説明

回転角検出又は回転同期装置

【課題】簡素な構造で、回転角の検出精度を向上させることが可能なレゾルバ、シンクロ等の回転角検出又は回転同期装置を提供すること。
【解決手段】レゾルバは、磁性材料の平板に形成されその平板面に対して起立したステータティースを有するステータと、ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するようにステータに対して回転可能に設けられたロータ300とを備える。また、レゾルバは、ステータティースに巻回されるステータ巻線を備える。ロータ300は、磁性材料の平板として構成されたロータ平板部310と、そのロータ平板部310の外周縁部に設けられ、ステータティースの面と対向する対向面が形成された対向部320とを有する。さらに、その対向部320の厚さt2が、ロータ平板部310の厚さt1よりも大くされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びロータを有するレゾルバ等の回転角検出装置やシンクロ等の回転同期装置に関し、特に、ステータ及びロータの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータ及びロータを有し、ステータに対するロータの回転位置によってステータとロータとの間の相互インダクタンスが変化することを利用して、ステータに対するロータの回転角に応じた検出信号を出力する回転角検出装置としてのレゾルバが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、シンクロと称される回転同期装置は、レゾルバと構造は同じで信号の入出力あるいは用い方が異なるもので、構造的にはレゾルバと同視し得る。ここで、図17は、従来のレゾルバの構造を示した図である。図17のレゾルバ900は、内周面910aから内方へ突出する複数のステータティース920が形成されたステータ910を備える。また、ステータ910の内側には、ロータ980が回転可能に設けられる。そのロータ980は、回転軸回りの回転によりステータティース920とのギャップパーミアンスが変化するようにステータ910に対して回転可能に設けられる。
【0003】
各ステータティース920には、絶縁性の樹脂からなるボビン体940を介してステータ巻線950が巻回される。そのステータ巻線950は、複数相の巻線から構成される。具体的には、ステータ巻線950は、励磁信号が入力されてステータティース920を励磁する励磁巻線951と、ロータ980の回転にともなって変化するギャップパーミアンスに応じた検出信号が出力される出力巻線952とを有する。
【0004】
このような構成のレゾルバ900では、端子ピン970から励磁巻線951に対して励磁信号を入力してステータティース920を励磁し、ロータ980の回転にともなってギャップパーミアンスが変化すると、出力巻線952には、そのギャップパーミアンスに応じた検出信号が発生する。そして、出力巻線952と接続された端子ピン970から出力される検出信号に基づいて、ロータ980の回転角が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−344107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、レゾルバ、シンクロにおいては、回転角の検出精度を高めるためには、励磁巻線や出力巻線を精度良く巻回する必要がある。しかしながら、特許文献1に開示されたレゾルバ900では、ステータティース920が内方に向けて設けたれているため、励磁巻線951や出力巻線952を精度良く巻回することができず、検出精度の向上の大きな障害となっていた。
【0007】
また、ロータ980は、例えば磁性材料である電磁鋼板を積層させて十分な厚さにして、出力巻線952からの検出信号のレベルを上げるようにしていた。そのため、ロータの構造やレゾルバ、シンクロの製造工程が複雑化するという問題があった。この問題は、シンクロ等の回転同期装置でも同様に存在する。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、簡素な構造で、回転角の検出精度を向上させることが可能なレゾルバ等の回転角検出装置又はシンクロ等の回転同期装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、磁性材料の平板に形成されその平板面に対して起立したステータティースを有するステータと、
磁性材料から構成され、回転軸回りの回転により前記ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するように前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
前記ステータティースに巻回される巻線であって、励磁信号が入力されて前記ステータティースを励磁する励磁巻線と、前記ギャップパーミアンスに応じた検出信号が出力される出力巻線と、を有するステータ巻線と、を備え、
前記ロータは、
前記回転軸回りに回転する、平板として構成されたロータ平板部と、
そのロータ平板部の周縁部に設けられ、前記ステータティースの面と対向する対向面が形成された対向部と、を有し、その対向部の厚さが、前記ロータ平板部の厚さよりも大きくされたことを特徴とする。
【0010】
これによれば、ステータティースが平板面に対して起立しているので、ステータの内側の狭い空間でステータ巻線を巻回させる必要がなくなる。そのため、ステータ巻線を精度良く巻回することができる。また、ステータが平板で形成されているので、ステータの構造を簡素化することができる。また、ロータは、回転軸回りに回転する、平板として構成されたロータ平板部で構成されているので、従来のように厚いロータに比べて、構造を簡素化することができる。また、そのロータは、ロータ平板部の周縁部に設けられ、ステータティースの面と対向する対向面が形成された対向部を有するので、ステータティースとの間で効率的に磁束のやり取りをすることができる。よって、ロータの構造を簡素化しつつ、検出信号のレベルを向上することができる。さらに、その対向部の厚さが、ロータ平板部の厚さよりも大きくされているので、より一層、検出信号のレベルを向上することができる。
【0011】
また、本発明の回転角検出又は回転同期装置において、前記ロータは、前記ロータ平板部と前記対向部とが同じ磁性材料で一体に形成されたものとすることができる。
【0012】
このように、ロータ平板部と対向部とを一体に形成することにより、それらを有するロータを簡易に製造することができる。
【0013】
また、前記ロータは、前記対向部の少なくとも一部が、前記ロータ平板部を構成する磁性材料とは別の磁性材料で形成されたものとしてもよい。
【0014】
この場合、前記対向部は、磁性材料の帯状の板が前記ロータ平板部の周縁部の輪郭と同じになるように環状にされたリング部材が、前記ロータ平板部に周縁部に取り付けられて形成されたものとすることができる。
