説明

回転電機

【課題】回転電機において、コアティースの数を増やすことなく永久磁石の極数を増やしてトルクリプルを低減した回転電機を提供する。
【解決手段】回転軸11と、周方向に正負の磁極が交互に形成された円環状の永久磁石12aを含む回転子12と、回転子12の外周に配置され複数の外側固定子コアティース13cと外側固定子巻線13bとを含む外側固定子13と、回転子12の内周に配置され複数の内側固定子コアティース14cと内側固定子巻線14bとを含む内側固定子14とを備えた回転電機であって、固定子コアティース13c、14cは同数であり、固定子巻線13b、14bには3相交流が通電され、固定子巻線13b、14bへの同相の通電時に電気角で360度ずれ、かつ隣り合う外側固定子コアティース13cのスロット開口に内側固定子コアティース14cが対向するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1個のロータとそのロータを挟むように配置された2個ステータを備えたダブルステータ型の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より1個のロータを挟むように配置された2個のステータを備えたダブルステータ型の回転電機が知られている。例えば、特許文献1にはダブルステータ型ブラシレスモータが開示されている。これは、外周を覆うケーシングと、このケーシングに組み込まれた軸受と、軸受に組み込まれケーシングに対して一軸回転運動するシャフトと、シャフトに取り付けられたロータと、ロータの外側に配されたアウタステータと、ロータの内側に配されたインナステータを有している。
【0003】
ロータには、その半径方向にN極とS極とに分極しかつ隣り合う極の分極方向が互いに逆向きとなるように着磁された界磁磁石(永久磁石)が配置されている。アウタステータは、その外周がケーシングに取り付けられており、界磁磁石と対向するようにロータに向けて突出した複数のコアティースを有している。インナステータは、その内周がケーシングに取り付けられており、界磁磁石と対向するようにロータに向けて突出した複数のコアティースを有している。アウタステータのコアティース数とインナステータのコアティース数とは同数であり、ロータを挟んで互いに対向する位置に配されている。
【0004】
特許文献2にもダブルステータ型の回転電機が開示されている。この回転電機は、ケーシングに固定された2個のステータである片側ステータ及び他側ステータと、両ステータの間に所定の空隙を空けて各ステータと対向配置され、各ステータに対し回転可能な1個のロータとを備えている。
【0005】
両ステータともロータに向けて突出するように複数のコアティースを備えており、各コアティースにはステータ巻線が巻回されている。各ステータ巻線は隣り合うコアティース同士で異なる相の巻線が巻回されている集中巻巻線が施されている。片側ステータ及び他側ステータ同士で同じ相のステータ巻線は、巻線による磁束の発生方向はロータに対して逆向きであり、かつ互いに電気角で180度ずれるように配置されている。
【0006】
ロータは、円板状のロータ導電体と、ロータ導電体の周方向複数箇所の等間隔位置に設けられた永久磁石を備えている。このような構成をとることにより、回転時に2個のステータで発生する磁束に含まれる空間高調波磁束をロータで互いに相殺することができ、起磁力高調波を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−139156号公報
【特許文献2】特開2009−247046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにダブルステータ型の回転電機では、ロータの両側にステータを配置することにより巻線スロットの全断面積を増大させることが可能となりシングルステータ型の回転電機と比較してトルクが増大する。しかしながら、特許文献1に記載のブラシレスモータは、アウタステータとインナステータとが対向しているため、アウタロータの隣接するコアティース先端部のスロット開口にはインナロータの隣接するコアティース先端部のスロット開口が対向する。スロット開口ではトルクが発生しないため、トルクが増大してもその波形は歪んでしまいトルクリプルも増大する。トルクリプルを低減させるためには永久磁石の極数を増やすか、コアティース先端部のスロット開口幅を狭める必要がある。
【0009】
しかし、永久磁石の極数を増やすとコアティースの数もそれに伴い増えるため巻線スペースが減ってしまい巻線スロットの総断面積が減少してしまう。またスロット開口幅を狭めるとコアティースに巻線を巻回ためのノズルあるいは巻線自体を通すことができず、巻回するためにはステータコアを分割することなどが必要となり、生産性が悪化しコストアップにつながってしまう。
【0010】
また、特許文献2に記載の回転電機では起磁力高調波を低減させることはできるが、コアティースを増やさずに永久磁石の極数を増やすとトルクが打ち消されて回転しなくなるため、永久磁石の極数を増加させることができず、トルクリプルを低減させることができない。
