回転電気機械及び回転電気機械のロータの製造方法
【課題】本発明は、ロータのブリッジ部の強度不足を解消する。
【解決手段】モータは、ステータコアを有し且つ回転磁界を発生するステータと、ステータのステータコアと所定のギャップを隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)とを備えている。ロータコア(41)には、永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成されている。空隙部(45)には、ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている。
【解決手段】モータは、ステータコアを有し且つ回転磁界を発生するステータと、ステータのステータコアと所定のギャップを隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)とを備えている。ロータコア(41)には、永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成されている。空隙部(45)には、ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びロータを有する回転電気機械に関し、特に、ロータ構造に係り、さらに、上記ロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータなどの回転電気機械には、磁石埋込形の電動機がある。この種の電動機は、特許文献1に示すように、永久磁石の端部からロータの外周面に延びる空隙部を形成して永久磁石の磁束の漏れを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−219183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動機において、ロータコアの外周部に単に空隙部を形成しているのみであった。したがって、上記ロータコアの外周部には、空隙部の外側に細いブリッジ部が形成されたままであった。この結果、電動機の高速回転時において、ブリッジ部の強度が不足し、該ブリッジが破断するという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、ロータのブリッジ部の強度不足を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロータの空隙部に金属材料の充填部材を設けるようにしたものである。
【0007】
第1の発明は、ステータコア(30)を有し且つ回転磁界を発生するステータ(20)と、該ステータ(20)のステータコア(30)と所定のギャップ(G)を隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)とを備えた回転電気機械を対象としている。そして、上記ロータコア(41)には、上記永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、上記永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成されている。さらに、上記空隙部(45)には、上記ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている。
【0008】
上記第1の発明では、上記ロータ(40)の空隙部(45)に充填部材(50)が設けられているので、該ロータ(40)の強度が向上し、空隙部(45)の先端部に形成されるブリッジ部の強度不足が解消される。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との対向面には、互いに嵌り込んで上記ギャップ(G)の軸方向形状が凹凸形状となるように上記ロータコア(41)のコア本体(41a)から突出する凸部(46d)が形成されると共に、上記ステータコア(30)のコア本体(30a)に凹む凹部(38d)が形成されている。そして、上記空隙部(45)は、上記ロータコア(41)のコア本体(41a)に形成されると共に、該コア本体(41a)から凸部(46d)に亘って形成されている。
【0010】
上記第2の発明では、上記空隙部(45)が凸部(46d)にも形成されるものの、充填部材(50)が設けられているので、凸部(46d)の強度が向上する。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記充填部材(50)の軸方向の両端部は、ロータコア(41)の両端面に設けられた短絡環が接続されたものである。
【0012】
上記第3の発明では、上記充填部材(50)に短絡環が接続されているので、始動用かご形導体が構成され、自己始動が可能となる。
【0013】
第4発明は、ステータコア(30)を有し且つ回転磁界を発生するステータ(20)と、該ステータ(20)のステータコア(30)と所定のギャップ(G)を隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)と、上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との対向面に形成され、互いに嵌り込んで上記ギャップ(G)の軸方向形状が凹凸形状となるように上記ロータコア(41)のコア本体(41a)から突出する凸部(46d)及び上記ステータコア(30)のコア本体(30a)に凹む凹部(38d)とを備え、上記ロータコア(41)のコア本体(41a)及び凸部(46d)には、永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、上記永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成され、上記空隙部(45)には、上記ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている回転電気機械のロータの製造方法を対象としている。そして、第4発明は、上記永久磁石(42)をロータコア(41)に埋め込む前処理工程と、上記ロータ(40)の外周面に設けられ、該ロータ(40)の外周面に露出する空隙部(45)の開口を閉鎖する空隙閉鎖治具(210)を設けると共に、上記ロータコア(41)の両端面を覆う端部閉鎖治具(220)を設ける治具取付工程と、続いて、上記空隙部(45)に上記充填部材(50)を形成する原材料(230)を充填する充填工程とを備えている。
【0014】
上記第4の発明では、空隙閉鎖治具(210)を設けるので、空隙部(45)の露出部が閉塞され、原材料(230)の漏れが確実に防止される。
【0015】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記治具取付工程の端部閉鎖治具(220)には、充填部材(50)の軸方向の両端部を接続する短絡環(231)をロータコア(41)の両端面に形成する環状凹部(221)が形成され、上記充填工程は、上記空隙部(45)と上記環状凹部(221)とに上記原材料(230)を充填するように構成されたものである。
【0016】
