説明

回転電機

【課題】コストを低く抑えて、回転電機が特定方向に傾斜してもコイルエンド部の冷却性能を維持向上できる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機Mは、回転軸心を中心に回転自在なロータ8と、ロータ8の周面に対向する複数のスロットを有するステータ6と、複数のスロットにそれぞれ巻装されたコイルC1と、コイルC1がステータ6の軸方向端部位置から軸方向に張り出した領域としてのコイルエンド部1とを備える。さらに、冷却液を供給するポンプ10等(冷却液供給部)と、ポンプ10等から供給される冷却液を内側に流し、ロータ8の回転軸心とほぼ平行であってステータ6の上部側近傍に設けられる筒体3とを備える。冷却液を放出する放出方向が異なる複数の放出口4を有するので、コイルエンド部1の冷却性能を維持向上することができる。簡単な構成によって実現できるので、コストを低く抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機(特にコイルエンド部)を冷却するための冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、回転電機のコイルエンド部を冷却する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。この技術によれば、冷却液が所望の位置に供給されないために冷却効率が低くなるのを防止するため、冷却液の流路(冷却液が流れる経路を意味する。以下同じである。)となる樋の冷却液供給口にガイドを接続する構成とした(特許文献1の図3を参照)。この構成によれば、冷却液供給口から供給される冷却液をガイドに沿って所望の位置に流出させて供給することができる。
【0003】
一方、回転電機が何らかの要因で所定方向(特許文献1の図1における左右方向を意味する。以下では単に「軸傾斜方向」と呼ぶ。)に傾斜する場合がある。この傾斜に対処するため、特許文献1の図7に示すように、樋に形成する冷却液供給口を二列に千鳥配置する構成とした。この構成によれば、特許文献1の図8に示すように、樋が傾斜しても傾斜方向(左傾斜または右傾斜)に応じた列の冷却液供給口から冷却液を供給してコイルエンド部を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4167886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、回転電機は軸傾斜方向に限らず他方向に傾斜する場合もある。当該他方向は、例えば特許文献1の図1における前後方向(同文献の図2における左右方向を意味する。以下では単に「軸回転方向」と呼ぶ。)が該当する。同文献の図2に示すように、通路の供給口から弓状(アーチ状)に形成された樋の頂上(中央)に冷却液が供給される。よって、樋の傾斜方向に応じて一方側のコイルエンド部を冷却することができても、他方側のコイルエンド部を冷却することができない。
【0006】
また同文献の図1に示すように、コイルエンド部の外側面に対して直上の位置に冷却液供給口が形成されている。冷却液供給口に接続したガイドによって冷却液を供給するものの、同文献の図2に矢印で示すように冷却液はコイルエンド部の外側面に沿って流れ落ちる。ところが、例えば側面(同文献の図2に示すクロスハッチの部位)や内側面(外側面と反対側の面)のように、外側面以外の部位には冷却液が流れ落ちにくい。よって、コイルエンド部の側面や内側面を積極的に冷却することができない。
【0007】
このように特許文献1の技術によれば、回転電機が特定方向(軸回転方向)に傾斜した場合には、コイルエンド部の一部を冷却することができず、コイルエンド部の全体(全周)からみれば冷却性能が低下するという問題があった。また、コイルエンド部を冷却するための構造が複雑なためにコストが嵩むという問題もあった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、コストを低く抑えながらも、回転電機が特定方向に傾斜してもコイルエンド部の冷却性能を維持向上できる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、回転軸心を中心に回転自在なロータと、前記ロータの周面に対向する複数のスロットを有するステータと、前記複数のスロットにそれぞれ巻装されたコイルと、前記コイルがステータの軸方向端部位置から軸方向に張り出した領域としてのコイルエンド部とを備える回転電機において、冷却液を供給する冷却液供給部と、前記冷却液供給部から供給される冷却液を内側に流し、前記ロータの回転軸心とほぼ平行であって前記ステータの上部側近傍に設けられる筒体とを備え、前記筒体は前記コイルエンド部に向けて冷却液を放出する複数の放出口を有し、前記複数の放出口のうち一以上の放出口は他の放出口と放出方向が異なることを特徴とする。
【0010】
