回転角検出装置
【課題】構造を複雑化することなく、耐久性に優れた360度超検出可能な回転角検出装置を提供すること。
【解決手段】ねじ受け7は磁気検出素子8とともに基板10に固定される。これにより、ねじ受け7とドライブギヤ3とにより位置決めされるドリブンギヤ4の位置に対する磁気検出素子8の位置を正確に設定することができる。
【解決手段】ねじ受け7は磁気検出素子8とともに基板10に固定される。これにより、ねじ受け7とドライブギヤ3とにより位置決めされるドリブンギヤ4の位置に対する磁気検出素子8の位置を正確に設定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転による磁束方向の回転を検出することにより、回転軸の回転角を検出する回転角検出装置の改良に関する。本発明はたとえば、車両用操舵角検出装置に採用されることができる。
【背景技術】
【0002】
磁石(着磁体を含む)の回転角変化を磁気検出素子により検出する回転角検出装置を用いた操舵角検出装置が知られている。この回転角検出装置において、被検出回転軸の360度を超える回転角を検出する装置(以下、360度超回転角検出装置とも言う)が特許文献1に知られている。この特許文献1の360度超回転角検出装置は、回転角を検出すべき一つの被検出回転軸にそれぞれ独立に噛合する二つの磁石軸の回転角をそれぞれ磁気検出部により検出し、これら二つの磁気検出部から互いに位相角が異なる出力を発生させ、信号処理部によりこれら二つの出力の位相角の差から360度超の回転角を演算することを提案している。
【0003】
また、本発明者の発明になる下記の特許文献2は、被検出回転軸に設けられた第1歯車に対して噛合しつつ磁気検出素子の周囲を回転する第2歯車の刃先に雄ねじ部を設けた回転角検出装置を提案している。この雄ねじ部は、第2歯車の外周に接する部分円筒状のねじ受けに設けられた雌ねじ部に螺合し、第2歯車は回動とともにねじ受けにより付勢されて軸方向に進退する。第2歯車の内部に設けられた着磁体は、第2歯車の軸方向へ連続的に変化する磁束密度を形成する。第2歯車の軸心上に設けられた磁気検出素子が検出する磁束密度は、第2歯車の回動角に応じて連続的に変化する。その結果として、磁気検出素子から出力される二つの出力の位相角の差と強度とから360度超の回転角を演算することが可能となっている。更なる説明については、下記の特許文献2を参照されたい。
【特許文献1】特開2005−3625号公報
【特許文献2】特開2007−256250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の回転角検出装置は、360度超の回転角を検出できるものの、歯車機構と磁石と磁気検出部とのセットを2組、被検出回転軸の周囲に配置せねばならず、部品点数及び装置体格が増大し、製造コストも増大するという問題があった。
【0005】
上記特許文献2の回転角検出装置において、第1歯車とねじ受けとは互いに螺合してねじ機構を構成するが、第1歯車(ドライブギヤ)と磁気検出素子との位置合わせのみならず、これら第1歯車及び磁気検出素子に対してねじ受けを高精度に位置合わせするねじ受け取り付けのための熟練作業が必要となった。また、ねじ受けはハウジングに固定されるが、量産されるハウジングの寸法ばらつきによるがたにより、検出精度が低下するという問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、製造工程の複雑化を回避しつつ検出精度に優れた360度超検出可能な回転角検出装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の回転角検出装置は、ハウジングに回動自在に支持される被検出回転軸と、前記被検出回転軸に固定されたドライブギヤに噛合するドリブンギヤと、永久磁石を有するとともに前記ドリブンギヤの内部に固定されて前記ドリブンギヤの軸心位置に磁界を形成する磁界形成部と、前記ハウジングに支持されて前記ドリブンギヤに螺合するねじ受けと、前記ドリブンギヤの軸心上に位置して前記ハウジングに固定される磁気検出部と、前記磁気検出部の出力信号を処理して前記被検出回転軸の回転角を検出する信号処理部とを備え、前記ドリブンギヤは、前記ドライブギヤにより回動されるとともに前記ねじ受けに付勢されて軸方向に進退し、前記信号処理部は、前記磁界形成部の回動による軸直交磁界方向の変化並びに前記ドリブンギヤの軸方向進退による磁界強度の変化に基づいて前記被検出回動軸の360度超の回動角を検出する回転角検出装置に適用される。
【0008】
すなわち、この回転角検出装置は、磁石内蔵の磁界形成部が固定されたドリブンギヤが、被検出回転軸のドライブギヤと噛合し、ねじ受けの雌ねじ面と螺合する。これにより、被検出回転軸が回動すると、ドリブンギヤは回動するとともに軸方向に進退する。磁界形成部は、ドリブンギヤの軸心上に所定の軸直角方向に磁束を形成しており、ドリブンギヤ及び磁界形成部の回動とともに磁気検出部に作用する磁束の方向が変化する。この磁界方向の変化により信号処理部は回動角を検出する。更に、ドリブンギヤの軸方向進退とともに、磁界形成部が磁気検出部に与える磁界強度が連続的に変化する。これにより、被検出回転軸の360度超の回動を判定することができる。
【0009】
上記構成は、既述した特許文献2の装置と本質的に同じである。
【0010】
本発明の回転角検出装置は更に、ハウジングに固定されて信号処理部が実装される回路基板を有し、磁気検出部が回路基板に支持される支持部材に固定され、ねじ受けが回路基板に固定されていることを、その特徴としている。このようにすると、本発明者が認識した特許文献2の回転角検出装置における下記の問題点を良好に解決することができる。
【0011】
