示すように、バックヨーク18は、リング磁石12の内周とリング状のバックヨーク18の外周とが接するように配置されている。また、バックヨーク18の形状は、図8に示すように、回転中心軸14に平行な方向のバックヨーク18の厚さ(以下、バックヨーク18の厚さと呼ぶ)は、リング磁石12の厚さと同じ厚さで、回転方向に変化させた形状になっている。
【0046】
バックヨーク18を配置することにより、リング磁石の磁束密度の大きさを変化させることができる。即ち、ホール素子13a及び13bから出力される信号の大きさを調整することができる。
【0047】
次に、本発明の好適ないくつかのリング磁石の形状及び磁束密度の実施例を説明する。
【実施例】
【0048】
図2に示したリング磁石12において、リング磁石12の厚さを、図10に示すように変化させた。ここでは、0°〜45°の間の厚さ曲線を示している。45°〜360°の間の厚さ曲線においては、45°〜90°の間の厚さ曲線は、45°を中心線として線対称な曲線となっている。また、90°〜180°の間、180°〜270°の間、及び270°〜360°の間の厚さ曲線は、それぞれ、0°〜90°の間の厚さ曲線と同じである。
【0049】
この結果、リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化は、直線的(1次関数的)な波形となった。なお、このとき、ヨーク15a及び15bの相対透磁率は1000としている。図11は、リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化を示した図である。図11に示すように、0°〜45°の間は直線的(1次関数的)に大きくなり、45°〜90°の間は直線的(1次関数的)に小さくなる。また、0°〜45°の間の磁束密度の波形と、45°〜90°の間の磁束密度の波形とは、45°を中心線として線対称な波形となっている。
【0050】
従って、リング磁石12を備えた回転センサ10を使用して回転体11の回転角度θを検出する場合、ホール素子13a及び13bから出力される信号は、回転角度に対応して直線的に変化する波形となり、アークタンジェント(tan−1)関数のような負荷の高い演算処理をすることなく、簡単に短時間で回転体11の回転角度θを算出することができる。
【0051】
次に、図8に示したバックヨーク18を備えたリング磁石12において、リング磁石12及びバックヨーク18の厚さを、図10に示すように変化させた。この結果、リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化は、直線的(1次関数的)な波形となった。なお、このとき、ヨーク15a及び15bの相対透磁率は1000とし、バックヨーク18の相対透磁率は9としている。
【0052】
図12は、バックヨーク18を備えたリング磁石12の磁束密度の回転方向の変化を示した図である。図12に示すように、0°〜45°の間は直線的(1次関数的)に大きくなり、45°〜90°の間は直線的(1次関数的)に小さくなる。また、0°〜45°の間の磁束密度の波形と、45°〜90°の間の磁束密度の波形とは、45°を中心線として線対称な波形となっている。また、図11に比較して、磁束密度を大きさが小さくなった。
【0053】
従って、バックヨーク18とリング磁石12を備えた回転センサ10を使用することにより、リング磁石12の磁束密度の大きさを調整することができる。即ち、ホール素子13a及び13bから出力される信号の大きさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明を適用可能な回転角度検出装置の外観構成の一例を示す図である。
【図2】リング磁石の外観斜視図である。
【図3】回転方向に対するリング磁石の厚さの変化の一例を示した図である。
【図4】回転方向に対するリング磁石の磁束密度の変化の一例を示した図である。
【図5】図1のA−A断面図である。
【図6】図1のホール素子13a及び13bの出力信号の一例を示した図である。
【図7】本発明を適用可能な別の回転センサの外観構成の一例を示す図である。
【図8】バックヨークを備えたリング磁石の外観斜視図である。
【図9】図7のA−A断面図である。
【図10】実施例における回転方向に対するリング磁石の厚さの変化を示した図である。
【図11】リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化を示した図である。
【図12】バックヨーク18を備えたリング磁石12の磁束密度の回転方向の変化を示した図である。
【図13】従来の回転角度検出装置の外観構成の一例を示す図である。
【図14】図13のホール素子の出力信号を示した図である。
【符号の説明】
【0055】
10 回転センサ
11 回転体
12 リング磁石
13a、13b ホール素子
14 回転中心軸
15a、15b、15c、15d ヨーク
18 バックヨーク
20 駆動回路
50 回転角度算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置に関する。特に、回転角度の算出を短時間で実行することが可能な回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転角度検出装置として、回転体に固定した磁石と、磁気の強さを検出する磁気検出器とを組合せ、回転体を磁気検出器に対して、磁石とともに回転させることにより、回転角度を検出する構成の装置が開発され、例えば、車両用エンジン、ステアリングホイール、DCモータ等の様々な分野に利用されている。特に、磁気検出手段として、ホール素子を使用した回転角度検出装置が開発され、利用されている。
