説明

回転角検出又は回転同期装置

【課題】簡素な構造で、回転角の検出精度を向上させることが可能なレゾルバ、シンクロ等の回転角検出又は回転同期装置を提供すること。
【解決手段】レゾルバは、磁性材料の平板に形成されその平板面に対して起立したステータティースを有するステータと、ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するようにステータに対して回転可能に設けられたロータ300とを備える。また、レゾルバは、ステータティースに巻回されるステータ巻線を備える。ロータ300は、磁性材料の平板として構成されたロータ平板部310と、そのロータ平板部310の外周縁部に設けられ、ステータティースの面と対向する対向面が形成された対向部320とを有する。さらに、ロータ平板部310には、径方向に突出された突部311a〜311cにおいて、径方向にリブ312a〜312cが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びロータを有するレゾルバ等の回転角検出装置やシンクロ等の回転同期装置に関し、特に、ステータ及びロータの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータ及びロータを有し、ステータに対するロータの回転位置によってステータとロータとの間の相互インダクタンスが変化することを利用して、ステータに対するロータの回転角に応じた検出信号を出力する回転角検出装置としてのレゾルバが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、シンクロと称される回転同期装置は、レゾルバと構造は同じで信号の入出力あるいは用い方が異なるもので、構造的にはレゾルバと同視し得る。ここで、図13は、従来のレゾルバの構造を示した図である。図13のレゾルバ900は、内周面910aから内方へ突出する複数のステータティース920が形成されたステータ910を備える。また、ステータ910の内側には、ロータ980が回転可能に設けられる。そのロータ980は、回転軸回りの回転によりステータティース920とのギャップパーミアンスが変化するようにステータ910に対して回転可能に設けられる。
【0003】
各ステータティース920には、絶縁性の樹脂からなるボビン体940を介してステータ巻線950が巻回される。そのステータ巻線950は、複数相の巻線から構成される。具体的には、ステータ巻線950は、励磁信号が入力されてステータティース920を励磁する励磁巻線951と、ロータ980の回転にともなって変化するギャップパーミアンスに応じた検出信号が出力される出力巻線952とを有する。
【0004】
このような構成のレゾルバ900では、端子ピン970から励磁巻線951に対して励磁信号を入力してステータティース920を励磁し、ロータ980の回転にともなってギャップパーミアンスが変化すると、出力巻線952には、そのギャップパーミアンスに応じた検出信号が発生する。そして、出力巻線952と接続された端子ピン970から出力される検出信号に基づいて、ロータ980の回転角が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−344107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、レゾルバ、シンクロにおいては、回転角の検出精度を高めるためには、励磁巻線や出力巻線を精度良く巻回する必要がある。しかしながら、特許文献1に開示されたレゾルバ900では、ステータティース920が内方に向けて設けたれているため、励磁巻線951や出力巻線952を精度良く巻回することができず、検出精度の向上の大きな障害となっていた。
【0007】
また、ロータ980は、例えば磁性材料である電磁鋼板を積層させて十分な厚さにして、出力巻線952からの検出信号のレベルを上げるようにしていた。そのため、ロータの構造やレゾルバ、シンクロの製造工程が複雑化するという問題があった。この問題は、シンクロ等の回転同期装置でも同様に存在する。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、簡素な構造で、回転角の検出精度を向上させることが可能なレゾルバ等の回転角検出装置又はシンクロ等の回転同期装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、磁性材料の平板に形成されその平板面に対して起立したステータティースを有するステータと、
磁性材料から構成され、回転軸回りの回転により前記ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するように前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
そのロータの回転にともなって変化する前記ギャップパーミアンスに応じた検出信号を出力させるための、前記ステータティースに巻回されるステータ巻線と、を備え、
前記ロータは、前記回転軸回りに回転する、平板として構成されたロータ平板部から構成され、そのロータ平板部にリブが形成されたことを特徴とする。
【0010】
これによれば、ステータティースが平板面に対して起立しているので、ステータの内側の狭い空間でステータ巻線を巻回させる必要がなくなる。そのため、ステータ巻線を精度良く巻回することができる。また、ステータが平板で形成されているので、ステータの構造を簡素化することができる。また、ロータは、回転軸回りに回転する、平板として構成されたロータ平板部で構成されているので、従来のように厚いロータに比べて、構造を簡素化することができる。さらに、そのロータ平板部にはリブが形成されているので、そのロータ平板部の剛性を強くすることができる。よって、剛性不足によってロータ平板部が変位するのを防止できるので、検出精度の低下を防止しつつロータの構造を簡素化できる。
【0011】
また、本発明の回転角検出又は回転同期装置において、前記リブが、前記ロータ平板部の径方向に形成される。
【0012】
これによれば、リブがロータ平板部の径方向に形成されているので、ロータ平板部の径方向の剛性を強くすることができる。
【0013】
また、前記ロータ平板部は、その回転によって前記ギャップパーミアンスを変化させるために径方向に突出された突部を有し、
前記リブが、前記ロータ平板部の突部において径方向に形成されたとするのが好ましい。
【0014】
