説明

回転金型支持装置及び多層成形方法

【課題】単層射出成形機を積層射出成形機に転用する場合に、成形機への追加改造を少なくすることができ、更には、固定金型と可動金型と回転金型部とを1組の金型として型開閉装置から着脱することができる回転金型支持装置及び該回転金型支持装置を備えた射出成形機を使用する積層成形方法を提供する。
【解決手段】固定盤と可動盤との間に配置され、1つの円軌跡と、それぞれの一端が該円軌跡に連続して接する型開閉方向に平行な1組の平行直線軌跡とで同一平面に構成される案内軌跡を有するスライドガイド部と、前記スライドガイド部に案内される2つのガイドブロック部と、前記ガイドブロック部が、前記同一平面において前記円軌跡の直径と同じ距離だけ離間するように配置される回転金型支持部と、前記ガイドブロック部の一方と前記可動盤との間を連結する第1のリンクと、を備えたことを特徴とする回転金型支持装置によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定盤と可動盤との間に配置され、これら固定盤及び可動盤の少なくとも一方に取り付けられた金型と組み合わされる回転金型を用いて多層成形品を成形する射出成形機の回転金型支持装置及び多層成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品における、異材、同材、異色、同色様々な組み合わせからなる多層成形品の成形方法として、成形装置に特徴のあるもの、あるいは成形用金型に特徴のあるもの等、種々の成形方法が知られている。固定金型、可動金型、及び、固定金型と可動金型との間で回転される回転金型からなる1組の金型を用いて多層成形品を成形する成形方法もそのひとつである。
【0003】
特許文献1には、固定型(固定金型)、可動型(可動金型)、及び、固定型と可動型との間で回動する回動型(回転金型部)からなる金型を用いて多材質成形品(多層成形品)を成形する射出成形機であって、前記固定型に当接して溶融材料を射出する第1射出装置と、前記可動型に当接して溶融材料を射出する第2射出装置と、前記回動型を回動自在かつ可動型の移動方向に移動自在に固定盤から支持する回動型支持装置(回転金型支持装置)と、前記回動型を介して前記固定型と前記可動型を圧縮する圧縮手段(型開閉装置)とからなる多材質射出成形機が開示されている。
【0004】
特許文献2には、固定盤に取り付けられる固定側金型(固定金型)と、前記固定盤に複数本のタイバーを介して接続されていると共に前記固定盤に対して型開閉される可動盤に取り付けられる可動側金型(可動金型)と、前記固定側金型と可動側金型との間に設けられている反転あるいは回転側金型(回転金型部)と、前記回転側金型を回転自在に支持している回転金型保持枠体とからなり、前記固定側金型と可動側金型と回転側金型は、前記複数本のタイバーの内側に配置され、前記回転金型保持枠体は、前記複数本のタイバーの外側に位置する枠部材により井桁状に構成され、そして前記固定側金型と前記可動側金型とに間隔保持部材を介して結合され、前記可動側金型が開かれると、前記間隔保持部材により前記固定側金型と可動側金型との間の実質的な中間位置に移動され、閉じられると、前記固定側金型と回転側金型と可動側金型とが型閉じされるように駆動される多色成形用金型が開示されている。
【0005】
尚、上記特許文献1及び特許文献2に関する記載中の括弧は、括弧直前の構成要件に相当あるいは類似すると考えられる本発明の構成要件等を、本発明の理解が容易になるように記載したものであり、括弧直前の構成要件等と括弧内構成要件とが一致することを示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−168223号公報
【特許文献2】特開2010−064278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の多材質射出成形機においては、簡易な構成であって汎用の射出成形機を基に追加改造が容易であると記載されているが、回動型を型開閉方向に駆動させる機構、及び、回動型を垂直軸周りに回転させる機構をすべて固定盤に取り付ける構成のため、これらの機構が複雑になる上、これら機構の荷重やモーメントをすべて固定盤で支持するための補強等が必要になり、汎用の射出成形機を基に追加改造が容易であるとは言い難い。また、多層成形専用の射出成形機としても、この構成によれば、回動型を支持し型開閉方向に駆動させるための支持部材が、固定盤から圧縮手段の上方及び下方に回動型の型開き限位置まで延ばされており、固定型と回動型と可動型とを型合わせさせた1組の金型として、圧縮手段の上方から天井クレーン等の既設設備を利用して着脱することが困難であるという問題がある。回動型を水平軸周りに回転させる形態であれば、金型の上方が開放され、金型の脱着が容易となるとの記載もあるが、この形態の場合、型開き状態であっても、回動型を駆動・回転させる機構がすべて金型の両側面に配置されるため、製品取り出しが金型の上下方向からしかできないという問題がある。同時に、金型への両側面からのアクセス性が悪化することにより、金型のメンテナンス時や不具合対応時の作業性も悪化させるため、現実的な形態ではない。
【0008】
特許文献2の多色成形用金型においては、固定側金型と可動側金型との間に配置された回転側金型が回転金型保持枠体に回転自在に支持されていると共に、可動側金型の型開閉方向の移動に伴い、回転側金型が固定側金型と可動側金型との間の実質的な中間位置に移動される間隔保持部材を介して、回転金型保持枠体が固定側金型と可動側金型とに結合されている。そのため、特許文献1のように、回転側金型を型開閉方向に駆動させる機構や回転させる機構を汎用の射出成形機に追加改造する必要がない。
【0009】
ここで、特許文献2の多色成形用金型においては、汎用の射出成形機をベースにして安価に製作することができると記載されている。しかしながら、重量物である回転金型を回転可能に支持する回転金型保持部材に関して、射出成形機のタイバーに支持・案内されないこと、及び、固定側金型、可動側金型と間隔保持部材を介して結合されていることについては明確に記載されているものの、具体的なその支持方法や型開閉方向の移動を案内する手段については、”図示されないガイドレール等に案内されて(段落0020)”の記載があるだけで具体的な記載は一切ない。すなわち、重要な構成要件と思われるにも関らず、この”ガイドレール等”が具体的にどのような構成要件であるのか、構成要件として多色成形用金型側に備えられているものなのか、汎用の射出成形機側に備えられているものなのか、そうであれば、射出成形機に対して、どのように配置され、回転金型保持部材の荷重を支持し、型開閉方向に案内するものなのか等、その形態が一切不明であり、汎用の射出成形機をベースにして安価に製作することができると判断することは困難である。
【0010】
また、特許文献2の多層成形用金型は、金型交換において問題があると推定される。特許文献2の多層成形用金型は、タイバーの内側に配置された固定側金型、回転側金型、可動側金型に対して、回転側金型を回転自在に支持している回転金型保持枠体が、タイバーの外側に位置する枠部材により井桁状に構成され、この回転金型保持枠体が、間隔保持部材により固定側金型及び可動側金型と結合されている。すなわち、この構成から推定すると、タイバーの外側に配置される井桁状の回転金型保持枠体に結合される間隔保持部材を取り外さなければ、タイバーの内側に配置される固定側金型及び可動側金型の型開閉装置からの着脱は困難である。次に、タイバーの外側に配置される井桁状の回転金型保持枠体は、分割しない限り型開閉装置からの着脱は困難であり、また、この回転金型保持枠体を分割した状態でなければ、回転側金型の回転金型保持枠体からの着脱も困難である。すなわち、特許文献2の多色成形用金型は、型閉じ状態で回転金型保持枠体の上部を開放させ、回転金型保持枠体が固定側金型と可動側金型とに結合されている間隔保持部材が取り外されない限り、固定側金型と回転側金型と可動側金型とを型合わせさせた1組の金型として、型開閉装置から着脱することは困難である。特許文献2には、開示された多色成形用金型の構成に基づいた金型交換方法について具体的に言及した記載はない。このように、特許文献2の多色成形用金型においては、金型交換方法が不明確であり、推定される金型交換方法は非常に困難であり、あるいは可能であったとしても時間が掛かるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、射出成形機への追加改造を少なくすることができ、更には、固定金型と可動金型と回転金型部とを1組の金型として型開閉装置から着脱することができる回転金型支持装置及び該回転金型支持装置を備えた射出成形機を使用する多層成形方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、請求項1に示すように、固定盤と可動盤との間に配置され、1つの円軌跡と、それぞれの一端が前記円軌跡に連続して接するように接続される型開閉方向に平行な1組の平行直線軌跡とで同一平面に構成される案内軌跡を有するスライドガイド部と、