【0011】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、回転電機において、コアティースの数を増やすことなく永久磁石の極数を増やしてトルクリプルを低減した回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る回転電機の特徴構成は、
回転軸と、
前記回転軸と同心かつ一体で回転し、周方向に正負の磁極が交互に形成された磁極対を複数有する円環状の磁石体を含む回転子と、
前記回転軸と同心かつ前記回転子の半径方向外側に配置されており、前記回転子に向かって突出した複数の第1の固定子コアティースと、前記第1の固定子コアティースの夫々に回転磁界を発生させるように巻回された第1の巻線とを含む第1の固定子と、
前記回転軸と同心かつ前記回転子の半径方向内側に配置されており、前記回転子に向かって突出した複数の第2の固定子コアティースと、前記第2の固定子コアティースの夫々に回転磁界を発生させるように巻回された第2の巻線とを含む第2の固定子と、を備え、
前記第1の固定子コアティースの数と前記第2の固定子コアティースの数は同じであり、
前記第1の巻線と前記第2の巻線には3相交流が通電され、前記第1の巻線と前記第2の巻線への同相の通電時の位相が電気角で360度の整数倍ずれかつ同相の固定子コアティース同士が対向しないように前記第1の固定子コアティースと前記第2の固定子コアティースが配置されている点にある。
【0013】
このような構成にすれば、特許文献1、2の回転電機と比較して、固定子コアティースの数を保ったまま永久磁石の極数を増やすことができる。それにより、トルクリプルを低減させることができる。永久磁石の極数が同じ場合には、固定子コアティースの数を半減することができるので、第1、第2の固定子の巻線断面積を増やすことができ、トルクを増大させながらトルクリプルの増大を抑えることができる。
【0014】
また、本発明による回転電機は、隣り合う前記第1の固定子コアティースの間に対向するように前記第2の固定子コアティースが配置されていると好適である。このような構成にすれば、隣り合う第1の固定子コアティースのスロット開口には第2の固定子コアティースが対向するので、回転子が回転しているときには常に第1および第2の固定子との間で吸引反発力が発生し、トルクリプルが低減される。
【0015】
また、本発明による回転電機は、前記第1の固定子コアティースの先端部と当該第1の固定子コアティースに最も近い前記第2の固定子コアティースの先端部とが半径方向でオーバーラップしていると好適である。このような構成にすれば、固定子コアティースからの磁束の漏れが減り、回転電機のトルク特性が低下することを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明による回転電機は、同相に通電したときに前記第1の巻線で発生する半径方向の磁束の方向と前記第2の巻線で発生する半径方向の磁束の方向とは同じであると好適である。このような構成にすれば、第1の巻線と第2の巻線への同相の通電時の位相が電気角で360度の整数倍ずれかつ同相の固定子コアティース同士が対向しないように第1の固定子コアティースと第2の固定子コアティースが配置された場合に、回転子を同じ方向に回転させるように回転子と第1および第2の固定子との間で吸引反発力が発生するので、回転電機をスムーズに回転させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における回転電機の構造を説明する断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図2の領域Aの拡大図である。
【図4】3相交流の波形を示す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるU相、V相、W相の各固定子巻線への通電状態を示す図である。
【図6a】本発明の実施形態における回転電機の動作を説明する図である。
【図6b】本発明の実施形態における回転電機の動作を説明する図である。
【図6c】本発明の実施形態における回転電機の動作を説明する図である。
【図6d】本発明の実施形態における回転電機の動作を説明する図である。
【図6e】本発明の実施形態における回転電機の動作を説明する図である。
【図6f】本発明の実施形態における回転電機の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本実施形態に係る回転電機10を示す略断面図である。図2は同じく図1のII−II断面図である。図1に示す回転電機は、ケース15と、ケース15に収容された外側固定子13と内側固定子14、ケース15に対して回転自在な回転軸11、回転軸11と一体となって回転する回転子12、ケース15を閉塞するエンドカバー17、回転軸11をケース15およびエンドカバー17に軸支する軸受16a、16bを備えている。
