回転電機
【課題】十分な高電圧化および絶縁性能を確保しつつ、製造コストの低減化を図り得るようにした回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機1は、固定子コア22とこれに装備された固定子巻線21を備える固定子2を有する。固定子巻線21は、固定子コア22のスロット25に収容されるスロット収容部23aと、スロット25から軸方向に露出し、周方向に延び出すコイルエンド部23b、23cとを持つ複数の導体セグメント23により形成されている。導体セグメント23の接合側エンド部23cは、他の導体セグメント23の先端部における導体露出部23iを接合した接合端部23fを有する。導体セグメント23の導体露出部23i及びその近傍は、絶縁樹脂部材26により被覆されている。導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材26よりも厚く形成されている。
【解決手段】回転電機1は、固定子コア22とこれに装備された固定子巻線21を備える固定子2を有する。固定子巻線21は、固定子コア22のスロット25に収容されるスロット収容部23aと、スロット25から軸方向に露出し、周方向に延び出すコイルエンド部23b、23cとを持つ複数の導体セグメント23により形成されている。導体セグメント23の接合側エンド部23cは、他の導体セグメント23の先端部における導体露出部23iを接合した接合端部23fを有する。導体セグメント23の導体露出部23i及びその近傍は、絶縁樹脂部材26により被覆されている。導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材26よりも厚く形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて電動機や発電機として使用される回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において電動機や発電機として使用される回転電機として、回転子と、この回転子と対向配置された固定子コアおよびこの固定子コアに装備された固定子巻線を備える固定子とを有するものが知られている。そして、特許文献1および2には、固定子巻線として、固定子コアのスロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットから軸方向に露出し、周方向に延び出すコイルエンド部とを持つ複数の導体セグメントにより形成されたセグメント型のものが開示されている。
【0003】
この固定子巻線を形成する導体セグメントは、一対の直線部と、一対の直線部の一端を互いに接続するターン部とを有して略U字状に成形されており、各直線部の開放側の先端部には絶縁被膜が剥離されることにより導体露出部が形成されている。この導体セグメントは、一対の直線部が所定のスロットピッチ離れた2個のスロットに軸方向一端側から挿入される。そして、スロットから軸方向他端側に延出した開放端部が、周方向に所定角度で斜めに斜行するように曲げられ、所定の先端部の導体露出部同士が溶接等で接続されることによって直列に接続される。その後、導体セグメントの導体露出部およびその近傍部が、絶縁樹脂部材により被覆されることによって、上記の固定子巻線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−204151号公報
【特許文献2】特開2000−060051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年のハイブリッド車においては、搭載される回転電機の高性能化と小型化の強い要請があることに伴い、高電圧化が要求される。この要求に対応して高電圧化を実現するためには、導体セグメントの導体露出部およびその近傍部を被覆する絶縁樹脂部材の十分な絶縁性能を確保する必要がある。そのため、その絶縁樹脂部材の厚みを厚くすると、絶縁樹脂材料のコスト上昇を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な高電圧化と絶縁性能を確保しつつ、製造コストの低減化を図り得るようにした回転電機を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、回転子と、前記回転子と対向配置された固定子コアおよびこの固定子コアに装備された固定子巻線を備える固定子と、を有する回転電機において、前記固定子巻線は、前記固定子コアのスロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットから軸方向に露出し、周方向に延び出すコイルエンド部とを持つ複数の導体セグメントにより形成され、前記導体セグメントは、ターン部と、前記コイルエンド部において他の導体セグメントと交差する斜行部と、前記斜行部の先端の先端部とを有しており、前記コイルエンド部は、他の導体セグメントの前記先端部における導体露出部を接合した接合端部を有し、前記接合端部同士が接合された接合部およびその近傍部は、絶縁樹脂部材により被覆され、前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、他の部位を被覆する前記絶縁樹脂部材よりも厚く形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材よりも厚く形成されているため、回転電機の十分な高電圧化と絶縁性能を確保することができる。また、導体セグメントの導体露出部以外の他の部位を被覆する絶縁樹脂部材は、樹脂材料が必要最小限に止められるので、材料費を低減することができる。したがって、本発明によれば、十分な高電圧化および絶縁性能を確保しつつ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0009】
なお、本発明において、絶縁樹脂部材を形成する樹脂材料としては、例えばエポキシ、ポリエステル、ウレタン、シリコーン等を挙げることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、tL<tH≦tWの関係を満足させることによって、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の絶縁性能を最適な状態に設定することができる。ここで、固定子巻線が多相の場合において、周方向厚みtWは、異相間における必要絶縁膜厚(必要耐電圧)であり、径方向厚みtLは、同相間における必要絶縁膜厚であり、軸方向厚みtHは、対地間(フレーム等の対グランド)における必要絶縁膜厚である。通常、図12に示すように、異相間においては電位差が最も高くなり、同相間においては電位差が最も低くなり、対地間においては異相間と同相間の間の電位差となる。したがって、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材を、tL<tH≦tWとなるように設定することにより、絶縁樹脂部材の絶縁性能を最適な状態に設定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、隣接した前記接合部をそれぞれ被覆する前記絶縁樹脂部材同士の間に空隙が設けられていることを特徴とする。
【0013】
通常、絶縁樹脂部材には、外気が内部の導体まで繋がっているピンホールが一定の確率で存在している。そのため、請求項3に記載の発明によれば、導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の必要な厚みが確保されている場合でも、隣接した接合部をそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材同士の間に空隙を設けることによって、絶縁性の確保をより確実に行うことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記空隙は、少なくとも周方向に隣接した前記接合部をそれぞれ被覆する前記絶縁樹脂部材同士の間に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、固定子巻線が多相(例えば3相)の場合、U相、V相、W相の異相間において電位差が最も高くなることから、周方向に隣接した接合部をそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材同士の間に空隙を設けることによって、絶縁性の確保をより確実に行うことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記空隙は、前記導体セグメントの延伸方向において前記導体露出部と対応する範囲に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、空隙が導体露出部と対応する範囲の全域に設けられるため、絶縁性の確保をより確実にすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記絶縁樹脂部材は、多層構造に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、絶縁樹脂部材が多層構造に形成されているため、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の厚みと、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材の厚みとの差を出し易くなる。これにより、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材よりも厚みを厚くした、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材を容易に形成することができる。また、絶縁樹脂部材が多層構造の場合には、各層に存在するピンホールが互いに連通する可能性が低くなるため、単層構造に比べて、絶縁樹脂部材の絶縁性をより有利に確保することができる。
【0020】
なお、本発明における多層構造とは、2層以上の複数層構造を意味する。本発明において、絶縁樹脂部材の多層構造は、例えば、各層を構成する樹脂材料の種類や粘度等を適宜変更することによって容易に実現することができる。この場合、絶縁樹脂部材の各層の厚みは、必ずしも同一にする必要はなく、種々変更してもよい。
【0021】
請求項7に記載の発明は、前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、多層構造に形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材よりも厚みを厚くした、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材を容易に形成することができる。また、絶縁樹脂部材の各層に存在するピンホールが互いに連通する可能性が低くなるため、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の絶縁性を、単層構造に比べて有利に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係る回転電機の軸方向断面図である。
【図2】実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。
【図3】実施形態1に係る固定子の部分的な側面図である。
