説明

囲い構造内の温熱快適性を数値評価するためのシステム及び方法

【課題】建物、車両、航空機等の非一様な温度環境を有する囲い構造内の温熱快適性を適切に評価する。
【解決手段】クライアント装置608は、数値解析ツール632にアクセスして数値解析を実行することにより、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して、該マネキンの各体部位に関する表面熱伝達係数hcalを取得し、非一様な温熱環境でサーマルマネキンを備える囲い構造に対して、該マネキンの各体部位に関する全熱流束q”を取得する。プロセッサ604は、温熱快適性数値解析モジュール634を用いて、取得された表面熱伝達係数hcal、全熱流束q”、及び関連する体部位の表面温度を用いて、非一様な温熱環境におけるマネキンの各体部位の等価温度teqを算出し、該等価温度teqに基づいて囲い構造における温熱快適性を評価する。評価結果はクライアント装置において表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値シミュレーションに関するものであり、より詳細には、囲い構造(enclosure)内の温熱快適性を評価するための数値シミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
建物、車両、又は航空機のコックピット等の囲い構造内の温熱環境は、風速、囲い構造内の温度、窓ガラスを通した太陽光の入射、等のパラメータに大きく依存するのが通常である。囲い構造内の温熱快適性を評価するためには、囲い構造内にいる人であるオキュパント(occupant)が実際に感じる温熱感覚に、上述のパラメータによる影響を評価する必要がある。温熱快適性評価は、国際標準化機構(ISO)7730規格で概説されるように、予測平均温冷感票決(PMV:predicted mean vote)方式によって実行されるのが通常である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、PMV方式の欠点は、一様且つ均一な条件のもとで適用可能であることが通常であり、且つ、さまざまなパラメータ(例:風速、温度等)に基づく経験的相関性に大きく依存することである。要約すれば、非一様な温熱環境条件(気流速度、空気温度及び壁面温度間の差異、並びに太陽光放射によって、航空機内、車両内等に通常存在する)でPMV方式を用いれば、温熱快適性評価の誤予測を導き出しかねない。
【0004】
ISO14505−2規格で概説されるように、等価(equivalent)温度(teq)を基にする別の従来方式は、オキュパントの体からの非蒸発(乾)熱損失量の影響の統合指標である。等価温度(teq)は、気温と等しい平均放射温度、及び現実の条件においてと同じ対流及び放射による熱交換率をオキュパントが有するような静止空気を有する仮想囲い構造の温度を指す。ISO14505−2規格で概説されるように、等価温度teqは、経験式を用いて又は実験を通じてのいずれかによって、算出されるのが通常である。しかしながら、経験式を用いると、囲い構造内にいるオキュパントを取り巻く物理的パラメータの変動に反応しないので、オキュパントの体の実際の等価温度teqが与えられない。また、実験に基づいて等価温度teqを算出するには、サーマルマネキン(例:オキュパントの温熱特性を複製するためのダミー人形)を用いる必要があり、これは、コスト、時間、及び囲い構造内の実際の条件の表現の正確性による制限を受けることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、囲い構造内の温熱快適性を数値評価するためのシステム及び方法を提供する。本発明の一様態によれば、非一様な温熱環境を有する囲い構造内の温熱快適性を数値評価するためにコンピュータ装置に実装される方法は、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造について、サーマルマネキンの各体部位に関する表面熱伝達係数(hcal)を取得するために、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づいて、コンピュータ装置で数値解析ツールを用いて、数値解析を実行するステップを含む。
【0006】
該方法はさらに、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造について、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束q”を取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づいて、数値解析ツールを用いて数値解析を実行するステップを含む。本方法はさらにまた、非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度teqを、取得された関連する熱伝達係数hcal、取得された関連する全熱流速q”、及び関連する体部位の表面温度に基づいて、コンピュータ装置で温熱快適性数値解析モジュールを用いて算出するステップを含む。該方法はさらに、囲い構造内の温熱快適性を、各体部位の算出された等価温度teqに基づいて、温熱快適性数値解析モジュールを用いて評価するステップを含む。
【0007】
本発明の別の様態によれば、上述の方法をコンピュータ装置で実行するための命令を記憶したストレージ媒体を提供する。
【0008】
本発明のさらに別の様態によれば、非一様な温熱環境を有する囲い構造における温熱快適性を数値評価するためのシステムは、複数のクライアント装置、コンピュータネットワーク、及びコンピュータネットワークを介して複数のクライアント装置と接続される遠隔サーバを含む。遠隔サーバは、プロセッサ及びメモリを含む。メモリは数値解析ツール及び温熱快適性数値解析モジュールを含む。クライアント装置の1つは、コンピュータネットワークを介して数値解析ツールへアクセスし、且つサーマルマネキンの各体部位に関する表面熱伝達係数hcalを取得するために、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件を用いて、一様な温熱環境でサーマルマネキンを含むキャリブレーション囲い構造に対して数値解析を実行する。
【0009】
数値解析ツールを用いるクライアント装置はさらに、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造について、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束q”を取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件を用いて数値解析を実行する。その後、温熱快適性数値解析モジュールを用いるプロセッサが、取得された関連する熱伝達係数hcal、取得された関連する全熱流速q”、及び関連する体部位の表面温度を用いて、非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度teqを算出する。加えて、温熱快適性数値解析モジュールを用いるプロセッサは、算出された各等価温度teqに基づいて囲い構造の温熱快適性を評価し、且つ評価の結果をクライアント装置の1つのディスプレイ装置上に出力する。
