説明

回転電機の制御装置および制御方法

【課題】総磁束制御の信頼性の低下を防止することができる回転電機の制御装置を得る。
【解決手段】トルク指令とマップ制御指令との関係が記された3次元マップ11を用いて、トルク指令からマップ制御指令を生成するマップ制御電流指令生成部10と、トルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とから、総磁束制御指令を生成する総磁束制御電流指令生成部20と、マップ制御指令と総磁束制御指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、総磁束制御指令を駆動指令として出力する電流指令判定部30とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば永久磁石モータ等の回転電機の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同期機制御装置は、トルク指令から電機子電流指令を発生し、この電機子電流指令に基づいて、電力変換器により同期機の電機子電流を制御する装置であって、トルク電流演算器、トルク電流制限発生器およびリミッタを有するトルク電流指令発生器と、磁束指令発生器と、磁束演算器と、磁束制御器とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
トルク電流指令発生器のトルク電流演算器は、トルク指令と磁束指令とからトルク電流指令を演算する。トルク電流制限発生器は、磁化電流指令と電流制限値とに基づき、電機子電流が電力変換器の電流制限値を越えないように、発生可能なトルク電流指令最大値を発生する。リミッタは、トルク電流指令最大値に基づきトルク電流指令に制限を加える。
【0004】
磁束指令発生器は、トルク電流指令発生器からのトルク電流指令に基づき磁束指令を演算する。磁束演算器は、同期機の電機子電流または電機子電流および電機子電圧に基づき電機子鎖交磁束を演算する。磁束制御器は、磁束指令と電機子鎖交磁束とが一致するように磁化電流指令を作成してトルク電流指令発生器に入力する。
【0005】
このように、それぞれ電機子電流指令のトルク成分および磁化成分であるトルク電流指令および磁化電流指令を、リアルタイムに演算する電機子鎖交磁束制御(以下、「総磁束制御」と称する)によって、それ以前に主流であったマップ制御によりトルク電流指令および磁化電流指令を求める場合よりも、同期機を高精度に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4531751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1に記載された発明では、電機子電流指令を制御装置が演算しているので、ROM異常やRAM転びによってROMやRAMに記憶された値が変化した場合に、指令値が異常値となり、総磁束制御の信頼性が低下するという問題がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ROM異常やRAM転びが発生した場合であっても、総磁束制御の信頼性の低下を防止することができる回転電機の制御装置および制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る回転電機の制御装置は、トルク指令に基づいて、回転電機の駆動を制御する回転電機の制御装置であって、トルク指令とマップ制御指令との関係が記されたマップを用いて、トルク指令からマップ制御指令を生成するマップ制御指令生成部と、トルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とから、総磁束制御指令を生成する総磁束制御指令生成部と、マップ制御指令と総磁束制御指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、総磁束制御指令を駆動指令として出力する指令判定部と、を備えたものである。
【0010】
この発明に係る回転電機の制御方法は、トルク指令に基づいて、回転電機の駆動を制御する回転電機の制御方法であって、トルク指令とマップ制御指令との関係が記されたマップを用いて、トルク指令からマップ制御指令を生成するマップ制御指令生成ステップと、トルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とから、総磁束制御指令を生成する総磁束制御指令生成ステップと、マップ制御指令と総磁束制御指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、総磁束制御指令を駆動指令として出力する指令判定ステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る回転電機の制御装置および制御方法によれば、指令判定部(ステップ)は、マップ制御指令生成部(ステップ)がマップを用いてトルク指令から生成したマップ制御指令と、総磁束制御指令生成部(ステップ)がトルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とから生成した総磁束制御指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、総磁束制御指令を駆動指令として出力する。
そのため、ROM異常やRAM転びが発生した場合であっても、総磁束制御の信頼性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る回転電機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示したマップ制御電流指令生成部を示すブロック構成図である。
【図3】図1に示した総磁束制御電流指令生成部を示すブロック構成図である。
【図4】図1に示した電流指令判定部を示すブロック構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るd−q座標系の電流とγ−δ座標系の電流との関係を示すベクトル図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るマップ制御の電流指令ベクトルと総磁束制御の電流指令ベクトルとの関係を示すベクトル図である。