すなわち、この発明では、磁気検出部とねじ受けとをハウジングを経由することなく回路基板を通じて予め位置合わせしておくことが可能であるため、回路基板を第1歯車(ドライブギヤ)と位置合わせすることにより、磁気検出部及びねじ受けの両方を第1歯車に対して一挙に位置合わせすることができる。また、磁気検出部と第1歯車の位置合わせにより磁気検出部とねじ受けとの位置がずれることもない。また、磁気検出部及びねじ受けを回路基板に固定する作業を予め行うことが容易であり、組み付け作業の容易化を実現でき、その自動化も容易である。更に、ねじ受けがハウジングを介することなく磁気検出部に対して位置合わせされるため、ハウジングの寸法ばらつきの影響を受けることがない。結局、本発明の回転角検出装置は、熟練作業を減らすことができるにもかかわらず高精度の360度超検出可能な回転角検出が可能となる。
【0012】
好適な態様において、回路基板はドリブンギヤの軸心と直角方向へ延在する。これにより、組み付け作業が容易となり、検出精度を向上することができる。
【0013】
好適な態様において、ねじ受けは、軸直交断面が円弧形状の雌ねじ面を有する部分円筒体からなり、ドリブンギヤの歯の径方向外端面に形成された雄ねじ面は、ねじ受けの径方向内側の表面に形成された雌ねじ面に螺合し、ねじ受けの周方向中心点とドリブンギヤの軸心とドライブギヤの軸心とは、一直線に配置されている。これにより、検出精度を向上することができる。
【0014】
好適な態様において、ねじ受けは、回路基板の支持孔に嵌入される固定用突起を有する。これにより、容易な実装作業により精度良くねじ受けを回路基板に固定することができる。
【0015】
好適な態様において、回路基板に立設される支持突起を有し、支持突起は、ねじ受けに凹設された支持穴に嵌入される。これにより、容易な実装作業により精度良くねじ受けを回路基板に固定することができる。
【0016】
好適な態様において、被検出回動軸は、車両の操舵軸からなる。これにより、高精度で製造が容易な車両用操舵角検出装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の回転角検出装置を用いた操舵角検出装置の好適実施形態を以下に説明する。ただし、本発明は、下記の実施形態に限定解釈されるものではなく、他の技術を組み合わせて本発明の技術思想を実現してもよい。
【0018】
(実施形態1)
(基本構造)
実施形態1の操舵角検出装置を、図1を参照して説明する。図1は装置の軸方向模式断面図、図2は装置の要部平面図である。
【0019】
この操舵角検出装置は、操舵軸(被検出回転軸)の回転角を検出するための装置であって、ハウジング1に回動自在に支持される被検出回転軸2と、被検出回転軸2に固定されたドライブギヤ3と、ドライブギヤ3に噛合するドリブンギヤ4と、ドリブンギヤ4の内周面に固定された永久磁石(磁界形成部)5及びヨーク(磁界形成部)6と、ドリブンギヤ4に螺合するねじ受け7と、ドリブンギヤ4の軸心上に配置される磁気検出素子(磁気検出部)8と、磁気検出素子8の出力信号を処理して被検出回転軸2の回転角を検出する信号処理部9とを有し、信号処理部9は基板(本発明で言う回路基板)10に実装されている。
【0020】
ハウジング1は、台座部11と、台座部11に被せられて台座部11に締結される上蓋部12とからなり、樹脂成形又はアルミダイキャスト又は軟鋼板のプレス成形などにより製造されている。上蓋部12はその全周にわたって側枠をもち、この側枠の先端面が台座部11の上面に密着して内部に密閉空間を形成している。ただし、台座部11及び上蓋部12には、被検出回転軸2が貫通する孔13、14を有している。
【0021】
基板10はプリント基板であって、信号処理部9をなすマイコンなどの回路素子が実装されている。基板10は、台座部11の上面に設けられた支持突起15に締結されている。もちろん、支持突起15は信号処理部9などの実装に支障が無い位置に形成される。Mはドリブンギヤ4の軸心であり、被検出回転軸2の軸心と平行に配置されている。
【0022】
磁気検出素子8は、基板10からドリブンギヤ4の軸心Mに沿いつつ立設された支持突起80の先端に固定されている。すなわち、磁気検出素子8が固定された支持突起(本発明で言う支持部材)80を基板10に実装することにより、台座部11に対する磁気検出素子8の位置が設定される。ハウジング1の台座部11は、図略の車体構造に固定される。被検出回転軸2を支持するこの車体構造に対する被検出回転軸2の位置は、被検出回転軸2を回転自在に支持する図略の軸受け構造などにより設定される。結局、基板10は、台座部11及びそれを支持する車体構造を通じて被検出回転軸2に対して位置決めされる。
【0023】
同じく、ねじ受け7の下端部も基板10に固定され、ねじ受け7は、台座部11から上方へ向けて立設されている。これにより、ねじ受け7は、基板10を通じて磁気検出素子8に対して位置合わせされることになる。ねじ受け7は、円筒の一部を軸方向に切断除去した部分円筒形状をもち、その内周面には雌ねじ面が形成されている。この雌ねじ面は、後述するように、ドリブンギヤ4の各歯の径方向外端面に形成された雄ねじ面に螺合している。
【0024】
永久磁石5は、円筒状に形成されたフェライト磁石であって、ドリブンギヤ4の軸心Mの周囲に回転対称に配置されて円筒状のヨーク6の内周面に固定されている。軟磁性のヨーク6は、ドリブンギヤ4の内周面に嵌入、固定されている。永久磁石5の内周面は、図1に示すように軸方向に変位するにつれて連続的に径小となる円錐面となっている。永久磁石5は図1において、左右方向(すなわちX方向)へ着磁されている。ヨーク6は一対の永久磁石5間を流れる磁束の戻り磁路をなすとともに、磁気シールド機能を奏する。
【0025】