上記第5の発明では、環状凹部(221)が一体に形成されるので、上記短絡環(231)が容易に形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空隙部(45)に充填部材(50)を設けるようにしたために、ロータ(40)の外周部の強度を向上させることができる。この結果、上記ロータ(40)のブリッジ部の強度を十分に確保することができるので、高速回転時において、上記ブリッジ部が破断するという自体を確実に防止することができる。
【0018】
また、第2の発明によれば、上記ロータ(40)の外周面に凸部(46d)を形成した場合、該凸部(46d)の強度を十分に確保することができる。
【0019】
また、上記ロータ(40)の積層板(43)を充填部材(50)によって相互に固定することができるので、磁気吸引力が作用しても積層板(43)の剥離や変更を確実に防止することができる。
【0020】
また、第3の発明によれば、上記充填部材(50)に短絡環を接続するようにしているので、始動用かご形導体を構成することができ、電動機として自己始動させることができる。
【0021】
また、第4の発明によれば、上記ロータ(40)を製造するための空隙閉鎖治具(210)により空隙部(45)を閉鎖するようにしたために、空隙部(45)から原材料(230)が漏れることがないので、空隙部(45)に充填部材(50)を確実に形成することができる。
【0022】
また、第5の発明によれば、上記端部閉鎖治具(220)に環状凹部(221)を形成しているので、短絡環(231)を容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るモータを適用した電動圧縮機の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、本実施形態のロータ及びステータの構成を示す平面図である。
【図3】図3は、分割ステータコアの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、ロータの斜視図である。
【図5】図5は、ロータにおける磁石用スロット付近の平面図である。
【図6】図6は、ロータコアの側面図である。
【図7】図7は、ステータとロータとを組み合わせた状態の断面図である。
【図8】図8は、ロータを製造するための空隙閉鎖治具をロータに取り付ける状態を示す空隙閉鎖治具及びロータの斜視図である。
【図9】図9は、空隙閉鎖治具をロータに取り付けた状態の一部を示す空隙閉鎖治具及びロータの断面斜視図である。
【図10】図10は、ロータの空隙部に金属材料を充填する状態を示す治具及びロータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
〈概要〉
図1は、本発明の実施形態に係るモータ(1)を適用した電動圧縮機(100)の構成を模式的に示す縦断面図である。上記モータ(1)は、回転電気機械であり、ステータ(20)、ロータ(40)及び駆動軸(60)を備え、例えば、空気調和機に用いる電動圧縮機(100)のケーシング(70)に収容されている。上記モータ(1)は、いわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)モータであり、本実施形態では電動圧縮機(100)内の圧縮機構機(80)を駆動する。
【0026】
なお、以下の説明において、軸方向とは駆動軸(60)の軸心の方向をいい、径方向とは前記軸心と直行する方向をいう。また、外周側とは前記軸心からより遠い側をいい、内周側とは前記軸心により近い側をいう。また、積層位置とは、積層板(後述)の軸方向の位置をいう。
【0027】
〈ステータ〉
図2は、本実施形態のロータ(40)及びステータ(20)の構成を示す平面図である。ステータ(20)は、図2に示すように、円筒状のステータコア(30)とコイル(32)を備えている。本実施形態のステータコア(30)は、3つの分割ステータコア(31)で形成されている。図3は、分割ステータコア(31)の構成を示す斜視図である。それぞれの分割ステータコア(31)は、複数の電磁鋼板である積層板(33)を軸方向に積層して該積層板(33)を互いに固定した積層コアである。上記分割ステータコア(31)は、積層板(33)同士が互いに部分的に固定されている。
【0028】
上記各分割ステータコア(31)は、図3に示すように、複数のティース部(34)とコアバック部(35)と歯先部(36)とを備えている。上記各ティース部(34)は、分割ステータコア(31)において径方向に伸びる部分である。上記ティース部(34)には、コイル(32)が巻回される。また、上記コアバック部(35)は、円弧状に形成され、各ティース部(34)を該ティース部(34)の外周側で連結している。上記各ティース部(34)の間の空間が、コイル(32)が収容されるコイル用スロット(37)である。この例では、1つの分割ステータコア(31)には、12個のコイル用スロット(37)がある。
【0029】
上記歯先部(36)は、それぞれのティース部(34)の内周側に連なる部分である。上記歯先部(36)は、平面視が四辺形であり、ティース部(34)よりも幅が広く形成されている。
【0030】
上記ステータコア(30)は、円筒状のコア本体(30a)の内周側面に3条の凹部(38d)が形成された凹凸構造に構成されている。つまり、上記歯先部(36)は、図3に示すように、3条の凹部(38d)が形成されている。以下では分割ステータコア(31)の凹凸構造部分をステータ側凹凸部(38)という。つまり、上記ステータコア(30)は、内径が最も小さい部分がコア本体(30a)に構成され、該コア本体(30a)の内側面に径方向内側に凹む凹部(38d)が形成されている。そして、上記ステータ側凹凸部(38)は、第1頂面(38a)と第2頂面(38b)と底面(38c)とを有している。このような凹凸部(38)は、積層板(33)の積層位置に応じて、積層板(33)の歯先部(36)の形状(直径)を変化させることで形成されている。
【0031】
上記コイル(32)は、いわゆる分布巻きに構成され、各ティース部(34)に巻回されている(図2を参照)。このコイル(32)に所定の電力を供給することで、ステータ(20)に回転磁界が発生する。
【0032】
〈ロータ〉
図4は、上記ロータ(40)の斜視図である。上記ロータ(40)は、同図に示すように、ロータコア(41)と、複数の永久磁石(42)(この例では6つ)を備えている。上記ロータコア(41)は、複数の電磁鋼板である積層板(43)を軸方向に積層して該積層板(43)を互いに固定した積層コアであり、円筒状の形成されている。そして、上記ロータコア(41)の積層板(43)は、互いに固定されている。
【0033】
上記ロータコア(41)の中心には、駆動軸(60)を挿入する軸穴(47)が形成されている。また、上記ロータコア(41)には、永久磁石(42)を埋め込む複数の磁石用スロット(44)が形成されている。それぞれの磁石用スロット(44)は、軸穴(47)の軸心回りに60°ピッチで配置されている。上記各磁石用スロット(44)は、平面視(軸穴(47)の軸方向視)において略U字状に形成され、ロータコア(41)を軸方向に貫通している。また、上記各磁石用スロット(44)の両端は、ロータコア(41)の外周付近まで延びている。そして、上記ロータコア(41)における磁石用スロット(44)の端の部分(外周で細くなった部分。図4参照)には、ブリッジ部(44a)が形成されている。