【図4】実施形態1に係る固定子の部分的な断面図である。
【図5】実施形態1において用いられる導体セグメントの模式的斜視図である。
【図6】実施形態1において固定子コアのスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。
【図7】実施形態1において接合側エンド部の外端層に位置する導体セグメントの配置状態を示す説明図である。
【図8】実施形態1に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。
【図9】実施形態1において導体セグメントが収容される固定子コアのスロットを説明するための固定子の部分断面図である。
【図10】実施形態1における導体セグメントの接合部近傍の状態を示す部分断面図である。
【図11】実施形態1における導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の厚みを示す説明図であって、(a)は導体セグメントの軸直角方向の断面図、(b)は導体セグメントの軸方向の断面図である。
【図12】実施形態1における導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の各方向の厚み(tH、tL、tW)と必要絶縁膜厚(必要耐電圧)との関係を示すグラフである。
【図13】実施形態1における導体セグメントの周方向に隣接した接合部同士の状態を示す部分断面図である。
【図14】実施形態1における導体セグメントの径方向に隣接した接合部同士の状態を示す部分断面図である。
【図15】実施形態2における導体セグメントの接合部近傍の状態を示す部分断面図である。
【図16】他の実施形態において固定子コアのスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る回転電機の軸方向断面図である。図2は、実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。本実施形態に係る回転電機1は、車両用交流発電機として用いられるものであって、図1に示すように、電機子として働く固定子2と、界磁として働く回転子3と、固定子2および回転子3を収容し、締結ボルト4cによって連結、固定されたフロントハウジング4aおよびリアハウジング4bと、交流電力を直流電力に変換する整流器5等を含んで構成されている。
【0026】
固定子2は、図2に示すように、固定子コア22と、複数の導体セグメント23により構成されたセグメント型の固定子巻線21と、固定子コア22および固定子巻線21間を電気絶縁するインシュレータ24とを備えている。この固定子2は、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4b間で挟持されることにより固定されており、回転子3の外周側に所定の隙間を介して配置されている。固定子2の詳細な構造については後述する。
【0027】
回転子3は、図1に示すように、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4bに回転可能に支持されたシャフト33と一体になって回転するもので、ランデル型ポールコア32と、界磁巻線31とを備えている。なお、シャフト33の前端部には、自動車に搭載された走行用のエンジン(図示せず)に図示しないベルト等を介して連結されたプーリ20が固定されている。
【0028】
ランデル型ポールコア32はフロント側およびリア側の一組のポールコア32a、32bを組み合わせて構成されている。各ポールコア32a、32bは、それぞれが6個の爪状磁極部32cを有し、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻回して構成された界磁巻線31を前後両側から挟み込むようにシャフト33に嵌挿されている。本実施形態では、ポールコア32a、32bは、各8個の磁極を持ち、即ち、16極の回転子3を形成している。
【0029】
フロントハウジング4aの軸方向端面(前端面)およびリアハウジング4bの軸方向端面(後端面)には、吸入孔42a、42bがそれぞれ設けられている。そして、フロント側の吸入孔42aから吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すための斜流ファン35がフロント側のポールコア32aの前端面に溶接等により固着されている。同様に、リア側の吸入孔42bから吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すための遠心ファン36がリア側のポールコア32bの後端面に溶接等により固着されている。また、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4bには、固定子コア22の軸方向両端から突出した固定子巻線21のコイルエンド部に対向した部分に冷却風の吐出孔41がそれぞれ設けられている。
【0030】
シャフト33の後端部近傍には、界磁コイル31の両端に電気的に接続されたスリップリング37、38が形成されており、これらのスリップリング37、38を介してブラシ装置7から界磁コイル31に対して給電が行われるようになっている。
【0031】
上述した構成を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジンからの回転力が伝えられると、回転子3がシャフト33と共に所定方向に回転する。この状態で、スリップリング37、38を介してブラシ装置7から回転子3の界磁コイル31に励磁電圧を印加することにより、ポールコア32a、32bのそれぞれの爪状磁極部32cが励磁されて、回転子3の回転周方向に沿って交互にNS磁極が形成される。これにより、固定子巻線21に三相交流電圧を発生させることができ、整流器5の出力端子から所定の直流電流を取り出すことができる。
【0032】
次に、固定子2の詳細について説明する。図3は、本実施形態に係る固定子の部分的な側面図である。図4は、本実施形態に係る固定子の部分的な断面図である。図5は、本実施形態において用いられる導体セグメントの模式的斜視図である。図6は、本実施形態において固定子コアのスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。図7は、本実施形態において接合側エンド部の外端層に位置する導体セグメントの配置状態を示す説明図である。図8は、本実施形態に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。図9は、本実施形態において導体セグメントが収容される固定子コアのスロットを説明するための固定子の部分断面図である。
【0033】
なお、以下の説明において、軸方向とは、固定子コア22の軸方向を意味し、径方向とは、固定子コア22の径方向を意味し、周方向とは、固定子コア22の周方向を意味するものとする。
【0034】
固定子コア22には、多相の固定子巻線21を収容できるように、断面略矩形状の複数のスロット25が形成されている。本実施形態では、回転子3の磁極数16に対応して、2組の3相の固定子巻線21を収容するように、96個のスロット25が周方向に等間隔に配置されている。
【0035】
固定子コア22のスロット25に装備された固定子巻線21は、接合端部23f同士が互いに接合された複数の略U字状の導体セグメント23により構成されている。なお、導体セグメント23の外周には絶縁被膜23dが被覆されており、導体セグメント23両端の先端部には、絶縁被膜23dを剥離することによって内部の導体が露出した導体露出部23iが設けられている。
【0036】
この導体セグメント23は、図6に示すように、一対の直線部23g、23gとそれぞれの直線部23g、23gの一端部同士を連結するターン部23hとからなるU字形状のものが採用されている。このU字形状の導体セグメント23は、一対の直線部23g、23gが所定のスロットピッチ離れた2個のスロット25内に軸方向に挿入された後、スロット25から軸方向の外部に延出する直線部23g、23gの開放端部が、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられている。
【0037】
これにより、導体セグメント23は、図5に示すように、スロット25内に収容され軸方向に沿って直線状に延びる一対のスロット収容部23a、23aと、スロット25から軸方向に露出し周方向に延び出すコイルエンド部とを有する。コイルエンド部は、各スロット収容部23a、23aの一端同士を連結するように一体に設けられてスロット25の軸方向一端側(車両用交流発電機1のリア側で図1の右側。以下、同様)から突出するターン側エンド部23bと、各スロット収容部23a、23aの他端に一体に設けられてスロット25の軸方向他端側(車両用交流発電機1のフロント側で図1の左側。以下、同様)から突出する一対の接合側エンド部23c、23cとから構成されている。
【0038】
ターン側エンド部23bは、その先端に湾曲変形により形成された略V字状のターン部23hを有している。一方、接合側エンド部23cは、屈曲変形により形成されて固定子コア22の軸方向端面に対して所定の角度をもって斜めに斜行する接合側斜行部23eと、この接合側斜行部23eの先端に一体に形成され、屈曲変形により形成された接合端部23fとを有している。なお、この接合端部23fは、絶縁被膜23dが剥離されて内部の導体が露出した導体露出部23iとなっている。
【0039】
接合側斜行部23eは、加圧加工が施されることにより直線部23g、23gよりも硬度が高められている。そのため、図7に示すように、容易に変形し難くいことから、直線に近い形状を維持している。これにより、接合側斜行部23eにおけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、接合側斜行部23e先端の高さ、即ち、コイルエンド部の高さhを低減することができる(図3参照)。
【0040】
固定子コア22の各スロット25には、それぞれ偶数本(本実施形態では4本)の電気導体(各導体セグメント23のスロット収容部23a)が収容されている。また、一のスロット25内の4本の電気導体は、図4に示すように、径方向に沿って内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配列されている。なお、一のスロット25内の4本の電気導体は同相の固定子巻線21を形成している。
【0041】
各スロット25内に収容されたこれらの電気導体が所定のパターンで接続されることにより、固定子巻線21が形成される。なお、本実施形態では、スロット25内の電気導体は、軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいては、ターン部23hを経由することにより、また、軸方向他端側の接合側エンド部23cにおいては、接合端部23f同士をアーク溶接によって接合することにより、電気的に接続されている。即ち、固定子コア22の軸方向一端側には、スロット25から突出した多数のターン部23hによって第1コイルエンド群が形成され、固定子コア22の軸方向他端側には、スロット25から突出した多数の接合側エンド部23cによって第2コイルエンド群が形成されている(図8参照)。
【0042】
各スロット25内の1本の電気導体は、所定の磁極ピッチ離れた他のスロット25内の1本の他の電気導体と対をなしている。
【0043】