これによれば、ロータ平板部の突部においては、他の部分に比べて径方向に長くなっており剛性不足となるおそれがあるところ、この突部にリブが形成されているので、突部が剛性不足となるのを防止できる。
【0015】
また、前記リブが、前記ロータ平板部の周方向に形成されたとしてもよい。
【0016】
これによれば、リブがロータ平板部の周方向に形成されているので、ロータ平板部の周方向の剛性を向上することができる。
【0017】
また、前記ロータ平板部は、その周縁部以外の部分がその周縁部に対して窪まれており、その窪まれた部分に対して突出された前記周縁部が前記リブとされたとしてもよい。
【0018】
これによれば、ロータ平板部の周縁部にリブが形成されることになるので、ロータ平板部全体の剛性を強くすることができる。
【0019】
また、前記ロータは、前記ロータ平板部の周縁部に設けられ、前記ステータティースの面と対向する対向面が形成された対向部を有し、
その対向部の間に形成された開口を閉塞するように前記対向部の先端間に取り付けられた補強板を備えるとしてもよい。
【0020】
これによれば、ロータ平板部の周縁部に対向部が設けられ、さらに、その対向部の間に形成された開口を閉塞するように対向部の先端間に補強板が取り付けられているので、ロータの断面を閉じ断面にすることができる。よって、より一層、ロータの剛性を強くすることができる。また、その対向部は、ステータティースの面と対向する対向面が形成されたものであるので、ロータとステータティースとの間で効率的に磁束のやり取りをすることができる。よって、検出信号のレベルを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】レゾルバ100の構成例の分解斜視図である。
【図2】ステータ200の分解斜視図である。
【図3】第一実施形態におけるロータ300の構造の説明図である。
【図4】ステータ巻線の説明図である。
【図5】ロータ300が回転状態のときのある時刻における磁束の向きを模式的に示した図である。
【図6】レゾルバ100の製造方法の一例のフロー図である。
【図7】折り曲げプレス加工前のステータ200を構成する平板250の斜視図である。
【図8】折り曲げプレス加工前のロータ300を構成する電磁鋼板330の斜視図である。
【図9】変形例1におけるロータ301の構造の説明図である。
【図10】第二実施形態におけるロータ600の構造の説明図である。
【図11】第三実施形態におけるロータ700の構造の説明図である。
【図12】第三実施形態の変形例におけるロータ701の構造の説明図である。
【図13】従来のレゾルバの構造を示した図である。
【図14】シンクロの用途例を示した図である。
【図15】変形例2に係る、図3(a)のB2−B2線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図である。
【図16】変形例3に係る、リブ312a〜312cを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
次に、本発明に係る回転角検出装置としてのレゾルバの第一実施形態について説明する。図1は、第一実施形態のレゾルバ100の構成例の分解斜視図である。なお、図1では、ステータ巻線等の配線の図示を省略するとともに、ステータとロータとを分解して示している。また、図1では、レゾルバ100が、8個のステータティースを有し、1相励磁2相出力型のレゾルバを例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図2は、図1のステータ200の分解斜視図である。図2において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
レゾルバ100は、ステータ(固定子)200と、ロータ(回転子)300とを含む。レゾルバ100は、いわゆるインナーロータ型の回転角検出装置である。すなわち、ステータ200の内側にロータ300が設けられ、ステータ200がロータ300の外周側(外径側)の側面と対向した状態で、ロータ300の回転角に応じて、ステータ200に設けられたステータ巻線を構成する出力巻線からの信号が変化するようになっている。
【0024】
ステータ200は、磁性材料からなる環(リング)状の平板250を用いて構成され、この平板250に複数のステータティースが設けられている。これらのステータティースは、平板250の平板面に対して交差するように設けられている。図1では、ステータ200は、折り曲げ加工(広義には曲げ加工)等により平板面に対して同一面側に略垂直に起こされた8個のステータティース(突極部)210a、210b、210c、210d、210e、210f、210g、210hを有する。ステータティース210a〜210hは、プレス加工により予め平板250に形成された後、折り曲げプレス加工(広義には曲げ加工)により、平板250の面に対して略垂直となるように起こされている。これらのステータティースは、環状の平板250の内側(内径側)の縁部に形成される。また、これらのステータティースは、各ステータティースの面のうち少なくともロータ300の対向部の面と対向する面は平面ではなく、ロータ300の回転軸の方向に沿って見たときに、環状の平板250の内径側に位置する点を中心とする円弧の一部となるように形成されている。
【0025】
このような磁性材料からなるステータ200の平板250の材質は、電磁鋼板、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS45CやS10Cであることが望ましい。SPCC(Steel Plate Cold Commercial)は、JIS G3141に規定される冷間圧延鋼板及び鋼帯である。S45Cは、JIS G4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.45%程度の炭素を含有している。S10Cは、JIS G4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.10%程度の炭素を含有している。
【0026】
以上のような構成を有するステータ200は、磁性材料として1枚の電磁鋼板により構成されるため、積層電磁鋼板、つまり材料費として高価である上に折り曲げプレス加工による曲げに弱く、曲げによる加工精度や信頼性を維持できにくい積層電磁鋼板を採用する場合に比べて、低コストで、曲げによる加工精度や信頼性を維持できるようになる。しかも、曲げ加工による磁性材料の粒状破壊を防止し、曲げ加工前の磁気特性を確保することにより高精度な角度検出を可能とする。