【0019】
ケース15は有底円筒形状をしており、開口部は円板状のエンドカバー17により閉塞されている。ケース15の底部中央およびエンドカバー17の中央にはそれぞれ軸受16a、16bが取り付けられている。図2に示すように、ケース15の内部には、径方向に離間して対向配置された円環状の外側固定子13と内側固定子14が収容されており、それらの中心軸線は共に回転軸11の中心軸線に一致している。
【0020】
外側固定子13は外側固定子コア13aと外側固定子巻線13bから構成されており、外側固定子コア13aは電磁鋼板が複数積層された構成となっている。外側固定子コア13aはその外周面がケース15の内周面に固定されており、径方向内側に向かって6本の外側固定子コアティース13cが突出している。各外側固定子コアティース13cは先端部が周方向に広がる略T字形状を有している(以下この先端部を先端対向部13dと称する)。6本の外側固定子コアティース13cは周方向に60度の等角度間隔で設けられており、各外側固定子コアティース13cには外側固定子巻線13bが巻回されている。隣り合う先端対向部13dの間は周方向で空隙(スロット開口)を有する。
【0021】
内側固定子14は内側固定子コア14aと内側固定子巻線14bから構成されており、内側固定子コア14aは電磁鋼板が複数積層された構成となっている。内側固定子コア14aはケース15の内に配置された略円筒状の固定部材18に固定されており、径方向外側に向かって6本の内側固定子コアティース14cが突出している。各内側固定子コアティース14cは先端部が周方向に広がる略T字形状を有している(以下この先端部を先端対向部14dと称する)。6本の内側固定子コアティース14cは周方向に60度の等角度間隔で設けられており、各内側固定子コアティース14cには内側固定子巻線14bが巻回されている。隣り合う先端対向部14dの間は周方向で空隙(スロット開口)を有する。このように外側固定子13と内側固定子14の2つの固定子を有することにより、固定子が1つの場合と比較してより多くの巻線を施して巻線断面積を増やすことができるので、トルクを増大させると共にトルクリプルの増大を抑えることができる。
【0022】
外側固定子13と内側固定子14とは軸線方向の高さが等しく、かつ各外側固定子コアティース13cの周方向の中間に各内側固定子コアティース14cが配置されている。すなわち各外側固定子コアティース13cと各内側固定子コアティース14cとは周方向に30度ずれて配置されている。このような構成にすることにより、隣り合う外側固定子コアティース13cのスロット開口に内側固定子コアティース14cが対向するので、回転子12が回転しているときには常に外側固定子13および内側固定子14と永久磁石12aとの間で吸引反発力が発生し、トルクリプルが低減される効果がある。
【0023】
図3に示すように、各先端対向部13dの周方向の端部と、それと対向する先端対向部14dの周方向端部とは回転軸11の中心から径方向外側を見たときに重なって見える(オーバーラップしている)。これにより、回転時の磁束の漏れが少なくなり、トルクリプルを低減させる効果がある。
【0024】
各固定子コアティース13cに巻回された外側固定子巻線13bはU相、V相、W相の3相に分類され、周方向に2つおき(すなわち180度おき)に同じ相になっている。図4に示すように、各相には位相差120度の3相交流電流が供給される。各固定子コアティース14cに巻回された内側固定子巻線14bも同様にU相、V相、W相の3相に分類され、周方向に2つおき(すなわち180度おき)に同じ相になっている。図4に示すように、各相には位相差120度の3相交流電流が供給される。
【0025】
外側固定子巻線13bの各相と同じ相の内側固定子巻線14bとは直列に接続され、それぞれ周方向に電気角で360度ずれて巻回されている。これは本実施形態においては機械角90度に相当する。交流電流通電時に外側固定子巻線13bと内側固定子巻線14bは径方向に同方向の磁束が発生するよう巻回されている。
【0026】
本実施形態では同相の全ての外側固定子巻線13bと内側固定子巻線14bは直列に接続されているが、同相の外側固定子巻線13bが複数存在する場合には各々の外側固定子巻線13bは並列に接続されても良い。また同相の内側固定子巻線14bが複数存在する場合には各々の内側固定子巻線14bは並列に接続されても良い。同相の外側固定子巻線13bと内側固定子巻線14bは直列に接続されるほうが通電される電流値が同じなのでバランスの観点から好適であるが、並列に接続されていても良い。並列接続されることにより巻線全体の電気抵抗が下がり、巻線に流れる電流が増大するので発生トルクを増大させることができる。
【0027】
回転軸11は軸受16a、16bの内輪に圧入されており、ケース15に対して回転自在になっている。回転子12は回転軸11に圧入固定されている有底円筒状の回転子導電体12bと、回転子導電体12bに取り付けられ周方向にN極とS極が交互になるように8極(4極対)に着磁された永久磁石12aからなり、回転軸11と一体となって回転する。回転子導電体12bは底部12cの外径が外側固定子13の最内周よりやや小さく、その中心軸線は回転軸11の中心軸線に一致している。