これにより、永久磁石5内の空間には軸心Mと直交する所定方向へ流れる直流磁束が形成される。この直流磁束の方向はドリブンギヤ4の回転とともに回転する。軸心M上に配置された磁気検出素子8は、互いに直交し、かつ、それぞれ軸心Mと直交する磁束密度成分を別々に検出する2つのホール素子を有する。以下、第1のホール素子の検出磁束密度方向をX、第2のホール素子の検出磁束密度方向をYとする。したがって、第1のホール素子は軸心M上に形成される磁束密度BのX方向成分Bxを検出し、第2のホール素子は軸心M上に形成される磁束密度BのY方向成分Byを検出する。更に、軸心M上の磁束密度Bは、永久磁石5内の空隙が下方へ向けて連続的に増大しているため、下方へ移動するにつれて連続的に減少する。基板10上に固定された信号処理部9は、磁気検出素子8から入力されるX方向磁束密度成分Bx及びY方向磁束密度成分Byに比例する信号電圧Vx、Vyを処理して、被検出回転軸2の回転角を算出する。なお、図2において、41はドリブンギヤ4の歯、31はドライブギヤ3の歯である。
【0026】
(動作)
次に、この装置の動作を以下に説明する。
【0027】
被検出回転軸2とともにドライブギヤ3が回転すると、ドライブギヤ3と噛合するドリブンギヤ4が回転し、ドリブンギヤ4の回転により、ドリブンギヤ4と螺合するねじ受け7により付勢されてドリブンギヤ4は永久磁石5及びヨーク6とともに軸方向へ(上下に)進退する。その結果、たとえば永久磁石5が図1中、下方へ変位すると、磁気検出素子8が検出する磁束密度が減少し、信号処理部9に入力する信号電圧Vx、Vyの振幅がそれぞれ減少する。逆に、永久磁石5が図1中、上方へ変位すると、磁気検出素子8が検出する磁束密度が増大し、信号処理部9に入力する信号電圧Vx、Vyの振幅がそれぞれ増大する。したがって、軸心M上に固定された永久磁石5のX方向を基準として回転角度をθとする時、X方向磁束密度成分BxとY方向磁束密度成分Byとは、
Bx = f (θ)・cosθ
By = f (θ)・sinθ
となる。なお、f (θ)は、永久磁石5の軸方向変位により磁気検出素子8の位置における磁束密度Bのベクトル長の変化を示す関数値である。 f (θ ) は磁石やヨークの形状、材質等で決まる値である。ただし、この実施形態では、軸心Mの軸方向一方側(この実施形態では図1における上方)への変位において単調増加し、軸心Mの軸方向一方側への変位において単調減少するように設定されているが、これに限定されるものではない。信号処理部9は、磁束密度Bのベクトル長を示す関数値f (θ)とドリブンギヤ4の回転回数との関係を記憶している。
【0028】
信号処理部9は、磁気検出素子8から入力されるX方向磁束密度成分BxとY方向磁束密度成分Byとを逆正接演算する機能をもつ。この逆正接演算により、
θ = arctan (By/Bx)
が算出され、磁気検出素子8の回転角θにより永久磁石5の360度内の角度情報を得ることができる。更に、信号処理部9は、X方向磁束密度成分BxとY方向磁束密度成分Byとの二乗和の平方根を演算する機能をもつ。この演算により、f (θ ) としてBxの二乗値+Byの二乗値の平方根、すなわち磁束密度Bのベクトル長が算出され、この磁束密度Bのベクトル長を示す関数値 f (θ)と、記憶する上記関係とから、磁石回転軸の回転回数が算出される。
【0029】
結局、この実施形態では、f (θ)の大きさから所定の軸方向基準位置からの何回転目の回転かを演算し、arctan(By/Bx)から現在の永久磁石5の回転角θを演算し、これらから360度以上の回転角θ’を算出する。たとえば現在2回目の回転であり、θが55度であれば、最終回転角θ’は415度が算出されて出力される。被検出回転軸2の回転角φ及びドリブンギヤ4の回転角θと、X方向磁束密度成分Bx及びY方向磁束密度成分Byとの関係を図3に示す。
【0030】
以上説明したこの実施形態の360度超回転角検出方式は、既述した特許文献2のそれと同じである。
【0031】
(ねじ受け7の固定方法)
次に、ねじ受け7を基板10に固定する各種形態について図面を参照して説明する。なお、下記の各図において、断面ハッチングは省略される。
【0032】
図4は、ねじ受け7を基板10の上面に接着により固定した実施形態を示す。基板10上には、基板10の面平行方向(以下、単に面平行方向と言う)への変位を規制する図略のストッパ部材が予め固定されており、このため、ねじ受け7の面平行方向への変位は防止される。基板10の上面は、軸心Mに対して直角に配置されるため、これによりねじ受け7を高精度に基板10に固定することができる。
【0033】
図5は、基板10に貫通孔を設け、ねじ受け7の下端面にねじ孔を設けたものである。ねじ20を基板10の下面側からねじ受け7のねじ孔に締結することにより精度良く、ねじ受け7を基板10に固定することができる。なお、ねじのかわりにリベットやピンでもよい。ピンとする場合、このピンは基板10に圧入するのが好適である。その他、ピンを樹脂製とする場合には、熱かしめを行うことも好適である。なお、ピンは複数箇所に設けることが位置決め精度確保の点で好適である。
【0034】
図6は、樹脂製又はアルミ製のねじ受け7の下端面から下方へ支持突起30を突設したものである。この支持突起30は、基板10の貫通孔を通じて下方へ突出する。支持突起30の先端部をつぶしたり、はんだ付けしたり、接着することにより、支持突起30は基板10に良好に固定される。
【0035】
図7は、ねじ受け7の下部70を円筒状に形成したものである。これにより、ねじ受け7の剛性を向上することができる。この完全円筒状のねじ受け7の下部70の周面にネジ面を設けて、回路基板側に固定されたねじ部材と螺合してもよい。
【0036】
図8は、図7のねじ受け7の上部72も円筒状に形成したものである。これにより、ねじ受け7の剛性を更に向上することができる。
【0037】
図9は、図7のねじ受け7の下部70の内周面を、ドライブギヤ3やドリブンギヤ4と干渉しないように異形としたものである。
【0038】
図10は、内部に部分円筒状の金属板部材75をインサート成形した樹脂成形品により製造したねじ受け7を示す。これにより、ねじ受け7の剛性を向上することができる。
【0039】
