説明

回転運動伝達装置及び自動車用ステアリング装置

【課題】回転運動が所定の角度範囲に規制される装置に用いられる回転運動伝達装置において、ケーブルに作用する負荷を低減することができる技術を提供する。
【解決手段】回転運動伝達装置は、ハンドル2の軸に連結されているシャフト22aと、ハンドル側ドラム24aと、第1ケーブル12aと、第2ケーブル12bと、操舵側ドラム24bを備えるとともに、シャフト22aの回転角度範囲を規制する回転角度規制装置62が設けられている。そのため、操舵機構8の操舵角範囲に応じてシャフト22aの回転角度範囲を規制することができる。これによって、シャフト22aを操舵機構8の操舵角範囲を超えて回転させようとしても、シャフト22aの回転が回転角度規制装置62によって規制され、第1ケーブル12aと第2ケーブル12bに過大な力が作用することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本のケーブルを利用して入力側ドラムの回転を出力側ドラムに伝達する回転運動伝達装置と、その回転運動伝達装置を備える自動車用ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、自動車用ステアリング装置に用いられる回転運動伝達装置が記載されている。この回転運動伝達装置は、ハンドルの回転軸に連結されたハンドル側シャフトと、ハンドル側シャフトの回転によって回転するハンドル側ドラムと、前輪の操舵機構に連結された操舵側ドラムと、2本のケーブルを備えている。2本のケーブルは、ハンドル側ドラムと操舵側ドラムの間に配置される2本の筒状のアウタケーシング内を往復動可能に挿通されている。2本のケーブルは、ハンドル側ドラム及び操舵側ドラムの外周に互いに異なる巻き方向に巻き付けられており、ハンドル側のドラムの正逆方向の回転に伴って交互に引張力が作用するように巻き取り及び引き出しが行われるようにされている。この装置では、ハンドルを一方に回転させると、ハンドル側シャフトを介してハンドル側ドラムが一方に回転する。これによって、2本のケーブルの一方がハンドル側ドラムに巻き取られると共に他方がハンドル側ドラムから引き出される。同時に、操舵側ドラムでは、2本のケーブルの一方が引き出されると共に他方が巻き取られる。これにより、操舵側ドラムが回転し、ハンドルの回転が操舵機構に伝達され、前輪の向きが変化する。また、ハンドルを他方に回転させると、同様にしてハンドルの回転が操舵機構に伝達され、前輪の向きが変化する。この装置によれば、ハンドルの回転が操舵機構に伝達されることで、前輪の向きを変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−53148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した回転運動伝達装置により回転運動が伝達される装置の中には、その回転運動が所定の角度範囲に規制されるものがある。このような装置に回転運動伝達装置を用いた場合、ケーブルに過大な負荷が作用することがある。
例えば、上述した自動車用ステアリング装置では、前輪の操舵角が予め所定の角度範囲に規制されている。その一方で、従来の回転運動伝達装置では、ハンドル側シャフトの回転が規制されていない。このため、ハンドルを回転させていき前輪の操舵角が所定の角度範囲を超えると、まず、前輪の動きが規制され、それに伴って操舵側ドラムの回転が規制され、それによって出力側ドラム及びハンドル側シャフトの回転が規制される。この際、ハンドル側シャフトの回転は規制されていないため、ドライバーがハンドルを前輪の操舵角を越えて回転させようとすると、ケーブルに大きな負荷が作用し、ケーブルが損傷する虞がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、回転運動が所定の角度範囲に規制される装置に回転運動伝達装置を用いられる場合において、ケーブルに作用する負荷を低減することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の回転運動伝達装置は、入力側シャフトと、入力側ドラムと、第1ケーブルと、第2ケーブルと、出力側ドラムを備えている。入力側シャフトには回転力が入力され、入力側ドラムは入力側シャフトの回転によって回転する。第1ケーブルは、その一端が入力側ドラムの外周に第1の巻き方向に巻き付けられ、その他端が出力側ドラムの外周に第2の巻き方向に巻き付けられる。第2ケーブルは、その一端が入力側ドラムの外周に第1の巻き方向と反対の巻き方向に巻き付けられ、その他端が出力側ドラムの外周に第2の巻き方向と反対の巻き方向に巻き付けられる。そして、入力側シャフトと入力側ドラムの少なくとも一方に、入力側シャフトの回転を規制する回転角度規制機構が設けられている。