【0003】
また、磁気検出手段から出力される信号(波形)は、正弦波形であることが知られている。従って、磁気検出手段から出力される信号から回転体の回転角度を算出する場合には、アークタンジェント(tan−1)関数を使用して回転角度を算出する方法が用いられている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
アークタンジェント(tan−1)関数を使用して回転角度を算出する方法を、図13及び図14を参照して説明する。図13は、従来の回転角度検出装置の外観構成の一例を示す図であり、図14は、図13のホール素子の出力信号を示した図である。ここでは、回転角度検出装置を回転センサと呼ぶ。
【0005】
図13に示すように、回転センサ90は、リング磁石92、ホール素子93a、ホール素子93bを備えており、回転体91の回転角度を検出する。リング磁石92は、回転中心軸94に平行な方向(Z軸方向)に着磁され、N極、S極をそれぞれ交互に2極ずつ有している。また、リング磁石92は、回転体91に固定されており、回転体91とともに回転する。また、ホール素子93a及び93bは、リング磁石92の径方向に垂直な方向における磁気の強さの変化を検出できるように配置されている。ここでは、ホール素子93a及び93bは、回転中心軸94に対する感磁面の法線の傾きが概ね45°となるように、リング磁石92の円周外に配置されている。
【0006】
回転センサ90を使用してリング磁石92とともに回転体91が、θだけ回転したときに、ホール素子93a及び93bから出力される信号であるホール電圧V93a及びV93bは、下記の式によって表され、図14に示すような波形になる。
【0007】
V93a=V×sinθ
V93b=V×cosθ
従って、回転体91の回転角度θは、下記の式によって表される。
【0008】
θ=tan−1(V93a/V93b)
上述したように、従来の方法では、アークタンジェント(tan−1)関数を使用して回転角度を算出する。
【特許文献1】特開2003−75108号公報
【特許文献2】特開2007−333520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、回転角度に対して直線的に変化しない正弦波形の信号を用いて、さらにアークタンジェント(tan−1)関数を使用して回転角度を算出する演算は、CPUに対する負荷が非常に大きい計算であり、この回転角度の算出処理が実行されるとCPUに対する負荷が大きくなり、CPUで実行される他の処理の遅れや算出した回転角度を使用した次処理への遅れ等が発生するという問題があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、磁気検出手段の出力信号を、回転角度に対応して直線的に変化する波形となるようにすることによって、CPUに対する負荷の大きいアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出し、CPUへの負荷を低減するとともに算出時間を短縮することが可能な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかる回転角度検出装置は、被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記被検出回転体に固定され、当該被検出回転体とともに回転するリング状の磁石と、前記磁石による磁界の強さを検知して、磁界の強さに基づいた電気量の信号を出力する磁気検出手段と、前記磁気検出手段から出力された信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、を備え、前記磁石は、前記被検出回転体の回転軸に対して平行な方向の厚さが回転方向に変化していることを特徴とする。
【0012】
この手段により、磁気検出手段の出力信号を、CPUに対する負荷の小さい信号として、CPUに対する負荷の大きい正弦波形やアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出することができる。従って、回転角度の算出処理のCPUへの負荷を低減することができるとともに算出時間を短縮することができる。
【0013】
本発明の第2の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第1の態様にかかる回転角度検出装置において、前記磁石は、前記磁気検出手段の出力が、前記被検出回転体の回転角度に対応して直線的に変化するように着磁されていることを特徴とする。
【0014】
この手段により、磁気検出手段の出力信号を、回転角度に対応して直線的に変化する波形にして、CPUに対する負荷を最小化することができる。
【0015】
本発明の第3の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第1の態様にかかる回転角度検出装置において、前記磁気検出手段の出力が、前記被検出回転体の回転に対応する角度信号であることを特徴とする。
【0016】
この手段により、磁気検出手段の出力信号を角度信号として取り扱うことができるため、CPUに対する負荷を最小化することができる。
【0017】
