説明

回転部材用支持軸

【課題】耐久性を確保しつつ、材料コストを低減できると共に、加工時間を短縮できる、支持軸4aを実現する。
【解決手段】支持軸4aを、Cを0.50〜0.58質量%、Siを0.1〜0.4質量%、Mnを0.5〜1.0質量%、Crを0.1〜0.4質量%含有し、酸素量が15ppm以下の合金剛製とする。又、高周波焼き入れ処理により、複列の内輪軌道11よりも軸方向両側に広い範囲で、且つ、軸方向両端部を除く部分に、硬化層22を全周に亙り形成する。又、この硬化層22を、支持軸4aの外周面から軸心部に至る範囲に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、一般産業機械、工作機械等に組み込まれる回転部材を、ラジアルニードル軸受を介して回転自在に支持する為の回転部材用支持軸の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速機を構成する遊星歯車装置が従来から、例えば特許文献1、2等、多くの刊行物に記載されて、広く知られている。この従来から知られた遊星歯車装置は、例えば図5〜6に示す様に、外周面に歯1aを形成した太陽歯車1と、この太陽歯車1と同心に配置され、内周面に歯2aを形成したリング歯車2との間に、複数個(一般的には3〜4個)の遊星歯車3、3を、円周方向に関して等間隔に配置している。そして、これら複数個の遊星歯車3、3の外周面に形成した歯3aを、前記両歯1a、2aに噛合させている。
【0003】
前記複数個の遊星歯車3、3は、それぞれ支持軸4、4の周囲に、それぞれ複数本のニードル5、5を介して、回転自在に支持されている。これら各支持軸4の軸方向両端部のうち、一方の端部(図6の右端部)は、前記太陽歯車1を中心として回転自在なキャリア6に対し、他方の端部(図6の左端部)は、円輪状に形成された連結板7に対し、それぞれ支持固定している。この為に、前記キャリア6及び前記連結板7のうちの互いに整合する部分に1対の通孔8a、8bを形成している。そして、前記支持軸4の軸方向両端部を、これら各通孔8a、8bに内嵌した状態で、この支持軸4の軸方向両端部外周縁部を径方向外方にかしめ拡げ、当該部分にかしめ部9、9を形成する。これにより、前記支持軸4を、前記キャリア6と前記連結板7との間に掛け渡す状態で支持固定している。
【0004】
又、前記支持軸4の中間部外周面で、前記キャリア6と前記連結板7との間部分には、複列の内輪軌道10、10を形成している。一方、前記遊星歯車3の内周面には、複列の外輪軌道11、11を形成している。そして、これら内輪軌道10、10と外輪軌道11、11との間部分に、それぞれ前記各ニードル5、5から成る複列のラジアルニードル軸受12を設けて、前記遊星歯車3を、前記支持軸4の中間部周囲で、前記キャリア6と前記連結板7との間部分に、回転自在に支持している。
【0005】
又、図示の例では、前記太陽歯車1を円筒状に形成し、前記キャリア6を、断面L字形で全体を円輪状に形成している。そして、図6に示す様に、このキャリア6の内周縁部に形成した円筒部13を、回転軸14の外周面にスプライン係合させている。前記太陽歯車1は、この回転軸14の周囲に、この回転軸14に対する相対回転を自在に支持している。又、前記リング歯車2は、前記各部材1、6、14の周囲に、これら各部材1、6、14に対する相対回転自在に支持している。
【0006】
上述の様な遊星歯車3及び支持軸4等を含んで構成する遊星歯車装置は、例えば、前記回転軸14を駆動軸又は従動軸とし、前記太陽歯車1又は前記リング歯車2の中心を従動軸又は駆動軸に結合する。そして、何れの歯車1、2、3を回転自在とし、何れの歯車1、2、3を回転不能とするかを切り換える事により、前記駆動軸と従動軸との間の変速並びに回転方向の変換を行う。この様な遊星歯車装置自体の構成及び作用は、従来から周知であり、本発明の要旨とも関係しないから、全体構造の図示並びに詳しい説明は省略する。
【0007】
ところで、近年、自動車用自動変速機の使用条件が厳しくなるに従って、遊星歯車装置に組み込む支持軸に対し、耐久性に関する要求が高まっている。この為、支持軸を、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼{JIS G 4805、C(炭素)の含有量:0.95〜1.10質量%}を初めとする高炭素鋼{本明細書中で「高炭素鋼」とは、Cの含有量が0.6質量%以上の炭素鋼を言い、同じく「中炭素鋼」とは、Cの含有量が0.6質量%未満(且つ0.25質量%より高い)の炭素鋼を言う。}から造る事が考えられている。又、この様な高炭素鋼製の支持軸に、浸炭窒化処理や高周波焼き入れ処理を施す事も、例えば特許文献3等に記載され、従来から知られている。この様に、高炭素鋼の様な高炭素濃度の材料から支持軸を造れば、この支持軸の硬度として高い値が得られ易くなる。又、浸炭窒化処理や高周波焼き入れ処理を施せば、軌道面となる部分にのみ硬化層を形成する事ができて、その他の部分(軸方向両端部)には硬化層を形成せずに済む。この為、軌道面の転がり疲れ寿命を向上させて、耐久性を向上できると共に、かしめによる固定手段を採用する事も可能になる。