【0027】
ステータ200には、平板250に装着可能に構成された環状の絶縁キャップ400が装着される。絶縁キャップ400には、ステータ200のステータティース210a〜210hの位置に合わせて設けられた複数のボビン410a、410b、410c、410d、410e、410f、410g、410hが一体に形成されている。各ボビンは、挿入孔(ステータティース挿入孔)を有し、当該ボビンに対応するステータティースがその挿入孔に挿入されるとともに、その外側にステータ巻線が巻回される。複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンの挿入孔の向きは、ロータ300の回転軸の向きである。
【0028】
絶縁キャップ400では、複数のボビン410a〜410hが有する挿入孔の向きが、ロータ300の回転軸の向きと一致している。そのため、ステータ200に絶縁キャップ400を装着する際に、平板250の上方から装着することができる上に、ステータ200の内側の狭い空間で各ボビンにステータ巻線を巻回させる必要がなくなる。したがって、絶縁キャップ400の取り付け工程が簡素化される上に、別工程において、予め絶縁キャップ400を形成しておくことが可能となる。これにより、レゾルバ100の生産効率の向上やコストダウンを図ることが可能となる。
【0029】
また絶縁キャップ400に設けられる複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンには、ステータ巻線の位置ずれを防止する位置ずれ防止手段としてのつば部が設けられている。そして、そのつば部によってボビンに凹部が形成されるようにし、この凹部においてステータ巻線の位置がずれないようになっている。つば部は、ボビン410a〜410hのそれぞれに設けられてもよいし、ボビン410a〜410hの一部にのみ設けられていてもよい。このような位置ずれ防止手段を設けることにより、磁束の均一化を図ることができるようになり、信頼性を向上させることができるようになる。
【0030】
さらに、絶縁キャップ400は、外部からの励磁信号を入力したり検出信号を出力したりするための端子ピンが設けられるコネクタ部450を含み、複数のボビン410a〜410hとコネクタ部450とが一体に形成される。このコネクタ部450には、端子ピン挿入孔461〜466が設けられており、端子ピン挿入孔461〜466のそれぞれには、励磁信号の入力や検出信号の出力を行うために導電材からなる端子ピン471〜476がそれぞれ挿入される。
【0031】
このように、ステータ巻線と電気的に接続される端子ピンが設けられるコネクタ部を、複数のボビンと共に一体に形成するようにしたので、ステータ巻線を確実に固定させて、信頼性を向上させることができるようになる。
【0032】
さらに、絶縁キャップ400は、複数の渡りピン(突起部)480a、480b、480c、480d、480e、480f、480gを含み、複数のボビン410a〜410h、コネクタ部450及び複数の渡りピン480a〜480gが一体に形成されている。複数の渡りピン480a〜480gを構成する各渡りピンは、2つのボビンの間において、環状の絶縁キャップ400の所与の円周上に形成されている。なお、ボビン410a、410hの間には、渡りピンが形成されていない。各渡りピンは、2つのボビンの間に設けられた円柱状の形状を有し、一方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される導線が、渡りピンにおいて張力を持たせた状態で掛けられて、他方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される。これにより、2つのボビンの距離が長くなっても共振し難くなる上に、ステータ巻線の巻き数を半ターン単位で調整できるようになる。ここで、導線に張力を持たせ易くし、かつその状態をできるだけ長く維持させるために、渡りピンは、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きの部分を有することが望ましい。
【0033】
また、絶縁キャップ400は、ステータ200(ステータ200の平板250)の縁部に係止する1又は複数の係止部(図示外)を含み、これらの係止部によりステータ200に装着可能に構成されている。
【0034】
このような絶縁キャップ400をステータ200の平板250に装着することにより、ステータ200とステータ巻線とが電気的に絶縁される。これにより、ステータ巻線により構成されるコイルの絶縁破壊を防止できる。このような絶縁キャップ400は、PBT(Poly−butylene−terephtalate:ポリブチレンテレフタレート)又はPPT(Polypropylene terephtalate:ポリプロピレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂(絶縁材)を用いた射出成形により形成される。
【0035】
ロータ300は、磁性材料からなり、ステータ200に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。例えば、ロータ300の軸倍角が「3」であり、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において外径側の外径輪郭線を3周期で変化する形状を有している。そして、平板250に対して起こされたステータティースの内側(内径側、内周側)の面と対向するロータ300の外周側に形成された対向部320の面(対向面、図3参照)が、ロータ300の1回転につき3周期でギャップパーミアンスが変化するようになっている。
【0036】
ここで、図3は、第一実施形態におけるロータ300の構造の説明図である。図3(a)はロータ300の斜視図であり、図3(b)は図3(a)のB1−B1線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図である。
【0037】
このロータ300は、1枚の電磁鋼板で形成され、平板として構成されたロータ平板部310を有する。なお、ロータ300の材質は、電磁鋼板の他に、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS45CやS10Cを採用することもできる。そのロータ平板部310は、回転角の検出対象物に取り付けられて、その検出対象物の回転にしたがって自らも回転軸回りに回転されるものである。具体的には、ロータ平板部310は、その表面が、ロータ300の回転軸と直角に交差する平面とされる。また、ロータ平板部310は、回転軸と交差する中心付近で穴が空けられた環状とされる。
