説明

回転電機用エンドプレート及び回転電機

【課題】回転電機用エンドプレートにおいて、軸心冷却構造を実現するための冷媒通路を有する構成で製造コストを低減することである。
【解決手段】エンドプレート34は、回転可能に設けられるロータシャフト16の外径側にロータコア32とともに嵌合し、ロータコア32の軸方向の変位を規制する。エンドプレート34は、金属板に円形の曲げ加工を施すことにより形成し、周方向両端縁同士の間の隙間により径方向のプレート側冷媒通路50を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能に設けられるロータシャフトの外径側にロータコアとともに嵌合され、ロータコアの軸方向の変位を規制する回転電機用エンドプレート及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている、車両用電動機等の回転電機として、例えばロータシャフトの外径側に固定されたロータと、ロータの外径側に対向配置されたステータとを備える構成がある。また、ロータは、磁性材製のロータコアの内部に永久磁石を設ける場合がある。このような回転電機では、使用時にロータが発熱するのを抑制し、ロータの性能を維持する等のためにロータを冷却することが行われている。例えば、ロータシャフトの内部に軸側冷媒通路を形成し、軸側冷媒通路に冷媒である冷却液(例えば冷却油)を供給し、ロータに径方向外側に冷却油を流してロータを冷却する、いわゆる軸心冷却構造とすることが考えられる。一方、ロータは、ロータコアとともに、ロータシャフトの外径側に嵌合され、ロータコアの軸方向の変位を規制するエンドプレートを含む場合がある。また、軸心冷却構造でエンドプレートを含む場合に、エンドプレートに冷却液通路を形成する場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、回転軸の外径側に設けられたロータと、ロータの外径側に対向配置されたステータとを備え、回転軸の内部にシャフト流路が形成される回転電機の冷却構造が記載されている。また、回転軸の外周にロータコアを嵌合配置するとともに、回転軸の外周面にロータコアの軸方向両端部に対向するようにエンドプレートが嵌合されている。さらに、回転軸に形成された、シャフト流路と外周面とを通じさせる径方向の孔と、エンドプレートのロータコア側の面に形成された冷媒通路と、エンドプレートに形成された第1排出孔とを通じて、油が吐出され、ステータのコイルエンドに吹き付けられるとされている。また、冷媒通路の外周側に排出溝及び第2排出孔を設けることで、エンドプレートの最外周部の端面とロータコアの最外周部の端面との間の隙間から油が漏れ出て、ステータとロータとの隙間に油が侵入することによる引き摺り損を抑制するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−142788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載された構成で、シート状の金属板から環状のエンドプレートを打ち抜き加工により造る場合、エンドプレートの中心部等の打ち抜きにより多くの無駄な廃材が生じてエンドプレート及び回転電機の歩留まりが悪化し、製造コストの上昇を招く可能性がある。さらに、金属板の打ち抜き後に、エンドプレートに冷却液通路を形成するための加工を行うと、さらなる製造コストの上昇を生じやすい。特に、ロータの内径が大きくなる場合には、エンドプレートの内径も大きくなるので、打ち抜き加工による廃材量がより多くなり、製造コストがさらに上昇しやすい。
【0006】
本発明の目的は、回転電機用エンドプレート及び回転電機において、軸心冷却構造を実現するための冷媒通路を有する構成で製造コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転電機用エンドプレートは、回転可能に設けられるロータシャフトの外径側にロータコアとともに嵌合され、前記ロータコアの軸方向の変位を規制する回転電機用エンドプレートであって、板材に円形の曲げ加工を施すことにより形成され、周方向両端縁同士の間の隙間により径方向のプレート側冷媒通路が形成されていることを特徴とする回転電機用エンドプレートである。
【0008】