【0015】
このように、リング部材を用いることにより、簡易に対向部を形成することができ、そのリング部材の厚さや積層枚数を調節することで、対向部の厚さを、ロータ平板部の厚さよりも大きくすることができる。
【0016】
また、本発明の回転角検出又は回転同期装置において、前記対向部の間に形成された開口を閉塞するように前記対向部の先端間に取り付けられた補強板を備える。
【0017】
これによれば、平板のロータ平板部で形成されたロータの強度を向上させることができ、ロータの強度不足によってロータががたついて検出精度が低下してしまうのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】レゾルバ100の構成例の分解斜視図である。
【図2】ステータ200の分解斜視図である。
【図3】第一実施形態におけるロータ300の構造の説明図である。
【図4】ステータ巻線の説明図である。
【図5】ロータ300が回転状態のときのある時刻における磁束の向きを模式的に示した図である。
【図6】レゾルバ100の製造方法の一例のフロー図である。
【図7】折り曲げプレス加工前のステータ200を構成する平板250の斜視図である。
【図8】対向部320とその対向部320と対向したステータティースとを図示した図である。
【図9】変形例1におけるロータ301の構造の説明図である。
【図10】図3のロータ300に補強板800を取り付けた後のロータ305を示した図である。
【図11】第二実施形態におけるロータ600の構造の説明図である。
【図12】リング部材613を示した図である。
【図13】曲げ加工前のロータ600を構成する電磁鋼板の斜視図である。
【図14】変形例3におけるロータを説明するための図である。
【図15】第三実施形態におけるロータ700の構造の説明図である。
【図16】第三実施形態の変形例におけるロータの断面構造を示した図である。
【図17】従来のレゾルバの構造を示した図である。
【図18】シンクロの用途例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
次に、本発明に係る回転角検出装置としてのレゾルバの第一実施形態について説明する。図1は、第一実施形態のレゾルバ100の構成例の分解斜視図である。なお、図1では、ステータ巻線等の配線の図示を省略するとともに、ステータとロータとを分解して示している。また、図1では、レゾルバ100が、8個のステータティースを有し、1相励磁2相出力型のレゾルバを例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図2は、図1のステータ200の分解斜視図である。図2において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
レゾルバ100は、ステータ(固定子)200と、ロータ(回転子)300とを含む。レゾルバ100は、いわゆるインナーロータ型の回転角検出装置である。すなわち、ステータ200の内側にロータ300が設けられ、ステータ200がロータ300の外周側(外径側)の側面と対向した状態で、ロータ300の回転角に応じて、ステータ200に設けられたステータ巻線を構成する出力巻線からの信号が変化するようになっている。
【0021】
ステータ200は、磁性材料からなる環(リング)状の平板250を用いて構成され、この平板250に複数のステータティースが設けられている。これらのステータティースは、平板250の平板面に対して交差するように設けられている。図1では、ステータ200は、折り曲げ加工(広義には曲げ加工)等により平板面に対して同一面側に略垂直に起こされた8個のステータティース(突極部)210a、210b、210c、210d、210e、210f、210g、210hを有する。ステータティース210a〜210hは、プレス加工により予め平板250に形成された後、折り曲げプレス加工(広義には曲げ加工)により、平板250の面に対して略垂直となるように起こされている。これらのステータティースは、環状の平板250の内側(内径側)の縁部に形成され、各ステータティースの面のうち少なくともロータ300の対向部の面と対向する面は平面ではなく、ロータ300の回転軸の方向に沿って見たときに、環状の平板250の内径側に位置する点を中心とする円弧の一部となるように形成されている。
【0022】
このような磁性材料からなるステータ200の平板250及びロータ300の平板の材質は、電磁鋼板、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS45CやS10Cであることが望ましい。SPCC(Steel Plate Cold Commercial)は、JIS G3141に規定される冷間圧延鋼板及び鋼帯である。S45Cは、JIS G4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.45%程度の炭素を含有している。S10Cは、JIS G4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.10%程度の炭素を含有している。
【0023】
以上のような構成を有するステータ200は、磁性材料として1枚の電磁鋼板により構成されるため、積層電磁鋼板、つまり材料費として高価である上に折り曲げプレス加工による曲げに弱く、曲げによる加工精度や信頼性を維持できにくい積層電磁鋼板を採用する場合に比べて、低コストで、曲げによる加工精度や信頼性を維持できるようになる。しかも、曲げ加工による磁性材料の粒状破壊を防止し、曲げ加工前の磁気特性を確保することにより高精度な角度検出を可能とする。
【0024】
また、ステータ200には、平板250に装着可能に構成された環状の絶縁キャップ400が装着される。絶縁キャップ400には、ステータ200のステータティース210a〜210hの位置に合わせて設けられた複数のボビン410a、410b、410c、410d、410e、410f、410g、410hが一体に形成されている。各ボビンは、挿入孔(ステータティース挿入孔)を有し、当該ボビンに対応するステータティースがその挿入孔に挿入されるとともに、その外側にステータ巻線が巻回される。複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンの挿入孔の向きは、ロータ300の回転軸の向きである。
【0025】
絶縁キャップ400では、複数のボビン410a〜410hが有する挿入孔の向きが、ロータ300の回転軸の向きと一致している。そのため、ステータ200に絶縁キャップ400を装着する際に、平板250の上方から装着することができる上に、ステータ200の内側の狭い空間で各ボビンにステータ巻線を巻回させる必要がなくなる。したがって、絶縁キャップ400の取り付け工程が簡素化される上に、別工程において、予め絶縁キャップ400を形成しておくことが可能となる。これにより、レゾルバ100の生産効率の向上やコストダウンを図ることが可能となる。