【0028】
永久磁石12aは略円環状であり、その中心軸線は回転軸11の中心軸線に一致している。また、永久磁石12aの外周と内周は外側固定子13の先端対向部13d、内側固定子14の先端対向部14dとの間でそれぞれ径方向のギャップを有して対向している。永久磁石12aの厚さは外側固定子コア13aと内側固定子コア14aの軸方向の厚さと同等であり、永久磁石12aは軸方向の一方の端面が回転子導電体12bの円筒部12dの端部に接着等されることにより固定されている。
【0029】
次に本実施形態に係る回転電機10に3相交流電流を通電したときの回転子12の回転について図4から図6fを用いて説明する。図4は、電気角360度すなわち回転子12が90度回転する間にU、V、Wの各相に通電される交流電流の向きと大きさを示しており、実線が現実にU、V、Wの各相に流れる電流を示している。図4においては、外側固定子巻線13bおよび内側固定子巻線14bに通電したときに発生する磁束の向きが径方向外側になるときの電流の向きを正とし、径方向内側になるときの電流の向きを負としている。図5は電気角360度の間の各相の外側固定子巻線13bおよび内側固定子巻線14bへの通電状態を示している。図6aから図6fは、電気角360度の間に永久磁石12aと各外側固定子コアティース13c、各内側固定子コアティース14cとの間に発生する吸引反発力を示している。
【0030】
図4のaの領域と図5の(a)と図6aのように、図4から図6fにおいて同じ符号aが付されている図は対応していることを示している。すなわち、図4のaの領域のように通電されているときは、図5の(a)のように各固定子巻線13b、14bに電流が流れる。図6aは図4のaの領域に切り替わった瞬間の状態を示しており、永久磁石12aと各外側固定子コアティース13c、各内側固定子コアティース14cとの間に吸引反発力が発生している。符号bからfについても符号aと同様に対応していることを示している。本実施形態における各相を接続する方式はY結線であるが、デルタ結線であっても良い。
【0031】
図6aは、U相に正方向の電流、V相に負方向の電流が通電されたときの状態を示す。図中、固定子コアティース上に描かれている矢印は発生する磁束の向きを示している。このときU相の外側固定子コアティース13cには径方向外側に向かって磁束が発生し、先端対向部13dがS極、先端対向部13dからみて径方向外側がN極に磁化される。永久磁石12aはその時計方向側半分がS極で半時計側半分がN極の状態で先端対向部13dと対向している。よって、U相の先端対向部13dと永久磁石12aの間では、時計方向側半分で反発力、半時計側半分で吸引力が発生し、永久磁石12aを時計方向に回転させる力が作用する。
【0032】
上記のU相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたU相の内側固定子コアティース14cは外側コアティース13cに対して電気角で360度、すなわち機械角で時計方向に90度ずれて配置されている。このU相内側固定子コアティース14cも径方向外側に向かって磁束が発生し、先端対向部14dがN極、先端対向部14dからみて径方向内側がS極に磁化される。永久磁石12aは8極に着磁されているので1極対のなす角度は90度である。よって、先端対向部14dに対しても永久磁石12aのN極とS極が半分ずつ対向し、永久磁石12aの時計側半分がN極で半時計側半分がS極となるので、U相の先端対向部14dと永久磁石12aの間でも、永久磁石12aを時計方向に回転させる吸引反発力が発生する。
【0033】
V相の外側固定子コアティース13cには径方向内側に向かって磁束が発生し、先端対向部13dがN極、先端対向部13dからみて径方向外側がS極に磁化されている。U相の外側固定子コアティース13cに対してV相の外側固定子コアティース13cは時計方向に機械角で60度ずれており、永久磁石12aのN極がV相の先端対向部13dと対向し反発力が発生する。この反発力は永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0034】
上記のV相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたV相の内側固定子コアティース14cは外側コアティース13cに対して電気角で360度、すなわち機械角で時計方向に90度ずれた位置に配置されている。このV相内側固定子コアティース14cも径方向内側に向かって磁束が発生し、先端対向部14dがS極、先端対向部14dからみて径方向内側がN極に磁化される。永久磁石12aの1極対は90度なので、永久磁石12aのS極がV相の先端対向部14dと対向し反発力が発生する。この反発力も永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0035】