【0034】
図5は、ロータ(40)における磁石用スロット(44)付近の平面図である。永久磁石(42)は、図5に示すように、磁石用スロット(44)の中央付近に保持されている。この永久磁石(42)の全長は、磁石用スロット(44)の全長よりも短く、各磁石用スロット(44)の両端部分には、永久磁石(42)を収容した状態で空隙部(45)がそれぞれ形成されている。
【0035】
図6は、上記ロータコア(41)の側面図である。該ロータコア(41)は、図6に示すように、円筒状のコア本体(41a)の外周側面に3条の凸部(46d)が形成された凹凸構造に構成されている。以下ではロータコア(41)の凹凸構造部分をロータ側凹凸部(46)という。つまり、上記ロータコア(41)は、外径が最も小さい部分がコア本体(41a)に構成され、該コア本体(41a)の側面に径方向外側に突出する凸部(46d)が形成されている。そして、上記ロータ側凹凸部(46)は、図6に示すように、第1頂面(46a)と第2頂面(46b)と底面(46c)とが形成されている。上記凹凸部(46)は、積層板(43)の積層位置に応じて、積層板(43)の形状(直径)を変化させることで形成されている。
【0036】
上記ロータ側凹凸部(46)は、ロータ(40)をステータ(20)に組み合わせた際に、ステータ(20)のステータ側凹凸部(38)とそれぞれ対向して互いに嵌り込むように配置されている。図7は、ステータ(20)とロータ(40)とを組み合わせた状態の断面図である。図7に示すように、ロータコア(41)の第1頂面(46a)と分割ステータコア(31)の底面(38c)、ロータコア(41)の第2頂面(46b)と分割ステータコア(31)の第2頂面(38b)、ロータコア(41)の底面(46c)と分割ステータコア(31)の第1頂面(38a)がそれぞれ対向する。これにより、上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との間には、径方向及び軸方向のギャップ(立体ギャップ)が凹凸形状に形成されている。なお、本実施形態では、上記ギャップ(G)の大きさは、径方向、軸方向ともに0.3mmに設定されている。
【0037】
また、上記空隙部(45)は、凸部(46d)にも形成されている。つまり、上記各磁石用スロット(44)は、ロータコア(41)の径方向と直交する方向に延びる周方向部と、該周方向の両端からロータコア(41)の径方向に延びる径方向部とを備えている。そして、上記永久磁石(42)は周方向部に埋め込まれ、上記空隙部(45)は、永久磁石(42)の両端からロータコア(41)の外周面に延び、径方向部の外周端まで形成されている。
【0038】
上記磁石用スロット(44)は、コア本体(41a)を構成する積層板(43)、つまり、外径が最も小さい積層板(43)に形成されると同時に、コア本体(41a)及び凸部(46d)を構成する積層板(43)、つまり、外径が大きい積層板(43)にも形成されている。したがって、上記空隙部(45)は、凸部(46d)の両面に開口して形成され、外部に露出している。
【0039】
さらに、上記空隙部(45)には、充填部材(50)が設けられている。つまり、該充填部材(50)は、永久磁石(42)の端部よりロータ(40)の外周部に亘って設けられている。上記充填部材(50)は、ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料で構成されている。具体的に、上記ロータコア(41)は、鉄などの比透磁率が大きい金属材料で構成される一方、上記充填部材(50)は、アルミニュウムなどの比透磁率が小さい金属材料で構成されている。
【0040】
なお、上記ロータ(40)の両端面には、図示しないが、充填部材(50)の両端部を接続する短絡環が設けられている。該短絡環と充填部材(50)とは、始動用かご形導体を形成している。
【0041】
−運転動作−
上記モータ(1)におけるロータ(40)は、空隙部(45)に充填部材(50)が設けられたままステータ(20)と組み合わされている。そして、上記コイル(32)に所定の電力を供給すると、ステータ(20)に回転磁界が発生し、ロータ(40)が回転する。このロータ(40)が回転によって圧縮機構機(80)が駆動する。
【0042】
特に、上記モータ(1)は、ステータ(20)とロータ(40)との間のギャップ(G)が凹凸形状に形成されているので、等価的にギャップ長を短縮したのと同等の特性が発揮され、この等価狭ギャップ効果によって、トルクを代表とするモータ(1)の各種特性の改善されている。
【0043】
−実施形態1におけるロータの製造方法−
次に、上記モータ(1)におけるロータ(40)の製造方法について説明する。具体的には、上記ロータ(40)における空隙部(45)の充填部材(50)の充填方法について説明する。
【0044】
先ず、図8〜図10に示すように、上記充填部材(50)を形成するための治具(200)について説明する。上記治具(200)は、充填部材(50)を空隙部(45)に充填した際、該充填部材(50)が空隙部(45)より漏れないように空隙部(45)を閉鎖するものであり、空隙閉鎖治具(210)と、端部閉鎖治具(220)とを備えている。
【0045】
上記空隙閉鎖治具(210)は、ロータ(40)の側面を覆うものであり、1対の分割治具(215)より構成されている。該各分割治具(215)は、半円弧状に形成された治具本体(211)と、該治具本体(211)の両端部に形成された固定用の鍔部(213)とを備えている。
【0046】
上記治具本体(211)の内周面は、ロータ(40)の側面の凹凸形状に対応した凹凸面(214)に形成されている。つまり、上記治具本体(211)の内周面は、ロータ(40)の側面の凸部(46d)に対応して凹部が形成され、ロータ(40)の凸部(46d)の間の凹部に対して凸部が形成されている。そして、上記治具本体(211)の内周面は、ロータ(40)の側面に密に嵌合するように形成されている。
【0047】
一方、上記端部閉鎖治具(220)は、ロータ(40)の両端面を覆うものであり、平板状に形成されて上記空隙閉鎖治具(210)の両端面に固定されている。上記端部閉鎖治具(220)には、短絡環(231)を形成するための環状凹部(221)が形成されている。なお、上記一方の端部閉鎖治具(220)には原材料(230)を注入する注入口(222)が形成され、上記他方の端部閉鎖治具(220)にはオーバーフロー穴(223)が形成されている。
【0048】
そこで、上記ロータ(40)の製造方法について説明する。この製造方法は、前処理工程と治具取付工程と充填工程とが順に行われる。
【0049】
上記前処理工程は、上記ロータコア(41)に永久磁石(42)を埋め込む工程であり、永久磁石(42)を磁石用スロット(44)に圧入する。したがって、上記ロータ(40)は、空隙部(45)が形成されたままの状態である。
【0050】
続いて、上記治具取付工程に移り、上記ロータ(40)に空隙閉鎖治具(210)を取り付ける。つまり、上記空隙閉鎖治具(210)の一対の治具本体(211)をロータ(40)の側面に嵌め合わせて治具本体(211)を鍔部(213)にて固定する。さらに、上記空隙閉鎖治具(210)の両端面に端部閉鎖治具(220)を取り付け、上記ロータ(40)の両端面を閉鎖する。したがって、上記ロータ(40)の空隙部(45)の露出部が全て閉鎖される。