【0008】
但し、支持軸を造る為の材料として高炭素鋼を使用した場合、材料コストが嵩むと共に、加工時間が長くなると言った問題を招く。即ち、高炭素クロム軸受鋼の様な高炭素鋼は、例えばS53C等の中炭素鋼に比べて、高価である為、支持軸の材料コストが嵩む事が避けられない。又、高炭素クロム軸受鋼の様な高炭素鋼から支持軸を造る場合、高周波焼き入れ処理等の有無に拘わらず、元々の(生の状態での)硬度が高い為、かしめ部を形成する為の軸方向両端部分の加工時間が長くなる。具体的には、図7に示した様に、支持軸4の軸方向両端部には、かしめ部9、9(図6参照)を形成する為のかしめ用筒部15、15を形成する必要があり、これら各かしめ用筒部15、15を形成するには、支持軸4の軸方向両端面16、16の中央に、円すい台形状の凹部17、17を形成する必要がある。但し、高炭素クロム軸受鋼の様な硬質材料を用いた場合、鍛造加工により凹部17、17を加工する事は困難である。この為、円すい台形状の凹部17、17を切削加工により加工する必要があるが、この様な切削加工を硬質材料に対して行う場合には、加工時間が特に長くなる。更に、この様にして形成したかしめ用筒部15、15を、径方向外方に塑性変形させる為の加工時間も長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−270661号公報
【特許文献2】特開2002−235841号公報
【特許文献3】特開2007−217725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、耐久性を確保できるだけでなく、材料コストの低減を図れ、しかも加工時間を短縮できる、回転部材用支持軸を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の回転部材用支持軸は、例えばキャリア、ロッカーアーム、バルブリフタ、タペット等を構成する、互いに離隔して設けられた1対の支持壁部(キャリアと連結板の様に互いに別部材である場合も含む)の互いに整合する位置に形成された1対の通孔に、その軸方向両端部を内嵌した状態で、この軸方向両端部の外周縁部分を径方向外方にかしめ拡げる事で、前記1対の支持壁部同士の間に掛け渡された状態で支持固定される。
又、軸方向中間部周囲に、例えば遊星歯車、カムフォロア、ローラ、カムローラ等の回転部材を、ラジアルニードル軸受(転動体としてころを使用する構造、並びに、転動体が複列に配置された構造を含む)を介して、回転自在に支持する。
【0012】
特に本発明にあっては、前記回転部材用支持軸を、C(炭素)を0.50〜0.58質量%、Si(ケイ素)を0.1〜0.4質量%、Mn(マンガン)を0.5〜1.0質量%、Cr(クロム)を0.1〜0.4質量%含有する合金鋼製としている。尚、合金鋼の残部は、Feと、Oと、SやP等の不可避不純物である。
又、外周面のうちで、前記ラジアルニードル軸受を構成する各ニードルの転動面が転がり接触する軌道面(単列、複列を問わない)を含み、この軌道面よりも軸方向両側に広い範囲で、且つ、軸方向両端部を除く部分に、高周波焼き入れ処理による硬化層(表面硬さがビッカース硬度で633Hv以上の硬化層)を全周に亙り形成している。
【0013】
上述した様な本発明を実施する場合に好ましくは、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記合金鋼中の酸素量(酸素濃度)を、15ppm以下(より好ましくは12ppm以下)とする。
【0014】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、例えば請求項3に記載した発明の様に、前記硬化層を、前記回転部材用支持軸の外周面から軸心部(中心部)に至る範囲に形成する。言い換えれば、軸心部にも、非硬化部(生のままの部分)を設けない様にする。
尚、本発明を実施する場合に、回転部材用支持軸の内部に通油孔を設ける事もできるが、この様な場合には、回転部材用支持軸の外周面から通油孔に至る範囲に硬化層を形成する。
【発明の効果】
【0015】
以上の様な構成を有する本発明の回転部材用支持軸によれば、耐久性を確保できるだけでなく、材料コストの低減を図れ、しかも加工時間を短縮できる。
即ち、本発明の場合には、回転部材用支持軸を造る為の材料として、C(炭素)の含有量が0.50〜0.58質量%である合金鋼(中炭素鋼)を使用する為、高炭素クロム軸受鋼の様な高炭素鋼を用いた場合に比べて、材料コストの低減を図れる。