例えば、図9に示すように、一のスロット25内の内端層の電気導体231aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット25内の外端層の電気導体231bと対をなしている。同様に、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bと対をなしている。そして、固定子コア22の軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとはターン部23h(231c)を経由することにより接続され、また、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとはターン部23h(232c)を経由することにより接続されている。
【0044】
したがって、固定子コア22の軸方向一端側においては、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23h(232c)を、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23h(231c)が囲むこととなる。このように、固定子コア22の軸方向一端側においては、対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23h(232c)が、同じスロット25内に収容された他の対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23h(231c)により囲まれる。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23h(232c)により中層コイルエンドが形成され、また、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23h(231c)により端層コイルエンドが形成される。
【0045】
一方、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の内端層の電気導体231a’とも対をなしている。同様に、一のスロット25内の外端層の電気導体231b’は、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bとも対をなしている。そして、固定子コア22の軸方向他端側の接合側エンド部23cにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内中層の電気導体232aと内端層の電気導体231a’とは、接合端部23f同士(232dと231d’)の接合により接続されている。また、外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとは、接合端部23f同士(231e’と232e)の接合により接続されている。
【0046】
したがって、固定子コア22の軸方向他端側においては、内中層の電気導体232aおよび内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232dおよび231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’および外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’および232eにより構成されるもの)とが、径方向および周方向に互いにずれた状態で配置されている。そして、内中層の電気導体232aおよび内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232dおよび231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’および外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’および232eにより構成されるもの)とにより、異なる同心円上に配置された2つの隣接層コイルエンドが形成される。
【0047】
なお、外側接合部および内側接合部の導体露出部23iやその近傍には、これらの接合部の互いの絶縁と保持のために、絶縁樹脂部材26によるコーティングがなされている。この絶縁樹脂部材26については後で詳述する。
【0048】
さらに、図4に示すように、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとが、一連の導電体をほぼU字状に成形してなる大セグメント231(図6参照)により提供される。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとが一連の導電体を略U字状に成形してなる小セグメント232(図6参照)により提供される。なお、基本となる略U字状の導体セグメント23は、大セグメント231および小セグメント232によって構成される。
【0049】
以上の構成を、全てのスロット25の基本となる導体セグメント23について繰り返す。なお、固定子巻線21の各相について、基本となる導体セグメント23により、固定子コア22の周りを2周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子巻線21の各相について、出力用引き出し線および中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部23hを有するセグメントは、基本となる導体セグメント23とは異なる異形セグメントで構成される。これら異形セグメントを用いて、固定子巻線21の各相の巻線端が星型結線により結線される。
【0050】
次に、絶縁樹脂部材26の詳細について説明する。図10は、実施形態1における導体セグメントの接合部近傍の状態を示す部分断面図である。図11は、実施形態1における導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の厚みを示す説明図であって、(a)は導体セグメントの軸直角方向の断面図であり、(b)は導体セグメントの軸方向の断面図である。図12は、実施形態1における導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の各方向の厚み(tH、tL、tW)と必要絶縁膜厚(必要耐電圧)との関係を示すグラフである。図13は、実施形態1における導体セグメントの周方向に隣接した接合部同士の状態を示す部分断面図である。図14は、実施形態1における導体セグメントの径方向に隣接した接合部同士の状態を示す部分断面図である。
【0051】
図10に示すように、固定子巻線21を構成する導体セグメント23の接合側エンド部23cの接合端部23fは、絶縁被膜23dが剥離されて内部の導体が露出した導体露出部23iとなっている。導体露出部23iおよびその近傍部は、絶縁樹脂部材26により被覆されている。この場合、絶縁樹脂部材26は、導体セグメント23の接合端部23fの先端から接合側斜行部23e同士が交差を開始する位置Pまでの範囲を覆うように付着している。この絶縁樹脂部材26は、導体露出部23iを被覆する部分の膜厚t1が他の部位を被覆する部分の膜厚t2よりも厚くなるように形成されている。これにより、回転電機の十分な高電圧化と絶縁性能が確保されている。
【0052】
また、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26は、図11(a)(b)に示すように、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されている。これにより、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26の絶縁性能が最適な状態になるように設定されている。この場合、固定子巻線21が3相巻線であることから、周方向厚みtWは、U相、V相、W相の異相間における必要絶縁膜厚(必要耐電圧)であり、径方向厚みtLは、U相、V相、W相の同相間における必要絶縁膜厚であり、軸方向厚みtHは、対地間(フレーム等の対グランド)における必要絶縁膜厚である。通常、図12に示すように、U相、V相、W相の異相間においては電位差が最も高くなり、U相、V相、W相の同相間においては電位差が最も低くなり、対地間においては異相間と同相間の間の電位差となる。したがって、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26が、tL<tH≦tWとなるように設定されていることにより、絶縁樹脂部材26の絶縁性能が最適な状態にすることができる。
【0053】
また、異なる導体セグメント23の接合端部23f同士が接合された接合部を被覆する絶縁樹脂部材26の隣接するもの同士の間には、空隙S1、S2が設けられている。本実施形態では、図13に示すように、周方向に隣接した接合部をそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材26同士の間に空隙S1が設けられ、図14に示すように、径方向に隣接した接合部をそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材26同士の間に空隙S2が設けられている。これら空隙S1、S2は、導体セグメントの延23伸方向において導体露出部23iと対応する範囲に設けられている。これら空隙S1、S2を設けることによって、絶縁樹脂部材26に存在するピンホール対策が講じられている。これにより、絶縁性の確保をより確実に行うことが可能となり、安全性の向上が図られている。
【0054】
なお、本実施形態の絶縁樹脂部材26は、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等から選択された樹脂を主成分とする液状樹脂が採用され、その液状樹脂を導体セグメント23の導体露出部23iおよびその近傍部の表面に付着させた後、硬化させることにより形成されている。
【0055】
以上のように構成された本実施形態の回転電機1によれば、導体セグメント23の先端部の導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材26よりも厚く形成されているため、回転電機1の十分な高電圧化と絶縁性能を確保することができる。また、導体セグメント23の導体露出部23i以外の他の部位を被覆する絶縁樹脂部材26は、樹脂材料が必要最小限に止められるので、材料費を低減することができる。
【0056】
そして、本実施形態では、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26は、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されている。そのため、tL<tH≦tWの関係を満足させることによって、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26の絶縁性能を最適な状態に設定することができる。
【0057】
また、本実施形態では、隣接した接合端部23fをそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材26同士の間に空隙S1、S2が設けられている。そのため、導体セグメント23の導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26の必要な厚みが確保されている場合でも、空隙S1、S2を設けることによって、絶縁性の確保をより確実に行うことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0058】