【0051】
引き続いて、上記充填工程に移り、注入口(222)より原材料(230)を充填する。そして、原材料(230)が硬化すると、上記端部閉鎖治具(220)及び空隙閉鎖治具(210)を取り外す。これにより、上記空隙部(45)に充填部材(50)が形成されると共に、短絡環(231)が形成されることになる。
【0052】
−実施形態の効果−
以上のように、本実施形態によれば、空隙部(45)に充填部材(50)を設けるようにしたために、上記ロータ(40)の外周部の強度を向上させることができる。この結果、上記ロータ(40)のブリッジ部(44a)の強度を十分に確保することができるので、高速回転時において、上記ブリッジ部(44a)が破断するという自体を確実に防止することができる。
【0053】
また、上記ロータ(40)の外周面に凸部(46d)を形成した場合、該凸部(46d)の強度を十分に確保することができる。
【0054】
また、上記ロータ(40)の積層板(43)を充填部材(50)によって相互に固定することができるので、磁気吸引力が作用しても積層板(43)の剥離や変更を確実に防止することができる。
【0055】
また、上記充填部材(50)に短絡環(231)を接続するようにしているので、始動用かご形導体を構成することができ、モータ(1)として自己始動させることができる。
【0056】
また、上記ロータ(40)を製造するための空隙閉鎖治具(210)により空隙部(45)を閉鎖するようにしたために、空隙部(45)から原材料(230)が漏れることがないので、空隙部(45)に充填部材(50)を確実に形成することができる。
【0057】
また、上記端部閉鎖治具(220)に環状凹部(221)を形成しているので、短絡環(231)を容易に成形することができる。
【0058】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0059】
上記実施形態は、ロータ(40)の外周面に凸部(46d)を形成し、ステータ(20)の内周面に凹部(38d)を形成するようにした所謂立体ギャップ構造を構成している。しかしながら、本発明は、ロータ(40)の凸部(46d)及びステータ(20)の凹部(38d)を有しない構造であってもよい。つまり、上記ギャップ(G)が軸方向に直線状に形成される回転電気機械であってよい。
【0060】
また、上記コイル(32)は、いわゆる分布巻きに構成したが、上記コイル(32)は、いわゆる集中巻きに構成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態は、回転電気機械としてモータを構成したが、本発明の回転電気機械は、発電機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、磁石埋込形の回転電気機械及び該回転機械のロータの製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 モータ(回転電気機械)
20 ステータ
30 ステータコア
30a コア本体
40 ロータ
41 ロータコア
41a コア本体
45 空隙部
50 充填部材
200 治具
210 空隙閉鎖治具
220 端部閉鎖治具
221 環状凹部
231 短絡環
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びロータを有する回転電気機械に関し、特に、ロータ構造に係り、さらに、上記ロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータなどの回転電気機械には、磁石埋込形の電動機がある。この種の電動機は、特許文献1に示すように、永久磁石の端部からロータの外周面に延びる空隙部を形成して永久磁石の磁束の漏れを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−219183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動機において、ロータコアの外周部に単に空隙部を形成しているのみであった。したがって、上記ロータコアの外周部には、空隙部の外側に細いブリッジ部が形成されたままであった。この結果、電動機の高速回転時において、ブリッジ部の強度が不足し、該ブリッジが破断するという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、ロータのブリッジ部の強度不足を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロータの空隙部に金属材料の充填部材を設けるようにしたものである。
【0007】
第1の発明は、ステータコア(30)を有し且つ回転磁界を発生するステータ(20)と、該ステータ(20)のステータコア(30)と所定のギャップ(G)を隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)とを備えた回転電気機械を対象としている。そして、上記ロータコア(41)には、上記永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、上記永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成されている。さらに、上記空隙部(45)には、上記ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている。
【0008】
上記第1の発明では、上記ロータ(40)の空隙部(45)に充填部材(50)が設けられているので、該ロータ(40)の強度が向上し、空隙部(45)の先端部に形成されるブリッジ部の強度不足が解消される。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との対向面には、互いに嵌り込んで上記ギャップ(G)の軸方向形状が凹凸形状となるように上記ロータコア(41)のコア本体(41a)から突出する凸部(46d)が形成されると共に、上記ステータコア(30)のコア本体(30a)に凹む凹部(38d)が形成されている。そして、上記空隙部(45)は、上記ロータコア(41)のコア本体(41a)に形成されると共に、該コア本体(41a)から凸部(46d)に亘って形成されている。
【0010】
上記第2の発明では、上記空隙部(45)が凸部(46d)にも形成されるものの、充填部材(50)が設けられているので、凸部(46d)の強度が向上する。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記充填部材(50)の軸方向の両端部は、ロータコア(41)の両端面に設けられた短絡環が接続されたものである。
【0012】
上記第3の発明では、上記充填部材(50)に短絡環が接続されているので、始動用かご形導体が構成され、自己始動が可能となる。
【0013】