本発明の回転電機用エンドプレートによれば、板材の打ち抜き加工によりエンドプレートを形成する場合と異なり、打ち抜き加工による廃材を生じずに済むので、歩留まりが向上して、製造コストの低減を図れる。また、エンドプレートの周方向両端縁同士の間の隙間により径方向のプレート側冷媒通路を形成できるので、プレート側冷媒通路が軸心冷却構造を実現するための冷媒通路となり、エンドプレート回転時の遠心力の作用により冷却液等の冷媒を径方向外側に送ることができる。しかも打ち抜き加工後のエンドプレートの片面の溝加工を行う必要がなくなり、さらなるコスト低減を図れる。
【0009】
また、本発明に係る回転電機は、回転可能に設けられるロータシャフトと、前記ロータシャフトの外径側に固定されたロータコアと、前記ロータシャフトの外径側の少なくとも前記ロータコアの軸方向片側に固定され、前記ロータコアの軸方向の変位を規制する1枚または複数枚の回転電機用エンドプレートと、前記ロータコアの外径側に対向配置されるステータとを備える回転電機であって、前記1枚または複数枚の回転電機用エンドプレートのそれぞれは、請求項1に記載の回転電機用エンドプレートであることを特徴とする回転電機である。
【0010】
本発明の回転電機によれば、板材の打ち抜き加工によりエンドプレートを形成する場合と異なり、打ち抜き加工による廃材を生じずに済むので、歩留まりが向上して、製造コストの低減を図れる。また、エンドプレートの周方向両端縁同士の間の隙間により径方向のプレート側冷媒通路を形成できるので、プレート側冷媒通路が軸心冷却構造を実現するための冷媒通路となり、エンドプレート回転時の遠心力の作用により冷却液等の冷媒を径方向外側に送ることができる。しかも打ち抜き加工後のエンドプレートの片面の溝加工を行う必要がなくなり、さらなるコスト低減を図れる。
【0011】
また、本発明に係る回転電機において好ましくは、前記ロータシャフトの外径側の少なくとも前記ロータコアの軸方向片側に、前記複数枚の回転電機用エンドプレートが固定されており、前記各回転電機用エンドプレートは、互いに前記プレート側冷媒通路の位相がずれて積層されている。
【0012】
上記構成によれば、強度上必要とされる複数枚のエンドプレートの全体の厚さを従来品で必要とされる1枚のエンドプレートの厚さと同程度とすることで、各エンドプレートの厚さを小さくできる。このため、各エンドプレートを円形に曲げ加工する作業の際の加工に要する力を小さくできる。さらに、複数枚のエンドプレート全体の周方向の位相がずれた複数個所にプレート側冷媒通路が形成されるので、回転電機の冷却性能の向上を図れる。
【0013】
また、本発明に係る回転電機において好ましくは、前記ロータシャフトは、内部に設けられ、外周面と通じる軸側冷媒通路を含み、前記軸側冷媒通路は、直接または前記ロータコアに設けられたコア側冷媒通路を介して前記プレート側冷媒通路に連通している。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る回転電機用エンドプレート及び回転電機によれば、回転電機用エンドプレート及び回転電機において、軸心冷却構造を実現するための冷媒通路を有する構成で製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の回転電機用エンドプレートの1例を含む回転電機の部分断面図である。
【図2】図1から1つのエンドプレートを取り出して軸方向に見た図である。
【図3】図2のエンドプレートの製造時に金属板からエンドプレートが形成される様子を示す図である。
【図4】比較例のエンドプレートの製造時に無駄な廃材が生じる様子を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の回転電機の別例において、ロータ及びロータシャフトの部分断面図である。
【図6】ロータの全周に関する、図5のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、図1〜3を用いて本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態の回転電機用エンドプレートを含む本実施形態の回転電機は、例えば電気自動車や、燃料電池車や、エンジン及びモータを車両の駆動源として搭載するハイブリッド車両を駆動する走行用のモータとして、または、発電機として、または、その両方の機能を有するモータジェネレータとして使用する。例えば、回転電機をモータジェネレータとして使用する場合、主として発電機として使用する第1モータジェネレータ(MG1)でも、主として走行用モータとして使用する第2モータジェネレータ(MG2)でも、いずれでも本実施形態を適用できる。また、回転電機の出力を1段または多段の変速機で変速するような車両駆動装置に、回転電機を組み込むこともできる。