【0038】
上述したように、ロータ300は、平面視において外径側の外径輪郭線を3周期で変化する形状を有していることから、ロータ平板部310が、平面視において外径側の外径輪郭線を3周期で変化する形状を有することになる。そのため、ロータ平板部310は、その径方向に突出された3つの突部311a、311b、311cを有する。各突部311a〜311cは、円弧状の外形輪郭線を有する形状とされている。そして、それら突部311a〜311cが、ロータ平板部310の周方向に等間隔で、すなわち周方向を3等分するように位置される。
【0039】
また、ロータ平板部310は、突部311a〜311cにおいて、それぞれ径方向に延びたリブ312a〜312cが形成されている。より詳細には、各リブ312a〜312cは、ロータ300の回転軸を基準として各突部311a〜311cの一番飛び出た部分、すなわち各突部311a〜311cの周方向の真ん中に形成されている。
【0040】
ここで、図3(c)は、図3(a)のB2−B2線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図であり、突部311cに形成されたリブ312cの幅方向の断面形状を示している。なお、このB2−B2線は、リブ312cと直交する線である。また、図3(d)は、図3(a)のB3−B3線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図であり、突部311cに形成されたリブ312cの長さ方向の断面形状を示している。なお、このB3−B3線は、リブ312cの長さ方向に沿った線である。なお、その他のリブ312a、312bも、図3(c)に示すリブ312cと同じ断面形状とされる。リブ312a〜312cは、ロータ平板部310を構成する電磁鋼板によって、突部311a〜311cと一体的に形成される。より詳細には、リブ312a〜312cは、電磁鋼板の一部が上側(対向部320と反対側)に押し出された、各突部311a〜311cに対して盛り上がった形状とされる。具体的には、図3(c)に示すように、リブ312a〜312cは、B2−B2線に沿った断面が円くされている。また、図3(d)に示すように、リブ312a〜312cは、その立ち上がり部分(図3(d)におけるリブ312a〜312cの両端)においてロータ平板部310の平板(図3(d)では突部311c)に対して漸次高さが増大される。また、リブ312a〜312cは、立ち上がり部分以外の部分が、一定の高さとされる。
【0041】
このように、ロータ平板部310には、リブ312a〜312cが形成されているので、平板として構成されたロータ平板部310の剛性を強くすることができる。より具体的には、リブ312a〜312cが形成された方向であるロータ平板部310の径方向の曲げ剛性を強くすることができる。
【0042】
また、ロータ300は、ロータ平板部310の外周縁部からロータ平板部310に対して直角(回転軸と平行な方向)に曲がって形成された対向部320を有する。その対向部320は、その面(対向面)がステータティース210a〜210hの面と平行に対向されるように、ロータ平板部310を構成する電磁鋼板が曲げられて形成されたものである。
【0043】
また、ロータ平板部310の厚さをt1としたときに、ロータ300の対向部320の高さHが、5×t1≦H≦12×t1の範囲とされることが望ましい。対向部320の高さHを12×t1より高くしても、これ以上、検出信号のレベルを改善させることが期待できずに、却ってロータ300の大型化を招く。一方、対向部320の高さHを5×t1より低くすると、検出信号のレベルが低くなる。
【0044】
このように、ロータ平板部310の外周縁部に対向部320を形成することで、ステータティース210a〜210hの面と対向する面積を増加させ、電磁鋼板を多く積層させたときと同等の厚さを確保できる。よって、ロータ300の構造を簡素化しつつ、検出信号のレベルを向上することができる。
【0045】
次に、ロータ300の回転によって出力巻線から出力される検出信号を取り出すためのステータ巻線について説明する。ステータ巻線は、励磁巻線と出力巻線とから構成され、励磁巻線により励磁した状態で、ステータ200に対するロータ300の回転により、出力巻線の信号が変化する。
【0046】
ここで、図4は、ステータ200のステータティース210a〜210hに巻回されるステータ巻線の説明図である。具体的には、図4(a)は、ステータ巻線を構成する励磁巻線4の説明図を示しており、図4(b)は、ステータ巻線を構成する出力巻線5の説明図を示している。図4(a)、(b)は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図4(a)では、励磁巻線4の巻き方向を模式的に示し、図4(b)では、出力巻線5の巻き方向を模式的に示す。実際には、各ボビンのステータ巻線を電気的に接続する導線は、その間に形成された渡りピンを経由させる。
【0047】
励磁巻線4は、図4(a)に示すように、隣り合うステータティースの巻回方向が互いに反対方向になるように巻回される。各ステータティースに巻回される励磁巻線4は、例えばコイル巻線とすることができる。このような励磁巻線4と電気的に接続される端子R1、R2間に、励磁信号が与えられる。
【0048】
また、図4(b)に示すように、2相の検出信号を得るために、出力巻線5は2組の巻線部材からなる。2相の検出信号のうちの第1相(例えばsin相)の検出信号を得るための出力巻線51は、例えばステータティース210aから反時計回りにステータティース210gまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。一方、2相の検出信号のうちの第2相(例えばcos相)の検出信号を得るための出力巻線52は、例えばステータティース210bから反時計回りにステータティース210hまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。これら出力巻線51、52の各ステータティースにおける巻回数や巻回方向は、所望の波形の検出信号が出力されるように調節されている。第1相の検出信号は、端子S1、S3間の信号として検出され、第2相の検出信号は、端子S2、S4間の信号として検出される。各ステータティースに巻回される出力巻線5は、例えばコイル巻線とすることができる。