【0026】
また絶縁キャップ400に設けられる複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンには、ステータ巻線の位置ずれを防止する位置ずれ防止手段とし、つば部が設けられており、つば部によってボビンに凹部が形成されるようにし、この凹部においてステータ巻線の位置がずれないようになっている。つば部は、ボビン410a〜410hのそれぞれに設けられてもよいし、ボビン410a〜410hの一部にのみ設けられていてもよい。このような位置ずれ防止手段を設けることにより、磁束の均一化を図ることができるようになり、信頼性を向上させることができるようになる。
【0027】
さらに、絶縁キャップ400は、外部からの励磁信号を入力したり検出信号を出力したりするための端子ピンが設けられるコネクタ部450を含み、複数のボビン410a〜410hとコネクタ部450とが一体に形成される。このコネクタ部450には、端子ピン挿入孔461〜466が設けられており、端子ピン挿入孔461〜466のそれぞれには、励磁信号の入力や検出信号の出力を行うために導電材からなる端子ピン471〜476がそれぞれ挿入される。
【0028】
また、ステータ巻線と電気的に接続される端子ピンが設けられるコネクタ部を、複数のボビンと共に一体に形成するようにしたので、ステータ巻線を確実に固定させて、信頼性を向上させることができるようになる。
【0029】
さらに、絶縁キャップ400は、複数の渡りピン(突起部)480a、480b、480c、480d、480e、480f、480gを含み、複数のボビン410a〜410h、コネクタ部450及び複数の渡りピン480a〜480gが一体に形成されている。複数の渡りピン480a〜480gを構成する各渡りピンは、2つのボビンの間において、環状の絶縁キャップ400の所与の円周上に形成されている。なお、ボビン410a、410hの間には、渡りピンが形成されていない。各渡りピンは、2つのボビンの間に設けられた円柱状の形状を有し、一方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される導線が、渡りピンにおいて張力を持たせた状態で掛けられて、他方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される。これにより、2つのボビンの距離が長くなっても共振し難くなる上に、ステータ巻線の巻き数を半ターン単位で調整できるようになる。ここで、導線に張力を持たせ易くし、かつその状態をできるだけ長く維持させるために、渡りピンは、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きの部分を有することが望ましい。
【0030】
また、絶縁キャップ400は、ステータ200(ステータ200の平板250)の縁部に係止する1又は複数の係止部(図示外)を含み、これらの係止部によりステータ200に装着可能に構成されている。
【0031】
このような絶縁キャップ400をステータ200の平板250に装着することにより、ステータ200とステータ巻線とが電気的に絶縁される。これにより、ステータ巻線により構成されるコイルの絶縁破壊を防止できる。このような絶縁キャップ400は、PBT(Poly−butylene−terephtalate:ポリブチレンテレフタレート)又はPPT(Polypropylene terephtalate:ポリプロピレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂(絶縁材)を用いた射出成形により形成される。
【0032】
ロータ300は、磁性材料からなり、ステータ200に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。例えば、ロータ300の軸倍角が「3」であり、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において外径側の外径輪郭線を3周期で変化する形状を有している。そして、平板250に対して起こされたステータティースの内側(内径側、内周側)の面と対向するロータ300の外周側に形成された対向部320の面(対向面、図3参照)が、ロータ300の1回転につき3周期でギャップパーミアンスが変化するようになっている。
【0033】
ここで、図3は、第一実施形態におけるロータ300の構造の説明図である。図3(a)はロータ300の斜視図であり、図3(b)は図3(a)のB−B線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図である。
【0034】
このロータ300は、平板として構成されたロータ平板部310を有する。そのロータ平板部310は、その表面が、ロータ300の回転軸と直角に交差する平面とされる。また、ロータ平板部310は、回転軸と交差する中心付近で穴が空けられた環状に形成される。また、ロータ平板部310は、厚さt1とされる。そして、ロータ平板部310は、回転角の検出対象物に取り付けられて、その検出対象物の回転にしたがって自らも回転軸回りに回転される。
【0035】
また、ロータ300は、そのロータ平板部310の外周縁部からロータ平板部310に対して直角(回転軸と平行な方向)に曲がって形成された対向部320を有する。その対向部320は、その面(対向面)がステータティース210a〜210hの面と平行に対向される。また、図3(b)に示すように、対向部320は、ロータ平板部310と同じ磁性材料で一体に形成されている。また、対向部320の厚さt2は、ロータ平板部310の厚さt1よりも大きくされている。より具体的には、対向部320の厚さt2は、ロータ平板部310の厚さt1の約2倍とされている。つまり、対向部320は、ロータ平板部310を構成する平板が2枚積層された厚さと同等の厚さとされる。
【0036】
このように、ロータ平板部310の外周縁部に対向部320を形成することで、ステータティース210a〜210hの面と対向する面積を増加させ、電磁鋼板を多く積層させたときと同等の厚さを確保できる。よって、ロータ300の構造を簡素化しつつ、検出信号のレベルを向上することができる。さらに、対向部320は、ロータ平板部310よりも厚くされているので、より一層、検出信号のレベルを向上することができる。対向部320とステータティース210a〜210hとのギャップパーミアンスを固定としたときに、対向部320が厚くされるほど、それらの間の相互インダクタンスが大きくなる。そして、相互インダクタンスが大きくなるほど、検出信号のレベルが大きくなるからである。
【0037】