筒体の断面形状は任意に設定可能であるが、例えば円筒や多角筒等が該当する。この構成によれば、筒体は、ロータの回転軸心とほぼ平行であって、ステータの上部側近傍に設けられる。さらに、冷却液を放出する放出方向が異なる複数の放出口を有するので、コイルエンド部の所望位置に冷却液を流下させて冷却することができる。よって、回転電機が特定方向(軸回転方向)に傾斜した場合でも、コイルエンド部の冷却性能を維持向上することができる。また、当該筒体のような簡単な構成によって実現できるので、コストを低く抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記複数の放出口は、前記筒体の中心線と前記ロータの軸心線とを含む面で前記筒体を分割する場合を仮定して、当該分割した部位ごとに対応して放出口を形成することを特徴とする。この構成によれば、複数の放出口はそれぞれ左右方向(あるいは前後方向)に向かっているので、コイルエンド部の異なる部位を狙って冷却液を放出することができる。したがって、コイルエンド部の全体(全周)を平均的に冷却するので、コイルエンド部の冷却性能をより維持向上することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記放出口の中心線は、前記コイルエンド部の中心線よりも前記コイルエンド部の側面側にずらすことを特徴とする。この構成によれば、放出口がコイルエンド部の側面に近づくので、コイルエンド部の側面に流れる冷却液の割合(流量)が多くなる。冷却し難い部位であるコイルエンド部の側面側を積極的に冷却するので、コイルエンド部の冷却性能をより維持向上することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記複数の放出口は、一以上の放出口は他の放出口よりも開口面積を大きく形成することを特徴とする。開口面積は「放出口面積」とも呼ばれ、放出口の口径や半径、あるいは放出口自体の開口形状(例えば円形以外の多角形等)によって定まる。この構成によれば、回転電機の傾斜に伴って冷却対象となるコイルエンド部の表面積が広い部位に対して、多量の冷却液を積極的に流下させることができる。したがって、コイルエンド部の全体としてみれば大幅に温度を低下させられ、コイルエンド部の冷却性能をより維持向上することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記放出口には、冷却液の放出方向を特定するガイドが設けられていることを特徴とする。ガイドの構造は冷却液の放出方向を特定できれば任意に設定可能であるが、例えば筒状ノズルや湾曲形状部材(スプーン先端部の湾曲部分)などが該当する。この構成によれば、コイルエンド部のうち特に冷却したい部位に向かって冷却液が放出するように、ガイドが放出方向を特定する。よって冷却液はより確実にコイルエンド部の目的部位に当たって流下するので、コイルエンド部の冷却性能をより維持向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる回転電機の第1構成例を示す断面図である。
【図2】冷却液の流路となる筒体の第1構成例を示す図である。
【図3】回転電機が傾斜しない場合の図1に示すA−A線矢視の断面図である。
【図4】回転電機が傾斜した場合の図1に示すA−A線矢視の断面図である。
【図5】放出口とコイルエンド部との中心をずらした場合の冷却液の流下例を説明する図である。
【図6】筒体の第2構成例および冷却液の流下例を示す図である。
【図7】筒体の第3構成例および冷却液の流下例を示す図である。
【図8】本発明にかかる回転電機の第2構成例を示す断面図である。
【図9】筒体の第4構成例および冷却液の流下例を示す図である。
【図10】種々の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0017】
〔実施の形態1〕
実施の形態1は図1〜図4を参照しながら説明する。図1には本発明にかかる回転電機の第1構成例を断面図で示す。図2には冷却液の流路となる筒体の第1構成例を示す。図1に示すA−A線矢視の断面図について、図3には回転電機が傾斜しない場合を示し、図4には回転電機が傾斜した場合を示す。なお、上下左右等の方向を示すときは該当する図面の記載に従う。また、冷却液の流下は自重によって生じる。
【0018】
まず図1に示す回転電機Mは、電動機や発電機等として用いられる。この回転電機Mは、ケーシング2(フレームやハウジング等)の内部に、ステータ6(固定子),ロータ8(回転子),回転軸9(主軸),コイルC1,筒体3などを有する。ケーシング2の外部には、ポンプ10や、図示しない冷却装置(例えばオイルクーラー等)などを有する。
【0019】
ロータ8は、回転軸心(図1の構成例では回転軸9)を中心に回転自在に構成する。回転軸9はベアリング等を介して回転自在に構成する。図1の構成例ではロータ8と回転軸9とを一体化しているが、回転軸9にロータ8を固定手段(ネジやボルト等の固定用部材を用いた固定や、溶接や接着等による固定など)で固定してもよく、他の構成でもよい。いずれの構成にせよ、ロータ8と回転軸9とが一体的に回転すればよい。
【0020】
ロータ8の周面に対向して、電磁石(あるいは永久磁石)等が用いられるステータ6が配置される。このステータ6には、櫛状に形成されるティース5を有する。このティース5相互間に形成される空間、すなわち複数のスロット(図示せず)には各々ステータコイル(電機子巻線)となるコイルC1を巻きつける。巻装する際にコイルC1を折り返す必要があり、この折り返しのためにコイルC1がステータ6の軸方向(図1では左右方向)端部位置から軸方向に張り出した領域がコイルエンド部1となる。なお、巻装後のコイルC1を単体で見るとドーナツ状になり、両端部にコイルエンド部1が位置する。