又、本発明の場合、回転部材用支持軸を造る為の材料は、Cの含有量が低く、元々の(生の状態での)硬度が低い事に加え、軸方向両端部には高周波焼き入れ処理後も硬化層を形成しない為、かしめ部を形成する為の加工時間を短縮する事が可能になる。
具体的には、高周波焼き入れ処理を施す以前の状態で、素材全体の硬度を低く抑えられる為、軸方向両端面に、円すい台形状の凹部を、鍛造加工により形成する事が可能になり、加工時間の大幅な短縮化を図れるか、或いは、切削加工により形成する場合にも、高炭素クロム軸受鋼の様な硬質材料を用いた場合に比べて、加工時間を短縮できる。更に、この様な円すい台形状の凹部を形成する事に伴って、その周囲に形成されたかしめ用筒部は、高周波焼き入れ処理によっても硬化させない為、このかしめ用筒部を径方向外方に塑性変形させる際の加工時間も短縮できる。加えて、かしめ部に割れや亀裂等の損傷が生じる事も有効に防止する事もできる。
又、Cの含有量及びSiの含有量を、軌道面に必要となる硬さを確保できる様に適正に規制した上で、高周波焼き入れによる硬化層を形成している為、軌道面部分の表面硬さを、転がり疲れ寿命を確保するのに必要な硬さに規制できる。又、軌道面部分に、疲労強度の向上に有利となる残留圧縮応力を発生させる事もできる。従って、転がり疲れ寿命を確保できて、十分な耐久性を確保できる。
更に、本発明の場合には、C以外の成分(Si、Mn、Cr)に関しても、それぞれの含有量を適正に規制している為、品質のばらつきを抑える事ができる。
【0016】
又、請求項2に記載した発明によれば、軌道面に、剥離の起点となる酸化物系の介在物が形成されにくくなる為、転がり疲れ寿命の更なる向上を図れる。
【0017】
更に、請求項3に記載した発明によれば、回転部材用支持軸の強度(主として曲げ強度)を十分に向上させる事が可能になる。
【0018】
以下、前記回転部材用支持軸の材料である合金鋼(鋼材)の組成に就いて、含有量を上述した範囲に規制する理由と共に説明する。
[Cを0.50〜0.58質量%]
C(炭素)は、回転部材用支持軸に、転がり軸受(軌道輪である内輪)として要求される硬さを付与する作用を有する。前記合金鋼中のCの含有量が0.50質量%未満であると、転がり軸受として要求される硬さ(軌道面の表面硬さ)の目安となる、ビッカース硬度で633Hv(ロックウェル硬度57HRC)以上を確保できなくなる可能性がある。一方、Cの含有量が0.58%を超えると、かしめ部を形成する際に亀裂や割れ等の損傷が生じたり、鍛造性や切削性を低下させる。そこで、前記合金鋼のCの含有量を、0.50〜0.58質量%の範囲に規制した。
尚、軌道面の表面硬さは、各ニードルから繰り返し加わる剪断応力に耐え、転がり疲れ寿命を向上させる面からは、ビッカース硬度で660Hv以上とする事が好ましい。
【0019】
[Siを0.1〜0.4質量%]
Si(ケイ素)は、焼き入れによる表面(軌道面)硬さを向上させると共に、軌道面の転がり疲れ寿命を向上させ、併せて、合金鋼中の酸素量を低下させる(脱酸効果を有する)。即ち、Siは、基地に固溶して、焼き入れ性を向上させると共に、焼き戻し軟化抵抗性を向上させて、軌道面に必要な硬さを与える。又、基地組織を強化し、この軌道面の転がり疲れ寿命を向上させる。又、合金鋼中の酸素と反応して酸化物を生成し、この合金鋼中の酸素量を低下させる。但し、Siの含有量が0.1質量%未満の場合には、脱酸効果が十分には得られない。これに対して、Siの含有量が0.4質量%を超えると、かしめ部を形成する際のかしめ性が低下したり、切削性を著しく低下させると共に、Siの溶け込みが不足し、巨大なSiCが析出して十分な表面硬さが得られなくなる。そこで、前記合金鋼のSiの含有量を、0.1〜0.4質量%の範囲に規制した。尚、合金鋼のSiの含有量は、好ましくは0.13〜0.37質量%とする。
【0020】
[Mnを0.5〜1.0質量%]
Mn(マンガン)は、基地に固溶して、焼き入れ性を向上させる。但し、前記合金鋼中のMnの含有量が0.5質量%未満では、焼き入れ性(高周波焼き入れ性)が不足してしまい、反対に、1.0質量%を超えて含有すると、鋼中の不純物であるS(硫黄)やP(燐)と非金属介在物を形成し易くなり、強度を低下させる可能性がある。そこで、前記合金鋼のMnの含有量を、0.5〜1.0質量%の範囲に規制した。尚、合金鋼のMnの含有量は、好ましくは0.65〜0.95質量%とする。
【0021】
[Crを0.1〜0.4質量%]
