説明

回転防止装置およびこの回転防止装置を使用した地中密度の算出方法

【課題】精度の高い地中密度を算出することができる回転防止装置およびこの回転防止装置を使用した地中密度の測定方法を提供することである。
【解決手段】地表面上から地中に空けた縦孔20に吊り下げて該縦孔20の孔径Lおよび孔壁面に形成された空隙部20a、20bの奥行長La、Lbを測定する孔径測定器50と、該縦孔20の周りの密度検層値を測定する密度検層測定器60に装着可能な回転防止装置10であって、前記地表面上に設置の支持架台12と、前記支持架台12に対して昇降可能な状態で回転しないように取り付けられたロッド部材14とからなり、前記ロッド部材14の他端部は、前記孔径測定器50および前記密度検層測定器60に対して脱着可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔径測定器と密度検層測定器に装着可能な回転防止装置およびこの回転防止装置を使用した地中密度の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地中密度を算出する方法として、図8に示す方法が既に知られている。この方法では、まず、ワイヤ22に吊り下げられた孔径測定器50を縦孔20の底面まで降ろしていく。そして、ウインチ28によってワイヤ22を巻き取ることで孔径測定器50を縦孔20の底面から地表面まで引き上げながら孔径測定器50のアーム54の開き角度値を測定する。測定された角度値は、ワイヤ22内部のケーブル(図示しない)を介して制御装置26へ送られる。そして、制御装置26は、この角度値から孔径を算出する。また、ワイヤ22の巻取りによって滑車24が回転するため、制御装置26は、この回転量を検出することで孔径測定器50の深さ位置を検出できる。これにより、制御装置26は、縦孔20の深さ位置に応じた孔径を測定できる。続いて、孔径測定器50を密度検層測定器60(図8において、図示しない)に取り替えて、上記と同様にして縦孔20の深さ位置に応じた密度検層値を測定する。この密度検層測定器60とは、ガンマ線を発信してその発信したガンマ線を受信することで地中の密度検層値を測定できるものである。そして、図示しないコンピュータによって、これら測定された孔径と密度検層値とから地中密度は算出されている。
【特許文献1】特開平5−33575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した孔径測定器50は、孔径の一方向の直径のみを測定できるものであり、孔径の周方向を一様(360°)に測定できるものではなかった。また、孔径測定器50はワイヤ22によって吊り下げられているため、ワイヤ22に捩れが生じると孔径測定器50は縦孔20に対して回転してしまうことがあった。一方、密度検層測定器60も孔径測定器50と同様に、孔径の周方向を一様に測定できるものではなく、ワイヤ22に捩れが生じると密度検層測定器60は縦孔20に対して回転してしまうことがあった。そのため、孔径測定器50の測定方向と密度検層測定器60の測定方向とが一致するように孔径測定器50と密度検層測定器60を縦孔20に吊り下げていても、ワイヤ22の捩れによって、孔径の測定方向と密度検層値の測定方向とが不一致となることがあった。これにより、例えば、縦孔20の壁面の一部に空隙部20a(20b)が形成されている場合、孔径の測定は空隙部20a(20b)を含むように測定していても、密度検層値の測定はその空隙部20a(20b)を含まないように測定していると、正確な地中密度を算出することができなかった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、精度の高い地中密度を算出することができる回転防止装置およびこの回転防止装置を使用した地中密度の算出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、地表面上から地中に空けた縦孔に吊り下げて該縦孔の孔径および孔壁面に形成された空隙部の奥行長を測定する孔径測定器と、該縦孔の周りの密度検層値を測定する密度検層測定器に装着可能な回転防止装置であって、前記地表面上に設置の支持架台と、前記支持架台に対して昇降可能な状態で回転しないように取り付けられたロッド部材とからなり、前記ロッド部材の他端部は、前記孔径測定器および前記密度検層測定器に対して脱着可能となっている構成である。