【0021】
図1におけるケーシング2の内側上部には、ポンプ10から供給される冷却液を内側に流す筒体3が設けられている。当該内側上部は、具体的には回転電機Mの頂上部であって、ロータ8の回転軸心とほぼ平行であってステータ6の上部側近傍が該当する。当該上部側近傍は、コイルエンド部1に冷却液が確実に当たって広域に流下する位置を意味する。一例として、コイルエンド部1の頂点を基準に−45〜+45[度](望ましくは−20〜+20[度])の範囲内に配置するのが望ましい。
【0022】
本形態の筒体3は円筒状に形成されており、複数の放出口4が設けられている。複数の放出口4はコイルエンド部1の上方に対応する位置に形成され、図示する左右のコイルエンド部1ごとに対応してそれぞれ形成される。図1に示す直線状の矢印F「→」は冷却液の流下経路を示す。この矢印F「→」は図2以降の各図でも同様である。この筒体3の構成によれば、冷却液はポンプ10から筒体3の内側を通って放出口4から放出され、コイルエンド部1に当たって流下する。なお、ポンプ10や図示しない冷却装置などは「冷却液供給部」に相当する。
【0023】
筒体3の具体的な構成例について、図2を参照しながら説明する。なお、図2(a)には底面図を示す。図2(b)には放出口の中心を通る断面図を示す。図2(c)には図2(b)に示すC−C矢視の断面図を示す。
【0024】
図2(a)に示すように、筒体3には、コイルエンド部1の上方に対応する位置に形成される二つ(複数)の放出口4を有する。当該二つの放出口4は、図1に示す左側のコイルエンド部1に対応する。これと同等の構成で、図1に示す右側のコイルエンド部1に対応する二つの放出口4をも有する(図示せず)。左側と右側とで同等の構成なので、以下では左側のコイルエンド部1に対応する二つの放出口4を代表して説明する。
【0025】
図2(b)および図2(c)に示すように、二つの放出口4は筒体3の下方側に設けられる。図2(c)に示すように、二つの放出口4は、第1放出口4aと第2放出口4bとからなる。冷却液は、第1放出口4aからは矢印Fa(左斜め下方向)に沿って放出され、第2放出口4bからは矢印Fb(右斜め下方向)に沿って放出される。通常、矢印Fa,Fbに沿った放出は放物線を描きながら落下し、筒体3内における冷却液の圧力が高まるほど直線的になる。こうした勢いのある放出だけでなく、冷却液の粘性が高まるにつれて、筒体3の外周面を伝って矢印Fc(鉛直下方向)に沿って自然落下し易くなる。
【0026】
上述のように構成された回転電機Mは、軸回転方向に傾斜せず傾斜角が0度の「通常姿勢」だけでなく、軸回転方向に傾斜する「傾斜姿勢」になる場合がある。各姿勢において、冷却液による冷却態様について図3および図4を参照しながら説明する。図3には通常姿勢における冷却態様を示し、図4には回転電機Mが傾斜する傾斜姿勢における冷却態様を示す。なお、図3(a)には、コイルエンド部1,筒3,第1放出口4aおよび第2放出口4bの位置関係を示す。図3(b)および図4には、第1放出口4aと第2放出口4bとからそれぞれ放出される冷却液の流下例を示す。
【0027】
図3に示す通常姿勢では筒体3も傾斜しない。図3(a)に示すように、第1放出口4aと第2放出口4bとは、鉛直線R1を基準として互いに反対方向に角度θ1をなして筒体3に形成される。言い換えれば、第1放出口4aと第2放出口4bとは、筒体3の中心線とロータ8の軸心線とを含む面(すなわち鉛直線R1を含む鉛直面)で筒体3を分割する場合を仮定して、当該分割した部位ごとに対応してそれぞれ形成する。
【0028】
第1放出口4aから放出された冷却液は、コイルエンド部1の左側部位S1を流下する。一方、第2放出口4bから放出された冷却液は、コイルエンド部1の右側部位S2を流下する。第1放出口4aと第2放出口4bとの開口面積が同じであれば、図3(b)に示すように左右均等に冷却液が放出されるので、コイルエンド部1の左側部位S1と右側部位S2とで冷却液がほぼ均等に流下して冷却する。したがって、コイルエンド部1の全体(全周)を冷却液でほぼ均等に冷却することができる。
【0029】
図4に示す例の傾斜姿勢では筒体3も傾斜角θ2だけ傾斜する。この場合でも、筒体3に設けられた二つの放出口4(第1放出口4aおよび第2放出口4b)から冷却液が放出され、コイルエンド部1の左側部位と右側部位とに流下する。第1放出口4aと第2放出口4bとの開口面積が同じであれば、放出される冷却液の液量もほぼ同じである。コイルエンド部1の左側部位では冷却液の流下距離が長くなるので、左側部位の下方にゆくほど冷却液自体の温度が上昇する。そのため、左側部位の冷却性能は右側部位よりも劣る。しかしながら、コイルエンド部1の全体に冷却液をゆき渡らせることができるので、多量の冷却液を放出することにより、全体的にみれば冷却性能を向上させることができる。
【0030】
なお、図4では回転電機Mが図面右回りに傾斜角θ2だけ傾斜する例を示したが、反対側の図面左回りに傾斜角θ2だけ傾斜する場合もある。この場合は、単に上述した説明について左右が逆になるだけに過ぎない。したがって、回転電機Mがどの方向に傾斜しても、全体的にみれば冷却性能を向上させることができる。
【0031】