図6bは、通電が切り替わり、W相に正方向の電流、V相に負方向の電流が通電されたときの状態を示す。このときV相の外側固定子コアティース13cは引き続き先端対向部13dがN極、先端対向部13dからみて径方向外側がS極に磁化されている。図6aの状態から永久磁石12aは時計方向に15度回転しており、時計方向側半分がN極で半時計側半分がS極の状態で先端対向部13dと対向している。よって、V相の先端対向部13dと永久磁石12aの間では、永久磁石12aを時計方向に回転させるような吸引反発力が発生する。
【0036】
上記のV相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたV相の内側固定子コアティース14cは引き続き先端対向部14dがS極、先端対向部14dからみて径方向内側がN極に磁化されている。永久磁石12aは時計方向側半分がS極で半時計側半分がN極の状態で先端対向部14dと対向している。よって、V相の先端対向部14dと永久磁石12aの間では、永久磁石12aを時計方向に回転させるような吸引反発力が発生する。
【0037】
W相の外側固定子コアティース13cには径方向外側に向かって磁束が発生し、先端対向部13dがS極、先端対向部13dからみて径方向外側がN極に磁化される。V相の外側固定子コアティース13cに対してW相の外側固定子コアティース13cは時計方向に機械角で60度ずれており、永久磁石12aのS極がW相の先端対向部13dと対向し反発力が発生する。この反発力は永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0038】
上記のW相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたW相の内側固定子コアティース14cは外側コアティース13cに対して電気角で360度、すなわち機械角で時計方向に90度ずれた位置に配置されている。このW相内側固定子コアティース14cも径方向外側に向かって磁束が発生し、先端対向部14dがN極、先端対向部14dからみて径方向内側がS極に磁化される。永久磁石12aの1極対は90度なので、永久磁石12aのN極がW相の先端対向部14dと対向し反発力が発生する。この反発力も永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0039】
図6cは、通電が切り替わり、W相に正方向の電流、U相に負方向の電流が通電されたときの状態を示す。このときW相の外側固定子コアティース13cは引き続き先端対向部13dがS極、先端対向部13dからみて径方向外側がN極に磁化されている。図6bの状態から永久磁石12aはさらに時計方向に15度回転しており、時計方向側半分がS極で半時計側半分がN極の状態で先端対向部13dと対向している。よって、W相の先端対向部13dと永久磁石12aの間では、永久磁石12aを時計方向に回転させる吸引反発力が発生する。
【0040】
上記のW相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたW相の内側固定子コアティース14cは引き続き先端対向部14dがN極、先端対向部14dからみて径方向内側がS極に磁化されている。永久磁石12aは時計側半分がN極で半時計側半分がS極となるので、W相の先端対向部14dと永久磁石12aの間でも、永久磁石12aを時計方向に回転させる吸引反発力が発生する。
【0041】
U相の外側固定子コアティース13cには径方向内側に向かって磁束が発生し、先端対向部13dがN極、先端対向部13dからみて径方向外側がS極に磁化される。W相の外側固定子コアティース13cに対してU相の外側固定子コアティース13cは時計方向に機械角で60度ずれており、永久磁石12aのN極がU相の先端対向部13dと対向し反発力が発生する。この反発力は永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0042】
上記のU相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたU相の内側固定子コアティース14cは外側コアティース13cに対して電気角で360度、すなわち機械角で時計方向に90度ずれた位置に配置されている。このU相内側固定子コアティース14cも径方向内側に向かって磁束が発生し、先端対向部14dがS極、先端対向部14dからみて径方向内側がN極に磁化される。永久磁石12aの1極対は90度なので、永久磁石12aのS極がU相の先端対向部14dと対向し反発力が発生する。この反発力も永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0043】
図6dは、通電が切り替わり、V相に正方向の電流、U相に負方向の電流が通電されたときの状態を示す。このときU相の外側固定子コアティース13cは引き続き先端対向部13dがN極、先端対向部13dからみて径方向外側がS極に磁化されている。図6cの状態から永久磁石12aは時計方向に15度回転しており、時計方向側半分がN極で半時計側半分がS極の状態で先端対向部13dと対向している。よって、U相の先端対向部13dと永久磁石12aの間では、永久磁石12aを時計方向に回転させるような吸引反発力が発生する。