図11は、図7に示すねじ受け7において、インサート成型される金属板部材75の下部を円筒形状としたものである。これにより、ねじ受け7の剛性を向上することができる。金属板部材75は、軟磁性金属材料により構成すれば、磁気シールド効果も期待することができる。
【0040】
図12は、図10と同様に部分円筒状の金属板部材75をインサート成形した樹脂成形品により製造したねじ受け7を示す。ただし、この実施形態では、ねじ受け7から露出する金属板部材の内周面には雌ねじ面が形成される。
【0041】
結局、ねじ受け7の使用材料、製造方法及び基板10への固定方法としては、従来公知の製造技術を種々選択して採用できることがわかる。ねじ受け7を基板10に固定した段階にてねじ受け7と基板10との位置合わせの良否を検査し、その後、検査に合格したサブアセンブリをハウジングに組み付けることができるため、最終製品の不良確率を低減することもできる利点もある。
【0042】
(実施例効果)
上記説明したように、この実施形態では、ドリブンギヤ4及び磁気検出素子8を基板10に固定する構造を有するので、製造作業を簡素とすることができるにもかかわらず高い検出精度を実現することができる。
【0043】
なお、ドライブギヤ3とドリブンギヤ4の歯形状は図面に記載した以外に種々選択採用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態1の回転角検出装置を示す模式軸方向断面図である。
【図2】図1のドリブンギヤとドライブギヤとねじ受けとを示す模式径方向断面図である。
【図3】回転角φ及びθと、X方向磁束密度成分Bx及びY方向磁束密度成分Byとの関係を示す図である。
【図4】ねじ受けを基板に接着する態様を示す模式軸方向断面図である。
【図5】ねじ受けを基板にピン等で固定する態様を示す模式軸方向断面図である。
【図6】ねじ受けを基板に圧入等により固定する態様を示す模式軸方向断面図である。
【図7】下端部分が円筒状のねじ受けを採用した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図8】下端部分及び上端部分が円筒状のねじ受けを採用した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図9】下端部分の内周面が異形のねじ受けを採用した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図10】金属板部材をインサート成形した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図11】リング状の金属板部材をインサート成形した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図12】内周面に雌ねじ面が形成されたリング状の金属板部材をインサート成形した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ハウジング
2 被検出回転軸
3 ドライブギヤ
4 ドリブンギヤ
5 永久磁石
6 ヨーク
7 ねじ受け
8 磁気検出素子
9 信号処理部
10 基板(回路基板)
11 台座部(ハウジング)
12 上蓋部(ハウジング)
13 孔
15 支持突起
30 支持突起
75 金属板部材
80 支持突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転による磁束方向の回転を検出することにより、回転軸の回転角を検出する回転角検出装置の改良に関する。本発明はたとえば、車両用操舵角検出装置に採用されることができる。
【背景技術】
【0002】
磁石(着磁体を含む)の回転角変化を磁気検出素子により検出する回転角検出装置を用いた操舵角検出装置が知られている。この回転角検出装置において、被検出回転軸の360度を超える回転角を検出する装置(以下、360度超回転角検出装置とも言う)が特許文献1に知られている。この特許文献1の360度超回転角検出装置は、回転角を検出すべき一つの被検出回転軸にそれぞれ独立に噛合する二つの磁石軸の回転角をそれぞれ磁気検出部により検出し、これら二つの磁気検出部から互いに位相角が異なる出力を発生させ、信号処理部によりこれら二つの出力の位相角の差から360度超の回転角を演算することを提案している。
【0003】
また、本発明者の発明になる下記の特許文献2は、被検出回転軸に設けられた第1歯車に対して噛合しつつ磁気検出素子の周囲を回転する第2歯車の刃先に雄ねじ部を設けた回転角検出装置を提案している。この雄ねじ部は、第2歯車の外周に接する部分円筒状のねじ受けに設けられた雌ねじ部に螺合し、第2歯車は回動とともにねじ受けにより付勢されて軸方向に進退する。第2歯車の内部に設けられた着磁体は、第2歯車の軸方向へ連続的に変化する磁束密度を形成する。第2歯車の軸心上に設けられた磁気検出素子が検出する磁束密度は、第2歯車の回動角に応じて連続的に変化する。その結果として、磁気検出素子から出力される二つの出力の位相角の差と強度とから360度超の回転角を演算することが可能となっている。更なる説明については、下記の特許文献2を参照されたい。
【特許文献1】特開2005−3625号公報
【特許文献2】特開2007−256250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の回転角検出装置は、360度超の回転角を検出できるものの、歯車機構と磁石と磁気検出部とのセットを2組、被検出回転軸の周囲に配置せねばならず、部品点数及び装置体格が増大し、製造コストも増大するという問題があった。
【0005】