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、回転電機Mにおいて、冷却液を供給するポンプ10等(冷却液供給部)と、ポンプ10等から供給される冷却液を内側に流し、ロータ8の回転軸心とほぼ平行であってステータ6の上部側近傍に設けられる筒体3とを備える構成とした(図1を参照)。さらに、筒体3はコイルエンド部1に向けて冷却液を放出する複数の放出口4を有し、複数の放出口4のうち第1放出口4a(一以上の放出口)は第2放出口4b(他の放出口)と放出方向が異なる構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、冷却液を放出する放出方向が異なる複数の放出口4を有するので、コイルエンド部1の所望位置に冷却液を流下させて冷却することができる。よって、回転電機Mが特定方向(軸回転方向)に傾斜した場合でも、コイルエンド部1の冷却性能を維持向上することができる。また、簡単な構成によって実現できるので、コストを低く抑えることができる。
【0032】
請求項2に対応し、複数の放出口4(第1放出口4aおよび第2放出口4b)は、筒体3の中心線とロータ8の軸心線とを含む面で筒体3を分割する場合を仮定して、当該分割した部位ごとに対応して第1放出口4aと第2放出口4bとを形成する構成とした(図3(a)を参照)。この構成によれば、複数の放出口4はそれぞれ左右方向(あるいは前後方向)に向かっているので、コイルエンド部1の異なる部位を狙って冷却液を放出することができる。したがって、コイルエンド部1の全体(全周)を平均的に冷却するので、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0033】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、実施の形態1と同様に回転電機Mに適用した筒体の一例について説明する。当該実施の形態2は、図5を参照しながら説明する。図5には、図1の一部(具体的には回転電機Mの左上部分)を拡大した断面図を示す。本形態にいう「中心線」は、対応する要素の中心を通る鉛直線を意味する。
【0034】
なお、図示および説明を簡単にするため、実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付す。このように、実施の形態1と異なる点を説明する点と、同一の要素に同一の符号を付す点とについては、後述する実施の形態3〜6でも同様である。
【0035】
実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、放出口4の中心線とコイルエンド部1の中心線との関係である。上述した実施の形態1は、図1に示すように放出口4とコイルエンド部1との中心線を一致させるように構成している。これに対して実施の形態2では、放出口4とコイルエンド部1との中心線をずらして構成する。
【0036】
図5において、複数の放出口4(すなわち第1放出口4aおよび第2放出口4b)は、その中心線R2がコイルエンド部1の中心線R3よりも側面1b側にずれるように筒体3に形成する。言い換えれば、コイルエンド部1に対する複数の放出口4の中心位置を偏位させる。このように形成することで、複数の放出口4から放出される冷却液は、側面1bに流れる流量(液量)が増える。中心線R2を中心線R3よりも側面1b側にずらす距離は任意に設定可能であるが、実験や実地試験等を行ってコイルエンド部1の冷却性能が最も高い位置にずらすのが望ましい。
【0037】
上述した実施の形態2によれば、請求項3に対応し、放出口4の中心線は、コイルエンド部1の中心線よりもコイルエンド部1の側面1b側にずらす構成とした(図5を参照)。この構成によれば、放出口4が側面1bに近づくので、当該側面1bに流れる冷却液の割合(流量)が増える。冷却し難い部位であるコイルエンド部1の側面1bを積極的に冷却するので、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0038】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は、実施の形態1と同様に回転電機Mに適用した筒体の一例について説明する。当該実施の形態3は断面図で示す図6を参照しながら説明する。図6(a)には筒体の第2構成例を示す。図6(b)には冷却液の流下例を示す。
【0039】
実施の形態3が実施の形態1と異なるのは、複数の放出口4にかかる開口面積である。上述した実施の形態1は、図2(c)および図3(a)に示すように、第1放出口4aと第2放出口4bとの開口面積が同じになるように形成している。これに対して実施の形態3では、回転電機Mの傾斜を考慮して、第1放出口4aと第2放出口4bとの開口面積が異なるように形成する。
【0040】
図6(a)に示す筒体12は、第1放出口4aの開口面積が第2放出口4bの開口面積よりも大きくなるように形成した例を示す。開口面積を異ならせる例としては、放出口4の口径や半径、あるいは放出口4自体の開口形状(例えば円形以外の多角形等)を異ならせる。第1放出口4aの開口面積を大きくしたのは、図6(b)に示すように回転電機Mが傾斜角θ2だけ傾斜する事態を考慮している。この場合、回転電機Mの通常姿勢と傾斜姿勢とで、コイルエンド部1の冷却すべき部位に冷却液がほぼ均等に流下するように設定するのが望ましい。言い換えれば、単位表面積当たりに流れる冷却液の流量がほぼ均等に流下するように設定する。