【0044】
上記のU相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたU相の内側固定子コアティース14cは引き続き先端対向部14dがS極、先端対向部14dからみて径方向内側がN極に磁化されている。永久磁石12aは時計方向側半分がS極で半時計側半分がN極の状態で先端対向部14dと対向している。よって、U相の先端対向部14dと永久磁石12aの間では、永久磁石12aを時計方向に回転させるような吸引反発力が発生する。
【0045】
V相の外側固定子コアティース13cには径方向外側に向かって磁束が発生し、先端対向部13dがS極、先端対向部13dからみて径方向外側がN極に磁化される。U相の外側固定子コアティース13cに対してV相の外側固定子コアティース13cは時計方向に機械角で60度ずれており、永久磁石12aのS極がV相の先端対向部13dと対向し反発力が発生する。この反発力は永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0046】
上記のV相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたV相の内側固定子コアティース14cも径方向外側に向かって磁束が発生し、先端対向部14dがN極、先端対向部14dからみて径方向内側がS極に磁化される。永久磁石12aの1極対は90度なので、永久磁石12aのN極がV相の先端対向部14dと対向し反発力が発生する。この反発力も永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0047】
図6eは、通電が切り替わり、V相に正方向の電流、W相に負方向の電流が通電されたときの状態を示す。このときV相の外側固定子コアティース13cは引き続き先端対向部13dがS極、先端対向部13dからみて径方向外側がN極に磁化されている。図6dの状態から永久磁石12aはさらに時計方向に15度回転しており、時計方向側半分がS極で半時計側半分がN極の状態で先端対向部13dと対向している。よって、V相の先端対向部13dと永久磁石12aの間では、永久磁石12aを時計方向に回転させる吸引反発力が発生する。
【0048】
上記のV相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたV相の内側固定子コアティース14cは引き続き先端対向部14dがN極、先端対向部14dからみて径方向内側がS極に磁化されている。永久磁石12aは時計側半分がN極で半時計側半分がS極となるので、V相の先端対向部14dと永久磁石12aの間でも、永久磁石12aを時計方向に回転させる吸引反発力が発生する。
【0049】
W相の外側固定子コアティース13cには径方向内側に向かって磁束が発生し、先端対向部13dがN極、先端対向部13dからみて径方向外側がS極に磁化される。W相の外側固定子コアティース13cに対してU相の外側固定子コアティース13cは時計方向に機械角で60度ずれており、永久磁石12aのN極がU相の先端対向部13dと対向し反発力が発生する。この反発力は永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0050】
上記のW相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたW相の内側固定子コアティース14cも径方向内側に向かって磁束が発生し、先端対向部14dがS極、先端対向部14dからみて径方向内側がN極に磁化される。永久磁石12aの1極対は90度なので、永久磁石12aのS極がU相の先端対向部14dと対向し反発力が発生する。この反発力も永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0051】
図6fは、通電が切り替わり、U相に正方向の電流、W相に負方向の電流が通電されたときの状態を示す。このときW相の外側固定子コアティース13cは引き続き先端対向部13dがN極、先端対向部13dからみて径方向外側がS極に磁化されている。図6eの状態から永久磁石12aは時計方向に15度回転しており、時計方向側半分がN極で半時計側半分がS極の状態で先端対向部13dと対向している。よって、W相の先端対向部13dと永久磁石12aの間では、永久磁石12aを時計方向に回転させるような吸引反発力が発生する。
【0052】
上記のW相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたW相の内側固定子コアティース14cは引き続き先端対向部14dがS極、先端対向部14dからみて径方向内側がN極に磁化されている。永久磁石12aは時計方向側半分がS極で半時計側半分がN極の状態で先端対向部14dと対向している。よって、W相の先端対向部14dと永久磁石12aの間では、永久磁石12aを時計方向に回転させるような吸引反発力が発生する。