また、電磁鋼板を多く積層させたときと同等の厚さを確保するために、ロータ300の対向部320の高さHについて、5×t1≦H≦12×t1の関係を有することが望ましい。対向部320の高さHを12×t1より高くしても、これ以上、検出信号のレベルを改善させることが期待できずに、却ってロータ300の大型化を招く。一方、対向部320の高さHを5×t1より低くすると、検出信号のレベルが低くなる。
【0038】
次に、ロータ300の回転によって出力巻線から出力される検出信号を取り出すためのステータ巻線について説明する。ステータ巻線は、励磁巻線と出力巻線とから構成され、励磁巻線により励磁した状態で、ステータ200に対するロータ300の回転により、出力巻線の信号が変化する。
【0039】
ここで、図4は、ステータ200のステータティース210a〜210hに巻回されるステータ巻線の説明図である。具体的には、図4(a)は、ステータ巻線を構成する励磁巻線4の説明図を示しており、図4(b)は、ステータ巻線を構成する出力巻線5の説明図を示している。図4(a)、(b)は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図4(a)では、励磁巻線4の巻き方向を模式的に示し、図4(b)では、出力巻線5の巻き方向を模式的に示す。実際には、各ボビンのステータ巻線を電気的に接続する導線は、その間に形成された渡りピンを経由させる。
【0040】
励磁巻線4は、図4(a)に示すように、隣り合うステータティースの巻回方向が互いに反対方向になるように巻回される。各ステータティースに巻回される励磁巻線4は、例えばコイル巻線とすることができる。このような励磁巻線4と電気的に接続される端子R1、R2間に、励磁信号が与えられる。
【0041】
また、図4(b)に示すように、2相の検出信号を得るために、出力巻線5は2組の巻線部材からなる。2相の検出信号の第1相(例えばsin相)の検出信号を得るための出力巻線51は、例えばステータティース210aから反時計回りにステータティース210gまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。一方、2相の検出信号の第2相(例えばcos相)の検出信号を得るための出力巻線52は、例えばステータティース210bから反時計回りにステータティース210hまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。第1相の検出信号は、端子S1、S3間の信号として検出され、第2相の検出信号は、端子S2、S4間の信号として検出される。各ステータティースに巻回される出力巻線5は、例えばコイル巻線とすることができる。
【0042】
このように、ステータティース210c、210c、210e、210gが挿入孔に挿入されるボビン410a、410c、410e、410gのそれぞれの外側には、励磁巻線4及び第1相(sin相)の出力巻線51が巻回される。ステータティース210b、210d、210f、210hが挿入孔に挿入されるボビン410b、410d、410f、410hのそれぞれの外側には、励磁巻線4及び第2相(cos相)の出力巻線52が巻回される。
【0043】
なお、励磁巻線4の巻き方向は、図4(a)に示す方向に限定されるものではない。また、出力巻線5の巻き方向は、図4(b)に示す方向に限定されるものではない。例えば、各ステータティースにおける励磁巻線4、出力巻線5の巻き方向を、図4(a)、図4(b)に示す方向に対して反対方向になるようにしてもよい。
【0044】
絶縁キャップ400を介してステータ200のステータティース210a〜210hにステータ巻線4、5が巻回されており、ロータ300が回転すると、ロータ300を介して隣り合うステータティース間で磁気回路が形成される。図5に示すように、隣り合うステータティースを通る磁束の向きが反対方向となるようにステータ巻線4、5が巻回されているため、ロータ300の回転によって、各ステータティースに巻回されるステータ巻線4、5に発生する電流もまた変化し、例えば出力巻線5に発生する電流波形を正弦波状にすることができる。
【0045】
次に、本実施形態におけるレゾルバ100の製造方法について説明する。図6は、レゾルバ100の製造方法の一例のフロー図である。また図7は、折り曲げプレス加工前のステータ200を構成する平板250の斜視図である。図7において、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0046】
レゾルバ100を製造するために、先ず、ステータ形状加工工程においてステータ200の形状を加工した(ステップS10)後に、折り曲げプレス加工工程(曲げ工程)において、平板状のステータ200のステータティースを折り曲げて、複数のステータティースが平板面に対して起こされる(ステップS12)。その結果、図2に示すように、平板250に対してステータティース210a〜210hが起こされる。
【0047】
すなわち、ステップS10のステータ形状加工工程では、ステップS12の折り曲げプレス加工を行うために、図7に示すように、プレス加工により、1枚の電磁鋼板、普通鋼であるSPCC、機械構造用炭素鋼であるS45C又はS10Cを材質とする環状の磁性材料からなる平板の内径側の縁部にステータティースが形成されて、ステータ200の形状が形成される。
【0048】
そして、ステップS12では、折り曲げプレス加工により、ステップS10において形成された複数のステータティースを、断面視において、その根本部分がR形状となるように加工される。この結果、ステータティース210a〜210hは、ステータ200の平板面に対して略垂直となるように起こされる。
【0049】
続いて、絶縁キャップ取り付け工程として、図2に示す絶縁キャップ400を、そのボビンに設けられた挿入孔に、ステップS12で起こされたステータティースを挿入して、平板250に取り付ける(ステップS14)。このとき、絶縁キャップ400に設けられた1又は複数の係止部(図示外)により、平板250に係止ことで取り付けられる。
【0050】
その後、巻線部材取り付け工程として、ステップS12で起こされたステータティース210a〜210hの各ステータティースを巻線磁芯として、各ステータティースの外側にステータ巻線が巻回される(ステップS16)。こうして起こされたステータティースのそれぞれの周囲に、励磁用の励磁巻線4及び検出用の出力巻線5が巻回される。なお、ボビンにステータ巻線を取り付けた絶縁キャップ400を、平板250に装着するようにしてもよい。
【0051】
次に、ロータ加工工程として、鋳造によって、図3に示すロータ平板部310及び対向部320が一体的に形成される。すなわち、予めロータ300の型に形成された鋳型に、高温にされて液状にされた磁性材料の鉄が流し込まれ、その後冷やされて、ロータ300が形成される。なお、鍛造、切削(削り出し)等によって、ロータ300を形成してもよい。
【0052】