【0006】
この回転運動伝達装置は、入力側シャフトと入力側ドラムの少なくとも一方に、入力側シャフトの回転を規制する回転角度規制機構が設けられている。そのため、出力側の装置の回転角度範囲に応じて入力側シャフトの回転角度範囲を規制することができる。これによって、入力側シャフトを出力側の装置の回転角度範囲を超えて回転させようとしても、入力側シャフトの回転が回転角度規制機構によって規制され、ケーブルに過大な力が作用することが防止される。
【0007】
上記の回転角度規制機構は、入力側シャフトに固定されている第1歯車と、第1歯車に噛み合う第2歯車と、第2歯車の回転角度範囲を規制する規制手段を備えることができる。この場合、第2歯車は、第1歯車のギア数よりも多くのギア数を備えることができる。
この回転運動伝達装置では、規制手段によって第2歯車の回転が規制されると、第2歯車に噛み合う第1歯車の回転が規制され、これによって、第1歯車に固定されている入力側シャフトの回転が規制される。この回転運動伝達装置によれば、入力側シャフトの回転角度範囲が360°を超える場合でも、第1歯車のギア数と第2歯車のギア数を調整することで、第2歯車の回転角度範囲を360°以下とすることができる。このため、簡易な規制手段によって入力側シャフトを所望の角度範囲に規制することができる。
【0008】
本発明の自動車用ステアリング装置は、上記の回転運動伝達装置のいずれかを備える。
上記の回転運動伝達装置を自動車用ステアリング装置に用いることで、ケーブルに過大な負荷が作用することが防止された自動車用ステアリング装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブルに過大な負荷が作用することが防止することができる回転運動伝達装置と、それを用いた自動車用ステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の回転運動伝達装置を備えた自動車用ステアリング装置を模式的に示す斜視図。
【図2】回転運動伝達装置の入力側ドラムの構成を模式的に示す斜視図。
【図3】一方のインナケーブルの第一プーリーへの巻き付け状態を模式的に示す図。
【図4】他方のインナケーブルの第二プーリーへの巻き付け状態を模式的に示す図。
【図5】回転角度規制機構を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を整理する。
(形態1)第2歯車にはピンが設けられている。第2歯車を収容するハウジングには2つのストッパが設けられている。ピンが各ストッパと当接することによって第2歯車の回転角度範囲が規制される。
(形態2)第2歯車のギア数は、第1歯車のギア数の約3倍である。すなわち、第1歯車の回転角度範囲は、第2歯車の回転角度範囲の約3倍である。
【実施例1】
【0012】
本発明を具現化した実施例について図面を参照しながら説明する。本実施例の回転運動伝達装置は、自動車用ステアリング装置に用いられている。図1は、本実施例の自動車用ステアリング装置の概要を示す一部切欠斜視図である。
本実施例の自動車用ステアリング装置は、図1に示すように、ハンドル2の前方に設けられたハンドル側第1ハウジング4aと、ハンドル側第1ハウジング4aとハンドル2の間に設けられたハンドル側第2ハウジング4cと、前輪6の操舵機構8側に設けられた操舵側ハウジング4bとを備えている。ハウジング4a、4bの間には、2本のコントロールケーブル12a、12bが配索されている。ハンドル側第1ハウジング4aと操舵側ハウジング4bは同一構造を有している。
【0013】
コントロールケーブル12a、12bは、筒状のアウタケーシング14a、14bと、アウタケーシング14a、14b内に往復動可能に挿通されたインナケーブル16a、16bからなる。図1に示すように、アウタケーシング14a、14bの端部は、筒形固定具18でハウジング4a、4bに固定されている。アウタケーシング14a、14bがハウジング4a、4bに固定された状態では、アウタケーシング14a、14bの内部とハウジング4a、4bの貫通孔20とが連通している。
【0014】
ハウジング4a、4bに固定されたアウタケーシング14a、14bの端部からはインナケーブル16a、16bが引き出されている。インナケーブル16a、16bは、貫通孔20を通ってハウジング4a、4b内へと導かれている。