【0053】
U相の外側固定子コアティース13cには径方向外側に向かって磁束が発生し、先端対向部13dがS極、先端対向部13dからみて径方向外側がN極に磁化される。W相の外側固定子コアティース13cに対してU相の外側固定子コアティース13cは時計方向に機械角で60度ずれており、永久磁石12aのS極がV相の先端対向部13dと対向し反発力が発生する。この反発力は永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0054】
上記のU相の外側固定子コアティース13cと直列に接続されたU相の内側固定子コアティース14cも径方向外側に向かって磁束が発生し、先端対向部14dがN極、先端対向部14dからみて径方向内側がS極に磁化される。永久磁石12aの1極対は90度なので、永久磁石12aのN極がV相の先端対向部14dと対向し反発力が発生する。この反発力も永久磁石12aを時計方向に回転させる方向に作用する。
【0055】
本実施形態に係る回転電機10の回転子12は上記図6aから図6fの動作を繰り返して時計方向に連続して回転する。
【0056】
本実施形態に係る回転電機10はラジアルギャップ型であるが、これに限定されずアキシャルギャップ型でもよい。また外側固定子コアティース13c、内側固定子コアティース14cの本数は6本に限定されず、永久磁石12aの周方向の極数も8極に限定されない。ただし、外側固定子コアティース13cと内側固定子コアティース14cの本数が同数であり、その本数の和が永久磁石12aの極対数の3倍となる関係を保つことが好適である。
【0057】
本実施形態では、外側固定子巻線13bと内側固定子巻線14bは周方向に電気角で360度ずらして配置されていたが、1080度など360度の奇数倍ずれるようにしてもよい。このようにすると、隣り合う外側固定子コアティース13cのスロット開口に内側固定子コアティース14cが対向するように配置されるので、トルクリプルが低減される効果がある。
【0058】
本発明は、ダブルステータ型の回転電機に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10:回転電機
11:回転軸
12:回転子
12a:永久磁石
12b:回転子導電体
13:外側固定子
13a:外側固定子コア
13b:外側固定子巻線
14:内側固定子
14a:内側固定子コア
14b:内側固定子巻線
15:ケース
16a、16b:軸受
17:エンドカバー
18:固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸と同心かつ一体で回転し、周方向に正負の磁極が交互に形成された磁極対を複数有する円環状の磁石体を含む回転子と、
前記回転軸と同心かつ前記回転子の半径方向外側に配置されており、前記回転子に向かって突出した複数の第1の固定子コアティースと、前記第1の固定子コアティースの夫々に回転磁界を発生させるように巻回された第1の巻線とを含む第1の固定子と、
前記回転軸と同心かつ前記回転子の半径方向内側に配置されており、前記回転子に向かって突出した複数の第2の固定子コアティースと、前記第2の固定子コアティースの夫々に回転磁界を発生させるように巻回された第2の巻線とを含む第2の固定子と、を備え、
前記第1の固定子コアティースの数と前記第2の固定子コアティースの数は同じであり、
前記第1の巻線と前記第2の巻線には3相交流が通電され、前記第1の巻線と前記第2の巻線への同相の通電時の位相が電気角で360度の整数倍ずれかつ同相の固定子コアティース同士が対向しないように前記第1の固定子コアティースと前記第2の固定子コアティースが配置されている回転電機。
【請求項2】
隣り合う前記第1の固定子コアティースの間に対向するように前記第2の固定子コアティースが配置されている請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1の固定子コアティースの先端部と当該第1の固定子コアティースに最も近い前記第2の固定子コアティースの先端部とが半径方向でオーバーラップしている請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
同相に通電したときに前記第1の巻線で発生する半径方向の磁束の方向と前記第2の巻線で発生する半径方向の磁束の方向とは同じである請求項1に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【公開番号】特開2013−74743(P2013−74743A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212693(P2011−212693)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】