前記スライドガイド部の前記案内軌跡に案内される2つのガイドブロック部と、
前記ガイドブロック部が、前記円軌跡の直径と同じ距離だけ離間するように配置され、前記スライドガイド部の前記平行直線軌跡においては型開閉方向に平行に案内され、前記円軌跡においては前記円軌跡の中心を通る回転軸回りに回転するように案内される回転金型支持部と、
前記ガイドブロック部の一方と前記可動盤との間を連結すると共に、それぞれの連結部分間の距離を任意で伸縮させる連結距離伸縮機能を備えた第1のリンクと、
を備えることを特徴とする回転金型支持装置によって達成される。
【0013】
すなわち、ガイドブロック部そのものは、スライドガイド部の案内軌跡に案内され自由に移動でき、このガイドブロック部が回転金型支持部に対してスライドガイド部の円軌跡の直径と同じ距離だけ離間するように配置されることにより、回転金型支持部に、平行直線軌跡においては型開閉方向に平行な移動動作を、円軌跡においては同円軌跡の中心を通る回転軸回りの回転動作をさせることができる。また、これらの移動・回転動作は、ガイドブロックの一方と可動盤とを連結する第1のリンクにより、可動盤の型開閉動作に連動して行われるため、これらの移動・回転動作のための専用の駆動手段は必要ない。その結果、少ない数量の部材構成で回転金型支持部の移動・回転動作を行わせることができるので、不単層成形用射出成形機を積層成形用射出成形機に転用する場合に、射出成形機への追加改造を少なくすることができる。
【0014】
また、請求項2に示すように、前記円軌跡において前記回転金型支持部を任意の方向に回転させるように、前記第1のリンクの摺動範囲を任意で制限する逆回転防止機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の回転金型支持装置であっても良い。
【0015】
このような逆回転防止機構を備えることにより、スライドガイド部の円軌跡における回転金型支持部の回転動作の際、回転金型支持部が意図しない方向に回転されることを確実に防止することができる。
【0016】
更に、請求項3に示すように、前記第1のリンクが少なくとも1つのリンク節を有する少なくとも2つのリンク部材から構成され、前記連結距離伸縮機能が、前記リンク節における前記2つのリンク部材の屈曲角度を任意で保持・開放させるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか1項に記載の回転金型支持装置であることが好ましい。
【0017】
このように、リンク節におけるリンク部材の屈曲角度を小さく保持させればリンク部材両端の連結部分間の距離は短くなり、この屈曲角度を大きく(最大180度)保持させればリンク部材両端の連結部分間の距離を長くすることができ、リンクそのものを伸縮させる構成でなくても連結部分間の距離を任意で伸縮させることができる。
【0018】
また、第1のリンクの別の構成について、請求項4に示すように、前記第1のリンクが、それぞれの前記連結部分を結ぶ直線に対して対称に配置された2つのリンクと、前記連結部分を中心に回転自在に配置され、前記2つのリンクの両端が前記連結部分から等距離離間した位置で回転自在に接続される2つの接続部材とで構成され、前記逆回転防止機構が、前記2つのリンクを任意で独立して伸縮させるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転金型支持装置であっても良い。
【0019】
第1のリンクがこのように構成されれば、型開き状態から型閉じを開始させる際、2つのリンクの内、一方のリンクの伸長状態を保持させ、他方のリンクを伸縮自由状態にさせることにより、可動盤の型閉じ量を吸収するように接続部材が連結部分を中心に所定角度回転され、他方のリンクが収縮する。この状態から収縮させた他方のリンクの長さを保持させれば、長さの異なる2つのリンクの中間にある連結部分に、回転金型支持部を伸長状態の一方のリンク側に回転させる、回転軌道の接線方向のベクトルを生じさせることができ、逆回転防止機構として意図しない方向への回転動作を防止することができる。
【0020】
更に、リンクの別の構成について、請求項5に示すように、前記ガイドブロック部の他方と前記固定盤との間を連結すると共に、それぞれの連結部分間の距離を任意で伸縮させる連結距離伸縮機能を有する第2のリンクを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転金型支持装置であっても良い。
【0021】
この第2のリンクは、ガイドブロック部の一方と可動盤との間を連結する第1のリンクに対して、円軌跡の直径と同じ距離だけ離間する配置、すなわち、円軌跡の中心に対して対称の位置となる他方のガイドブロック部と可動しない固定盤とを連結するため、平行直線軌跡における回転金型支持部の型開閉動作の際には、可動盤の型開閉速度に同調させて第2のリンクを伸長・伸縮させることにより、第1のリンクと連結されていない他方のガイドブロック部に、第1のリンクによる型開閉力と同じ方向の型開閉力を付与させる。また、円軌跡における回転動作の際には、可動盤の型開閉動作に同調させて第2のリンクを収縮・伸長させることにより、第1のリンクと連結されていない他方のガイドブロック部に第1のリンクと同じ回転方向の回転力を付与させ、回転金型部の型開閉動作や回転動作を補助させることができる。
【0022】
また、これらの回転金型支持装置については、請求項6に示すように、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転金型支持装置を備えることを特徴とする射出成形機として使用されることが好ましい。
【0023】
これらの回転金型支持装置を備えた射出成形機については、請求項7に示すように、前記固定盤に取り付けられた固定金型と、前記可動盤に取り付けられた可動金型と、前記回転金型支持部に取り付けられ、前記固定金型及び前記可動金型と組み合わされて金型キャビティが形成される2つの金型分割面を有する回転金型部とを型締めさせて、前記固定金型及び前記可動金型のいずれか一方の金型と、前記回転金型部の一方の金型分割面との間に形成される金型キャビティに射出充填させて1次成形体を成形させる1次成形工程と、
前記1次成形体を前記回転金型部に保持させた状態で前記可動盤を型開きさせ、前記第1のリンクにより、前記回転金型部を前記固定金型から型開きさせると共に、前記回転金型部の金型分割面を型開閉方向と略平行になるまで回転させる型開き工程と、
前記可動盤を型閉じさせ、前記第1のリンクと前記逆回転防止機構とにより、前記回転金型部の前記2つの金型分割面を1次成形工程と異なる金型に対向する位置まで回転させると共に、前記回転金型部を前記固定金型に型閉じさせた後、引き続いて前記可動金型を前記回転金型部に型閉じさせる型閉じ工程と、
前記固定金型と前記可動金型と前記回転金型部とを型締めさせて、前記回転金型部に保持させた前記1次成形体と、前記固定金型及び前記可動金型の他方の金型とで形成される金型キャビティに射出充填させて1次成形体の少なくとも1部分に2次成形体を積層成形させる2次成形工程と、