上記特許文献2の回転角検出装置において、第1歯車とねじ受けとは互いに螺合してねじ機構を構成するが、第1歯車(ドライブギヤ)と磁気検出素子との位置合わせのみならず、これら第1歯車及び磁気検出素子に対してねじ受けを高精度に位置合わせするねじ受け取り付けのための熟練作業が必要となった。また、ねじ受けはハウジングに固定されるが、量産されるハウジングの寸法ばらつきによるがたにより、検出精度が低下するという問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、製造工程の複雑化を回避しつつ検出精度に優れた360度超検出可能な回転角検出装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の回転角検出装置は、ハウジングに回動自在に支持される被検出回転軸と、前記被検出回転軸に固定されたドライブギヤに噛合するドリブンギヤと、永久磁石を有するとともに前記ドリブンギヤの内部に固定されて前記ドリブンギヤの軸心位置に磁界を形成する磁界形成部と、前記ハウジングに支持されて前記ドリブンギヤに螺合するねじ受けと、前記ドリブンギヤの軸心上に位置して前記ハウジングに固定される磁気検出部と、前記磁気検出部の出力信号を処理して前記被検出回転軸の回転角を検出する信号処理部とを備え、前記ドリブンギヤは、前記ドライブギヤにより回動されるとともに前記ねじ受けに付勢されて軸方向に進退し、前記信号処理部は、前記磁界形成部の回動による軸直交磁界方向の変化並びに前記ドリブンギヤの軸方向進退による磁界強度の変化に基づいて前記被検出回動軸の360度超の回動角を検出する回転角検出装置に適用される。
【0008】
すなわち、この回転角検出装置は、磁石内蔵の磁界形成部が固定されたドリブンギヤが、被検出回転軸のドライブギヤと噛合し、ねじ受けの雌ねじ面と螺合する。これにより、被検出回転軸が回動すると、ドリブンギヤは回動するとともに軸方向に進退する。磁界形成部は、ドリブンギヤの軸心上に所定の軸直角方向に磁束を形成しており、ドリブンギヤ及び磁界形成部の回動とともに磁気検出部に作用する磁束の方向が変化する。この磁界方向の変化により信号処理部は回動角を検出する。更に、ドリブンギヤの軸方向進退とともに、磁界形成部が磁気検出部に与える磁界強度が連続的に変化する。これにより、被検出回転軸の360度超の回動を判定することができる。
【0009】
上記構成は、既述した特許文献2の装置と本質的に同じである。
【0010】
本発明の回転角検出装置は更に、ハウジングに固定されて信号処理部が実装される回路基板を有し、磁気検出部が回路基板に支持される支持部材に固定され、ねじ受けが回路基板に固定されていることを、その特徴としている。このようにすると、本発明者が認識した特許文献2の回転角検出装置における下記の問題点を良好に解決することができる。
【0011】
すなわち、この発明では、磁気検出部とねじ受けとをハウジングを経由することなく回路基板を通じて予め位置合わせしておくことが可能であるため、回路基板を第1歯車(ドライブギヤ)と位置合わせすることにより、磁気検出部及びねじ受けの両方を第1歯車に対して一挙に位置合わせすることができる。また、磁気検出部と第1歯車の位置合わせにより磁気検出部とねじ受けとの位置がずれることもない。また、磁気検出部及びねじ受けを回路基板に固定する作業を予め行うことが容易であり、組み付け作業の容易化を実現でき、その自動化も容易である。更に、ねじ受けがハウジングを介することなく磁気検出部に対して位置合わせされるため、ハウジングの寸法ばらつきの影響を受けることがない。結局、本発明の回転角検出装置は、熟練作業を減らすことができるにもかかわらず高精度の360度超検出可能な回転角検出が可能となる。
【0012】
好適な態様において、回路基板はドリブンギヤの軸心と直角方向へ延在する。これにより、組み付け作業が容易となり、検出精度を向上することができる。
【0013】
好適な態様において、ねじ受けは、軸直交断面が円弧形状の雌ねじ面を有する部分円筒体からなり、ドリブンギヤの歯の径方向外端面に形成された雄ねじ面は、ねじ受けの径方向内側の表面に形成された雌ねじ面に螺合し、ねじ受けの周方向中心点とドリブンギヤの軸心とドライブギヤの軸心とは、一直線に配置されている。これにより、検出精度を向上することができる。
【0014】
好適な態様において、ねじ受けは、回路基板の支持孔に嵌入される固定用突起を有する。これにより、容易な実装作業により精度良くねじ受けを回路基板に固定することができる。
【0015】
好適な態様において、回路基板に立設される支持突起を有し、支持突起は、ねじ受けに凹設された支持穴に嵌入される。これにより、容易な実装作業により精度良くねじ受けを回路基板に固定することができる。
【0016】
好適な態様において、被検出回動軸は、車両の操舵軸からなる。これにより、高精度で製造が容易な車両用操舵角検出装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の回転角検出装置を用いた操舵角検出装置の好適実施形態を以下に説明する。ただし、本発明は、下記の実施形態に限定解釈されるものではなく、他の技術を組み合わせて本発明の技術思想を実現してもよい。
【0018】
(実施形態1)
(基本構造)
実施形態1の操舵角検出装置を、図1を参照して説明する。図1は装置の軸方向模式断面図、図2は装置の要部平面図である。
【0019】
この操舵角検出装置は、操舵軸(被検出回転軸)の回転角を検出するための装置であって、ハウジング1に回動自在に支持される被検出回転軸2と、被検出回転軸2に固定されたドライブギヤ3と、ドライブギヤ3に噛合するドリブンギヤ4と、ドリブンギヤ4の内周面に固定された永久磁石(磁界形成部)5及びヨーク(磁界形成部)6と、ドリブンギヤ4に螺合するねじ受け7と、ドリブンギヤ4の軸心上に配置される磁気検出素子(磁気検出部)8と、磁気検出素子8の出力信号を処理して被検出回転軸2の回転角を検出する信号処理部9とを有し、信号処理部9は基板(本発明で言う回路基板)10に実装されている。
【0020】