地中密度を測定する際にこの回転防止装置を使用すると、孔径の測定方向と密度検層値の測定方向とを一致させて測定できるため、精度の高い地中密度を算出することができる。また、この回転防止装置は、従来汎用の孔径測定器および密度検層測定器に装着できるため、新たに、孔径測定器および密度検層測定器を必要とすることなく安価に実施することができる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転防止装置を使用した地中密度の算出方法であって、前記縦孔の特定の径方向における該孔壁面に形成された空隙部の奥行長を測定し、前記特定の径方向と同方向における密度検層値を測定し、その測定した密度検層値を前記空隙部の奥行長に基づいて補正し、その補正した数値と前記孔径とから地中密度を算出する地中密度の算出方法である。
この方法によれば、空隙部を考慮した密度検層値を使用して地中密度を算出するため、より精度の高い地中密度を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の実施例を、図1〜7を用いて説明する。
図1は、本発明の回転防止装置10を使用した地中密度の測定方法を説明する全体図であり、回転防止装置10を孔径測定器50に接続させた状態を表している。図2(A)は、支持架台12の拡大図であり、同(B)は同(A)のA−A断面を表している。図3(A)〜(D)は、ロッド部材14と孔径測定器50との接続を順に説明する図である。図4は、縦孔20の東西方向の孔径を測定している図である。図5は、縦孔20の東方向の壁面に形成された空隙部20bの奥行長Lbを算出する図である。図6は、縦孔20の西方向の壁面に形成された空隙部20aの奥行長Laを算出する図である。図7は、縦孔20の東方向の密度検層値を測定している図である。なお、以下の説明にあたって、従来技術で説明した部材と同一の部材には、図面において同一符号を付すことで、重複する説明は省略する。
【0008】
本発明に係る地中密度の算出方法は、従来技術で説明した地中密度の算出方法、すなわち孔径測定器50および密度検層測定器60を使用して孔径と密度検層値を測定し、それら測定値から地中密度を算出する方法において、孔径測定器50および密度検層測定器60が縦孔20に対して回転しないように回転防止装置10を追加した状態で地中密度を算出する方法である。そのため、回転防止装置10以外の構成は、従来技術と同じ構成であり、従来技術には登場しない回転防止装置10の構成についてのみ説明する。
【0009】
図1に示すように、回転防止装置10は、地表面上に設置の支持架台12と、この支持架台12に対して昇降可能な状態で回転しないように取り付けられたロッド部材14と、このロッド部材14の下端部を孔径測定器50の上端部と脱着可能にさせるコネクタ16とに大別され構成されている。
【0010】
図2(A)に示すように、支持架台12は、板部材12aと、この板部材12aの下面に回転可能に取り付けられた3本の脚部材12bとからなっており、縦孔20上方の地表面上に設置されている。この板部材12aの中心には、十字状にスリット12cが切り欠かれている。そして、図2(B)に示すように、このスリット12cには、断面四角形状のロッド部材14が嵌め込み可能となっている。このスリット12cに対してロッド部材14を嵌め込むと、ロッド部材14は支持架台12に対して昇降可能となり且つ回転しない構成となる。なお、説明の便宜上、このスリット12cが東西南北を向くように板部材12aを回転させ支持架台12を設置しているものとする。また、このロッド部材14は、例えば市販の断面四角形状のパイプを長手方向に連結させたものである。
【0011】
図3(A)に示すように、コネクタ16は2分割構造となっており、その内部には中空部を有ししている。また、中空部の内面形状は、孔径測定器50の上端部の凹凸に対応した形状となっている。そのため、図3(B)に示すように、孔径測定器50の上端部の両側からコネクタ16を嵌め込ませることができ、この嵌め込ませた状態ではコネクタ16と孔径測定器50とは一体物となる。また、コネクタ16の上端部と下端部には、それぞれ雄ネジ16a、16bが形成されている。この雄ネジ16aと上リング部材15の内面に形成の雌ネジ15aとは螺合可能となっている。また、同様に、この雄ネジ16bと下リング部材13の内面に形成の雌ネジ13aとは螺合可能となっている。
【0012】
そして、図3(C)に示すように、コネクタ16の上下に上下リング部材15、13を螺合させと共に、上リング部材15の上方からアダプタ部材17を嵌め込ませて、上リング部材15のネジ孔15bとアダプタ部材17のネジ孔17aとをネジ18で締め付ける。さらに、ロッド部材14の下端部にアダプタ部材17の上端部を嵌め込ませて、ロッド部材14のネジ孔14aとアダプタ部材17のネジ孔17bとをネジ(図示しない)で締め付ける。