【0017】
図1は、本実施形態の回転電機の部分断面図である。図1に示すように、回転電機10は、ケーシング14に図示しない軸受により回転可能に支持された、すなわち回転可能に設けられるロータシャフト16と、ロータシャフト16の中間部の外径側に嵌合固定されたロータ18と、ロータ18の外径側に径方向の隙間であるエアギャップ19を介して対向配置されたステータ20とを備える。ステータ20は、例えばケーシング14の内周面に固定されている。このような回転電機10は、ロータシャフト16の内部に冷媒であり、冷却液であるATF等の冷却油を流し、ロータ18に径方向外側に冷却油を流す構造である、いわゆる軸心冷却構造を形成し、ロータ18とステータ20とを冷却している。
【0018】
ステータ20は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層することにより構成される積層体等の磁性材により形成されるステータコア24と、ステータコア24の内周面の周方向複数個所に径方向に突出形成されたティース26と、ティース26に巻装された複数相(例えば3相の)のステータコイル28とを含む。ステータコイル28において、ステータコア24の軸方向両側面よりも外側に突出する部分により、一対のコイルエンド30が形成されている。ステータコア24は、ケーシング14の内面に固定されている。複数相のステータコイル28は、集中巻きまたは分布巻きまたは波巻き等でステータコア24に巻装されている。
【0019】
ケーシング14は、ステータ20とロータ18とを収容している。ロータ18は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層することにより構成される積層体等の磁性材により形成される略円筒状のロータコア32と、ロータコア32の内部の周方向複数個所に埋め込まれた図示しない永久磁石とを含む。複数の永久磁石は、それぞれロータ18の径方向に着磁して、ロータ18の外周部の周方向複数個所の磁気特性を周方向に交互に異ならせている。なお、複数の永久磁石は2個1組として、ロータコア32の周方向複数個所にそれぞれ径方向外側に広がるV字形に配置することもできる。
【0020】
また、ロータコア32の軸方向両側に一対の円板状の非磁性材料からなる回転電機用エンドプレート(以下、単に「エンドプレート」という。)34が配置されており、一対のエンドプレート34によりロータコア32が軸方向両側から挟持されている。各エンドプレート34の詳しい構成については後述する。
【0021】
また、ロータシャフト16は一端部(図1の左端部)外周面に外向きフランジ36が形成されるとともに、2枚のエンドプレート34及びロータコア32をロータシャフト16の外径側に嵌合させた状態で、ロータシャフト16の他端部(図1の右端部)を径方向外側にかしめ加工することで、かしめ部38が形成されている。外向きフランジ36とかしめ部38とで、一対のエンドプレート34及びロータコア32が挟持される。このため、各エンドプレート34はロータコア32の軸方向の変位を規制する。また、ロータシャフト16の内側に冷却油を軸方向に流す軸方向通路40と、冷却油を径方向に流す径方向通路42とが形成されている。径方向通路42は、軸方向通路40とロータシャフト16の外周面とを通じさせている。軸方向通路40と径方向通路42とにより、ロータシャフト16の内部に設けられ、ロータシャフト16の外周面と通じる軸側冷媒通路44が形成される。
【0022】
また、ロータコア32の内周面の周方向一部で、径方向通路42の径方向(「径方向」とは特に断らない限りロータの径方向をいう。本明細書全体及び特許請求の範囲で同じである。)外端と対向する部分に、ロータコア32の軸方向全長にわたるコア側冷媒通路である軸方向内周溝46が形成されている。
【0023】