【0049】
このように、ステータティース210c、210c、210e、210gが挿入孔に挿入されるボビン410a、410c、410e、410gのそれぞれの外側には、励磁巻線4及び第1相(sin相)の出力巻線51が巻回される。ステータティース210b、210d、210f、210hが挿入孔に挿入されるボビン410b、410d、410f、410hのそれぞれの外側には、励磁巻線4及び第2相(cos相)の出力巻線52が巻回される。
【0050】
なお、励磁巻線4の巻き方向は、図4(a)に示す方向に限定されるものではない。また、出力巻線5の巻き方向は、図4(b)に示す方向に限定されるものではない。例えば、各ステータティースにおける励磁巻線4、出力巻線5の巻き方向を、図4(a)、図4(b)に示す方向に対して反対方向になるようにしてもよい。
【0051】
以上のような構成を有するレゾルバ100では、ステータ200に対するロータ300の回転によって、次のような磁気回路が形成される。ここで図5は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図5では、説明の便宜上、絶縁キャップ400の図示を省略するとともに、ステータ200に対してロータ300が回転状態のときのある時刻における磁束の向きを模式的に示している。また、図5において、巻線磁芯としての各ステータティースを通る磁束の向きを模式的に示している。
【0052】
絶縁キャップ400を介してステータ200のステータティース210a〜210hにステータ巻線4、5が巻回されており、ロータ300が回転すると、ロータ300を介して隣り合うステータティース間で磁気回路が形成される。図5に示すように、隣り合うステータティースを通る磁束の向きが反対方向となるようにステータ巻線4、5が巻回されているため、ロータ300の回転によって、各ステータティースに巻回されるステータ巻線4、5に発生する電流もまた変化し、例えば出力巻線5に発生する電流波形を正弦波状にすることができる。
【0053】
次に、本実施形態におけるレゾルバ100の製造方法について説明する。図6は、レゾルバ100の製造方法の一例のフロー図である。また図7は、折り曲げプレス加工前のステータ200を構成する平板250の斜視図である。また図8は、折り曲げプレス加工前のロータ300を構成する電磁鋼板330の斜視図である。なお、図7、図8において、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0054】
レゾルバ100を製造するために、先ず、ステータ形状加工工程においてステータ200の形状を加工した(ステップS10)後に、折り曲げプレス加工工程(曲げ工程)において、平板状のステータ200のステータティースを折り曲げて、複数のステータティースが平板面に対して起こされる(ステップS12)。その結果、図2に示すように、平板250に対してステータティース210a〜210hが起こされる。
【0055】
すなわち、ステップS10のステータ形状加工工程では、ステップS12の折り曲げプレス加工を行うために、図7に示すように、プレス加工により、1枚の電磁鋼板、普通鋼であるSPCC、機械構造用炭素鋼であるS45C又はS10Cを材質とする環状の磁性材料からなる平板の内径側の縁部にステータティースが形成されて、ステータ200の形状が形成される。
【0056】
そして、ステップS12では、折り曲げプレス加工により、ステップS10において形成された複数のステータティースを、断面視において、その根本部分がR形状となるように加工される。この結果、ステータティース210a〜210hは、ステータ200の平板面に対して略垂直となるように起こされる。
【0057】
続いて、絶縁キャップ取り付け工程として、図2に示す絶縁キャップ400を、そのボビンに設けられた挿入孔に、ステップS12で起こされたステータティースを挿入して、平板250に取り付ける(ステップS14)。このとき、絶縁キャップ400に設けられた1又は複数の係止部(図示外)により、平板250に係止することで取り付けられる。
【0058】
その後、巻線部材取り付け工程として、ステップS12で起こされたステータティース210a〜210hの各ステータティースを巻線磁芯として、各ステータティースの外側にステータ巻線が巻回される(ステップS16)。こうして起こされたステータティースのそれぞれの周囲に、励磁用の励磁巻線4及び検出用の出力巻線5が巻回される。なお、ボビンにステータ巻線を取り付けた絶縁キャップ400を、平板250に装着するようにしてもよい。
【0059】
次に、ロータ加工工程として、1枚の電磁鋼板がプレス加工されて、図8に示すように、外形輪郭線が3周期で変化し、中心付近で穴が空いた環状の電磁鋼板330が形成される(ステップS18)。すなわち、電磁鋼板330には、図3(a)の3つの突部311a〜311cが形成されている。また、電磁鋼板330の外周側には、曲げられる前の対向部320(図8のハッチング部分)が形成されている。なお、この段階では、電磁鋼板330には未だリブ312a〜312cが形成されていない。
【0060】
ロータ加工工程では、その後、プレス加工により、図8の電磁鋼板330の外周縁部が曲げられて対向部320が形成される(ステップS18)。この際、対向部320の断面形状がR形状となるように加工される。さらに、対向部320と同時の、又は別時のプレス加工により、図8の電磁鋼板330の各突部311a〜311cに、図3に示すリブ312a〜312cが形成される(ステップS18)。以上より、ロータ300が完成される。
【0061】
次に、ロータ取り付け工程として、ロータ300が、ステータ200に対して回転自在となるように、ステータ200の内径側に設けられる(ステップS20)。より具体的には、ロータ取り付け工程において、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりロータ300の外側の対向部320の面とステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。なお、図6では、ロータ加工工程が、巻線部材取り付け工程の後に行われるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、少なくともロータ取り付け工程に先立って行われていればよい。以上のように、本実施形態におけるレゾルバ100が製造される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ100によれば、ロータ300が、平板で構成されたロータ平板部310で構成されているので、従来の厚いロータよりも構成及び製造工程を簡素化できる。また、レゾルバ100(ロータ300)の軽量化、コスト低減を実現できる。