本発明の第4の態様にかかる回転角度検出装置は、被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記被検出回転体に固定され、当該被検出回転体とともに回転するリング状の磁石と、前記磁石による磁界の強さを検知して、磁界の強さに基づいた電気量の信号を出力し、互いに角度をもって配置される複数個の磁気検出手段と、複数個の前記磁気検出手段から出力された信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、を備え、前記磁石は、前記被検出回転体の回転軸に対して平行な方向の厚さが回転方向に変化しており、前記磁気検出手段は、前記被検出回転体の回転角度に対応して変化する波形の信号を出力し、前記回転角度算出手段は、前記複数個の磁気検出手段から出力された回転角度に対応して変化する信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出することを特徴とする。
【0018】
この手段により、CPUに入力される複数の磁気検出手段の出力信号を、CPUに対する負荷の小さい信号として、CPUに対する負荷の大きい正弦波形やアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出することができる。従って、回転角度の算出処理のCPUへの負荷を低減することができるとともに算出時間を短縮することができる。
【0019】
本発明の第5の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第4の態様にかかる回転角度検出装置において、前記磁石は、前記複数個の磁気検出手段のうち2つから出力された信号の比が、前記被検出回転体の回転角度に対して直線的に変化するように着磁されていることを特徴とする。
【0020】
この手段により、CPUに入力される複数の磁気検出手段の出力信号の比を、被検出回転体の回転角度に対応して直線的に変化するようにして、CPUに対する負荷を最小化することができる。
【0021】
本発明の第6の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第4の態様にかかる回転角度検出装置において、前記複数個の磁気検出手段のうち2つから出力された信号の比が、前記被検出回転体の回転に対応する角度信号であることを特徴とする。
【0022】
この手段により、2つの磁気検出手段の出力信号の比を角度信号として取り扱うことができるため、CPUに対する負荷を最小化することができる。
【0023】
本発明の第7の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第1から第6のいずれか1つの態様にかかる回転角度検出装置において、リング状のバックヨークを備え、前記磁石の内周側面と当該バックヨークの外周側面とが対向して接していることを特徴とする。
【0024】
この手段により、磁石の磁束密度の大きさを調整することが可能である。即ち、磁気検出手段から出力される信号の大きさを調整することができる。
【0025】
本発明の第8の態様にかかる回転角度検出装置は、本発明の第1から第7のいずれか1つの態様にかかる回転角度検出装置において、前記磁気検出手段は、ホール素子であり、前記ホール素子を定電流駆動または低電圧駆動する駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0026】
この手段により、被検出回転体の回転角度の算出処理のCPUへの負荷を低減することができるとともに算出時間を短縮することができる回転角度検出装置を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、磁気検出手段の出力信号または複数の磁気検出手段の出力信号の比を、回転角度に対応して直線的に変化する波形にして、CPUに対する負荷の大きい正弦波形やアークタンジェント(tan−1)関数を使用した演算処理を実行せずに回転角度を算出することができる。従って、回転角度の算出処理のCPUへの負荷を低減することができるとともに算出時間を短縮することができる。また、磁石の磁束密度の大きさを調整することが可能である。即ち、磁気検出手段から出力される信号の大きさを調整することができる。また、CPUに入力される複数個の磁気検出手段の出力信号の関係を、回転角度に対応して直線的に変化する波形にすることで、よりその効果が顕著となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
この発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0029】
図1は、本発明を適用可能な回転角度検出装置の外観構成の一例を示す図である。図2は、リング磁石の外観斜視図である。また、図3は、回転方向に対するリング磁石の厚さの変化の一例を示した図である。図4は、回転方向に対するリング磁石の磁束密度の変化の一例を示した図である。図5は、図1のA−A断面図である。以下、回転角度検出装置を回転センサと呼ぶ。
【0030】
図1に示すように、回転センサ10は、リング磁石12、ホール素子13a及び13b、ヨーク15a〜15d、駆動回路20(図示略)、並びに回転角度算出部50(図示略)により構成されており、回転体11の回転角度を検出する。リング磁石12は、回転中心軸14に平行な方向(Z軸方向)に着磁され、N極、S極をそれぞれ交互に2極ずつ有している。また、リング磁石12は、回転体11に固定されており、回転体11とともに回転する。
【0031】