Cr(クロム)は、基地に固溶して、焼き入れ性、耐食性等を向上させると共に、Cと結合して鋼中に硬い炭化物を形成し(炭化物球状化を促進させ)、耐摩耗性を向上させる元素である。但し、前記合金鋼中のCrの含有量が0.1質量%未満の場合には、前記の効果を十分には得られない。これに対して、このCrの添加量が0.4質量%を超えると、炭化物が粗大化して平均結晶粒が大きくなる。この為、加工性を低下させる場合があると共に、コストが嵩む原因になる。そこで、前記合金鋼中のCrの含有量を、0.1〜0.4質量%の範囲に規制した。尚、合金鋼のCrの含有量は、好ましくは0.1〜0.25質量%とする。
【0022】
[酸素量(酸素濃度)を15ppm以下とした理由]
合金鋼中の酸素量が高くなると、焼き入れされた軌道面に剥離の起点となる酸化物系の介在部が形成される為、転がり疲れ寿命が低下する。この為、転がり疲れ寿命の向上を図る為に、前記合金鋼中の酸素量を低くする事が好ましい。そこで、この酸素量の上限値を15ppmとした。耐久性の更なる向上を図る面からは、酸素量の上限値は12ppmとする事が望ましい。
【0023】
[P、Sの好ましい含有量]
P(燐)は、不可避的に鋼中に混入する有害不純物元素であり、転がり疲れ寿命及び靱性を低下させる元素である為、含有量は少ない程好ましいが、含有量を0とする事は、コストを抑える面から非現実的である。但し、含有量が0.03質量%を超えると、強度低下等の不利益が無視できなくなる。そこで、Pの含有量の上限値は、好ましくは0.03質量%以下とする。
S(硫黄)は、被削性を向上させる元素であるが、Mnと結合して、非金属介在物であるMnSとなり、割れの起点になり易くなったり、或いは、Ti(チタン)と結合して、転がり疲れ寿命を低下させる硫化系介在物を形成する。この為、Sの含有量の上限値は、好ましくは0.03質量%以下とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の対象となる回転部材用支持軸を組み込んだ遊星歯車装置を、この回転部材用支持軸の軸方向両端部にかしめ部を形成する以前の状態で示す断面図。
【図2】かしめ部を形成した以後の状態を示す、図1のA部に相当する拡大断面図。
【図3】軸方向両端面の凹部を省略した状態で示す、回転部材用支持軸の略断面図。
【図4】本発明の効果を確認する為に行った耐久寿命試験の実施状況を示す模式図。
【図5】従来構造の遊星歯車装置の1例を示す略側面図。
【図6】図5のB−B断面図。
【図7】同じく支持軸のみを取り出して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜3は、本発明の実施の形態の1例を示している。本発明の特徴は、例えば遊星歯車をキャリアに対して、ラジアルニードル軸受を介して回転自在に支持する為に使用する回転部材用支持軸に関して、材料となる合金鋼の組成、並びに、高周波焼き入れ処理により形成する硬化層の範囲等を工夫する事で、耐久性を確保しつつ、材料コストの低減を図ると共に、加工時間の短縮化を図った点にある。図面に表れる構造に就いては、硬化層の形成範囲を除いて、従来から知られている支持軸と基本的には同じである為、共通する部分の説明は省略する。
【0026】
支持軸4aの周囲に、ラジアルニードル軸受12を介して、遊星歯車3を回転自在に支持する為に、この支持軸4aを、キャリア6aを構成する1対の支持壁部18、18同士の間に掛け渡す状態で支持固定している。この為に、前記支持軸4aの軸方向両端面16a、16aの中央に、円すい台形状の凹部17a、17aを形成し、その周囲(支持軸4aの軸方向両端部外周縁部)に、かしめ用筒部15a、15aを形成している。一方、前記各支持壁部18、18には、互いに整合する位置に1対の通孔8c、8cを形成しており、これら各支持壁部18、18の外側面のうちで、これら各通孔8c、8cの開口縁部には、外側面側に向かう程内径寸法が大きくなる方向に傾斜した面取り部19、19を形成している。
【0027】
そして、図2に示した様に、前記各かしめ用筒部15aを、径方向外方にかしめ拡げ(塑性変形させて)、これら各かしめ用筒部15aの外周面を前記各面取り部19の内周面に向けて押し付ける事で、当該部分にかしめ部9を形成する。これにより、前記支持軸4aを、前記キャリア6aを構成する1対の支持壁部18、18同士の間に掛け渡す状態で支持固定する。
【0028】
又、本例の場合、これら各支持壁部18、18のうち、互いに対向する内側面23、23が、各ニードル5、5や、前記遊星歯車3の軸方向端面との擦れ合いにより摩耗するのを防止する為に、前記支持軸4aの周囲で、前記各支持壁部18、18の内側面23、23と前記遊星歯車3の軸方向端面との間部分に、円輪状のワッシャ20、20を設けている。又、複列に配置された前記各ニードル5、5のスキュー防止を図る為、両列のニードル5、5同士の間に、円環状のスペーサ21を配置し、これら各ニードル5、5の軸方向端面を案内する様にしている。この様なスペーサ21としては、鋼製或いは合成樹脂製で、削り出し加工や打ち抜き成型(プレス加工)等により形成されたもの使用できる。