【0041】
例えば、回転電機Mを搭載した車両が登坂を走行する際に、当該回転電機Mが傾斜する場合である。一般に、車両が登坂を走行する時はトルクがかかり、コイルエンド部1を含めて回転電機Mの発熱量も増加する。また、車速が遅いためポンプ10がギアポンプ等に切り換えられると、筒体3に供給できる冷却液の流量が減少する。したがって、平地走行に比べると、コイルエンド部1を冷却し難い環境条件となる。
【0042】
しかしながら、上述した筒体12の構成によれば、第1放出口4aの開口面積が第2放出口4bの開口面積よりも大きいので、当然に第1放出口4aから放出される冷却液の液量も第2放出口4bより多くなる。よって図6(b)に示すように、コイルエンド部1の左側部位S3を流下する冷却液の液量が増えるので、当該左側部位S3の冷却性能を向上することができる。一方、コイルエンド部1の右側部位S4は、図示から明らかなように冷却対象となるコイルエンド部1の表面積が小さくなるので、第1放出口4aより冷却液の液量が少なくても十分に冷却性能を維持向上することができる。したがって、回転電機Mを搭載した車両が登坂を走行する場合であっても、コイルエンド部1の全体について冷却性能をより維持向上することができる。
【0043】
上述した実施の形態3によれば、請求項4に対応し、複数の放出口4について、第1放出口4a(一以上の放出口)は第2放出口4b(他の放出口)よりも開口面積を大きく形成する構成とした(図6を参照)。この構成によれば、回転電機Mの傾斜に伴って冷却対象となるコイルエンド部1の表面積が広い部位(左側部位S3)に対して、多量の冷却液を積極的に流下させることができる。したがって、コイルエンド部1の全体としてみれば大幅に温度を低下させられ、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0044】
〔実施の形態4〕
実施の形態4は、実施の形態1と同様に回転電機Mに適用した筒体の一例について説明する。当該実施の形態4は断面図で示す図7を参照しながら説明する。図7(a)には筒体の第3構成例を示す。図7(b)には図7(a)に示すB−B線矢視の断面図を示す。図7(c)には冷却液の流下例を示す。
【0045】
実施の形態4が実施の形態1と異なるのは、複数の放出口4にかかる形態である。上述した実施の形態1は、図2(c)および図3(a)に示すように筒体3に穴をあけたにすぎない。これに対して実施の形態4では、図7(a)および図7(b)に示すように、複数の放出口4にそれぞれガイド11を備える点が異なる。具体的には、第1放出口4cに対して第1ガイド11cを備え、第2放出口4dに対して第2ガイド11dを備える。
【0046】
第1ガイド11cおよび第2ガイド11dは、それぞれ所定の高さで筒状に形成される。ガイドの高さは任意に設定可能であり、同じ高さで設定してもよく、異なる高さで設定してもよい。この構成によれば、筒体3を流れる冷却液は、第1放出口4cから第1ガイド11cを経て矢印Fc(左斜め下方向)に沿って放出され、第2放出口4dから第2ガイド11dを経て矢印Fd(鉛直下方向)に沿って放出される。このようにガイドを経ることで、冷却液の放出方向を特定することができる。各ガイドの向き(角度)は、コイルエンド部1について所望の部位(場所)により確実に冷却液を流下させるように設定する。そのため、図7(b)に示す矢印Fcや矢印Fdの放出方向には限られない。
【0047】
第2ガイド11dから矢印Fdに沿って放出された冷却液は、図7(c)に示すようにコイルエンド部1を流下する。すなわち、冷却液はまず外側面1aに落下し、側面1bを経て落下する。冷却液の粘性が高い場合には、側面1bから内側面1cに伝った後に落下する。このように、第2ガイド11dから放出された冷却液は、コイルエンド部1のほぼ全面を流下してから落下する。なお、第1ガイド11cから放出された冷却液は図示しないが、放出方向が異なる点を除いて同様であり、コイルエンド部1のほぼ全面を流下してから落下する。
【0048】
上述した実施の形態4によれば、請求項5に対応し、放出口4には冷却液の放出方向を特定するガイド11(第1ガイド11cおよび第2ガイド11d)を設ける構成とした(図7を参照)。この構成によれば、コイルエンド部1のうち特に冷却したい部位に向かって冷却液が放出するように、ガイド11が放出方向を特定する。よって冷却液はより確実にコイルエンド部1の目的部位に当たって流下するので、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0049】
〔実施の形態5〕
実施の形態5は、実施の形態1と同様に回転電機Mに適用した筒体の一例について説明する。当該実施の形態5は図8を参照しながら説明する。図8には、本発明にかかる回転電機Mの第2構成例を断面図で示す。
【0050】
実施の形態5が実施の形態1と異なるのは、筒体の形態である。上述した実施の形態1は、図1に示すようにステータ6を介して一の筒体3を備えた。このようにステータ6が介在することで、特にステータ6の温度が冷却液の温度よりも大幅に高いときは、筒体3を流れる間に冷却液の温度が僅かながら上昇する場合もあり得る。
【0051】