次に、ロータ取り付け工程として、ロータ300が、ステータ200に対して回転自在となるように、ステータ200の内径側に設けられる(ステップS20)。より具体的には、ロータ取り付け工程において、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりロータ300の外側の対向部320の面とステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。なお、図6では、ロータ加工工程が、巻線部材取り付け工程の後に行われるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、少なくともロータ取り付け工程に先立って行われていればよい。以上のように、本実施形態におけるレゾルバ100が製造される。
【0053】
以上のレゾルバ100においては、上述したように、ロータ300の外周側に対向部320が形成されているとともに、さらにその対向部320がロータ平板部310よりも厚くされているために、出力巻線5から出力される検出信号のレベルを高くすることができる。ここで、図8は、このことを説明するための図であり、図3(b)の破線部分311における対向部320とその対向部320と対向したステータティースとを図示した図である。また、図8(a)は、ロータ300が通常の位置にあるときの図を示しており、図8(b)は、ロータ300が何らかの理由でスラスト方向(回転軸方向)に変位したときの図を示している。また、図8(c)は、対向部320がない場合(ロータ平板部310のみの場合)の図を示している。なお、図8では、複数のステータティース210a〜210hのいずれかのステータティースという意味でステータティースに符号「210」を付し、同様に、ボビンに符号「410」を付している。
【0054】
図8(a)に示すように、ロータ300が通常の位置にあるときには、ロータ300は、その全部が、ボビン410から出ているステータティース210と対向される。すなわち、図8(a)の破線62−63間の領域に、ロータ平板部310及び対向部320が含まれる。よって、ステータティース210とロータ300との間において、効率的に磁束のやり取りをすることができる。そして、対向部320全体がステータティース210の面と対向しているので、ロータ平板部310のみの場合(図8(c)参照)よりも検出信号のレベルを上げることができる。さらに、その対向部320の厚さt2が、ロータ平板部310の厚さt1の約2倍とされており、ロータ300とステータティース210との間の相互インダクタンスを大きくすることができるので、1枚の電磁鋼板でロータ平板部及び対向部を形成したときよりも、検出信号のレベルを上げることができる。
【0055】
一方、図8(b)に示すように、何らかの理由によって、ロータ300がスラスト方向に変位したとする。例えば、ロータ300は、平板として構成されたロータ平板部310で構成されており、従来の厚いロータよりも厚さが薄くなっていることに起因して、ロータ300が変位する場合が考えられる。この場合には、図8(b)に示すように、ロータ300がスラスト方向に変位すると、ロータ平板部310が、ステータティース210と対向する領域(破線62−63間の領域)に含まれなくなる場合がある。この場合、対向部320の一部が、ステータティース210の面と対向することになる。このような場合であっても、対向部320が厚くされているので、磁束のやり取りが極端に落ちてしまうのを防止でき、検出信号のレベルの低下を抑えることができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ100によれば、ロータ300が、平板で構成されたロータ平板部310で構成されているので、従来の厚いロータよりも構成及び製造工程を簡素化できる。また、レゾルバ100(ロータ300)の軽量化、コスト低減を実現できる。
【0057】
また、ロータ300の外周側にはステータティースの面と対向する対向部320が形成されているので、ロータ300を簡素化しつつ、検出信号のレベルを向上することができる。さらに、その対向部320の厚さt2は、ロータ平板部310の厚さt1よりも大きくされているので、より一層、検出信号のレベルを向上することができる。また、ロータ300がスラスト方向に変位した場合であっても、検出信号のレベルの低下を抑えることができる。
【0058】
また、ロータ300を鋳造、鍛造、切削で形成することで、ロータ平板部310と対向部320とを簡易に形成することができる。
【0059】
なお、上記第一実施形態では、対向部320の厚さt2が、ロータ平板部310の厚さt1の約2倍とされていたが、この厚さに限定されるものではない。対向部320を厚くすれば、それだけ検出信号のレベルを向上することができると考えられる。ただし、厚くしすぎると、ロータ300自体が大型化してしまう。よって、ロータ300の簡素化と検出信号のレベルとを考慮して、対向部320の厚さを決定するのが望ましい。具体的には、例えば、対向部320の厚さt2とロータ平板部310の厚さt1との比t2/t1が、1.2〜3.0の範囲に含まれる値とすることができる。その比t2/t1が1.2より小さいとすると、ロータ300がスラスト方向に変位した場合に検出信号のレベルの低下が大きくなるからである。また、その比t2/t1が3.0より大きいとすると、ロータ300が大型化してしまい重量増加、コストアップ等の弊害が大きくなるからである。また、比t2/t1は、上記範囲1.2〜3.0の中でも、特に1.5〜2.5の範囲に含まれる値とするのが推奨される。ロータ300の簡素化を維持しつつ、検出信号のレベルの向上を図ることができるからである。
【0060】
(変形例1)
次に、第一実施形態の変形例について説明する。上記第一実施形態では、ロータ300の内周縁部は穴が空けられているだけであったが(図3参照)、内周縁部において回転軸方向に曲げられた内周側曲げ部分を形成するようにしてもよい。ここで、図9は、この変形例1におけるロータ301の構造の説明図である。具体的には、図9(a)はロータ301の斜視図であり、図9(b)は図9(a)のC−C線に沿ったロータ301の断面構造を模式的に表した図である。なお、図9において、第一実施形態と同じ機能を有する部分には同じ符号を付している。
【0061】
図9に示すように、ロータ301は、ロータ平板部310の内周縁部において、回転軸方向に曲がった内周側曲げ部分330が形成されている。その内周側曲げ部分330は、対向部320に比べて、ステータティースとの間で磁束のやり取りに寄与しないと考えられるので、その厚さは、例えばロータ平板部310の厚さt1と同じとされる。また、その内周側曲げ部分330の高さは、例えば対向部320の高さHと同じとされる。この内周側曲げ部分330は、図6のステップS18のロータ加工工程において、鋳造、鍛造、切削等によって、ロータ平板部310、対向部320と同時に形成すればよい。
【0062】