特に、本実施形態では、空隙S1、S2は、少なくとも周方向に隣接した接合端部23fをそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材26同士の間に設けられている。そのため、固定子巻線21のU相、V相、W相の異相間において電位差が最も高くなることから、周方向に隣接した接合端部23f同士の間に空隙S1を設けることによって、絶縁性の確保をより確実に行うことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、空隙S1、S2は、導体セグメント50の延伸方向において導体露出部23iと対応する範囲に設けられている。そのため、空隙S1、S2が導体露出部23iと対応する範囲の全域に設けられるため、絶縁性の確保をより確実にすることができる。
【0060】
〔実施形態2〕
図15は、実施形態2における導体セグメントの接合部近傍の状態を示す部分断面図である。実施形態2に係る回転電機は、基本的構成が実施形態1と同じであり、固定子巻線21を構成する導体セグメント23の導体露出部23iおよびその近傍部を被覆する絶縁樹脂部材27が多層構造に形成されている点でのみ、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については、同じ符号を付して詳しい説明は省略し、以下、異なる点について説明する。
【0061】
実施形態2の絶縁樹脂部材27は、図15に示すように、第1層27aと第2層27bとからなる2層構造に形成されている。第1層27aは、導体セグメント23の接合端部23fの先端から接合側斜行部23e同士が交差を開始する位置Pまでの範囲を覆うように付着している。第2層27bは、導体露出部23iを被覆する第1層27aの表面を覆うように付着している。即ち、実施形態2の絶縁樹脂部材27は、導体露出部23iを被覆する部位が第1層27aと第2層27bとからなる2層構造に形成されている。
【0062】
そして、第1層27aおよび第2層27bは、それぞれ略一定の膜厚に形成されており、第1層27aよりも第2層27bの方が厚くされている。これにより、実施形態2の場合にも、実施形態1と同様に、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27aおよび第2層27b)は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27a)よりも膜厚が厚くされている。
【0063】
また、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27aおよび第2層27b)は、実施形態1と同様に、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されている(図11(a)(b)参照)。
【0064】
さらに、実施形態2の場合にも、実施形態1と同様に、周方向に隣接した接合端部23fをそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材27同士の間に空隙S1が設けられ(図13参照)、径方向に隣接した接合端部23fをそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材27同士の間に空隙S2が設けられている(図14参照)。
【0065】
なお、絶縁樹脂部材27の第1層27aおよび第2層27bは、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等から選択された樹脂を主成分とする液状樹脂を、導体セグメント23の所定の部位の表面に付着させた後、硬化させることによりそれぞれ形成されている。このとき、第1層27aに粘度の低い液状樹脂を用い、第2層27bに粘度の高い液状樹脂を用いることによって、絶縁樹脂部材27の上記の形状ないし構造を容易に実現することができる。
【0066】
以上のように構成された実施形態2の回転電機1によれば、導体セグメント23の先端部の導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材27よりも厚く形成されているため、回転電機1の十分な高電圧化および絶縁性能を確保しつつ、製造コストの低減化を図ることができる等、実施形態1と同様の作用および効果を奏する。
【0067】
特に、実施形態2の場合には、絶縁樹脂部材27が多層構造に形成されているため、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27aおよび第2層27b)の厚みと、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27a)の厚みとの差を出し易くなる。これにより、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27a)よりも厚みを厚くした、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27aおよび第2層27b)を容易に形成することができる。また、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27が多層構造に形成されているため、各層に存在するピンホールが互いに連通する可能性が低くなるため、単層構造に比べて、絶縁樹脂部材27の絶縁性をより有利に確保することができる。
【0068】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0069】
例えば、上記の実施形態1、2では、絶縁樹脂部材26、27は、液状樹脂を採用していたが、これに代えて粉体樹脂を採用してもよい。粉体樹脂を採用した場合には、それら粉体樹脂を、導体セグメント23の所定の部位の表面に付着させて溶融させた後、硬化させることにより絶縁樹脂部材26、27を形成することができる。
【0070】
また、上記の実施形態1、2では、固定子巻線21を構成する導体セグメント23は、図5に示すように、基本となる略U字状の導体セグメント23として、大セグメント231と小セグメント232とを組み合わせたものが採用されているが、例えば図16に示すように、同一形状の2個の導体セグメント23A、23Bを組み合わせるようにしてもよい。
【0071】
この場合、2個の導体セグメント23A、23Bは、それらの一対の直線部23g、23gが、同一のスロット25ではなく、隣接した2個のスロット25A、25Bに別々に挿入される。即ち、図16の右側にある2個の導体セグメント23A、23Bにおいて、一方の導体セグメント23Aは、一方の直線部23gが一のスロット25Aの外端層に挿入され、他方の直線部23gが固定子コア22の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の外中層に挿入される。
【0072】
そして、他方の導体セグメント23Bは、一方の直線部23gがスロット25Aと隣接したスロット25Bの外端層に挿入され、他方の直線部23gが固定子コア22の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の外中層に挿入される。即ち、2個の導体セグメント23A、23Bは、周方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。これにより、導体セグメント23Aのターン部23hと導体セグメント23Bのターン部23hは、軸方向外方へ最も突出している中央部で交差しなくなるので、固定子コア22の一端面から突出しているターン部23hの突出高さを低くすることができる。
【0073】
なお、本実施形態の場合にも、上記のようにして、各スロット25に、それぞれ偶数本(本実施形態では4本)の直線部23gが挿入され、一のスロット25内に4本の直線部23gが径方向に沿って一列に配列される。そして、それら導体セグメント23A、23Bの、スロット25から外部へ延出した直線部23gの開放端部は、上記の実施形態1、2の場合と同様に、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する所定形状(S字形状)の接合側斜行部23eを形成しつつ折り曲げられた後、所定の導体セグメント23の開放端部の端末部同士が溶接により接続されることによって固定子巻線21が形成される。
【0074】
なお、上記の実施形態1、2は、本発明に係る回転電機の固定子を車両用交流発電機1の固定子2に適用した例を説明したが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、発電機、あるいは電動機、さらには両者を選択的に使用しうる回転電機の固定子にも利用することができる。また、本発明は、車両用交流発電機に限らず、同様の空冷構造をもつ車両用または汎用の回転電機にも適用することができる。例えば、電動機に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…車両用交流発電機(回転電機)、 2…固定子、 3…回転子、 4…ハウジング、 5…整流器、 21…固定子巻線、 22…固定子コア、 23、23A、23B…導体セグメント、 231…大セグメント、 232…小セグメント、 23a…スロット収容部、 23b…ターン側エンド部(コイルエンド部)、 23c…接合側エンド部(コイルエンド部)、 23d…絶縁被膜、 23e…接合側斜行部(斜行部)、 23f…接合端部(接合部)、 23g…直線部、 23h…ターン部、 23i…導体露出部、 24…インシュレータ、 25、25A、25B…スロット、 26、27…絶縁樹脂部材、 27a…第1層、 27b…第2層、 S1…周方向の空隙、 S2…径方向の空隙。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて電動機や発電機として使用される回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において電動機や発電機として使用される回転電機として、回転子と、この回転子と対向配置された固定子コアおよびこの固定子コアに装備された固定子巻線を備える固定子とを有するものが知られている。そして、特許文献1および2には、固定子巻線として、固定子コアのスロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットから軸方向に露出し、周方向に延び出すコイルエンド部とを持つ複数の導体セグメントにより形成されたセグメント型のものが開示されている。
【0003】
この固定子巻線を形成する導体セグメントは、一対の直線部と、一対の直線部の一端を互いに接続するターン部とを有して略U字状に成形されており、各直線部の開放側の先端部には絶縁被膜が剥離されることにより導体露出部が形成されている。この導体セグメントは、一対の直線部が所定のスロットピッチ離れた2個のスロットに軸方向一端側から挿入される。そして、スロットから軸方向他端側に延出した開放端部が、周方向に所定角度で斜めに斜行するように曲げられ、所定の先端部の導体露出部同士が溶接等で接続されることによって直列に接続される。その後、導体セグメントの導体露出部およびその近傍部が、絶縁樹脂部材により被覆されることによって、上記の固定子巻線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−204151号公報