第4発明は、ステータコア(30)を有し且つ回転磁界を発生するステータ(20)と、該ステータ(20)のステータコア(30)と所定のギャップ(G)を隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)と、上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との対向面に形成され、互いに嵌り込んで上記ギャップ(G)の軸方向形状が凹凸形状となるように上記ロータコア(41)のコア本体(41a)から突出する凸部(46d)及び上記ステータコア(30)のコア本体(30a)に凹む凹部(38d)とを備え、上記ロータコア(41)のコア本体(41a)及び凸部(46d)には、永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、上記永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成され、上記空隙部(45)には、上記ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている回転電気機械のロータの製造方法を対象としている。そして、第4発明は、上記永久磁石(42)をロータコア(41)に埋め込む前処理工程と、上記ロータ(40)の外周面に設けられ、該ロータ(40)の外周面に露出する空隙部(45)の開口を閉鎖する空隙閉鎖治具(210)を設けると共に、上記ロータコア(41)の両端面を覆う端部閉鎖治具(220)を設ける治具取付工程と、続いて、上記空隙部(45)に上記充填部材(50)を形成する原材料(230)を充填する充填工程とを備えている。
【0014】
上記第4の発明では、空隙閉鎖治具(210)を設けるので、空隙部(45)の露出部が閉塞され、原材料(230)の漏れが確実に防止される。
【0015】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記治具取付工程の端部閉鎖治具(220)には、充填部材(50)の軸方向の両端部を接続する短絡環(231)をロータコア(41)の両端面に形成する環状凹部(221)が形成され、上記充填工程は、上記空隙部(45)と上記環状凹部(221)とに上記原材料(230)を充填するように構成されたものである。
【0016】
上記第5の発明では、環状凹部(221)が一体に形成されるので、上記短絡環(231)が容易に形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空隙部(45)に充填部材(50)を設けるようにしたために、ロータ(40)の外周部の強度を向上させることができる。この結果、上記ロータ(40)のブリッジ部の強度を十分に確保することができるので、高速回転時において、上記ブリッジ部が破断するという自体を確実に防止することができる。
【0018】
また、第2の発明によれば、上記ロータ(40)の外周面に凸部(46d)を形成した場合、該凸部(46d)の強度を十分に確保することができる。
【0019】
また、上記ロータ(40)の積層板(43)を充填部材(50)によって相互に固定することができるので、磁気吸引力が作用しても積層板(43)の剥離や変更を確実に防止することができる。
【0020】
また、第3の発明によれば、上記充填部材(50)に短絡環を接続するようにしているので、始動用かご形導体を構成することができ、電動機として自己始動させることができる。
【0021】
また、第4の発明によれば、上記ロータ(40)を製造するための空隙閉鎖治具(210)により空隙部(45)を閉鎖するようにしたために、空隙部(45)から原材料(230)が漏れることがないので、空隙部(45)に充填部材(50)を確実に形成することができる。
【0022】
また、第5の発明によれば、上記端部閉鎖治具(220)に環状凹部(221)を形成しているので、短絡環(231)を容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るモータを適用した電動圧縮機の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、本実施形態のロータ及びステータの構成を示す平面図である。
【図3】図3は、分割ステータコアの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、ロータの斜視図である。
【図5】図5は、ロータにおける磁石用スロット付近の平面図である。
【図6】図6は、ロータコアの側面図である。
【図7】図7は、ステータとロータとを組み合わせた状態の断面図である。
【図8】図8は、ロータを製造するための空隙閉鎖治具をロータに取り付ける状態を示す空隙閉鎖治具及びロータの斜視図である。
【図9】図9は、空隙閉鎖治具をロータに取り付けた状態の一部を示す空隙閉鎖治具及びロータの断面斜視図である。
【図10】図10は、ロータの空隙部に金属材料を充填する状態を示す治具及びロータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
〈概要〉
図1は、本発明の実施形態に係るモータ(1)を適用した電動圧縮機(100)の構成を模式的に示す縦断面図である。上記モータ(1)は、回転電気機械であり、ステータ(20)、ロータ(40)及び駆動軸(60)を備え、例えば、空気調和機に用いる電動圧縮機(100)のケーシング(70)に収容されている。上記モータ(1)は、いわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)モータであり、本実施形態では電動圧縮機(100)内の圧縮機構機(80)を駆動する。
【0026】
なお、以下の説明において、軸方向とは駆動軸(60)の軸心の方向をいい、径方向とは前記軸心と直行する方向をいう。また、外周側とは前記軸心からより遠い側をいい、内周側とは前記軸心により近い側をいう。また、積層位置とは、積層板(後述)の軸方向の位置をいう。
【0027】
〈ステータ〉
図2は、本実施形態のロータ(40)及びステータ(20)の構成を示す平面図である。ステータ(20)は、図2に示すように、円筒状のステータコア(30)とコイル(32)を備えている。本実施形態のステータコア(30)は、3つの分割ステータコア(31)で形成されている。図3は、分割ステータコア(31)の構成を示す斜視図である。それぞれの分割ステータコア(31)は、複数の電磁鋼板である積層板(33)を軸方向に積層して該積層板(33)を互いに固定した積層コアである。上記分割ステータコア(31)は、積層板(33)同士が互いに部分的に固定されている。
【0028】
上記各分割ステータコア(31)は、図3に示すように、複数のティース部(34)とコアバック部(35)と歯先部(36)とを備えている。上記各ティース部(34)は、分割ステータコア(31)において径方向に伸びる部分である。上記ティース部(34)には、コイル(32)が巻回される。また、上記コアバック部(35)は、円弧状に形成され、各ティース部(34)を該ティース部(34)の外周側で連結している。上記各ティース部(34)の間の空間が、コイル(32)が収容されるコイル用スロット(37)である。この例では、1つの分割ステータコア(31)には、12個のコイル用スロット(37)がある。
【0029】
上記歯先部(36)は、それぞれのティース部(34)の内周側に連なる部分である。上記歯先部(36)は、平面視が四辺形であり、ティース部(34)よりも幅が広く形成されている。