【0013】
すると、図3(D)に示すように、ロッド部材14と孔径測定器50とは接続され一体物となる。なお、この説明では、ロッド部材14と孔径測定器50との接続を説明したが、密度検層測定器60もこの孔径測定器50と同様にしてロッド部材14と接続できる。
【0014】
続いて、本発明の回転防止装置10の作用とともに地中密度の算出方法について説明する。まず、孔径測定器50の両アーム54が東西方向を向くように、ロッド部材14を支持架台12のスリット12cに嵌めこませる。その後、図4に示すように、孔径測定器50によって縦孔20の孔径Lを底面から地表面まで測定する。このとき、制御装置26は、測定した孔径Lと、この測定した孔径Lにおける縦孔20の深さ位置を対応付けて記憶手段(図示しない)に記憶しておく。なお、この図4に示す縦断面図は、図2に示す縦断面図と同方向で切断した縦断面図である。そのため、図4において、左右方向に両アーム54が開いていると、東西方向に両アーム54が開いていることとなる。このことは、図5〜7においても同様である。
【0015】
この測定の際、既に説明したように、ロッド部材14は支持架台12に対して回転しない構成となるため、ワイヤ22に捩れが生じた場合でも孔径測定器50は常に東西方向(図4において左右方向)の孔径を測定している。なお、このように測定すると、図4に示すように、西方向の壁面に形成された空隙部20aと、東方向の壁面に形成された空隙部20bとが同一平面レベルに存在する場合、両空隙部20a、20bの合算した奥行長La+Lbを算出することはできる。しかし、どちらの空隙部20a(20b)がどれだけの奥行長La(Lb)を有しているかの判別が困難である。なお、この奥行長Laとは、縦孔20の内面を基準とする西方向の壁面の凹み深さのことである。また、奥行長Lbとは、同様に東方向の壁面の凹み深さのことである。そこで、この判別をするために、以下に示す算出方法で、それぞれの奥行長La、Lbを算出する。
【0016】
まず、図5に示すように、孔径測定器50の一方のアーム54(図5において、右側のアーム54)を閉じて、孔径測定器50のアーム54を閉じた側の側部を縦孔20の壁面へと押し付けて、他方のアーム54(図5において、左側のアーム54)のみで、西方向の孔径Lwを底面から地表面まで測定する。このとき、制御装置26は、測定した西方向の孔径Lwと、この測定した西方向の孔径Lwにおける縦孔20の深さ位置を対応付けて記憶手段(図示しない)に記憶しておく。これにより、制御装置26は、縦孔20の同一深さ位置における孔径Lと西方向における孔径Lwを比較することで、東方向の壁面に形成された空隙部20bの奥行長Lbを算出することができる。この算出の具体例として、『Lb=L−Lw−D(ただし、D=孔径測定器50の外径であり、この外径Dは、予め実測することで既知の数値である)』の関係より、東方向の壁面に形成された空隙部20bの奥行長Lbを求めることができる。
【0017】
次に、図6に示すように、図5と同様に、もう一方のアーム54のみで東方向の孔径Leを測定する。これにより、先程と同様にして、西方向の壁面に形成された空隙部20aの奥行長Laを求めることができる。このようにして、制御装置26は、縦孔20の深さ位置に対応付けて、それぞれの空隙部20a、20bの奥行長La、Lbを算出することができる。その後、ロッド部材14を軸方向に90°回転させて、同様に、南北方向においても実施する。
【0018】
続いて、孔径測定器50と密度検層測定器60を入れ替えて、図7に示すように孔径測定器50の測定と同様に東方向の壁面に対して密度検層値を測定する。その後、残りの西南北方向の壁面に対しても、同様に密度検層値を測定する。これら全ての測定が終了すると、制御装置26は、東西南北の4方向ごとに密度検層値を空隙部の奥行長に基づいて補正する。
この補正の例として、
補正値=α×空隙部の奥行長 α:所定の係数
補正後の密度検層値=測定した密度検層値−上記補正値
なお、このように、補正値は1次関数である例を説明したが、これに限定されることなく、2次関数、またはlog関数等であっても構わない。
そして、コンピュータ(図示しない)は、この補正後の密度検層値と測定した孔径とから地中密度を算出する。
【0019】
このように、測定方向を一致させた状態で、縦孔20の孔径と密度検層値とを測定できるため、精度の高い地中密度を算出することができる。また、この回転防止装置10は、従来汎用の孔径測定器50および密度検層測定器60に装着できるため、新たに、孔径測定器50および密度検層測定器60を必要とすることなく安価に実施することができる。また、さらに、空隙部20aを考慮した密度検層値を使用して地中密度を算出するため、より精度の高い地中密度を算出することができる。