また、リング磁石12の形状は、図2に示すように、回転中心軸14に平行な方向のリング磁石12の厚さ(以下、リング磁石12の厚さと呼ぶ)を回転方向に変化させた形状になっている。
【0032】
リング磁石12の厚さの回転方向の変化は、P点を0°としたとき、図3に示すように、リング磁石12の厚さは0°〜45°の間は滑らかに大きくなり、45°〜90°の間は滑らかに小さくなるように形成されている。また、0°〜45°の間の厚さ曲線と、45°〜90°の間の厚さ曲線とは、45°を中心線として線対称な曲線となっている。
【0033】
このとき、リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化は、図4に示すように、リング磁石12の磁束密度は0°〜45°の間は直線的(1次関数的)に大きくなり、45°〜90°の間は直線的(1次関数的)に小さくなる。また、0°〜45°の間の磁束密度の波形と、45°〜90°の間の磁束密度の波形とは、45°を中心線として線対称な波形となっている。
【0034】
90°〜180°の間、180°〜270°の間、及び270°〜360°の間のリング磁石12の厚さの変化は、それぞれ0°〜90°の間のリング磁石12の厚さの変化と同じである。
【0035】
また、90°〜180°の間、180°〜270°の間、及び270°〜360°の間のリング磁石12の磁束密度の変化は、180°〜270°の間は着磁方向が0°〜90°の間の方向と同じ方向になっているので、0°〜90°の間のリング磁石12の磁束密度の変化と同じ波形となり、90°〜180°の間及び270°〜360°の間では、着磁方向が0°〜90°の間及び180°〜270°の間の方向と反対になっているので、0°〜90°の間のリング磁石12の磁束密度の波形及び180°〜270°の間のリング磁石12の磁束密度の波形と、90°及び270°においてそれぞれ点対称な波形となっている。
【0036】
ホール素子13a及び13bは、図1に示すようにリング磁石12の径方向に垂直な方向における磁気の強さの変化を検出できるように配置されている。ここでは、ホール素子13a及び13bは、回転中心軸14に対する感磁面の法線の傾きが概ね45°となるように、リング磁石12の円周外に配置されている。
【0037】
図1、図2及び図5に示すように、ヨーク15a〜15dは、四角柱をL字型に変形した形状に形成されている。また、ヨーク15aの端面16aとヨーク15bの端面16bの間にホール素子13aが配置され、ヨーク15aの端部17aとヨーク15bの端部17bの間にリング磁石12が配置されている。ヨーク15cの端面16cとヨーク15dの端面16dの間にホール素子13bが配置され、ヨーク15cの端部17cとヨーク15dの端部17dの間にリング磁石12が配置されている。
【0038】
次に、回転角度の算出方法について説明する。
磁場中に置かれたホール素子に発生するホール電圧Vは、ホール係数及びホール素子形状等により決定されるホール感度をα、磁石等により発生する磁場の磁束密度をB、ホール素子の駆動電流をIとしたとき、下記の式によって表される。
【0039】
V=α×B×I
即ち、ホール電圧Vは、ホール感度αを一定としたとき、磁束密度B及び駆動電流Iに比例する。ホール電圧Vは、磁束密度B一定にも関わらず駆動電流Iに比例するので、この関係を感磁特性(ゲイン)と呼ぶ。
【0040】
また、リング磁石12の回転方向の磁束密度Bの変化は、図4に示したように、直線的に変化することから、リング磁石12の回転方向のホール電圧Vも直線的に変化する。図6は、図1のホール素子13a及び13bの出力信号の一例を示した図である。図6に示すように、リング磁石12とともに回転体11が、θだけ回転したときに、ホール素子13a及び13bから出力される信号であるホール電圧V13a及びV13bは、45°だけ位相のずれた信号になる。
【0041】
従って、ホール電圧V13a及びV13bの比(V13a/V13b)は、回転体11の回転角度θに比例する。これにより、アークタンジェント(tan−1)関数を使用せずに、ホール電圧V13a及びV13bの比(V13a/V13b)に基づいて、回転体11の回転角度θを算出する。
【0042】
上述したような回転センサ10を使用して回転体11の回転角度θを算出することによって、回転角度の算出処理のCPUへの負荷を大幅に低減することができる。即ち、回転体11の回転角度θの算出時間を短縮することができる。
【0043】
次に、バックヨークを備えたリング磁石を使用した場合の回転センサについて説明する。図7は、本発明を適用可能な別の回転センサ80の外観構成の一例を示す図である。図8は、バックヨークを備えたリング磁石の外観斜視図であり、図9は、図7のA−A断面図である。以下、図1に示した回転センサ10と異なる点についてのみ説明する。
【0044】
図7に示すように、回転センサ80は、リング磁石12、バックヨーク18、ホール素子13a及び13b、ヨーク15a〜15d、駆動回路20(図示略)、並びに回転角度算出部50(図示略)により構成されており、回転体11の回転角度を検出する。
【0045】
図7、図8及び図9に示すように、バックヨーク18は、リング磁石12の内周とリング状のバックヨーク18の外周とが接するように配置されている。また、バックヨーク18の形状は、図8に示すように、回転中心軸14に平行な方向のバックヨーク18の厚さ(以下、バックヨーク18の厚さと呼ぶ)は、リング磁石12の厚さと同じ厚さで、回転方向に変化させた形状になっている。
【0046】