【図7】図4に示した比較判定部の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態2に係る回転電機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図9】図8に示した2相マップ制御電圧指令生成部を示すブロック構成図である。
【図10】図8に示した2相総磁束制御電圧指令生成部を示すブロック構成図である。
【図11】図8に示した2相電圧指令判定部を示すブロック構成図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係るd−q座標系の電圧とγ−δ座標系の電圧との関係を示すベクトル図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係るマップ制御の2相電圧指令ベクトルと総磁束制御の2相電圧指令ベクトルとの関係を示すベクトル図である。
【図14】図11に示した比較判定部の動作を示すフローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態3に係る回転電機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図16】図15に示した3相マップ制御電圧指令生成部を示すブロック構成図である。
【図17】図15に示した3相総磁束制御電圧指令生成部を示すブロック構成図である。
【図18】図15に示した3相電圧指令判定部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明に係る回転電機の制御装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、この発明に係る回転電機の制御装置は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される。
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る回転電機の制御装置100を示すブロック構成図である。図1において、回転電機の制御装置100は、マップ制御電流指令生成部(マップ制御指令生成部)10、総磁束制御電流指令生成部(総磁束制御指令生成部)20、電流指令判定部(指令判定部)30、電流制御器40、PWM生成部50、電力変換器60、位置検出器70および電流検出器80を備えている。
【0015】
マップ制御電流指令生成部10は、トルク指令および回転電機(図示せず)の回転速度と電機子電流指令との関係が記されたマップを用いて、トルク指令から電機子電流指令を生成し、マップ制御電流指令(マップ制御指令)として出力する。
【0016】
総磁束制御電流指令生成部20は、トルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とモータ定数等とから、オンラインでリアルタイム演算により電機子電流指令を生成し、総磁束制御電流指令(総磁束制御指令)として出力する。
【0017】
電流指令判定部30は、マップ制御電流指令生成部10からのマップ制御電流指令と総磁束制御電流指令生成部20からの総磁束制御電流指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、何れを駆動指令として出力するかを判定する。
【0018】
具体的には、電流指令判定部30は、総磁束制御電流指令の位相または大きさが、マップ制御電流指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、マップ制御電流指令を駆動指令として出力するとともに、総磁束制御電流指令の位相または大きさが、マップ制御電流指令を基準として所定の範囲内にある場合に、総磁束制御電流指令を駆動指令として出力する。
【0019】
電流制御器40は、電流指令判定部30から出力されたマップ制御電流指令または総磁束制御電流指令の電流指令値を、回転電機の位置および3相の電流値(後述する)を参照して、電圧指令値に変換して出力する。PWM生成部50は、電流制御器40からの電圧指令値を、PWM信号に変換して出力する。電力変換器60は、PWM生成部50からのPWM信号に基づいて、回転電機を駆動する電圧を生成する。なお、電力変換器60は、いわゆるインバータ装置であり、ともに図示しない駆動回路と電力変換用スイッチング素子(MOSFET、IGBT等)とから構成される。
【0020】
位置検出器70は、レゾルバ等の角度センサまたは位置推定器であり、回転電機の位置を検出して総磁束制御電流指令生成部20および電流制御器40に出力する。電流検出器80は、電流センサまたは電流推定器であり、回転電機の3相の電流値を検出して総磁束制御電流指令生成部20および電流制御器40に出力する。
【0021】
続いて、図2を参照しながら、マップ制御電流指令生成部10について詳細に説明する。図2は、図1に示したマップ制御電流指令生成部10を示すブロック構成図である。図2において、マップ制御電流指令生成部10には、外部からトルク指令、回転速度、バッテリ(図示せず)のDC電圧および運転条件が入力される。ここで、運転条件とは、効率重視やトルク重視等の条件であり、バッテリの残量に応じて設定されてもよいし、例えば車両の運転者によって設定されてもよい。
【0022】
マップ制御電流指令生成部10は、あらかじめ採取したデータをもとに、トルク指令および回転電機の回転速度と電機子電流指令との関係が記された3次元マップ11を有している。なお、3次元マップ11は、運転条件(例えば、条件a〜条件z)毎に、DC電圧に応じて複数枚ずつ設けられている。
【0023】
マップ制御電流指令生成部10は、DC電圧および運転条件から対応する3次元マップ11を選択し、トルク指令および回転電機の回転速度から、電機子電流指令(q軸電流指令iq、d軸電流指令id)を生成し、この電機子電流指令をマップ制御電流指令として出力する。
【0024】
次に、図3を参照しながら、総磁束制御電流指令生成部20について説明する。図3は、図1に示した総磁束制御電流指令生成部20を示すブロック構成図である。図3において、総磁束制御電流指令生成部20には、外部からトルク指令、回転速度、バッテリのDC電圧および運転条件が入力され、位置検出器70から回転電機の位置θが入力され、電流検出器80から3相の電流値iu/iv/iwが入力される。
【0025】
総磁束制御電流指令生成部20は、トルク電流指令発生器21、磁束指令発生器22、磁束演算器23および磁束制御器24を含んでいる。トルク電流指令発生器21は、トルク指令、磁束指令Φおよび電機子電流指令の磁化成分である磁化(γ軸)電流指令iγから、電機子電流指令のトルク成分であるトルク(δ軸)電流指令iδを演算する。