からなることを特徴とする請求項6に記載の射出成形機を使用する多層成形方法であっても良い。
【0024】
これらの回転金型支持装置を備えた射出成形機を使用して、上記のような多層成形方法を行うことができると共に、回転金型部が回転金型支持部に取り付けられる形態のため、固定金型と可動金型と回転金型部とを1組の金型として回転金型支持装置及び型開閉装置に対して着脱することができる。
【0025】
更に、請求項8に示すように、前記第2のリンクにより、前記回転金型部の型開閉動作及び回転動作の少なくとも一方の動作を補助させることを特徴とする請求項7に記載の多層成形方法であっても良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る回転金型支持装置は、固定盤と可動盤との間に配置され、1つの円軌跡と、それぞれの一端が前記円軌跡に連続して接するように接続される型開閉方向に平行な1組の平行直線軌跡とで同一平面に構成される案内軌跡を有するスライドガイド部と、
前記スライドガイド部の前記案内軌跡に案内される2つのガイドブロック部と、
前記ガイドブロック部が、前記円軌跡の直径と同じ距離だけ離間するように配置され、前記スライドガイド部の前記平行直線軌跡においては型開閉方向に平行に案内され、前記円軌跡においては前記円軌跡の中心を通る回転軸回りに回転するように案内される回転金型支持部と、
前記ガイドブロック部の一方と前記可動盤との間を連結すると共に、それぞれの連結部分間の距離を任意で伸縮させる連結距離伸縮機能を備えた第1のリンクと、
を備えているため、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、射出成形機への追加改造を少なくすることができる。
【0027】
更に、本発明に係る回転金型支持装置を備えた射出成形機を使用する積層成形方法は、前記固定盤に取り付けられた固定金型と、前記可動盤に取り付けられた可動金型と、前記回転金型支持部に取り付けられ、前記固定金型及び前記可動金型と組み合わされて金型キャビティが形成される2つの金型分割面を有する回転金型部とを型締めさせて、前記固定金型及び前記可動金型のいずれか一方の金型と、前記回転金型部の一方の金型分割面との間に形成される金型キャビティに射出充填させて1次成形体を成形させる1次成形工程と、
前記1次成形体を前記回転金型部に保持させた状態で前記可動盤を型開きさせ、前記第1のリンクにより、前記回転金型部を前記固定金型から型開きさせると共に、前記回転金型部の金型分割面を型開閉方向と略平行になるまで回転させる型開き工程と、
前記可動盤を型閉じさせ、前記第1のリンクと前記逆回転防止機構とにより、前記回転金型部の前記2つの金型分割面を1次成形工程と異なる金型に対向する位置まで回転させると共に、前記回転金型部を前記固定金型に型閉じさせた後、引き続いて前記可動金型を前記回転金型部に型閉じさせる型閉じ工程と、
前記固定金型と前記可動金型と前記回転金型部とを型締めさせて、前記回転金型部に保持させた前記1次成形体と、前記固定金型及び前記可動金型の他方の金型とで形成される金型キャビティに射出充填させて1次成形体の少なくとも1部分に2次成形体を積層成形させる2次成形工程と、
からなるため、固定金型と可動金型と回転金型部とを1組の金型として型開閉装置に対して着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の概略側面図である。
【図2】図1におけるA−A矢視及びB−B矢視における概略平面図である。
【図3】図1におけるC−C矢視における概略縦断面図である。
【図4】図2におけるD−D矢視における概略縦断面図である。
【図5】図2におけるE部概略拡大図である。
【図6】本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の動作説明図前半である。
【図7】本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の動作説明図後半である。
【図8】本発明の実施例2に係る回転金型支持装置の動作説明図前半である。
【図9】本発明の実施例2に係る回転金型支持装置の動作説明図後半である。
【図10】本発明の実施例3に係る回転金型支持装置の概略平面図である。
【図11】本発明の実施例3に係る回転金型支持装置の動作説明図である。
【図12】本発明の実施例4に係る回転金型支持装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
図1乃至図7を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の概略側面図である。図2は図1におけるA−A矢視及びB−B矢視における概略平面図である。図2(a)が図1のA−A矢視における概略平面図、図2(b)が図1のB−B矢視における概略平面図である。図3は図1におけるC−C矢視における概略縦断面図である。図4は図2におけるD−D矢視における概略縦断面図である。図5は図2におけるE部概略拡大図である。図6は本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の動作説明図前半、図7は本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の動作説明図後半である。
【0031】
最初に、回転金型支持装置10及び回転金型支持装置10が取付けられる射出成形機1の概要について説明する。図1に示すように、固定金型20が取り付けられる固定盤5がマシンベース部8に固定されている。固定盤5と対向するように、可動金型40が取付けられた可動盤6が、固定盤5の四隅から延ばされたタイバー9に案内され、型締めも可能な型開閉装置7により型開閉方向に移動可能にマシンベース部8に配置されている。そして、対向する固定盤5と可動盤6との間に回転金型支持装置10が取り付けられている。回転金型支持装置10に支持される回転金型部30は、回転金型取付盤31と、固定盤5及び可動盤6に対向するように回転金型取付盤31に取り付けられた第1回転金型32及び第2回転金型33から構成されており、回転金型部30は回転金型取付盤31を介して回転金型支持装置10の回転金型支持部11に着脱自在に取り付けられている。回転金型支持部11は第1ガイドブロック部13aを介して第1のリンク14により可動盤6と連結され、支持ローラ17を介して射出成形装置1のマシンベース部8に配置されたスライドガイド部12上で型開閉方向に移動・回転される。
【0032】
これら回転金型取付盤31と、第1回転金型32及び第2回転金型33とは、固定盤5及び可動盤6に対向する2つの金型分割面を有する1つの金型(回転金型部30)として構成され、回転金型支持部11に着脱自在に取り付けられても良い。また、回転金型部30は、型開閉方向に直交する水平方向の回転軸周りに回転可能に支持される形態であっても良い。
【0033】
引き続き、図2から図5を参照しながら回転金型支持装置10の詳細を説明する。図2(a)(図1A−A矢視)及び図2(b)(図1B−B矢視)に示すように、スライドガイド部12には、その中心が射出成形機の長手方向中心線上にある1つの円軌跡12bとそれぞれの一端が円軌跡12bに連続して接するように接続される型開閉方向に平行な1組の平行直線軌跡12cとで構成される案内軌跡12aが同一平面に形成されている。そして、案内軌跡12aに案内される第1ガイドブロック部13aと第2ガイドブロック部13bとが、円軌跡12bの直径と同じ距離だけ離間するように回転金型支持部11下部に固定され、回転金型支持部11が、2つのガイドブロック部を介して案内軌跡12aに案内されるように構成されている。また、第1のリンク14は油圧シリンダ等のアクチュエータで構成され伸縮自在である。第1のリンク14はヘッド側が可動盤6下部の射出成形機の長手方向中心線上にある第1連結部分6aと、ロッド側が第1ガイドブロック部13aとそれぞれ回転可能に連結されていると共に、同じく可動盤6下部に配置された油圧シリンダ等から構成される逆回転防止機構14aによりその摺動範囲を任意で制限される。