ハウジング1は、台座部11と、台座部11に被せられて台座部11に締結される上蓋部12とからなり、樹脂成形又はアルミダイキャスト又は軟鋼板のプレス成形などにより製造されている。上蓋部12はその全周にわたって側枠をもち、この側枠の先端面が台座部11の上面に密着して内部に密閉空間を形成している。ただし、台座部11及び上蓋部12には、被検出回転軸2が貫通する孔13、14を有している。
【0021】
基板10はプリント基板であって、信号処理部9をなすマイコンなどの回路素子が実装されている。基板10は、台座部11の上面に設けられた支持突起15に締結されている。もちろん、支持突起15は信号処理部9などの実装に支障が無い位置に形成される。Mはドリブンギヤ4の軸心であり、被検出回転軸2の軸心と平行に配置されている。
【0022】
磁気検出素子8は、基板10からドリブンギヤ4の軸心Mに沿いつつ立設された支持突起80の先端に固定されている。すなわち、磁気検出素子8が固定された支持突起(本発明で言う支持部材)80を基板10に実装することにより、台座部11に対する磁気検出素子8の位置が設定される。ハウジング1の台座部11は、図略の車体構造に固定される。被検出回転軸2を支持するこの車体構造に対する被検出回転軸2の位置は、被検出回転軸2を回転自在に支持する図略の軸受け構造などにより設定される。結局、基板10は、台座部11及びそれを支持する車体構造を通じて被検出回転軸2に対して位置決めされる。
【0023】
同じく、ねじ受け7の下端部も基板10に固定され、ねじ受け7は、台座部11から上方へ向けて立設されている。これにより、ねじ受け7は、基板10を通じて磁気検出素子8に対して位置合わせされることになる。ねじ受け7は、円筒の一部を軸方向に切断除去した部分円筒形状をもち、その内周面には雌ねじ面が形成されている。この雌ねじ面は、後述するように、ドリブンギヤ4の各歯の径方向外端面に形成された雄ねじ面に螺合している。
【0024】
永久磁石5は、円筒状に形成されたフェライト磁石であって、ドリブンギヤ4の軸心Mの周囲に回転対称に配置されて円筒状のヨーク6の内周面に固定されている。軟磁性のヨーク6は、ドリブンギヤ4の内周面に嵌入、固定されている。永久磁石5の内周面は、図1に示すように軸方向に変位するにつれて連続的に径小となる円錐面となっている。永久磁石5は図1において、左右方向(すなわちX方向)へ着磁されている。ヨーク6は一対の永久磁石5間を流れる磁束の戻り磁路をなすとともに、磁気シールド機能を奏する。
【0025】
これにより、永久磁石5内の空間には軸心Mと直交する所定方向へ流れる直流磁束が形成される。この直流磁束の方向はドリブンギヤ4の回転とともに回転する。軸心M上に配置された磁気検出素子8は、互いに直交し、かつ、それぞれ軸心Mと直交する磁束密度成分を別々に検出する2つのホール素子を有する。以下、第1のホール素子の検出磁束密度方向をX、第2のホール素子の検出磁束密度方向をYとする。したがって、第1のホール素子は軸心M上に形成される磁束密度BのX方向成分Bxを検出し、第2のホール素子は軸心M上に形成される磁束密度BのY方向成分Byを検出する。更に、軸心M上の磁束密度Bは、永久磁石5内の空隙が下方へ向けて連続的に増大しているため、下方へ移動するにつれて連続的に減少する。基板10上に固定された信号処理部9は、磁気検出素子8から入力されるX方向磁束密度成分Bx及びY方向磁束密度成分Byに比例する信号電圧Vx、Vyを処理して、被検出回転軸2の回転角を算出する。なお、図2において、41はドリブンギヤ4の歯、31はドライブギヤ3の歯である。
【0026】
(動作)
次に、この装置の動作を以下に説明する。
【0027】
被検出回転軸2とともにドライブギヤ3が回転すると、ドライブギヤ3と噛合するドリブンギヤ4が回転し、ドリブンギヤ4の回転により、ドリブンギヤ4と螺合するねじ受け7により付勢されてドリブンギヤ4は永久磁石5及びヨーク6とともに軸方向へ(上下に)進退する。その結果、たとえば永久磁石5が図1中、下方へ変位すると、磁気検出素子8が検出する磁束密度が減少し、信号処理部9に入力する信号電圧Vx、Vyの振幅がそれぞれ減少する。逆に、永久磁石5が図1中、上方へ変位すると、磁気検出素子8が検出する磁束密度が増大し、信号処理部9に入力する信号電圧Vx、Vyの振幅がそれぞれ増大する。したがって、軸心M上に固定された永久磁石5のX方向を基準として回転角度をθとする時、X方向磁束密度成分BxとY方向磁束密度成分Byとは、
Bx = f (θ)・cosθ
By = f (θ)・sinθ
となる。なお、f (θ)は、永久磁石5の軸方向変位により磁気検出素子8の位置における磁束密度Bのベクトル長の変化を示す関数値である。 f (θ ) は磁石やヨークの形状、材質等で決まる値である。ただし、この実施形態では、軸心Mの軸方向一方側(この実施形態では図1における上方)への変位において単調増加し、軸心Mの軸方向一方側への変位において単調減少するように設定されているが、これに限定されるものではない。信号処理部9は、磁束密度Bのベクトル長を示す関数値f (θ)とドリブンギヤ4の回転回数との関係を記憶している。
【0028】
信号処理部9は、磁気検出素子8から入力されるX方向磁束密度成分BxとY方向磁束密度成分Byとを逆正接演算する機能をもつ。この逆正接演算により、
θ = arctan (By/Bx)
が算出され、磁気検出素子8の回転角θにより永久磁石5の360度内の角度情報を得ることができる。更に、信号処理部9は、X方向磁束密度成分BxとY方向磁束密度成分Byとの二乗和の平方根を演算する機能をもつ。この演算により、f (θ ) としてBxの二乗値+Byの二乗値の平方根、すなわち磁束密度Bのベクトル長が算出され、この磁束密度Bのベクトル長を示す関数値 f (θ)と、記憶する上記関係とから、磁石回転軸の回転回数が算出される。
【0029】