【0026】
磁束指令発生器22は、トルク電流指令iδ、回転電機の回転速度およびDC電圧から、磁束指令Φを演算する。磁束演算器23は、回転電機の回転速度および3相の電流値iu/iv/iw等から、推定電機子鎖交磁束絶対値(電機子鎖交磁束)|Φ|および推定電機子鎖交磁束位相∠Φを演算する。
【0027】
磁束制御器24は、磁束指令Φと推定電機子鎖交磁束絶対値|Φ|とが一致するように、磁化電流指令iγを生成する。ここで、総磁束制御電流指令生成部20に入力される運転条件は、例えば総磁束制御電流指令生成部20からの出力の重み付けに用いられる。なお、総磁束制御電流指令生成部20の詳細な構成および動作等については、上述した特許文献1に記載されているので、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0028】
続いて、図4を参照しながら、電流指令判定部30について詳細に説明する。図4は、図1に示した電流指令判定部30を示すブロック構成図である。図4において、電流指令判定部30には、マップ制御電流指令生成部10からq軸電流指令iqおよびd軸電流指令idが入力され、総磁束制御電流指令生成部20から磁化電流指令iγ、トルク電流指令iδおよび推定電機子鎖交磁束位相∠Φが入力される。
【0029】
電流指令判定部30は、マップ制御ベクトル変換器31、総磁束制御ベクトル変換器32および比較判定部33を含んでいる。マップ制御ベクトル変換器31は、q軸電流指令iqおよびd軸電流指令idから、次式(1)、(2)により、電流ベクトルIおよび位相θを演算する。
【0030】
【数1】

【0031】
【数2】

【0032】
総磁束制御ベクトル変換器32は、磁化電流指令iγ、トルク電流指令iδおよび推定電機子鎖交磁束位相∠Φから、次式(3)、(4)により、電流ベクトルIおよび位相θを演算する。
【0033】
【数3】

【0034】
【数4】

【0035】
比較判定部33は、マップ制御ベクトル変換器31からの電流ベクトルIおよび位相θと、総磁束制御ベクトル変換器32からの電流ベクトルIおよび位相θとを比較し、何れを駆動指令として出力するかを判定する。
【0036】
ここで、図5を参照しながら、電流ベクトルIおよび位相θと、電流ベクトルIおよび位相θとの関係について説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係るd−q座標系の電流とγ−δ座標系の電流との関係を示すベクトル図である。
【0037】
図5のdq軸平面上において、総磁束ベクトルΦの向きにγ軸(磁化)電流ベクトルがあり、総磁束ベクトルΦと直交する向きにδ軸(トルク)電流ベクトルがあり、これらの合成ベクトルが電流ベクトルiとなる。なお、電流ベクトルiは、d軸電流ベクトルとq軸電流ベクトルとの合成ベクトルでもある。
【0038】
比較判定部33の内部において、マップ制御電流指令生成部10からのq軸電流指令iqとd軸電流指令idとの合成ベクトルIと、総磁束制御電流指令生成部20からの磁化電流指令iγとトルク電流指令iδとの合成ベクトルIとは、図6に示されるように、微妙にずれている。
【0039】
これは、マップ制御電流指令生成部10で生成されたマップ制御電流指令が、あらかじめ採取したデータをもとに求めた結果であり、その時点での動作条件に最適な値から誤差が生じているためであるが、実測をもとにした信頼性は高いといえる。一方、総磁束制御電流指令生成部20で生成された総磁束制御電流指令は、オンラインでその時点での動作条件に合わせて演算した最適な結果であるが、全てを演算により求めた値は、信頼性が若干劣る。
【0040】
そこで、ここでは、マップ制御電流指令を基準として、少なくとも電流ベクトルの長さ(大きさ)および位相の何れか一方を総磁束制御電流指令と比較し、マップ制御電流指令および総磁束制御電流指令の何れを駆動指令として出力するかを判定する。
【0041】
次に、図7のフローチャートを参照しながら、比較判定部33の判定処理について説明する。ここでは、電流ベクトルの長さのみを比較する場合について説明する。なお、電流ベクトルの長さのみの比較に代えて、位相のみを比較してもよいし、電流ベクトルの長さおよび位相の双方どうしを比較してもよい。
【0042】
まず、比較判定部33は、マップ制御電流指令(q軸電流指令iq、d軸電流指令id)から演算される電流ベクトルIと、総磁束制御電流指令(磁化電流指令iγ、トルク電流指令iδ)から演算される電流ベクトルIとを比較し、長さの差が所定の余裕値Xよりも小さいか否かを判定する(ステップS1)。
【0043】
ステップS1において、長さの差が所定の余裕値Xよりも小さい(すなわち、Yes)と判定された場合には、比較判定部33は、総磁束制御電流指令を駆動指令として出力して(ステップS2)、図7の処理を終了する。具体的には、比較判定部33は、総磁束制御電流指令(磁化電流指令iγ、トルク電流指令iδ、推定電機子鎖交磁束位相∠Φ)から演算される電流ベクトルIおよび位相θを駆動指令として出力する。
【0044】
一方、ステップS1において、長さの差が所定の余裕値X以上である(すなわち、No)と判定された場合には、比較判定部33は、マップ制御電流指令を駆動指令として出力して(ステップS3)、図7の処理を終了する。具体的には、比較判定部33は、マップ制御電流指令(q軸電流指令iq、d軸電流指令id)から演算される電流ベクトルIおよび位相θを駆動指令として出力する。
【0045】
すなわち、総磁束制御電流指令生成部20で生成された総磁束制御電流指令は、常に、信頼性の高いマップ制御電流指令生成部10で生成されたマップ制御電流指令を基準として比較され、所定の範囲を超えた場合に、基準であるマップ制御電流指令を採用することにより、制御の破綻を防止することができる。
【0046】
以上のように、実施の形態1によれば、指令判定部は、マップ制御指令生成部がマップを用いてトルク指令から生成したマップ制御指令と、総磁束制御指令生成部がトルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とから生成した総磁束制御指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、総磁束制御指令を駆動指令として出力する。
そのため、ROM異常やRAM転びが発生した場合であっても、総磁束制御の信頼性の低下を防止することができる。
【0047】
実施の形態2.