【0010】
本明細書で開示される方法、システム及び装置は、さまざまな様態を達成するために任意の手段で実現され、そして別の特性が添付図面及び後述の発明の詳細の説明で明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による、等価温度(teq)方式を用いた同じ全乾熱損失量を有する非一様な温熱環境及び一様な温熱環境の対比の概略図である。
【図2】本発明の実施形態による、サーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造の概略図を示す。
【図3】本発明の一実施形態による、複数のサーマルマネキンを備える囲い構造の概略図を示す。
【図4A】囲い構造に関する太陽負荷ありのコンフィギュレーションの温熱快適性ダイアグラムを用いた囲い構造の温熱快適性評価例を示すグラフである。
【図4B】囲い構造に関する太陽負荷なしのコンフィギュレーションの温熱快適性ダイアグラムを用いた囲い構造の温熱快適性評価例を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態による、非一様な温熱環境を有する囲い構造内の温熱快適性を数値評価する方法のプロセスフロー図である。
【図6】本発明の実施形態による、本明細書で開示された方法が実行されるデータ処理システムのシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
囲い構造内の温熱快適性を数値評価するためのシステム及び方法を説明する。以下の本発明の実施形態の詳細な説明では、添付図面が参照され、また図面には本発明が実施される特定の実施形態が示されている。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に詳細に記述されており、また、本発明の範囲を逸脱することなく、別の実施形態が使用されること及び変更が加えられることが理解されるであろう。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味でとらえるべきものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ規定されるものである。
【0013】
本書類では、「キャリブレーション囲い構造」という言葉は、較正される囲い構造のことである。「一様な温熱環境」及び「均一環境」という言葉は、本書類全体にわたって同じ意味で使用される。また、「非一様な温熱環境」、「実際の環境」、及び「非均一環境」という言葉も、本書類全体にわたって同じ意味で使用される。さらに、「コンピュータネットワーク」及び「ネットワーク」という言葉も本書類全体にわたって同じ意味で使用される。さらにまた、「全乾熱損失量」及び「全熱流束」という言葉も、本書類全体にわたって同じ意味で使用される。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による、等価温度(teq)方式を用いた同じ全乾熱損失量を有する非一様な温熱環境110及び一様な温熱環境120を対比して示した概略図100である。非一様な温熱環境110は、気流速度、囲い構造内の温度、及び太陽光放射等のパラメータの影響を受ける、囲い構造内の実際の環境である。一方、一様な温熱環境120は、気流速度がほぼゼロに等しく(V≒0m/s)、囲い構造内の温度は一定であり、且つ太陽光放射にさらされない、仮想囲い構造内の環境である。
【0015】
等価温度teqの方式では、オキュパントの全乾熱損失量(R+C)は、非均一環境110及び均一環境120の両方で等しい。全乾熱損失量は、
R+C=h・(t−t(*))+h・(t−t
によって算出される。ここで、Rは放射熱損失量であり、Cは対流熱損失量であり、tは周辺気温(℃/Kで)であり、tr(*)は、一様な温熱環境及び非一様な温熱環境の平均放射温度(℃/Kで)であり、tは、オキュパントの表面温度(例:人間の体温調節システムによると34℃)であり、hは、対流熱伝達係数(W/m℃で)であり、またhは、放射熱伝達係数(W/m℃で)である。
【0016】
さらに、等価温度teqは、周辺気温tと平均放射温度t(*)が等しく、非一様な温熱環境110内と同じ対流及び放射による熱交換をオキュパントが有するような静止空気の状態である一様な温熱環境120の温度と定義される。この等価温度teqの定義により、一様な温熱環境120における全乾熱損失量に関する式は、
R+C=h・(t−teq)+h・(t−teq
で表すことができ、この式を用いてteqの解を求めると、
eq=(h・t(*)+h・t)/(h+h
=t−(R+C)/(h+h
が得られる。
【0017】
上記に基づいて、本発明は、非均一環境の囲い構造内の温熱快適性を数値評価するための方法を提供する。さらに、非均一環境の囲い構造内の温熱快適性を評価するための方法及びシステムを開示する。
図2は、本発明の実施形態による、サーマルマネキン220を備えるキャリブレーション囲い構造210の概略図200を示す。特に、図2は、一様な温熱環境(例:図1の一様な温熱環境120)でサーマルマネキン220を含んだキャリブレーション囲い構造210を示す。一実施形態では、サーマルマネキン220を含んだキャリブレーション囲い構造210に関する計算メッシュが、複数のセルを生成することで形成される。各セルは多重ノードを含む。例えば、計算メッシュは、2D計算メッシュ又は3D計算メッシュである。さらに、2D/3D計算メッシュのタイプは、構造、非構造、又はハイブリッドである。ハイブリッド計算メッシュは、構造計算メッシュ及び非構造計算メッシュを組み合わせたものである。
【0018】
キャリブレーション室210内のサーマルマネキン220は、オキュパントの温熱特性を複製するために成形されたダミードールである。サーマルマネキン220は、キャリブレーション囲い構造210の形成とほぼ同時に、さまざまな体部位に分割される。一実施形態では、サーマルマネキン220のさまざまな体部位への分割は、所望の温熱快適性の分解能に基づいて実行される。サーマルマネキン220の体部位例は、左前腕、右前腕、左上腕、右上腕、左脹ら脛、右脹ら脛、左腿、右腿、胸、顔、左足、右足、左手及び右手、を含む。
【0019】
実施形態によっては、キャリブレーション囲い構造210の各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、計算メッシュ上で数値解析が実行される。これらの実施形態では、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づいて、数値解析が実行される。所定の一連の境界条件を定義するパラメータ例は、風速入口(velocity inlet)パラメータ、サーマルマネキンの体表面パラメータ、囲い構造壁面パラメータ、サーマルマネキンの衣類パラメータ、及び出口パラメータを含む。
【0020】