バックヨーク18を配置することにより、リング磁石の磁束密度の大きさを変化させることができる。即ち、ホール素子13a及び13bから出力される信号の大きさを調整することができる。
【0047】
次に、本発明の好適ないくつかのリング磁石の形状及び磁束密度の実施例を説明する。
【実施例】
【0048】
図2に示したリング磁石12において、リング磁石12の厚さを、図10に示すように変化させた。ここでは、0°〜45°の間の厚さ曲線を示している。45°〜360°の間の厚さ曲線においては、45°〜90°の間の厚さ曲線は、45°を中心線として線対称な曲線となっている。また、90°〜180°の間、180°〜270°の間、及び270°〜360°の間の厚さ曲線は、それぞれ、0°〜90°の間の厚さ曲線と同じである。
【0049】
この結果、リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化は、直線的(1次関数的)な波形となった。なお、このとき、ヨーク15a及び15bの相対透磁率は1000としている。図11は、リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化を示した図である。図11に示すように、0°〜45°の間は直線的(1次関数的)に大きくなり、45°〜90°の間は直線的(1次関数的)に小さくなる。また、0°〜45°の間の磁束密度の波形と、45°〜90°の間の磁束密度の波形とは、45°を中心線として線対称な波形となっている。
【0050】
従って、リング磁石12を備えた回転センサ10を使用して回転体11の回転角度θを検出する場合、ホール素子13a及び13bから出力される信号は、回転角度に対応して直線的に変化する波形となり、アークタンジェント(tan−1)関数のような負荷の高い演算処理をすることなく、簡単に短時間で回転体11の回転角度θを算出することができる。
【0051】
次に、図8に示したバックヨーク18を備えたリング磁石12において、リング磁石12及びバックヨーク18の厚さを、図10に示すように変化させた。この結果、リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化は、直線的(1次関数的)な波形となった。なお、このとき、ヨーク15a及び15bの相対透磁率は1000とし、バックヨーク18の相対透磁率は9としている。
【0052】
図12は、バックヨーク18を備えたリング磁石12の磁束密度の回転方向の変化を示した図である。図12に示すように、0°〜45°の間は直線的(1次関数的)に大きくなり、45°〜90°の間は直線的(1次関数的)に小さくなる。また、0°〜45°の間の磁束密度の波形と、45°〜90°の間の磁束密度の波形とは、45°を中心線として線対称な波形となっている。また、図11に比較して、磁束密度を大きさが小さくなった。
【0053】
従って、バックヨーク18とリング磁石12を備えた回転センサ10を使用することにより、リング磁石12の磁束密度の大きさを調整することができる。即ち、ホール素子13a及び13bから出力される信号の大きさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明を適用可能な回転角度検出装置の外観構成の一例を示す図である。
【図2】リング磁石の外観斜視図である。
【図3】回転方向に対するリング磁石の厚さの変化の一例を示した図である。
【図4】回転方向に対するリング磁石の磁束密度の変化の一例を示した図である。
【図5】図1のA−A断面図である。
【図6】図1のホール素子13a及び13bの出力信号の一例を示した図である。
【図7】本発明を適用可能な別の回転センサの外観構成の一例を示す図である。
【図8】バックヨークを備えたリング磁石の外観斜視図である。
【図9】図7のA−A断面図である。
【図10】実施例における回転方向に対するリング磁石の厚さの変化を示した図である。
【図11】リング磁石12の磁束密度の回転方向の変化を示した図である。
【図12】バックヨーク18を備えたリング磁石12の磁束密度の回転方向の変化を示した図である。
【図13】従来の回転角度検出装置の外観構成の一例を示す図である。
【図14】図13のホール素子の出力信号を示した図である。
【符号の説明】
【0055】
10 回転センサ
11 回転体
12 リング磁石
13a、13b ホール素子
14 回転中心軸
15a、15b、15c、15d ヨーク
18 バックヨーク
20 駆動回路
50 回転角度算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記被検出回転体に固定され、当該被検出回転体とともに回転するリング状の磁石と、
前記磁石による磁界の強さを検知して、磁界の強さに基づいた電気量の信号を出力する磁気検出手段と、
前記磁気検出手段から出力された信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、
を備え、
前記磁石は、前記被検出回転体の回転軸に対して平行な方向の厚さが回転方向に変化していることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
前記磁石は、前記磁気検出手段の出力が、前記被検出回転体の回転角度に対応して直線的に変化するように着磁されていることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出手段の出力が、前記被検出回転体の回転に対応する角度信号であることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記被検出回転体に固定され、当該被検出回転体とともに回転するリング状の磁石と、