【0029】
上述の様にして前記キャリア6aに支持固定される本例の支持軸4aは、従来構造の様に高炭素鋼を材料とするものではなく、中炭素鋼であるS53C(JIS G 4051)をベースとする、C(炭素)を0.50〜0.58質量%、Si(ケイ素)を0.1〜0.4質量%、Mn(マンガン)を0.5〜1.0質量%、Cr(クロム)を0.1〜0.4質量%、P(燐)を0.03質量%以下、S(硫黄)を0.03質量%以下、それぞれ含有し、酸素量(酸素濃度)を15ppm(好ましくは12ppm)以下に規制した合金鋼製としている。
【0030】
又、前記支持軸4aのうち、各図に斜格子模様を付した範囲に、高周波焼き入れ処理による硬化層22を形成している。具体的には、前記支持軸4aの外周面のうち、前記各ニードル5、5の転動面が転がり接触する軌道面(両列の内輪軌道10、10)を含み、この軌道面よりも軸方向両側に広い範囲に、前記硬化層22を全周に亙り形成している。但し、前記支持軸4aの軸方向両端部(少なくともかしめ用筒部15aを含む部分)には前記硬化層22を形成せず、軸方向両端部を生の状態(焼き入れ硬化していない状態)としている。この硬化層22と生の部分との境界位置は、前記各支持壁部18、18の内側面23、23と、前記各面取り部19、19の内周縁部24、24との間部分(図2中のXの範囲)に規制している。更に、本例の場合には、前記支持軸4aの軸方向中間部に於ける前記硬化層22の深さを、前記支持軸4aの半径以上とする事で、この硬化層22を、前記支持軸4aの外周面(表層部分)だけでなく、この外周面から軸心部に至る範囲に形成している。即ち、高炭素クロム軸受鋼の様な硬質材料製の支持軸4の場合には、前記図7に斜格子模様で示した様に、硬化層を表層部にのみ形成し、軸心部には非硬化部を設けていたのに対し、本例の場合には、前記支持軸4aの軸心部にも、非硬化部(生のままの部分)を設けていない。又、この支持軸4aの軸方向両端寄り部分(硬化層22の軸方向両端部)に於ける硬化層22の深さは、軸方向端部側に向かう程浅くなる様にしている。
【0031】
この様な硬化層22は、前記支持軸4aを構成する円柱状の素材の軸方向中間部周囲に、高周波加熱コイルを配置し、この高周波加熱コイルに高周波電源から高周波電力を供給する事により形成する。この場合、表層部にのみ硬化層を形成する場合に比べて、高周波加熱コイルを流れる高周波電流の周波数を低く設定する事で、前記支持軸4aの軸心部にまで焼きを入れる。又、高周波焼き入れ後は、焼き戻し(低温焼き戻し)を施す。
【0032】
以上の様な構成を有する本例の支持軸4aによれば、耐久性を確保できるだけでなく、材料コストの低減を図れ、しかも加工時間を短縮できる。
即ち、本例の場合には、前記支持軸4aを造る為の材料として、C(炭素)の含有量が0.50〜0.58質量%である合金鋼(中炭素鋼)を使用している為、高炭素クロム軸受鋼の様な高炭素鋼を材料として用いる従来構造の場合に比べて、材料コストの低減を図れる。
【0033】
又、前記支持軸4aを構成する合金鋼は、Cの含有量が低く(高炭素クロム軸受鋼のC含有量は0.95〜1.10質量%であるのに対し、本例の合金鋼では0.50〜0.58質量%)、元々の(生の状態での)硬度が低い事に加え、軸方向両端部には高周波焼き入れ処理後も前記硬化層22を形成しない。この為、前記各かしめ部9を形成する為の加工時間を短縮する事が可能になる。具体的には、高周波焼き入れ処理を施す以前の状態で、素材全体の硬度を十分に抑えられる為、軸方向両端面の中央に、円すい台形状の凹部17a、17aを、鍛造加工(熱間鍛造加工或いは冷間鍛造加工)により形成する事が可能になる。この為、前記各凹部17a、17aを切削加工により形成する場合に比べて、大幅な加工時間の短縮を図れる。又、切削加工により形成する場合にも、高炭素クロム軸受鋼の様な硬質材料を用いた場合に比べて、加工時間を短縮できる。更に、ボール盤等を使用した切削加工により、素材の内部に通油孔(例えば軸方向孔及び径方向孔)を形成する場合にも、高炭素クロム軸受鋼の様な硬質材料を用いた場合に比べて、やはり加工時間を短縮できる。
【0034】
更に、上述の様な円すい台形状の凹部17a、17aを形成する事に伴って、その周囲に形成されたかしめ用筒部15a、15aは、高周波焼き入れ処理によっても硬化させない(生のままの状態である)為、これら各かしめ用筒部15a、15aを径方向外方に塑性変形させる際の加工時間も短縮できる。即ち、これら各かしめ用筒部15a、15aを塑性変形させるには、これら各かしめ用筒部15a、15aの先端部に、図示しないかしめパンチを押し付ける等して行うが、本例の場合には、これら各かしめ用筒部15a、15aの硬度を低く抑えられる為、これら各かしめ用筒部15a、15aを、小さな押し付け力で塑性変形させる事が可能になり、加工時間を短縮できる。加えて、形成されるかしめ部9に割れや亀裂等の損傷が生じる事も防止できる。