このように、内周側曲げ部分330を形成することで、ロータ301の取り付けが簡単になるととともに、ロータ301の体積を増加させて磁束のやり取りに寄与させることができる。また、内周側曲げ部分330を形成することで、ロータ301の断面を強くすることができ、ロータ301ががたついてしまうのを防止できる。
【0063】
(変形例2)
上記第一実施形態のロータ300においては、平板として構成されたロータ平板部310で構成され、また内周側曲げ部分(変形例1の図9参照)が形成されていないので、強度不足となる場合がある。強度不足になると、ロータががたついて変位してしまい回転角の検出精度が低下しまう。そこで、図10に示すように、図3のロータ300の対向部320の内側に形成された開口341を閉塞するように、対向部320の先端に補強板800を取り付けてもよい。この図10は、図3のロータ300に補強板800を取り付けた後のロータ305を示した図であり、図10(a)はロータ305の斜視図であり、図10(b)は図10(a)のD−D線に沿ったロータ305の断面構造を模式的に表した図であり、図10(c)は補強板800の平面図である。
【0064】
図10(b)、(c)に示すように、ロータ平板部310と平面視で同じ形状の補強板800を、対向部320の先端に取り付ける。なお、補強板800は、例えば、電磁鋼板とされ、溶接によって、対向部320と補強板800とが接続される。
【0065】
これによって、ロータ305の対向部320の内側に形成された開口341を閉塞して、ロータ305の断面を四角断面にすることができるので、ロータ305の強度を向上できる。よって、ロータ305ががたついて検出精度が低下してしまうのを防止できる。
【0066】
なお、図10のような補強板は、変形例1のように内周側曲げ部分が形成されているロータに対して取り付けてもよい。また、以下に示す、他の実施形態におけるロータに対して取り付けてもよい。いずれの場合も、ロータの対向部の内側に形成された開口を閉塞して、ロータの断面を強くすることができるので、ロータの強度を向上できる。
【0067】
(第二実施形態)
次に、本発明に係るレゾルバの第二実施形態について説明する。上記第一実施形態では、厚さが異なるロータ平板部と対向部とを有するロータを、例えば鋳造によって形成していた。この第二実施形態では、1枚の電磁鋼板を加工してロータ平板部及び対向部を形成するとともに、その対向部に別の電磁鋼板を積層するという実施形態である。以下、本実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心にして説明する。
【0068】
本実施形態のレゾルバは、図1のレゾルバ100に対して、ロータ300を、図11のロータ600に代えたものである。その他は、第一実施形態と同じである。
【0069】
ここで、図11は、第二実施形態におけるロータ600の構造の説明図である。具体的には、図11(a)はロータ600の斜視図であり、図11(b)は図11(a)のE−E線に沿ったロータ600の断面構造を模式的に表した図である。また、図12は、図11の符号613で示される部材であるリング部材613を示した図である。具体的には、図12(a)は、リング部材613の斜視図であり、図12(b)はリング部材613の平面図であり、図12(c)はリング部材613の側面図である。
【0070】
図11(a)に示すように、ロータ600は、第一実施形態のそれと同様に、ロータ平板部610を有する。また、ロータ600は、そのロータ平板部610の外周縁部からロータ平板部610に対して直角(回転軸と平行な方向)に曲がって形成された対向部620を有する。その対向部620は、ステータティース210a〜210hの面と対向されるものである。また、ロータ600は、ロータ平板部610の内周側に内周側曲げ部分630も形成されている。
【0071】
そのロータ600は、図11(b)に示すように、厚さt1の1枚の電磁鋼板611が加工されて、外周側においては対向部620の一部である外周側曲げ部分612が形成されるとともに、内周側においては内周側曲げ部分630が形成されている。そして、外周側曲げ部分612の内側には、外周側曲げ部分612と接触するようにリング部材613が嵌められている。すなわち、対向部620は、外周側曲げ部分612とリング部材613とから構成されている。また、加工後の電磁鋼板611の外周側曲げ部分612以外の部分が、ロータ平板部610とされている。
【0072】
リング部材613は、図12に示すように、例えば電磁鋼板611と同じ板厚t1の帯状の電磁鋼板が環状になるように形成されたものである。そのリング部材613の平面視における外形は、ロータ平板部610の平面視における外形と略同じとされる。より詳細には、外周側曲げ部分612の内側に嵌め込まれる分だけ、リング部材613は、ロータ平板部610の外形よりも小さくなっている。また、リング部材613は、その幅Hが、外周側曲げ部分612の高さと同じとされる。すなわち、対向部620の厚さは、外周側曲げ部分612の板厚t1とリング部材613の板厚t1とでt1×2とされ、対向部620の高さはHとされる。
【0073】
このように、ロータ600は、対向部620が形成されているので、ステータティース210a〜210hの面と対向する面積を増加させ、従来のロータと同等の厚さを確保できる。よって、検出信号のレベルの低下を抑制しつつ、ロータ300の構造を簡素化することができる。さらに、対向部620は、外周側曲げ部分612とリング部材613との2枚の電磁鋼板が積層されて形成されているので、より一層、検出信号のレベルの低下を抑えることができる。
【0074】
次に、第二実施形態におけるレゾルバ100の製造方法について説明する。その製造方法は、例えば、第一実施形態と同様に、図6のフロー図にしたがってなされる。この際、ステップS10〜ステップS16、ステップS20の工程は第一実施形態のそれと同じであり、ステップS18のロータ加工工程が第一実施形態のそれと異なる。
【0075】
具体的には、ロータ加工工程として、加工前の1枚の電磁鋼板611がプレス加工されて環状に形成される。この際、外周側曲げ部分612及び内周側曲げ部分630(図13参照)の分も見越して、ロータ平板部610(図13参照)よりも大きめに電磁鋼板611が形成される。また、ロータ600の軸倍角が「3」となるように、電磁鋼板611は、その外径輪郭線が3周期で変化するように形成される。その後、電磁鋼板611の外周縁部及び内周縁部が曲げ工程又は絞り工程によって曲げられて、外周側曲げ部分612及び内周側曲げ部分630が形成される。
【0076】
また、ロータ加工工程では、電磁鋼板611の加工とは別に、リング部材613が形成される工程がなされる。具体的には、予め帯状に形成された電磁鋼板(板厚t1、幅H)が曲げ加工により環状に形成される。その際、そのリング部材613の平面視における外形が、ロータ平板部610の平面視における外形と略同じとなるように形成される。
【0077】