【0034】
ここで、図3(図1C−C矢視)に示すように、案内軌跡12aの断面形状はT溝形状を成しており、本形状に適合させた2つのガイドブロック部により回転金型支持部11の上方への移動を制限しているが、これらのガイドブロック部は回転金型部30及び回転金型支持部11の荷重は支持しておらず、これら荷重は回転金型支持部11下方に配置された支持ローラ17を介してスライドガイド部12上で支持される。また、図4(図2(a)D−D矢視)に示すように、スライドガイド部12には型開閉方向及び型開閉方向に直交する方向に油圧シリンダ等から構成される位置決め機構15が配置されており、シリンダロッドを上昇させて回転金型支持部11に設けられた位置決め穴に挿入させることにより回転金型部30の位置決めが行われる。更に、図5(図2(a)E部)に示すように、円軌跡12bと平行直線軌跡12cとの接続部分には案内軌跡12a内を油圧シリンダ等で摺動可能なガイドローラ16が配置されており、合流部分の鋭角化を回避すると共に、回転金型支持部11の型開閉動作及び回転動作の切り替えの際、第1ガイドブロック部13a及び第2ガイドブロック部13bを確実に該当する軌跡に案内するよう摺動される。
【0035】
次に、図6及び図7を参照しながら本発明の実施例1に係る多層成形工程に準じた回転金型支持装置10の動作を説明する。図6及び図7は平面図であり、回転金型支持装置10の動作を説明するために主要な構成要件の概略を図示しているものである。各構成要件の上下関係は図1から図5に準ずるものとする。
【0036】
図6(a)は射出充填及び金型キャビティ内の樹脂成形品の冷却固化が完了し型開きが開始される状態を示す。この状態では、第1ガイドブロック部13a及び第2ガイドブロック部13bは平行直線軌跡12cに案内されており、第1のリンク14はヘッド側及びロッド側共に油圧フリーで伸長自在の最小長さ状態、逆回転防止機構14aも油圧フリーで摺動範囲制限無しの状態である。図示しない型開閉装置7により可動盤6の型開き動作が開始されると、第1のリンク14が最大長さに伸長するまで可動金型40が第2回転金型33から型開きされる。
【0037】
型開き動作が進行し第1のリンク14が最大長さまで伸長されると、図6(b)に示すように、第1のリンク14が最大長さで伸長されたまま回転金型部30の型開き動作が開始され、固定金型20から第1回転金型32が型開きされる。第1のリンク14により直接型開き力を受けるのは一方の第1ガイドブロック部13aのみであるが、他方の第2ガイドブロック部13bが、第1ガイドブロック部13aから円軌跡12bの直径と同じ距離、すなわち、平行直線軌跡12cの間隔だけ離間するように回転金型支持部11に固定されているので、回転金型支持部11に取り付けられた回転金型部30が平行直線軌跡12cに案内され型開きされる。
【0038】
引き続き可動盤6の型開き動作を継続させ、図6(c)に示すように、第1ガイドブロック部13aが平行直線軌跡12cから円軌跡12bに到達すると、図6(d)に示すように第1ガイドブロック部13aは円軌跡12bに案内され、第2ガイドブロック部13bも平行直線軌跡12cから円軌跡12bに案内され、回転金型部30が円軌跡12bの中心周りに反時計回りに回転される。この回転動作途中で、第2ガイドブロック部13bが案内される軌跡の外側面部に円軌跡12bの外側面部が一部形成されていなくても、第1ガイドブロック部13aが円軌道12bに確実に案内されること、及び、第2ガイドブロック部13bが円軌道12bの内側面部に案内されることにより、回転金型部30の回転動作に問題はない。ここで、図示しないガイドローラ16(図2(a)E部及び図5)を第2ガイドブロック部13bが確実に円軌跡12bに案内されるように摺動させれば、回転金型部30の円軌跡12bにおける回転動作をより安定したものにすることができる。
【0039】
更に可動盤6の型開き動作を継続させ、第1ガイドブロック部13aが円軌道12bと射出成形機の長手方向中心線との交点まで案内されると最大型開き位置となり、図6(e)に示すように、回転金型部30が図6(c)の状態から90度反時計回りに回転された位置となる。この位置において可動盤6の型開きを停止させると共に、型開閉方向の位置決め機構15を作動させ回転金型部30の位置をロックさせる。図6(e)中の位置決め機構15が黒丸で図示されているのは、位置決め機構15が作動中であることを意味する。第1のリンク14等の破損を防止するため、可動盤6の最大型開き位置への到達前に十分に型開き速度を十分に減速させること、第1のリンク14に十分なクッションストロークを持たせること、あるいは、第1連結部分6a及び第1ガイドブロック部13aとの連結部分の少なくとも一方に、第1のリンク14の長手軸方向の移動を所定量許容する機構等の配慮が成されることは言うまでもない。
【0040】
前述した図6(b)あるいは図6(c)の型開き状態において、いずれかの金型に保持させた図示しない多層成形品を図示しない製品取出手段により金型外へ取り出しても良いが、射出成形機が長手方向に平行に複数台配置される等、製品取出手段が射出成形機の長手方向に対して両側に配置できる場合は、金型の金型分割面が型開閉方向と平行となる、この図6(e)の最大型開き位置において製品取り出しを行なわせても良い。その場合、保持させた多層成形品の製品取り出しや金型キャビティのメンテナンスが容易である。また、この図6(e)の状態において、図示しない多層成形品が取り出された第2回転金型33には次サイクルの準備が成されると共に、第1回転金型32には冷却固化が完了した1次成形体を保持させているものとする。
【0041】
次に、図7(a)に示すように、位置決め機構15を解除させ、第1のリンク14のヘッド側に油圧を立て第1のリンク14の最大長さ状態を維持させる。引き続き逆回転防止機構14aを作動させ、回転金型部30が反時計回りに回るように第1のリンク14の第1連結部分6a回りの摺動範囲を制限させる。具体的には、逆回転防止機構14aの油圧シリンダ等で第1のリンク14を反時計回りの方向に押圧させると共に、対向する側の油圧シリンダ等を油圧フリーで摺動範囲制限無しの状態にさせる。逆回転防止機構14aの先端の黒丸は、逆回転防止機構14aが作動中であることを意味する。この状態から可動盤6の型閉じ動作を開始させる。第1のリンク14等の破損を防止するため、型閉じ動作開始時の型閉じ速度及び型閉じ力は十分に小さいものとし、図7(b)に示すように、回転金型部30の反時計回りの回転動作が開始され、この回転動作がセンサ等で確認された後に、これら型閉じ速度及び型閉じ力を設定値まで徐々に上げていくよう制御されることは言うまでもない。また、回転金型部30の反時計回りの回転動作開始が確認された後は、逆回転防止機構14aによる第1のリンク14の押圧を停止させると共に、油圧をフリーにさせ摺動範囲制限無しの状態に戻す。
【0042】
可動盤6の型閉じ動作を継続させ、第1ガイドブロック部13aが円軌道12bから平行直線軌跡12cに到達すると、図7(c)に示すように回転金型部30が図6(e)の状態から更に90度反時計回りに回転された位置となり、回転金型部30が図6(c)の状態から180度反時計回りに回転された状態となる。この位置に回転金型部30が回転されるまでに可動盤の型閉じ速度を十分に減速させるか型閉じ動作を一時停止させ、型開閉方向に直交する位置決め機構15を作動させ回転金型部30の位置をロックさせる。引き続いて第1のリンク14を構成する油圧シリンダ等のアクチュエータのヘッド側の油圧をフリーにさせ収縮自在の状態にさせる。そして、可動盤6の型閉じ速度を徐々に増速させるか一時停止させていた型閉じ動作を開始させると、図7(d)に示すように、第1のリンク14の全長が収縮されながら、位置をロックされた回転金型部30の第1回転金型32に対して可動金型40が型閉じされる。この、可動金型40と回転金型32とが型閉じされる直前、あるいは型閉じと同時に位置決め機構15をフリーにする。
【0043】