前記磁石による磁界の強さを検知して、磁界の強さに基づいた電気量の信号を出力し、互いに角度をもって配置される複数個の磁気検出手段と、
複数個の前記磁気検出手段から出力された信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、
を備え、
前記磁石は、前記被検出回転体の回転軸に対して平行な方向の厚さが回転方向に変化しており、
前記磁気検出手段は、前記被検出回転体の回転角度に対応して変化する波形の信号を出力し、
前記回転角度算出手段は、前記複数個の磁気検出手段から出力された回転角度に対応して変化する信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出することを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項5】
前記磁石は、前記複数個の磁気検出手段のうち2つから出力された信号の比が、前記被検出回転体の回転角度に対して直線的に変化するように着磁されていることを特徴とする、請求項4に記載の回転角度検出装置。
【請求項6】
前記複数個の磁気検出手段のうち2つから出力された信号の比が、前記被検出回転体の回転に対応する角度信号であることを特徴とする、請求項4に記載の回転角度検出装置。
【請求項7】
リング状のバックヨークを備え、前記磁石の内周側面と当該バックヨークの外周側面とが対向して接していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項8】
前記磁気検出手段は、ホール素子であり、前記ホール素子を定電流駆動または低電圧駆動する駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項1】
被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記被検出回転体に固定され、当該被検出回転体とともに回転するリング状の磁石と、
前記磁石による磁界の強さを検知して、磁界の強さに基づいた電気量の信号を出力する磁気検出手段と、
前記磁気検出手段から出力された信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、
を備え、
前記磁石は、前記被検出回転体の回転軸に対して平行な方向の厚さが回転方向に変化していることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
前記磁石は、前記磁気検出手段の出力が、前記被検出回転体の回転角度に対応して直線的に変化するように着磁されていることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出手段の出力が、前記被検出回転体の回転に対応する角度信号であることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
被検出回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記被検出回転体に固定され、当該被検出回転体とともに回転するリング状の磁石と、
前記磁石による磁界の強さを検知して、磁界の強さに基づいた電気量の信号を出力し、互いに角度をもって配置される複数個の磁気検出手段と、
複数個の前記磁気検出手段から出力された信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、
を備え、
前記磁石は、前記被検出回転体の回転軸に対して平行な方向の厚さが回転方向に変化しており、
前記磁気検出手段は、前記被検出回転体の回転角度に対応して変化する波形の信号を出力し、
前記回転角度算出手段は、前記複数個の磁気検出手段から出力された回転角度に対応して変化する信号に基づいて、前記被検出回転体の回転角度を算出することを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項5】
前記磁石は、前記複数個の磁気検出手段のうち2つから出力された信号の比が、前記被検出回転体の回転角度に対して直線的に変化するように着磁されていることを特徴とする、請求項4に記載の回転角度検出装置。
【請求項6】
前記複数個の磁気検出手段のうち2つから出力された信号の比が、前記被検出回転体の回転に対応する角度信号であることを特徴とする、請求項4に記載の回転角度検出装置。
【請求項7】
リング状のバックヨークを備え、前記磁石の内周側面と当該バックヨークの外周側面とが対向して接していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項8】
前記磁気検出手段は、ホール素子であり、前記ホール素子を定電流駆動または低電圧駆動する駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−229314(P2009−229314A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76691(P2008−76691)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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