【特許文献2】特開2000−060051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年のハイブリッド車においては、搭載される回転電機の高性能化と小型化の強い要請があることに伴い、高電圧化が要求される。この要求に対応して高電圧化を実現するためには、導体セグメントの導体露出部およびその近傍部を被覆する絶縁樹脂部材の十分な絶縁性能を確保する必要がある。そのため、その絶縁樹脂部材の厚みを厚くすると、絶縁樹脂材料のコスト上昇を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な高電圧化と絶縁性能を確保しつつ、製造コストの低減化を図り得るようにした回転電機を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、回転子と、前記回転子と対向配置された固定子コアおよびこの固定子コアに装備された固定子巻線を備える固定子と、を有する回転電機において、前記固定子巻線は、前記固定子コアのスロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットから軸方向に露出し、周方向に延び出すコイルエンド部とを持つ複数の導体セグメントにより形成され、前記導体セグメントは、ターン部と、前記コイルエンド部において他の導体セグメントと交差する斜行部と、前記斜行部の先端の先端部とを有しており、前記コイルエンド部は、他の導体セグメントの前記先端部における導体露出部を接合した接合端部を有し、前記接合端部同士が接合された接合部およびその近傍部は、絶縁樹脂部材により被覆され、前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、他の部位を被覆する前記絶縁樹脂部材よりも厚く形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材よりも厚く形成されているため、回転電機の十分な高電圧化と絶縁性能を確保することができる。また、導体セグメントの導体露出部以外の他の部位を被覆する絶縁樹脂部材は、樹脂材料が必要最小限に止められるので、材料費を低減することができる。したがって、本発明によれば、十分な高電圧化および絶縁性能を確保しつつ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0009】
なお、本発明において、絶縁樹脂部材を形成する樹脂材料としては、例えばエポキシ、ポリエステル、ウレタン、シリコーン等を挙げることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、tL<tH≦tWの関係を満足させることによって、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の絶縁性能を最適な状態に設定することができる。ここで、固定子巻線が多相の場合において、周方向厚みtWは、異相間における必要絶縁膜厚(必要耐電圧)であり、径方向厚みtLは、同相間における必要絶縁膜厚であり、軸方向厚みtHは、対地間(フレーム等の対グランド)における必要絶縁膜厚である。通常、図12に示すように、異相間においては電位差が最も高くなり、同相間においては電位差が最も低くなり、対地間においては異相間と同相間の間の電位差となる。したがって、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材を、tL<tH≦tWとなるように設定することにより、絶縁樹脂部材の絶縁性能を最適な状態に設定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、隣接した前記接合部をそれぞれ被覆する前記絶縁樹脂部材同士の間に空隙が設けられていることを特徴とする。
【0013】
通常、絶縁樹脂部材には、外気が内部の導体まで繋がっているピンホールが一定の確率で存在している。そのため、請求項3に記載の発明によれば、導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の必要な厚みが確保されている場合でも、隣接した接合部をそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材同士の間に空隙を設けることによって、絶縁性の確保をより確実に行うことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記空隙は、少なくとも周方向に隣接した前記接合部をそれぞれ被覆する前記絶縁樹脂部材同士の間に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、固定子巻線が多相(例えば3相)の場合、U相、V相、W相の異相間において電位差が最も高くなることから、周方向に隣接した接合部をそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材同士の間に空隙を設けることによって、絶縁性の確保をより確実に行うことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記空隙は、前記導体セグメントの延伸方向において前記導体露出部と対応する範囲に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、空隙が導体露出部と対応する範囲の全域に設けられるため、絶縁性の確保をより確実にすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記絶縁樹脂部材は、多層構造に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、絶縁樹脂部材が多層構造に形成されているため、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の厚みと、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材の厚みとの差を出し易くなる。これにより、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材よりも厚みを厚くした、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材を容易に形成することができる。また、絶縁樹脂部材が多層構造の場合には、各層に存在するピンホールが互いに連通する可能性が低くなるため、単層構造に比べて、絶縁樹脂部材の絶縁性をより有利に確保することができる。
【0020】
なお、本発明における多層構造とは、2層以上の複数層構造を意味する。本発明において、絶縁樹脂部材の多層構造は、例えば、各層を構成する樹脂材料の種類や粘度等を適宜変更することによって容易に実現することができる。この場合、絶縁樹脂部材の各層の厚みは、必ずしも同一にする必要はなく、種々変更してもよい。
【0021】
請求項7に記載の発明は、前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、多層構造に形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材よりも厚みを厚くした、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材を容易に形成することができる。また、絶縁樹脂部材の各層に存在するピンホールが互いに連通する可能性が低くなるため、導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の絶縁性を、単層構造に比べて有利に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係る回転電機の軸方向断面図である。
【図2】実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。
【図3】実施形態1に係る固定子の部分的な側面図である。
【図4】実施形態1に係る固定子の部分的な断面図である。
【図5】実施形態1において用いられる導体セグメントの模式的斜視図である。
【図6】実施形態1において固定子コアのスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。
【図7】実施形態1において接合側エンド部の外端層に位置する導体セグメントの配置状態を示す説明図である。
【図8】実施形態1に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。
【図9】実施形態1において導体セグメントが収容される固定子コアのスロットを説明するための固定子の部分断面図である。
【図10】実施形態1における導体セグメントの接合部近傍の状態を示す部分断面図である。
【図11】実施形態1における導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の厚みを示す説明図であって、(a)は導体セグメントの軸直角方向の断面図、(b)は導体セグメントの軸方向の断面図である。
【図12】実施形態1における導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の各方向の厚み(tH、tL、tW)と必要絶縁膜厚(必要耐電圧)との関係を示すグラフである。
【図13】実施形態1における導体セグメントの周方向に隣接した接合部同士の状態を示す部分断面図である。
【図14】実施形態1における導体セグメントの径方向に隣接した接合部同士の状態を示す部分断面図である。
【図15】実施形態2における導体セグメントの接合部近傍の状態を示す部分断面図である。
【図16】他の実施形態において固定子コアのスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る回転電機の軸方向断面図である。図2は、実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。本実施形態に係る回転電機1は、車両用交流発電機として用いられるものであって、図1に示すように、電機子として働く固定子2と、界磁として働く回転子3と、固定子2および回転子3を収容し、締結ボルト4cによって連結、固定されたフロントハウジング4aおよびリアハウジング4bと、交流電力を直流電力に変換する整流器5等を含んで構成されている。
【0026】
固定子2は、図2に示すように、固定子コア22と、複数の導体セグメント23により構成されたセグメント型の固定子巻線21と、固定子コア22および固定子巻線21間を電気絶縁するインシュレータ24とを備えている。この固定子2は、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4b間で挟持されることにより固定されており、回転子3の外周側に所定の隙間を介して配置されている。固定子2の詳細な構造については後述する。
【0027】
回転子3は、図1に示すように、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4bに回転可能に支持されたシャフト33と一体になって回転するもので、ランデル型ポールコア32と、界磁巻線31とを備えている。なお、シャフト33の前端部には、自動車に搭載された走行用のエンジン(図示せず)に図示しないベルト等を介して連結されたプーリ20が固定されている。