【0030】
上記ステータコア(30)は、円筒状のコア本体(30a)の内周側面に3条の凹部(38d)が形成された凹凸構造に構成されている。つまり、上記歯先部(36)は、図3に示すように、3条の凹部(38d)が形成されている。以下では分割ステータコア(31)の凹凸構造部分をステータ側凹凸部(38)という。つまり、上記ステータコア(30)は、内径が最も小さい部分がコア本体(30a)に構成され、該コア本体(30a)の内側面に径方向内側に凹む凹部(38d)が形成されている。そして、上記ステータ側凹凸部(38)は、第1頂面(38a)と第2頂面(38b)と底面(38c)とを有している。このような凹凸部(38)は、積層板(33)の積層位置に応じて、積層板(33)の歯先部(36)の形状(直径)を変化させることで形成されている。
【0031】
上記コイル(32)は、いわゆる分布巻きに構成され、各ティース部(34)に巻回されている(図2を参照)。このコイル(32)に所定の電力を供給することで、ステータ(20)に回転磁界が発生する。
【0032】
〈ロータ〉
図4は、上記ロータ(40)の斜視図である。上記ロータ(40)は、同図に示すように、ロータコア(41)と、複数の永久磁石(42)(この例では6つ)を備えている。上記ロータコア(41)は、複数の電磁鋼板である積層板(43)を軸方向に積層して該積層板(43)を互いに固定した積層コアであり、円筒状の形成されている。そして、上記ロータコア(41)の積層板(43)は、互いに固定されている。
【0033】
上記ロータコア(41)の中心には、駆動軸(60)を挿入する軸穴(47)が形成されている。また、上記ロータコア(41)には、永久磁石(42)を埋め込む複数の磁石用スロット(44)が形成されている。それぞれの磁石用スロット(44)は、軸穴(47)の軸心回りに60°ピッチで配置されている。上記各磁石用スロット(44)は、平面視(軸穴(47)の軸方向視)において略U字状に形成され、ロータコア(41)を軸方向に貫通している。また、上記各磁石用スロット(44)の両端は、ロータコア(41)の外周付近まで延びている。そして、上記ロータコア(41)における磁石用スロット(44)の端の部分(外周で細くなった部分。図4参照)には、ブリッジ部(44a)が形成されている。
【0034】
図5は、ロータ(40)における磁石用スロット(44)付近の平面図である。永久磁石(42)は、図5に示すように、磁石用スロット(44)の中央付近に保持されている。この永久磁石(42)の全長は、磁石用スロット(44)の全長よりも短く、各磁石用スロット(44)の両端部分には、永久磁石(42)を収容した状態で空隙部(45)がそれぞれ形成されている。
【0035】
図6は、上記ロータコア(41)の側面図である。該ロータコア(41)は、図6に示すように、円筒状のコア本体(41a)の外周側面に3条の凸部(46d)が形成された凹凸構造に構成されている。以下ではロータコア(41)の凹凸構造部分をロータ側凹凸部(46)という。つまり、上記ロータコア(41)は、外径が最も小さい部分がコア本体(41a)に構成され、該コア本体(41a)の側面に径方向外側に突出する凸部(46d)が形成されている。そして、上記ロータ側凹凸部(46)は、図6に示すように、第1頂面(46a)と第2頂面(46b)と底面(46c)とが形成されている。上記凹凸部(46)は、積層板(43)の積層位置に応じて、積層板(43)の形状(直径)を変化させることで形成されている。
【0036】
上記ロータ側凹凸部(46)は、ロータ(40)をステータ(20)に組み合わせた際に、ステータ(20)のステータ側凹凸部(38)とそれぞれ対向して互いに嵌り込むように配置されている。図7は、ステータ(20)とロータ(40)とを組み合わせた状態の断面図である。図7に示すように、ロータコア(41)の第1頂面(46a)と分割ステータコア(31)の底面(38c)、ロータコア(41)の第2頂面(46b)と分割ステータコア(31)の第2頂面(38b)、ロータコア(41)の底面(46c)と分割ステータコア(31)の第1頂面(38a)がそれぞれ対向する。これにより、上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との間には、径方向及び軸方向のギャップ(立体ギャップ)が凹凸形状に形成されている。なお、本実施形態では、上記ギャップ(G)の大きさは、径方向、軸方向ともに0.3mmに設定されている。
【0037】
また、上記空隙部(45)は、凸部(46d)にも形成されている。つまり、上記各磁石用スロット(44)は、ロータコア(41)の径方向と直交する方向に延びる周方向部と、該周方向の両端からロータコア(41)の径方向に延びる径方向部とを備えている。そして、上記永久磁石(42)は周方向部に埋め込まれ、上記空隙部(45)は、永久磁石(42)の両端からロータコア(41)の外周面に延び、径方向部の外周端まで形成されている。
【0038】
上記磁石用スロット(44)は、コア本体(41a)を構成する積層板(43)、つまり、外径が最も小さい積層板(43)に形成されると同時に、コア本体(41a)及び凸部(46d)を構成する積層板(43)、つまり、外径が大きい積層板(43)にも形成されている。したがって、上記空隙部(45)は、凸部(46d)の両面に開口して形成され、外部に露出している。
【0039】
さらに、上記空隙部(45)には、充填部材(50)が設けられている。つまり、該充填部材(50)は、永久磁石(42)の端部よりロータ(40)の外周部に亘って設けられている。上記充填部材(50)は、ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料で構成されている。具体的に、上記ロータコア(41)は、鉄などの比透磁率が大きい金属材料で構成される一方、上記充填部材(50)は、アルミニュウムなどの比透磁率が小さい金属材料で構成されている。
【0040】
なお、上記ロータ(40)の両端面には、図示しないが、充填部材(50)の両端部を接続する短絡環が設けられている。該短絡環と充填部材(50)とは、始動用かご形導体を形成している。
【0041】
−運転動作−
上記モータ(1)におけるロータ(40)は、空隙部(45)に充填部材(50)が設けられたままステータ(20)と組み合わされている。そして、上記コイル(32)に所定の電力を供給すると、ステータ(20)に回転磁界が発生し、ロータ(40)が回転する。このロータ(40)が回転によって圧縮機構機(80)が駆動する。
【0042】
特に、上記モータ(1)は、ステータ(20)とロータ(40)との間のギャップ(G)が凹凸形状に形成されているので、等価的にギャップ長を短縮したのと同等の特性が発揮され、この等価狭ギャップ効果によって、トルクを代表とするモータ(1)の各種特性の改善されている。
【0043】
−実施形態1におけるロータの製造方法−
次に、上記モータ(1)におけるロータ(40)の製造方法について説明する。具体的には、上記ロータ(40)における空隙部(45)の充填部材(50)の充填方法について説明する。
【0044】