結局、この実施形態では、f (θ)の大きさから所定の軸方向基準位置からの何回転目の回転かを演算し、arctan(By/Bx)から現在の永久磁石5の回転角θを演算し、これらから360度以上の回転角θ’を算出する。たとえば現在2回目の回転であり、θが55度であれば、最終回転角θ’は415度が算出されて出力される。被検出回転軸2の回転角φ及びドリブンギヤ4の回転角θと、X方向磁束密度成分Bx及びY方向磁束密度成分Byとの関係を図3に示す。
【0030】
以上説明したこの実施形態の360度超回転角検出方式は、既述した特許文献2のそれと同じである。
【0031】
(ねじ受け7の固定方法)
次に、ねじ受け7を基板10に固定する各種形態について図面を参照して説明する。なお、下記の各図において、断面ハッチングは省略される。
【0032】
図4は、ねじ受け7を基板10の上面に接着により固定した実施形態を示す。基板10上には、基板10の面平行方向(以下、単に面平行方向と言う)への変位を規制する図略のストッパ部材が予め固定されており、このため、ねじ受け7の面平行方向への変位は防止される。基板10の上面は、軸心Mに対して直角に配置されるため、これによりねじ受け7を高精度に基板10に固定することができる。
【0033】
図5は、基板10に貫通孔を設け、ねじ受け7の下端面にねじ孔を設けたものである。ねじ20を基板10の下面側からねじ受け7のねじ孔に締結することにより精度良く、ねじ受け7を基板10に固定することができる。なお、ねじのかわりにリベットやピンでもよい。ピンとする場合、このピンは基板10に圧入するのが好適である。その他、ピンを樹脂製とする場合には、熱かしめを行うことも好適である。なお、ピンは複数箇所に設けることが位置決め精度確保の点で好適である。
【0034】
図6は、樹脂製又はアルミ製のねじ受け7の下端面から下方へ支持突起30を突設したものである。この支持突起30は、基板10の貫通孔を通じて下方へ突出する。支持突起30の先端部をつぶしたり、はんだ付けしたり、接着することにより、支持突起30は基板10に良好に固定される。
【0035】
図7は、ねじ受け7の下部70を円筒状に形成したものである。これにより、ねじ受け7の剛性を向上することができる。この完全円筒状のねじ受け7の下部70の周面にネジ面を設けて、回路基板側に固定されたねじ部材と螺合してもよい。
【0036】
図8は、図7のねじ受け7の上部72も円筒状に形成したものである。これにより、ねじ受け7の剛性を更に向上することができる。
【0037】
図9は、図7のねじ受け7の下部70の内周面を、ドライブギヤ3やドリブンギヤ4と干渉しないように異形としたものである。
【0038】
図10は、内部に部分円筒状の金属板部材75をインサート成形した樹脂成形品により製造したねじ受け7を示す。これにより、ねじ受け7の剛性を向上することができる。
【0039】
図11は、図7に示すねじ受け7において、インサート成型される金属板部材75の下部を円筒形状としたものである。これにより、ねじ受け7の剛性を向上することができる。金属板部材75は、軟磁性金属材料により構成すれば、磁気シールド効果も期待することができる。
【0040】
図12は、図10と同様に部分円筒状の金属板部材75をインサート成形した樹脂成形品により製造したねじ受け7を示す。ただし、この実施形態では、ねじ受け7から露出する金属板部材の内周面には雌ねじ面が形成される。
【0041】
結局、ねじ受け7の使用材料、製造方法及び基板10への固定方法としては、従来公知の製造技術を種々選択して採用できることがわかる。ねじ受け7を基板10に固定した段階にてねじ受け7と基板10との位置合わせの良否を検査し、その後、検査に合格したサブアセンブリをハウジングに組み付けることができるため、最終製品の不良確率を低減することもできる利点もある。
【0042】
(実施例効果)
上記説明したように、この実施形態では、ドリブンギヤ4及び磁気検出素子8を基板10に固定する構造を有するので、製造作業を簡素とすることができるにもかかわらず高い検出精度を実現することができる。
【0043】
なお、ドライブギヤ3とドリブンギヤ4の歯形状は図面に記載した以外に種々選択採用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態1の回転角検出装置を示す模式軸方向断面図である。
【図2】図1のドリブンギヤとドライブギヤとねじ受けとを示す模式径方向断面図である。
【図3】回転角φ及びθと、X方向磁束密度成分Bx及びY方向磁束密度成分Byとの関係を示す図である。
【図4】ねじ受けを基板に接着する態様を示す模式軸方向断面図である。
【図5】ねじ受けを基板にピン等で固定する態様を示す模式軸方向断面図である。
【図6】ねじ受けを基板に圧入等により固定する態様を示す模式軸方向断面図である。
【図7】下端部分が円筒状のねじ受けを採用した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図8】下端部分及び上端部分が円筒状のねじ受けを採用した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図9】下端部分の内周面が異形のねじ受けを採用した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図10】金属板部材をインサート成形した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図11】リング状の金属板部材をインサート成形した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【図12】内周面に雌ねじ面が形成されたリング状の金属板部材をインサート成形した態様を示す模式軸方向断面図である。(A)はその模式横断面図、(B)は模式縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ハウジング
2 被検出回転軸
3 ドライブギヤ
4 ドリブンギヤ
5 永久磁石
6 ヨーク
7 ねじ受け
8 磁気検出素子
9 信号処理部