【0028】
ランデル型ポールコア32はフロント側およびリア側の一組のポールコア32a、32bを組み合わせて構成されている。各ポールコア32a、32bは、それぞれが6個の爪状磁極部32cを有し、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻回して構成された界磁巻線31を前後両側から挟み込むようにシャフト33に嵌挿されている。本実施形態では、ポールコア32a、32bは、各8個の磁極を持ち、即ち、16極の回転子3を形成している。
【0029】
フロントハウジング4aの軸方向端面(前端面)およびリアハウジング4bの軸方向端面(後端面)には、吸入孔42a、42bがそれぞれ設けられている。そして、フロント側の吸入孔42aから吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すための斜流ファン35がフロント側のポールコア32aの前端面に溶接等により固着されている。同様に、リア側の吸入孔42bから吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すための遠心ファン36がリア側のポールコア32bの後端面に溶接等により固着されている。また、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4bには、固定子コア22の軸方向両端から突出した固定子巻線21のコイルエンド部に対向した部分に冷却風の吐出孔41がそれぞれ設けられている。
【0030】
シャフト33の後端部近傍には、界磁コイル31の両端に電気的に接続されたスリップリング37、38が形成されており、これらのスリップリング37、38を介してブラシ装置7から界磁コイル31に対して給電が行われるようになっている。
【0031】
上述した構成を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジンからの回転力が伝えられると、回転子3がシャフト33と共に所定方向に回転する。この状態で、スリップリング37、38を介してブラシ装置7から回転子3の界磁コイル31に励磁電圧を印加することにより、ポールコア32a、32bのそれぞれの爪状磁極部32cが励磁されて、回転子3の回転周方向に沿って交互にNS磁極が形成される。これにより、固定子巻線21に三相交流電圧を発生させることができ、整流器5の出力端子から所定の直流電流を取り出すことができる。
【0032】
次に、固定子2の詳細について説明する。図3は、本実施形態に係る固定子の部分的な側面図である。図4は、本実施形態に係る固定子の部分的な断面図である。図5は、本実施形態において用いられる導体セグメントの模式的斜視図である。図6は、本実施形態において固定子コアのスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。図7は、本実施形態において接合側エンド部の外端層に位置する導体セグメントの配置状態を示す説明図である。図8は、本実施形態に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。図9は、本実施形態において導体セグメントが収容される固定子コアのスロットを説明するための固定子の部分断面図である。
【0033】
なお、以下の説明において、軸方向とは、固定子コア22の軸方向を意味し、径方向とは、固定子コア22の径方向を意味し、周方向とは、固定子コア22の周方向を意味するものとする。
【0034】
固定子コア22には、多相の固定子巻線21を収容できるように、断面略矩形状の複数のスロット25が形成されている。本実施形態では、回転子3の磁極数16に対応して、2組の3相の固定子巻線21を収容するように、96個のスロット25が周方向に等間隔に配置されている。
【0035】
固定子コア22のスロット25に装備された固定子巻線21は、接合端部23f同士が互いに接合された複数の略U字状の導体セグメント23により構成されている。なお、導体セグメント23の外周には絶縁被膜23dが被覆されており、導体セグメント23両端の先端部には、絶縁被膜23dを剥離することによって内部の導体が露出した導体露出部23iが設けられている。
【0036】
この導体セグメント23は、図6に示すように、一対の直線部23g、23gとそれぞれの直線部23g、23gの一端部同士を連結するターン部23hとからなるU字形状のものが採用されている。このU字形状の導体セグメント23は、一対の直線部23g、23gが所定のスロットピッチ離れた2個のスロット25内に軸方向に挿入された後、スロット25から軸方向の外部に延出する直線部23g、23gの開放端部が、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられている。
【0037】
これにより、導体セグメント23は、図5に示すように、スロット25内に収容され軸方向に沿って直線状に延びる一対のスロット収容部23a、23aと、スロット25から軸方向に露出し周方向に延び出すコイルエンド部とを有する。コイルエンド部は、各スロット収容部23a、23aの一端同士を連結するように一体に設けられてスロット25の軸方向一端側(車両用交流発電機1のリア側で図1の右側。以下、同様)から突出するターン側エンド部23bと、各スロット収容部23a、23aの他端に一体に設けられてスロット25の軸方向他端側(車両用交流発電機1のフロント側で図1の左側。以下、同様)から突出する一対の接合側エンド部23c、23cとから構成されている。
【0038】
ターン側エンド部23bは、その先端に湾曲変形により形成された略V字状のターン部23hを有している。一方、接合側エンド部23cは、屈曲変形により形成されて固定子コア22の軸方向端面に対して所定の角度をもって斜めに斜行する接合側斜行部23eと、この接合側斜行部23eの先端に一体に形成され、屈曲変形により形成された接合端部23fとを有している。なお、この接合端部23fは、絶縁被膜23dが剥離されて内部の導体が露出した導体露出部23iとなっている。
【0039】
接合側斜行部23eは、加圧加工が施されることにより直線部23g、23gよりも硬度が高められている。そのため、図7に示すように、容易に変形し難くいことから、直線に近い形状を維持している。これにより、接合側斜行部23eにおけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、接合側斜行部23e先端の高さ、即ち、コイルエンド部の高さhを低減することができる(図3参照)。
【0040】
固定子コア22の各スロット25には、それぞれ偶数本(本実施形態では4本)の電気導体(各導体セグメント23のスロット収容部23a)が収容されている。また、一のスロット25内の4本の電気導体は、図4に示すように、径方向に沿って内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配列されている。なお、一のスロット25内の4本の電気導体は同相の固定子巻線21を形成している。
【0041】
各スロット25内に収容されたこれらの電気導体が所定のパターンで接続されることにより、固定子巻線21が形成される。なお、本実施形態では、スロット25内の電気導体は、軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいては、ターン部23hを経由することにより、また、軸方向他端側の接合側エンド部23cにおいては、接合端部23f同士をアーク溶接によって接合することにより、電気的に接続されている。即ち、固定子コア22の軸方向一端側には、スロット25から突出した多数のターン部23hによって第1コイルエンド群が形成され、固定子コア22の軸方向他端側には、スロット25から突出した多数の接合側エンド部23cによって第2コイルエンド群が形成されている(図8参照)。
【0042】
各スロット25内の1本の電気導体は、所定の磁極ピッチ離れた他のスロット25内の1本の他の電気導体と対をなしている。
【0043】
例えば、図9に示すように、一のスロット25内の内端層の電気導体231aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット25内の外端層の電気導体231bと対をなしている。同様に、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bと対をなしている。そして、固定子コア22の軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとはターン部23h(231c)を経由することにより接続され、また、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとはターン部23h(232c)を経由することにより接続されている。
【0044】
したがって、固定子コア22の軸方向一端側においては、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23h(232c)を、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23h(231c)が囲むこととなる。このように、固定子コア22の軸方向一端側においては、対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23h(232c)が、同じスロット25内に収容された他の対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23h(231c)により囲まれる。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23h(232c)により中層コイルエンドが形成され、また、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23h(231c)により端層コイルエンドが形成される。
【0045】
一方、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の内端層の電気導体231a’とも対をなしている。同様に、一のスロット25内の外端層の電気導体231b’は、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bとも対をなしている。そして、固定子コア22の軸方向他端側の接合側エンド部23cにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内中層の電気導体232aと内端層の電気導体231a’とは、接合端部23f同士(232dと231d’)の接合により接続されている。また、外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとは、接合端部23f同士(231e’と232e)の接合により接続されている。
【0046】