【0020】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、孔径測定器50および密度検層測定器60に脱着可能な回転防止装置10を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、回転防止装置10を備えた孔径測定器50および密度検層測定器60であっても構わない。
【0021】
また、実施例では、このスリット12cが東西南北を向くように板部材12aを回転させ支持架台12を設置する構成を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、板部材12aを任意の方向に回転させ支持架台12を設置する構成でも構わない。これにより、測定方向は制限されることなく任意の方向を測定できる。
【0022】
また、実施例では、コネクタ16とアダプタ部材17を介して、ロッド部材14が孔径測定器50に対して脱着可能となる構成を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ロッド部材14が孔径測定器50に対して直接に脱着可能となる構成であっても構わない。なぜならば、実施例では、従来の孔径測定器50をそのまま流用することを前提に説明した。そのため、ロッド部材14を孔径測定器50に対して脱着可能とするには、コネクタ16とアダプタ部材17が必要であった。しかし、ロッド部材14の下端部に、直接に孔径測定器50の上端部を嵌め込ませてネジで締め付けることができるのであれば、すなわち、孔径測定器50の上端部の形状がロッド部材14の下端部に嵌め込ませてネジで締め付けることが可能な形状となっていれば、コネクタ16とアダプタ部材17が不要であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の回転防止装置10を使用した地中密度の測定方法を説明する全体図であり、回転防止装置10を孔径測定器50に接続させた状態を表している。
【図2】図2(A)は、支持架台20の拡大図であり、同(B)は同(A)のA−A断面を表している。
【図3】図3(A)〜(D)は、ロッド部材14と孔径測定器50との接続を順に説明する図である。
【図4】図4は、縦孔20の東西方向の孔径を測定している図である。
【図5】図5は、縦孔20の東方向の壁面に形成された空隙部20bの奥行長Lbを算出する図である。
【図6】図6は、縦孔20の西方向の壁面に形成された空隙部20aの奥行長Laを算出する図である。
【図7】図7は、縦孔20の東方向の密度検層値を測定している図である。
【図8】図8は、従来の地中密度の測定方法を説明する全体図である。
【符号の説明】
【0024】
10 回転防止装置
12 支持架台
14 ロッド部材
20 縦孔
20a 空隙部
20b 空隙部
50 孔径測定器
60 密度検層測定器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面上から地中に空けた縦孔に吊り下げて該縦孔の孔径および孔壁面に形成された空隙部の奥行長を測定する孔径測定器と、該縦孔の周りの密度検層値を測定する密度検層測定器に装着可能な回転防止装置であって、
前記地表面上に設置の支持架台と、
前記支持架台に対して昇降可能な状態で回転しないように取り付けられたロッド部材とからなり、
前記ロッド部材の他端部は、
前記孔径測定器および前記密度検層測定器に対して脱着可能となっている回転防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転防止装置を使用した地中密度の算出方法であって、
前記縦孔の特定の径方向における該孔壁面に形成された空隙部の奥行長を測定し、
前記特定の径方向と同方向における密度検層値を測定し、
その測定した密度検層値を前記空隙部の奥行長に基づいて補正し、
その補正した数値と前記孔径とから地中密度を算出する地中密度の算出方法。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−218773(P2007−218773A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40646(P2006−40646)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000219820)株式会社トーエネック (51)
【出願人】(000121844)応用地質株式会社 (36)
【Fターム(参考)】