【0035】
又、本例の場合には、C(炭素)の含有量を低く抑えるだけでなく、Si(ケイ素)の含有量もその上限値を0.4質量%と低く抑えている為、この面からも、かしめ性が低下する事を防止できる。この為、前記各かしめ部9に、割れや亀裂等の損傷が生じる事を有効に防止できる。
【0036】
又、前記支持軸4aには、Cの含有量及びSiの含有量を軌道面に必要となる硬さを確保できる様に適正に規制した(Cの含有量の下限値を0.50質量%とし、Siの含有量の上限値を0.4質量%とした)上で、高周波焼き入れによる硬化層22を形成している為、軌道面部分(内輪軌道10、10)の表面硬さを、転がり疲れ寿命を確保するのに必要な硬さの目安となる、ビッカース硬度で633Hv(ロックウェル硬度で57HRC)以上に規制できる。又、軌道面部分に、疲労強度の向上に有利となる残留圧縮応力を発生させる事もできる。従って、転がり疲れ寿命を確保できて、耐久性を確保できる。
【0037】
又、前記支持軸4aを構成する合金鋼中の酸素量を15ppm以下(より好ましくは12ppm以下)に規制している為、焼き入れされた軌道面(内輪軌道10、10)に、剥離の起点となる酸化物系の介在物が形成されにくくなる。この為、転がり疲れ寿命の更なる向上を図れる。この結果、高炭素クロム軸受鋼を材料として用いた場合と同等の、転がり疲れ寿命を確保する事が可能になる。
【0038】
又、本例の場合には、前記硬化層22と生の部分との境界位置を、前記各支持壁部18、18の内側面23、23よりも外側(外側面側)に位置させている。この為、前記遊星歯車3から前記支持軸4aに加わるラジアル荷重に起因して、この支持軸4aのうちで、前記各支持孔8c、8cに内嵌された部分と内嵌されていない部分との境界に過大な応力が加わった場合にも、当該部分が損傷する事を有効に防止できる。
【0039】
又、前記硬化層22を前記支持軸4aの軸心部にまで形成している為、この支持軸4aの強度(主として曲げ強度)を十分に向上させる事が可能になる。又、軸方向中間部分の残留オーステナイト量が、軸方向両端部分の残留オーステナイト量に比べて多くなり、軸方向中央部分の外周面が凸となる様に僅かに(緩やかに)膨出する為、軌道面にエッジロードが発生する事を防止する面からも有利になる(クラウニング効果が得られる)。
【0040】
更に、本例の場合には、C(炭素)以外の成分(Si、Mn、Cr)に関しても、それぞれの含有量を適正に規制している為、品質のばらつきを抑える事ができる。例えばSK85(JIS G 4401、Cの含有量が0.80〜0.90質量%の高炭素鋼)と比較しても、熱処理品質を安定させる事ができて、従来構造の場合と同等の耐久性を確保できる。
【0041】
尚、上述した実施の形態の1例では、遊星歯車をキャリアに対して回転自在に支持する為に用いる支持軸に、本発明を適用した場合に就いて説明したが、本発明の回転部材用支持軸は、この様な用途に限定されるものではない。例えば、エンジンの動弁機構用のカムフォロアをロッカーアームに対して回転自在に支持する為に用いる支持軸の他、エンジンの動弁機構用のローラをバルブリフタに対して回転自在に支持する為の支持軸、更には、エンジン燃料噴射ポンプ用のカムローラをプランジャの端部に連結されたタペットに対して回転自在に支持する為の支持軸に対しても、本発明は適用可能である。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の効果を確認する為に行った2種類の試験に就いて説明する。
第1の試験は、次の表1に示した12種類(実施例1〜6並びに比較例1〜6)の合金鋼により、外径が12mm、長さが50mmで、それぞれの軸方向両端部に前記図1に示した様な形状を有するかしめ用筒部を設けた支持軸を5本ずつ造り、かしめ用筒部を径方向外方に塑性変形させた際の損傷の発生の有無を検証した。又、本試験では、何れの試料に就いても、かしめ用筒部を生のまま塑性変形させた。又、この場合のかしめ用筒部のビッカース硬度は、200〜350Hvであった。又、かしめ用筒部に負荷する荷重(かしめ荷重)は、何れの場合も25kNとした。
【0043】
[表1]

【0044】
試験の結果を、前記表1の右側部分(右から第2列目)に示した様に、本発明の実施品である、実施例1〜6の支持軸には、5本全ての試料(支持軸)に関して、亀裂や割れは認められなかった。これは、C及びSiの含有量を、軌道面に必要となる表面硬さを得られる範囲で、十分に低く抑えた事により、割れ特性が向上した事によるものと考えられる。
【0045】
