説明

回転電機の固定子コイル固定方法および回転電機

【課題】固定子コイルに対する前処理を行う必要がなく、かつ鉄心スロットへの固定子コイル挿入作業が容易であり、さらに、鉄心スロット内の熱拡散が良く、電磁振動の抑制効果をより効果的に発揮させること。
【解決手段】固定子コイル6の上面、片側側面および下面の低抵抗コロナ防止層に、袋状部材11中に硬化後に粘弾性が発現する液状充填材12を封入してなる半導電性の固定子コイル固定部材10を覆って一体化した後、固定子コイル6を鉄心スロット3内に挿入し、固定子コイル固定部材中の液状充填材を硬化させて、固定子コイルを鉄心スロット側壁に密着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機、特に水車発電機やタービン発電機等の大型回転電機の固定子コイルの固定方法および同方法により固定子コイルを固定した固定子を有する回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、水車発電機やタービン発電機等の大型回転電機では、固定子コイルに流れる電流と、その電流によって作られる磁束のうち鉄心スロットを横切り固定子コイル自体と鎖交する漏れ磁束との電磁作用で発生する電磁力によって固定子コイルが半径方向に振動することを抑制し、さらに固定子コイル表面に施した低抵抗コロナ防止層の摩耗消失によって鉄心スロット内で部分放電が発生することを防止する目的のために、固定子コイルの側面と鉄心スロット側壁との間に半導電性の波形積層板を打込み、固定子コイルを固定している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の技術について図10を参照して説明する。
図10において、1は回転電機の固定子であり、固定子鉄心2の内周に沿って開口する鉄心スロット3内に、コイル底スペーサ4及びコイル間スペーサ5を介して2本の固定子コイル6を収納している。ここで、固定子コイル6は、上コイル6a、下コイル6bから構成されているが、上コイル、下コイルとして区別して説明する必要のないときは、単に固定子コイル6として説明する。
【0004】
上コイル6aの上部には楔下スペーサ7を配置し、その楔下スペーサ7上部の鉄心スロット開口部に楔8を固く打ち込んで固定子コイル6を鉄心スロット3内に支持固定している。固定子コイル6には導体を流れる電流とこの電流により発生するスロット漏れ磁束とにより電源周波数の2倍の周波数の電磁力が発生しするため、固定子コイル6の片側側面と鉄心スロット3の側壁との間に、半導電性の波形積層板9を打込むことによって、固定子コイル6を鉄心スロット3の他方の側壁に押し付け、波形積層板9のばね力と圧接面の摩擦力を利用して半径方向の振動を抑制し、もって固定子コイルと固定子鉄心間でのスロット放電の発生を防止するようにしている。
【0005】
しかしながら、この様に固定子コイル6の片側側面と鉄心スロット3の側壁との間に波形積層板9を打ち込んで固定子コイルを固定する方法では、長年の経験による熟練した技能が必要であり、しかも作業に長時間を要する欠点がある。さらに、波形積層板9は固定子コイル6と鉄心スロット3壁間に熱伝導性の悪い空気層を形成するため、鉄心スロット3内の熱放散を悪くし、固定子コイルの温度を高い状態にする。固定子コイル6が高温のまま回転電機を長期間に亘って運転すると、固定子コイル6の馴染みや、楔8および波形積層板9等の有機材料に枯れを生じさせる。楔8および波形積層板9が枯れると、バネ力が弱くなるので電磁振動を抑制する効果が低下し、その結果、固定子コイル6の表面に形成されている低抵抗コロナ防止層(図示していない)が振動により摩耗消失し、固定子コイル6と固定子鉄心2間でスロット放電が発生して、固定子コイル6の損傷による絶縁特性の低下を招く恐れがある。
【0006】
なお、本願発明者の一人は、波形積層板を打ち込んで固定子コイルを固定する方法の欠点を除去するための方策の一つとして、以下に述べる特許文献2の発明をした。この特許文献2には、大きく分けて2つの実施形態が開示されている。
【0007】
まず、第1実施形態は、半導電性ゴム状弾性体から成るチューブ状部材で固定子コイルを覆い、その一端部をガラスコード等の紐状体で縛り付けて密封し、鉄心スロット内に固定子コイルを納めて楔を打込んだ後、固定子コイルとチューブ状部材間に半導電性エポキシ樹脂を注入し、当該樹脂を硬化させて鉄心スロット内に強固に支持・固定するものである。
【0008】
また、第1実施形態の変形例は、鉄心スロット内壁と接する固定子コイル側面に位置するチューブ状部材の肉厚部に軸方向に沿って形成した穴(1重穴又は2重穴構造)に、半導電性のエポキシ樹脂を注入し、前記樹脂を硬化させて鉄心スロット内に強固に支持・固定するものである。