ハンドル側第1ハウジング4aの内部に、ハンドル側ドラム24aが収容されている。一方のインナケーブル16aの一端は、ハウジング4a内へと導かれ、ハンドル側ドラム24aの外周に第1の巻き方向に巻き付けられる。また、他方のインナケーブル16bの一端は、ハウジング4a内へと導かれ、ハンドル側ドラム24aの外周に第1の巻き方向と反対の巻き方向に巻き付けられる。
また、操舵側ハウジング4bの内部に、操舵側ドラム24bが収容されている。一方のインナケーブル16aの他端は、ハウジング4b内へと導かれ、操舵側ドラム24bの外周に第2の巻き方向に巻き付けられる。また、他方のインナケーブル16bの他端は、ハウジング4b内へと導かれ、操舵側ドラム24bの外周に第2の巻き方向と反対の巻き方向に巻き付けられる。
【0015】
シャフト22aは、ハンドル側ドラム24aを貫通してハンドル2の軸に連結されている。ハンドル側第1ハウジング4aでは、ハンドル2をその軸回りに回転させると、シャフト22aが回転し、これに伴ってハンドル側ドラム24aが回転する。この回転が、インナケーブル16a、16bを介して操舵側ドラム24bに伝達され、操舵側ドラム24bが回転する。なお、ハンドル側ドラム24a内には、シャフト22aの回転角度を規制する回転角度規制装置62が設けられている。回転角度規制装置62については、後で詳述する。
シャフト22bは、操舵側ドラム24bを貫通して前輪6の操舵機構8に設けられるピニオン10に噛み合っている。操舵側ハウジング4bでは、ハンドル2の回転に伴って操舵側ドラム24bが回転すると、ピニオン10がスライドし、これに伴って前輪6の向きが変わる。
【0016】
次に、ハンドル側のドラム装置と操舵側のドラム装置について図2を参照して説明する。ハンドル側のドラム装置と操舵側のドラム装置は同一構造を有するため、ここでは、ハンドル側のドラム装置について説明する。ハンドル側のドラム装置は、ハンドル側第1ハウジング4a(以下、ハウジング4という)と、ハウジング4内に収容されたハンドル側ドラム24a(以下、ドラム24という)とから構成されている。図2に示すように、ハウジング4は、第1ハウジング半体26aと第2ハウジング半体26bとを組合せて構成される。図2に示すように、第1ハウジング半体26aと第2ハウジング半体26bとは同一構造を有している。同一構造の両ハウジング半体26a、26bは、配置向きを逆にして互いに組合せて1つのハウジング4が形成される。
【0017】
ハウジング半体26は、図2に示すように、一面が開口した容器状に形成されている。ハウジング半体26には、シャフト22を回転可能に挿通できる軸孔28が形成されている。また、ハウジング半体26の内側であって、前記軸孔28の周囲には、軸受30を嵌入可能な軸受嵌入部32が設けられている。また、ハウジング半体26の外周面には貫通孔20が設けられている。貫通孔20にはアウタケーシング14が固定され、貫通孔20を通ってインナケーブル16がハウジング4内に引き込み可能とされている。また、ハウジング半体26の開口縁部には、周方向3箇所に舌片33が設けられている。各舌片33には他方のハウジング半体26と連結固定するためのボルト孔34が設けられている。また、3つの舌片33のうち2つの舌片33には、他方のハウジング半体26と組合せる際に位置決めとして用いられる凸部36と凹部38の一方が設けられている。一方のハウジング半体26の凸部36が他方のハウジング半体26の凹部38に嵌入して、両方のハウジング半体26が位置決めされる。同様に、一方のハウジング半体26の凹部38に他方のハウジング半体26の凸部36が嵌入して、両方のハウジング半体26が位置決めされる。
【0018】
第1ハウジング半体26aと第2ハウジング半体26bとを組合せて1つのハウジング4を形成する際には次のようにする。まず、第1ハウジング半体26aと第2ハウジング半体26bとを互いに開口部を対向させて配置する。次に、両ハウジング半体26a、26bの開口部同士を合わせ、位置決め用の凸部36を凹部38に嵌入させる。最後に、ボルト孔34にボルトを挿通させて、開口部を密閉してハウジング4が形成される。
【0019】
ハウジング4内にはドラム24が収容される。図2に示すように、ドラム24は、同軸の2枚の第1プーリー40aと第2プーリー40bを組合せて構成されている。第1プーリー40aと第2プーリー40bは同一構造である。同一構造の両プーリー40a、40bは、配置向きを逆にして互いに組合せて1つのドラム24を形成する。
【0020】
プーリー40は、図2に示すように、略円板状に形成されている。プーリー40の中心には突出部42aが設けられている。突出部42aには軸孔42が設けられ、軸孔42にはシャフト22が挿通可能となっている。プーリー40の裏面側(内面側)44には、インナケーブル16の端部を係止固定する係止溝46が設けられている。また、裏面側44には、他方のプーリー40を連結固定するための凸部48及び凹部50が設けられている。プーリー40の外周面には、インナケーブル16を巻き付けるための螺旋溝52が設けられている。また、プーリー40の表面側(外面側)54には、軸受30の端部を収容するための軸受収容溝56が設けられている。
第1プーリー40aと第2プーリー40bを、互いに裏面側44を対向させて配置向きを逆にして揃え、凸部36を凹部38に互いに嵌入させて両プーリー40a、40bを組合せて、ドラム24が形成される。
【0021】
第1プーリー40aには一方のインナケーブル16aが、第2プーリー40bには他方のインナケーブル16bが夫々巻き付けられる。すなわち、インナケーブル16aは、図3に示すように、第1プーリー40aの外周面の螺旋溝52に沿って螺旋状に巻き付けられ、裏面側44の係止溝46に端部を係止される。一方、インナケーブル16bは、図4に示すように、第2プーリー40bの外周面の螺旋溝52に沿って螺旋状に巻き付けられ、裏面側44の係止溝46に端部を係止される。第1プーリー40aと第2プーリー40bを組合せると、両インナケーブル16a、16bの巻き方向は逆向きとなる。2本のインナケーブル16a、16bは、両プーリー40a、40bを組合せてなるドラム24の回転に伴って交互に巻き取り及び引き出しが行われる。
【0022】
ハウジング半体26内に設けられた軸受嵌入部32には図2に示すように、軸受30を嵌入させることができる。軸受30を軸受嵌入部32に嵌入すると、軸受30の外筒30bが軸受嵌入部32に固定される。また、軸受30の軸受嵌入部32から突出した部分は、プーリー40の表面側54に設けられた軸受収容溝56に収容される。軸受30が軸受収容溝56に収容された状態では、軸受30の内筒30aがプーリー40の突出部42aに嵌合して固定され、軸受30の外筒30bとプーリー40との間には隙間が形成される。これによって、ハウジング4に対してプーリー40が回転可能に支持される。
【0023】
シャフト22は、各プーリー40の軸孔42、各ハウジング半体26の軸孔28の夫々を貫通している。シャフト22は、各プーリー40(ドラム24)の回転軸と同軸に取付けられ、ドラム24と一体となって回転する。本実施例では、シャフト22は、図2に示すように、2つの平面が対向する断面矩形状に形成されている。シャフト22の断面形状は、プーリー40に設けられた軸孔42の形状と対応している。従って、シャフト22を軸孔42に挿通すると、シャフト22はプーリー40に対して相対回転不能となり、両者は一体となって回転する。プーリー40はハウジング4に対して回転可能に支持されているため、ハウジング4内でドラム24がシャフト22の回転に伴って回転可能となる。
【0024】
本実施例の自動車用ステアリング装置では、ハンドル側第2ハウジング4cの内部にシャフト22aの回転角度を規制する回転角度規制装置62が設けられている。図5に示すように、回転角度規制装置62は、シャフト22aに固定される第1歯車72と、第1歯車72に噛合する第2歯車70と、第1歯車72と第2歯車70を収容するハウジング64によって構成されている。ハウジング64は、一方の端面が開放されたハウジング本体64aと、そのハウジング本体64aの一端面を閉じる蓋64bを備えている。ハウジング本体64aには、シャフト22aが貫通する孔と、第2歯車70を回転可能に支持するための固定軸69が形成されている。固定軸69は、ハウジング本体64aの内面から蓋64b側に突出している。蓋64bには、シャフト22aを回転可能に挿通できるとともに、軸受74を嵌入可能な円形の軸孔66が設けられている。また、蓋64bのハウジング本体64a側の面には、第2歯車70の回転角度を規制する一組のストッパ82が形成されている。ストッパ82は、ハウジング本体64a側に突出している。ハウジング本体64aと蓋64bのそれぞれには、その角部4箇所にボルト孔68が設けられている。
【0025】
ハウジング64(64a,64b)内には、第2歯車70と第1歯車72が収容される。第1歯車72の外周面にはギアが形成されている。第1歯車72の蓋64b側の端面には軸受74が取付けられている。軸受74の外周面は円筒形状をしており、蓋64bの軸孔66に対応する形状に形成されている。軸受74をハウジング本体64aの軸孔66に嵌入すると、第1歯車72がハウジング本体64aに対して回転可能に支持される。