次に、図2〜3を用いて、本実施形態のエンドプレート34を説明する。図2は、図1から1つのエンドプレート34を取り出して軸方向に見た図である。図2に示すように、各エンドプレート34は、非磁性の板材である金属板(例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム材等の板材)により造られ、円形の周方向一部が切断されたような形状を有する。このようなエンドプレート34は、図3に(a)(b)(c)の順で示すように加工することにより形成される。図3(a)は、エンドプレート34を形成する素材である矩形状の金属板48を示しており、図3(b)は金属板48を曲げ加工している途中の状態を示しており、図3(c)はエンドプレート34を示している。すなわち、図3(a)の矩形状の金属板48に、図示しない曲げ加工装置を用いて円形に曲げ加工、すなわち周方向両端が離れるような円形に曲げ形成する加工を施すことにより図3(b)の状態を経て、図3(c)に示すエンドプレート34が形成される。エンドプレート34では、周方向両端縁同士の間の隙間により径方向のプレート側冷媒通路50が形成されている。
【0024】
そして図1に示すように、プレート側冷媒通路50の周方向(「周方向」とは特に断らない限りロータの周方向をいう。本明細書全体及び特許請求の範囲で同じである。)の位相がロータコア32の軸方向内周溝46の周方向の位相と一致するように、ロータコア32とともに各エンドプレート34をロータシャフト16の外径側に嵌合固定している。このため、各エンドプレート34に設けられたプレート側冷媒通路50同士は、軸方向内周溝46を介して連通している。また、軸側冷媒通路44は、軸方向内周溝46を介して各プレート側冷媒通路50に連通している。なお、ロータコア32と各エンドプレート34との整合する軸方向にリベットピン等のピン部材を挿通させたり、互いに整合する周方向複数個所を軸方向に押圧して、かしめ部を形成することで、ロータコア32及び各エンドプレート34を一体構造とすることもできる。このかしめ部はロータコア32のみに形成して、複数の鋼板を一体構造とすることもできる。
【0025】
なお、図1の例では、各コイルエンド30を含むステータ20の軸方向長さを、各エンドプレート34を含むロータ18の軸方向長さよりも小さくしている。ただし、ステータ20の軸方向長さは、ロータ18の軸方向長さと同じとしてもよく、また、ロータ18の軸方向長さよりも少し大きくすることもできる。また、ロータ18回転時の遠心力の作用により、各エンドプレート34のプレート側冷媒通路50から外側に噴出された冷却油が各コイルエンド30に向け飛ばされるようにしている。また、図示の例では、ケーシング14の内周面とステータコア24の外周面との周方向一部または周方向複数個所にステータコア24の全長にわたる軸方向通路52を形成し、軸方向通路52に冷却油が入り込むことを可能としているが、この軸方向通路52を省略することもできる。
【0026】
このような回転電機10では、複数相のステータコイル28に複数相の交流電流を流すことで、ステータ20に回転磁界を生じさせ、ロータ18をロータシャフト16とともに回転させることができる。
【0027】
このような回転電機10を含む回転電機冷却構造では、図1に矢印αで示すように、図示しないポンプ等により構成される冷却油供給装置から、ロータシャフト16の軸方向通路40に冷却油が供給されると、その冷却油は、径方向通路42を介して軸方向内周溝46から両側のエンドプレート34のプレート側冷媒通路50に供給される。各プレート側冷媒通路50に供給された冷却油は、ロータ18の回転時の遠心力の作用によりロータ18を冷却しつつ、図1に矢印βで示すように外径側に飛ばされて、ステータコイル28やステータコア24を冷却する。
【0028】
このようなエンドプレート34及び回転電機10によれば、金属板の打ち抜き加工によりエンドプレートを形成する従来構造の場合と異なり、打ち抜き加工による廃材を生じずに済むので、歩留まりが向上して、製造コストの低減を図れる。すなわち、図4は、本発明から外れる比較例のエンドプレート54の製造時に無駄な廃材が生じる様子を示す図である。図4の比較例では、長いシート状の非磁性材製の金属板56の複数個所を、図4の白い部分をドーナツ状にプレス加工により打ち抜くことで、複数の円環状のエンドプレート54を形成している。このため、比較例では、打ち抜き加工の際に、図4で斜線部で示す、金属板56の外周部と、エンドプレート34の中心部との多くの廃材が生じやすい。したがって、エンドプレート34の歩留まりが悪化して、製造コストが上昇する要因となる。これに対して、本実施形態によれば、このような廃材を生じずに済むので、コスト低減を図れる。特に、エンドプレート34(図2等)の内径が大きくなる場合には、比較例で廃材量がより多くなるため、比較例に対して本発明の効果が顕著になる。