【0009】
さらに、第2実施形態は、鉄心スロットの内法寸法よりも固定子コイルが大きくなる肉厚の半導電性の弾性体(シリコーンゴムにカーボン充填)から成るスリーブ状部材でコイルを覆い、当該固定子コイルを鉄心スロット内に圧入後、楔を打込み鉄心スロット内に固定子コイルを隙間なく強固に支持・固定するものである。
【特許文献1】特開2003‐304662号公報
【特許文献2】特開平10‐014183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示された第1実施形態およびその変形例には、次に述べるような改善すべき課題がある。すなわち、
(1) 鉄心スロットと固定子コイルとの隙間が数ミリ程度と狭いため、チューブ状部材の厚みをかなり薄手のものにする必要がある。一方、タービン発電機等に採用される固定子コイルでは、そのコイル辺(直線部;鉄心スロットに収納される部分)とコイル端部(曲がっている部分)とを含めると全長で数mになり、製造上固定子コイル端部の断面寸法が直線部の断面寸法より大きく、寸法の精度も良くないため、固定子コイルにチューブ状部材を覆う作業がかなり難しく長時間を要する。また、固定子コイルにチューブ状部材を覆った後、導電性エポキシ樹脂を注入するために、一方の端部をガラスコード等の紐状体で縛り付けて密封する必要があり、鉄心スロット内に固定子コイルを挿入前の前処理に長時間を要する。
【0011】
(2) 上記(1)の如くチューブ状部材の厚さは、かなり薄手の物になるので、鉄心スロット内に挿入する際、鉄心角部で損傷を受ける可能性がある。チューブ状部材がもし損傷すれば、半導電性エポキシ樹脂を注入するときに漏れてしまい、固定子コイルとスロット間の隙間を埋めることが出来なくなる。
【0012】
(3) また、チューブ状部材が固定子コイルに密着するため、半導電性エポキシ樹脂を注入する時は圧力をかけて注入する装置が必要となる。
(4) 作業が容易な室温硬化型の半導電性エポキシ樹脂を用いた場合、実機運転温度が設計値より高い時には長期運転中に樹脂が劣化し固定力が低下する可能性がある。一方、加熱硬化型の半導電性エポキシ樹脂を用いた場合、工場内では固定子コイル組み立て作業工数が増え、現地(発電所)では加熱装置がないため製造できない。
【0013】
そして、第2実施形態には、次に述べるような改善すべき点がある。すなわち、
(5) 鉄心スロットの内法寸法よりも大きい肉厚のスリーブ状部材でコイルを覆うため、上記(1)と同様に前処理に長時間を要し、鉄心スロット内に挿入時にスリーブ状部材が特に引き裂きに弱い弾性体であるため、鉄心角部で損傷を受ける可能性がある。
【0014】
(6) 鉄心スロット内に固定子コイルを挿入する時、固定子コイル幅が鉄心スロットの内法寸法よりも大きいため、人力ではかなり難しく挿入装置が必要となる。
このように、特許文献2に開示された発明は、実用化するにあたり未だ改善すべき課題を多く残している。
【0015】
本発明は上述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、固定子コイルに対する前処理を行う必要がなく、かつ鉄心スロットへの固定子コイルの挿入作業が容易であり、さらに、鉄心スロット内の熱拡散が良く、電磁振動の抑制効果をより効果的に発揮させることのできる回転電機の固定子コイル固定方法および同方法により固定子コイルを固定した固定子を有する回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転電機の固定子鉄心に設けた鉄心スロット内に収納される固定子コイルの固定方法において、前記固定子コイルの上面、片側側面および下面の3面を内部に硬化後粘弾性を発現する液状充填材を封入した半導電性の固定子コイル固定部材で覆って前記固定子コイルと一体化させた後、当該固定子コイルを鉄心スロット内に挿入し、その後鉄心スロット開口部に楔を打ち込んで前記固定子コイル固定部材を押圧して変形させることにより、前記固定子コイルと鉄心スロット側壁との隙間を固定子コイル固定部材で埋めるとともに、前記固定子コイルを前記鉄心スロットの反対側側壁に密着させ、その後前記液状充填材を硬化させて固定子コイルを鉄心スロット内に固定するようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、回転電機の固定子鉄心に設けた鉄心スロット内に収納される固定子コイルの固定方法において、断面が弧状に湾曲して形成された半導電性積層部材の内側弧面側に、変形能と高張力とを有する半導電性材を一体的に設け、かつ中央部の寸法が鉄心スロット内法寸法から前記固定子コイル幅寸法を差し引いた寸法よりも大きくなるように形成した半導電性の固定子コイル固定部材を前記鉄心スロットの片面側壁に貼付け配置した後、前記固定子コイルを挿入し、その後前記鉄心スロット開口部側から前記固定子コイル固定部材を押圧して変形させることにより、前記固定子コイルを前記鉄心スロットの反対側側壁に密着固定させることを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項7に係る発明は、回転電機の固定子鉄心に設けた鉄心スロット内に収納される固定子コイルの固定方法において、一方に開口を有する細長い扁平な筒状の半導電性収納部材内に、ゲル化マット材を収容してなる半導電性の固定子コイル固定部材を前記鉄心スロット内法寸法から前記固定子コイル幅寸法を差し引いた寸法よりも厚みが小さくなるように形成して、前記鉄心スロット内に挿入し、その後前記半導電性収納部材中に液状充填材を流入しゲル化膨張させて、前記固定子コイルを前記鉄心スロット側壁に密着固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、鉄心スロットへの挿入前に固定子コイルに対する前処理を行う必要がなく、かつ鉄心スロットへの固定子コイル挿入作業が容易であり、しかも長期間使用しても固定力が低下することなく効果的に電磁振動を抑制することのできる回転電機の固定子コイル固定方法および同方法により固定子コイルを固定した回転電機が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図を通して共通する部分には同一符号を付けて重複する部分については適宜説明を省略する。
【0021】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0022】
図1は本実施形態1における回転電機の固定子コイルを鉄心スロット内に組込んだ状態を示す断面図、図2は本実施形態1で採用された固定子コイル固定部材の断面図、図3は固定子コイル固定部材を固定子コイルに取り付けた状態を示す断面図、図4は固定子コイルの最終的固定状態を示す断面図、図5は固定子コイル固定部材の他の例を示す断面図である。
【0023】
本実施の形態1は従来の波形積層板9に替えて、低抵抗コロナ防止層が施された固定子コイル6の表面のうち3面すなわち、片側側面およびその上面、下面の合計3面を固定子コイル固定部材10で一体的に覆って貼り付けて構成したものであり、その他の構成は図10の場合と同じなので説明を省略する。
【0024】
図1乃至図4において、固定子コイル固定部材10は、固定子コイル6のコイルの直線部分(鉄心スロット3に収納される部分)の寸法とほぼ等しい長さを有し、かつ固定子コイル6の片側側面を含む3面すなわち、コイル片側側面、コイル上面およびコイル下面からなる3面の合計寸法(2W1+W2)と同等の幅を有する変形可能な袋状部材11と、この袋状部材11内に液密に封入され、かつ硬化後に粘弾性を発現する液状充填材12と、袋状部材11の幅方向の上縁部および下縁部に対して固定子コイル6の幅(W1)とほぼ等しい幅に塗布された接着用部材13とから構成されている。
【0025】
なお、固定子固定部材10の厚みは、袋状部材11に液状充填材12を封入した状態で鉄心スロット3の内法寸法(W3)から固定子コイル6の幅寸法(W1)を差し引いた寸法W4(W4=W3−W1)よりも厚み(W5)が薄くなる(W4>W5)ように形成されている。
【0026】
ところで、袋状部材11の材質としては、カーボン粒子が配合された耐熱性の高いエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂組成物の内の一つを含浸、硬化して成る半導電性のポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維等から成る織布又は不織布シート材の内の一つが適当である。なお、実施例では、耐熱性の高い不飽和ポリエステル樹脂に表面抵抗率が10〜10Ω程度になる様にカーボン粒子を配合した厚が0.085mm程度のポリエチレンテレフタレート繊維から成る不織布シート材(例えば、イゾラ社製215.51)を袋状に成形加工した。
【0027】
一方、液状充填材12の材質としては、硬化後に粘弾性が発現するシリコーンゲル又はカ−ボン粒子及び酸化マグネシウムや窒化ホウ素等の高熱伝導性の無機充填材が配合されたシリコーンゲルが適当である。なお、実施例では、シリコーンゲル(例えば、GE東芝シリコーン社製TSE3070)にカーボン粒子を配合して表面抵抗率を10〜10Ω程度に調整し、さらに高熱伝導性の無機充填材(例えば、太平洋ランダム社製のLA2000又はLA4000アルミナ粉末)を配合して製作したものを採用した。この実施例の液状充填材は常温で硬化するものである。液状充填材12は、無機充填材の配合により伸びについても調整可能である。また、接着用部材13は、例えば、住友スリーエム製のフックループファスナーである。