その後、加工後の電磁鋼板611における外周側曲げ部分612の内側に、リング部材613が嵌められて、ロータ600が形成される。この際、加工後の電磁鋼板611とリング部材613とは、例えば溶接によって固定すればよい。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ100によれば、リング部材613を用いることで、厚さが異なるロータ平板部と対向部とを有するロータを、鋳造によらずに電磁鋼板で形成することができる。
【0079】
なお、上記第二実施形態では、外周側曲げ部分612の内側に、1つのリング部材613を設けていたが、複数のリング部材を設けて、対向部をさらに厚くしてもよい。これによって、検出信号のレベルを向上できる。
【0080】
(変形例3)
次に、第二実施形態の変形例について説明する。上記第二実施形態では、リング部材が外周側曲げ部分の内側に設けられていたが、外周側曲げ部分の外側に設けるようにしてもよい。ここで、図14は、この変形例3におけるロータの断面構造を模式的に表した図である。なお、図14において、図11の第二実施形態のロータ600と同一の部品には同一の符号を付している。このように、外周側曲げ部分612の外側にリング部材614を設けてもよい。
【0081】
(第三実施形態)
次に、本発明に係るレゾルバの第三実施形態について説明する。上記第一、第二実施形態では、ロータの対向部の少なくとも一部が、ロータ平板部を構成する平板と一体的に形成されていた。この第三実施形態では、ロータの対向部を、ロータ平板部を構成する平板とは別の複数の電磁鋼板を積層して形成するという実施形態である。以下、本実施形態について、第一、第二実施形態と異なる部分を中心にして説明する。
【0082】
本実施形態のレゾルバは、図1のレゾルバ100に対して、ロータ300を、図15のロータ700に代えたものである。その他は、第一実施形態と同じである。
【0083】
ここで、図15は、第三実施形態におけるロータ700の構造の説明図である。具体的には、図15(a)はロータ700の斜視図であり、図15(b)は図15(a)のF−F線に沿ったロータ700の断面構造を模式的に表した図である。
【0084】
図15(a)に示すように、ロータ700は、第一、第二実施形態のそれと同様に、ロータ平板部710及びその外周側に対向部720を有する。なお、ロータ700は、ロータ平板部710の内周側には内周側曲げ部分は形成されていない。
【0085】
そのロータ700は、図15(b)に示すように、ロータ平板部710が、厚さt1の1枚の電磁鋼板で構成されており、その周縁部は曲げ加工がなされていない。また、ロータ平板部710の外周縁部に形成された対向部720は、2枚の電磁鋼板721、722が積層されて形成され、ロータ平板部710に溶接その他の固定手段によって固定(ロータ平板部710と一体化)されている。それら電磁鋼板721、722はそれぞれ、第二実施形態と同様に、ロータ平板部710と同じ板厚t1で、帯状の電磁鋼板が環状になるように形成されたリング部材である(図12参照、以下リング部材721、722と称する。)。それらリング部材721、722の平面視における外形は、ロータ平板部710の平面視における外形と同じとされる。また、リング部材721、722の幅は、第一、第二実施形態における対向部と同じ高さHとされる。よって、ロータ700の対向部720は、厚さがt1×2、高さがHとされる。
【0086】
このように、ロータ700は、第一、第二実施形態の対向部と同等の対向部720が形成されているので、第一、第二実施形態と同様に、ロータ700の構造を簡素化しつつ、検出信号のレベルを向上することができる。
【0087】
次に、第三実施形態におけるレゾルバ100の製造方法について説明する。その製造方法は、例えば、第一、第二実施形態と同様に、図6のフロー図にしたがってなされる。この際、ステップS10〜ステップS16、ステップS20の工程は第一、第二実施形態のそれと同じであり、ステップS18のロータ加工工程が第一、第二実施形態のそれと異なる。
【0088】
具体的には、ロータ加工工程として、加工前の1枚の電磁鋼板がプレス加工されて環状に形成されてロータ平板部710が形成される。また、ロータ700の軸倍角が「3」となるように、ロータ平板部710は、その外径輪郭線が3周期で変化するように形成される。
【0089】
また、ロータ加工工程では、第二実施形態におけるリング部材の形成工程と同様に、リング部材721、722が形成される工程がなされる。この際、リング部材721の内側に設けられるリング部材722は、リング部材721の内側に嵌るように小さめに形成される。その後、リング部材721の内側にリング部材722が嵌められて、それらリング部材721とリング部材722とが溶接等で固定される。
【0090】
その後、ロータ平板部710の外周縁部に、積層されたリング部材721、722が溶接等で固定されて、ロータ700が形成される。
【0091】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ100によれば、第一、第二実施形態における効果に加え、ロータ平板部710と対向部720とが別の電磁鋼板で形成されており、鋳造や電磁鋼板の曲げ加工する必要がないので、鋳造や曲げ加工にともなう工程を省略でき、鋳造や曲げ加工によって磁気的特性が変化してしまうのを抑制できる。
【0092】
なお、上記第三実施形態では、2つのリング部材721、722を積層して対向部を形成していたが、さらに多くのリング部材を積層して、対向部をさらに厚くしてもよい。これによって、検出信号のレベルを向上できる。また、図16(a)に示すように、リング部材723、724が積層された対向部320が、ロータ平板部710の厚み部分と固定されるとしてもよい。また、図16(b)に示すように、ロータ平板部710の厚さt1の約2倍の厚さ(2×t1)の電磁鋼板で形成されたリング状部材725を用いてもよい。
【0093】
(第四実施形態)
上記実施形態ではレゾルバに本発明を適用した例について説明したが、回転同期装置としてのシンクロに本発明を適用してもよい。このシンクロは、ステータとロータとステータティースに巻回されたステータ巻線(励磁巻線、出力巻線)とを備えており、その出力巻線から、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力する点で、レゾルバと同じである。また、シンクロは、3相分の出力巻線がステータティースに巻回され、各出力巻線から出力される出力信号が、互いに位相角が120度ずれている点で、レゾルバと異なっている。このように、シンクロは、ステータ巻線の巻線構造以外はレゾルバと同じと考えることができるので、上記実施形態はそのままシンクロにも適用することができる。すなわち、上記ロータ平板部と対向部とを有するロータを構成することで、ロータの構造を簡素化しつつ検出信号のレベルを向上することができる。さらに、対向部の厚さが、ロータ平板部の厚さよりも大きくされることで、より一層、検出信号のレベルを向上することができる。