これに対して実施の形態5では、図8に示すように複数の筒体13を備える点が異なる。具体的には、回転電機Mのケーシング2内部において、図面左側上部に第1筒体13aを備え、同じく図面右側上部に第2筒体13bを備える。第1筒体13aと第2筒体13bには、ポンプ10から接続する供給路を分岐して冷却液をそれぞれに供給する。
【0052】
第1筒体13aは、コイルC1にかかる図面左側端部のコイルエンド部1に対して冷却液を流下させる。第2筒体13bは、コイルC1にかかる図面右側端部のコイルエンド部1に対して冷却液を流下させる。この構成によれば、ポンプ10から供給される冷却液はステータ6を介することなく筒体13(第1筒体13aおよび第2筒体13b)に流れるので、ステータ6による温度上昇の影響を受けない。したがって、ポンプ10から供給される冷却液の温度とほぼ同じ温度でコイルエンド部1を冷却できる。その他の点は実施の形態1と同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
〔実施の形態6〕
実施の形態6は、実施の形態1と同様に回転電機Mに適用した筒体の一例について説明する。当該実施の形態6は図9を参照しながら説明する。図9には、筒体の第4構成例および冷却液の流下例を示す。本形態にいう「中心線」は、実施の形態2と同様に、対応する要素の中心を通る鉛直線を意味する。
【0054】
実施の形態6が実施の形態1と異なるのは、筒体の配置である。上述した実施の形態1は、図3(a)に示すようにコイルエンド部1およびロータ8の中心線と、筒体3の中心線とを一致させている。すなわち、コイルエンド部1,ロータ8および筒体3の中心線が鉛直線R1で一致する。
【0055】
これに対して実施の形態6では、図9に示すようにコイルエンド部1およびロータ8の中心線R3と、筒体14の中心線R4とがずれるように配置(偏位)する。具体的には、筒体14はコイルエンド部1の頂点を基準に−45〜+45[度](望ましくは−20〜+20[度])の範囲内に配置するのが望ましい。
【0056】
さらに、複数の放出口4のうちで一以上の放出口4(特に図6に示す例の第1放出口4a)の開口面積(あるいは口径や半径等)について、上述した実施の形態1〜5と比べて小さく設定する。開口面積が小さくなれば放出時の冷却液の流速が速くなるので、冷却すべきコイルエンド部1の所望部位(図9の例では図面左側部位)に冷却液を流下させることができる。
【0057】
ここで、筒体14に流入する冷却液の流量Q[L/min]、放出口4の開口面積S[m2]および冷却液の流速V[m/sec]は、関係式[V=(Q×10-3)/(S×60)]で表される。開口面積Sを小さくするにつれて流速Vを速くすることができるので、冷却すべき所望部位までの距離に基づいて開口面積Sを設定すればよい。したがって、放出口4から放出する冷却液を確実に冷却すべき所望部位に到達させ、冷却することができる。その他の点は実施の形態1と同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜6に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。実施の形態1〜6のうちで二以上の形態の任意に組み合わせて実現してもよい。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる形態で実施することもでき、例えば次に示す各形態を実現してもよい。
【0059】
実施の形態1〜6では、複数の放出口4(第1放出口4aおよび第2放出口4b)について、筒体3の中心線とロータ8の軸心線とを含む面(すなわち鉛直線R1を含む鉛直面)で筒体3を分割する場合を仮定して、当該分割した部位ごとに対応してそれぞれ一ずつ放出口4を形成する構成とした(図3(a)を参照)。この形態に代えて、分割した部位ごとに対応してそれぞれ二以上の放出口4を形成する構成としてもよい。例えば図10(a)に示すように、第1放出口4aに対応する三の放出口4と、第2放出口4bに対応する三の放出口4とを一列状に並べて形成する。第1放出口4aに対応して形成する放出口4の数と、第2放出口4bに対応して形成する放出口4の数とを異ならせてもよい。また、四以上の放出口4を形成してもよい。一列状の配置に限らず、他の配置(例えば千鳥配置等)で形成してもよい。一般的には開口面積が増えるので、筒体3に流す流量さえ確保すればより多くの冷却液をコイルエンド部1に向けて放出することができる。したがって、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0060】
上述したように、分割した部位ごとに対応してそれぞれ二以上の放出口4を形成する場合は、少なくとも一の放出口4を他の放出口4とは異なる部位(角度)に形成する構成としてもよい。例えば、図10(a)では二の第1放出口4aと一の第1放出口4eとを一列状に形成した。この形態に代えて、例えば、二の第1放出口4aを図2(c)に示す部位に形成し、図10(b)に示すように第1放出口4eを第1放出口4aとは異なる部位に形成する。図10(b)は、図10(a)に示すB−B矢視の断面図である。すなわち、第1放出口4aと一の第1放出口4eとは放出方向は同じであるが、放出角度を異ならせる。第1放出口4eの開口面積は第1放出口4aよりも小さくする。この構成によれば、第1放出口4aから放出する冷却液でコイルエンド部1の近傍を冷却し、第1放出口4eから放出する冷却液でコイルエンド部1の遠方を冷却する。ただし、放出口の形状は問わない。したがって、コイルエンド部1の全体を確実に冷却することができる。