【0028】
次に、上記構成の固定子コイル固定部材10を用いて固定子コイル6を鉄心スロット3内に固定する方法について、工程順に説明する。
【0029】
(1) まず、表面に低抵抗コロナ防止層が施された固定子コイル6の片側側面に袋状部材11の接着部材13を塗布していない中間部をあてがって貼り付け位置を調整した後、袋状部材11の上縁部および下縁部に塗られている接着部材13によりそれぞれ固定子コイル6の上面および下面に接着させる。これによって、固定子コイル固定部材10は固定子コイル6の上面、鉄心スロット3側壁に接する片側側面および下面からなる3面に対してコ字状に密着し固定子コイル6と一体化される。なお、この一体化された状態においては、袋状部材11の断面外側の厚み(W4)と固定子コイル6の幅寸法(W1)との合計の寸法(W1+W4)は、鉄心スロット3の内法寸法(W3)よりも僅かに小さい(W1+W4<W3)。
【0030】
(2) 次に、コイル底スペーサ4を配置済みの鉄心スロット3の開口部から、コイル間スペーサ5を挟んだ状態の上コイル6aおよび下コイル6bからなる固定子コイル6を挿入する。この固定子コイル6挿入状態では、未だ袋状部材11の内の液状充填材11は未硬化状態で流動性を有するため、鉄心スロット3の側壁と固定子コイル6との隙間に応じた量以外は、固定子コイル6の下面に位置する袋状部材11中に溜められた状態になっている。この状態を図3に示す。
【0031】
(3) 次に、上コイル6aの上に楔下スペーサ7を配置し、さらにその楔下スペーサ7の上部の鉄心スロット開口部に楔8を固く打込む。鉄心スロット開口部に楔8を打ち込むことによって、固定子コイル6および固定子コイル固定部材10は鉄心スロット底部に向けて強く押圧されるため、固定子コイル6の下面の袋状部材11は薄く変形し、その中に溜められている液状充填材12を袋状部材11内の固定子コイル6の側面側に移動させる。
液状充填材12が固定子コイル6の側面側に移動することによって、袋状部材11の幅は固定子コイル6の側面側が膨らみ、その結果、袋状部材11の周りの空気は鉄心スロット3内から排除され、同時に固定コイル6の袋状部材11で覆われていない反対側側面は鉄心スロット3の側壁に強く密着される。
【0032】
(4) その後、袋状部材11中の液状充填材12を室温で硬化させて液状充填材12に弾性を発現させ、固定子コイル6を弾性を有する固定子コイル固定部材10で固定する。
【0033】
以上述べた本実施形態1の固定子コイルの固定方法によれば、次の効果を奏することができる。すなわち、
(1) 固定子コイルの片側側面、コイル上面およびコイル下面からなる3面に固定子コイル固定部材10の袋状部材11を接着して覆うだけで良いため、固定子コイル6には従来のように、鉄心スロット挿入前の前処理に時間を要することはない。
【0034】
(2) 袋状部材11には硬化後に粘弾性が発現する液状充填材12を封入しているため、鉄心スロット3内へ固定子コイル6を挿入する際は、固定子コイル6の上面、または下面あるいはその両方に液状充填材12が移動し、スロット開口部に楔を打ち込んで鉄心スロット3内底部に押し付ければコイル側面へ移動するので挿入作業が簡単になる。
【0035】
(3) 固定子コイル6に固定用部材10を一体的に貼り付けてもその幅は鉄心スロット3の内法寸法より大きくないため、固定子コイル6を鉄心スロット3への挿入時、袋状部材11が損傷することはない。
【0036】
また、上記の固定方法によって固定された固定子コイルを有する回転電機では、次の効果を奏することができる。
【0037】
(1) 固定子コイル6と鉄心スロット3側壁間および鉄心スロット3側壁、固定子コイル固定部材10、固定子コイル6側壁間の空気が排除されることと、固定子コイル固定部材10が高熱伝導性材で構成されているため、固定子コイル導体に発生した熱を効率良く固定子鉄心2へ伝達して放熱することができ、固定子コイルの温度上昇を抑制することができる。
【0038】
(2) 固定用部材10中の液状充填材11は硬化後に粘弾性が発現し、伸びも大きい(無機充填材配合により伸びを調整可能)ため、運転中の電磁振動を吸収でき、温度により伸びも大きくなるため、運転中に固定力が低下することがない。したがって、回転電機を長期間運転しても、固定子コイル6の表面に施されている低抵抗コロナ防止層が摩耗消失することはなく、固定子コイル6と固定子鉄心2間のスロット放電による固定子コイル6の損傷、絶縁特性の低下を招く恐れはない。
【0039】
(変形例)