図8は、この発明の実施の形態2に係る回転電機の制御装置100Aを示すブロック構成図である。図8において、回転電機の制御装置100Aは、2相マップ制御電圧指令生成部(マップ制御指令生成部)10A、2相総磁束制御電圧指令生成部(総磁束制御指令生成部)20A、2相電圧指令判定部(指令判定部)30A、PWM生成部50、電力変換器60、位置検出器70および電流検出器80を備えている。
【0048】
2相マップ制御電圧指令生成部10Aは、トルク指令および回転電機の回転速度と電機子電流指令との関係が記されたマップを用いて、トルク指令から電機子電流指令を生成し、電機子電流指令を2相の電機子電圧指令に変換して、2相マップ制御電圧指令(マップ制御指令)として出力する。
【0049】
2相総磁束制御電圧指令生成部20Aは、トルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とモータ定数等とから、オンラインでリアルタイム演算により電機子電流指令を生成し、電機子電流指令を2相の電機子電圧指令に変換して、2相総磁束制御電圧指令(総磁束制御指令)として出力する。
【0050】
2相電圧指令判定部30Aは、2相マップ制御電圧指令生成部10Aからの2相マップ制御電圧指令と2相総磁束制御電圧指令生成部20Aからの2相総磁束制御電圧指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、何れを駆動指令として出力するかを判定する。
【0051】
具体的には、2相電圧指令判定部30Aは、2相総磁束制御電圧指令の位相または大きさが、2相マップ制御電圧指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、2相マップ制御電圧指令を駆動指令として出力するとともに、2相総磁束制御電圧指令の位相または大きさが、2相マップ制御電圧指令を基準として所定の範囲内にある場合に、2相総磁束制御電圧指令を駆動指令として出力する。なお、その他の構成は、図1に示したものと同様なので、説明を省略する。
【0052】
続いて、図9を参照しながら、2相マップ制御電圧指令生成部10Aについて詳細に説明する。図9は、図8に示した2相マップ制御電圧指令生成部10Aを示すブロック構成図である。図9において、2相マップ制御電圧指令生成部10Aには、外部からトルク指令、回転速度、バッテリのDC電圧および運転条件が入力され、位置検出器70から回転電機の位置θが入力され、電流検出器80から3相の電流値iu/iv/iwが入力される。
【0053】
2相マップ制御電圧指令生成部10Aは、図2に示したマップ制御電流指令生成部10と、マップ制御電流指令生成部10が出力したマップ制御電流指令(q軸電流指令iq、d軸電流指令id)を、回転電機の位置θおよび3相の電流値iu/iv/iwを参照して、2相の電機子電圧指令に変換し、2相マップ制御電圧指令(q軸電圧指令Vq、d軸電圧指令Vd)として出力するマップ制御電流制御器12とを含んでいる。
【0054】
次に、図10を参照しながら、2相総磁束制御電圧指令生成部20Aについて説明する。図10は、図8に示した2相総磁束制御電圧指令生成部20Aを示すブロック構成図である。図10において、2相総磁束制御電圧指令生成部20Aには、外部からトルク指令、回転速度、バッテリのDC電圧および運転条件が入力され、位置検出器70から回転電機の位置θが入力され、電流検出器80から3相の電流値iu/iv/iwが入力される。
【0055】
2相総磁束制御電圧指令生成部20Aは、図3に示した総磁束制御電流指令生成部20と、総磁束制御電流指令生成部20が出力した総磁束制御電流指令(磁化電流指令iγ、トルク電流指令iδ、推定電機子鎖交磁束位相∠Φ)を、回転電機の位置θおよび3相の電流値iu/iv/iwを参照して、2相の電機子電圧指令に変換し、2相総磁束制御電圧指令(磁化電圧指令Vγ、トルク電圧指令Vδ)として、推定電機子鎖交磁束位相∠Φとともに出力する総磁束制御電流制御器25とを含んでいる。
【0056】
続いて、図11を参照しながら、2相電圧指令判定部30Aについて詳細に説明する。図11は、図8に示した2相電圧指令判定部30Aを示すブロック構成図である。図11において、2相電圧指令判定部30Aには、2相マップ制御電圧指令生成部10Aからq軸電圧指令Vqおよびd軸電圧指令Vdが入力され、2相総磁束制御電圧指令生成部20Aから磁化電圧指令Vγ、トルク電圧指令Vδおよび推定電機子鎖交磁束位相∠Φが入力される。
【0057】
2相電圧指令判定部30Aは、マップ制御2相電圧指令ベクトル変換器31A、総磁束制御2相電圧指令ベクトル変換器32A、比較判定部33Aおよび座標変換器34を含んでいる。マップ制御2相電圧指令ベクトル変換器31Aは、q軸電圧指令Vqおよびd軸電圧指令Vdから、次式(5)、(6)により、電圧ベクトルVおよび位相θを演算する。
【0058】
【数5】

【0059】
【数6】

【0060】
総磁束制御2相電圧指令ベクトル変換器32Aは、磁化電圧指令Vγ、トルク電圧指令Vδおよび推定電機子鎖交磁束位相∠Φから、次式(7)、(8)により、電圧ベクトルVおよび位相θを演算する。
