説明

回転霧化塗装機

【課題】安定したパターンエアを噴出させる。
【解決手段】遠心力により回転霧化頭23の外周縁から放射した霧化塗料を、パターンエアにより所定のパターンに成形して前方へ送出するようになっている。電力により回転力を発生させるパターンエア生成用モータ27により軸流圧縮機29を回転駆動し、塗装機本体10の後方から取り込んだ空気をパターンエアとして噴出させる。パターンエア生成用モータ27に電力を供給する際には、その電圧値や電流値を変動させずに安定した状態で供給することができるので、軸流圧縮機29の回転数及びパターンエアの流量及び流速が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転霧化塗装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加圧エアにより回転力を発生するエアタービン機構を用い、このエアタービン機構を駆動源として回転霧化頭を回転駆動させることで、回転霧化頭に供給した液体塗料を霧化状態にして噴出させる回転霧化塗装機が開示されている。このようにエアタービン機構を用いた回転霧化塗装機では、エアタービン機構からの排気を、回転霧化頭の外周縁から前方へ噴出させるパターンエアとして流用することが行われる。パターンエアは、回転霧化頭の外周から放射状に噴出する霧化塗料を、包み込むことによって所定のパターンに成形するとともに被塗物に向けて前方へ送出する。
【特許文献1】特開2005−177569公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
塗装機が、被塗物の形状に合わせて移動する可動タイプのものである場合、加圧エアの供給源を塗装機から離れた位置に配置し、供給源と塗装機との間に加圧エアを圧送するためのホースが配索される。このような構造では、加圧エアが供給源から塗装機へ圧送される間にエア漏れが生じることや、加圧エアが圧縮性流体であること等が原因となって、加圧エアの圧力が変動する虞があるため、パターンエアの流量や流速が不安定になり易いという事情がある。このような問題は、エアタービン機構の排気を流用してパターンエアとする場合に限らず、可動タイプの塗装機に、エアタービン機構とは別に独立したエア流路を設けた場合でも同様に生じ得る。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、安定したパターンエアを噴出させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、塗装機本体と、前記塗装機本体の前端部に設けられて回転駆動される回転霧化頭と、前記塗装機本体の前面において前記回転霧化頭を包囲するように開口し、筒状のパターンエアを前方へ噴出させるエア噴出口とを備え、遠心力により前記回転霧化頭の外周縁から放出された霧化塗料を、前記パターンエアにより所定のパターンに成形して前方へ送出するようになっている回転霧化塗装機において、電力により回転力を発生させるパターンエア生成用モータと、前記パターンエア生成用モータにより回転駆動され、前記塗装機本体の後方から取り込んだ空気を、前記エア噴出口に圧送して前記パターンエアとして噴出させる軸流圧縮機とが設けられているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、電力により回転力を発生して前記回転霧化頭を回転駆動する電動モータが設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
<請求項1の発明>
一般に電圧や電流の制御は容易であることから、パターンエア生成用モータに電力を供給する際には、その電圧値や電流値を変動させずに安定した状態で供給することができる。これにより、パターンエア生成用モータの回転数及び軸流圧縮機の回転数を安定させ、流量及び流速が安定したパターンエアを噴出させることができる。
【0007】
<請求項2の発明>
一般に電圧や電流の制御は容易であることから、電動モータに電力を供給する際には、その電圧値や電流値を変動させずに安定した状態で供給することができる。したがって、電動モータの回転数及び回転霧化頭の回転数が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図5を参照して説明する。本実施形態の回転霧化塗装機は、下方へグリップ11を突出させた塗装機本体10の前端部に、軸線を前後方向に向けた回転霧化頭23を設け、この回転霧化頭23を回転駆動することにより、回転霧化頭23に供給した液体の塗料を霧化状態で噴出するとともに、噴出した霧化状の塗料を所定のパターンエアにより成形して被塗物(図示せず)に塗着させるようしたものである。
【0009】
塗装機本体10内には、断面形状が回転霧化頭23の回転中心と同心の円形をなして塗装機本体10を前後方向に貫通する収容空間12が形成され、収容空間12内には、回転霧化頭23と同心の円筒形をなす保持部材13が固定して設けられている。収容空間12の内周と保持部材13の外周との間の円筒状の空間は、塗装機本体10の後端から前端へ連通するエア流路14となっている。保持部材13を固定する手段としては、図5に示すように、保持部材13の外周に周方向に間隔を空けた複数位置(例えば、3箇所)から突部15を突出させ、これらの突部15を収容空間12の内周に固定する構造がとられている。保持部材13には、その前端面に開口する前部収容凹部16と後端面に開口する後部収容凹部17とが形成されており、前部収容凹部16と後部収容凹部17との間は隔壁部18となっている。
【0010】
前部収容凹部16内には、回転霧化頭23と同心状の円筒形をなす塗料供給管19が、隔壁部18の前面に固定されて前方へ延びた形態で設けられている。隔壁部18内には連通孔20が形成されており、グリップ11内に設けた塗料流入路(図示せず)の上端が、連通孔20の下端に連通し、連通孔20の前端が塗料供給管19に後端部に連通されている。
【0011】
前部収容凹部16内には、前後方向に貫通する円筒状の電動モータ21が固定して収容されている。電動モータ21の中心孔には、回転霧化頭23と同心の円筒形をなし塗料供給管19を包囲する形態の出力軸22が設けられており、電動モータ21に電力が供給されると、出力軸22が所定の速度で回転駆動されるようになっている。この出力軸22の前端部には、回転霧化頭23が一体に回転し得るように固着されている。