これに対し、比較例1(SK85製)及び比較例2(SUJ2製)の支持軸は、Cの含有量が高い(本発明の上限値である0.58質量%を大幅に超えている)事から、かしめ用筒部の硬度(特に表層部の硬度)が高くなり、かしめ加工性が悪化したと考えられ、5本の試料中、4本(比較例1)又は5本(比較例2)の試料で、割れが発生した。
又、比較例3の支持軸は、Siの含有量が0.6質量%と高い為、かしめ用筒部の変形抵抗が大きくなったと考えられ、5本の試料中、1本の試料で亀裂が発生した。
又、比較例4の支持軸は、Cの含有量が僅かに高い(本発明の上限値である0.58質量%を僅かに超えている)為、かしめ用筒部の硬度(特に表層部の硬度)が高くなり、かしめ加工性が悪化したと考えられ、5本の試料中、1本の試料で亀裂が発生した。
一方、比較例5、6の支持軸は、Cの含有量が本発明の下限値を下回っており、Siの含有量も本発明の範囲に含まれている為、かしめ用筒部の硬度が低くなったと考えられ、5本全ての試料に関して、亀裂や割れは認められなかった。
上述の様なかしめ割れ試験(第1の試験)の結果から明らかな通り、本発明の様に、C及びSiの含有量を、軌道面の表面硬さを確保できる範囲で低く抑える事により、かしめ性が低下する事を防止できて、かしめ部に割れや亀裂等の損傷が生じる事を有効に防止できる。
【0046】
第2の試験は、次の表2に示した12種類(実施例1〜6並びに比較例1〜6)の合金鋼により、外径が12mm、長さが50mmの支持軸を3本ずつ造り、図4に示す様な、試験装置25を用いて、軌道面(内輪軌道)の耐久性寿命を求めた。又、図4に示した様に、本試験では、各種試料である支持軸4a(4)の内部に、潤滑油を送り込む為の通油孔として機能する軸方向孔26及び径方向孔27を形成した。これに伴い、軸方向孔26が設けられている軸方向片半部(図4の左半部)には、前記各支持軸4a(4)の外周面から軸方向孔26に至る範囲に硬化層22を形成した(図示は省略)。
【0047】
[表2]

【0048】
前記試験装置25は、1対の支持部材(治具)28a、28bと、回転部材に相当する円筒状の外輪29と、複数個のニードル5、5から成るラジアルニードル軸受12と、温度測定器30とを備えるもので、このうちの支持部材28a、28bの互いに対向する内側面には、前記各支持軸4a(4)の軸方向端部を支持する為の支持凹部31、31が形成されている。又、1対の支持部材28a、28bのうち、一方の支持部材28aの内部には、潤滑油を送り込む為の油孔32が形成されており、他方の支持部材28bの内部には、前記温度測定器30の検出部を挿通させる為の挿通孔33が形成されている。
【0049】
そして、前記各支持軸4a(4)の軸方向両端部を、前記各支持凹部31、31に内嵌固定する事により、これら各支持軸4a(4)を前記各支持部材28a、28bに支持固定する。この状態で、一方の支持部材28aに形成された油孔32と、前記各支持軸4a(4)に形成された軸方向孔26及び径方向孔27とを連通させる。又、これら各支持軸4a(4)の軸方向方向中間部周囲に、前記ラジアルニードル軸受12を介して、前記外輪29を回転自在に支持する。更に、他方の支持部材28bに形成された挿通孔33内に、前記温度測定器30の検出部を挿通させて、この検出部を前記各支持軸4a(4)の軸方向端面{円すい台形状の凹部17a(17)の底面}に当接させる。試験時には、これら各支持軸4a(4)を固定した状態のまま、前記各孔32、26、27を通じて潤滑油を供給しつつ、前記外輪29を、ラジアル荷重を負荷しながら回転させる。そして、軌道面に剥離が生じる迄の時間を寿命として評価した。
【0050】
上述した様な耐久寿命試験の試験条件は、以下の通りである。
ラジアル荷重(動等価ラジアル荷重P/基本動定格荷重Cr) : 0.3
外輪29の回転速度 : 10000min−1
試験温度 : 120℃
潤滑油の送り込み量 : 100cc/min
試験終了の条件 : 計算寿命である92hrの2倍(184hr)に達するか、軌道面に剥離が認められた時点で終了
使用したニードル5、5の寸法 : 外径2.5mm、長さ9.8mm
軌道面の表面粗さ(算術平均粗さ) : 0.15μmRa
熱処理条件 : 全ての試料(実施例及び比較例)に関して、同じ熱処理条件(温度、時間及び範囲)にて高周波焼き入れ処理を施した。
【0051】
以上の様にして行った試験の結果を、前記表2の右側部分(右から第2列目)に示した様に、本発明の実施品のうち、実施例1に関しては、軌道面の表面硬さがビッカース硬度で633Hvであり、合金鋼中の酸素量が15ppmに抑えられている為、軌道面に剥離が発生するまでの時間が170hr(L10=170hr)となった。この為、比較例1、3〜6と比較して寿命は2倍以上となり、十分な耐久性を確保できる事が確認された。