【0061】
【数7】

【0062】
【数8】

【0063】
比較判定部33Aは、マップ制御2相電圧指令ベクトル変換器31Aからの電圧ベクトルVおよび位相θと、総磁束制御2相電圧指令ベクトル変換器32Aからの電圧ベクトルVおよび位相θとを比較し、何れを駆動指令として出力するかを判定する。座標変換器34は、比較判定部33Aから出力された2相マップ制御電圧指令または2相総磁束制御電圧指令を、回転電機の位置θを参照して、3相の電機子電圧指令に変換する。
【0064】
ここで、図12を参照しながら、電圧ベクトルVおよび位相θと、電圧ベクトルVおよび位相θとの関係について説明する。図12は、この発明の実施の形態2に係るd−q座標系の電圧とγ−δ座標系の電圧との関係を示すベクトル図である。
【0065】
図12のdq軸平面上において、総磁束ベクトルΦの向きにγ軸(磁化)電圧ベクトルがあり、総磁束ベクトルΦと直交する向きにδ軸(トルク)電圧ベクトルがあり、これらの合成ベクトルが電圧ベクトルVとなる。なお、電圧ベクトルVは、d軸電圧ベクトルとq軸電圧ベクトルとの合成ベクトルでもある。
【0066】
比較判定部33Aの内部において、2相マップ制御電圧指令生成部10Aからのq軸電圧指令Vqとd軸電圧指令Vdとの合成ベクトルVと、2相総磁束制御電圧指令生成部20Aからの磁化電圧指令Vγとトルク電圧指令Vδとの合成ベクトルVとは、図13に示されるように、微妙にずれている。
【0067】
これは、2相マップ制御電圧指令生成部10Aで生成された2相マップ制御電圧指令が、あらかじめ採取したデータをもとに求めた結果であり、その時点での動作条件に最適な値から誤差が生じているためであるが、実測をもとにした信頼性は高いといえる。一方、2相総磁束制御電圧指令生成部20Aで生成された2相総磁束制御電圧指令は、オンラインでその時点での動作条件に合わせて演算した最適な結果であるが、全てを演算により求めた値は、信頼性が若干劣る。
【0068】
そこで、ここでは、2相マップ制御電圧指令を基準として、少なくとも電圧ベクトルの長さ(大きさ)および位相の何れか一方を2相総磁束制御電圧指令と比較し、2相マップ制御電圧指令および2相総磁束制御電圧指令の何れを駆動指令として出力するかを判定する。
【0069】
次に、図14のフローチャートを参照しながら、比較判定部33Aの判定処理について説明する。ここでは、電圧ベクトルの長さのみを比較する場合について説明する。なお、電圧ベクトルの長さのみの比較に代えて、位相のみを比較してもよいし、電圧ベクトルの長さおよび位相の双方どうしを比較してもよい。
【0070】
まず、比較判定部33Aは、2相マップ制御電圧指令(q軸電圧指令Vq、d軸電圧指令Vd)から演算される電圧ベクトルVと、2相総磁束制御電圧指令(磁化電圧指令Vγ、トルク電圧指令Vδ)から演算される電圧ベクトルVとを比較し、長さの差が所定の余裕値Yよりも小さいか否かを判定する(ステップS11)。
【0071】
ステップS11において、長さの差が所定の余裕値Yよりも小さい(すなわち、Yes)と判定された場合には、比較判定部33Aは、2相総磁束制御電圧指令を駆動指令として出力して(ステップS12)、図14の処理を終了する。具体的には、比較判定部33Aは、2相総磁束制御電圧指令(磁化電圧指令Vγ、トルク電圧指令Vδ、推定電機子鎖交磁束位相∠Φ)から演算される電圧ベクトルVおよび位相θを駆動指令として出力する。
【0072】
一方、ステップS11において、長さの差が所定の余裕値Y以上である(すなわち、No)と判定された場合には、比較判定部33Aは、2相マップ制御電圧指令を駆動指令として出力して(ステップS13)、図14の処理を終了する。具体的には、比較判定部33Aは、2相マップ制御電圧指令(q軸電圧指令Vq、d軸電圧指令Vd)から演算される電圧ベクトルVおよび位相θを駆動指令として出力する。
【0073】
すなわち、2相総磁束制御電圧指令生成部20Aで生成された2相総磁束制御電圧指令は、常に、信頼性の高い2相マップ制御電圧指令生成部10Aで生成された2相マップ制御電圧指令を基準として比較され、所定の範囲を超えた場合に、基準である2相マップ制御電圧指令を採用することにより、制御の破綻を防止することができる。
【0074】
以上のように、実施の形態2によれば、指令判定部は、マップ制御指令生成部がマップを用いてトルク指令から生成したマップ制御指令と、総磁束制御指令生成部がトルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とから生成した総磁束制御指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、総磁束制御指令の位相または大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、総磁束制御指令を駆動指令として出力する。
そのため、ROM異常やRAM転びが発生した場合であっても、総磁束制御の信頼性の低下を防止することができる。