風速入口パラメータは、入口風速(inlet velocity)(例:参照番号230)、入口流体温度、及び乱流パラメータ(例:乱流強度、乱流粘性率、等)を含む。サーマルマネキンの体表面パラメータは、サーマルマネキンの体表面温度である。囲い構造壁面パラメータは、壁面温度並びに壁表面及び材料の特性を含む。サーマルマネキンの衣類パラメータは、衣類の厚み、生地の熱電導率を含む。出口パラメータは、出口圧力(例:参照番号240)逆流全温度(back flow total temperature)、及び逆流乱流パラメータ(逆流乱流強度、逆流乱流粘性率、等)を含む。
【0021】
さらに、サーマルマネキン220の各体部位に関する表面熱伝達係数hcalは、それぞれの関連セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて算出される。一実施形態では、各体部位に関するhcalは、
cal=q”T,cal/(t−t
によって算出される。ここでq”calは、一様な温熱環境におけるサーマルマネキン220の各体部位に関する全乾熱損失量であり、tは、一様な温熱環境におけるサーマルマネキン220の表面温度であり、tは、キャリブレーション囲い構造210内の周辺気温である。キャリブレーション囲い構造210におけるサーマルマネキン220の各体部位に関するこのhcalは次に、非一様な温熱環境(例:温熱快適性を評価する環境)における1又は複数のサーマルマネキン(例:図3のサーマルマネキン320及び330)の各体部位の等価温度teqを算出するために用いられる。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態による、サーマルマネキン320及び330を備えた囲い構造310の概略300を示す。特に、非一様な温熱環境(例:図1の非一様な温熱環境110)でサーマルマネキンの320及び330を備えた囲い構造310を、図3は示している。例えば、囲い構造310は、航空機、車両(例:自動車、列車、等)又は建物等の、非一様な/実際の環境条件にさらされている実際の囲い構造である。一実施形態では、サーマルマネキン320及び330を備える囲い構造310に関する計算メッシュは、複数のセルを生成することで形成され、ここで各セルは多重ノードを含んでいる。例えば、計算メッシュは、2D計算メッシュ又は3D計算メッシュである。さらに、2D/3D計算メッシュのタイプは、構造、非構造、又はハイブリッドである。ハイブリッド計算メッシュは、構造計算メッシュ及び非構造計算メッシュを組み合わせたものである。
【0023】
さらに、囲い構造310内のサーマルマネキン320及び330は、囲い構造310の形成と実質的に同時にさまざまな体部位に分割される。一実施形態では、サーマルマネキン320及び330のさまざまな体部位への分割は、所望の温熱快適性の分解能に基づいて実行される。サーマルマネキン320及び330の体部位例は、左前腕、右前腕、左上腕、右上腕、左脹ら脛、右脹ら脛、左腿、右腿、胸、顔、左足、右足、左手及び右手を含む。サーマルマネキン320及び330は、図2のサーマルマネキン220の実施形態の場合と同様である。
【0024】
実施形態によっては、囲い構造310の各セルに対する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、計算メッシュ上で数値解析が実行される。これらの実施形態では、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づいて、数値解析が実行される。一連の境界条件を定義するパラメータ例は、風速入口パラメータ、サーマルマネキンの体表面パラメータ、囲い構造壁面パラメータ、半透明壁面パラメータ(囲い構造310内に半透明壁面が存在する場合)、サーマルマネキンの衣類パラメータ、及び出口パラメータを含む。
【0025】
風速入口パラメータは、入口風速、入口流体温度、及び乱流パラメータ(例:乱流強度、乱流粘性率、等)を含む。サーマルマネキンの体表面パラメータは、サーマルマネキンの体表面温度である。囲い構造壁面パラメータは、壁面温度並びに壁表面及び材料の特性を含む。半透明壁面パラメータは、半透明壁面温度、壁面の放射特性、並びに太陽束入射の方向及びマグニチュードを含む。サーマルマネキンの衣類パラメータは、衣類の厚み、及び生地の熱電導率を含む。出口パラメータは、出口圧力(例:参照番号240)逆流全温度、及び逆流乱流パラメータ(逆流乱流強度、逆流乱流粘性率、等)を含む。
【0026】
さらに、サーマルマネキン320及び330の各体部位に関する全熱流束係数q”が、非一様な温熱環境における各関連セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて算出される。一実施形態では、サーマルマネキン320及び330の各体部位に関する全熱流束係数q”は、
q”=h(t−t)+qrad
によって算出される。ここで、hは流体側のローカル熱伝達係数であり、tは壁表面温度であり、tはローカル流体温度であり、またqradは、放射熱束である。
【0027】
その後、非一様な温熱環境におけるサーマルマネキン320及び330の各体部位のteqが、取得された関連するhcal及び取得された関連するq”を用いて算出される。一実施形態では、サーマルマネキン320及び330の各体部位のteqは、
eq=t−q”/hcal
によって算出される。ここで、tは、関連する体部位の表面温度である。
【0028】
さらに、非一様な温熱環境を有する囲い構造310内の温熱快適性は、各算出されたteqに基づいて評価される。一実現例では、囲い構造310における温熱快適性は、各体部位に関して算出されたteq及び温熱快適性のダイアグラムを用いて評価される。温熱快適性のダイアグラムは、国際規格(ISO 14505−2)又は囲い構造310のタイプ(例:航空機、建物、車両、等)に基づいている。温熱快適性のダイアグラムを用いた囲い構造310の温熱快適性の評価については、図4A及び図4Bを参照して詳細に説明する。
【0029】
図4A及び4Bは、囲い構造310に関する太陽光負荷ありコンフィギュレーション及び太陽光負荷なしのコンフィギュレーションの温熱快適性ダイアグラムを用いた、囲い構造310の温熱快適性評価例を示す。温熱快適性ダイアグラム400及び450は、各体部位の快適ゾーンレベルと関連付けられたteqの境界線を用いて形成されことが好ましい。
【0030】
詳細には、図4Aは囲い構造310が太陽光にさらされている場合(例:太陽光負荷あり)の、温熱快適性の評価を示す。図示のように、各体部位の算出されたteqは、温熱快適性ダイアグラム400で関連する体部位に関して定義されたteqの境界線と対比される。図4Aでは、体部位の右上腕、右脹ら脛、胸、右足、及び左手が、快適ゾーンから外れている。図示されるように、右上腕、右脹ら脛、胸、及び右足に関するteqが、暖かすぎる領域より上にあり、その一方で、左手に関するteqは、寒すぎる領域より下にある。
【0031】