第1歯車72と軸受74には軸孔72aが設けられ、軸孔72aにはシャフト22aが挿通可能となっている。軸孔72aの形状は、シャフト22aの断面形状と対応している。従って、シャフト22aを軸孔72aに挿通すると、第1歯車72と軸受74とシャフト22aは一体となって回転する。なお、シャフト22aは、第1歯車72及びハウジング64を貫通している。シャフト22aの一端はハンドル側ドラム24aに連結され、シャフト22aの他端はハンドル2の軸に連結される。このため、ハンドル2を回転すると、シャフト22aが回転すると共に第1歯車72も回転する。
【0026】
第2歯車70は、軸受76を介してハウジング本体64aの固定軸69に回転可能に取付けられている。第2歯車70の外周面にはギアが形成されている。第2歯車70のギアと第1歯車72のギアは噛合している。このため、第1歯車72が回転すると、第2歯車70が回転する。また、第2歯車70の外径は第1歯車72の外径より大径とされ、第2歯車70のギア数は第1歯車72のギア数よりも多くされている。
【0027】
また、第2歯車70の蓋64bに対向する面にはピン80が突設されている。第2歯車70がハウジング64に収容された状態では、第2歯車70のピン80が蓋64bに設けられたストッパ82と当接する。すなわち、シャフト22の回転に伴って第1歯車72及び第2歯車70が回転すると、第2歯車70のピン80が図5に二点鎖線で示す軌道に沿って移動してストッパ82に当接する。ピン80がストッパ82に当接すると、第2歯車70の回転が規制され、それによって第1歯車72及びシャフト22a(即ち、ハンドル2)の回転が規制される。なお、第2歯車70のギア数が第1歯車72のギア数よりも多くされている。このため、第2歯車70の回転角度範囲を360°以下としても、第1歯車72の回転角度範囲を360°以上とすることができる。
【0028】
本実施例のステアリング装置の動作を以下に説明する。ハンドル2を一方向に回転すると、シャフト22aが一方向へ回転し、第1歯車72、第2歯車70及びハンドル側ドラム24aが回転する。ハンドル側ドラム24aが回転すると、ハンドル側ドラム24aと操舵側ドラム24bに巻き付けられた2本のインナケーブル16a、16bのうち一方がハンドル側ドラム24aに巻き取られると共に操舵側ドラム24bから送り出され、他方がハンドル側ドラム24から送り出されると共に操舵側ドラム24bに巻き取られる。具体的には、インナケーブル16a、16bのうち一方がハンドル側ドラム24aに巻き取られ、その巻き取られるインナケーブルに引張力が作用する。インナケーブルがハンドル側ドラム24aに巻き取られると、それに伴って操舵側ドラム24bが回転する。このため、操舵側ドラム24bの回転に伴って操舵側ドラム24bに他方のインナケーブルが巻き取られ、その巻き取られるインナケーブルに引張力が作用する。
操舵側ドラム24bが回転すると、操舵側ドラム24bに固定されたシャフト22bが回転し、シャフト22と噛合するピニオン10がスライドする。これによって、操舵機構8では、ピニオン10のスライド移動によってロッド60が一方向へスライドし、それに伴って前輪6が操舵角を変更する。
【0029】
ここで、ハンドル2を一方向に回転し続けると、シャフト22aの回転に伴って第1歯車72及び第2歯車70が回転し、第2歯車70のピン80が一方のストッパ82に当接する。ピン80がストッパ82に当接すると、第2歯車70のさらなる回転が規制され、それによって、第1歯車72及びシャフト22a(即ち、ハンドル2)の回転が規制される。この際、ドライバーがハンドル2を回転させようとしても、第1歯車72及びシャフト22aの回転が規制されるため、ハンドル2に入力される回転力がハンドル側ドラム24aには伝達されない。このため、インナケーブル16a、16bにはさらなる引張力が作用しない。
【0030】
ハンドル2を他方向に回転すると、同様の作用によって操舵側ドラム24bとシャフト22は他方向へ回転する。それに伴って、上記と同様にして前輪6が操舵角を変える。この場合も、ハンドル2を他方向に回転し続けると、シャフト22aの回転に伴って第1歯車72及び第2歯車70が回転し、第2歯車70のピン80が他方のストッパ82に当接する。これによって、シャフト22aのさらなる回転が規制される。この場合も、ストッパ82によってシャフト22a自体の回転を規制するため、インナケーブル16a、16bにはさらなる引張力が作用しない。