【0029】
また、本実施形態では、各エンドプレート34の周方向両端縁同士の間の隙間により径方向のプレート側冷媒通路50(図2等)を形成できるので、プレート側冷媒通路50が軸心冷却構造を実現するための冷媒通路となり、エンドプレート34の回転時の遠心力の作用により冷却油を径方向外側に送ることができる。しかもプレート側冷媒通路50を形成するために、打ち抜き加工後のエンドプレート34の片面の溝加工を行う必要がなくなり、さらなるコスト低減を図れる。この結果、エンドプレート34及び回転電機10において、軸心冷却構造を実現するためのプレート側冷媒通路50を有する構成で製造コストを低減することができる。
【0030】
なお、図1の例では、ロータシャフト16の軸側冷媒通路44と、ロータコア32の軸方向内周溝46とを介して、冷却液をエンドプレート34のプレート側冷媒通路50に流すようにしている。ただし、ロータシャフト16の軸側冷媒通路44から、ロータコア32の内周部を介さずに、直接各エンドプレート34のプレート側冷媒通路50に冷却液を流すようにすることもできる。例えば、ロータシャフト16の軸方向に関して各エンドプレート34のプレート側冷媒通路50の径方向内端と整合する複数個所に、軸方向通路40と通じる径方向通路を形成することもできる。
【0031】
また、ロータコア32の内周面とロータシャフト16の外周面との間の全周にわたって円筒状冷媒通路を形成することもできる。この場合、例えば、ロータコア32の内径をロータシャフト16の外径よりも少し大きくし、ロータコア32をロータシャフト16の外周面に隙間嵌めで嵌合し、両側から締まり嵌めで固定した一対のエンドプレート34で、ロータシャフト16にロータコア32を固定する。
【0032】
また、図1の例(後述する図5の別例の場合も同様)では、ロータコア32の軸方向両側に一対のエンドプレート34を配置しているが、ロータコア32の軸方向片側のみにエンドプレート34を配置することもできる。この場合、例えば、図1のロータコア32の左側に配置されるエンドプレート34を省略し、図1のロータコア32の右側に配置されるエンドプレート34と外向きフランジ36との間でロータコア32を挟持する。
【0033】
図5は、本発明の実施形態の回転電機の別例において、ロータ及びロータシャフトの部分断面図である。図6は、ロータの全周に関する、図5のA−A断面図である。図5〜6に示す別例の場合、上記の図1〜3に示した実施形態でロータコア32の両側に配置するエンドプレート34(図1等参照)の代わりに、それぞれ複数枚(図示の例では3枚)のエンドプレート58を使用している。すなわち、ロータシャフト16の外径側において、ロータコア32の軸方向両側にそれぞれ複数枚のエンドプレート58を固定している。また、各エンドプレート58の構成は、上記の図1〜3に示した実施形態を構成する各エンドプレート34で軸方向厚さを小さくしたものと同様である。すなわち、各エンドプレート58は、板材である非磁性材製の金属板に円形の曲げ加工を施すことにより形成され、周方向両端縁同士の間の隙間により径方向のプレート側冷媒通路50が形成されている。なお、ロータコア32の軸方向両側のそれぞれに配置するエンドプレート58の枚数は2枚以上であればよく、その枚数を限定するものではない。
【0034】
そしてロータコア32の軸方向のそれぞれの側の複数のエンドプレート58が、図6に示すように、互いにプレート側冷媒通路50の周方向の位相をずらして積層されている。また、各プレート側冷媒通路50がエンドプレート58の周方向に関して等間隔複数個所(図6では3個所)に配置されている。さらにロータコア32の内周面には、軸方向内周溝46(図1参照)を形成せず、ロータコア32の内周面を円筒面としている。その代わりに、ロータシャフト16の軸方向両側部分で、それぞれプレート側冷媒通路50と位相が一致する周方向複数個所(図6では3個所)に、軸方向通路40と通じる径方向通路60が形成されている。各径方向通路60は、対応するプレート側冷媒通路50を軸方向通路40に通じさせる。
【0035】