図4Bは囲い構造310が太陽光にさらされていない場合(例:太陽光負荷なし)の、温熱快適性の評価を示す。図示のように、各体部位の算出されたteqは、温熱快適性ダイアグラム450で関連する体部位に関して定義されたteqの境界線と対比される。図4Bでは、サーマルマネキン320及び330の体部位の算出されたteqは、左上腕及び右足の算出されたteqを除く全てが、快適ゾーン内にある。図示のように、左上腕のteqは寒すぎる領域より下であり、右足のteqは、暖かすぎる領域の上である。当業者は、温熱快適性ダイアグラム400及び450が囲い構造内のオキュパントの温熱状態を明快に表すものであり、従って囲い構造310内の温熱快適性を評価するのに有効的に活用できることが理解できるであろう。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態による、非一様な温熱環境を有する囲い構造内の温熱快適性を数値評価する方法例のプロセスフロー図を示す。ステップ510では、サーマルマネキンの各体部位に関する表面熱伝達係数hcalを取得するために、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して数値解析が実行される。一実施形態では、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づいて、数値解析ツールを用いて数値解析が実行される。
【0033】
ステップ520では、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束q”を取得するために、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造(例:建物、航空機、車両、等)に対して数値解析が実行される。一実施形態では、非一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づいて、数値解析ツールを用いて数値解析が実行される。
【0034】
ステップ530では、非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度teqが算出される(例:温熱快適性数値解析モジュールを用いて)。実施形態によっては、等価温度teqは、取得された関連する表面熱伝達係数hcal、取得された関連する全熱流束q”、及び関連する体部位の表面温度に基づいて算出される。ステップ540では、囲い構造内の温熱快適性が算出されたそれぞれの等価温度teqに基づいて評価される(例:温熱快適性数値解析モジュールを用いて)。
【0035】
図6は、本発明の実施形態による、本明細書で開示された実施形態を実行するためのデータ処理システムのシステム図600である。図6のシステム図は、プロセッサ604及びメモリ606を備える遠隔サーバ602、クライアント装置608、及びコンピュータネットワーク610を示している。システム図600はさらに、メインメモリ612、スタティックメモリ614、バス616、ビデオディスプレイ618、文字数字入力装置620、カーソル制御装置622、ドライブユニット624、信号生成装置626、ネットワークインターフェース装置628、機械可読媒体630、数値解析ツール632(例:メッシュ生成器及び有限体積ソルバ)、及び温熱快適性数値解析モジュール634を示している。
【0036】
システム図600は、本明細書で開示された1又は複数の操作が実行される、コンピュータ装置及び/又はデータ処理システムを表している。遠隔サーバ602は、コンピュータネットワーク610を介してクライアント装置608と接続されるサーバである。遠隔サーバ602は、数値解析ツール632及び温熱快適性数値解析モジュール634へのアクセスを、コンピュータネットワーク610を介してクライアント装置608へ提供する。プロセッサ604は、マイクロプロセッサ、状態機械、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、等である。
【0037】
メモリ606は、数値解析ツール632及び温熱快適性数値解析モジュール634に関連する一連の命令を記憶するための不揮発性メモリである。クライアント装置608はそれぞれ、非一様な温熱環境を有する囲い構造(例:図3の囲い構造310)内の温熱快適性を数値評価するために、コンピュータネットワーク610を介して遠隔サーバ602と接続されたコンピュータ装置である。メインメモリ612は、ダイナミックランダムアクセスメモリ及び/又は主メモリである。スタティックメモリ614は、ハードドライブ、フラッシュ装置、及び/又は他のメモリであり、データ処理システムに関連している。
【0038】
バス616は、データ処理システムのさまざまな回路及び/又は装置を相互接続するものである。ビデオディスプレイ618は、データ処理システム上の情報のグラフ表示を提供する。文字数字入力装置620は、キーパッド、キーボード等の任意のテキストの入力装置である。カーソル制御装置622は、マウス等のポイント装置である。ドライブユニット624は、ハードドライブ、ストレージシステム等の長期記憶可能なストレージサブシステムである。
【0039】
信号生成装置626は、基本入力/出力システム(BIOS)及び/又はデータ処理システムの機能操作システムである。ネットワークインターフェース装置628は、クライアント装置608及び遠隔サーバ602の間のコンピュータネットワーク610との通信やりとりのために必要とされる、インターフェース機能(例:コード変換、プロトコル変換、及び/又はバッフィング)を果たす。機械可読媒体630は、本明細書で開示された任意の方法を実行させる命令(例:数値解析ツール632及び温熱快適性数値解析モジュール634に関連する)を提供する。数値解析ツール632及び温熱快適性数値解析モジュール634は、本明細書で開示された任意の1又は複数の操作を可能にするために、ソースコード及び/又はデータコードをプロセッサ604に提供する。
【0040】
例えば、ストレージ媒体(例:機械可読媒体630)は、計算プラットホーム(例プロセッサ604)で実行された場合に、非一様な温熱環境を有する囲い構造(例:図3の囲い構造310)内の温熱快適性を数値評価するための方法を実行するための命令を記憶する。該方法は、サーマルマネキンの各部位に関する表面熱伝達係数hcalを取得するために、一様な温熱環境でサーマルマネキン(例:図2のサーマルマネキン220)を備えるキャリブレーション囲い構造(例:図2の囲い構造210)に対して、数値解析ツール632を用いて数値解析を実行するステップを含む。一実施形態例では、サーマルマネキンは、所望の温熱快適性の分解能に基づいて分割された体部位を含む。該方法はさらに、1又は複数のサーマルマネキンの各部位に関する全熱流束q”を取得するために、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキン(例:図3のサーマルマネキン320及び330)を備える囲い構造に対して、数値解析ツール632を用いて数値解析を実行するステップを含む。
【0041】
上記方法はさらに、非一様な温熱環境におけるサーマルマネキンの各体部位のteqを、取得された関連するhcal及び取得された関連するq”、及び関連する体部位の表面温度に基づいて、温熱快適性数値解析モジュール634を用いて算出するステップを含む。該方法はまた、囲い構造内の温熱快適性を、算出されたそれぞれのteqに基づいて、温熱快適性数値解析モジュール634を用いて評価するステップを含む。