【0061】
一の放出口4を他の放出口4とは異なる部位(角度)に形成する場合においても、ガイド11を備える構成としてもよい。例えば、上述した二の第1放出口4aに代わる第1放出口4cについては、図7(b)に示す第1ガイド11cを備える。また、上述した二の第1放出口4eに代わる第1放出口4fについて、図10(c)に示すように第1ガイド11fを備える。コイルエンド部1の一方側に向けて放出する複数の放出口4について放出角度を変える場合でも、第1ガイド11c,11fによって放出方向をそれぞれ特定することができる。したがって、冷却液はより確実にコイルエンド部1の目的部位に当たって流下するので、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0062】
実施の形態1〜6では、回転電機Mの傾斜に伴って筒体3,12,13,14も傾斜するものの、各放出口4の開口面積を変化させない構成とした(図1〜図9を参照)。この形態に代えて、回転電機Mの傾斜に伴って放出口4の開口面積を変化させる構成としてもよい。例えば図10(d)および図10(f)に示すように、複数の放出口4(第1放出口4aおよび第2放出口4b)に対応した位置の筒体3に面積制御部材21を備える。図10(d)および図10(f)に示す構成例の面積制御部材21は、筒体3の外周面に備える筒体であって、回転電機Mが傾斜しても姿勢が変化しないように構成する。具体的には、面積制御部材21は筒体3に対して回転自在とし、姿勢維持手段を備える。姿勢維持手段は任意に構成してよいが、特定部位(例えば図面下部等)に錘を取り付けたり、特定部位のみを厚く形成するなどが該当する。
【0063】
面積制御部材21は、筒体3と同様にして、複数の放出口(第1放出口21aおよび第2放出口21b)を備える。第1放出口21aは、第1放出口4aに対応する位置に設けられ、第1放出口4aの開口面積と同じに形成する。第2放出口21bは、第2放出口4bに対応する位置に設けられ、第2放出口4bの開口面積よりも大きく形成する。すなわち図10(e)および図10(g)に示すように、回転電機Mが通常姿勢と傾斜姿勢とのいずれになった場合でも第2放出口21bによって一部が閉塞されずに第2放出口4bからそのまま冷却液を放出できる程度の大きさで形成する。図10(e)は図10(d)に示すE−E矢視の断面図であり、図10(g)は図10(f)に示すG−G矢視の断面図である。
【0064】
回転電機Mが通常姿勢の状態を図10(d)および図10(e)に示し、回転電機Mが傾斜姿勢の状態を図10(f)および図10(g)に示す。通常姿勢では、第1放出口4aおよび第2放出口4bの双方とも面積制御部材21によって閉塞されないので、そのまま放出される。これに対して傾斜姿勢では、第2放出口4bは面積制御部材21によって閉塞されないが、第1放出口4aは第1放出口21aとの位置がずれるために面積制御部材21によって部分的に閉塞される。言い換えれば、回転電機Mの傾斜角に応じて第1放出口4aの開口面積が小さくなる。筒体3内における冷却液の圧力が同じであれば、開口面積が小さくなると冷却液の放出速度が速くなる(実施の形態6に示す関係式を参照)。そのため、放出された冷却液が到達して流下するコイルエンド部1の位置が変化する。開口面積が変化しない場合に比べて、放出口4から遠い部位のコイルエンド部1を確実に冷却できるので、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0065】
実施の形態1では、第1放出口4aと第2放出口4bとは、鉛直線R1を基準として互いに反対方向に角度θ1をなして筒体3に形成する構成とした(図3(a)を参照)。この形態に代えて、鉛直線R1に対する第1放出口4aの角度(θ1a)と、鉛直線R1に対する第2放出口4bの角度(θ1b)とを異ならせる構成としてもよい。例えばθ1a>θ1bで形成した場合には、図4に示すように回転電機Mが傾斜角θ2だけ傾斜しても、第1放出口4aの角度が大きいのでコイルエンド部1の遠い部位(図4の左側部位)に冷却液を到達させることができる。したがって、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0066】
実施の形態3では、第1放出口4aと第2放出口4bとを同じ円形状で形成し、開口面積を異ならせる構成とした(図6を参照)。このように、第1放出口4aと第2放出口4bとについて開口面積以外の他の形態で構成してもよい。他の形態としては、例えば円形以外の形状(楕円形や多角形等)、形成する個数等が該当する。回転電機Mの通常姿勢と傾斜姿勢とで、第1放出口4aと第2放出口4bとに流下する冷却液の液量に差ができるだけ少ないように形態を異ならせるのが望ましい。こうすれば、回転電機Mの姿勢によらず流下させる冷却液の液量を維持することができる。したがって、コイルエンド部1の冷却性能をより維持向上することができる。
【0067】