先ず、図8〜図10に示すように、上記充填部材(50)を形成するための治具(200)について説明する。上記治具(200)は、充填部材(50)を空隙部(45)に充填した際、該充填部材(50)が空隙部(45)より漏れないように空隙部(45)を閉鎖するものであり、空隙閉鎖治具(210)と、端部閉鎖治具(220)とを備えている。
【0045】
上記空隙閉鎖治具(210)は、ロータ(40)の側面を覆うものであり、1対の分割治具(215)より構成されている。該各分割治具(215)は、半円弧状に形成された治具本体(211)と、該治具本体(211)の両端部に形成された固定用の鍔部(213)とを備えている。
【0046】
上記治具本体(211)の内周面は、ロータ(40)の側面の凹凸形状に対応した凹凸面(214)に形成されている。つまり、上記治具本体(211)の内周面は、ロータ(40)の側面の凸部(46d)に対応して凹部が形成され、ロータ(40)の凸部(46d)の間の凹部に対して凸部が形成されている。そして、上記治具本体(211)の内周面は、ロータ(40)の側面に密に嵌合するように形成されている。
【0047】
一方、上記端部閉鎖治具(220)は、ロータ(40)の両端面を覆うものであり、平板状に形成されて上記空隙閉鎖治具(210)の両端面に固定されている。上記端部閉鎖治具(220)には、短絡環(231)を形成するための環状凹部(221)が形成されている。なお、上記一方の端部閉鎖治具(220)には原材料(230)を注入する注入口(222)が形成され、上記他方の端部閉鎖治具(220)にはオーバーフロー穴(223)が形成されている。
【0048】
そこで、上記ロータ(40)の製造方法について説明する。この製造方法は、前処理工程と治具取付工程と充填工程とが順に行われる。
【0049】
上記前処理工程は、上記ロータコア(41)に永久磁石(42)を埋め込む工程であり、永久磁石(42)を磁石用スロット(44)に圧入する。したがって、上記ロータ(40)は、空隙部(45)が形成されたままの状態である。
【0050】
続いて、上記治具取付工程に移り、上記ロータ(40)に空隙閉鎖治具(210)を取り付ける。つまり、上記空隙閉鎖治具(210)の一対の治具本体(211)をロータ(40)の側面に嵌め合わせて治具本体(211)を鍔部(213)にて固定する。さらに、上記空隙閉鎖治具(210)の両端面に端部閉鎖治具(220)を取り付け、上記ロータ(40)の両端面を閉鎖する。したがって、上記ロータ(40)の空隙部(45)の露出部が全て閉鎖される。
【0051】
引き続いて、上記充填工程に移り、注入口(222)より原材料(230)を充填する。そして、原材料(230)が硬化すると、上記端部閉鎖治具(220)及び空隙閉鎖治具(210)を取り外す。これにより、上記空隙部(45)に充填部材(50)が形成されると共に、短絡環(231)が形成されることになる。
【0052】
−実施形態の効果−
以上のように、本実施形態によれば、空隙部(45)に充填部材(50)を設けるようにしたために、上記ロータ(40)の外周部の強度を向上させることができる。この結果、上記ロータ(40)のブリッジ部(44a)の強度を十分に確保することができるので、高速回転時において、上記ブリッジ部(44a)が破断するという自体を確実に防止することができる。
【0053】
また、上記ロータ(40)の外周面に凸部(46d)を形成した場合、該凸部(46d)の強度を十分に確保することができる。
【0054】
また、上記ロータ(40)の積層板(43)を充填部材(50)によって相互に固定することができるので、磁気吸引力が作用しても積層板(43)の剥離や変更を確実に防止することができる。
【0055】
また、上記充填部材(50)に短絡環(231)を接続するようにしているので、始動用かご形導体を構成することができ、モータ(1)として自己始動させることができる。
【0056】
また、上記ロータ(40)を製造するための空隙閉鎖治具(210)により空隙部(45)を閉鎖するようにしたために、空隙部(45)から原材料(230)が漏れることがないので、空隙部(45)に充填部材(50)を確実に形成することができる。
【0057】
また、上記端部閉鎖治具(220)に環状凹部(221)を形成しているので、短絡環(231)を容易に成形することができる。
【0058】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0059】
上記実施形態は、ロータ(40)の外周面に凸部(46d)を形成し、ステータ(20)の内周面に凹部(38d)を形成するようにした所謂立体ギャップ構造を構成している。しかしながら、本発明は、ロータ(40)の凸部(46d)及びステータ(20)の凹部(38d)を有しない構造であってもよい。つまり、上記ギャップ(G)が軸方向に直線状に形成される回転電気機械であってよい。
【0060】
また、上記コイル(32)は、いわゆる分布巻きに構成したが、上記コイル(32)は、いわゆる集中巻きに構成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態は、回転電気機械としてモータを構成したが、本発明の回転電気機械は、発電機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、磁石埋込形の回転電気機械及び該回転機械のロータの製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 モータ(回転電気機械)
20 ステータ
30 ステータコア
30a コア本体
40 ロータ
41 ロータコア
41a コア本体
45 空隙部
50 充填部材
200 治具
210 空隙閉鎖治具
220 端部閉鎖治具
221 環状凹部
231 短絡環
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア(30)を有し且つ回転磁界を発生するステータ(20)と、該ステータ(20)のステータコア(30)と所定のギャップ(G)を隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)とを備えた回転電気機械であって、
上記ロータコア(41)には、上記永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、上記永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成され、
上記空隙部(45)には、上記ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている
ことを特徴とする回転電気機械。
【請求項2】
請求項1において、
上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との対向面には、互いに嵌り込んで上記ギャップ(G)の軸方向形状が凹凸形状となるように上記ロータコア(41)のコア本体(41a)から突出する凸部(46d)が形成されると共に、上記ステータコア(30)のコア本体(30a)に凹む凹部(38d)が形成される一方、
上記空隙部(45)は、上記ロータコア(41)のコア本体(41a)に形成されると共に、該コア本体(41a)から凸部(46d)に亘って形成されている