可動盤6の型閉じ動作を継続させ、可動金型40と回転金型32とを一体で型閉じさせる。可動金型40と回転金型32とが型閉じされる直前、あるいは型閉じと同時に、回転金型部30が可動盤6から離間しないように第1のリンク14を構成する油圧シリンダ等のアクチュエータのロッド側の油圧を立てると、回転金型部30が可動盤6との型閉じの衝撃で固定盤5の方向にバウンドしたりせず、一体で型閉じされるため、円軌跡12bから平行直線軌跡12cへスムーズに案内させることができる。そして、そのまま可動盤6の型閉じ動作を継続させ、図7(e)に示すように、第2回転金型33と固定金型20とが型閉じされる。第2回転金型33と固定金型20とが型閉じされる直前、あるいは型閉じと同時に第1のリンク14を構成する油圧シリンダ等のアクチュエータのロッド側の油圧をフリーにさせることにより、引き続き行われる型締めによる第1のリンク14の破損を防止することができる。
【0044】
図7(e)に示す型閉じ状態から図示しない型開閉装置7により型締め力を付与させた後、新たに組み合わされた固定金型20と第2回転金型33とで形成される金型キャビティに射出充填させ1次成形体を成形させると共に、可動金型40と第1回転金型32と第1回転金型32に保持された1次成形体とで形成される金型キャビティに射出充填させ1次成形体の少なくとも1部分に2次成形体が積層成形された多層樹脂成形品を成形させる。このように、可動盤6の型開閉動作により回転金型部30がスライドガイド部12の案内軌跡12aに案内され、型開閉方向の移動動作と反時計回り及び時計回りの回転動作とが交互に繰り返され、連続して多層成形品を成形させることができる。一般的な多層成形だけでなく、前述した第1のリンク14による回転金型部30と可動盤6との一体動作を活用すれば、型開閉装置が型開き位置制御精度に優れたトグル式型開閉装置の場合、固定金型20と回転金型部30との型開き量を高精度で制御することができ、この金型間で拡張発泡成形方法や射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法を行わせることもできる。
【0045】
このように、本発明に係る回転金型支持装置10は、案内軌跡12aを備えたスライドガイド部12と、スライドガイド部12に案内される回転金型支持部11と、回転金型支持部11と可動盤6とを連結する第1のリンク14という、少ない数量の部材構成で回転金型部30の型開閉動作や回転動作を行わせることができるので、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、射出成形機への追加改造を少なくすることができる。また、回転金型部30の型開閉方向の移動動作の案内のために、関連部品にタイバーを貫通させる等、射出成形機のタイバーを使用しない形態から、射出成形機の型開閉装置を解体する必要がなく、該案内用のスライドガイド手部12から、スライドガイド部12に案内される第1ガイドブロック部13a(第2ガイドブロック部13b)、第1ガイドブロック部13aと可動盤6とを連結する第1のリンク14、両ガイドブロック上に取り付けられる回転金型支持部11までが、それぞれ別部品として、ほぼこの順番で取り付け可能なためこれら部材の後付けが容易である。これは、射出成形機の追加改造を容易にする上で非常に有利である。
【0046】
更に、本発明に係る回転金型支持装置10は、基本的に射出成形機のマシンベース部8に配置され、回転金型部30がその回転金型支持部10上に着脱自在に取り付けられる構造のため、回転金型部30とその型開閉動作や回転動作を行わせる機構とが完全に独立しており、且つ、これらの機構が全て、回転金型部30下方に配置されるため、固定金型20と回転金型部30と可動金型40とを一組の金型として型開閉装置から射出成形機の上方から着脱することができるため、金型交換が容易である。また、射出成形機の長手方向に対する両側面側からも金型の着脱や金型へのアクセスを妨げる要素がないことは言うまでもない。
【実施例2】
【0047】
図8及び図9を参照しながら、本発明の実施例2を説明する。図8及び図9は本発明の実施例2に係る回転金型支持装置の動作説明図である。実施例2における実施例1との具体的相違点は、第1のリンクの形態であって、実施例1の油圧シリンダ等のアクチュエータで構成され伸縮自在な第1のリンク14に変えて、1つのリンク節143を有するリンク部材141とリンク部材142とから構成され、連結距離伸縮機構が、リンク節143におけるリンク部材141とリンク部材142の屈曲角度を任意で保持・開放させるように構成されている第1のリンク140が採用される点である。それ以外の回転金型支持装置の構成や多層成形方法は実施例1と基本的に同じ為、図8及び図9において同じ構成要件については同じ符号を付し、実施例1との相違点についてのみ説明する。
【0048】
図8(a)に示すように、型開きが開始される状態において、1つのリンク節143を有するリンク部材141とリンク部材142とから構成される第1のリンク140は、リンク部材141の一端が可動盤6下部の第1連結部分6aと回転可能に連結されると共に、リンク部材142の一端が第1ガイドブロック部13aと回転可能に連結されている。そしてそれぞれのリンク部材の他端が、連結距離伸縮機能を有するリンク節143で屈曲自在に連結されている。この状態でリンク節143におけるそれぞれのリンク部材の連結は開放状態である。
【0049】
図示しない型開閉装置7により可動盤6の型開き動作が開始されると、第1のリンク140のリンク節143における屈曲角度が180度、すなわち、一直線になるまで可動金型40が第2回転金型33から型開きされる。型開き動作を継続させ、第1のリンク140が一直線になるまで伸長されると、図8(b)に示すように第1のリンク140が一直線状態のまま、平行直線軌跡12cに案内され、回転金型部30の型開き動作が開始され、固定金型20から第1回転金型32が型開きされる。
【0050】
引き続き可動盤6の型開き動作を継続させ、図8(c)に示すように、第1ガイドブロック部13aが平行直線軌跡12cから円軌跡12bに到達すると、図8(d)に示すように第1ガイドブロック部13aは円軌跡12bに案内され、第2ガイドブロック部13bも平行直線軌跡12cから円軌跡12bに案内され、回転金型部30が円軌跡12bの中心周りに反時計回りに回転される。
【0051】
更に可動盤6の型開き動作を継続させ、第1ガイドブロック部13aが円軌道12bと射出成形機の長手方向中心線との交点まで案内されると最大型開き位置となり、図8(e)に示すように、回転金型部30が図8(c)の状態から90度反時計回りに回転された位置となる。この位置において可動盤6の型開きを停止させると共に、型開閉方向の位置決め機構15を作動させ回転金型部30の位置をロックさせる。実施例1と同様に、第1のリンク140等の破損を防止するため、可動盤6の最大型開き位置への到達前に十分に型開き速度を十分に減速させること、第1のリンク140を構成するリンク部材141やリンク部材142に、あるいはそれぞれのリンク部材の連結部分に、型開き方向への移動を所定量許容する機構等の配慮が成されることは言うまでもない。
【0052】
次に、図9(a)に示すように、位置決め機構15を解除させ、第1のリンク140のリンク節143におけるそれぞれのリンク部材の連結を保持(ロック)させ、第1のリンク140の一直線状態を維持させる。図中のリンク節143が黒丸で図示されているのはリンク節143のそれぞれのリンク部材の連結が保持されていることを意味する。引き続き逆回転防止機構14aを作動させ、回転金型部30が反時計回りに回るように第1のリンク140の第1連結部分6a回りの摺動範囲を制限させる。具体的な動作は実施例1と同じである。この状態から可動盤6の型閉じ動作を開始させ、図9(b)に示すように回転金型部30を反時計回りに回転させる。図示しないセンサ等で回転金型部30の反時計回りの回転動作開始が確認された後は、逆回転防止機構14aによる第1のリンク140の押圧を停止させると共に、油圧をフリーにさせ摺動範囲制限無しの状態に戻す。
【0053】