【0012】
回転霧化頭23は、前面が凹んだ円盤状をなし、その後面中央部には、後方へ突出する円筒状の筒部24が形成されている。回転霧化頭23の内部には、筒部24に連通する貯留室25が形成されているとともに、この貯留室25から回転霧化頭23の前面に連通する複数の流出孔26が形成されている。塗料流入路に供給された液体の塗料は、連通孔20、塗料供給管19、筒部24を順に通って貯留室25内に流入し、貯留室25から流出孔26を通って回転霧化頭23の前面に供給されるようになっている。電動モータ21に電力が供給されて回転霧化頭23が回転駆動されると、回転霧化頭23の前面に供給された塗料が、遠心力により回転霧化頭23の外周縁に向かって拡散しながら流れ、回転霧化頭23の外周縁から霧化状となって放射状に噴出(放出)されるようになっている。
【0013】
塗装機本体10の前端部においては、収容空間12の内周と回転霧化頭23の外周縁との間に、回転霧化頭23と同心の円環状の隙間が空いており、この隙間は、塗装機本体10の前面において、回転霧化頭23を包囲するように開口するエア噴出口32となっている。このエア噴出口32からは、パターンエアが前方へ筒状に噴出するようになっている。このエア噴出口32は、上記エア流路14に連通している。
【0014】
後部収容凹部17内には、軸流圧縮機29を回転駆動することによってパターンエアを精製するためのパターンエア生成用モータ27が固定状態で収容されている。パターンエア生成用モータ27は、回転霧化頭23と同心であって後方へ突出する駆動軸28を有しており、この駆動軸28の後端部には、軸流圧縮機29が取り付けられている。軸流圧縮機29は、保持部材13の後端よりも後方へ突出した形態であって駆動軸28に対して一体に回転し得るように固着された回転子30と、この回転子30の外周に周方向に間隔を空けて形成した複数の羽根31とを備えて構成されている。複数の羽根31は、エア流路14の後端部に位置するように設けられている。これらの羽根31は、いずれも、駆動軸28の軸線と平行な仮想面(図示せず)に対して斜めをなし、且つ駆動軸28の軸線と直角な仮想面(図示せず)に対しても斜め方向を向いている。換言すると、羽根31は、回転子30の回転方向に対して斜めを向いている。
【0015】
パターンエア生成用モータ27に電力が供給されて軸流圧縮機29が回転駆動されると、塗装機本体10の後方の空気が、羽根31によりエア流路14内に取り込まれ、取り込まれたエアは、エア流路14内を加圧されながら前方へ流れる。加圧されたエアは、エア流路14の前端の開口縁と回転霧化頭23の外周縁との隙間の円環形のエア噴出口32から、円筒状のパターンエアとして前方へ噴出し、回転霧化頭23の外周縁から放射状に噴出する霧化塗料を所定の径の大きさの塗料噴流に成形して被塗物(図示せず)に塗着させる。
【0016】
本実施形態においては、パターンエアを生成する手段として、電力の供給により回転力を発生させるパターンエア生成用モータ27と、このパターンエア生成用モータ27により回転駆動される軸流圧縮機29とを設けているのであるが、一般に電圧や電流の制御は容易であることから、パターンエア生成用モータ27に電力を供給する際には、その電圧値や電流値を変動させずに安定した状態で供給することができる。したがって、パターンエア生成用モータ27の回転数及び軸流圧縮機29の回転数が安定する。これにより、流量と流速が安定したパターンエアを噴出させることができ、ひいては、良好な塗装を行うことができる。
【0017】
また、電力の供給により回転力を発生する電動モータ21を設け、この電動モータ21により回転霧化頭23を回転駆動するようにしているのであるが、一般に電圧や電流の制御は容易であることから、電動モータ21に電力を供給する際には、その電圧値や電流値を変動させずに安定した状態で供給することができる。これにより、電動モータ21の回転数及び回転霧化頭23の回転数を安定させることができるので、塗料を好適な状態に霧化して、良好な塗装を行うことができる。
【0018】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、回転霧化頭を回転させるための電動モータと、パターンエアを生成するためのパターンエア生成用モータとを別々に設けたが、電動モータとパターンエア生成用モータは、共通のモータとしてもよい。
(2)上記実施形態では、回転霧化頭を回転駆動する手段として電動モータを用いたが、これに替えて、エアタービン機構を用いて回転霧化頭を回転駆動するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の断面図
【図2】正面図
【図3】背面図
【図4】斜視図
【図5】図1のX−X線断面図
【符号の説明】
【0020】
10…塗装機本体
21…電動モータ
23…回転霧化頭
27…パターンエア生成用モータ
29…軸流圧縮機
32…エア噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装機本体と、
前記塗装機本体の前端部に設けられて回転駆動される回転霧化頭と、
前記塗装機本体の前面において前記回転霧化頭を包囲するように開口し、筒状のパターンエアを前方へ噴出させるエア噴出口とを備え、
遠心力により前記回転霧化頭の外周縁から放出された霧化塗料を、前記パターンエアにより所定のパターンに成形して前方へ送出するようになっている回転霧化塗装機において、
電力により回転力を発生させるパターンエア生成用モータと、
前記パターンエア生成用モータにより回転駆動され、前記塗装機本体の後方から取り込んだ空気を、前記エア噴出口に圧送して前記パターンエアとして噴出させる軸流圧縮機とが設けられていることを特徴とする回転霧化塗装機。
【請求項2】
電力により回転力を発生して前記回転霧化頭を回転駆動する電動モータが設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転霧化塗装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−36090(P2010−36090A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200738(P2008−200738)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】