【0063】
また、ロータ平板部310には、各突部311a〜311cにおいて、径方向にリブ312a〜312cが形成されているので、ロータ平板部310の径方向の曲げ剛性を強くすることができる。よって、剛性不足によってロータ平板部310が変位するのを防止でき、その結果、検出精度が低下するのを防止できる。なお、各突部311a〜311cは、ロータ平板部310の径方向に突出された部分であり変位しやすい部分であることから、本実施形態のように、これら突部311a〜311cにリブ312a〜312cを設けると効果的である。
【0064】
(変形例1)
上記第一実施形態のロータ300においては、1枚の電磁鋼板で構成されているので、従来の厚いロータに比べて、剛性不足となる場合がある。剛性不足になると、ロータががたついて変位してしまい回転角の検出精度が低下しまう。そこで、図9に示すように、図3のロータ300の対向部320の内側に形成された開口341を閉塞するように、対向部320の先端に補強板800を取り付けてもよい。この図9は、図3のロータ300に補強板800を取り付けた後のロータ301を示した図であり、図9(a)はロータ301の斜視図であり、図9(b)は図9(a)のC−C線に沿ったロータ301の断面構造を模式的に表した図であり、図9(c)は補強板800の平面図である。なお、図9において、図3のロータ300と同じ部品には同じ符号を付している。
【0065】
図9(b)、(c)に示すように、ロータ平板部310と平面視で同じ形状の補強板800を、対向部320の先端に取り付ける。なお、補強板800は、例えば、電磁鋼板とされ、溶接によって、対向部320と補強板800とが接続される。
【0066】
これによって、ロータ301の対向部320の内側に形成された開口341を閉塞して、ロータ301の断面を四角断面(閉じ断面)にすることができるので、ロータ301の剛性を向上できる。よって、ロータ301ががたついて検出精度が低下してしまうのを防止できる。
【0067】
なお、図9の補強板は、以下に示す、他の実施形態におけるロータに対して取り付けてもよい。いずれの場合も、ロータの対向部の内側に形成された開口を閉塞して、ロータの断面を強くすることができるので、ロータの剛性を向上できる。
【0068】
(変形例2)
上記第一実施形態では、ロータ300に形成されたリブ312a〜312cは、幅方向の断面が円くされていたが(図3(c)参照)、これに限定されるものではない。ここで、図15は、変形例2に係る、図3(a)のB2−B2線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図である。この図15に示すように、リブ312a〜312cは、幅方向の断面が四角断面とされていてもよい。このように、リブ312a〜312cの断面が異なると、断面係数が変わってくるので、ロータ平板部310の曲げ剛性が変わってくる。よって、目標とする曲げ剛性に応じて、リブ312a〜312cの断面を適宜決定してもよい。
【0069】
(変形例3)
上記第一実施形態では、ロータ300に形成されたリブ312a〜312cは、ロータ平板部310の上側(対向部320と反対側)に形成されていたが(図3(c)、(d)参照)、ロータ平板部310の下側(対向部320側)に形成されたとしてもよい。ここで、図16は、この変形例3に係る、リブ312a〜312cを説明する図であり、図16(a)は、図3(a)のB2−B2線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図であり、図16(b)は、図3(a)のB3−B3線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図である。図16(a)、(b)に示すように、リブ312a〜312cは、ロータ平板部310の下側(対向部320側)に形成されている。そして、図16(a)に示すように、図3(c)と同様に、B2−B2線に沿った断面が円くされている。また、図16(b)に示すように、図3(d)と同様に、リブ312a〜312cは、その立ち上がり部分(図16(b)におけるリブ312a〜312cの両端)においてロータ平板部310の平板(図16(b)では突部311c)に対して漸次高さが増大される。また、リブ312a〜312cは、立ち上がり部分以外の部分が、一定の高さとされる。このように、リブ312a〜312cをロータ平板部310の下側に形成することで、対向部320によってリブ312a〜312cを隠すことができる。よって、見た目を良くすることができる。
【0070】
(第二実施形態)
次に、本発明に係るレゾルバの第二実施形態について第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態のレゾルバは、図1のレゾルバ100に対して、ロータ300を、図10のロータ600に代えたものである。その他は、第一実施形態と同じである。
【0071】
ここで、図10は、第二実施形態におけるロータ600の構造の説明図である。具体的には、図10(a)はロータ600の斜視図であり、図10(b)は図10(a)のD1−D1線に沿ったロータ600の断面構造を模式的に表した図である。また、図10(c)は、図10(a)のD2−D2線に沿ったロータ300の断面構造を模式的に表した図である。
【0072】
図10(a)、(b)に示すように、ロータ600は、第一実施形態のそれと同様に、ロータ平板部610及び対向部620を有する。これらロータ平板部610、対向部620の形状、機能は、ロータ平板部に形成されるリブ以外は、第一実施形態のそれと同じである。すなわち、本実施形態では、ロータ平板部に形成されるリブが、第一実施形態と異なっている。具体的には、図10(a)に示すように、ロータ平板部610の各突部611a〜611cにおいて、ロータ平板部610の周方向に延びた3つのリブ612a〜612cが形成されている。より詳細には、各リブ612a〜612cは、各突部611a〜611cの径方向における真ん中当たりに形成される。また、各リブ612a〜612cの各突部611a〜611cにおける位置、大きさは、それぞれ同じとされる。さらに、各リブ612a〜612cは、ロータ平板部610の中心Oを中心とした円の一部となるように、円弧状に形成される。