【0042】
一実施形態では、キャリブレーション囲い構造に対して数値解析を実行するために、ストレージ媒体630は、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造の計算メッシュ(例:2D又は3D)を、数値解析ツール632を用いて生成するための命令を有する。例えば、計算メッシュは複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含む。
【0043】
さらに、ストレージ媒体630は、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づいて、各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、生成された計算メッシュ上で、数値解析ツール632を用いて数値解析を実行するための命令を記憶する。ストレージ媒体630はさらに、各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、数値解析ツール632を用いて、各体部位に関するhcalを算出するための命令を記憶する。
【0044】
さらにまた、ストレージ媒体630は、囲い構造に対して数値解析を実行するために、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造の計算メッシュを、数値解析ツール632を用いて生成するための命令を有する。例えば、計算メッシュは複数のセルを含み、且つ各セルは複数のノードを含む。
【0045】
ストレージ媒体630はさらに、各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、非一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づいて、生成された計算メッシュ上で数値解析ツール632を用いて数値解析を実行するための命令を記憶する。ストレージ媒体630はさらにまた、非一様な温熱環境で各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関するq”を、数値解析ツール632を用いて算出するための命令を記憶する。
【0046】
上述の実施形態によれば、クライアント装置608の1つが、コンピュータネットワーク610を介して数値解析ツール632にアクセスする。そして、そのクライアント装置608は、サーマルマネキンの各体部位に関するhcalを取得するために、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して、数値解析ツール632を用いて数値解析を実行する。その後、該クライアント装置608は、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関するq”を取得するために、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造に対して、数値解析ツール632を用いて解析を実行する。
【0047】
次に、プロセッサ604が、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度teqを、取得された関連するhcal、取得された関連するq”、及び関連する体部位の表面温度に基づき、温熱快適性数値解析モジュール634を使用して算出する。算出されたteqに基づいて、プロセッサ604は、温熱快適性数値解析モジュール634を使用して囲い構造内の温熱快適性を評価する。プロセッサ604は、次いで、上記のクライアント装置608のディスプレイ装置(例:ビデオディスプレイ618)上に温熱快適性の評価の結果を表示する。
【0048】
一実施例では、上述のシステム及び方法を用いて、非一様な温熱環境を有する航空機のコックピットにおける温熱快適性評価が実行される。航空機のコックピット内の温熱快適性を数値評価するために、クライアント装置608の1つが、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造(例:図2のキャリブレーション囲い構造210)の計算メッシュを、数値解析ツール632を用いて生成する。次にクライアント装置608の1つは、計算メッシュの各セルに関して流量及び熱伝達パラメータを取得するために、数値解析ツール632を用いて生成された計算メッシュ上で数値解析を実行する。取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、プロセッサ604が、サーマルマネキンの各体部位に関してhcalを算出する。
【0049】
これに続いて、上記のクライアント装置608は、数値解析ツール632を用いて、類似のサーマルマネキン(例:パイロット)を有する航空機のコックピットの計算メッシュを生成する。一実施形態では、計算メッシュを生成する際に以下の事項が考慮される。
・入口、鋭角な隅、パイロット、等の領域で、表面メッシュが充分に精密である。
・正確なY値(例:壁で境界された流体(wall−bounded flow)に関する無次元壁距離)を捕捉するために、境界層が全ての表面で生成されている。
・入口ジェット領域(inlet jet regions)においてボリュームメッシュが精密である。
【0050】
次いで、クライアント装置608は、コックピットの各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、コックピットに対して数値解析ツール632を用いて数値解析を実行する。一実施形態では、数値解析ツール632は、コックピットに関する一連の境界条件を用いてコックピットに対する数値解析を実行する。さらに、取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、プロセッサ604は数値解析ツール632を使用してサーマルマネキンの各体部位に関するq”を算出する。
【0051】
次に、プロセッサ604は、温熱快適性数値解析モジュール634を使用して、取得された関連するhcal、取得された関連するq”、及び関連する体部位の表面温度に基づいて、サーマルマネキンの各体部位のteqを算出する。その後、プロセッサ604は、温熱快適性数値解析モジュール634を使用して、算出された各teqに基づいて、コックピット内の温熱快適性を評価する。そして評価の結果が、クライアント装置608の1つのユーザに表示される。
【0052】
異なる環境条件下にある種々多様な囲い構造内の温熱快適性を評価するために、上述の技術は、さまざまな実施形態で数値解法を構築することによって検証されてきた。上述の技術は、物理的条件における変化に対して適応することができる。上述の技術はさらに、実験等への依存度を低減するために、数値解法を使用して完全に実行される。これは開発サイクルのスピードアップ及びコストの低減を促進し、それによって、囲い構造内の温熱快適性を決定する精度が損なわれることもない。上述の技術はさらにまた、各体部位についての流体及び温熱条件の変化を説明するために、オキュパントの体にともなう特別な変化を考慮して温熱快適性を評価することができる。