【0031】
上述した説明から明らかなように、本実施例のステアリング装置は、ハンドル2とハンドル側ドラム24aの間に回転角度規制装置62が設けられており、ハンドル2が所定角度まで回転した場合に、ハンドル2に直結されているシャフト22aの回転が回転角度規制装置62によって規制される。これによって、ハンドル側ドラム24aと操舵側ドラム24bの回転が規制され、前輪6の回転範囲を規定することができる。
また、シャフト22aの回転をシャフト22aに取付けた回転角度規制装置62で規制するため、ドライバーがハンドルを操舵角度範囲を超えて回転させようとしても、その回転力がインナケーブルに作用しない。これによって、インナケーブルに過大な引張力が作用することを防止することができる。
【0032】
また、回転角度規制装置62では、シャフト22aに固定された第1歯車72と噛合する第2歯車70の回転を規制することで、シャフト22aの回転を規制する。このため、第1歯車70と第2歯車72のギア数の比を変えることで、シャフト22aに必要とされている回転範囲を確保するとともに、その必要範囲を超えてシャフト22aが回転することを禁止することができる。
【0033】
なお、上述した実施例では、回転角度規制装置62に2つの歯車を用いたが、回転角度規制装置は2以上の歯車により構成してもよい。すなわち、入力シャフトに要求される回転角度範囲に応じて、歯車機構に備えられる歯車の数を任意に調整することができる。
また、上述した実施例では、回転角度規制装置に歯車機構を用いたが、歯車機構以外にも種々の機構を用いることができる。例えば、ラックアンドピニオン機構を用いて、入力側シャフトの回転を規制することができる。このような機構を用いても、入力シャフトの回転角度範囲を任意に調整することができる。すなわち、回転角度規制装置は、入力シャフトの回転に伴って運動する部材(上述した実施例では、第1歯車72,第2歯車70)と、この部材の運動を規制するストッパによって構成することができる。
【0034】
また、本発明の回転運動伝達装置が用いられるのは、上述した実施例の自動車用ステアリング装置に限られない。本発明の回転運動伝達装置は、パワーウィンドゥ装置や電動スライドドア装置に用いることもできる。
【0035】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0036】
2 ハンドル
4 ハウジング
6 前輪
8 操舵機構
10 ピニオン
12 コントロールケーブル
14 アウタケーシング
16 インナケーブル
20 貫通孔
22 シャフト
24 ドラム
26 ハウジング半体
30 軸受
40 プーリー
52 螺旋溝
60 ロッド
62 回転角度規制装置
64 ハウジング
69 固定軸
70 第2歯車
72 第1歯車
74 軸受
76 軸受
80 ピン
82 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力が入力される入力側シャフトと、
その入力側シャフトの回転によって回転する入力側ドラムと、
その一端が入力側ドラムの外周に第1の巻き方向に巻き付けられる第1ケーブルと、
その一端が入力側ドラムの外周に第1の巻き方向と反対の巻き方向に巻き付けられる第2ケーブルと、
第1ケーブルの他端がその外周に第2の巻き方向に巻き付けられるとともに、第2ケーブルの他端がその外周に第2の巻き方向と反対の巻き方向に巻き付けられる出力側ドラムと、を備えており、
入力側シャフトと入力側ドラムの少なくとも一方に、入力側シャフトの回転角度範囲を規制する回転角度規制機構が設けられている回転運動伝達装置。
【請求項2】
回転角度規制機構は、入力側シャフトに固定されている第1歯車と、第1歯車に噛み合う第2歯車と、第2歯車の回転角度範囲を規制する規制手段をさらに備えており、
第2歯車のギア数が第1歯車のギア数よりも多くされていることを特徴とする請求項1に記載の回転運動伝達装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転運動伝達装置を備えることを特徴とする自動車用ステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223358(P2010−223358A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72197(P2009−72197)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【Fターム(参考)】