【0094】
ここで、図18は、シンクロの用途例を示した図である。シンクロは、図18に示すように、主に、複数の機器間でそれらの運転を同期させるために用いられ、一般的に、同じ構造のシンクロ発信機とシンクロ受信機のセットで用いられる。具体的には、図18において、シンクロとしてのシンクロ発信機72は、その回転軸71が、一方の機器(発信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ発信機72は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。また、同様に、シンクロとしてのシンクロ受信機73は、その回転軸74が他方の機器(受信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ受信機73は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。そして、これらシンクロ発信機72とシンクロ受信機73の各相が接続される。これらの動作について、(1)シンクロ発信機72とシンクロ受信機73でロータの位置が異なると、それらの間で電位差が生じ、各相に電流が流れる。(2)その電流によって、シンクロ受信機73のロータが回転する。すなわち、トルクが発生する。(3)シンクロ受信機73のロータ(回転軸74)の回転にともなって、それに接続された受信側の機器が回転される。(4)シンクロ受信機73のロータの位置がシンクロ発信機72のロータの位置と同じになると、各相に電流が流れなくなる。(5)電流が流れなくなると、シンクロ受信機73のロータの回転が停止される。よって、シンクロ発信機72とシンクロ受信機73のロータの位置が同じ、つまり発信側の機器と受信側に機器の運転が同期される。このように、レゾルバと同様に、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力するシンクロ発信機及びシンクロ受信機に対して本発明を適用しても、ロータの構造を簡素化しつつ、検出信号のレベルを向上することができる。
【0095】
なお、本発明に係るレゾルバ、シンクロは、上記実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変形することができ、例え次のような変形も可能である。
【0096】
上記の各実施形態では、レゾルバが、1相励磁2相出力型であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記の各実施形態におけるレゾルバが、励磁信号が1相以外の相を有する信号であったり、検出信号が2相以外の相を有する信号であったりしてもよい。
【0097】
上記の各実施形態では、磁性材料からなるステータの材質が1枚の電磁鋼板、普通鋼又は機械構造用炭素鋼材であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
上記の各実施形態では、いわゆるインナーロータ型の回転角検出装置又は回転同期装置としてのレゾルバ、シンクロを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係るレゾルバ、シンクロが、いわゆるアウターロータ型であってもよい。
【0099】
上記の各実施形態では、軸倍角「3」のロータを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば軸倍角「5」のロータであってもよい。
【0100】
上記の各実施形態では、絶縁キャップを介してステータ巻線をステータティースの外側に巻回する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁キャップが省略された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
4 励磁巻線
5 出力巻線
100 レゾルバ(回転角検出装置)
210a〜210h ステータティース
200 ステータ
250 平板
300、301、305、600、700 ロータ
310、610、710 ロータ平板部
320、620、720 対向部
341 開口
612 外周側曲げ部分
613、721〜725 リング部材
800 補強板
72 シンクロ発信機(シンクロ、回転同期装置)
73 シンクロ受信機(シンクロ、回転同期装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料の平板に形成されその平板面に対して起立したステータティースを有するステータと、
磁性材料から構成され、回転軸回りの回転により前記ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するように前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
そのロータの回転にともなって変化する前記ギャップパーミアンスに応じた検出信号を出力させるための、前記ステータティースに巻回されるステータ巻線と、を備え、
前記ロータは、
前記回転軸回りに回転する、平板として構成されたロータ平板部と、
そのロータ平板部の周縁部に設けられ、前記ステータティースの面と対向する対向面が形成された対向部と、を有し、その対向部の厚さが、前記ロータ平板部の厚さよりも大きくされたことを特徴とする回転角検出又は回転同期装置。
【請求項2】
前記ロータは、前記ロータ平板部と前記対向部とが同じ磁性材料で一体に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項3】
前記ロータは、前記対向部の少なくとも一部が、前記ロータ平板部を構成する磁性材料とは別の磁性材料で形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項4】
前記対向部は、磁性材料の帯状の板が前記ロータ平板部の周縁部の輪郭と同じになるように環状にされたリング部材が、前記ロータ平板部の周縁部に取り付けられて形成されたことを特徴とする請求項3に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項5】
前記対向部の間に形成された開口を閉塞するように前記対向部の先端間に取り付けられた補強板を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転角検出又は回転同期装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−247773(P2011−247773A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121814(P2010−121814)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】