なお、図2で示した固定子コイル固定部材10の例では、液状充填材12を封入する範囲は、幅方向の一端からコイル幅(W1)を除く残りの範囲に形成したが、本実施形態1はこれに限定されるものではなく、図5の固定子コイル固定部材10Aように、幅方向の全範囲すなわち、固定子コイル6の上面、下面および片側側面の3つの面と接触する部分全体に封入するように構成しても良い。この図5の固定子コイル固定部材10Aの場合においても、図2の場合と同様な作用効果を奏することは言うまでもない。
【0040】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について、図6および図7を参照して説明する。
図6は本実施形態2における回転電機の固定子コイルを鉄心スロット内に組込んだ状態を示す断面図、図7は本実施形態2で採用した固定子コイル固定部材の断面図である。
【0041】
本実施形態2は、実施形態1で採用した固定子コイル固定部材10に替えて、図7で示す固定子コイル固定部材10Bを用いて固定子コイル6を鉄心スロット3内に固定するようにしたものである。
【0042】
本実施形態2で用いた固定子コイル固定部材10Bは、固定子コイルの直線部分とほぼ同じ長さを有し、かつ幅方向の断面が弧(三日月)を描くように湾曲して形成された半導電性積層部材14と、この半導電性積層部材14に形成された内側弧面(凹面)に対して、変形能と高張力とを併せ持つ半導電性材15を一体化して設けたものである。しかも、この固定子コイル固定部材10Bは、幅方向の中央部の寸法(W6)を鉄心スロット3の内法寸法(W3)から固定子コイル6の幅寸法(W1)を差し引いた寸法よりも若干大きくなるように(W6>W3―W1)形成されている。
【0043】
ところで、半導電性積層部材14としては、カーボン粒子が配合された耐熱性の高いエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂組成物の内の一つを用いて含浸して成るアルミナ又はガラス繊維織布を複数枚積層して成形したものが適当である。
【0044】
なお、実施例では、表面抵抗率が10〜10Ω程度になる様にカーボン粒子を配合した加熱硬化型のエポキシ樹脂組成物(例えば、DEN438とエピコート1001及び橋本化成製BF3−400)を、ガラス繊維織布(例えば、日東紡績社製WE26−104)に含浸し半硬化状したシート材を複数枚積層して加熱・加圧成形した後、中央部が鉄心スロット3の内法寸法(W3)から固定子コイル6の幅寸法(W1)を差し引いた寸法よりも大きくなるように弧状に曲げた状態で半導電性材15を流し込み接着硬化して一体化した。
【0045】
一方、半導電性材15としては、カーボン粒子及び酸化マグネシウムや窒化ホウ素等の高熱伝導性の無機充填材が配合されたシリコーンゲルからなる変形能および高張力を有するものが適当である。
【0046】
なお、実施例では、シリコーンゲル(例えば、GE東芝シリコーン社製TSE3070)にカーボン粒子を配合して表面抵抗率を10〜10Ω程度に調整し、さらに高熱伝導性の無機充填材(例えば、太平洋ランダム社製のLA2000又はLA4000アルミナ粉末)を配合したものを採用した。
【0047】
次に、上記のように構成された固定子コイル固定部材10Bを用いて固定子コイル6を鉄心スロット3内に固定する方法について、工程順に説明する。
【0048】
(1) まず、固定子コイル固定部材10Bの半導電性材15の表面に接着材を塗り、鉄心スロット3の一側壁に貼り付け、この状態を保持する。
【0049】
(2) 次に、鉄心スロット3の底にコイル底スペーサ3を配置した後、表面に低抵抗コロナ防止層の施された上コイル6aおよび下コイル6b間にコイル間スペーサ5を挟んだ状態の固定子コイル6を鉄心スロット3の開口部から挿入する。この場合、固定子コイル固定部材10Bの幅方向中央部の厚み(W6)は、鉄心スロット内法寸法(W3)から固定子コイル幅(W1)を差し引いた寸法よりも若干厚いが、固定子コイル6を鉄心スロット開口部側から強く押圧すると挿入することができる。この状態では、固定子コイル固定部材10Bの半導電性積層部材14は幅方向に若干反った状態になり、これに伴って半導電性材15は押し広げられた状態に変形する。
【0050】
(3) 次に、上コイル6aの上に楔下スペーサ7を配置し、さらにその楔下スペーサ7の上部の鉄心スロット開口部に楔8を固く打込む。鉄心スロット開口部に楔8を固く打込むことによって、固定子コイル固定部材10Bは幅方向に変形して膨らみ、その結果、鉄心スロット3側壁、固定子コイル固定部材10Bおよび固定子コイル6側壁間にも空気層は無い状態で密着する。同時に固定子コイル固定部材10Bにより、固定コイル6の反対側側面は鉄心スロット3の側壁に強く密着される。固定子コイル6を鉄心スロット3側壁に強く密着固定する。