このような複数のエンドプレート58を含む回転電機では、使用時に図示しない冷却油供給装置から、ロータシャフト16の軸方向通路40に冷却油が供給されると、その冷却油は、図5に矢印γで示すように、対応する径方向通路60を介して複数のエンドプレート58のプレート側冷媒通路50に供給される。各プレート側冷媒通路50に供給された冷却油は、ロータ18回転時の遠心力の作用によりロータ18を冷却しつつ、図6に矢印δで示すように、外径側に飛ばされて、ステータコイル28(図1参照)やステータコア24(図1参照)を冷却する。
【0036】
このような別例の回転電機によれば、強度上必要とされる複数枚のエンドプレート58の全体の厚さを、従来品で必要とされる1枚のエンドプレートの厚さと同程度とすることで、各エンドプレート58の厚さを小さくできる。このため、各エンドプレート58を円形に曲げ加工する作業の際の加工に要する力を小さくできる。さらに、ロータ18の軸方向のそれぞれの側の複数枚のエンドプレート58全体の周方向の位相がずれた複数個所にプレート側冷媒通路50が形成されるので、ロータ18の冷却性の周方向の均一性を高めて、回転電機の冷却性能の向上を図れる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜3に示した実施形態と同様である。
【0037】
なお、上記の各実施形態において、ロータコア32は、複数の鋼板を積層してなる積層体により構成する以外に、磁性粉末を加圧成形してなる圧粉磁心により構成することもできる。また、冷却液として、油以外、例えば冷却水等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0038】
10 回転電機、14 ケーシング、16 ロータシャフト、18 ロータ、19 エアギャップ、20 ステータ、24 ステータコア、26 ティース、28 ステータコイル、30 コイルエンド、32 ロータコア、34 エンドプレート、36 外向フランジ、38 かしめ部、40 軸方向通路、42 径方向通路、44 軸側冷媒通路、46 軸方向内周溝、48 金属板、50 プレート側冷媒通路、52 軸方向通路、54 エンドプレート、56 金属板、58 エンドプレート、60 径方向通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられるロータシャフトの外径側にロータコアとともに嵌合され、前記ロータコアの軸方向の変位を規制する回転電機用エンドプレートであって、
板材に円形の曲げ加工を施すことにより形成され、周方向両端縁同士の間の隙間により径方向のプレート側冷媒通路が形成されていることを特徴とする回転電機用エンドプレート。
【請求項2】
回転可能に設けられるロータシャフトと、
前記ロータシャフトの外径側に固定されたロータコアと、
前記ロータシャフトの外径側の少なくとも前記ロータコアの軸方向片側に固定され、前記ロータコアの軸方向の変位を規制する1枚または複数枚の回転電機用エンドプレートと、
前記ロータコアの外径側に対向配置されるステータとを備える回転電機であって、
前記1枚または複数枚の回転電機用エンドプレートのそれぞれは、請求項1に記載の回転電機用エンドプレートであることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
前記ロータシャフトの外径側の少なくとも前記ロータコアの軸方向片側に、前記複数枚の回転電機用エンドプレートが固定されており、
前記各回転電機用エンドプレートは、互いに前記プレート側冷媒通路の位相がずれて積層されていることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の回転電機において、
前記ロータシャフトは、内部に設けられ、外周面と通じる軸側冷媒通路を含み、
前記軸側冷媒通路は、直接または前記ロータコアに設けられたコア側冷媒通路を介して前記プレート側冷媒通路に連通していることを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−70579(P2013−70579A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209236(P2011−209236)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】