10 基板(回路基板)
11 台座部(ハウジング)
12 上蓋部(ハウジング)
13 孔
15 支持突起
30 支持突起
75 金属板部材
80 支持突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに回動自在に支持される被検出回転軸と、前記被検出回転軸に固定されたドライブギヤに噛合するドリブンギヤと、永久磁石を有するとともに前記ドリブンギヤの内部に固定されて前記ドリブンギヤの軸心位置に磁界を形成する磁界形成部と、前記ハウジングに支持されて前記ドリブンギヤに螺合するねじ受けと、前記ドリブンギヤの軸心上に位置して前記ハウジングに固定される磁気検出部と、前記磁気検出部の出力信号を処理して前記被検出回転軸の回転角を検出する信号処理部とを備え、
前記ドリブンギヤは、前記ドライブギヤにより回動されるとともに前記ねじ受けに付勢されて軸方向に進退し、
前記信号処理部は、前記磁界形成部の回動による軸直交磁界方向の変化並びに前記ドリブンギヤの軸方向進退による磁界強度の変化に基づいて前記被検出回動軸の360度超の回動角を検出する回転角検出装置において、
前記ハウジングに固定されて前記信号処理部が実装される回路基板を有し、
前記磁気検出部は、前記回路基板に支持される支持部材に固定され、
前記ねじ受けは、前記回路基板に固定されていることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転角検出装置において、
前記回路基板は、前記ドリブンギヤの軸心と直角方向へ延在する回転角検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の回転角検出装置において、
前記ねじ受けは、軸直交断面が円弧形状の雌ねじ面を有する部分円筒体からなり、
前記ドリブンギヤの歯の径方向外端面に形成された雄ねじ面は、前記ねじ受けの径方向内側の表面に形成された雌ねじ面に螺合し、
前記ねじ受けの周方向中心点と前記ドリブンギヤの軸心と前記ドライブギヤの軸心とは、一直線に配置されている回転角検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の回転角検出装置において、
前記ねじ受けは、前記回路基板の支持孔に嵌入される固定用突起を有する回転角検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の回転角検出装置において、
前記回路基板に立設される支持突起を有し、
前記支持突起は、前記ねじ受けに凹設された支持穴に嵌入される回転角検出装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の回転角検出装置において、
前記被検出回動軸は、車両の操舵軸からなる回転角検出装置。
【請求項1】
ハウジングに回動自在に支持される被検出回転軸と、前記被検出回転軸に固定されたドライブギヤに噛合するドリブンギヤと、永久磁石を有するとともに前記ドリブンギヤの内部に固定されて前記ドリブンギヤの軸心位置に磁界を形成する磁界形成部と、前記ハウジングに支持されて前記ドリブンギヤに螺合するねじ受けと、前記ドリブンギヤの軸心上に位置して前記ハウジングに固定される磁気検出部と、前記磁気検出部の出力信号を処理して前記被検出回転軸の回転角を検出する信号処理部とを備え、
前記ドリブンギヤは、前記ドライブギヤにより回動されるとともに前記ねじ受けに付勢されて軸方向に進退し、
前記信号処理部は、前記磁界形成部の回動による軸直交磁界方向の変化並びに前記ドリブンギヤの軸方向進退による磁界強度の変化に基づいて前記被検出回動軸の360度超の回動角を検出する回転角検出装置において、
前記ハウジングに固定されて前記信号処理部が実装される回路基板を有し、
前記磁気検出部は、前記回路基板に支持される支持部材に固定され、
前記ねじ受けは、前記回路基板に固定されていることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転角検出装置において、
前記回路基板は、前記ドリブンギヤの軸心と直角方向へ延在する回転角検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の回転角検出装置において、
前記ねじ受けは、軸直交断面が円弧形状の雌ねじ面を有する部分円筒体からなり、
前記ドリブンギヤの歯の径方向外端面に形成された雄ねじ面は、前記ねじ受けの径方向内側の表面に形成された雌ねじ面に螺合し、
前記ねじ受けの周方向中心点と前記ドリブンギヤの軸心と前記ドライブギヤの軸心とは、一直線に配置されている回転角検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の回転角検出装置において、
前記ねじ受けは、前記回路基板の支持孔に嵌入される固定用突起を有する回転角検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の回転角検出装置において、
前記回路基板に立設される支持突起を有し、
前記支持突起は、前記ねじ受けに凹設された支持穴に嵌入される回転角検出装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の回転角検出装置において、
前記被検出回動軸は、車両の操舵軸からなる回転角検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−8353(P2010−8353A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170757(P2008−170757)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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