【0051】
なお、上述した工程では、固定子コイル固定部材10Bを鉄心スロット3側壁に配置した後、鉄心スロット3の底にコイル底スペーサ3を配置するようにしたが、逆に、鉄心スロット3の底にコイル底スペーサ3を配置した後、固定子コイル固定部材10Bを鉄心スロット3側壁に配置するようにしてもよい。
【0052】
以上述べた本実施形態2の固定子コイルの固定方法によれば、次の効果を奏することができる。すなわち、
(1) 弧状に曲げた半導電性積層部材14と、この半導電性積層部材14の凹面に変形能と高張力を有する半導電性材15を接着硬化させて一体化した熱伝導性の良い固定子コイル固定部材10Bを、鉄心スロット3の一側壁に貼付け配置した状態で鉄心スロット開口部から固定子コイル6を挿入するようにしたので、前述した特許文献2の記載の実施形態のように、固定子コイル1を鉄心スロット3内へ挿入する前の前処理に時間を要することはない。
【0053】
(2) 固定子コイル固定部材10Bの半導電性積層部材14に一体的に設けた半導電性材15は、変形能と高張力とを有するため、固定子コイル6を簡単に鉄心スロット3内へ挿入することができる。
【0054】
また、上記の固定方法によって固定された固定子コイルを有する回転電機では、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、
固定子コイルの挿入中は、変形能と高張力を有するシリコーンゲルによる半導電性材15が押し広げられて鉄心スロット側壁と固定子コイル間に生じる隙間を埋めるので、固定子コイル6と鉄心スロット3側壁間、鉄心スロット3側壁、固定子コイル固定部材10Bおよび固定子コイル6側壁間に熱伝導性の悪い空気層の形成を局所化することができ、固定子コイル導体に発生した熱を効率良く固定子鉄心へ伝達し放熱することができる。この結果、回転電機を長期間に亘って運転しても固定子コイル固定部材10Bは弾力を維持し、固定子コイルの電磁振動を効果的に抑制して固定子コイル6表面に施されている低抵抗コロナ防止層の摩耗消失を防ぎ、固定子コイル6と固定子鉄心2間のスロット放電による固定子コイル6の損傷、絶縁特性の低下を招く恐れはない。
【0055】
(実施形態3)
本発明の実施形態3について、図8および図9を参照して説明する。
図8は本実施形態3における回転電機の固定子コイルを鉄心スロット内に組込んだ状態を示す断面図、図9は本実施形態3で採用した固定子コイル固定部材の断面図である。
【0056】
本発明の実施形態3は、実施形態1で採用した固定子コイル固定部材10に替えて、図9で示す固定子コイル固定部材10Cを用いて固定子コイル6を鉄心スロット3内に固定するようにしたものである。
【0057】
本実施の形態3で採用した固定子コイル固定部材10Cは、固定子コイル辺とほぼ同じ長さを有し、その長さ方向の端部の一方が閉じられ他方が開放された細長い扁平な筒状の半導電性収納部材16の中に、ゲル化マット材17を内挿し、固定子コイル収納後にこのゲル化マット材13をゲル化するようにしたものである。しかも、この固定子コイル固定部材10Cの厚み(W7)は、鉄心スロット3の内法寸法(W3)から前記固定子コイル6の幅寸法(W1)を差し引いた寸法(W3−W1)よりも若干薄くなるように形成されている。
【0058】
ここで、細長い扁平な筒状の半導電性収納部材16としては、カーボン粒子が配合された耐熱性の高いエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂組成物の内の一つを含浸、硬化して成る半導電性のポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維等から成る織布又は不織布シート材の内の一つを用いて細長い扁平な筒状に成形することが適当である。
【0059】
なお、実施例では、加熱硬化型のシリコ−ンゴム(例えば、GE東芝シリコーン製TSE3431−H)にカーボン粉末を配合し、0.1mm厚さのポリエチレンテレフタレート繊維から成る不織布シート材に含浸し硬化させて表面抵抗率が10〜10Ω程度に調整した後、一端に口を開けた細長い扁平な筒状に成形した。
【0060】
そして、この半導電性収納部材16の中に挿入された粉末油ゲル化剤が充填されたマット材13(例えば、アルファジャパン社製のアルファゲルー1000)を挿入した後、室温硬化型のシリコーンゴム(例えば、GE東芝シリコーン社製のTSE382)を用いて、前記固定子コイル6の鉄心スロット3側壁と接する片面にスポット的に接着固定した。なお、液状充填材として高耐熱性のシリコーンオイルを用いた。
【0061】
次に、上記の固定子コイル固定部材10Cを用いて固定子コイル6を鉄心スロット3内に固定する方法について、工程順に説明する。