【0053】
上述の実施形態は、計算メッシュを生成し且つ囲い構造に対して数値解析を実行するための、数値解析ツールに関して記述されたが、計算メッシュはメッシュ生成ツール(例:Hypermesh(登録商標))を使用して別個に生成されてもよく、また数値解析は任意の数値解析ツール(例:Fluent(登録商標))を使用して別個に実行されてもよい。
加えて、本明細書で開示されたさまざまな操作、プロセス、及び方法は、データ処理システム(例:コンピュータシステム)と互換性のある、機械可読媒体及び/又は機械アクセス可能媒体に記憶され、且つ任意の順序で実行される(さまざまな操作を達成するための手段を用いることを含む)。従って、本明細書及び図面は、限定的ではなく実例的な意味でとらえられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非一様な温熱環境を有する囲い構造における温熱快適性を数値評価するためにコンピュータ装置によって実行される方法であって、
一様な温熱環境でサーマルマネキンを含んだキャリブレーション囲い構造に対して、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づいて、数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを含んだ囲い構造に対して、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づいて、数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度(teq)を、一様な温熱環境及び非一様な温熱環境において実行された数値解析と各体部位の表面温度とに基づいて算出するステップと、
囲い構造内の温熱快適性を、各体部位の算出された等価温度(teq)に基づいて温熱快適性数値解析モジュールを用いて評価するステップであって、一様な温熱環境及び非一様な温熱環境に関する一連の境界条件を定めるパラメータが、風速入口パラメータ、サーマルマネキン体表面パラメータ、囲い構造壁面パラメータ、半透明壁面パラメータ、サーマルマネキン衣類パラメータ、及び出口パラメータからなるグループから選択される、ステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、一様な温熱環境でサーマルマネキンを含んだキャリブレーション囲い構造に対して、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づいて、数値解析を実行するステップは、
一様な温熱環境でサーマルマネキンを含んだキャリブレーション囲い構造の計算メッシュを、コンピュータ装置で数値解析ツールを使用して生成するステップであって、計算メッシュが複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含んでおり、サーマルマネキンが所望の温熱快適性の分解能に基づいて分割された体部位を備えている、ステップと、
各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、一様な温熱環境に関する所定の境界条件に基づき数値解析ツールを使用して、生成された計算メッシュに対して数値解析を実行するステップと、
関連する各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、各体部位に関する表面熱伝達係数(hcal)を、数値解析ツールを使用して算出するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを含んだ囲い構造に対して、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づいて、数値解析を実行するステップは、
非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを含んだ囲い構造の計算メッシュを、数値解析ツールを使用して生成するステップであって、計算メッシュが複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含んでいる、ステップと、
各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づき数値解析ツールを使用して、生成された計算メッシュに対して数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境における関連する各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束(q”)を、数値解析ツールを使用して算出するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度(teq)を算出するステップは、
取得された関連する表面熱伝達係数(hcal)、取得された関連する全熱流束(q”)、及び関連する体部位の表面温度に基づいて、コンピュータ装置で温熱快適性数値解析モジュールを使用して、非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度(teq)を算出するステップ
を備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4記載の方法において、囲い構造は建物、車両、及び航空機、からなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の方法において、風速入口パラメータは入口風速、入口流体温度、及び乱流パラメータからなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の方法において、出口パラメータは出口圧力、逆流全温度、及び逆流乱流パラメータからなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の方法において、囲い構造壁面パラメータは、壁面温度及び壁表面及び材料の特性を備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載の方法において、半透明壁面パラメータは、半透明壁面温度、壁面の放射特性、並びに太陽光入射の方向及び強度からなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9いずれかに記載の方法において、サーマルマネキンの体表面パラメータは、サーマルマネキンの体表面温度であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載の方法において、サーマルマネキン衣類パラメータは、衣類の厚み、及び生地の熱電導率からなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項3又は4記載の方法において、計算メッシュは、2D計算メッシュ及び3D計算メッシュからなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項3又は4記載の方法において、計算メッシュは、構造、非構造、及びハイブリッドからなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項14】