【0073】
ここで、図10(c)は、上述したように図10(a)のD2−D2線に沿ったロータ600の断面構造を模式的に表した図であり、突部611cに形成されたリブ612cの断面形状を示している。なお、このD2−D2線は、リブ612cと直交する線である。なお、その他のリブ612a、612bも、図10(c)に示すリブ612cと同じ断面形状とされる。図10(c)に示すように、リブ612a〜612cは、第一実施形態と同様に、ロータ平板部610を構成する電磁鋼板の一部が押し出された、各突部611a〜611cに対して山形に盛り上がった形状とされる。なお、リブ612a〜612cは、第一実施形態と同様に、ロータ平板部610を構成する電磁鋼板をプレス加工して形成すればよい。また、リブ612a〜612cは、その断面が、第一実施形態と同様とされる(図3(c)、(d)、図15、図16(a)、(b)参照)。
【0074】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ100は、ロータ平板部610の各突部611a〜611cにおいて、周方向にリブ612a〜612cが形成されているので、ロータ平板部610の周方向の曲げ剛性を強くすることができる。よって、剛性不足によってロータ平板部610が変位するのを防止でき、その結果、検出精度が低下するのを防止できる。
【0075】
(第三実施形態)
次に、本発明に係るレゾルバの第三実施形態について第一、第二実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態のレゾルバは、図1のレゾルバ100に対して、ロータ300を、図11のロータ700に代えたものである。その他は、第一実施形態と同じである。
【0076】
ここで、図11は、第三実施形態におけるロータ700の構造の説明図である。具体的には、図11(a)はロータ700の斜視図であり、図11(b)は図11(a)のE−E線に沿ったロータ700の断面構造を模式的に表した図である。
【0077】
図11(a)、(b)に示すように、ロータ700は、第一、第二実施形態のそれと同様に、ロータ平板部710及び対向部720を有する。これらロータ平板部710、対向部720の形状、機能は、ロータ平板部に形成されるリブ以外は、第一、第二実施形態のそれと同じである。すなわち、本実施形態では、ロータ平板部に形成されるリブが、第一、第二実施形態と異なっている。具体的には、ロータ平板部710の外周縁部以外の部分が窪まれている。そして、その窪まれた部分712に対して突出された外周縁部711がリブとされる(以下、リブ711と称する。)。このように、本実施形態では、ロータ平板部710の外周縁部の全部に、リブ711が形成される。なお、リブ711は、ロータ平板部710を構成する電磁鋼板をプレス加工して、窪まれた部分712及び対向部720の形成と同時に形成すればよい。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ100は、ロータ平板部710の外周縁部の全部にリブ711が形成されているので、ロータ平板部710全体の曲げ剛性を強くすることができる。よって、剛性不足によってロータ平板部710が変位するのを防止でき、その結果、検出精度が低下するのを防止できる。
【0079】
なお、上記第三実施形態では、ロータ平板部の外周縁部にリブを形成していたが、外周縁部に加えて内周縁部にリブを形成してもよい。ここで、図12は、この変形例に係るロータ701の構造の説明図であり、図12(a)はロータ701の斜視図であり、図12(b)は図12(a)のF−F線に沿ったロータ701の断面構造を模式的に表した図である。なお、図12において、図11のロータ700と同じ部品には同じ符号を付している。
【0080】
この図12(a)、(b)に示すように、ロータ701は、ロータ平板部710の内周縁部にリブ713が形成されている。より具体的には、図12(b)に示すように、ロータ平板部710の外周縁部、内周縁部以外の部分が窪まれており、その窪まれた部分712に対して突出された外周縁部711及び内周縁部713がリブとされる(以下、リブ711、713と称する。)。なお、内周側のリブ713も、ロータ平板部710を構成する電磁鋼板をプレス加工して形成すればよい。
【0081】
このように、外周側のリブ711に加えて、内周側にもリブ713を形成することで、より一層、ロータ平板部710の曲げ剛性を強くすることができる。
【0082】
(第四実施形態)
上記実施形態ではレゾルバに本発明を適用した例について説明したが、回転同期装置としてのシンクロに本発明を適用してもよい。このシンクロは、ステータとロータとステータティースに巻回されたステータ巻線(励磁巻線、出力巻線)とを備えており、その出力巻線から、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力する点で、レゾルバと同じである。また、シンクロは、3相分の出力巻線がステータティースに巻回され、各出力巻線から出力される出力信号が、互いに位相角が120度ずれている点で、レゾルバと異なっている。このように、シンクロは、ステータ巻線の巻線構造以外はレゾルバと同じと考えることができるので、上記実施形態はそのままシンクロにも適用することができる。すなわち、ロータをロータ平板部で構成し、そのロータ平板部にリブを設けることにより、ロータの構造を簡素化しつつ、ロータの剛性を強くすることができる。
【0083】
ここで、図14は、シンクロの用途例を示した図である。シンクロは、図14に示すように、主に、複数の機器間でそれらの運転を同期させるために用いられ、一般的に、同じ構造のシンクロ発信機とシンクロ受信機のセットで用いられる。具体的には、図14において、シンクロとしてのシンクロ発信機72は、その回転軸71が、一方の機器(発信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ発信機72は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。また、同様に、シンクロとしてのシンクロ受信機73は、その回転軸74が他方の機器(受信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ受信機73は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。そして、これらシンクロ発信機72とシンクロ受信機73の各相が接続される。これらの動作について、(1)シンクロ発信機72とシンクロ受信機73でロータの位置が異なると、それらの間で電位差が生じ、各相に電流が流れる。(2)その電流によって、シンクロ受信機73のロータが回転する。すなわち、トルクが発生する。(3)シンクロ受信機73のロータ(回転軸74)の回転にともなって、それに接続された受信側の機器が回転される。(4)シンクロ受信機73のロータの位置がシンクロ発信機72のロータの位置と同じになると、各相に電流が流れなくなる。(5)電流が流れなくなると、シンクロ受信機73のロータの回転が停止される。よって、シンクロ発信機72とシンクロ受信機73のロータの位置が同じ、つまり発信側の機器と受信側に機器の運転が同期される。このように、レゾルバと同様に、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力するシンクロ発信機及びシンクロ受信機に対して本発明を適用しても、ロータの剛性を強くできるので、好適である。