【0075】
実施の形態3.
図15は、この発明の実施の形態3に係る回転電機の制御装置100Bを示すブロック構成図である。図15において、回転電機の制御装置100Bは、3相マップ制御電圧指令生成部(マップ制御指令生成部)10B、3相総磁束制御電圧指令生成部(総磁束制御指令生成部)20B、3相電圧指令判定部(指令判定部)30B、PWM生成部50、電力変換器60、位置検出器70および電流検出器80を備えている。
【0076】
3相マップ制御電圧指令生成部10Bは、トルク指令および回転電機の回転速度と電機子電流指令との関係が記されたマップを用いて、トルク指令から電機子電流指令を生成し、電機子電流指令を2相の電機子電圧指令および3相の電機子電圧指令に変換して、3相マップ制御電圧指令(マップ制御指令)として出力する。
【0077】
3相総磁束制御電圧指令生成部20Bは、トルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とモータ定数等とから、オンラインでリアルタイム演算により電機子電流指令を生成し、電機子電流指令を2相の電機子電圧指令および3相の電機子電圧指令に変換して、3相総磁束制御電圧指令(総磁束制御指令)として出力する。
【0078】
3相電圧指令判定部30Bは、3相マップ制御電圧指令生成部10Bからの3相マップ制御電圧指令と3相総磁束制御電圧指令生成部20Bからの3相総磁束制御電圧指令との大きさを比較し、何れを駆動指令として出力するかを判定する。
【0079】
具体的には、3相電圧指令判定部30Bは、3相総磁束制御電圧指令の大きさが、3相マップ制御電圧指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、3相マップ制御電圧指令を駆動指令として出力するとともに、3相総磁束制御電圧指令の大きさが、3相マップ制御電圧指令を基準として所定の範囲内にある場合に、3相総磁束制御電圧指令を駆動指令として出力する。なお、その他の構成は、図8に示したものと同様なので、説明を省略する。
【0080】
続いて、図16を参照しながら、3相マップ制御電圧指令生成部10Bについて詳細に説明する。図16は、図15に示した3相マップ制御電圧指令生成部10Bを示すブロック構成図である。図16において、3相マップ制御電圧指令生成部10Bには、外部からトルク指令、回転速度、バッテリのDC電圧および運転条件が入力され、位置検出器70から回転電機の位置θが入力され、電流検出器80から3相の電流値iu/iv/iwが入力される。
【0081】
3相マップ制御電圧指令生成部10Bは、図9に示した2相マップ制御電圧指令生成部10Aと、2相マップ制御電圧指令生成部10Aが出力した2相マップ制御電圧指令(q軸電圧指令Vq、d軸電圧指令Vd)を、回転電機の位置θを参照して、3相の電機子電圧指令に変換し、3相マップ制御電圧指令(Vu/Vv/Vw)として出力するマップ制御座標変換器13とを含んでいる。
【0082】
次に、図17を参照しながら、3相総磁束制御電圧指令生成部20Bについて説明する。図17は、図15に示した3相総磁束制御電圧指令生成部20Bを示すブロック構成図である。図17において、3相総磁束制御電圧指令生成部20Bには、外部からトルク指令、回転速度、バッテリのDC電圧および運転条件が入力され、位置検出器70から回転電機の位置θが入力され、電流検出器80から3相の電流値iu/iv/iwが入力される。
【0083】
3相総磁束制御電圧指令生成部20Bは、図9に示した2相総磁束制御電圧指令生成部20Aと、2相総磁束制御電圧指令生成部20Aが出力した2相総磁束制御電圧指令(磁化電圧指令Vγ、トルク電圧指令Vδ、推定電機子鎖交磁束位相∠Φ)を、回転電機の位置θを参照して、3相の電機子電圧指令に変換し、3相総磁束制御電圧指令(Vu/Vv/Vw)として出力する総磁束制御座標変換器26とを含んでいる。
【0084】
ここで、3相電圧指令判定部30Bは、3相マップ制御電圧指令生成部10Bからの3相マップ制御電圧指令(Vu/Vv/Vw)と、3相総磁束制御電圧指令生成部20Bからの3相総磁束制御電圧指令(Vu/Vv/Vw)との少なくとも1相の大きさを比較し、何れを駆動指令として出力するかを判定する。
【0085】
続いて、図18のフローチャートを参照しながら、3相電圧指令判定部30Bの判定処理について説明する。ここでは、U相電圧指令の大きさのみを比較する場合について説明する。なお、U相電圧指令の大きさのみの比較に代えて、U相、V相、W相の何れか2相の電圧指令の大きさを比較してもよいし、3相すべての電圧指令の大きさを比較してもよい。
【0086】
まず、3相電圧指令判定部30Bは、3相マップ制御電圧指令(Vu/Vv/Vw)のうち、U相マップ制御電圧指令Vuと、3相総磁束制御電圧指令(Vu/Vv/Vw)のうち、U相総磁束制御電圧指令Vuとを比較し、大きさの差が所定の余裕値Zよりも小さいか否かを判定する(ステップS21)。
【0087】