非一様な温熱環境を有する囲い構造における温熱快適性を数値評価するためのシステムであって、
複数のクライアント装置と、
コンピュータネットワークと、
コンピュータネットワークを介して複数のクライアント装置と接続される遠隔サーバであって、プロセッサとメモリを備えている遠隔サーバと
を備え、
メモリは、数値解析ツール及び温熱快適性数値解析モジュールを記憶しており、
クライアント装置のそれぞれは、コンピュータネットワークを介して数値解析ツールにアクセスして、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して、サーマルマネキンの各体部位に関する表面熱伝達係数(hcal)を取得するために、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件を用いて数値解析を実行し、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造に対して、該サーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束(q”)を取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件を用いて数値解析を実行するよう構成されており、
プロセッサは、温熱快適性数値解析モジュールを用いて、取得された関連する表面熱伝達係数(hcal)、取得された関連する全熱流束(q”)、及び関連する体部位の表面温度を用いて、非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度(teq)を算出し、かつ、算出された各等価温度teqに基づいて囲い構造における温熱快適性を評価し、評価の結果をクライアント装置の1つのディスプレイ装置に出力するよう構成されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項システム14記載のシステムにおいて、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して、所定の一連の境界条件を用いて実行される数値解析は、
一様な温熱環境でサーマルマネキンを含んだキャリブレーション囲い構造の計算メッシュを、コンピュータ装置で数値解析ツールを使用して生成し、計算メッシュが複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含んでおり、サーマルマネキンが所望の温熱快適性の分解能に基づいて分割された体部位を備えており、
各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、一様な温熱環境に関する所定の境界条件に基づき数値解析ツールを使用して、生成された計算メッシュに対して数値解析を実行し、
関連する各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、各体部位に関する表面熱伝達係数(hcal)を、数値解析ツールを使用して算出する
ことによって実行されることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項14記載のシステムにおいて、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造に対して、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づいて実行される数値解析は、
非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造の計算メッシュを、数値解析ツールを使用して生成し、計算メッシュは複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含み、
各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づき数値解析ツールを使用して、生成された計算メッシュに対して数値解析を実行し、
非一様な温熱環境における関連する各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束(q”)を、数値解析ツールを使用して算出する
ことにより実行されることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項14〜16いずれかに記載のシステムにおいて、囲い構造は建物、車両、及び航空機からなるグループから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項18】
コンピュータ装置により実行された場合に、非一様な温熱環境を有する囲い構造における温熱快適性を数値評価するための方法を実行するための命令を記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、該命令は、
一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して、サーマルマネキンの各体部位に関する表面熱伝達係数(hcal)を取得するために、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づき、コンピュータ装置で数値解析ツールを使用して、数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造に対して、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束(q”)を取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づき、数値解析ツールを使用して、数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度(teq)を、取得された関連する表面熱伝達係数(hcal)、取得された関連する全熱流束(q”)、及び関連する体部位の表面温度を用いて、コンピュータ装置で温熱快適性数値解析モジュールを使用して算出するステップと、
囲い構造における温熱快適性を、算出された各等価温度(teq)に基づいて温熱快適性数値解析モジュールを用いて評価するステップと
を実行する命令であることを特徴とする記憶媒体。
【請求項19】
請求項18記載の記憶媒体において、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して、所定の一連の境界条件に基づいて数値解析を実行するステップは、