可動盤6の型閉じ動作を継続させ、第1ガイドブロック部13aが円軌道12bから平行直線軌跡12cに到達すると、図9(c)に示すように回転金型部30が図8(e)の状態から更に90度反時計回りに回転された位置となり、回転金型部30が図8(c)の状態から180度反時計回りに回転された状態となる。この位置に回転金型部30が回転されるまでに可動盤の型閉じ速度を十分に減速させるか型閉じ動作を一時停止させ、型開閉方向に直交する位置決め機構15を作動させ回転金型部30の位置をロックさせる。引き続いて、保持されている第1のリンク140のリンク節143のそれぞれのリンク部材の連結を開放させると共に、リンク節143を射出成形機の長手方向中心線側に屈曲させるように逆回転防止機構14aを作動させる。図示しないセンサ等でリンク部材の屈曲が確認された後、逆回転防止機構14aの油圧をフリーにさせ摺動範囲制限無しの状態に戻す。そして、可動盤6の型閉じ速度を徐々に増速させるか一時停止させていた型閉じ動作を開始させると、図9(d)に示すように、第1のリンク140が屈曲されながら、位置をロックされた回転金型部30の第1回転金型32に対して可動金型40が型閉じされる。この、可動金型40と回転金型32とが型閉じされる直前、あるいは型閉じと同時に位置決め機構15をフリーにする。
【0054】
可動盤6の型閉じ動作が継続され、可動金型40と第1回転金型32とを一体で型閉じさせる。可動金型40と第1回転金型32とが型閉じされる直前、あるいは型閉じと同時に、回転金型部30が可動盤6から離間しないように第1のリンク140のリンク節143のそれぞれのリンク部材の連結を保持させると、回転金型部30が可動盤6との型閉じの衝撃で固定盤5の方向にバウンドしたりせず、一体で型閉じされるため、円軌跡12bから平行直線軌跡12cへスムーズに案内させることができる。そして、そのまま可動盤6の型閉じ動作を継続させ、図9(e)に示すように、第2回転金型33と固定金型20とが型閉じされる。第2回転金型33と固定金型20とが型閉じされる直前、あるいは型閉じと同時に第1のリンク140のリンク節143のそれぞれのリンク部材の連結の保持をフリーにさせることにより、引き続き行われる型締めによるリンク節143の破損を防止することができる。
【0055】
図9(e)に示す型閉じ状態から図示しない型開閉装置7により型締め力を付与させた後、新たに組み合わされた固定金型20と第2回転金型33とで形成される金型キャビティに射出充填させ1次成形体を成形させると共に、可動金型40と第1回転金型32と第1回転金型32に保持された1次成形体とで形成される金型キャビティに射出充填させ1次成形体の少なくとも1部分に2次成形体が積層成形された多層樹脂成形品を成形させる。このように、可動盤の型開閉動作により回転金型部30がスライドガイド部12に案内され反時計回りと時計回りを交互に繰り返し、連続して多層成形品を成形させることができる。
【実施例3】
【0056】
図10及び図11を参照しながら、本発明の実施例3を説明する。図10は本発明の実施例3に係る回転金型支持装置の概略平面図である。図11は本発明の実施例3に係る回転金型支持装置の動作説明図である。実施例3における実施例1及び実施例2との具体的相違点も、第1のリンクの形態であって、可動盤6の第1連結部分6aと第1ガイドブロック部13aとを結ぶ直線に対して対称に配置された2つのリンク、リンク241及びリンク242と、第1連結部分6a及び第1ガイドブロック部13aのそれぞれの連結部分を中心に回転自在に配置され、リンク241及びリンク242の両端がそれぞれの連結部分から等距離離間した位置で回転自在に接続される2つの接続部材、接続部材245及び接続部材246と、で構成される第1のリンク240が採用される点である。この第1のリンク240はリンク241及びリンク242を任意で独立して伸縮させることにより、逆回転防止機構としても機能させることができる。それ以外の回転金型支持装置の構成や多層成形方法は実施例1及び実施例2と基本的に同じ為、図10及び図11において同じ構成要件については同じ符号を付し、実施例1及び実施例2との相違点である逆回転防止機構としての機能のみ説明する。
【0057】
図10は可動盤6が最大型開き位置に到達し型開き動作が完了した状態を示す。実施例1においては図6(e)、実施例2においては図8(e)に相当する状態である。可動盤6は停止しており、回転金型部30は位置決め機構15により、第1回転金型32及び第2回転金型33の金型分割面が型開閉方向と平行になった位置でロックされている。第1のリンク240のリンク241及びリンク242は油圧シリンダ等の同仕様のアクチュエータで構成され伸縮自在である。リンク241及びリンク242は共に、ヘッド側が第1連結部分6aを中心に回転自在に配置された接続部材245に第1連結部分6aから等距離離間した位置で回転自在に接続され、ロッド側が第1ガイドブロック部13aを中心に回転自在に配置された接続部材246に第1ガイドブロック部13aから等距離離間した位置で回転自在に接続されている。図10に示す最大型開き位置において、リンク241及びリンク242はヘッド側及びロッド側共に油圧フリーで収縮自在の最大長さ状態であり、実施例1及び実施例2のような逆回転防止機構14aは装備されていない。また、図を簡単にするためにリンク241及びリンク242は、第1連結部分6aと第1ガイドブロック部13aとを結ぶ直線に対して共に平行、すなわち、第1連結部分6a及び第1ガイドブロック部13aからの両リンク両端の距離が等距離離としているが、両リンクの配置はこれに限定されるものではなく、この最大型開き位置において第1連結部分6aと第1ガイドブロック部13aとを結ぶ直線に対して対称に配置されていれば良い。
【0058】
次に、図11を参照しながら、第1のリンク240の逆回転防止機構について説明する。図10の状態から最大長さ状態のリンク241のヘッド側に油圧を立てリンク241の最大長さ状態を維持させる。一方、リンク242はヘッド側及びロッド側共に油圧フリーで収縮自在の最大長さ状態のままとし、回転金型部30の位置は位置決め機構15によりロックされているものとする。この状態から図11(a)に示すように、図示しない型開閉装置により可動盤6の型閉じ動作を開始させる。
【0059】
型閉じ動作が開始されると第1連結部分6aが、ロックされて移動されない第1ガイドブロック部13a側に移動される。しかしながら、リンク241は最大長さ状態が維持されるので、第1連結部分6aの移動量は図11(b)に示すように接続部材245及び接続部材246のそれぞれの連結部分を中心とした回転により、リンク242を収縮させることにより吸収される。接続部材245及び接続部材246が所定角度回転された後、回転金型部30の位置決め機構15のロックを解除させると共に、リンク242のヘッド側にリンク241のヘッド側と同じ油圧を立てリンク242の収縮を停止させる。
【0060】
図11(b)の接続部材245及び接続部材246の所定角度を型開閉方向に直交する方向からθとして、第1のリンク240の各連結部分にかかるベクトルを図示したものが図11(c)である。リンク241及びリンク242は、共にヘッド側に同じ油圧が立っているため接続部材245及び接続部材246は回転せず、両リンクのロッド側が接続されている接続部材246の各接続部分には型開閉方向に同じベクトルa及びベクトルbが生じる。このベクトルa及びベクトルbの接続部材246の長手方向の分解ベクトルがベクトルa’及びベクトルb’となる。すなわち、接続部材246の接続部分である第1ガイドブロック部13aには接続部材246の長手方向にこれら分解ベクトルの和である合成ベクトルa’+b’が生じる。ここで、第1ガイドブロック部13aは円軌跡12bに案内されているため、第1ガイドブロック部13aには円軌跡12bの接線方向に合成ベクトルa’+b’の分解ベクトル(a’+b’)cosθが作用し回転金型部30を確実に時計回りに回転させることができる。同様にリンク242の最大長さ状態を維持させれば回転金型部30を反時計回りに回転させるベクトルを得ることができる。所定角度θについては、射出成形機や型開閉装置、あるいは使用される金型の大きさや重量等に応じて、回転金型部30の回転動作時に第1のリンク240に関連する機構部分が破損せず、任意の回転方向に確実に回転させることができる角度が適宜選択されれば良い。