したがって、固定子コア22の軸方向他端側においては、内中層の電気導体232aおよび内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232dおよび231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’および外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’および232eにより構成されるもの)とが、径方向および周方向に互いにずれた状態で配置されている。そして、内中層の電気導体232aおよび内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232dおよび231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’および外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’および232eにより構成されるもの)とにより、異なる同心円上に配置された2つの隣接層コイルエンドが形成される。
【0047】
なお、外側接合部および内側接合部の導体露出部23iやその近傍には、これらの接合部の互いの絶縁と保持のために、絶縁樹脂部材26によるコーティングがなされている。この絶縁樹脂部材26については後で詳述する。
【0048】
さらに、図4に示すように、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとが、一連の導電体をほぼU字状に成形してなる大セグメント231(図6参照)により提供される。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとが一連の導電体を略U字状に成形してなる小セグメント232(図6参照)により提供される。なお、基本となる略U字状の導体セグメント23は、大セグメント231および小セグメント232によって構成される。
【0049】
以上の構成を、全てのスロット25の基本となる導体セグメント23について繰り返す。なお、固定子巻線21の各相について、基本となる導体セグメント23により、固定子コア22の周りを2周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子巻線21の各相について、出力用引き出し線および中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部23hを有するセグメントは、基本となる導体セグメント23とは異なる異形セグメントで構成される。これら異形セグメントを用いて、固定子巻線21の各相の巻線端が星型結線により結線される。
【0050】
次に、絶縁樹脂部材26の詳細について説明する。図10は、実施形態1における導体セグメントの接合部近傍の状態を示す部分断面図である。図11は、実施形態1における導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の厚みを示す説明図であって、(a)は導体セグメントの軸直角方向の断面図であり、(b)は導体セグメントの軸方向の断面図である。図12は、実施形態1における導体セグメントの導体露出部を被覆する絶縁樹脂部材の各方向の厚み(tH、tL、tW)と必要絶縁膜厚(必要耐電圧)との関係を示すグラフである。図13は、実施形態1における導体セグメントの周方向に隣接した接合部同士の状態を示す部分断面図である。図14は、実施形態1における導体セグメントの径方向に隣接した接合部同士の状態を示す部分断面図である。
【0051】
図10に示すように、固定子巻線21を構成する導体セグメント23の接合側エンド部23cの接合端部23fは、絶縁被膜23dが剥離されて内部の導体が露出した導体露出部23iとなっている。導体露出部23iおよびその近傍部は、絶縁樹脂部材26により被覆されている。この場合、絶縁樹脂部材26は、導体セグメント23の接合端部23fの先端から接合側斜行部23e同士が交差を開始する位置Pまでの範囲を覆うように付着している。この絶縁樹脂部材26は、導体露出部23iを被覆する部分の膜厚t1が他の部位を被覆する部分の膜厚t2よりも厚くなるように形成されている。これにより、回転電機の十分な高電圧化と絶縁性能が確保されている。
【0052】
また、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26は、図11(a)(b)に示すように、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されている。これにより、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26の絶縁性能が最適な状態になるように設定されている。この場合、固定子巻線21が3相巻線であることから、周方向厚みtWは、U相、V相、W相の異相間における必要絶縁膜厚(必要耐電圧)であり、径方向厚みtLは、U相、V相、W相の同相間における必要絶縁膜厚であり、軸方向厚みtHは、対地間(フレーム等の対グランド)における必要絶縁膜厚である。通常、図12に示すように、U相、V相、W相の異相間においては電位差が最も高くなり、U相、V相、W相の同相間においては電位差が最も低くなり、対地間においては異相間と同相間の間の電位差となる。したがって、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26が、tL<tH≦tWとなるように設定されていることにより、絶縁樹脂部材26の絶縁性能が最適な状態にすることができる。
【0053】
また、異なる導体セグメント23の接合端部23f同士が接合された接合部を被覆する絶縁樹脂部材26の隣接するもの同士の間には、空隙S1、S2が設けられている。本実施形態では、図13に示すように、周方向に隣接した接合部をそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材26同士の間に空隙S1が設けられ、図14に示すように、径方向に隣接した接合部をそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材26同士の間に空隙S2が設けられている。これら空隙S1、S2は、導体セグメントの延23伸方向において導体露出部23iと対応する範囲に設けられている。これら空隙S1、S2を設けることによって、絶縁樹脂部材26に存在するピンホール対策が講じられている。これにより、絶縁性の確保をより確実に行うことが可能となり、安全性の向上が図られている。
【0054】
なお、本実施形態の絶縁樹脂部材26は、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等から選択された樹脂を主成分とする液状樹脂が採用され、その液状樹脂を導体セグメント23の導体露出部23iおよびその近傍部の表面に付着させた後、硬化させることにより形成されている。
【0055】
以上のように構成された本実施形態の回転電機1によれば、導体セグメント23の先端部の導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材26よりも厚く形成されているため、回転電機1の十分な高電圧化と絶縁性能を確保することができる。また、導体セグメント23の導体露出部23i以外の他の部位を被覆する絶縁樹脂部材26は、樹脂材料が必要最小限に止められるので、材料費を低減することができる。
【0056】
そして、本実施形態では、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26は、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されている。そのため、tL<tH≦tWの関係を満足させることによって、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26の絶縁性能を最適な状態に設定することができる。
【0057】
また、本実施形態では、隣接した接合端部23fをそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材26同士の間に空隙S1、S2が設けられている。そのため、導体セグメント23の導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材26の必要な厚みが確保されている場合でも、空隙S1、S2を設けることによって、絶縁性の確保をより確実に行うことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0058】
特に、本実施形態では、空隙S1、S2は、少なくとも周方向に隣接した接合端部23fをそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材26同士の間に設けられている。そのため、固定子巻線21のU相、V相、W相の異相間において電位差が最も高くなることから、周方向に隣接した接合端部23f同士の間に空隙S1を設けることによって、絶縁性の確保をより確実に行うことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、空隙S1、S2は、導体セグメント50の延伸方向において導体露出部23iと対応する範囲に設けられている。そのため、空隙S1、S2が導体露出部23iと対応する範囲の全域に設けられるため、絶縁性の確保をより確実にすることができる。
【0060】
〔実施形態2〕
図15は、実施形態2における導体セグメントの接合部近傍の状態を示す部分断面図である。実施形態2に係る回転電機は、基本的構成が実施形態1と同じであり、固定子巻線21を構成する導体セグメント23の導体露出部23iおよびその近傍部を被覆する絶縁樹脂部材27が多層構造に形成されている点でのみ、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については、同じ符号を付して詳しい説明は省略し、以下、異なる点について説明する。
【0061】
実施形態2の絶縁樹脂部材27は、図15に示すように、第1層27aと第2層27bとからなる2層構造に形成されている。第1層27aは、導体セグメント23の接合端部23fの先端から接合側斜行部23e同士が交差を開始する位置Pまでの範囲を覆うように付着している。第2層27bは、導体露出部23iを被覆する第1層27aの表面を覆うように付着している。即ち、実施形態2の絶縁樹脂部材27は、導体露出部23iを被覆する部位が第1層27aと第2層27bとからなる2層構造に形成されている。
【0062】
そして、第1層27aおよび第2層27bは、それぞれ略一定の膜厚に形成されており、第1層27aよりも第2層27bの方が厚くされている。これにより、実施形態2の場合にも、実施形態1と同様に、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27aおよび第2層27b)は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27a)よりも膜厚が厚くされている。
【0063】
また、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27aおよび第2層27b)は、実施形態1と同様に、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されている(図11(a)(b)参照)。
【0064】
さらに、実施形態2の場合にも、実施形態1と同様に、周方向に隣接した接合端部23fをそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材27同士の間に空隙S1が設けられ(図13参照)、径方向に隣接した接合端部23fをそれぞれ被覆する絶縁樹脂部材27同士の間に空隙S2が設けられている(図14参照)。