又、実施例2〜6に関しては、軌道面の表面硬さがビッカース硬度で660〜850Hvと十分に硬く、又、合金鋼中の酸素量が12ppm以下に抑えられている為、計算寿命92hrの2倍(184hr)に達しても、軌道面に剥離は発生しなかった。この為、比較例1、3〜6と比較して、顕著に耐久性が向上している事が確認された。
【0052】
これに対し、比較例1(SK85製:本試験では酸素量が管理されていないものを使用)及び比較例4に関しては、合金鋼中の酸素量がそれぞれ34ppm、35ppmと高い(本発明の上限値である15ppmを大幅に超えている)事から、軌道面に剥離の起点となる酸化物系の介在部が早期に形成されたと考えられ、寿命は計算寿命(92hr)以下の85hr、80hrとなった。
又、比較例2に関しては、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼2種)製であり、軌道面の表面硬さがビッカース硬度で850Hvで、酸素量も9ppmと低い事から、計算寿命である92hrの2倍(184hr)に達しても、軌道面に剥離は発生しなかった。但し、前述した第1の試験(かしめ割れ試験)で明らかになった様に、支持軸をSUJ2製とした場合には、Cの含有量が多くなり過ぎる事から、かしめ加工性が悪化する。
又、比較例3、5、6に関しては、合金鋼中の酸素量は、本発明の範囲に含まれている(15ppmである)ものの、比較例3にあっては、Siの含有量が本発明の上限値を超えており、比較例5、6にあっては、Cの含有量が本発明の下限値を下回っている。この為、比較例3の場合には、Siの含有量が高い事で、高周波焼き入れ処理の際に、Siの溶け込みが不足し、巨大なSiCが析出した為、軌道面の表面硬さがビッカース硬度で600Hvと低くなり、転がり軸受として要求される硬さが得られていない。又、比較例5、6の場合には、Cの含有量が十分でない事から、軌道面の表面硬さがビッカース硬度で580Hv、550Hvと低くなり、やはり十分な硬さが得られていない。この結果、引用例3、5、6の場合には、それぞれ83hr、65hr、59hrにて軌道面に剥離が発生し、何れの場合にも計算寿命よりも短寿命となった。
上述の様な耐久寿命試験(第2の試験)の結果から明らかな通り、本発明の様に、Cの含有量の下限値及びSiの上限値を適正に規制して、軌道面に必要となる表面硬さを確保する(ビッカース硬度で633Hv以上とする)と共に、酸素量を15ppm以下に抑える事によって、転がり疲れ寿命を確保できて、耐久性を十分に確保できる。
【符号の説明】
【0053】
1 太陽歯車
1a 歯
2 リング歯車
2a 歯
3 遊星歯車
3a 歯
4、4a 支持軸
5 ニードル
6、6a キャリア
7 連結板
8a〜8c 通孔
9 かしめ部
10 内輪軌道
11 外輪軌道
12 ラジアルニードル軸受
13 円筒部
14 回転軸
15、15a かしめ用筒部
16、16a 軸方向端面
17、17a 凹部
18 支持壁部
19 面取り部
20 ワッシャ
21 スペーサ
22 硬化層
23 内側面
24 内周縁部
25 試験装置
26 軸方向孔
27 径方向孔
28a、28b 支持部材
29 外輪
30 温度測定器
31 支持凹部
32 油孔
33 挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して設けられた1対の支持壁部の互いに整合する位置に形成された1対の通孔にその軸方向両端部を内嵌した状態で、この軸方向両端部の外周縁部分を径方向外方にかしめ拡げる事で、前記1対の支持壁部同士の間に掛け渡された状態で支持固定され、軸方向中間部周囲に回転部材をラジアルニードル軸受を介して回転自在に支持する回転部材用支持軸に於いて、
Cを0.50〜0.58質量%、Siを0.1〜0.4質量%、Mnを0.5〜1.0質量%、Crを0.1〜0.4質量%含有する合金鋼製で、
外周面のうちで、前記ラジアルニードル軸受を構成する各ニードルの転動面が転がり接触する軌道面を含みこの軌道面よりも軸方向両側に広い範囲で、且つ、軸方向両端部を除く部分に、高周波焼き入れ処理による硬化層が全周に亙り形成されている
事を特徴とする回転部材用支持軸。
【請求項2】
酸素量が15ppm以下である、請求項1に記載した回転部材用支持軸。
【請求項3】
硬化層が回転部材用支持軸の外周面から軸心部に至る範囲に形成されている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した回転部材用支持軸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113370(P2013−113370A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259803(P2011−259803)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】