【0061】
このままリンク241及びリンク242のヘッド側に同じ油圧を立て、それぞれのリンク長さを維持させたまま回転金型部30を時計回りに回転させる。回転金型部30が図10に示す状態から更に90度回転された後、図11(d)に示すように、位置決め手段15を作動させ回転金型部30の位置をロックさせると共に、リンク241のみヘッド側の油圧をフリーにさせ収縮自在状態にさせれば、接続部材245及び接続部材246が回転され、ヘッド側に油圧が立っているリンク242が伸長され、リンク241が収縮される。
【0062】
図11(d)の状態から、図11(e)に示すように、リンク241及びリンク242が同じ長さになった時点でリンク242のヘッド側の油圧をフリーにさせ、リンク241及びリンク242をヘッド側及びロッド側共に油圧フリーで伸縮自由状態とする。リンク242の伸長方向の動作を確実に停止させるため、両リンクのロッド側に同じ油圧を立てるようにしても良い。また、図11(d)から図11(e)に示す両リンクの長さを合わせる過程においては、型閉じ速度を十分に下げて行われることが好ましい。
【0063】
図示は割愛するが、図11(e)の状態から型閉じ動作を継続させると、両リンクと両接続部材とで形成される長方形を維持させながら両リンクが均等に収縮され、第1回転金型32に可動金型40が型閉じされる。可動金型40と第1回転金型32とが型閉じされる直前、あるいは型閉じと同時に位置決め機構15をフリーにすると回転金型部30の型閉じ動作が開始される。実施例1と同様のタイミングで第1のリンク240のリンク241及びリンク242のロッド側の油圧を立て、回転金型部30と可動盤6とを一体で型閉じさせても良い。このように、第1のリンクを伸縮可能な同仕様の2つのリンクと、これらリンクを接続させる接続部品とで構成させれば、それぞれのリンクを任意で独立して伸縮させることにより、逆回転防止機構としても機能させることができる。
【実施例4】
【0064】
図12を参照しながら、本発明の実施例4を説明する。図10は本発明の実施例4に係る回転金型支持装置の動作説明図である。実施例4における実施例1、実施例2及び実施例3との具体的相違点は、可動盤6と第1ガイドブロック部13aとを連結する第1のリンク14とは別に、固定盤5と第2ガイドブロック部13bとを連結する第2のリンク18が採用される点である。
【0065】
この第2のリンク18は、回転金型支持部11の第1のリンク14に対して、円軌跡12bの直径と同じ距離だけ離間する配置、すなわち、円軌跡の中心に対して対称の位置となる第2ガイドブロック部13bと可動しない固定盤5とを連結するため、平行直線軌跡12cにおける回転金型支持部11の型開閉動作の際には、可動盤6の型開閉速度に同調させて第2のリンク18を伸長・伸縮させることにより、第1のリンク14と連結されていない第2ガイドブロック部13bに、第1のリンク14による型開閉力と同じ方向の型開閉力を付与させる。また、円軌跡12bにおける回転動作の際には、可動盤6の型開閉動作に同調させて第2のリンク18を収縮・伸長させることにより、第1のリンク14と連結されていない第2ガイドブロック部13bに第の1リンク14と同じ回転方向の回転力を付与させ、回転金型部の型開閉動作や回転動作を補助させることができる。それ以外の回転金型支持装置の構成や多層成形方法は実施例1から実施例3と基本的に同じ為、実施例1から実施例3との相違点である回転金型部30の型開閉動作や回転動作を補助する機能のみ説明する。説明を簡単にするために、第2のリンク18は実施例1の第1のリンク14と同様に油圧シリンダ等のアクチュエータで構成され伸縮自在であるものとし、図12の(a)から(c)及び(f)、(g)は実施例1の図6の該当するアルファベットの図と同じ状態を示し、同じ構成要件については同じ符号を付すものとする。
【0066】
図12(a)は射出充填及び金型キャビティ内の樹脂成形品の冷却固化が完了し型開きが開始される状態を示す。実施例1の第1のリンク14に加えて、第2ガイドブロック部13bと固定盤5下部の射出成形機の長手方向中心線上にある第2連結部分5aとが第2のリンク18により連結されている。第2のリンク18もヘッド側が固定盤5下部の射出成形機の長手方向中心線上にある第2連結部分5aと、ロッド側が第2ガイドブロック部13bとそれぞれ回転可能に連結されていると共に、同じく固定盤5下部に配置された油圧シリンダ等から構成される逆回転防止機構18aによりその摺動範囲を任意で制限される。第2のリンク18もヘッド側及びロッド側共に油圧フリーで伸縮自在状態、逆回転防止機構18aも油圧フリーで摺動範囲制限無しの状態である。
【0067】
図示しない型開閉装置7により可動盤6の型開き動作が開始され、引き続いて図12(b)に示すように、回転金型部30の型開き動作が開始されると、第2のリンク18が最大長さに伸長するまで回転金型部30の第1回転金型32が固定金型20から型開きされる。このとき、第2のリンク18のヘッド側に油圧を立て、回転金型部30の型開き速度と同調させて第2のリンクの全長を伸長させることにより、第2ガイドブロック部13bにも型開き力を付与させ、回転金型部30の並行直線軌跡12cにおける型開き動作を補助させることができ、第1のリンク14のみの型開き動作と比較して、よりバランスを維持させた状態で回転金型部30の型開き動作を行わせることができる。
【0068】
次に、図12(c)に示すように、第1ガイドブロック部13aが円軌跡12bと平行直線軌跡12cとの交点(接点)に到達した後、第1ガイドブロック部13aが最大長さに伸長された第1のリンク14により反時計回りの回転力を付与されることは先に説明したとおりである。ここで、第2のリンク18は、第2ガイドブロック部13bが円軌跡12bと平行直線軌跡12cとの交点(接点)に到達した時に最大長さとなるようにストロークを選択させれば、第1ガイドブロック部13aに反時計回りの回転力が付与されるタイミングに合わせて第2のリンク18のロッド側に油圧を立て、回転金型部30の回転速度と同調させて第2のリンクの全長を収縮させることにより、第2ガイドブロック部13bにも反時計回りの回転力を付与させ、回転金型部30の円軌跡12bにおける回転動作を補助させることができ、第1のリンク14のみの回転動作と比較して、よりバランスを維持させた状態で回転金型部30の回転動作を行わせることができる。
【0069】
また、図12(f)に示すように、最大型開き位置から可動盤6の型閉じ動作を開始させるとき、第1のリンク14のヘッド側に油圧を立て第1のリンク14の最大長さ状態を維持させると共に、逆回転防止機構14aを作動させ、回転金型部30が反時計回りに回るように第1のリンク14の第1連結部分6a回りの摺動範囲を制限させることは先に説明したとおりである。この第1のリンク14と同じ動作を第2のリンク18にも行わせることにより、第2ガイドブロック部13bにも反時計回りの回転力を付与させ、回転金型部30の円軌跡12bにおける回転動作を補助させることができる。
【0070】
更に、図12(g)に示すように、最大長さ状態を維持させた第1のリンク14により第1ガイドブロック部13aに反時計回りの回転力が付与されることは先に説明したとおりである。ここで、図10(f)の状態から回転金型部30が反時計回りの回転動作開始がセンサ等で確認された後、第2のリンク18のヘッド側に油圧を立て、回転金型部30の回転速度と同調させて第2のリンクの全長を伸長させることにより、第2ガイドブロック部13bにも反時計回りの回転力を付与させ、回転金型部30の円軌跡12bにおける回転動作を補助させることができ、第1のリンク14のみの回転動作と比較して、よりバランスを維持させた状態で回転金型部30の回転動作を行わせることができる。
【0071】