【0084】
なお、本発明に係るレゾルバ、シンクロは、上記実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変形することができ、例え次のような変形も可能である。例えば、上記第一、第二実施形態では、ロータ平板部の突部にリブを形成していたが、突部以外の凹んだ部分にリブを形成してもよい。また、各突部において、複数のリブを形成してもよい。また、第一実施形態における径方向のリブ、第二実施形態における周方向のリブ及び第三実施形態における周縁部のリブを、組み合わせてもよい。また、上記実施形態では、ロータ平板部とリブとを1枚の電磁鋼板で一体的に形成していたが、リブを別の部材で形成してもよい。また、上記実施形態では、軸倍角「3」のロータを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば軸倍角「5」のロータであってもよい。この場合、ロータ平板部において、5つの突部が形成されることになるので、第一、第二実施形態にしたがえば、5つのリブが形成されることになる。
【0085】
上記の各実施形態では、レゾルバが、1相励磁2相出力型であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記の各実施形態におけるレゾルバが、励磁信号が1相以外の相を有する信号であったり、検出信号が2相以外の相を有する信号であったりしてもよい。
【0086】
上記の各実施形態では、磁性材料からなるステータの材質が1枚の電磁鋼板、普通鋼又は機械構造用炭素鋼材であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
上記の各実施形態では、いわゆるインナーロータ型の回転角検出又は回転同期装置としてのレゾルバ、シンクロを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係るレゾルバ、シンクロが、いわゆるアウターロータ型であってもよい。
【0088】
上記の各実施形態では、絶縁キャップを介してステータ巻線をステータティースの外側に巻回する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁キャップが省略された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
4 励磁巻線
5 出力巻線
100 レゾルバ(回転角検出装置)
210a〜210h ステータティース
200 ステータ
250 平板
300、301、600、700、701 ロータ
310、610、710 ロータ平板部
311a〜311c、611a〜611c 突部
312a〜312c、612a〜612c、711、713 リブ
712 窪まれた部分
320、620、720 対向部
341 開口
400 絶縁キャップ
800 補強板
72 シンクロ発信機(シンクロ、回転同期装置)
73 シンクロ受信機(シンクロ、回転同期装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料の平板に形成されその平板面に対して起立したステータティースを有するステータと、
磁性材料から構成され、回転軸回りの回転により前記ステータティースとのギャップパーミアンスが変化するように前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
そのロータの回転にともなって変化する前記ギャップパーミアンスに応じた検出信号を出力させるための、前記ステータティースに巻回されるステータ巻線と、を備え、
前記ロータは、前記回転軸回りに回転する、平板として構成されたロータ平板部から構成され、そのロータ平板部にリブが形成されたことを特徴とする回転角検出又は回転同期装置。
【請求項2】
前記リブが、前記ロータ平板部の径方向に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項3】
前記ロータ平板部は、その回転によって前記ギャップパーミアンスを変化させるために径方向に突出された突部を有し、
前記リブが、前記ロータ平板部の突部において径方向に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項4】
前記リブが、前記ロータ平板部の周方向に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項5】
前記ロータ平板部は、その周縁部以外の部分がその周縁部に対して窪まれており、その窪まれた部分に対して突出された前記周縁部が前記リブとされたことを特徴とする請求項4に記載の回転角検出又は回転同期装置。
【請求項6】
前記ロータは、前記ロータ平板部の周縁部に設けられ、前記ステータティースの面と対向する対向面が形成された対向部を有し、
その対向部の間に形成された開口を閉塞するように前記対向部の先端間に取り付けられた補強板を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転角検出又は回転同期装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−247774(P2011−247774A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121815(P2010−121815)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】