実施の形態4では、複数の放出口4にそれぞれ備えるガイド11(第1ガイド11cおよび第2ガイド11d)は円筒形状に形成する構成とした(図7を参照)。この形態に代えて、他の形状で構成してもよい。他の形状は、円筒形状以外の筒形状や、湾曲形状部材(スプーン先端部の湾曲部分)などが該当する。円筒形状以外の筒形状としては、楕円筒形状や多角筒(三角筒や四角筒等)形状などが該当する。筒部分の流入口と流出口とが同一形状に限らず、筒部分の流入口と流出口とを異なる形状で形成してもよい。
【0068】
例えば図10(h)に示すガイド22は、流入口22aを円形に形成し、流出口22bを三角形に形成している。流入口22aと流出口22bの開口面積は任意に設定可能であり、同一開口面積で設定してもよく、異なる開口面積で設定してもよい。このように形成されたガイド22の流入口22aと放出口4(特に第1放出口4a,4c)とを接続して備えると、流出口22bからコイルエンド部1に向けて冷却液が放出される。接続方法は任意であり、樹脂や金属等で一体形成したり、固定手段によって固定したり、溶接や接着等によって固定したりしてもよい。流出口22bは三角形状をなすので、例えば当該三角形の底辺側をコイルエンド部1の側面1b側に向けると側面1bに多くの冷却液を到達させて流下させることができる。なお、流入口22aと流出口22bとはそれぞれ任意の形状に形成してもよい。例えば、流入口22aを三角形状に形成し、流出口22bを円形に形成する形態等が該当する。
【0069】
また、ガイド11,22は、筒体3,12,13,14と一体に形成してもよく。別体に形成してもよい。別体に形成する場合には、ガイド11,22を筒体3,12,13,14に固定手段を用いて着脱可能または着脱不能で固定する。固定手段は、放出口4とガイド11,22とにネジを設けてネジ込む形態や、ボルトやネジ等を用いて固定する形態などが該当する。特に着脱可能に固定する場合には、何らかの要因でガイド11,22に損傷等が生じた場合に、新しいガイド11,22と容易に交換できる。その他の点は実施の形態4と同様であるので、実施の形態4と同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
実施の形態1〜6では、ポンプ10から汲み上げる冷却液を直接的に筒体3,12,13,14に導く構成とした(図1,図8を参照)。この形態に代えて、ポンプ10と筒体3,12,13,14との間にタンクを介在させる構成としてもよい。すなわち、ポンプ10から汲み上げる冷却液をタンクに一時的に貯留し、タンクの貯留量で発生する圧力によって冷却液を筒体3に導く。タンクに貯留される間は冷却液が自然冷却されるので、冷却液を強制的に冷却する冷却装置(例えばオイルクーラー等)が不要になる。回転電機Mにタンクを備える構成であっても、冷却液を確実に供給できるので、実施の形態1〜6と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
M 回転電機
C1 コイル
1 コイルエンド部
1a 外側面
1b 側面
1c 内側面
2 ケーシング
3,12,13,14 筒体
13a 第1筒体
13b 第2筒体
4 放出口(複数の放出口)
4a,4c,21a 第1放出口
4b,4d,21b 第2放出口
5 ティース
6 ステータ
7 磁石
8 ロータ
9 回転軸
10 ポンプ
11 ガイド
11c,11f 第1ガイド
11d 第2ガイド
21 面積制御部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心を中心に回転自在なロータと、前記ロータの周面に対向する複数のスロットを有するステータと、前記複数のスロットにそれぞれ巻装されたコイルと、前記コイルがステータの軸方向端部位置から軸方向に張り出した領域としてのコイルエンド部と、を備える回転電機において、
冷却液を供給する冷却液供給部と、
前記冷却液供給部から供給される冷却液を内側に流し、前記ロータの回転軸心とほぼ平行であって前記ステータの上部側近傍に設けられる筒体と、を備え、
前記筒体は、前記コイルエンド部に向けて冷却液を放出する複数の放出口を有し、前記複数の放出口のうち一以上の放出口は他の放出口と放出方向が異なることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記複数の放出口は、前記筒体の中心線と前記ロータの軸心線とを含む面で前記筒体を分割する場合を仮定して、当該分割した部位ごとに対応して放出口を形成することを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記放出口の中心線は、前記コイルエンド部の中心線よりも前記コイルエンドの側面側にずらすことを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記複数の放出口は、一以上の放出口は他の放出口よりも開口面積を大きく形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記放出口には、冷却液の放出方向を特定するガイドが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−135699(P2011−135699A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293043(P2009−293043)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】