このように、第1のリンク14に加えて第2のリンク18を採用することにより、回転金型部30の型開閉動作及び回転動作を補助させることができ、これら動作を第1のリンク14のみで行わせる場合と比較して、よりバランスを維持させた状態で行わせることができる。実施例4においては、説明を簡単にするため、第2のリンクを実施例1で説明した第1のリンク14と同様の油圧シリンダ等のアクチュエータで構成され伸縮自在であるものとしたが、実施例2や実施例3の第1のリンクと同様なリンクが採用されても良い。また、第1のリンクと第2のリンクとが必ずしも同じ構造のリンクである必要もない。
【0072】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、実施例1において、第1のリンク14はヘッド側が可動盤6下部の射出成形機の長手方向中心線上にある第1連結部分6aと、ロッド側が第1ガイドブロック部13aとそれぞれ回転可能に連結されているものとしたが、ヘッド側とロッド側の連結は逆でも良い。また、実施例1、実施例2及び実施例4において、逆回転防止機構を固定盤や可動盤の下部に配置される油圧シリンダ等から構成されるものとしたが、逆回転防止機構はその機能があれば、スライドガイド部やマシンベース部に配置されても良い。逆回転防止機構の別の形態として、第1のリンク及び第2のリンクの回転可能な連結部分(ガイドブロック部や可動盤及び固定盤との連結部分)や実施例2のリンク節において、回転方向や回転角度を任意で制限する公知の機構であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る回転金型支持装置及び多層成形方法により、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、射出成形機への追加改造を最小にすることができ、更には、1組の金型として型開閉装置から容易に着脱することができることは説明したとおりである。特に、市販の追加用射出ユニットにより、汎用の単層射出成形機を容易に多層射出成形機に改造できるということは、容易に単層射出成形機に戻せるという効果も有する。すなわち、高価な多層成形専用の射出成形機を導入する必要がなく、需要に応じて単層射出成形装置を単層成形用と多層成形用に低コストで使い分けることが可能となり、樹脂成形品の製造業者にとって産業上利用価値が極めて高い。また、本発明に係る回転金型支持装置により、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、射出成形機への追加改造を最小にすることができるとしたが、本発明に係る回転金型支持装置を備える多層成形用射出成形機を新規に設計・製造する場合においても、汎用の単層成形用射出成形からの設計変更部分は少なく、新たに追加される部材も少ないため、これらの設計・製造コストの増大を抑えることができる。そのため、樹脂成形品の製造業者だけでなく、射出成形機の製造業者にとっても産業上利用価値が極めて高い。
【符号の説明】
【0074】
1 射出成形機
5 固定盤
5a 第2連結部分
6 可動盤
6a 第1連結部分
12 スライドガイド部
12a 案内軌跡
12b 円軌跡
12c 平行直線軌跡
13a 第1ガイドブロック部
13b 第2ガイドブロック部
14 第1のリンク
14a 逆回転防止機構
18 第2のリンク
18a 逆回転防止機構
20 固定金型
30 回転金型部
40 可動金型
140 第1のリンク
141 リンク部材
142 リンク部材
143 リンク節
240 第1のリンク
241 リンク
242 リンク
245 接続部材
246 接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と可動盤との間に配置され、1つの円軌跡と、それぞれの一端が前記円軌跡に連続して接するように接続される型開閉方向に平行な1組の平行直線軌跡とで同一平面に構成される案内軌跡を有するスライドガイド部と、
前記スライドガイド部の前記案内軌跡に案内される2つのガイドブロック部と、
前記ガイドブロック部が、前記円軌跡の直径と同じ距離だけ離間するように配置され、前記スライドガイド部の前記平行直線軌跡においては型開閉方向に平行に案内され、前記円軌跡においては前記円軌跡の中心を通る回転軸回りに回転するように案内される回転金型支持部と、
前記ガイドブロック部の一方と前記可動盤との間を連結すると共に、それぞれの連結部分間の距離を任意で伸縮させる連結距離伸縮機能を備えた第1のリンクと、
を備えることを特徴とする回転金型支持装置。
【請求項2】
前記円軌跡において前記回転金型支持部を任意の方向に回転させるように、前記第1のリンクの摺動範囲を任意で制限する逆回転防止機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の回転金型支持装置。
【請求項3】
前記第1のリンクが少なくとも1つのリンク節を有する少なくとも2つのリンク部材から構成され、前記連結距離伸縮機能が、前記リンク節における前記2つのリンク部材の屈曲角度を任意で保持・開放させるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか1項に記載の回転金型支持装置。
【請求項4】
前記第1のリンクが、それぞれの前記連結部分を結ぶ直線に対して対称に配置された2つのリンクと、前記連結部分を中心に回転自在に配置され、前記2つのリンクの両端が前記連結部分から等距離離間した位置で回転自在に接続される2つの接続部材とで構成され、前記逆回転防止機構が、前記2つのリンクを任意で独立して伸縮させるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転金型支持装置。
【請求項5】
前記ガイドブロック部の他方と前記固定盤との間を連結すると共に、それぞれの連結部分間の距離を任意で伸縮させる連結距離伸縮機能を有する第2のリンクを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転金型支持装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転金型支持装置を備えることを特徴とする射出成形機。
【請求項7】
前記固定盤に取り付けられた固定金型と、前記可動盤に取り付けられた可動金型と、前記回転金型支持部に取り付けられ、前記固定金型及び前記可動金型と組み合わされて金型キャビティが形成される2つの金型分割面を有する回転金型部とを型締めさせて、前記固定金型及び前記可動金型のいずれか一方の金型と、前記回転金型部の一方の金型分割面との間に形成される金型キャビティに射出充填させて1次成形体を成形させる1次成形工程と、
前記1次成形体を前記回転金型部に保持させた状態で前記可動盤を型開きさせ、前記第1のリンクにより、前記回転金型部を前記固定金型から型開きさせると共に、前記回転金型部の金型分割面を型開閉方向と略平行になるまで回転させる型開き工程と、
前記可動盤を型閉じさせ、前記第1のリンクと前記逆回転防止機構とにより、前記回転金型部の前記2つの金型分割面を1次成形工程と異なる金型に対向する位置まで回転させると共に、前記回転金型部を前記固定金型に型閉じさせた後、引き続いて前記可動金型を前記回転金型部に型閉じさせる型閉じ工程と、
前記固定金型と前記可動金型と前記回転金型部とを型締めさせて、前記回転金型部に保持させた前記1次成形体と、前記固定金型及び前記可動金型の他方の金型とで形成される金型キャビティに射出充填させて1次成形体の少なくとも1部分に2次成形体を積層成形させる2次成形工程と、
からなることを特徴とする請求項6に記載の射出成形機を使用する多層成形方法。
【請求項8】
前記第2のリンクにより、前記回転金型部の型開閉動作及び回転動作の少なくとも一方の動作を補助させることを特徴とする請求項7に記載の多層成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−192550(P2012−192550A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56478(P2011−56478)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】