ことを特徴とする回転電気機械。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記充填部材(50)の軸方向の両端部は、ロータコア(41)の両端面に設けられた短絡環が接続されている
ことを特徴とする回転電気機械。
【請求項4】
ステータコア(30)を有し且つ回転磁界を発生するステータ(20)と、
該ステータ(20)のステータコア(30)と所定のギャップ(G)を隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)と、
上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との対向面に形成され、互いに嵌り込んで上記ギャップ(G)の軸方向形状が凹凸形状となるように上記ロータコア(41)のコア本体(41a)から突出する凸部(46d)及び上記ステータコア(30)のコア本体(30a)に凹む凹部(38d)とを備え、
上記ロータコア(41)のコア本体(41a)及び凸部(46d)には、永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、上記永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成され、
上記空隙部(45)には、上記ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている回転電気機械のロータの製造方法であって、
上記永久磁石(42)をロータコア(41)に埋め込む前処理工程と、
上記ロータ(40)の外周面に設けられ、該ロータ(40)の外周面に露出する空隙部(45)の開口を閉鎖する空隙閉鎖治具(210)を設けると共に、上記ロータコア(41)の両端面を覆う端部閉鎖治具(220)を設ける治具取付工程と、
続いて、上記空隙部(45)に上記充填部材(50)を形成する原材料(230)を充填する充填工程とを備えている
ことを特徴とする回転電気機械のロータ(40)の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記治具取付工程の端部閉鎖治具(220)には、充填部材(50)の軸方向の両端部を接続する短絡環(231)をロータコア(41)の両端面に形成する環状凹部(221)が形成され、
上記充填工程は、上記空隙部(45)と上記環状凹部(221)とに上記原材料(230)を充填するように構成されている
ことを特徴とする回転電気機械のロータ(40)の製造方法。
【請求項1】
ステータコア(30)を有し且つ回転磁界を発生するステータ(20)と、該ステータ(20)のステータコア(30)と所定のギャップ(G)を隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)とを備えた回転電気機械であって、
上記ロータコア(41)には、上記永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、上記永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成され、
上記空隙部(45)には、上記ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている
ことを特徴とする回転電気機械。
【請求項2】
請求項1において、
上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との対向面には、互いに嵌り込んで上記ギャップ(G)の軸方向形状が凹凸形状となるように上記ロータコア(41)のコア本体(41a)から突出する凸部(46d)が形成されると共に、上記ステータコア(30)のコア本体(30a)に凹む凹部(38d)が形成される一方、
上記空隙部(45)は、上記ロータコア(41)のコア本体(41a)に形成されると共に、該コア本体(41a)から凸部(46d)に亘って形成されている
ことを特徴とする回転電気機械。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記充填部材(50)の軸方向の両端部は、ロータコア(41)の両端面に設けられた短絡環が接続されている
ことを特徴とする回転電気機械。
【請求項4】
ステータコア(30)を有し且つ回転磁界を発生するステータ(20)と、
該ステータ(20)のステータコア(30)と所定のギャップ(G)を隔てて対向するロータコア(41)を有し且つ複数の永久磁石(42)がロータコア(41)に埋め込まれたロータ(40)と、
上記ステータコア(30)と上記ロータコア(41)との対向面に形成され、互いに嵌り込んで上記ギャップ(G)の軸方向形状が凹凸形状となるように上記ロータコア(41)のコア本体(41a)から突出する凸部(46d)及び上記ステータコア(30)のコア本体(30a)に凹む凹部(38d)とを備え、
上記ロータコア(41)のコア本体(41a)及び凸部(46d)には、永久磁石(42)の端面とロータ(40)の外周面との間に、上記永久磁石(42)の端面からロータ(40)の外周面に延びる空隙部(45)が形成され、
上記空隙部(45)には、上記ロータコア(41)より比透磁率が小さい金属材料よりなる充填部材(50)が設けられている回転電気機械のロータの製造方法であって、
上記永久磁石(42)をロータコア(41)に埋め込む前処理工程と、
上記ロータ(40)の外周面に設けられ、該ロータ(40)の外周面に露出する空隙部(45)の開口を閉鎖する空隙閉鎖治具(210)を設けると共に、上記ロータコア(41)の両端面を覆う端部閉鎖治具(220)を設ける治具取付工程と、
続いて、上記空隙部(45)に上記充填部材(50)を形成する原材料(230)を充填する充填工程とを備えている
ことを特徴とする回転電気機械のロータ(40)の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記治具取付工程の端部閉鎖治具(220)には、充填部材(50)の軸方向の両端部を接続する短絡環(231)をロータコア(41)の両端面に形成する環状凹部(221)が形成され、
上記充填工程は、上記空隙部(45)と上記環状凹部(221)とに上記原材料(230)を充填するように構成されている
ことを特徴とする回転電気機械のロータ(40)の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−217449(P2011−217449A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80900(P2010−80900)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発/要素技術開発/等価狭ギャップ構造による脱レアアース高性能リラクタンストルク応用モータの研究開発に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発/要素技術開発/等価狭ギャップ構造による脱レアアース高性能リラクタンストルク応用モータの研究開発に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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