ステップS21において、大きさの差が所定の余裕値Zよりも小さい(すなわち、Yes)と判定された場合には、3相電圧指令判定部30Bは、3相総磁束制御電圧指令を駆動指令として出力して(ステップS22)、図18の処理を終了する。具体的には、3相電圧指令判定部30Bは、3相総磁束制御電圧指令(Vu/Vv/Vw)から演算される電圧ベクトルVを駆動指令として出力する。
【0088】
一方、ステップS21において、大きさの差が所定の余裕値Z以上である(すなわち、No)と判定された場合には、3相電圧指令判定部30Bは、3相マップ制御電圧指令を駆動指令として出力して(ステップS23)、図18の処理を終了する。具体的には、3相電圧指令判定部30Bは、3相マップ制御電圧指令(Vu/Vv/Vw)から演算される電圧ベクトルVを駆動指令として出力する。
【0089】
すなわち、3相総磁束制御電圧指令生成部20Bで生成された3相総磁束制御電圧指令は、常に、信頼性の高い3相マップ制御電圧指令生成部10Bで生成された3相マップ制御電圧指令を基準として比較され、所定の範囲を超えた場合に、基準である3相マップ制御電圧指令を採用することにより、制御の破綻を防止することができる。
【0090】
以上のように、実施の形態3によれば、指令判定部は、マップ制御指令生成部がマップを用いてトルク指令から生成したマップ制御指令と、総磁束制御指令生成部がトルク指令と回転電機の回転速度および電機子電流とから生成した総磁束制御指令との少なくとも1相の大きさを比較し、総磁束制御指令の大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、総磁束制御指令の大きさが、マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、総磁束制御指令を駆動指令として出力する。
そのため、ROM異常やRAM転びが発生した場合であっても、総磁束制御の信頼性の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0091】
10 マップ制御電流指令生成部、10A 2相マップ制御電圧指令生成部、10B 3相マップ制御電圧指令生成部、11 3次元マップ、12 マップ制御電流制御器、13 マップ制御座標変換器、20 総磁束制御電流指令生成部、20A 2相総磁束制御電圧指令生成部、20B 3相総磁束制御電圧指令生成部、21 トルク電流指令発生器、22 磁束指令発生器、23 磁束演算器、24 磁束制御器、25 総磁束制御電流制御器、26 総磁束制御座標変換器、30 電流指令判定部、30A 2相電圧指令判定部、30B 3相電圧指令判定部、31 マップ制御ベクトル変換器、31A マップ制御2相電圧指令ベクトル変換器、32 総磁束制御ベクトル変換器、32A 総磁束制御2相電圧指令ベクトル変換器、33、33A 比較判定部、34 座標変換器、40 電流制御器、50 PWM生成部、60 電力変換器、70 位置検出器、80 電流検出器、100、100A、100B 制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク指令に基づいて、回転電機の駆動を制御する回転電機の制御装置であって、
前記トルク指令とマップ制御指令との関係が記されたマップを用いて、前記トルク指令から前記マップ制御指令を生成するマップ制御指令生成部と、
前記トルク指令と前記回転電機の回転速度および電機子電流とから、総磁束制御指令を生成する総磁束制御指令生成部と、
前記マップ制御指令と前記総磁束制御指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、前記総磁束制御指令の位相または大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、前記マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、前記総磁束制御指令の位相または大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、前記総磁束制御指令を駆動指令として出力する指令判定部と、
を備えたことを特徴とする回転電機の制御装置。
【請求項2】
前記マップ制御指令生成部は、前記トルク指令と電機子電流指令との関係が記されたマップを用いて、前記トルク指令から前記電機子電流指令を生成し、前記マップ制御指令として出力するマップ制御電流指令生成部であり、
前記総磁束制御指令生成部は、前記トルク指令と前記回転電機の回転速度および電機子電流とから、前記電機子電流指令を生成し、前記総磁束制御指令として出力する総磁束制御電流指令生成部であり、
前記指令判定部は、前記総磁束制御指令の位相または大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、前記マップ制御指令を前記駆動指令として出力するとともに、前記総磁束制御指令の位相または大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、前記総磁束制御指令を前記駆動指令として出力する電流指令判定部である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項3】