【0065】
なお、絶縁樹脂部材27の第1層27aおよび第2層27bは、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等から選択された樹脂を主成分とする液状樹脂を、導体セグメント23の所定の部位の表面に付着させた後、硬化させることによりそれぞれ形成されている。このとき、第1層27aに粘度の低い液状樹脂を用い、第2層27bに粘度の高い液状樹脂を用いることによって、絶縁樹脂部材27の上記の形状ないし構造を容易に実現することができる。
【0066】
以上のように構成された実施形態2の回転電機1によれば、導体セグメント23の先端部の導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27は、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材27よりも厚く形成されているため、回転電機1の十分な高電圧化および絶縁性能を確保しつつ、製造コストの低減化を図ることができる等、実施形態1と同様の作用および効果を奏する。
【0067】
特に、実施形態2の場合には、絶縁樹脂部材27が多層構造に形成されているため、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27aおよび第2層27b)の厚みと、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27a)の厚みとの差を出し易くなる。これにより、他の部位を被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27a)よりも厚みを厚くした、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27(第1層27aおよび第2層27b)を容易に形成することができる。また、導体露出部23iを被覆する絶縁樹脂部材27が多層構造に形成されているため、各層に存在するピンホールが互いに連通する可能性が低くなるため、単層構造に比べて、絶縁樹脂部材27の絶縁性をより有利に確保することができる。
【0068】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0069】
例えば、上記の実施形態1、2では、絶縁樹脂部材26、27は、液状樹脂を採用していたが、これに代えて粉体樹脂を採用してもよい。粉体樹脂を採用した場合には、それら粉体樹脂を、導体セグメント23の所定の部位の表面に付着させて溶融させた後、硬化させることにより絶縁樹脂部材26、27を形成することができる。
【0070】
また、上記の実施形態1、2では、固定子巻線21を構成する導体セグメント23は、図5に示すように、基本となる略U字状の導体セグメント23として、大セグメント231と小セグメント232とを組み合わせたものが採用されているが、例えば図16に示すように、同一形状の2個の導体セグメント23A、23Bを組み合わせるようにしてもよい。
【0071】
この場合、2個の導体セグメント23A、23Bは、それらの一対の直線部23g、23gが、同一のスロット25ではなく、隣接した2個のスロット25A、25Bに別々に挿入される。即ち、図16の右側にある2個の導体セグメント23A、23Bにおいて、一方の導体セグメント23Aは、一方の直線部23gが一のスロット25Aの外端層に挿入され、他方の直線部23gが固定子コア22の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の外中層に挿入される。
【0072】
そして、他方の導体セグメント23Bは、一方の直線部23gがスロット25Aと隣接したスロット25Bの外端層に挿入され、他方の直線部23gが固定子コア22の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の外中層に挿入される。即ち、2個の導体セグメント23A、23Bは、周方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。これにより、導体セグメント23Aのターン部23hと導体セグメント23Bのターン部23hは、軸方向外方へ最も突出している中央部で交差しなくなるので、固定子コア22の一端面から突出しているターン部23hの突出高さを低くすることができる。
【0073】
なお、本実施形態の場合にも、上記のようにして、各スロット25に、それぞれ偶数本(本実施形態では4本)の直線部23gが挿入され、一のスロット25内に4本の直線部23gが径方向に沿って一列に配列される。そして、それら導体セグメント23A、23Bの、スロット25から外部へ延出した直線部23gの開放端部は、上記の実施形態1、2の場合と同様に、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する所定形状(S字形状)の接合側斜行部23eを形成しつつ折り曲げられた後、所定の導体セグメント23の開放端部の端末部同士が溶接により接続されることによって固定子巻線21が形成される。
【0074】
なお、上記の実施形態1、2は、本発明に係る回転電機の固定子を車両用交流発電機1の固定子2に適用した例を説明したが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、発電機、あるいは電動機、さらには両者を選択的に使用しうる回転電機の固定子にも利用することができる。また、本発明は、車両用交流発電機に限らず、同様の空冷構造をもつ車両用または汎用の回転電機にも適用することができる。例えば、電動機に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…車両用交流発電機(回転電機)、 2…固定子、 3…回転子、 4…ハウジング、 5…整流器、 21…固定子巻線、 22…固定子コア、 23、23A、23B…導体セグメント、 231…大セグメント、 232…小セグメント、 23a…スロット収容部、 23b…ターン側エンド部(コイルエンド部)、 23c…接合側エンド部(コイルエンド部)、 23d…絶縁被膜、 23e…接合側斜行部(斜行部)、 23f…接合端部(接合部)、 23g…直線部、 23h…ターン部、 23i…導体露出部、 24…インシュレータ、 25、25A、25B…スロット、 26、27…絶縁樹脂部材、 27a…第1層、 27b…第2層、 S1…周方向の空隙、 S2…径方向の空隙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、前記回転子と対向配置された固定子コアおよび前記固定子コアに装備された固定子巻線を備える固定子と、を有する回転電機において、
前記固定子巻線は、前記固定子コアのスロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットから軸方向に露出し、周方向に延び出すコイルエンド部とを持つ複数の導体セグメントにより形成され、
前記導体セグメントは、ターン部と、前記コイルエンド部において他の導体セグメントと交差する斜行部と、前記斜行部の先端の先端部とを有しており、
前記コイルエンド部は、他の導体セグメントの前記先端部における導体露出部を接合した接合端部を有し、
前記接合端部同士が接合された接合部およびその近傍部は、絶縁樹脂部材により被覆され、
前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、他の部位を被覆する前記絶縁樹脂部材よりも厚く形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
隣接した前記接合部をそれぞれ被覆する前記絶縁樹脂部材同士の間に空隙が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記空隙は、少なくとも周方向に隣接した前記接合部をそれぞれ被覆する前記絶縁樹脂部材同士の間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記空隙は、前記導体セグメントの延伸方向において前記導体露出部と対応する範囲に設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記絶縁樹脂部材は、多層構造に形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、多層構造に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項1】
回転子と、前記回転子と対向配置された固定子コアおよび前記固定子コアに装備された固定子巻線を備える固定子と、を有する回転電機において、
前記固定子巻線は、前記固定子コアのスロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットから軸方向に露出し、周方向に延び出すコイルエンド部とを持つ複数の導体セグメントにより形成され、
前記導体セグメントは、ターン部と、前記コイルエンド部において他の導体セグメントと交差する斜行部と、前記斜行部の先端の先端部とを有しており、
前記コイルエンド部は、他の導体セグメントの前記先端部における導体露出部を接合した接合端部を有し、
前記接合端部同士が接合された接合部およびその近傍部は、絶縁樹脂部材により被覆され、
前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、他の部位を被覆する前記絶縁樹脂部材よりも厚く形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、周方向厚みをtW、径方向厚みをtL、軸方向厚みをtHとしたときに、tL<tH≦tWとなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
隣接した前記接合部をそれぞれ被覆する前記絶縁樹脂部材同士の間に空隙が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記空隙は、少なくとも周方向に隣接した前記接合部をそれぞれ被覆する前記絶縁樹脂部材同士の間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記空隙は、前記導体セグメントの延伸方向において前記導体露出部と対応する範囲に設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記絶縁樹脂部材は、多層構造に形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記導体露出部を被覆する前記絶縁樹脂部材は、多層構造に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−46467(P2013−46467A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181769(P2011−181769)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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