【0062】
(1) まず、鉄心スロット3内法寸法(W3)から前記固定子コイル6幅寸法(W1)を差し引いた寸法よりも若干薄い厚みに形成された固定子コイル固定部材10Cを、鉄心スロット3の一側壁(図8では右側面)に貼り付けるようにして配置する。
【0063】
(2) 次に、鉄心スロット3の底にコイル底スペーサ3を配置した後、表面に低抵抗コロナ防止層が施された上コイル6aおよび下コイル6b間にコイル間スペーサ5を挟んだ状態の固定子コイル6を鉄心スロット3の開口部から挿入する。
【0064】
(3) 次に、上コイル6aの上に楔下スペーサ7を配置し、さらにその楔下スペーサ7の上部の鉄心スロット開口部に楔8を固く打込むことによって、固定子コイル6を鉄心スロット3の側壁に密着固定する。
【0065】
(4) この状態で、半導電性収納部材16の開口部から内部に液状充填材を注入して密封する。その後、ゲル化充填材がゲル化膨張して、固定子コイル6を鉄心スロット3側壁に強く密着固定する。
【0066】
以上述べた本実施形態3の固定子コイルの固定方法によれば、次の効果を奏することができる。すなわち、
粉末油ゲル化剤が充填されたマット材を挿入した半導電性収納部材を前記鉄心スロット内に配置した後、液状充填材の高耐熱性のシリコーンオイルを半導電性収納部材の粉末油ゲル化剤が充填されたマット材に注入しゲル化膨張させるため、熟練した経験や長時間の作業を要せずに固定子コイルを鉄心スロット内へ比較的容易に挿入することができる。
【0067】
また、上記の固定方法によって固定された固定子コイルを有する回転電機では、固定子コイル6と鉄心スロット3側壁とが直接密着しない固定子コイル固定部材10Cの挿入部側は、鉄心スロット側壁と固定子コイル間に生じる隙間をゲル化膨張した熱伝導性の良いゲル化マット材が埋めるので、前記固定子コイルと前記鉄心スロット側壁間に熱伝導性の悪い空気層の形成を局所化でき、固定子コイル導体に発生した熱を効率良く前記固定子鉄心へ伝達し放熱することができる。
【0068】
この結果、実施形態1同様、回転電機を長期間に亘って運転しても固定子コイル固定部材10Cは弾力を維持し、固定子コイル6の電磁振動を効果的に抑制して固定子コイル6表面に施されている低抵抗コロナ防止層の摩耗消失を防ぎ、固定子コイル6と固定子鉄心2間のスロット放電による固定子コイル6の損傷、絶縁特性の低下を招く恐れはない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態1における回転電機の固定子コイルを鉄心スロット内に組込んだ状態を示す断面図。
【図2】実施形態1で採用した固定子コイル固定部材の断面図。
【図3】固定子コイル固定部材を固定子コイルに取り付けた状態を示す断面図。
【図4】固定子コイルの最終的固定状態を示す断面図。
【図5】固定子コイル固定部材の他の例を示す断面図。
【図6】本発明の実施形態2における回転電機の固定子コイルを鉄心スロット内に組込んだ状態を示す断面図。
【図7】実施形態2で採用した固定子コイル固定部材の断面図。
【図8】本発明の実施形態3における回転電機の固定子コイルを鉄心スロット内に組込んだ状態を示す断面図。
【図9】実施形態3で採用した固定子コイル固定部材の断面図。
【図10】従来技術による回転電機の固定子コイルを鉄心スロット内に組込んだ状態を示す断面図。
【0070】
1…回転電機、2…固定子鉄心、3…鉄心スロット、4…コイル底スペーサ、5…コイル間スペーサ、6…固定子コイル、7…楔下スペーサ、8…楔、10,10A,10B,10C…固定子コイル固定部材、11…半導電性積層部材、12…液状充填材、13…接着用部材、14…半導電性材、15…半導電性材、16…半導電性収納部材、17…ゲル化マット材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の固定子鉄心に設けた鉄心スロット内に収納される固定子コイルの固定方法において、
前記固定子コイルの上面、片側側面および下面の3面を内部に硬化後粘弾性を発現する液状充填材を封入した半導電性の固定子コイル固定部材で覆って前記固定子コイルと一体化させた後、当該固定子コイルを鉄心スロット内に挿入し、その後鉄心スロット開口部に楔を打ち込んで前記固定子コイル固定部材を押圧して変形させることにより、前記固定子コイルと鉄心スロット側壁との隙間を固定子コイル固定部材で埋めるとともに、前記固定子コイルを前記鉄心スロットの反対側側壁に密着させ、その後前記液状充填材を硬化させて固定子コイルを鉄心スロット内に固定するようにしたことを特徴とする回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項2】