前記マップ制御指令生成部は、
前記トルク指令と電機子電流指令との関係が記されたマップを用いて、前記トルク指令から前記電機子電流指令を生成するマップ制御電流指令生成部と、
この電機子電流指令を2相の電機子電圧指令に変換し、前記マップ制御指令として出力するマップ制御電流制御器と、
を有する2相マップ制御電圧指令生成部であり、
前記総磁束制御指令生成部は、
前記トルク指令と前記回転電機の回転速度および電機子電流とから、前記電機子電流指令を生成する総磁束制御電流指令生成部と、
この電機子電流指令を2相の電機子電圧指令に変換し、前記総磁束制御指令として出力する総磁束制御電流制御器と、
を有する2相総磁束制御電圧指令生成部であり、
前記指令判定部は、前記総磁束制御指令の位相または大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、前記マップ制御指令を前記駆動指令として出力するとともに、前記総磁束制御指令の位相または大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、前記総磁束制御指令を前記駆動指令として出力する2相電圧指令判定部である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項4】
前記マップ制御指令生成部は、
前記トルク指令と電機子電流指令との関係が記されたマップを用いて、前記トルク指令から前記電機子電流指令を生成するマップ制御電流指令生成部と、
この電機子電流指令を2相の電機子電圧指令に変換するマップ制御電流制御器と、
この2相の電機子電圧指令を3相の電機子電圧指令に変換し、前記マップ制御指令として出力するマップ制御座標変換器と、
を有する3相マップ制御電圧指令生成部であり、
前記総磁束制御指令生成部は、
前記トルク指令と前記回転電機の回転速度および電機子電流とから、前記電機子電流指令を生成する総磁束制御電流指令生成部と、
この電機子電流指令を2相の電機子電圧指令に変換する総磁束制御電流制御器と、
この2相の電機子電圧指令を3相の電機子電圧指令に変換し、前記総磁束制御指令として出力する総磁束制御座標変換器と、
を有する3相総磁束制御電圧指令生成部であり、
前記指令判定部は、前記総磁束制御指令の少なくとも1相の大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、前記マップ制御指令を前記駆動指令として出力するとともに、前記総磁束制御指令の大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、前記総磁束制御指令を前記駆動指令として出力する3相電圧指令判定部である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項5】
前記総磁束制御電流指令生成部は、
前記トルク指令、磁束指令および前記電機子電流指令の磁化成分である磁化電流指令から、前記電機子電流指令のトルク成分であるトルク電流指令を演算するトルク電流指令発生器と、
前記トルク電流指令から前記磁束指令を演算する磁束指令発生器と、
前記回転電機の電機子電流から、電機子鎖交磁束を演算する磁束演算器と、
前記磁束指令と前記電機子鎖交磁束とが一致するように、前記磁化電流指令を生成する磁束制御器と、
を含むことを特徴とする請求項2から請求項4までの何れか1項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項6】
トルク指令に基づいて、回転電機の駆動を制御する回転電機の制御方法であって、
前記トルク指令とマップ制御指令との関係が記されたマップを用いて、前記トルク指令から前記マップ制御指令を生成するマップ制御指令生成ステップと、
前記トルク指令と前記回転電機の回転速度および電機子電流とから、総磁束制御指令を生成する総磁束制御指令生成ステップと、
前記マップ制御指令と前記総磁束制御指令との少なくとも位相および大きさの何れか一方を比較し、前記総磁束制御指令の位相または大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲を超えた場合に、前記マップ制御指令を駆動指令として出力するとともに、前記総磁束制御指令の位相または大きさが、前記マップ制御指令を基準として所定の範囲内にある場合に、前記総磁束制御指令を駆動指令として出力する指令判定ステップと、
を備えたことを特徴とする回転電機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−74651(P2013−74651A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210113(P2011−210113)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】