一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造の計算メッシュを、コンピュータ装置で数値解析ツールを使用して生成するステップであって、計算メッシュは複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含んでおり、サーマルマネキンは所定の温熱快適性の解像度に基づいて分割された体部位を備えている、ステップと、
各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づき、数値解析ツールを使用して、生成された計算メッシュに対して数値解析を実行するステップと、
関連する各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、各体部位に関する表面熱伝達係数(hcal)を、数値解析ツールを使用して算出するステップと
を備えることを特徴とする記憶媒体。
【請求項20】
請求項18記載の記憶媒体において、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造に対して、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づいて数値解析を実行するステップは、
非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造の計算メッシュを、数値解析ツールを使用して生成するステップであって、計算メッシュは複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含んでいる、ステップと、
各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づき、数値解析ツールを使用して、生成された計算メッシュに対して数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境における関連する各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束(q”)を、数値解析ツールを使用して算出するステップと
を備えることを特徴とする記憶媒体。
【請求項21】
非一様な温熱環境を有する囲い構造における温熱快適性を評価するために、コンピュータ装置により実行される方法であって、
一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して、サーマルマネキンの各体部位に関する表面熱伝達係数(hcal)を取得するために、一様な温熱環境に関する所定の一連の境界条件に基づき、コンピュータ装置で数値解析ツールを使用して、数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造に対して、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束(q”)を取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づき数値解析ツールを使用して、数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境における1又は複数のサーマルマネキンの各体部位の等価温度(teq)を、取得された関連する表面熱伝達係数(hcal)、取得された関連する全熱流束(q”)、及び関連する体部位の表面温度に基づいて、コンピュータ装置で温熱快適性数値解析モジュールを使用して算出するステップと、
囲い構造における温熱快適性を、温熱快適性数値解析モジュールを用いて、算出されたそれぞれの等価温度(teq)を温熱快適性ダイアグラムと比較することによって評価するステップであって、温熱快適性ダイアグラムは、各体部位の快適ゾーンレベルと関連付けられた等価温度(teq)の境界線を用いて形成されるステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造に対して所定の一連の境界条件に基づいて数値解析を実行するステップは、
一様な温熱環境でサーマルマネキンを備えるキャリブレーション囲い構造の計算メッシュを、コンピュータ装置で数値解析ツールを使用して生成するステップであって、計算メッシュは複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含んでおり、サーマルマネキンは所定の温熱快適性の分解能に基づいて分割された体部位を含んでいる、ステップと、
各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、一様な温熱環境に関する所定の境界条件に基づき数値解析ツールを使用して、生成された計算メッシュに対して数値解析を実行するステップと、
関連する各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、各体部位に関する表面熱伝達係数(hcal)を、数値解析ツールを使用して算出するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21記載の方法において、非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造に対して、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づいて数値解析を実行するステップは、
非一様な温熱環境で1又は複数のサーマルマネキンを備える囲い構造の計算メッシュを、数値解析ツールを使用して生成するステップであって、計算メッシュは複数のセルを含み、各セルは複数のノードを含んでいる、ステップと、
各セルに関する流量及び熱伝達パラメータを取得するために、非一様な温熱環境に関する一連の境界条件に基づき数値解析ツールを使用して、生成された計算メッシュに対して数値解析を実行するステップと、
非一様な温熱環境における関連する各セルに関して取得された流量及び熱伝達パラメータに基づいて、1又は複数のサーマルマネキンの各体部位に関する全熱流束(q”)を、数値解析ツールを使用して算出するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21記載の方法において、温熱快適性ダイアグラムは国際規格又は囲い構造のタイプに基づいていることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項21〜24いずれかに記載の方法において、囲い構造のタイプは建物、車両、及び航空機からなるグループから選択されることを特徴とする方法。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−23006(P2011−23006A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157525(P2010−157525)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(510191791)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】