前記液状充填材は、シリコーンゲル又はカ−ボン粒子及び酸化マグネシウムや窒化ホウ素等の高熱伝導性の無機充填材が配合されたシリコーンゲルから成ることを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項3】
前記固定子コイル固定部材は、カーボン粒子が配合された耐熱性の高いエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂組成物の内の一つを含浸、硬化して成る半導電性のポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維等から成る織布又は不織布シート材の内の一つを用いて変形可能な袋状部材を成形し、固定子コイル固定部材の厚みが前記鉄心スロット内法寸法から前記固定子コイル幅寸法を差し引いた寸法よりも大きくならないように、前記袋状部材に前記液状充填材を封入したことを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項4】
回転電機の固定子鉄心に設けた鉄心スロット内に収納される固定子コイルの固定方法において、
断面が弧状に湾曲して形成された半導電性積層部材の内側弧面側に、変形能と高張力とを有する半導電性材を一体的に設け、かつ中央部の寸法が鉄心スロット内法寸法から前記固定子コイル幅寸法を差し引いた寸法よりも大きくなるように形成した半導電性の固定子コイル固定部材を前記鉄心スロットの片面側壁に貼付け配置した後、前記固定子コイルを挿入し、その後前記鉄心スロット開口部側から前記固定子コイル固定部材を押圧して変形させることにより、前記固定子コイルを前記鉄心スロットの反対側側壁に密着固定させることを特徴とする回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項5】
前記半導電性材は、カーボン粒子及び酸化マグネシウムや窒化ホウ素等の高熱伝導性の無機充填材が配合されたシリコーンゲルから成ることを特徴とする請求項4記載の回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項6】
前記半導電性積層部材は、カーボン粒子が配合された耐熱性の高いエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂組成物の内の一つを用いて含浸して成るアルミナ又はガラス繊維織布を複数枚積層したことを特徴とする請求項4記載の回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項7】
回転電機の固定子鉄心に設けた鉄心スロット内に収納される固定子コイルの固定方法において、
一方に開口を有する細長い扁平な筒状の半導電性収納部材内に、ゲル化マット材を収容してなる半導電性の固定子コイル固定部材を前記鉄心スロット内法寸法から前記固定子コイル幅寸法を差し引いた寸法よりも厚みが小さくなるように形成して、前記鉄心スロット内に挿入し、その後前記半導電性収納部材中に液状充填材を流入しゲル化膨張させて、前記固定子コイルを前記鉄心スロット側壁に密着固定することを特徴とする回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項8】
前記半導電性収納部材は、カーボン粒子が配合された耐熱性の高いエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂組成物の内の一つを含浸、硬化して成る半導電性のポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維等から成る織布又は不織布シート材の内の一つを用いて一方が閉じられた細長い扁平な筒状に成形された後、粉末油ゲル化剤が充填されたマット材を挿入したことを特徴とする請求項7記載の回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項9】
前記液状充填材として、高耐熱性のシリコーンオイルを用いたことを特徴とする請求項7記載の回転電機の固定子コイル固定方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の固定子コイル固定方法により固定子コイルを固定した固定子を有する回転電機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−180611(P2006−180611A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370629(P2004−370629)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】